(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のアンカーは、前記アンカーの前記延出部の他端が軸方向に沿って揃っており、前記管状ヒータが水平配置された際に、前記アンカーの前記延出部の他端が下方になるように形成されている請求項1に記載の管状ヒータ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の管状ヒータについて、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態の管状ヒータについて説明するための図、
図2は、第1の実施形態の管状ヒータの一部分について説明するための図、
図3は、第1の実施形態の管状ヒータの断面について説明するための図である。
【0009】
管状ヒータ1は、主要部として例えば石英ガラスからなるガラス管10を備えている。ガラス管10は、全長が例えば1900mmである細長い管であり、筒状部11とシール部12とで構成されている。筒状部11は、ガラス管10の大部分を占める外径が例えば12mmの円筒状の部分である。その一部には、ガラス管10内の排気・ガス導入を行うために用いられたチップ111が形成されている。シール部12は、例えば幅が12.5mmの板状の封着部であり、筒状部11の両端にピンチシールにより形成されている。なお、シール部12は、シュリンクシールにより形成された円柱状であってもよい。
【0010】
ガラス管10の内部には空間13が形成されている。この空間13には、例えば、微量の臭素、ヨウ素などのハロゲン物質や、アルゴン、ネオン、窒素などのガスが封入されている。
【0011】
シール部12の内部には、金属箔2が封着されている。金属箔2は例えばモリブデンからなる薄板であり、シール部12の板状面に沿うように配置されている。
【0012】
ガラス管10の内部にはフィラメント3が設けられている。フィラメント3は、例えばタングステンからなる金属線であり、主部31とレグ部32とで構成されている。主部31は、点灯時に発熱する部分であり、その長さは例えば1800mmであり、空間13に配置されている。レグ部32は、主部31に電力を給電する部分であり、主部31の両端に位置され、金属箔2と接続されている。
【0013】
また、ガラス管10の内部にはサポート部材としてアンカー4が設けられている。アンカー4は、例えばタングステンからなる金属線であり、係止部41と延出部42と保持部43とで構成されている。係止部41は、フィラメント3の主部31と接続される部分であり、主部31の周回りに数ターン巻きつけられている。延出部42は、係止部41の一端により構成された部分であり、ガラス管10の筒状部11の管壁方向に延出されている。保持部43は、延出部42の他端により構成された部分であり、管壁近傍の延出部42から管壁面に沿うように設けられている。このようなアンカー4は第一ピッチ(約16mm)と第二ピッチ(約29mm)を保つように、管軸方向に複数設けられ、フィラメント3の主部31を空間13の略中央に位置するように支持している。
【0014】
金属箔2のレグ部32が接続されていない側には、2本のリード線5が接続されている。リード線5は、例えばモリブデンやタングステンなどからなる金属線であり、他端側は管軸に沿うように、シール部12から導出されている。
【0015】
ここで、本実施形態では、アンカー4の保持部43は、ガラス管10の筒状部11の中心をCとしたとき、その中心Cを基準とする保持部43の範囲(中心角α)が180°≦α<360°を満たす円弧となっている。例えば、
図3に示すように、中心角αが270°の優弧である。つまり、保持部43の自由端側は、固定端側、すなわち延出部42と保持部43の境界部44までは至っていない。このようなアンカー4が管軸に沿って複数設けられている。
【0016】
この実施例1の管状ヒータ1を製造および点灯したところ、フィラメント3の位置が軸線上からずれたり、点灯中にフィラメント3が撓んだりする等の不具合は特に発生しなかった。その一方で、保持部43において金属線を1.5周程度は巻回していた従来の管状ヒータと比較して、アンカー一個あたりで数cmの削減ができた。つまり、アンカーを数十個設けた場合にはアンカーに用いる金属線を1m程度の削減も可能となるため、軽量化や部材コストの削減をすることができた。
【0017】
次に、アンカー4の保持部43の中心角αを変化させたときのフィラメント3の保持機能について試験を行った。その結果を
図4に示す。
【0018】
結果から、中心角αが90°ではフィラメント3の保持機能が不十分であるが、中心角αが180°以上であれば保持機能は特段問題ないことがわかる。中心角αが90°の場合に保持機能が不十分となったのは、保持部43がガラス管内壁に接触しにくくなる場合があるためである。なお、中心角αが360°でもフィラメント3の保持が可能であるが、金属線の使用量の削減効果は薄い。したがって、保持部43は、筒状部11の中心Cによる中心角αが180°≦α<360°を満たすのが望ましい。
【0019】
なお、このような管状ヒータ1では、点灯中の筒状部11の管壁において従来型の管状ヒータよりも温度差を大きくすることができるという付随効果が得られる。その結果を
図5に示す。
【0020】
図5は、実施例2と従来例の管状ヒータにおけるガラス管上下の温度について説明するための図である。なお、実施例2は、
図6(a)のように中心角αが180°のアンカーを、従来例は
図6(b)のように中心角αが360°のアンカーを、その向きをそろえて管軸方向に複数設けた管状ヒータである。温度はサーモビューアーを用いて測定している。
【0021】
結果から、従来例よりも実施例2の方が筒状部11の上部と下部の温度差が大きくなることがわかる。より詳しくは、実施例2でも従来例でも延出部42と保持部43の境界部分である境界部44近傍のガラス管壁で温度が高く、その反対側のガラス管壁で温度が低い結果となってはいるものの、それらの温度差は実施例2の方が大きい。これは、フィラメント3の熱は、延出部42を介して境界部44に伝わり、その境界部44から保持部43に伝わっていくが、実施例2では一本の金属線を介して熱が境界部44の反対側に伝わっていくのに対し、従来例では中心角αが360°であるため、二本の金属線を介して熱が境界部44の反対側に伝わっていくためである。つまり、実施例2では延出部42を介して伝わるフィラメント3の熱がガラス管10の反面にしか伝わらないのに対し、従来例では全面に伝わるために、実施例は従来例よりも温度差が大きくなる結果となったと考えられる。なお、境界部44が下向きの方が上向きの場合によりも温度差が大きくなるのは、下向きのときは重力によって境界部44がガラス内壁に接触し、ガラス管10の下側がより加熱されやすいためである。この実施例2のランプのような、ガラス管壁の円周方向において温度勾配が形成される特性を利用することで、その境界部44の配置次第で、ある部分を集中的に加熱したり、反対に温度を下げたり、温度の均一性を高める加熱をしたりすることができる。なお、
図5のような結果は、中心角αが180°≦α<360°の場合には同様の結果が得られる。
【0022】
第1の実施形態においては、筒状部11の中心Cによる中心角αが180°≦α<360°を満たすように保持部43を形成したことで、フィラメント3を十分に保持しながら、アンカー4を構成する金属線の総使用量を大きく低減することができる。また、延出部42の他端である境界部44とその反対側のガラス管壁において温度差を生じさせることができるため、その特性を利用して集中的に加熱したり、反対に温度を下げたり、温度の均一性を高めた加熱をしたりすることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態の管状ヒータについて説明するための図である。この第2の実施形態の各部について、第1の実施形態の管状ヒータの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0024】
この実施形態では、ガラス管10の筒状部11の外表面の一部に、管軸に沿って反射膜6を形成している。この反射膜6は、シリカ、アルミナなどの酸化物をディップや吹き付け等の方法により形成した白色を呈する反射膜である。その筒状部11の円周における形成範囲は、
図8に示すように例えば180°であるが、目的にあわせて90°〜300°の範囲で変化させることが可能である。また、アンカー4の境界部44を、反射膜6が形成されたガラス管10を反射領域RAではなく、それ以外の領域である照射領域LA側に位置させている。
【0025】
反射膜6は、石英ガラスであるガラス管10と比較して耐熱性が低く、高温になるとガラス管10から剥がれやすくなるため、温度は低い方がよい。一方、反射膜6が形成されていないガラス管10の開口側は、被照射物を加熱する側なので、赤外線による加熱に加え、伝導・対流による加熱効果が生じさせるために、温度を高くした方がよい。上述したように、境界部44付近のガラス管壁は高温になり、反対側は低温になる傾向があるため、このような構造にすることで、反射膜6の剥離を抑制しつつ、加熱効率を高めることができる。
【0026】
第2の実施形態においては、ガラス管10の外表面に反射膜6を形成し、ガラス管10の円周における反射膜6が形成されたガラス管10の領域を反射領域RA、それ以外を照射領域LAとしたとき、アンカー4の境界部44を照射領域LA側に配置したことで、反射膜6の剥離を抑制しつつ、加熱効率を高めることができる。
【0027】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態の加熱装置について説明するための図である。
【0028】
定着装置は、筐体7と管状ヒータ1により構成されている。
【0029】
筐体7は、例えばステンレスからなるケースであり、壁部71とその端辺に接続される側壁部72とで構成されている。壁部71と対向する側には、開口部73が設けられている。
【0030】
管状ヒータ1は、第1の実施形態と同様のヒータであり、筐体7の内部空間に管軸が略平行になるように複数配置されている。
【0031】
その際、管状ヒータ1は、アンカー4の境界部44が壁部71に対向する領域である反射領域RAに位置し、開口部73に対向する領域である照射領域LAには位置しないように配置されている。通常、被照射体においては、管状ヒータ1の直下が温度高く、隣接する管状ヒータ1間の直下で温度低くなりやすいが、このような配置にすることで直下の温度を下げることができるため、被照射体の温度の不均一を緩和することができる。
【0032】
第3の実施形態においては、アンカー4の境界部44が壁部71側を向くように管状ヒータ1を配置したことで、被照射体の温度を均一化することができる。なお、被照射体への加熱に関し、温度が高いことが要求され、均一であることは要求されない場合には、境界部44が開口部73の方向に向くように管状ヒータ1を配置しても良い。
【0033】
本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0034】
フィラメント3の主部31は、全てコイル状の部分としているが、途中に単なる線状である非発光部を設けるようにしてもよい。この場合、アンカー4の保持部43は、コイル状の部分に設けるのがよい。その際、各コイル状の部分に取り付けるアンカー4の数は、1つでも複数であっても良い。
【0035】
保持部43は円弧に限らず、三角形状や四角形状などの多角形であってもよい。つまり、その角となる部分でガラス管10の内壁面と接触させるようにしてもよい。そのような形状であると、円形状と比較して、さらにアンカー4に使用する金属線の使用量を低減することが可能となる。
【0036】
境界部44は、複数のアンカー4のうち、すべてが必ずしも同じ方向を向いている必要はなく、ばらつき程度や全体のうちの数割程度は別の方向を向いていてもよい。例えば、第2の実施形態においては照射領域LA、第3の実施形態においては反射領域RAに、複数のアンカー4のうち、半分以上の境界部44が配置されていればよい。ただし、全てのアンカー4でほぼ同じ方向を向くように管理されるのが、反射膜6への伝熱を抑制したり、被照射体への温度不均一を抑制するうえで最適である。また、境界部44の方向をランダムにしてもよい。この配置であると、アンカー4によってフィラメント3を支持できない領域が連続して発生し、フィラメント3が撓むことを防止することができる。
【0037】
また、中心Cを基準とする保持部43の範囲(中心角α)は、180°≦α<360°を満たした円弧としたが、より好適には、225°≦α≦315°の円弧がよい。中心角αを225°以上としたのは、中心角αが180°の場合に、管状ヒータ1を水平配置した際に、保持部43が下方に存在しない状態となると、フィラメント3の自重による撓みを十分に抑制できないことがあり得るためである。また、中心角αを315°以下としたのは、中心角αが360°未満でかつ360°に近い場合に、アンカー4の製造時におけるばらつきによって、中心角αが360°以上となる場合があるため、アンカー4の製造時におけるバラツキを考慮して、点灯中の筒状部11の管壁において従来型の管状ヒータよりも温度差を大きくするという効果を得るためである。
【0038】
また、複数のアンカー4の境界部44を軸方向に沿って揃えてもよい。この場合は、管状ヒータ1を水平配置する際に、各アンカー4の境界部44が下方になるように配置する。好ましくは、境界部44と保持部43の自由端との間の開口部が上方になるように配置する。これにより、自重により撓もうとするフィラメント3をアンカー4によって確実に保持することができる。
【0039】
また、各アンカー4の線径d(
図3参照)は、フィラメント3を確実に保持するために、太くすることがよい。例えば、各アンカー4の線径dは、0.32mm以上、より好適には0.36mm以上がよい。各アンカー4の線径dが太くなることで、フィラメント3に対する保持力を増加することができ、フィラメント3をアンカー4によって確実に保持することができる。なお、アンカー4に使用する金属線の使用量を低減することとの両立を図るため、各アンカー4の線形は0.42mm以下がよい。
【0040】
また、各アンカー4のフィラメント3に対する配置密度は、フィラメント3を確実に保持するために、高くすることがよい。例えば、フィラメント3の主部31の長さをLとし(
図1参照)、長さLに対して設けられるアンカー4の数をnとした場合に、配線密度としてL/nを17mm/個以下、より好適には14mm/個以下がよい。各アンカー4のフィラメント3に対する配置密度が高くなることで、フィラメント3に対する保持力を増加することができ、フィラメント3をアンカー4によって確実に保持することができる。なお、アンカー4に使用する金属線の使用量を低減することとの両立を図るため、10mm/個以上がよい。
【0041】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。