(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記回転ツールの攪拌ピンを前記金属要素の塑性化領域から抜き出した際に生じた抜き穴に金属部材を充填する充填工程を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の接合方法。
さらに、前記充填工程でした前記金属部材と塑性化領域を跨ぐように接合して前記金属部材を抜け穴に仮止めする仮止め工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の接合方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態では、
図1に示すように、3つの金属部材10(第一金属部材11、第二金属部材12、第三金属部材13)を摩擦攪拌接合により接合する場合について説明する。なお、説明における各方向は、
図1に示す方向に統一するものとする。
【0018】
各金属部材10の形状寸法は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。本実施形態では、断面矩形の中空押出形材からなる第一金属部材11と、外形断面略T字の中空押出形材からなる第二金属部材12および第三金属部材13を使用する。そして、本実施形態では、第一金属部材11の左右に、断面略T字の第二金属部材12および第三金属部材13を接合する場合について説明する。
【0019】
なお、金属部材10を構成する材料は限定されるものではなく、適宜公知の材料から選定して使用すればよいが、本実施形態では、アルミニウム合金製の金属部材10を使用する。
【0020】
また、
図1および
図2に示すように、各金属部材10同士の突合部Jに対応する個所には、上下に突出する凸部11b,12b,13bがそれぞれ形成されている。凸部11b,12b,13bの断面形状は限定されるものではないが、摩擦攪拌接合により接合されることで、完成部材として必要な強度を発現することが可能な高さと厚みを有している。
なお、各凸部11b,12b,13bは、凸部11bと凸部12bおよび凸部11bと凸部13bを付き合わせた際の幅寸法が、回転ツールAのショルダ径(ショルダ部A1の外径)よりも大きくなるようになっている(
図3(a)および(b)参照)。
【0021】
第一金属部材11の突合面11a,11aは、
図2に示すように、平面を呈している。一方、第二金属部材12と第三金属部材13の突合面12a,13aは、第一金属部材11の突合面11aと突き合せたときに隙間が形成されるように、中間部分に予め凹み(凹部)が形成されている。このように、第二金属部材12と第三金属部材13の突合面12a,13aの中間部分に凹みが形成されていることで、突合面12a,13aの上下(凸部12b,13bも含む)が第一金属部材11の突合面11a,11aに密着する。平面からなる突合面同士を突き合わせると、突合面の不陸により密着せずに、高品質な摩擦攪拌接合ができない場合があるが、本実施形態に係る金属部材10は、互いの突合部Jに隙間が形成されていることで、この隙間が突合面の不陸を吸収し、隙間の上方の摩擦攪拌接合を行う接合部分に関しては金属部材10同士が隙間なく密着し、高品質に摩擦攪拌接合を行うことを可能としている。
【0022】
なお、本実施形態では、第二金属部材12と第三金属部材13の突合面12a,13aに凹みを形成するものとしたが、第一金属部材11の突合面11aに凹みを形成してもよい。また、金属部材10同士の突合面11a,12a,13aの形状は前記の形状に限定されないことはいうまでもない。また、各金属部材10の突合面11a,12a,13aの厚さ寸法も限定されるものではないが、本実施形態では、全て同一である。また、突合面12a,13aに形成された凹みの深さ(隙間の幅)は、限定されるものではなく適宜設定すればよい。なお、図面上(
図1、
図2および
図3)では、突合面12a,13aに形成された凹みの深さが大きく表示されているが、凹みの深さはわずかな隙間が形成される程度であればよい。
【0023】
本実施形態に係る接合方法は、金属部材10同士を突き合せる突合工程と、これらの金属部材10,10,10を支持台20に拘束する拘束工程と、金属部材10同士の突合部Jに対して連続して熱加工としての摩擦攪拌接合を施す接合工程と、を含んでいる。
【0024】
突合工程では、
図1に示すように、接合される金属部材10同士の突合面11a,12a,13aを突き合わせた状態で、これらの金属部材10,10,10を支持台20に載置する。具体的には、左右の第二金属部材12および第三金属部材13の間に、中央の第一金属部材11を配置して、互いの突合面11a,12a,13aを突き合せた状態で支持台20に載置する。
【0025】
なお、支持台20は、
図1および
図2に示すように、中央に間隔を有した状態で、左右に配置された台座22,23と、台座22,23の間隔において、左右の台座22,23に挟持された支持板24と、これらの台座22,23、支持板24を下方から支持する支持台本体21により構成されている。
【0026】
図2に示すように、支持板24の上面の両端には、支持台20に載置された金属部材11,12,13同士の突合部Jを、下面から支持するための接合ライン支持部材25,25が配設されている。また、支持板24の上面の中央には、第一金属部材11を支持するための支持部材26が配設されている。
【0027】
拘束工程では、
図1および
図2に示すように、金属部材10,10,10をボルト30、治具40、万力50等を介して、支持台20に移動不能に拘束する。このとき、ボルト30の頭部30aと、第一金属部材11との間には、押え板31が介在されており、ボルト30による押え付け力を押え板31により分散させることで、第一金属部材11を面的に押え付けるように構成されている。
【0028】
金属部材10の横方向の押え付けは、左側の台座22に固定された万力50と、右側の台座23に固定された受部材51により、把持することにより行う。なお、万力50と第二金属部材12および受部材51と第三金属部材13の間には、それぞれ補助板52,52が介在されており、万力50による押え付け力を分散させて、突合部J,Jの全面が、密着するように構成されている。
【0029】
接合工程では、突合部Jに対して2回の工程(後記「第一工程」および「第二工程」)で摩擦攪拌を行う。具体的には、
図3の(a)に示すように、1回の工程ごとに、回転させた回転ツールAの攪拌ピンA2を、凸部11b,13b(12b)の上から凸部11b,13b(12b)の上面に設けた開始位置Sに挿入(圧入)するとともに、挿入した攪拌ピンA2を途中で離脱させることなく突合部Jを含むように設定した摩擦攪拌のルートに沿って相対移動させることで摩擦攪拌を行ったうえで、終了位置で攪拌ピンA2を上方に離脱させればよい。
回転ツールAを回転させつつ突合部Jに沿って移動させると、
図3の(b)に示すように、回転ツールAと金属との摩擦熱により突合部Jの金属が塑性流動化し、突合部Jが固相接合される。本実施形態では、突合面11a,13a(12a)同士の間に形成された隙間の上方において、接合後も各金属部材10の凸部11b,12b,13bが残るように摩擦攪拌接合がなされる。
【0030】
回転ツールAの形態等に特に制限はないが、本実施形態では、
図3の(a)に示すものを使用している。
図3の(a)に示す回転ツールAは、工具鋼など接合対象よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部A1と、このショルダ部A1の下端面A11に突設された攪拌ピン(プローブ)A2とを備えて構成されている。ショルダ部A1の下端面A11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。攪拌ピンA2は、ショルダ部A1の下端面A11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンA2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。
【0031】
回転ツールAの移動速度(送り速度)は、攪拌ピンA2の寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材10等の材質や肉厚等に応じて設定される。回転ツールAを移動させると、その攪拌ピンA2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンA2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化する。
【0032】
この接合工程は、各金属部材10が長尺体であることから、各突合部Jを摩擦攪拌する手順に特徴があり、第一の摩擦攪拌接合工程(以下「第一工程」と称する)と第二の摩擦攪拌接合工程(以下「第二工程」と称する)との二つの特徴的な工程を含んでいる。第一工程は、突合部Jの一端側から突合部Jの途中までに設けた第一の点までの第一接合範囲に摩擦攪拌を行う手順である。第二工程は、第一工程により生じた第一接合範囲に属する塑性化領域内に設けた第二の点から突合部Jの他端側までの第二接合範囲に摩擦攪拌を行う手順である。以下、第一工程および第二工程についての工程例について説明する。
【0033】
[工程例1]
図4は、実施形態における接合工程の工程例1を説明する図である。なお、この
図4は
図1の凸部11b,13bの突合部Jのところを主に示す平面図であり、タブ部2,3を突合部Jの側方に配置した場合を示している。
図4の(a)に第一工程の様子を説明するための平面図を示す。
図4の(b)に第二工程の様子を説明するための平面図を示す。
【0034】
図4の(a)に示すように、第一工程では、第一接合範囲R
11に対する摩擦攪拌のスタート位置S
11が突合部Jの途中に第一の点として設定され、かつ、第一接合範囲R
11に対する摩擦攪拌のエンド位置E
11が突合部Jの一端側に配置されたタブ部3上に設定されている。つまり、第一工程では、回転ツールAの攪拌ピンA2(
図3参照)がスタート位置S
11に回転しつつ挿入され、金属を塑性流動化しつつタブ部3のエンド位置E
11に向かって、金属材料10に対して相対的に移動し、タブ部3から抜き出される。この第一工程によって、突合部Jに塑性化領域W
11が形成され、第一接合範囲R
11において、第一金属部材11と第三金属部材13とが接合される。
【0035】
また、
図4の(b)に示すように、第二工程では、第二接合範囲R
12に対する摩擦攪拌のスタート位置S
12が第一接合範囲S
11に属する塑性化領域W
11内の第二の点として設定され、かつ、第二接合範囲R
12に対する摩擦攪拌のエンド位置E
12が突合部Jの一端側に配置されたタブ部3とは反対の突合部Jの他端側に配置されたタブ部2上に設定されている。
【0036】
つまり、第二工程では、回転ツールAの攪拌ピンA2(
図3参照)が、塑性化領域W
11内に設定されたスタート位置S
12に回転しつつ挿入され、塑性化領域W
11の金属を再び塑性流動化して塑性化領域W
12を形成しつつスタート位置S
11に向かって、金属材料10に対して相対的に移動する。さらに、その回転ツールAの攪拌ピンA2は、スタート位置S
11を過ぎると、突合部Jの金属を塑性流動化して塑性化領域W
12を形成しつつタブ部2のエンド位置E
12に向かって、金属材料10に対して相対的に移動する。そして、その回転ツールAの攪拌ピンA2は、タブ部2で抜き出される。この第二工程によって、突合部Jには塑性化領域W
12が形成され、第二接合範囲R
12において、第一金属部材11と第三金属部材13とが接合される。
【0037】
図5に、工程例1での突合部Jにおける断面図を示す。なお、この
図5は
図1の凸部11b,13bの突合部Jのところを主に示す断面図であり、タブ部2,3を突合部Jの側方に配置した場合を示している。(a)には、第一工程における回転ツールの攪拌ピンを挿入する直前の様子が示されている。(b)には、第一工程の終了時の攪拌ピンを抜き出す前の様子が示されている。(c)には、第一工程での攪拌ピンの抜き出し後、および、第二工程の攪拌ピンの挿入直前の様子が示されている。(d)には、第二工程の終了時の攪拌ピンを抜き出したときの様子が示されている。
【0038】
図5の(a)に示すように、回転ツールAは突合部J上のスタート位置S
11の上方に相対移動され、回転する攪拌ピンA2がスタート位置S
11に挿入される。
次に、
図5の(b)に示すように、回転ツールAは、攪拌ピンA2を回転させたままエンド位置E
11に向かって相対移動され、金属を塑性流動化させて塑性化領域W
11を形成して、各凸部11b,13b同士、つまり、第一金属部材11(
図1等参照)と第二金属部材13(
図1等参照)を接合する。
【0039】
続いて、
図5の(c)に示すように、回転ツールAは、エンド位置E
11から引き抜かれ、スタート位置S
12の上方に相対移動され、回転する攪拌ピンA2がスタート位置S
12に挿入され、エンド位置E
12に向かって第二接合範囲R
12を相対移動される。
そして、
図5の(d)に示すように、回転ツールAは、突合部Jに塑性化領域W
12を形成してエンド位置E
12から引き抜かれて摩擦攪拌を終了する。
【0040】
このように、工程例1においては、第一工程のスタート位置S
11は、第二工程で再度塑性流動化され、塑性化領域W
12に含まれることになる。そのため、第一工程の際にスタート位置S
11の塑性化領域W
11に酸化皮膜が残っていたとしても、第二工程により酸化皮膜を分断することができるようになる。また、スタート位置S
11に接合欠陥等が生じていたとしても、第二工程により再び塑性流動化するため、接合欠陥等を修復することができる。
【0041】
[工程例2]
図6は、実施形態における接合工程の工程例2を説明する図である。なお、この
図6は
図1の凸部11b,13bの突合部Jのところを主に示す平面図であり、タブ部2,3を突合部Jの側方に配置した場合を示している。
図6の(a)に第一工程の様子を説明するための平面図を示す。
図6の(b)に第二工程の様子を説明するための平面図を示す。
【0042】
図6の(a)に示すように、第一工程では、第一接合範囲R
21に対する摩擦攪拌のスタート位置S
21が突合部Jの途中に第一の点として設定され、かつ、第一接合範囲R
21のエンド位置E
21が突合部Jの一端側のタブ部3に設定されている。つまり、第一工程は、工程例1の第一工程と同じである。そのため、この第一工程によって、突合部Jには、塑性化領域W
21が形成され、第一金属部材11と第三金属部材13とが第一接合範囲R
21で接合される。
【0043】
また、
図6の(b)に示すように、第二工程では、第二接合範囲R
22のスタート位置S
22がタブ3(一端側)とは反対のタブ2(他端側)に設定され、かつ、第二接合範囲R
22のエンド位置E
22が第一接合範囲R
21に属する塑性化領域W
21内の第二の点として設定されている。
【0044】
つまり、第二工程では、工程例1の場合とは異なるスタート位置S
22およびエンド位置E
22が設定されている。この第二工程では、回転ツールAの攪拌ピンA2(
図3参照)が、タブ部2に設定されたスタート位置S
22に回転しつつ挿入され、突合部Jの金属を塑性流動化して塑性化領域W
22を形成しつつ塑性化領域W
21に向かって、金属材料10に対して相対的に移動する。さらに、その回転ツールAの攪拌ピンA2は、塑性化領域W
21に設定されたエンド位置E
22に向かって、金属材料10に対して相対的に移動し、塑性化領域W
21を再び塑性流動化して塑性化領域W
22を形成する。そして、その回転ツールAの攪拌ピンA2は、エンド位置E
22で抜き出される。この第二工程によって、突合部Jには塑性化領域W
22が形成され、第二接合範囲S
22において、第一金属部材11と第三金属部材13とが接合される。
【0045】
なお、突合部Jの深さ方向の様子は、工程例1の場合と略同一であるため、図示を省略するが、第二工程の回転ツールAと金属部材10との相対移動方向が異なっている。そのため、回転ツールAの攪拌ピンA2(
図3参照)の最終の引き抜き箇所が、塑性化領域W
22の端部であるため、抜き穴(図示省略)が形成されている。そこで、この抜き穴には、肉盛り溶接などを行うことが好ましい。
【0046】
このように、工程例2においては、第一工程のスタート位置S
21は、第二工程で再度塑性流動化され、塑性化領域W
22に含まれることになる。そのため、第一工程の際にスタート位置S
21に酸化皮膜が残っていたとしても、第二工程により酸化皮膜を分断することができるようになる。また、スタート位置S
21に接合欠陥等が生じていたとしても、第二工程により再び塑性流動化するため、第一工程での接合欠陥等を修復することができる。
【0047】
[工程例3]
図7は、実施形態における接合工程の工程例3を説明する図である。なお、この
図7は
図1の凸部11b,13bの突合部Jのところを主に示す平面図であり、タブ部2,3を突合部Jの側方に配置した場合を示している。
図7の(a)に第一工程の様子を説明するための平面図を示す。
図7の(b)に第二工程の前半の様子を説明するための平面図を示す。
図7の(c)に第二工程の後半の様子を説明するための平面図である。
【0048】
図7の(a)に示すように、第一接合範囲R
31に対する摩擦攪拌のスタート位置S
31が突合部Jの途中に第一の点として設定され、かつ、第一接合範囲R
31のエンド位置E
31が突合部Jの一端側のタブ部3に設定されている。つまり、第一工程は、工程例1,2の第一工程の場合と同じであり、塑性化領域W
31が突合部Jの第一接合範囲R
31に形成される。
【0049】
次に、
図7の(b)に示すように、第二工程では、まず、第二接合範囲R
32に対する摩擦攪拌のスタート位置S
32が、第一接合範囲R
31に属する塑性化領域W
31の端部に第二の点(スタート位置S
31)として設定されている。また、第二接合範囲R
32のエンド位置E
33がタブ部2に設定されている。さらに、スタート位置S
32からタブ部3(突合部Jの一端側)に向かって第一接合範囲R
31に属する塑性化領域W
31に折り返し位置T
32が設定されている。
【0050】
そして、第二工程では、回転ツールAの攪拌ピンA2(
図3参照)が、スタート位置S
32に回転しつつ挿入され、塑性化領域W
31の金属を再び塑性流動化して塑性化領域W
32を形成しつつ折り返し位置T
32に向かって、金属部材10に対して相対的に移動する。その回転ツールAの攪拌ピンA2は、折り返し位置T
32に達すると、再び塑性化領域W
32を塑性流動化して塑性化領域W
33を形成しつつ折り返して、スタート位置S
32に向かって金属部材10に対して相対的に移動する。さらに、その回転ツールAの攪拌ピンA2は、スタート位置S
32を通過して、突合部Jに沿ってタブ部2まで移動し、金属を塑性流動化して塑性化領域W
33を形成しつつエンド位置E
33に到達し、引き抜かれる。そのため、この第二工程によって、突合部Jには塑性化領域W
33が形成され、第二接合範囲R
32において、第一金属部材11と第三金属部材13とが接合される。
【0051】
このように、工程例3においては、第一工程のスタート位置S
31は、第二工程で再度塑性流動化され、塑性化領域W
33に含まれることになる。そのため、第一工程の際にスタート位置S
31に酸化皮膜が残っていたとしても、第二工程により酸化皮膜を分断することができるようになる。また、スタート位置S
31に接合欠陥等が生じていたとしても、第二工程により再び塑性流動化するため、接合欠陥等を修復することができる。
【0052】
[工程例4]
図8は、実施形態における接合工程の工程例4を説明する図である。なお、この
図8は
図1の凸部11b,13bの突合部Jのところを主に示す平面図であり、タブ部2,3を突合部Jの側方に配置した場合を示している。
図8の(a)に第一工程の様子を説明するための平面図を示す。
図8の(b)に第二工程の様子を説明するための平面図を示す。
【0053】
図8の(a)に示すように、第一工程では、第一接合範囲R
41に対する摩擦攪拌のスタート位置S
41がタブ部3に設定され、かつ、第一接合範囲R
41のエンド位置E
41が突合部Jの途中に第一の点として設定されている。この第一工程は、工程例1の場合と相対移動方向が逆である。つまり、第一工程では、回転ツールAの攪拌ピンA2(
図3参照)が、タブ部3のスタート位置S
41に回転しつつ挿入され、金属を塑性流動化しつつ金属部材10に対して相対的に移動し、エンド位置E
41で引き抜かれる。この第一工程によって、突合部Jには塑性化領域W
41が形成され、第一接合範囲R
41において、第一金属部材11と第三金属部材13とが接合される。
【0054】
図8の(b)に示すように、第二工程では、第二接合範囲R
42に対する摩擦攪拌のスタート位置S
42が第一接合範囲R
41に属する塑性化領域W
41内の第二の点として設定され、かつ、第二接合範囲R
42に対する摩擦攪拌のエンド位置E
42がタブ部2に設定されている。つまり、第二工程では、回転ツールAの攪拌ピンA2(
図3参照)が、スタート位置S
42に回転しつつ挿入され、塑性化領域W
41の金属を再び塑性流動化しつつスタート位置S
41に向かって、金属材料10に対して相対的に移動する。さらに、その回転ツールAの攪拌ピンA2は、スタート位置S
41を通過すると、突合部Jの金属を塑性流動化しつつタブ部2に向かって、金属材料10に対して相対的に移動し、エンド位置E
42から引き抜かれる。この第二工程によって、突合部Jには塑性化領域W
42が形成され、第二接合範囲R
42において、第一金属部材11と第三金属部材13とが接合される。
【0055】
ところで、第一工程の終了後、回転ツールAの攪拌ピンA2(
図3参照)は突合部Jから引き抜かれるため、引き抜かれた後の塑性化領域W
41の端部には、引き抜き穴が形成されている。そこで、第二工程を行う前に、その引き抜き穴に金属部材を充填する充填工程を経て、金属を補うようにすることが好ましい。以下、この工程例4の変形例として充填工程を実施する場合について説明する。
【0056】
図9は、工程例4の接合方法を説明するための断面を示す、
図8のII-II断面相当図である。(a)には、第一工程における回転ツールの攪拌ピンを挿入する直前の様子が示されている。(b)には、第一工程の終了時の攪拌ピンを抜き出した後の様子が示されている。(c)には、第一工程での攪拌ピンの抜き出し後に生じた抜き穴を充填する充填工程が示されている。(d)には、第二工程の攪拌ピンの挿入直前の様子が示されている。(e)には、第二工程の終了時の攪拌ピンを抜き出したときの様子が示されている。
【0057】
図9の(a)に示すように、工程例4では、まず、回転ツールAはタブ3に設定されたスタート位置S
41に挿入される。
次に、
図9の(b)に示すように、回転ツールAは、攪拌ピンA2を回転させたままエンド位置E
41に向かって相対移動され、金属を塑性流動化させて塑性化領域W
41を形成して、各金属部材10同士を接合する。このとき、攪拌ピンA2がエンド位置E
41から引き抜かれると、塑性流動化していた金属は直ぐに塑性化領域W
41に変化し、抜け穴H
1が形成される。
【0058】
図9の(c)に示すように、抜け穴H
1には、金属部材Zが充填される。この金属部材Zは、例えば、肉盛り溶接によって充填してもよい。また、攪拌ピンA2と略同一の金属部材を用意しておき、その金属部材を抜け穴H
1に充填するようにしてもよい。この場合、金属部材が動かないように、周囲の塑性化領域W
41に仮接合することが好ましい。この接合は、溶接によっても、摩擦攪拌接合を行ってもよい。なお、摩擦攪拌接合の場合には、攪拌ピンA2の径よりも細い径の攪拌ピン(不図示)を備えた回転ツール(不図示)によって、周囲の塑性化領域W
41に仮止めすればよい。
【0059】
続いて、
図9の(d)に示すように、回転ツールAは、第二工程のスタート位置S
42の上方に相対移動され、回転する攪拌ピンA2がスタート位置S
42に挿入され、エンド位置E
42に向かって相対移動される。
そして、
図9の(e)に示すように、回転ツールAは、エンド位置E
42から引き抜かれて摩擦攪拌を終了する。これによって、第二接合範囲R
42では、塑性化領域W
42が形成されることで、凸部11bと凸部13bとを接合する。つまり、第一金属部材11(
図1等参照)と第二金属部材13(
図1等参照)とが接合される。
【0060】
このように、工程例4においては、第一工程のエンド位置E
41は、第二工程で再度塑性流動化され、塑性化領域W
42に含まれることになる。そのため、第一工程の際にエンド位置E
41に酸化皮膜が残っていたとしても、第二工程により酸化皮膜を分断することができるようになる。また、エンド位置E
41に接合欠陥等が生じていたとしても、第二工程により再び塑性流動化するため、接合欠陥等を修復することができる。
【0061】
[工程例5]
図10は、実施形態における接合工程の工程例5を説明する図である。なお、この
図10は
図1の凸部11b,13bの突合部Jのところを主に示す平面図であり、タブ部2,3を突合部Jの側方に配置した場合を示している。
図10の(a)に第一工程の様子を説明するための平面図を示す。
図10の(b)に第二工程の前半の様子を説明するための平面図を示す。
図10の(c)に第二工程の後半の様子を説明するための平面図である。
【0062】
この工程例5は、工程例3(
図7参照)の変形例に相当する。工程例3では、第一工程が、突合部Jの途中にスタート位置S
31を設定し、タブ部3にエンド位置E
31を設定した場合を説明したが、この工程例5は、工程例3とは反対に、タブ部3にスタート位置S
51を設定し、突合部Jの途中にエンド位置E
51を設定した場合である。なお、(a)に示す第一工程以外((b)(c)の第二工程)は、工程例3と同じであるため、同一符号を付し、説明を省略する。
【0063】
このように、工程例5においては、第一工程のエンド位置E
51は、第二工程で再度塑性流動化され、塑性化領域W
33に含まれることになる。そのため、第一工程の際にエンド位置E
51の酸化皮膜が残っていたとしても、第二工程により酸化皮膜を分断することができるようになる。また、エンド位置E
51に接合欠陥等が生じていたとしても、第二工程により再び塑性流動化するため、接合欠陥等を修復することができるようになる。
【0064】
[工程例6]
図11は、実施形態における接合工程の工程例6を説明する図である。なお、この
図11は
図1の凸部11b,13bの突合部Jのところを主に示す平面図であり、タブ部2,3を突合部Jの側方に配置した場合を示している。
図11の(a)に第一工程の様子を説明するための平面図を示す。
図11の(b)に第二工程の様子を説明するための平面図を示す。
【0065】
図11の(a)に示すように、第一工程は、工程例4の第一工程と同じである。つまり、攪拌ピンA2が、タブ部3に設定されたスタート位置S
61から突合部Jに設定されたエンド位置E
61までの第一接合範囲R
61の摩擦攪拌を行って、塑性化領域W
61を形成して第一金属部材11と第三金属部材13とを接合する。
【0066】
図11の(b)に示すように、第二工程は、工程例2の第二工程と同じである。
つまり、回転ツールAの攪拌ピンA2(
図3参照)は、タブ部2に設定されたスタート位置S
62から塑性化領域W
61内に設定されたエンド位置E
62までの第二接合範囲R
62の摩擦攪拌を行って、塑性化領域W
62を形成して第一金属部材11と第三金属部材13とを接合する。このとき、工程例2と同様に、その回転ツールAの攪拌ピンA2の最終の引き抜き箇所が、塑性化領域W
62の端部であるため、抜き穴(図示省略)が形成されている。そこで、この抜き穴には、肉盛り溶接などを行うことが好ましい。
【0067】
以上説明した各工程例のように回転ツールを移動させれば、高品質な摩擦攪拌接合を行うことができるようになる。特に、大型な装置を用いなくても、長尺な金属要素同士の高品質な摩擦攪拌接合を行うことができるようになる。
【0068】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記の各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、3つの金属部材を接合する場合について説明したが、本発明の接合方法において接合される金属部材の数量は限定されるものではない。
【0069】
この実施形態では、第一接合範囲を各図中右側とし、第二接合範囲を各図中左側として説明したが、反対に、第一接合範囲を図中左側とし、第二接合範囲を図中右側としてもよい。
【0070】
この実施形態では、突合部Jの側方にタブ材2,3を配置したものとして説明したが、タブ材2,3を配置しなくてもよい。
【0071】
この実施形態では、金属要素が、第一金属部材11、第二金属部材12、第三金属部材13の中空部材の場合を説明したが、板材であってもよい。