(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透湿防水層の少なくとも一方の面に、補強層、防滑層及び遮熱層から選択された少なくとも一種の機能層が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の透湿防水シート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の透湿防水シートは、多孔質(特に微多孔質)の疎水性樹脂シート又は疎水性不織布で構成され、かつ特定のフッ素化合物を含む処理剤で表面処理(被覆又は含浸など)された透湿防水層を含んでいる。多孔質の疎水性樹脂シート又は疎水性不織布は、細孔又は空隙を形成していない部分では、水滴及び水蒸気の双方の透過を防止できるのに対して、細孔又は空隙を形成している部分では、水滴よりも水蒸気のサイズが小さいため、水滴を通すことなく水蒸気を通すことができ、透湿性と防水性とを両立できる。
【0019】
多孔質の疎水性樹脂シートは、疎水性樹脂と必要により添加剤とを含む疎水性樹脂組成物で形成されている。疎水性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、ポリスチレン系樹脂などが例示できる。これらの疎水性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの疎水性樹脂のうち、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂(特に、軽量性、施工性の点からポリエチレン系樹脂)が好ましい。
【0020】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体であってもよく、エチレン系共重合体であってもよい。共重合性単量体としては、エチレン以外のα−オレフィン[例えば、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−C
3−10オレフィン(特にα−C
3−6オレフィン)など]、有機酸ビニルエステル[例えば、酢酸ビニルなど]、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C
1−6アルキルエステルなど]、これらの組合せなどが例示できる。これらの共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0021】
エチレン系共重合体において、エチレンと共重合性単量体(例えば、エチレン以外のα−オレフィン)との割合(モル比)は、前者/後者=50/50〜99.9/0.1、好ましくは60/40〜99.5/0.5、さらに好ましくは70/30〜99/1程度である。
【0022】
ポリエチレン系樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン(例えば、直鎖状低密度ポリエチレンなど)、分岐鎖状ポリエチレン、アイオノマー、塩素化ポリエチレンなどであってもよい。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン系共重合体であってもよい。共重合性単量体としては、例えば、プロピレン以外のα−オレフィン(エチレンなどのプロピレン以外のα−C
2−6オレフィンなど)、前記例示の有機酸ビニルエステル又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが例示できる。これらの共重合性単量体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0024】
プロピレン系共重合体において、プロピレンと共重合性単量体(例えば、プロピレン以外のα−オレフィン)との割合(モル比)は、前者/後者=50/50〜99.9/0.1、好ましくは60/40〜99.5/0.5、さらに好ましくは70/30〜99/1程度である。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂は、アイソタクチック体、シンジオタクチック体、アタクチック体のいずれであってもよい。また、ポリプロピレン系樹脂は、Ziegler-Natta触媒系の重合体であってもよく、メタロセン触媒系の重合体であってもよい。
【0026】
添加剤としては、例えば、安定剤(耐光安定剤、耐熱安定剤など)、充填剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、防虫剤(防蟻剤など)、防腐剤(防カビ剤など)などが例示できる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。本発明では、疎水性樹脂組成物が、水の表面張力を低下させる添加剤(防虫剤、防腐剤、界面活性剤など)を含んでいても撥水性を大きく向上できる。
【0027】
なお、疎水性樹脂シートは一軸又は二軸延伸シートであってもよい。また、疎水性樹脂シートは、単層シートであってもよく、二層以上の積層シートであってもよい。
【0028】
多孔質の疎水性樹脂シートは、慣用の方法、例えば、疎水性樹脂と粉粒状充填剤(炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウムなど)とを含む疎水性樹脂組成物をシート状に成形し、延伸する方法、疎水性樹脂組成物をシート状に成形し、レーザー光又はパンチングにより細孔を形成する方法、疎水性樹脂組成物をシート状に発泡成形する方法などにより作製できる。
【0029】
疎水性樹脂シートの細孔の平均径は、0.01〜100μm(例えば、0.05〜50μm)程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜15μm、好ましくは0.5〜10μm、さらに好ましくは1〜5μm程度である。細孔径が小さすぎると透湿性が低下しやすく、細孔径が大きすぎると、後述の処理剤で表面処理しても防水性が低下しやすい。
【0030】
疎水性不織布は、少なくとも疎水性繊維を含んでいる。疎水性繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、エチレン−プロピレン共重合体繊維など)、ポリスチレン系繊維、フッ素繊維、これらの組合せ(複合繊維など)などが例示できる。また、疎水性繊維は、非疎水性繊維(親水性繊維)を含む複合繊維、例えば、(i)鞘成分が疎水性繊維で構成され、かつ芯成分が非疎水性繊維で構成された鞘芯型繊維(同芯型又は偏芯型)、(ii)海成分が疎水性繊維で構成され、かつ島成分が非疎水性繊維で構成された海島型繊維なども包含する。なお、非疎水性繊維としては、ポリエステル系繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維など)、ポリアミド系繊維(例えば、ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維など)、アクリル繊維(アクリロニトリル系繊維など)、ポリウレタン系繊維(例えば、ポリエーテルポリオール型ウレタン系繊維、ポリエステル型ウレタン系繊維など)などが例示できる。これらの疎水性繊維は、単独で又は二種以上組み合わせることができる。
【0031】
疎水性不織布としては、ポリオレフィン系繊維(例えば、高密度ポリエチレン繊維などのポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維など)を含むポリオレフィン系不織布(ポリエチレン系不織布、ポリプロピレン系不織布など)が好ましい。なお、ポリエチレン系繊維及びポリプロピレン系繊維としては、それぞれ、疎水性樹脂シートの項で例示したポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂で構成された繊維などが挙げられる。
【0032】
なお、疎水性不織布は、本発明の効果を阻害しない範囲で、非疎水性繊維(親水性繊維)を含んでいてもよい。非疎水性繊維の割合は、疎水性繊維100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下(例えば、0.001〜0.1質量部程度)であってもよい。
【0033】
疎水性不織布を構成する繊維(疎水性繊維など)の平均繊度は、例えば、0.1〜5デニール、好ましくは0.2〜4デニール、さらに好ましくは0.5〜3デニール程度であってもよい。また、平均繊維長は、例えば、10〜150mm、好ましくは20〜80mm、さらに好ましくは30〜60mm程度であってもよく、スパンボンド、メルトブロー、フラッシュ紡糸法などの直接紡糸法では、無限長であってもよい。
【0034】
疎水性不織布(又は不織布を構成する繊維)は、慣用の添加剤、例えば、疎水性樹脂組成物の項で例示した添加剤などを含んでいてもよい。
【0035】
疎水性不織布は、慣用の方法、例えば、上記繊維を含むウェブの形成工程と、ウェブの接着工程とを経て作製でき、具体的には、スパンボンド、メルトブロー、フラッシュ紡糸、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンレース、ニードルパンチ、ステッチボンド法などにより作製できる。これらの方法のうち、強度の点から、フラッシュ紡糸法が好ましい。
【0036】
なお、繊維を部分的に融着させてフィルム化し防水性を向上する点から、疎水性不織布の片面の少なくとも一部(釘又はステープルの穿設部など)にエンボス凹部を形成してもよい。
【0037】
多孔質の疎水性樹脂シート又は疎水性不織布の透湿抵抗(m
2・s・Pa/μm)は、JIS K7129「プラスティックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法」に準拠して、例えば、0.2以下、好ましくは0.19以下(例えば、0.05〜0.19程度)である。
【0038】
多孔質の疎水性樹脂シート又は疎水性不織布は、通常の雨水であれば、表面張力が作用して水滴の孔部(又は空隙部)の通過が抑制されるため、高い防水性を有する。しかし、防虫・防腐剤(又は界面活性剤)を含有する建材を浸透した雨水は、表面張力が低下し、水滴が微細化して孔部(又は空隙部)を通過しやすくなるためか、防水性が低下する。本発明では、特定のフッ素化合物を含む処理剤で表面処理することにより、多孔質の疎水性樹脂シート又は疎水性不織布の表面エネルギーを低減できるためか、防水性を大きく向上できる。
【0039】
フッ素化合物は、直接結合又はリンカーを介してラジカル重合性基及び/又は加水分解縮合性基が連結したフルオロアルカン(例えば、フルオロC
1−12アルカン、好ましくはフルオロC
2−10アルカン、さらに好ましくはフルオロC
4−8アルカン)である。リンカーとしては、2価のリンカー、例えば、酸素原子、フッ素原子が置換していてもよいアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基などのC
2−4アルキレンオキシ基など)などが例示できる。
【0040】
ラジカル重合性基としては、フッ素原子が置換していてもよいビニル基、(メタ)アクリロイル基などが例示できる。また、加水分解縮合性基としては、置換シリル基、例えば、ハロシリル基(クロロシリル基など)、ヒドロキシシリル基、アルコキシシリル基(メトキシシリル基、エトキシシリル基などのC
1−4アルコキシシリル基など)、アリールオキシシリル基などが例示できる。なお、フッ素化合物は、複数(例えば、2〜4個、好ましくは2〜3個程度)のラジカル重合性基又は加水分解縮合性基を有していてもよい。
【0041】
ラジカル重合性基を有するフッ素化合物としては、例えば、ビニルフルオロライド、ビニリデンフルオロライド、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのフルオロC
2−6オレフィン;パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)などのフルオロ(C
1−6アルキルビニルエーテル);2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートなどのフルオロC
1−12アルキル(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0042】
加水分解縮合性基を有するフッ素化合物としては、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロブチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロブチル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロオクチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロオクチル)エチルトリエトキシシランなどのフルオロC
1−12アルキルC
1−4アルコキシシラン;3−(パーフルオロイソプロポキシ)プロピルトリメトキシシランなどの(フルオロC
1−6アルコキシC
1−6アルキル)C
1−4アルコキシシラン;3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、2−(パーフルオロブチル)エチルジメチルクロロシラン、2−(パーフルオロブチル)エチルメチルジクロロシラン、2−(パーフルオロブチル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメチルジクロロシラン、2−(パーフルオロヘキシル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロオクチル)エチルメチルジクロロシラン、2−(パーフルオロオクチル)エチルトリクロロシランなどのフルオロC
1−12アルキルハロシラン;3−(パーフルオロイソプロポキシ)プロピルトリクロロシランなどの(フルオロC
1−6アルコキシC
1−6アルキル)ハロシラン;これらのシラン化合物に対応するシラノールなどが例示できる。
【0043】
ラジカル重合性基及び加水分解縮合性基の双方を有するフッ素化合物としては、例えば、1H,1H,2H,2H,11H,12H,12H−ヘキサデカフルオロドデカン−11エン−1−イルトリメトキシシランなどのフルオロC
2−12アルケニルC
1−4アルコキシシラン;1H,1H,2H,2H,11H,12H,12H−ヘキサデカフルオロドデカン−11エン−1−イルトリクロロシランなどのフルオロC
2−12アルケニルハロシラン:これらのシラン化合物に対応するシラノールなどが例示できる。
【0044】
これらのフッ素化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのフッ素化合物のうち、ラジカル重合性基及び/又は加水分解縮合性基が直接結合したフルオロC
1−12アルカン、例えば、フルオロC
1−12アルキル(メタ)アクリレート、フルオロC
1−12アルキルC
1−4アルコキシシラン(例えば、フルオロC
1−12アルキルトリC
1−4アルコキシシラン)、フルオロC
1−12アルキルハロシラン(例えば、フルオロC
1−12アルキルトリハロシラン)が好ましく、特に、パーフルオロC
4−8アルキルC
2−4アルキル(メタ)アクリレート、パーフルオロC
4−8アルキルC
2−4アルキルトリC
1−2アルコキシシラン、パーフルオロC
4−8アルキルC
2−4アルキルトリハロシランが好ましい。
【0045】
フッ素化合物(又はフルオロアルキル鎖部分)において、フッ素原子が置換した炭素原子の数は、例えば、1〜12個、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜8個(例えば、1〜6個)程度であってもよく、通常、2〜10個(例えば、4〜8個)程度である。フッ素原子が置換した炭素原子の数が少なすぎると、撥水性を十分に改善できない場合があり、多すぎると、コストが増大する上、自然界での分解が困難となり環境負荷が大きくなる。
【0046】
処理剤は、フッ素化合物に加えて、通常、溶媒を含んでいる。溶媒としては、水系溶媒、例えば、水、アルコール類(エタノール、エチレングリコールなど)、ケトン類(アセトンなど)、環状エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブなど)、カルビトール類(メチルエチルカルビトールなど)、グリコールエーテルエステル類(セロソルブアセテートなど)などが例示できる。これらの溶媒は、単独で又は混合溶媒として使用できる。
【0047】
溶媒の割合は、フッ素化合物1質量部に対して、例えば、3〜1100質量部(例えば、5〜1000質量部)、好ましくは10〜800質量部(例えば、100〜600質量部)、さらに好ましくは150〜500質量部(例えば、200〜300質量部)程度であってもよい。溶媒の割合が少なすぎると、均一に表面処理することが困難になり撥水性が低下する虞があり、溶媒の割合が多すぎても、処理剤の流動性が高くなり被処理材から零れやすくなり撥水性が低下する虞がある。
【0048】
表面処理方法としては、塗布、浸漬、スプレーなどが挙げられ、これらの処理の後に、必要に応じて乾燥してもよい。乾燥温度は、例えば、50〜200℃、好ましくは70〜170℃、さらに好ましくは80〜150℃程度である。乾燥時間は、例えば、1秒〜30分、好ましくは2秒〜15分、さらに好ましくは5秒〜1分程度である。
【0049】
処理剤は、必要により、他の添加剤、例えば、安定剤、増粘剤、粘度調整剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、着色剤などを含んでいてもよい。
【0050】
処理剤全体100質量部に対して、フッ素化合物の割合は、0.1〜40質量部(例えば、0.2〜35質量部)程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜1質量部、好ましくは0.2〜0.6質量部、さらに好ましくは0.3〜0.5質量部(例えば、0.4〜0.5質量部)程度であってもよい。
【0051】
処理剤の付着量(又は使用量)は、表面処理前(又は表面処理後)の透湿防水層100質量部に対して、0.05〜50質量部(例えば、0.1〜45質量部)程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜1質量部、好ましくは0.2〜0.8質量部、さらに好ましくは0.3〜0.7質量部程度である。
【0052】
透湿防水層の厚み(平均厚み)は、特に限定されず、例えば、10〜500μm、好ましくは50〜300μm、さらに好ましくは100〜200μm程度である。
【0053】
透湿防水層の透湿抵抗は、多孔質の疎水性樹脂シート又は疎水性不織布の透湿抵抗と同様の範囲(例えば、0.19m
2・s・Pa/μm以下)から選択できる。このように、本発明では、フッ素化合物を含む処理剤で表面処理しても、透湿性が損なわれない。
【0054】
透湿防水層の防水圧は、JIS L1092に準拠して、5kPa以上(例えば、5〜200kPa)、好ましくは10〜150kPa、さらに好ましくは15〜100kPa(例えば、50〜100kPa)程度である。
【0055】
透湿防水層において、水(1.5μLの水滴など)の接触角度は、例えば、105°〜125°、好ましくは110°〜120°程度であってもよい。表面処理前の透湿防水層では、水(1.5μLの水滴など)の接触角度は105°未満である場合が多く、処理剤で表面処理することにより、透湿防水層の接触角度を増大(又は表面エネルギーを低減)できるためか、防虫・防腐剤(又は界面活性剤)を含む水の撥水性を大きく向上できる。
【0056】
透湿防水シートは、少なくとも透湿防水層を含んでいればよく、透湿防水層の少なくとも一方の面に機能層が形成されていてもよい。機能層としては、補強層(又は保護層)、遮熱層、防滑層などが例示できる。
【0057】
補強層(又は保護層)は、透湿防水層にクラックが生成するのを防止でき、耐久性を向上できる。補強層は、布帛(前記例示の疎水性不織布;ポリエステル系不織布、ポリアミド系不織布などの親水性不織布など)、金属又は金属化合物(シリカ、アルミナなど)の薄膜、この薄膜が形成(蒸着)された樹脂シートなどで形成される。これらの補強層のうち、水蒸気透過性を確保する点から不織布が好ましく、強度及び施工性の点からポリエステル系不織布が好ましい。なお、補強層は、防水性を調整するため、上記処理剤で表面処理してもよい。また、補強層の不織布は、透湿防水層の不織布と同様、エンボス加工を施してもよい。
【0058】
遮熱層は、輻射熱を反射でき、建築物又は構造物の内部環境を改善できる。遮熱層は金属微粒子とバインダーとを含んでいる。金属微粒子を構成する金属又は金属化合物としては、マグネシウム、アルミニウム、チタン、亜鉛、これらの金属酸化物などが例示できる。金属微粒子の平均粒子径は、例えば、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜40μm、さらに好ましくは1〜30μm程度である。バインダーとしては、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの組み合わせなどが例示できる。
【0059】
防滑層は、屋根などの施工における作業性、安全性を向上できる。防滑層は、微粒子(鉱物質粒子、プラスチック粒子など)とバインダー(遮熱層の項で例示したバインダーなど)とを含む層であってもよく、接着剤を含む層であってもよい。なお、接着剤(又は粘着剤)としては、塩化ビニル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、(メタ)アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アスファルトなどが例示できる。また、接着剤は、蒸発型接着剤(溶液型接着剤、ラテックス又はエマルジョン型接着剤など)であってもよく、ホットメルト接着性樹脂などであってもよい。
【0060】
透湿防水シートは、上記機能層を単独で又は二種以上組み合わせて含んでいてもよい。機能層の厚みは、その種類に応じて適宜選択でき、例えば、1〜500μm、好ましくは5〜400μm、さらに好ましくは10〜300μm程度である。
【0061】
なお、透湿防水シートの透湿抵抗及び防水性は、それぞれ、透湿防水層の透湿抵抗及び防水性と同一の範囲から選択できる。
【0062】
本発明の透湿防水シートは、防虫・防腐剤(又は界面活性剤)を含有する建材(建築物又は構造物の構成部材)の下地として利用される。換言すれば、上記建材の裏面(建築物又は構造物の屋内側の面)に本発明の透湿防水シートを配設して利用される。建築物又は構造物としては、例えば、住宅(木造住宅など)、プレハブ(仮設住宅など)、オフィス、宿泊施設(旅館、ロッジなど)、娯楽施設(美術館、博物館、劇場、競技場など)、商業施設、観光施設、駅、空港などが例示できる。本発明の透湿防水シートは、上記建築物又は構造物の少なくとも一部の構造、例えば、屋根(陸屋根、勾配屋根など)、庇、天井、壁、サッシ、床などに適用してもよい。特に、本発明の透湿防水シートは、屋根及び/又は外壁の構成部材(胴縁、桟木など)の下地として好適に利用できる。
【0063】
防虫・防腐剤(防蟻・防腐剤など)の有効成分(又は活性成分)としては、特に制限されず、例えば、トリアゾール系化合物(例えば、テブコナゾール、ヘキサコナゾール、プロピコナゾール、シプロコナゾール、エポキシコナゾール、イプコナゾール、シメコナゾール、メトコナゾールなど)、ピレスロイド系化合物(例えば、アレスリン、ペルメトリン、トラロメトリン、ビフェントリン、アクリナトリン、アルファシペルメトリン、シフルトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン、パーメスリン、トラロメスリン、フェンバレレートなど)、ネオニコチノイド(クロロニコチニル)系化合物(例えば、チアクロプリド、ニテンピラム、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、アセタミプリド、ジノテフランなど)、カーバメイト系化合物(例えば、カルバリル、フェノブカルブ、プロポクスルなど)、ピロール系化合物(例えば、クロルフェナピルなど)、フェニルピラゾール系化合物(例えば、フィプロニル、ピリプロールなど)、セミカルバゾン系化合物(例えば、メタフルミゾン、インドキサカルブなど)、有機ハロゲン系化合物(例えば、ケルセンなどの有機塩素系化合物;ジヨードメチル−p−トリルスルホン、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、4−クロルフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマール、4−メトキシフェニル−3−ヨードプロパルギルホルマール、トリヨードアリルアルコールなどの有機ヨード系化合物など)、有機リン系化合物としては(例えば、ホキシム、ピリダフェンチオン、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、ジクロフェンチオン、プロペタンホスなど)などが例示できる。これらの有効成分は、塩、水和物、溶媒和物などの形態で防虫・防腐剤に含有されていてもよい。
【0064】
防虫・防腐剤は、上記有効成分を単独で又は二種以上組み合わせて含んでいてもよい。上記有効成分のうち、水分子を吸着可能な親水基と、疎水性シートへの浸透性を向上するための嵩高い疎水基とを有する有効成分(特に、シプロコナゾールなどのトリアゾール系化合物)であってもよい。このような有効成分を含む水に対しても、撥水性を向上できる。
【0065】
防虫・防腐剤は、被処理材への有効成分の浸透性を向上するため、通常、界面活性剤を含んでいる。界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤であってもよいが、疎水性シートへの浸透性の高いノニオン界面活性剤であってもよい。本発明では、ノニオン界面活性剤が溶出した雨水に対しても、高い撥水性を発揮できる。
【0066】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、エーテル型、エステル型、エステルエーテル型、含窒素型(又はアミン型)などが例示できる。エーテル型ノニオン界面活性剤としては、例えば、(ポリ)アルカンポリオールアルキルエーテル(例えば、ポリC
2−3アルキレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノノニルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノデシルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノラウリルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノセチルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノステアリルエーテルなどのポリC
2−3アルキレングリコールC
8−24アルキルエーテルなど)、(ポリ)アルカンポリオールアリールエーテル(例えば、ポリC
2−3アルキレングリコールモノオクチルフェニルエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールモノノニルフェニルエーテルなどのポリC
2−3アルキレングリコールC
8−24アルキルC
6−10アリールエーテルなど)、(ポリ)アルカンポリオールアラルキルエーテル(例えば、ポリC
2−3アルキレングリコールモノクミルフェニルエーテルなどのポリC
2−3アルキレングリコールC
6−10アリールC
1−4アルキルエーテルなど)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどが例示できる。
【0067】
エステル型ノニオン界面活性剤としては、3価以上の多価アルコールの脂肪酸エステル、例えば、グリセリンモノステアリン酸エステルなどのグリセリンC
8−24脂肪酸エステル;ペンタエリスリトールジ牛脂脂肪酸エステルなどのペンタエリスリトールC
8−24脂肪酸エステル;ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖ジオレイン酸エステルなどのショ糖C
8−24脂肪酸エステル;ソルビタンモノ乃至トリオレイン酸エステルなどのソルビタンC
8−24脂肪酸エステル(又はソルビトールC
8−24脂肪酸エステル)などが例示できる。
【0068】
エステルエーテル型ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレングリコールモノラウリン酸エステルなどのポリC
2−3アルキレングリコールC
8−24脂肪酸エステルなど)、3価以上の多価アルコールのC
2−3アルキレンオキサイド付加体の脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレングリセリンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油などのポリオキシC
2−3アルキレングリセリンC
8−24脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステルなどのポリオキシC
2−3アルキレンソルビタンC
8−24脂肪酸エステル(又はポリオキシC
2−3アルキレンソルビトールC
8−24脂肪酸エステル)などが例示できる。
【0069】
含窒素型ノニオン界面活性剤(又はアミン型ノニオン界面活性剤)としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテルなどのC
8−24アルキルアミンのC
2−3アルキレンオキサイド付加体、脂肪酸アルカノールアミド又はそのC
2−3アルキレンオキサイド付加物(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ脂肪酸モノエタノールアミドなどのC
8−24脂肪酸アルカノールアミド又はそのC
2−3アルキレンオキサイド付加体など)などが例示できる。
【0070】
これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの界面活性剤のうち、特に、疎水性シートへの浸透性に優れる嵩高い疎水基を有するノニオン界面活性剤(例えば、ポリC
2−3アルキレングリコールC
8−24アルキルC
6−10アリールエーテル、ポリC
2−3アルキレングリコールC
6−10アリールC
1−4アルキルエーテル)であってもよい。このような界面活性剤を含む水に対しても、撥水性を向上できる。
【0071】
界面活性剤の親水性−親油性バランス(HLB)は、例えば、20以下、好ましくは10〜16、さらに好ましくは11〜15(例えば、12〜14)程度である。HLBが比較的小さく、親油性が高い界面活性剤を含む水は疎水性シートを透過しやすいが、このような界面活性剤を含む水に対する撥水性にも優れている。
【0072】
防虫・防腐剤は、さらに他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、安定剤、分散剤(エタノールアミンなど)、キレート剤(酸化銅など)、可塑剤、粘稠化剤、消泡剤、着色剤などが例示できる。他の添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0073】
このように、本発明では、多孔質の疎水性樹脂シート又は疎水性不織布で構成された透湿防水層に対して、前記フッ素化合物を含む処理剤で表面処理するため、防虫・防腐剤(又は界面活性剤)を含む水が、細孔を通過することを抑制できるためか、撥水性を顕著に向上できる。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例の透湿防水シートの評価方法は以下の通りである。
【0075】
[界面活性剤の浸透試験]
実施例及び比較例の透湿防水シートに界面活性剤(Roche社製、Triton X-100)を100μL滴下した後、シート裏面への水の浸透性を以下の基準により評価した。
◎:界面活性剤を含む水を滴下して水分が蒸発するまで放置しても裏面に全く浸透しない
○:界面活性剤を含む水を滴下して水分が蒸発するまで放置すると裏面にやや浸透する
△:界面活性剤を含む水を滴下して1分ほど放置すると裏面にやや浸透する
×:裏面活性剤を含む水を滴下して1分ほど放置すると裏面にまで完全に浸透する。
【0076】
[防蟻・防腐剤の浸透試験A]
防蟻・防腐剤(コパーズ・アーチケミカル社製、タナリス)で処理された木材の下半分の高さまで水道水に浸漬し、前記木材の上に実施例及び比較例の透湿防水シートを積層し、このシートの上から800gの荷重を作用させて、室温で所定時間放置した後、シート裏面への水の浸透性を以下の基準により評価した。
◎:1週間放置しても裏面には水が浸透しない
○:1週間放置すると裏面に水が浸透してシートの一部が防蟻・防腐剤の色に変色する
△:1週間放置すると裏面に水が浸透してシートの全体が防蟻・防腐剤の色に変色する
×:3日間放置すると裏面に水が浸透してシートが防蟻・防腐剤の色に変色する。
【0077】
[防蟻・防腐剤の浸透試験B]
実施例及び比較例の透湿防水シートの上に、ポリ塩化ビニル管(内径40mm)をシーリング材でシールして固定し、試験体を作製した。試験体のポリ塩化ビニル管に、防蟻・防腐剤(タナリス)を水で100倍に希釈した水溶液を注入し(水頭10mm)、24時間静置した後、裏面への染み込みの有無を確認した。3個の試験体のうち、シート裏面に水が染み込んだ試験体の数をカウントし、以下の基準により評価した。
◎:シート裏面に水が染みこんだ試験体の数が0個である
×:シート裏面に水が染みこんだ試験体の数が1個以上である。
【0078】
[シャワー試験]
JIS L1092に規定されているブンデスマン降雨試験機を用いて、シャワー試験を行った。試験体は、70mm角の合板上に、実施例及び比較例の透湿防水シートを積層し、中央部にステープル(厚さ0.7mm、幅12mm、長さ8mm)を穿設し、透湿防水シートと合板との間に水が入り込まないように周縁部をアクリル粘着剤付き防水テープで貼り合わせることにより、作製した。試験条件は25mL/2.5分の雨量に20分間暴露した。10個の試験体のうち、裏面に水が染みこんだ(ステープル周辺に5mm以上の浸水が認められた)試験体の数をカウントし、以下の基準により評価した。
◎:シート裏面に水が染み込んだ試験体の数が2個以下である
○:シート裏面に水が染み込んだ試験体の数が3個以上5個以下である
×:シート裏面に水が染みこんだ試験体の数が6個以上である。
【0079】
[釘打ち試験]
実施例及び比較例の透湿防水シートを木材に釘で固定し、完全に釘の頭の部分が木材に接した状態にする。その後、釘の頭部分に防蟻・防腐剤(タナリス)を100倍に希釈した水溶液を1mL滴下して、シートの裏面に染み出すか否か試験を行った。
◎:シート裏面への染み込みは全くない
×:シートの裏面への染み込みが確認できる。
【0080】
[透湿性試験]
実施例及び比較例の透湿防水シートについて、JIS Z0208に準拠した方法により透湿度を算出し、JIS A6111記載の計算式(下記式)で透湿抵抗を算出した。
【0081】
Pe=574×(1/Rv)
(式中、Peは透湿度を示し、Rvは透湿抵抗を示す)
◎:透湿抵抗が0.19以下である
×:透湿抵抗が0.19より大きい。
【0082】
比較例1
一方の面がエンボス加工されたポリエステル不織布(目付:50g/m
2)の他方の面に微多孔質ポリエチレンシート(平均孔径1.78μm、目付:30g/m
2)を積層することにより、透湿防水シート(透湿抵抗:0.11m
3・s・Pa/μm、厚み:160μm)を作製した。
【0083】
比較例2
一方の面がエンボス加工されたポリエステル不織布(目付:50g/m
2)の他方の面に微多孔質ポリエチレンシート(平均孔径1.78μm、目付:22g/m
2)を積層することにより、透湿防水シート(透湿抵抗:0.10m
3・s・Pa/μm、厚み:156μm)を作製した。
【0084】
比較例3
フラッシュ紡糸法により製造された高密度ポリエチレン不織布(透湿抵抗:0.13m
3・s・Pa/μm、厚み:150μm)を使用した。
【0085】
実施例1
水素原子がフッ素原子で置換された炭素数6個のアルキル基を有し、かつ末端に反応性基としてアクリロイル基を有するフッ素化合物を20質量%含有する水溶液(旭硝子社製、AGE060)1gをエタノール50gに加えた処理液に、比較例1の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0086】
実施例2
比較例2の透湿防水シートを処理液に浸漬する点を除き、実施例1と同様に操作して、透湿防水シートを作製した。
【0087】
実施例3
比較例3の透湿防水シートを処理液に浸漬する点を除き、実施例1と同様に操作して、透湿防水シートを作製した。
【0088】
実施例4
水溶液(AGE060)1gをエタノール100gに加えた処理液に、比較例1の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0089】
実施例5
比較例2の透湿防水シートを処理液に浸漬する点を除き、実施例4と同様に操作して、透湿防水シートを作製した。
【0090】
実施例6
比較例3の透湿防水シートを処理液に浸漬する点を除き、実施例4と同様に操作して、透湿防水シートを作製した。
【0091】
実施例7
水素原子がフッ素原子で置換された炭素数4個のアルキル基を有し、かつ末端に反応性基として3塩化シリル基を有するフッ素化合物(信越シリコーン社製、LS−912、1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン)5gに水0.71g及び0.5N塩酸水溶液0.1gを加え、室温にて適宜攪拌して加水分解させた後、8.42gのエタノールを加えて処理液を作製した。この処理液に、比較例1の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0092】
実施例8
比較例3の透湿防水シートを処理液に浸漬する点を除き、実施例7と同様に操作して、透湿防水シートを作製した。
【0093】
実施例9
水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1個のアルキル基を有し、かつ末端に反応性基としてメトキシシリル基を有するフッ素化合物(信越シリコーン社製、KBM−7103、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)5gに水1.24g及び0.5N塩酸水溶液0.2gを加え、室温にて適宜攪拌して加水分解させた後、エタノール6.86gを加えて処理液を作製した。この処理液に、比較例1の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0094】
実施例10
比較例3の透湿防水シートを処理液に浸漬する点を除き、実施例9と同様に操作して、透湿防水シートを作製した。
【0095】
実施例11
フッ素化合物(KBM−7103)5gに水0.62g及び0.5N塩酸水溶液0.2gを加え、室温にて適宜攪拌して加水分解させた後、エタノール680gを加えた処理液に、比較例2の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0096】
実施例12
フッ素化合物(KBM−7103)5gに水1.24g及び0.5N塩酸水溶液0.2gを加え、室温にて適宜攪拌して加水分解させた後、エタノール340gを加えた処理液に、比較例3の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0097】
実施例13
水溶液(AGE060)1gをエタノール300gに加えた処理液に、比較例1の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0098】
実施例14
比較例3の透湿防水シートを処理液に浸漬する点を除き、実施例13と同様に操作して、透湿防水シートを作製した。
【0099】
実施例15
水溶液(AGE060)1gをエタノール40gに加えた処理液に、比較例3の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0100】
実施例16
水溶液(AGE060)1gをエタノール50gに加えて、第1の溶液を調製した。また、フッ素化合物(KBM−7103)5gに水1.24g及び0.5N塩酸水溶液0.2gを加え、室温にて適宜攪拌して加水分解させた後、エタノール34gを加えて、第2の溶液を調製した。第1の溶液に第2の溶液を0.2g加えた処理液に、比較例1の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0101】
実施例17
水溶液(AGE060)1gをエタノール40gに加えて、第1の溶液を調製した。第1の溶液に実施例16で得られた第2の溶液を0.2g加えた処理液に、比較例3の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0102】
実施例18
水溶液(AGE060)0.9gをエタノール100gに加えて、第1の溶液を調製した。第1の溶液に実施例16で得られた第2の溶液を0.2g加えた処理液に、比較例1の透湿防水シートを浸漬した後、100℃で30秒間乾燥することにより、透湿防水シートを作製した。
【0103】
実施例19
比較例3の透湿防水シートを処理液に浸漬する点を除き、実施例18と同様に操作して、透湿防水シートを作製した。
【0104】
比較例及び実施例の透湿防水シートの評価結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
なお、表1中、処理液の濃度とは、式:100×(フッ素化合物の質量/処理液の全質量)に基づいて算出される値を意味する。
【0107】
表1から明らかなように、比較例に比べて、実施例の透湿防水シートは、透湿性を損なうことなく、界面活性剤又は防蟻・防腐剤を含む水の浸入を有効に防止できるとともに、釘穴止水性にも優れている。