(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体に対して互いに異なる方向からそれぞれ照射された放射線ビームによって取得された複数の放射線画像に基づいて断層画像を生成する放射線断層画像生成方法であって、
前記複数の放射線画像のそれぞれを、当該放射線画像中における、関心領域を構成する物質とは異質の物質が投影された領域の画素値を、その周辺領域の画素値に基づいて補間して、複数の補間画像を生成する領域補間工程と、
前記複数の補間画像から断層画像を生成する第1断層画像生成工程と
を備えるとともに、
前記各放射線画像と、当該放射線画像に対応する前記補間画像との差分から、複数の異質投影データを生成する異質投影データ生成工程と、
前記複数の異質投影データから断層画像を生成する第2断層画像生成工程と、
前記第1断層画像生成工程で生成された前記断層画像と前記第2断層画像生成工程で生成された前記断層画像とを合成する断層画像合成工程と
を備えることを特徴とする放射線断層画像生成方法。
被検体に対して互いに異なる方向からそれぞれ照射された放射線ビームによって取得された複数の放射線画像に基づいて断層画像を生成する放射線断層画像生成をコンピュータに実行させるための放射線断層画像生成プログラムであって、
前記複数の放射線画像のそれぞれを、当該放射線画像中における、関心領域を構成する物質とは異質の物質が投影された領域の画素値を、その周辺領域の画素値に基づいて補間して、複数の補間画像を生成する領域補間工程と、
前記複数の補間画像から断層画像を生成する第1断層画像生成工程と
を備えるとともに、
前記各放射線画像と、当該放射線画像に対応する前記補間画像との差分から、複数の異質投影データを生成する異質投影データ生成工程と、
前記複数の異質投影データから断層画像を生成する第2断層画像生成工程と、
前記第1断層画像生成工程で生成された前記断層画像と前記第2断層画像生成工程で生成された前記断層画像とを合成する断層画像合成工程と
を備え、
これらの工程での処理をコンピュータに実行させることを特徴とする放射線断層画像生成プログラム。
【実施例】
【0019】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る断層撮影装置のブロック図である。本実施例では放射線としてX線を例に採って説明するとともに、被検体として人体を例に採って説明し、被検体中の関心領域を構成する物質として生体を構成する物質を例に採って説明し、異質の部分として、金属製人工関節、創外固定器、歯の詰め物等の高密度な物質を例に採って説明する。
【0020】
断層撮影装置は、
図1に示すように、被検体Mを載置する天板1と、その被検体Mに向けてX線を照射するX線管2と、被検体Mを透過したX線を検出するフラットパネル型X線検出器(以下、「FPD」と略記する)3とを備えている。
【0021】
断層撮影装置は、他に、天板1の昇降および水平移動を制御する天板制御部4や、FPD3の走査を制御するFPD制御部5や、X線管2の管電圧や管電流を発生させる高電圧発生部6を有するX線管制御部7や、FPD3から電荷信号であるX線検出信号をディジタル化して取り出すA/D変換器8や、A/D変換器8から出力されたX線検出信号に基づいて種々の処理を行う画像処理部9や、これらの各構成部を統括するコントローラ10や、処理された画像などを記憶するメモリ部11や、オペレータが入力設定を行う入力部12や、処理された画像などを表示するモニタ13などを備えている。
【0022】
天板制御部4は、天板1を水平移動させて被検体Mを撮像位置にまで収容したり、昇降、回転および水平移動させて被検体Mを所望の位置に設定したり、水平移動させながら撮像を行ったり、撮像終了後に水平移動させて撮像位置から退避させる制御などを行う。これらの制御は、モータやエンコーダ(図示省略)などからなる天板駆動機構(図示省略)を制御することで行う。
【0023】
FPD制御部5は、FPD3を被検体Mの長手方向である体軸z方向に沿って平行移動させる制御を行う。この制御は、ラックやピニオンやモータやエンコーダ(図示省略)などからなるFPD駆動機構(図示省略)を制御することで行う。
【0024】
高電圧発生部6は、X線を照射させるための管電圧や管電流を発生してX線管2に与える。X線管制御部7は、X線管2をFPD3の平行移動とは逆方向に平行移動させる制御を行う。この制御は、支柱やネジ棒やモータやエンコーダ(図示省略)などからなるX線管駆動部(図示省略)を制御することで行う。
【0025】
また、X線管制御部7は、X線管2側のコリメータ(図示省略)の照視野の設定の制御を行う。本実施例では、体軸z方向に広がりを有するファンビーム状のX線を照射するようにコリメータを制御して照視野を設定する。
【0026】
画像処理部9やコントローラ10は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されており、メモリ部11は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体などで構成されている。また、入力部12は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。
【0027】
なお、各種の画像処理を行うためのプログラム等をROMなどに代表される記憶媒体に書き込んで記憶し、その記憶媒体からプログラム等を読み出して画像処理部9のCPUが実行することでそのプログラムに応じた画像処理を行う。特に
、領域補間や第1/第2断層画像生成や金属等投影データ生成や断層画像合成に関するプログラムを実行することで、そのプログラムに
応じた領域補間や第1/第2断層画像生成や金属等投影データ生成や断層画像合成をそれぞれ行う
。領域補間や第1/第2断層画像生成や金属等投影データ生成や断層画像合成に関するプログラムは、この発明における放射線断層画像生成プログラムに相当する。
【0028】
メモリ部11は、画像処理部9で処理された各々の画像を書き込んで記憶するように構成されている。FPD制御部5やX線管制御部7も、画像処理部9やコントローラ10と同様にCPUなどで構成されている。
【0029】
画像処理部9による放射線断層画像生成の流れについて、
図2〜
図4を参照して説明する。
図2は、画像処理部による一連の放射線断層画像生成の流れを示したフローチャートであり、
図3は、各画像や各データの流れを示した概略図であり、
図4は、2値化データのラベリングの説明に供する概略図である。
図2に示すステップS1〜S6の放射線断層画像生成については、上述したように、画像処理部9のCPUがプログラムを実行することにより行う。
【0030】
(ステップS1)
補間前投影データ生成
図1に示すように、X線管2およびFPD3を互いに逆方向に平行移動させつつ、X線管2から体軸z方向に広がりを有するファンビーム状のX線を照射することで、被検体Mに対して互いに異なる方向(投影角度)からそれぞれ照射されたX線ビームをFPD3が検出する。FPD3が検出することによって、被検体Mに対して互いに異なる方向からそれぞれ照射されたX線ビームによる複数のX線画像を取得する。X線画像は、FPD3の検出面に投影された投影データであり、
図3に示すように投影データP1とする。
【0031】
取得された投影データP1から高密度な物質(金属等)
が投影された画像を
生成する。金属等
が投影された画像を
生成する方法としては、例えば投影データP1の画素値に対して閾値処理を行い、閾値よりも高い画素値に対して“1”を付けて、閾値以下の画素値に対して“0”を付けて、2値化データを出力する方法が挙げられる(
図4(a)の2値化データDを参照)。この2値化データでは、“1”が付けられた画像の領域が
、生成された金属等
が投影された領域に一致し、“0”が付けられた画像の領域が生体組織に一致する(
図4(b)を参照)。この2値化データを、
図3に示すように補間前投影データP2とする
。
【0032】
(Aの方法)
このように、投影データP1の画素値に対して閾値処理を行って2値化データを出力することで、投影データP1
に基づいて補間前投影データP2を
生成する。なお、
金属等が投影された画像の生成の手法については、閾値処理に限定されない。生体組織と金属との境界では画素値差によるエッジがあるのを利用して、画素値および画素値差に基づいて
金属等が投影された画像を生成するグラフカット手法や、生体組織と金属との境界では空間周波数が高いのを利用して周波数帯域フィルタを用いて
金属等が投影された画像を生成する手法や、レベルセット法などに例示されるように、
複数の放射線画像のそれぞれを、当該放射線画像中における、関心領域を構成する物質(本実施例では生体を構成する物質)とは異質の
物質(本実施例では金属等の高密度な物質)が投影された画像(本実施例では補間前投影データP2)を
生成する通常の
生成の手法であれば、特に限定されない。
【0033】
(Bの方法)
また、投影データP1
に基づいて補間前投影データP2を直接的に
生成する以外にも、投影データP1から再構成により断層画像を生成し、
当該断層画像
に基づいて異質の物質に対応する画素値を有した断層画像(すなわち補間前断層画像
)を例えば閾値処理により
生成して、
当該補間前断層画像を順投影して投影データを生成することによって、その順投影されて生成された投影データを補間前投影データP2として
生成してもよい。
【0034】
また、上述のAの方法とBの方法とを組み合わせて行うことも可能である。例えば、Aの方法で厚い金属
が投影された画像を生成し、Bの方法で比較的薄い金属
が投影された画像を生成するケースが考えられる。
【0035】
再構成手法については、上述したフィルタード・バックプロジェクション(FBP)法や、逐次近似法(例えば上述したLikelihood Expectation Maximization (ML-EM)法や上述したシフト加算法)などに例示されるように、投影データから断層画像を生成する通常の手法であれば、特に限定されない
。
【0036】
(ステップS2)領域補間
ステップS1で
生成された補間前投影データP2
の金属等の領域
(すなわち金属等が投影された領域)の画素値をその周辺
領域の画素値に基づいて補間して、補間画像を生成する。この補間画像を、
図3に示すように補間後投影データP3とする。補間後投影データP3は、この発明における補間画像に相当する。
【0037】
本実施例では、2値化データでもある補間前投影データP2に対してラベリングを先ず行う。
図4では、説明の便宜上、“1”が付けられた画像の領域(すなわち金属等の領域)を、太枠で示された正方形状の領域で図示するが、もちろん画像の領域については正方形状の領域には限定されない。
図4(a)に示すように、2値化データD(
図3の補間前投影データP2)のうち、“1”が付けられた画像の領域Sを太枠で示された正方形状の領域とする。したがって、
図4(b)に示すように、領域S(
図4(a)を参照)内では“1”が付けられ、領域S外では“0”が付けられる。
【0038】
次に、
図4(b)において、“1”が付けられた画像の領域S(
図4(a)を参照)で、領域S外方向に隣接する画素が“0”の場合には、“1”のラベルにして、領域S外方向に隣接する画素が“1”の場合には、“2”のラベルにする(
図4(c)を参照)。さらに、
図4(c)において、“1”が付けられた画像の領域Sで、領域S外方向に隣接する画素が“0”の場合には、“1”のラベルにして、領域S外方向に隣接する画素が“1”の場合には、“2”のラベルにして、領域S外方向に隣接する画素が“2”の場合には、“3”のラベルにする(
図4(d)を参照)。以下、同様の手順でラベリングを行うと、領域Sの中心側に向かうとラベルが高くなり、領域S外方向に向かうとラベルが低くなる。なお、ラベリングについては、
図4に示す手法に限定されない。
【0039】
このようにラベリングされたデータに基づいて、投影データP1中の周辺領域(周辺画素)から下記(1)式のような補間式を用いて補間する。
【0040】
【数1】
【0041】
なお、上記(1)式中のnは補間の対象となる画素で、I
nは対象となるn番目の画素における補間後の画素値で、kは対象となるn番目の画素のラベル未満(すなわちn番目の画素のラベルよりも若いラベル)の周辺画素の個数であり、mは周辺画素を順にm=1,2,3…としたときの値であり、p
mはm番目の周辺画素の重み係数であり、I
mはm番目の周辺画素における画素値(投影データP1中の画素値)である。ただし、m番目の周辺画素のラベルをL
mとし、対象となる画素のラベルをL
nとしたときに、L
m<L
nのとき(すなわちn番目の画素のラベルよりもm番目の周辺画素のラベルの方が小さいとき)にp
mをp
m=1とし、L
m≧L
nのとき(すなわちn番目の画素のラベルよりもm番目の周辺画素のラベルの方が大きいまたは同じとき)にp
mをp
m=0とする。したがって、上記(1)式は、L
m<L
nのときのみの周辺画素(すなわち対象となる金属等の領域よりも生体組織に近い画素)の画素値の総和を、L
m<L
nに該当する周辺画素の個数kで除算した加算平均(相加平均)の式となる。周辺画素の個数・範囲については任意に決定する。
【0042】
補間の手法については、ラベリングを用いた上記(1)式以外にも、隣接する画素の画素値をそのまま用いて補間する、あるいは補間の対象となる画素と周辺画素との距離に応じて重み付け加算平均を行うことで補間するなど、通常の領域補間の手法であれば、特に限定されない。このステップS2は、この発明における領域補間に相当する。
【0043】
(ステップS3)第1断層画像生成
ステップS2で金属等の領域が補間されて生成された補間後投影データP3から再構成により断層画像を生成する。この断層画像を、
図3に示すように第1断層画像P4とする。再構成手法については、ステップS2でも述べたように、FBP法や逐次近似法などに例示されるように、投影データから断層画像を生成する通常の手法であれば、特に限定されない。第1断層画像P4は、この発明における(第1断層画像生成工程で生成された)断層画像に相当する。このステップS3は、この発明における第1断層画像生成工程に相当する。
【0044】
図2のフローチャートでは、ステップS3の後にステップS4、S5を行っているが、ステップS3を行う前でもステップS4、S5を行うことができる。したがって、
図2のフローチャートに限定されず、ステップS4、S5の後にステップS3を行ってもよいし、ステップS3とステップS4、S5とを同時に並行して行ってもよい。
【0045】
(ステップS4)金属等投影データ生成
一方、FPD3の検出により取得された投影データP1とステップS2で補間されて生成された補間後投影データP3との差分から、
図3に示すように金属等の投影データである金属等投影データP5を生成する。この金属等投影データP5は、この発明における異質投影データに相当する。このステップS4は、この発明における異質投影データ生成工程に相当する。
【0046】
(ステップS5)第2断層画像生成
ステップS4で生成された金属等投影データP5から再構成により断層画像を生成する。この断層画像を、
図3に示すように第2断層画像P6とする。第2断層画像P6は、この発明における(第2断層画像生成工程で生成された)断層画像に相当する。再構成手法については、ステップS2、S3でも述べたように、FBP法や逐次近似法などに例示されるように、投影データから断層画像を生成する通常の手法であれば、特に限定されない。
【0047】
ただし、ステップS3でFBP法により第1断層画像P4を生成したときには、ステップS5でFBP法のみで第2断層画像P6を生成し、後述するステップS6で断層画像P4、P6同士を単純に加算して合成した場合には、第2断層画像P6の基となる金属等投影データP5が、投影データP1と、第1断層画像P4の基となる補間後投影データP3との差分であることから、アーティファクトが除去されない元の断層画像になってしまう。したがって、ステップS3でFBP法により第1断層画像P4を生成したときには、ステップS5でFBP法および基準値への置き換えで第2断層画像P6を生成する。
【0048】
FBP法および基準値への置き換えで第2断層画像P6を生成する場合について説明する。FBP法により金属等投影データP5から断層画像を生成すると、断層画像の画素値が負の値になる可能性がある。そこで、FBP法により生成された断層画像の画素値が、設定された基準値よりも低くなる領域の当該画素値を基準値に置き換えて断層画像を生成して、その基準値に置き換えられた断層画像を第2断層画像P6とする。基準値については、基準値に置き換えられた画素値が負の値にさえならなければ、基準値の画素値を“0”に通常設定すればよいが、もちろん基準値の画素値を正の値に設定してもよい。
【0049】
なお、ステップS3でFBP法により第1断層画像P4を生成したときには、ステップS5で逐次近似法により第2断層画像P6を生成し、後述するステップS6で断層画像P4、P6同士を単純に加算して合成したとしても、アーティファクトが低減した断層画像となるので、ステップS3でFBP法により第1断層画像P4を生成し、ステップS5で逐次近似法により第2断層画像P6を生成してもよい。また、ステップS3で逐次近似法を用いた場合であっても、ステップS5でFBP法を用いた場合には、第2断層画像P6に対して上述の基準値への置き換えを行う。このステップS5は、この発明における第2断層画像生成工程に相当する。
【0050】
(ステップS6)断層画像合成
ステップS3で生成された第1断層画像P4とステップS5で生成された第2断層画像P6とを合成する。第1/第2断層画像P4、P6において同じ画素における両方の画素値を単純に加算することで、断層画像P4、P6同士を単純に加算して合成してもよいし、第2断層画像P6に対して閾値処理を行ったものを第1断層画像P4と加算して合成してもよい。また、必要に応じて各断層画像P4、P6の各画素値に係数を乗じて加算して合成してもよい。合成された断層画像を、
図3に示すように合成断層画像P7とする。合成断層画像P7は、この発明における(断層画像合成工程で合成された)断層画像に相当する。このステップS6は、この発明における断層画像合成工程に相当する。
【0051】
本実施例に係る放射線断層画像生成方法によれば、
複数の放射線画像(本実施例ではX線画像)のそれぞれを、当該放射線画像(X線画像)中における、関心領域を構成する物質(本実施例では生体を構成する物質)とは異質
の物質(本実施例では金属などの高密度な物質)
が投影された領域の画素値(本実施例では補間前投影データP2
の画素値)を
、ステップS2の領域補間では
、その周辺領域
の画素値に基づいて補間して、
複数の補間画像(本実施例では補間後投影データP3)を生成する。そして、ステップS3の第1断層画像生成では、
複数の補間画像(補間後投影データP3)から断層画像(本実施例では第1断層画像P4)を生成する。
複数の放射線画像(X線画像)のそれぞれを、当該放射線画像(X線画像)中における、関心領域を構成する物質とは異質の
物質が投影された領域の画素値(補間前投影データP2
の画素値)
がステップS2の領域補間で補間
されて、複数の補間画像(本実施例では補間後投影データP3)が生成されるので、
複数の補間画像
(補間後投影データP3)からステップS3の第1断層画像生成で断層画像(第1断層画像P4)を生成すれば、当該異質
の物質(本実施例では金属)
が投影された領域におけるアーティファクトが抑えられ、異質の
物質が投影された領域付近(金属等の領域付近)での関心領域(本実施例では生体組織)の観察が可能となる。その結果、高空間分解能を維持しつつ、アーティファクトを低減させることができる。
【0052】
本実施例の放射線断層画像生成方法において、取得された放射線画像(X線画像の投影データP1)と補間画像(補間後投影データP3)との差分から異質の投影データである異質投影データ(本実施例では金属等投影データP5)を生成するステップS4の金属等投影データ生成と、そのステップS4の金属等投影データ生成で生成された異質投影データ(金属等投影データP5)から断層画像(本実施例では第2断層画像P6)を生成するステップS5の第2断層画像生成と、上述のステップS3の第1断層画像生成で生成された断層画像(第1断層画像P4)とステップS5の第2断層画像生成で生成された断層画像(第2断層画像P6)とを合成するステップS6の断層画像合成とを備えるのが好ましい。放射線画像(X線画像の投影データP1)が異質の部分(金属等)を含んだデータであり、補間画像(補間後投影データP3)が異質の領域(金属等の領域)を補間したデータであることから、放射線画像(X線画像の投影データP1)と補間画像(補間後投影データP3)との差分から生成される投影データは、異質の領域(金属等の領域)のみの投影データ(すなわち異質投影データ:本実施例では金属等投影データP5)となる。したがって、ステップS5の第2断層画像生成で異質投影データ(金属等投影データP5)から断層画像(第2断層画像P6)を生成すると、その生成された断層画像(第2断層画像P6)は異質の領域(金属等の領域)のみの断層画像となる。その結果、ステップS6の断層画像合成でステップS3、S5の第1/第2断層画像生成で生成された両方の断層画像(第1/第2断層画像P4、P6)を合成すると、アーティファクトを低減させつつ、関心領域内において異質の領域(金属等の領域)とそれ以外の領域(本実施例では生体組織)との境界が明瞭となる。
【0053】
上述のステップS5の第2断層画像生成でFBP法により異質投影データ(金属等投影データP5)から断層画像(第2断層画像P6)を生成すると、断層画像(第2断層画像P6)の画素値が負の値になる可能性がある。そこで、ステップS5の第2断層画像生成では、FBP法により生成された断層画像の画素値が、設定された基準値(例えば画素値が“0”あるいは正の値)よりも低くなる領域の当該画素値を基準値に置き換えて断層画像を第2断層画像P6として生成する。そして、ステップS6の断層画像合成では、ステップS3の第1断層画像生成で生成された断層画像(第1断層画像P4)とステップS5の第2断層画像生成で基準値に置き換えられた断層画像(第2断層画像P6)とを合成する。その結果、ステップS5の第2断層画像生成でFBP法により異質投影データ(金属等投影データP5)から断層画像(第2断層画像P6)を生成しても、断層画像(第2断層画像P6)の画素値が負の値になることなく、関心領域内において異質の領域(金属等の領域)とそれ以外の領域(生体組織)との境界が明瞭となりつつ自然な断層画像(本実施例では合成断層画像P7)を生成することができる。
【0054】
図2のフローチャートでも述べたように、ステップS5の第2断層画像生成では、逐次近似法により断層画像(第2断層画像P6)を生成してもよい。この場合において、ステップS3の第1断層画像生成でFBP法と組み合わせてもよい。すなわち、ステップS3の第1断層画像生成では、FBP法により断層画像(第1断層画像P4)を生成し、ステップS6の断層画像合成では、ステップS3の第1断層画像生成でFBP法により生成された断層画像(第1断層画像P4)とステップS5の第2断層画像生成で逐次近似法により生成された断層画像(第2断層画像P6)とを合成する。
【0055】
同様に、ステップS3の第1断層画像生成では、FBP法により断層画像(第1断層画像P4)を生成してもよいし、逐次近似法により断層画像(第1断層画像P4)を生成してもよい。
【0056】
上述
の放射線画像(X線画像)の投影データ(投影データP1)
に基づいて異質の
物質が投影された投影データ(補間前投影データP2)を
生成して、当該投影データを上述のステップS2の領域補間で補間してもよいし
、放射線画像(X線画像)の投影データ(投影データP1)から断層画像を生成し、
当該断層画像
に基づいて異質の
物質に対応する画素値を有した断層画像(補間前断層画像)を
生成して、
当該異質の
物質に対応する画素値を有した断層画像(補間前断層画像)を順投影して投影データを生成することによって、
異質の物質が投影された投影データ
(補間前投影データP2)
を生成して、当該投影データを上述のステップS2の領域補間で補間してもよい。
【0057】
本実施例に係る放射線断層画像生成プログラムは、被検体Mに対して互いに異なる方向からそれぞれ照射された放射線ビーム(本実施例ではX線ビーム)によって取得された複数の放射線画像(X線画像)に基づいて断層画像を生成する放射線断層画像生成をコンピュータ(
図1では画像処理部9のCPU)に実行させるための放射線断層画像生成プログラムであって、
図2の各ステップS1〜S6での処理をコンピュータ(画像処理部9のCPU)に実行させている。
【0058】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0059】
(1)上述した実施例では、放射線としてX線を例に採って説明したが、X線以外の放射線(例えばγ線など)に適用してもよい。したがって、核医学診断装置において放射性薬剤と同種の放射線を外部線源から被検体に対して照射して、トランスミッションデータを取得する場合においても適用することができる。
【0060】
(2)上述した実施例では、
図1や
図7のように直線走査の断層撮影装置に用いたが、
図8に示すような円操作の断層撮影装置に適用してもよい。
【0061】
(3)上述した実施例では、被検体として人体を例に採って説明し、被検体中の関心領域を構成する物質として生体を構成する物質を例に採って説明し、異質の部分として、金属製人工関節、創外固定器、歯の詰め物等の高密度な物質を例に採って説明したが、低密度な物質を撮影する場合においても適用してもよい。また、被検体が人体以外の場合(例えば非破壊検査装置などに用いられる検査対象物が被検体の場合)には、
複数の放射線画像のそれぞれを、当該放射線画像中における、関心領域を構成する物質とは異質の
物質が投影された画像を
生成する場合においても、高密度、低密度如何を問わずに適用することができる。
【0062】
(4)上述した実施例では、
図2のフローチャートでは、ステップS4(金属等投影データ生成)、ステップS5(第2断層画像生成)およびステップS6(断層画像合成)とステップS4〜S6を行い、
図3では、金属等投影データP5および第2断層画像P6を生成して、第1/第2断層画像P4、P6を合成して合成断層画像P7を生成したが、関心領域内において異質の領域とそれ以外の領域(実施例では生体組織)との境界を確認する必要がなければ、必ずしもステップS4〜S6を行う必要はない。
図5のフローチャートに示すように、ステップS1(
補間前投影データ生成)、ステップS2(領域補間)およびステップS3(第1断層画像生成)を最低限に行い、
図6において、補間前投影データP2、補間後投影データP3および第1断層画像P4のみを生成してもよい。
図5の各ステップS1〜S3および
図6の各画像や各データについては、上述した実施例の
図2の各ステップS1〜S3および
図3の各画像や各データと同じであるので、その説明を省略する。