(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係るX線撮影装置の概略ブロック図であり、
図2は、X線撮影装置のX線変換層周辺の概略断面図である。本実施例では、入射する放射線としてX線を例に採って説明するとともに、撮像装置としてX線撮影装置を例に採って説明する。
【0018】
本実施例に係るX線撮影装置は、被検体にX線を照射して撮像を行う。具体的には、被検体を透過したX線像がX線変換層(本実施例ではCdTeまたはCdZnTe)上に投影されて、像の濃淡に比例したキャリア(電荷情報)が層内に発生することでキャリアに変換される。
【0019】
X線撮影装置は、
図1に示すように、後述するゲートラインGを選択するゲート駆動回路1と、X線変換層23(
図2を参照)で変換されたキャリアを蓄積して読み出すことでX線を検出する検出素子用回路2と、その検出素子用回路2で読み出されたキャリアを電圧に変換した状態で増幅する電荷電圧変換アンプ3と、その電荷電圧変換アンプ3で増幅された電圧のアナログ値からディジタル値に変換するA/D変換器4と、そのA/D変換器4でディジタル値に変換された電圧値に対して信号処理を行って画像を得る画像処理部5と、これらの回路1,2や電荷電圧変換アンプ3やA/D変換器4や画像処理部5や後述するメモリ部7やモニタ9などを統括制御するコントローラ6と、処理された画像などを記憶するメモリ部7と、入力設定を行う入力部8と、処理された画像などを表示するモニタ9とを備えている。本明細書では、キャリアや画像などの情報を、画像に関する画像情報とする。X線変換層23は、この発明における検出膜に相当し、検出素子用回路2は、この発明における検出器に相当する。
【0020】
ゲート駆動回路1は複数のゲートラインGに電気的に接続されている。ゲート駆動回路1から各ゲートラインGに電圧を印加することで、後述する薄膜トランジスタ(TFT)TrをONにして後述するコンデンサCaに蓄積されたキャリアの読み出しを開放し、各ゲートラインGへの電圧を停止する(電圧を−10Vにする)ことで、薄膜トランジスタTrをOFFにしてキャリアの読み出しを遮断する。なお、各ゲートラインGに電圧を印加することでOFFにしてキャリアの読み出しを遮断し、各ゲートラインGへの電圧を停止することでONにしてキャリアの読み出しを開放するように、薄膜トランジスタTrを構成してもよい。
【0021】
検出素子用回路2は、2次元状に配列した複数のゲートラインGおよびデータラインDで構成されているとともに、キャリアを蓄積するコンデンサCaおよびそのコンデンサCaに蓄積されたキャリアをON/OFFの切り換えで読み出す薄膜トランジスタTrを2次元状に配列して構成されている。ゲートラインGは、各々の薄膜トランジスタTrのON/OFF切り換えを制御し、かつ各々の薄膜トランジスタTrのゲートに電気的に接続されている。データラインDは、薄膜トランジスタTrの読み出し側に電気的に接続されている。
【0022】
説明の便宜上、本実施例では、縦・横式2次元マトリックス状配列で10×10個の薄膜トランジスタTrおよびコンデンサCaが形成されているとする。すなわち、ゲートラインGは、10本のゲートラインG1〜G10からなり、データラインDは、10本のデータラインD1〜D10からなる。各ゲートラインG1〜G10は、
図1中のX方向に並設された10個の薄膜トランジスタTrのゲートにそれぞれ接続され、各データラインD1〜D10は、
図1中のY方向に並設された10個の薄膜トランジスタTrの読み出し側にそれぞれ接続されている。薄膜トランジスタTrの読み出し側とは逆側にはコンデンサCaが電気的に接続されており、薄膜トランジスタTrとコンデンサCaとの個数が一対一に対応する。
【0023】
また、検出素子用回路2は、
図2に示すように、検出素子DUが2次元マトリックス状配列で絶縁基板21にパターン形成されている。すなわち、絶縁基板21の表面に、各種真空蒸着法による薄膜形成技術やフォトリソグラフィ法によるパターン技術を利用して、上述したゲートラインG1〜G10およびデータラインD1〜D10を配線し、薄膜トランジスタTr,コンデンサCa,キャリア収集電極22,X線変換層23および電圧印加電極24を順に積層形成することで構成されている。検出素子DUは、この発明における検出素子に相当する。
【0024】
X線変換層23は、X線感応型の半導体厚膜(検出膜)で形成されており、本実施例では、CdTe(テルル化カドミウム)またはCdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛)で形成された半導体層で形成されている。X線変換層23は、X線の入射によりX線の情報を電荷情報であるキャリアに変換する。なお、X線変換層23は、X放射線の入射によりキャリアが生成されるX線感応型の物質であれば、CdTeやCdZnTeに限定されない。また、X線以外の放射線(γ線など)を入射して撮像を行う場合には、X線変換層23の替わりに、放射線の入射によりキャリアが生成される放射線感応型の物質を用いてもよい。また、光を入射して撮像を行う場合には、X線変換層23の替わりに、光の入射によりキャリアが生成される光感応型の物質を用いてもよい。
【0025】
キャリア収集電極22は、コンデンサCaに電気的に接続されており、X線変換層23で変換されたキャリアを収集してコンデンサCaに蓄積する。このキャリア収集電極22も、薄膜トランジスタTrおよびコンデンサCaと同様に、縦・横式2次元マトリックス状配列で多数個(本実施例では10×10個)形成されている。それらキャリア収集電極22,コンデンサCaおよび薄膜トランジスタTrが各検出素子DUとしてそれぞれ分離形成されている。また、電圧印加電極24は、全検出素子DUの共通電極として全面にわたって形成されている。
【0026】
このように、検出素子DUなどが2次元マトリックス状配列でパターン形成した絶縁基板21、X線変換層23および電圧印加電極24を順に積層形成している。これらのX線変換層23を含んだ検出素子用回路2はフラットパネル型X線検出器(FPD: Flat Panel Detector)とも呼ばれている。
【0027】
本実施例では、その他に、X線変換層23の温度を測定する温度センサ10を備えている。温度センサ10による測定結果をコントローラ6に送り込む。温度センサ10を備えることで、検出素子用回路2を使用する温度、ひいては環境温度を測定する。
【0028】
X線変換層23の温度を測定するには、
図2に示すように検出有効エリア(図示省略)から外れた端部において電圧印加電極24に温度センサ10を設ける。具体的には、
図2(a)に示すように電圧印加電極24中に温度センサ10を埋め込んでもよいし、
図2(b)に示すように電圧印加電極24上に温度センサ10を積層してもよい。なお、X線変換層23中に温度センサを埋め込む、あるいはX線変換層23上に温度センサ10を積層してもよい。
【0029】
画像処理部5は、A/D変換器4でディジタル値に変換された電圧値に対して各種の信号処理を行って画像を求める。コントローラ6は、回路1,2や電荷電圧変換アンプ3やA/D変換器4や画像処理部5や後述するメモリ部7やモニタ9などを統括制御し、本実施例では後述する検出膜特性とバイアス電圧との相関関係、および設定すべき検出膜特性に基づいて、バイアス電圧を設定制御する機能(バイアス電圧設定制御の機能)をも備えている。画像処理部5およびコントローラ6は、中央演算処理装置(CPU)や、プログラマブルロジックデバイス(FPGA)などの組み合わせで構成されている。コントローラ6は、この発明におけるバイアス電圧設定制御手段に相当する。
【0030】
メモリ部7は、画像情報などを書き込んで記憶し、コントローラ6からの読み出し指令に応じて画像情報などがメモリ部7から読み出される。メモリ部7は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体などで構成されている。なお、画像情報の書き込みにはRAMが用いられ、例えば制御シーケンスに関するプログラムの読み出しによって制御シーケンスをコントローラ6に実行させる場合には、制御シーケンスに関するプログラムの読み出し専用にはROMが用いられる。本実施例では、上述の相関関係、および設定すべき検出膜特性に基づいて、バイアス電圧を設定制御する制御シーケンスに関するプログラムをメモリ部7に記憶させ、そのプログラムの読み出しによって制御シーケンスをコントローラ6に実行させる。
【0031】
その他に、メモリ部7は、上述の相関関係を予め記憶した相関関係メモリ部7aを備えている。相関関係メモリ部7aは、この発明における相関関係記憶手段に相当する。
【0032】
入力部8は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイス、あるいはボタンやスイッチやレバーなどの入力手段で構成されている。入力部8に入力設定すると、入力設定データがコントローラ6に送り込まれ、入力設定データに基づいて回路1,2や電荷電圧変換アンプ3やA/D変換器4や画像処理部5やメモリ部7やモニタ9などが制御される。
【0033】
続いて、本実施例のX線撮影装置の制御シーケンスについて説明する。電圧印加電極24に高電圧(例えば数10V〜数100V程度)のバイアス電圧V
Aを印加した状態で、検出対象であるX線を入射させる。なお、バイアス電圧V
Aについては、後述する説明から明らかなように、一定の値でなく、コントローラ6によって選択されて設定制御される。
【0034】
X線の入射によってX線変換層23でキャリアが生成されて、そのキャリアが電荷情報としてキャリア収集電極22を介してコンデンサCaに蓄積される。ゲート駆動回路1の信号(ここではキャリア)読み出し用の走査信号(すなわちゲート駆動信号)によって、対象となるゲートラインGが選択される。本実施例では、ゲートラインG1,G2,G3,…,G9,G10の順に1つずつ選択されるものとして説明する。また、ゲート駆動回路1からの信号読み出し用の走査信号は、ゲートラインGに電圧(例えば15V程度)を印加する信号である。
【0035】
ゲート駆動回路1から対象となるゲートラインGを選択して、選択されたゲートラインGに接続されている各薄膜トランジスタTrが選択指定される。この選択指定で選択指定された薄膜トランジスタTrのゲートに電圧が印加されてON状態となる。その選択指定された各薄膜トランジスタTrに接続されているコンデンサCaから蓄積されたキャリアが、選択指定されてON状態に移行した薄膜トランジスタTrを経由して、データラインDに読み出される。すなわち、選択されたゲートラインGに関する検出素子DUが選択指定されて、その選択指定された検出素子DUのコンデンサCaに蓄積されたキャリアが、データラインDに読み出される。
【0036】
具体的には、データラインDに接続されている電荷電圧変換アンプ3がリセットされて、さらに薄膜トランジスタTrがON状態(すなわちゲートがON)に移行することで、キャリアがデータラインDに読み出され、電荷電圧変換アンプ3にて電圧に変換された状態で増幅される。
【0037】
つまり、各検出素子DUのアドレス(番地)指定は、ゲート駆動回路1からの信号読み出し用の走査信号と、データラインDに接続されている電荷電圧変換アンプ3の選択とに基づいて行われる。
【0038】
先ず、ゲート駆動回路1からゲートラインG1を選択して、選択されたゲートラインG1に関する検出素子DUが選択指定されて、その選択指定された検出素子DUのコンデンサCaに蓄積されたキャリアが、全データラインD同時に読み出されて、サンプルホールド後にデータラインD1〜D10の順にA/D変換器4にてディジタル値に変換される。次に、ゲート駆動回路1からゲートラインG2を選択して、同様の手順で、選択されたゲートラインG2に関する検出素子DUが選択指定されて、その選択指定された検出素子DUのコンデンサCaに蓄積されたキャリアが、全データラインD同時に読み出されて、サンプルホールド後にデータラインD1〜D10の順にA/D変換器4にてディジタル値に変換される。残りのゲートラインGについても同様に順に選択することで、2次元状のキャリアを読み出す。
【0039】
読み出された各キャリアは電荷電圧変換アンプ3で電圧に変換された状態でそれぞれ増幅されて、A/D変換器4でアナログ値からディジタル値に変換される。このディジタル値に変換された電圧値に基づいて、画像処理部5は各種の信号処理を行って、2次元状の画像を得る。得られた2次元状の画像やキャリアなどに代表される画像情報は、コントローラ6を介してメモリ部7に書き込まれて記憶され、必要に応じてコントローラ6を介してメモリ部7から読み出される。また、画像情報は、コントローラ6を介してモニタ9に表示される。
【0040】
次に、検出膜特性とバイアス電圧との相関関係、およびバイアス電圧設定制御の機能について、
図3および
図4を参照して説明する。
図3(a)は、温度毎のダイナミックレンジとバイアス電圧との相関関係のテーブルであり、
図3(b)は、空間解像度とバイアス電圧との相関関係のテーブルであり、
図4(a)は、温度毎のダイナミックレンジとバイアス電圧との相関関係を概略的に示したグラフであり、
図4(b)は、空間解像度とバイアス電圧との相関関係を概略的に示したグラフである。
【0041】
検出素子用回路2(
図1、
図2を参照)における検出膜特性と、その検出素子用回路2(の電圧印加電極24(
図2を参照))に印加するバイアス電圧との相関関係を相関関係メモリ部7a(
図1を参照)に書き込んで記憶する。検出膜特性としては、検出膜に相当するX線変換層23(
図2を参照)に依存する特性であれば特に限定されず、本実施例ではダイナミックレンジ(DR: dynamic range)および空間解像度(MTF: Modulation Transfer Function)を例に採って説明する。
【0042】
本実施例では、検出素子用回路2をも含んだX線撮影装置の出荷時に、印加されるバイアス電圧の最適値を、個々の装置で取得された画像のダイナミックレンジや空間解像度と対応付けることで、ダイナミックレンジとバイアス電圧との相関関係を相関関係メモリ部7aに書き込んで記憶するとともに、空間解像度とバイアス電圧との相関関係を相関関係メモリ部7aに書き込んで記憶する。相関関係メモリ部7aに書き込んで記憶する場合には、例えば
図3に示すテーブル形式で記憶してもよいし、
図4に示す近似式のプログラムとして記憶してもよい。
【0043】
図3に示すテーブル形式で記憶する場合で、温度毎のダイナミックレンジとバイアス電圧との相関関係を相関関係メモリ部7aに書き込んで記憶するときには、
図3(a)に示すように行う。具体的には、
図3(a)に示すように、環境温度T
1においてバイアス電圧V
1とダイナミックレンジDR
11とを対応付け、環境温度T
1においてバイアス電圧V
2とダイナミックレンジDR
12とを対応付け、以下同様にして環境温度T
1において各バイアス電圧と各ダイナミックレンジとをそれぞれ対応付けることで、環境温度T
1毎のダイナミックレンジとバイアス電圧との相関関係をテーブル形式で記憶する。同様に、
図3(a)に示すように、環境温度T
2においてバイアス電圧V
1とダイナミックレンジDR
21とを対応付け、環境温度T
2においてバイアス電圧V
2とダイナミックレンジDR
22とを対応付け、以下同様にして環境温度T
2において各バイアス電圧と各ダイナミックレンジとをそれぞれ対応付けることで、環境温度T
2毎のダイナミックレンジとバイアス電圧との相関関係をテーブル形式で記憶する。同様に、
図3(a)に示すように、環境温度T
3においてバイアス電圧V
1とダイナミックレンジDR
31とを対応付け、環境温度T
3においてバイアス電圧V
2とダイナミックレンジDR
32とを対応付け、以下同様にして環境温度T
3において各バイアス電圧と各ダイナミックレンジとをそれぞれ対応付けることで、環境温度T
3毎のダイナミックレンジとバイアス電圧との相関関係をテーブル形式で記憶する。
【0044】
一方、
図3に示すテーブル形式で記憶する場合で、空間解像度とバイアス電圧との相関関係を相関関係メモリ部7aに書き込んで記憶するときには、
図3(b)に示すように行う。具体的には、
図3(b)に示すように、バイアス電圧V
1と空間解像度MTF
11とを対応付け、バイアス電圧V
2と空間解像度MTF
12とを対応付け、以下同様にして各バイアス電圧と各空間解像度とをそれぞれ対応付けることで、空間解像度とバイアス電圧との相関関係をテーブル形式で記憶する。
【0045】
また、
図3に示すテーブル形式以外の検出膜特性(ダイナミックレンジや空間解像度)を参照してバイアス電圧を設定制御する場合には、最も近い値の検出膜特性を参照してバイアス電圧を設定制御する。あるいは、テーブル形式で記憶された相関関係からバイアス電圧を補間してもよい。例えば、相関関係が
図4に示すような一次式の関係で表される場合において、ダイナミックレンジDR
11とDR
12との中間値のダイナミックレンジ(DR
11+DR
12)/2からバイアス電圧を設定制御する場合には、ダイナミックレンジDR
11,DR
12に対応したバイアス電圧V
1とV
2との中間値の(V
1+V
2)/2をバイアス電圧として求めて、その求められたバイアス電圧(V
1+V
2)/2の値に設定制御すればよい。
【0046】
図3に示すテーブル形式では、離散的な値の集合であるので、
図4に示すような関数で近似して、その近似式のプログラムを相関関係メモリ部7aに書き込んで記憶してもよい。このように近似式のプログラムを記憶することにより連続的な値でバイアス電圧を設定制御することが可能である。なお、近似式については最小自乗法などを用いて求めればよい。また、近似式については、
図4に示すような一次式の関係に限定されず、二次式以上の多項式であってもよいし、部分的に指数関数や三角関数や対数関数などでそれぞれ近似してもよい。
【0047】
図4(a)に示すようにバイアス電圧Vが高くなるとダイナミックレンジDRは低下するが、
図4(b)に示すように空間解像度MTFは高くなって、空間解像度の良い画像を撮影して取得することができる。また、環境温度をT
1<T
2<T
3とすると、
図4(a)に示すように、環境温度が相対的に低い(例えばT
1)場合に比較すると、環境温度が相対的に高い(例えばT
3)と、同じバイアス電圧Vではリーク電流が減少して、逆にダイナミックレンジDRは上昇する。
【0048】
上述したように、バイアス電圧Vが高いほど空間解像度MTFは高くなって空間解像度の特性は良くなるが、最低限保つべきダイナミックレンジDRの値(
図4(a)ではDR
bottom)を考慮して、X線撮影装置や検出素子用回路2の使用が想定される複数の環境温度T
1,T
2,T
3(例えば標準設定温度の−5℃〜+5℃)それぞれにおいて最適なバイアス電圧(例えば
図4(a)ではV
1,V
2,V
3)を算出しておくことで、使用環境に応じてバイアス電圧を変更することが可能である。なお、
図3中のバイアス電圧V
1,V
2,V
3と
図4中のバイアス電圧V
1,V
2,V
3とはそれぞれ別の値であることに留意されたい。
【0049】
このようにして、
図3あるいは
図4に示す相関関係を用いて、出荷後の使用時において、設定すべき検出膜特性(例えば
図4(a)中のDR
bottom)に応じてコントローラ6(
図1を参照)がバイアス電圧を設定制御する。最低限保つべきダイナミックレンジDRの値としてDR
bottomを設定した場合には、
図4(a)に示すように環境温度T
1のときにV
1の値をバイアス電圧として選択して設定制御する。同様に、環境温度T
2のときにV
2の値をバイアス電圧として選択して設定制御する。同様に、環境温度T
3のときにV
3の値をバイアス電圧として選択して設定制御する。
【0050】
なお、環境温度が未知の場合には、温度センサ10(
図2を参照)によってX線変換層23の温度を測定すればよい。環境温度が既知の場合には、入力部8(
図1を参照)により環境温度の値を入力すればよい。このようにして、コントローラ6がバイアス電圧を設定制御すれば、設定制御されたバイアス電圧で印加すると、その設定すべきダイナミックレンジDR
bottomが所望のダイナミックレンジになる。設定すべき空間解像度に応じてバイアス電圧を設定制御する場合も、ダイナミックレンジに応じてバイアス電圧を設定制御する場合と手法が同じであるので、その説明を省略する。
【0051】
上述した本実施例に係るX線撮影装置によれば、検出膜特性(本実施例ではダイナミックレンジおよび空間解像度)とバイアス電圧との相関関係を記憶する相関関係メモリ部7aを備え、相関関係メモリ部7aに記憶された検出膜特性(ダイナミックレンジおよび空間解像度)とバイアス電圧との相関関係、および設定すべき検出膜特性(ダイナミックレンジおよび空間解像度)に基づいて、バイアス電圧を設定制御するバイアス電圧設定制御の機能をコントローラ6は備えている。このように相関関係メモリ部7aおよびバイアス電圧設定制御の機能を備えることで、相関関係メモリ部7aに記憶された検出膜特性(ダイナミックレンジおよび空間解像度)とバイアス電圧との相関関係を用いて、設定すべき検出膜特性(ダイナミックレンジおよび空間解像度)に応じてバイアス電圧設定制御の機能がバイアス電圧を設定制御すれば、設定制御されたバイアス電圧で印加すると、その設定すべき検出膜特性(ダイナミックレンジおよび空間解像度)が所望の検出膜特性(ダイナミックレンジおよび空間解像度)になる。その結果、所望の検出膜特性(ダイナミックレンジおよび空間解像度)を得ることができる。
【0052】
本実施例のように、検出膜特性(例えばダイナミックレンジ)が、検出器(検出素子用回路2)を使用する温度(例えば環境温度)にも依存する場合には、好ましくは、相関関係メモリ部7aは、検出膜特性(ダイナミックレンジ)とバイアス電圧との相関関係の他に、
図3(a)あるいは
図4(a)に示すように、さらに温度との相関関係を記憶し、検出器(検出素子用回路2)を使用する温度に基づいて、バイアス電圧設定制御の機能はバイアス電圧を設定制御している。例えば、検出器(検出素子用回路2)の使用が想定される複数の環境温度(例えば標準設定温度の−5℃〜+5℃)毎に最適なバイアス電圧を設定制御することで、使用環境に応じて設定変更できるようにする。
【0053】
本実施例では、検出膜特性が温度にも依存する場合として、リーク電流に関連したダイナミックレンジを例に採って説明している。したがって、本実施例では、好ましくは、相関関係メモリ部7aは、ダイナミックレンジとバイアス電圧との相関関係の他に、
図3(a)あるいは
図4(a)に示すように、さらに温度との相関関係を記憶している。
【0054】
本実施例では、検出器(検出素子用回路2)における検出膜(本実施例ではX線変換層23)として、CdTe(テルル化カドミウム)またはCdZnTe(テルル化カドミウム亜鉛)で形成された半導体層を例に採って説明している。
【0055】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0056】
(1)上述した実施例では、
図1に示すようなX線撮影装置を例に採って説明したが、この発明は、例えばC型アームに配設されたX線透視撮影装置にも適用してもよい。また、この発明は、X線CT装置にも適用してもよい。
【0057】
(2)上述した実施例では、入射したX線に代表される放射線をX線変換層(変換層)によって電荷情報に直接に変換した、「直接変換型」の検出素子用回路をこの発明は適用したが、入射した放射線をシンチレータなどの変換層によって光に変換し、光感応型の物質で形成された変換層によってその光を電荷情報に変換する「間接変換型」の検出素子用回路をこの発明は適用してもよい。
【0058】
(3)上述した実施例では、X線を検出するための検出素子用回路を例に採って説明したが、この発明は、ECT(Emission Computed Tomography)装置のように放射性同位元素(RI)を投与された被検体から放射されるγ線を検出するための検出素子用回路に例示されるように、放射線を検出する検出素子用回路であれば特に限定されない。同様に、この発明は、上述したECT装置に例示されるように、放射線の入射により撮像を行う装置であれば特に限定されない。
【0059】
(4)上述した実施例では、X線などに代表される放射線撮像を例に採って説明したが、この発明は、光の入射により撮像を行う装置にも適用することができる。
【0060】
(5)上述した実施例では、電圧印加電極24は
図2に示すような構造であったが、例えば支持基板と電圧印加電極とを兼用したグラファイト基板を備えた構造にもこの発明は適用することができる。
【0061】
(6)上述した実施例では、検出膜特性として、ダイナミックレンジおよび空間解像度を例に採って説明したが、上述したように検出膜に依存する特性であれば特に限定されない。例えば、これら以外にも、検出膜特性としては、リーク電流や(電荷に関する)感度や(時間的な)応答などであってもよい。特に、検出膜特性がリーク電流の場合には、ダイナミックレンジと同様に、リーク電流とバイアス電圧との相関関係の他に、
図5に示すように、さらに温度との相関関係を記憶してもよい。
図5の場合には、バイアス電圧Vが高いほどリーク電流Lは高くなる。また、環境温度が相対的に低い(例えばT
1)場合に比較すると、環境温度が相対的に高い(例えばT
3)と、同じバイアス電圧Vではリーク電流Lは増加する。
【0062】
(7)上述した実施例では、出荷時に検出膜特性とバイアス電圧との相関関係を相関関係メモリ部7aに書き込んで記憶したが、出荷後の使用時に検出膜特性とバイアス電圧との相関関係を記憶することで出荷後の使用時の相関関係に書き換え可能に相関関係メモリ部7aを構成してもよい。したがって、相関関係が経年変化した場合においても、対応することができる。