(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725077
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ベーパ回収装置
(51)【国際特許分類】
B67D 7/32 20100101AFI20150507BHJP
B01D 53/72 20060101ALI20150507BHJP
B67D 7/76 20100101ALI20150507BHJP
【FI】
B67D7/32 EZAB
B01D53/34 120D
B67D7/76 D
B67D7/76 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-90820(P2013-90820)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-213870(P2014-213870A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100087974
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 好男
(72)【発明者】
【氏名】柳原 毅
【審査官】
関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−121000(JP,A)
【文献】
実開昭50−64014(JP,U)
【文献】
実開昭52−139521(JP,U)
【文献】
特開2002−317711(JP,A)
【文献】
特開平11−116000(JP,A)
【文献】
特開平5−16997(JP,A)
【文献】
特開2010−30622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 7
B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下タンクに一端が接続された通気管に分岐部を介して管路により上流側から燃料油の流入により液圧で弁体を作動させる液遮断手段、送気手段、及びベーパ凝縮手段を接続したベーパ回収装置において、
前記液遮断手段は、上流側にストレーナ収容部を、また下流側に液圧により閉弁する弁体を収容するとともに下流側に流出口を有する弁収容室とを備え、
前記弁収容室にはその内周面を摺動するフレームと、前記フレームの下流側に貫通孔を有する弁板と、液の流入により前記弁板とフレームとを下流側に移動させて閉弁させる程度に上流側に付勢して開弁状態に維持するように前記弁板に取り付けられた付勢手段とが収容され、前記弁収容室の上流側に前記フレームの下端に接する抜け止用のCリングが設けられているベーパ回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気放出ガス中に含まれるガス状炭化水素の蒸気を回収する装置、より詳細には液、つまり燃料油を誤って吸引するのを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン等の燃料油は揮発性が高く、給油所に埋設された地下タンクにローリから荷卸しする際に、地下タンクの上部空間に滞留する炭化水素のベーパが地下タンクの通気管を介して大気に放出され、資源が無駄となるだけでなく、引火による火災の危険性や、環境汚染を引き起こすという問題がある。
【0003】
このような問題を解消するため特許文献1に記載されたように、荷卸し中に地下タンクから通気管に排出されるベーパをコンプレッサーにより凝集手段に送気して液として回収することが提案されている。
【0004】
しかしながら地下タンクに規定以上の燃料油が給油されたり、地下タンクの液上限検知センサが故障した場合には、凝縮手段に燃料油が送液されてしまい損傷するため、特許文献2に見られるように通気管の近傍に配置された液検知センサとこれからの信号により作動する電動止弁を配置することが提案されている。
【0005】
この発明は液の流入を阻止することが可能ではあるが、基本的にベーパ回収装置に内蔵することを前提に構成されているため、液遮断手段を備えていないベーパ回収装置に増設することが困難であるという不都合を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-198604号公報
【0007】
【特許文献1】特開2012-121000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは地下タンクヘの荷卸し中に通気管へのオーバーフローが発生しても凝縮手段への燃料油の流入を遮断することができる液遮断装置を備えたベーパ回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような問題を解消するために本発明は、地下タンクに一端が接続された通気管に分岐部を介して管路により上流側から燃料油の流入により液圧で弁体を作動させる液遮断手段、送気手段、及びベーパ凝縮手段を接続したベーパ回収装置
において、前記液遮断手段は、上流側にストレーナ収容部を、また下流側に液圧により閉弁する弁体を収容するとともに下流側に流出口を有する弁収容室とを備え、前記弁収容室にはその内周面を摺動するフレームと、前記フレームの下流側に貫通孔を有する弁板と、液の流入により前記弁板とフレームとを下流側に移動させて閉弁させる程度に上流側に付勢して開弁状態に維持するように前記弁板に取り付けられた付勢手段とが収容され、前記弁収容室の上流側に前記フレームの下端に接する抜け止用のCリングが設けられている。
【発明の効果】
【0010】
地下タンクからのベーパはベーパ凝縮手段に導入するものの、通気管に流れ込んだ液により弁体が作動するため、信号等の扱いが不要で構造が簡単であり、またベーパ凝縮手段よりも上流の流路に接続するだけで機能させることができるため既存のベーパ回収装置に簡単に増設することができる。
またフレームの下端に接する抜け止用のCリングを配置しているので弁体と弁室との間に異物の侵入を防止して信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の液遮断装置が適用されているベーパ回収装置の一例を示す図である。
【
図2】図(a)(b)は、それぞれストレーナとして構成した本発明の一実施例を、開弁状態、及び閉弁状態での弁体の領域を拡大して示す断面図である。
【
図4】図(a)(b)は、それぞれ本発明の他の実施例を弁体の構成で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施例を示すものであって、地下タンク1は、給油管2を介してローリ3による荷降ろしが可能で、また上部の空間1aが通気管4により大気に連通している。
【0013】
通気管4には分岐管4aを介して回収ライン5が接続されており、これにはストレーナを兼ねた液遮断手段6、電磁弁7、コンプレッサ8、ベーパ凝縮機9が接続され、ベーパ凝縮機9の液排出口9aには戻し弁10を介して回収ガソリン戻しライン11が接続され、給油管2に連通されている。
【0014】
ベーパ凝縮機9の気体排出口9bには高濃度化装置12が接続し、その凝縮成分排出口12aは電磁弁7の上流側に接続され、また空気排出口12bは空気放出ライン13により通気管4の分岐管4aよりも下流側の分岐管4bに連通されている。
なお、図中符号14は、制御装置を、また符号→はベーパの流れを示す。
【0015】
図2は、分岐管4aの直近に接続されるストレーナを兼ねた液遮断手段6の一実施例を示すもので、一端に流入口20が、他端に流出口21が形成されストレーナ室22と弁室23が形成されたケース本体24と、蓋体25、26とを備えている。
【0016】
ストレーナ室22は、上流側にメッシュストレーナ27が、下流側にはマグネットストレーナ28が収容されている。
【0017】
メッシュストレーナ27は、軸方向に移動可能に支持されて一端を蓋体25との間のバネ29により気密的に弾圧され、他端は当接部40に押圧されて所定位置に位置決めされている。
メッシュストレーナ27の下流側に位置するように複数のマグネット31からなるマグネットストレーナ28がバネ32を介して軸端の蝶ネジ33によりストッパ30aに押圧されて所定位置に位置決めされている。
【0018】
一方、ストレーナ室22の下流で蓋体26により連通する弁室23には、これの内面を軸方向に液圧によりガイドされて移動する弁体34が収容されている。
【0019】
弁体34は、下流側に位置して弁室
23の内面を滑動するフレーム35と、これの下流側に設けられた弁板36と、常時は下流側に弁板36及びフレーム35を付勢する錘37と、流出口21に形成された弁座21aに接するように弁板36の下流側に設けられたリング状パッキン38とから構成されている。
【0020】
また弁板36にはパッキン38の外周側に
図3に示したように円弧状の流通孔36aが形成されている。
さらに錘37は、外形が流通孔36aよりも内側となるように上流側が小径の円錐状、もしくはテーパ状に構成され、ネジ37aにより弁板36の上流側に固定されている。
【0021】
このように錘37を円錐状、もしくはテーパ状に構成することにより、流体抵抗を小さく抑えてより軽量のものでもベーパでの閉弁を防止できる。
なお、符号39は弁室23の上流側に装填された弁体34の抜け止め用のCリングを示す。
【0022】
この実施例においてローリ3から地下タンク1に荷卸するべく、ローリ3の排出口と地下タンク1の注油口2とを給油ホース15で接続し、荷卸を開始すると、地下タンク1のベーパが通気管4に500リットル/分の流速で流れ込む。
【0023】
制御装置14は、電磁弁7、戻し弁10を共に開弁し、コンプレッサ8を作動させる。この状態では地下タンク1のベーパだけが流れ込んでいるので、弁体34は自重により降下状態を維持しリング状パッキン38は弁座21aから離間しておりベーパがベーパ凝縮機9に流れ込んで液として回収される。
【0024】
配管からはげ落ちてベーパに混入した錆は、メッシュストレーナ27により阻止され、これを通過したものはマグネットストレーナ28に吸着され、下流への移動を阻止される。
【0025】
なお、ストレーナを保守する場合には蓋体25を開放して軸30を引き抜くことによりメッシュストレーナ27とマグネットストレーナ28を同時に引きぬくことができ、容易にメンテナンスすることができる。
【0026】
弁体34が降下状態を維持している状態では、弁体34の下端の外周が抜け止め用のCリングに接しているため、弁室
23の内周とフレーム35の外周との間に塵埃等の異物が侵入するが防止されている。
【0027】
一方、荷卸中に何らかの不都合で地下タンク1への荷降ろしが規定容量以上に進行すると、燃料油(液体)が通気管4に流れ込んでストレーナを兼ねる液遮断手段6に流れ込む。
これにより弁体34には気体の通過よりも大きな抵抗、つまり流体抵抗が作用するため、液が弁体34の重力に抗して弁体34を上昇させてリング状パッキン38を弁座21aに押圧して燃料油を遮断してベーパ凝縮機9への流路を閉塞し、ベーパ凝縮機9に液が流入するのを阻止する。
【0028】
ところで、地下タンクより繋がる回収ラインの長さや径の大きさによってベーパの流量が予め想定していた量より多くなると、ベーパだけでも弁体34が弁閉したり流量が低下、弁板36をガイドするフレーム35が予め想定していたものより重く制作されて液による弁閉のタイミングが遅くなることがある。
【0029】
しかし、この実施例によれば錘37がネジ37aにより弁板36に固定されているため、重量の異なる複数の錘を用意しておけば最適なものを選択してベーパを効率よく回収しつつ液がベーパ凝縮機9に燃料油(液体)が流入するのを阻止できる。
【0030】
なお、上述の実施例においては弁板36を上流側、つまり下方側に付勢するための錘37を弁板36に設けているが、
弁室23の内面をガイドするフレーム35のサイズ(厚み)を大きくして錘37の重量相当分だけ大きくするようにしてもよい。この実施例によれば部品点数を少なくして構造の簡素化を図ることができる。
【0031】
さらに
図4(a)に示したように弁板36の下流側に押圧バネ40、又は
図4(b)に示したように上流側に引張バネ41を設けて、常時は弁板36が弁座21aから離れ、かつ液の流入で弁座21aに弾圧可能に付勢しても同様の効果を奏する。
なお、符号42がバネの他端を固定する部材を示す。
【符号の説明】
【0032】
1 地下タンク 2 給油管 3 ローリ 4 通気管 4a 分岐部 5 回収ライン 6 ストレーナを兼ねた液遮断手段 7 電磁弁 8 コンプレッサ 9 ベーパ凝縮機 10 戻し弁 11 回収ガソリン戻しライン 12 高濃度化装置 13 空気放出ライン 20 流入口 21 流出口 22 ストレーナ室 23 弁室 24 ケース本体 25、26 蓋体 27 メッシュストレーナ 28 マグネットストレーナ 34 弁体 35 フレーム 36 弁板 37 錘 38 リング状パッキン