特許第5725276号(P5725276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧

特許5725276二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラム
<>
  • 特許5725276-二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラム 図000002
  • 特許5725276-二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラム 図000003
  • 特許5725276-二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラム 図000004
  • 特許5725276-二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラム 図000005
  • 特許5725276-二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラム 図000006
  • 特許5725276-二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラム 図000007
  • 特許5725276-二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラム 図000008
  • 特許5725276-二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725276
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/403 20060101AFI20150507BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H04N1/40 103A
   G06T5/00
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-174787(P2010-174787)
(22)【出願日】2010年8月3日
(65)【公開番号】特開2012-39189(P2012-39189A)
(43)【公開日】2012年2月23日
【審査請求日】2013年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101948
【弁理士】
【氏名又は名称】柳澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤
【審査官】 大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−525560(JP,A)
【文献】 特開平04−302375(JP,A)
【文献】 米国特許第05988504(US,A)
【文献】 特開平07−093545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/52−2/525
G06T 1/00−1/40
G06T 3/00−5/50
G06T 9/00−9/40
H04N 1/40−1/409
H04N 1/46
H04N 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注目画素を含むあらかじめ決められた範囲の局所領域における前記注目画素の値の変位を算出する変位算出手段と、前記変位算出手段により算出した変位をN値化するN値化手段と、前記N値化手段でN値化された変位の値が最大値または最小値の場合に前記局所領域における平均値を閾値とし、最大値及び最小値以外の場合に固定値を閾値として、前記注目画素の値を二値化する選択二値化手段を有することを特徴とする二値化処理装置。
【請求項2】
さらに、N値化手段でN値化された変位の値が最大値または最小値から他の値に変化した境界位置から前記注目画素までの距離を算出する距離算出手段を有し、前記選択二値化手段は、前記N値化手段でN値化された変位の値が最大値または最小値ではなく前記距離算出手段で算出した距離が前記境界位置から予め決められた範囲である場合には前記固定値を修正して閾値とし、前記注目画素の値を二値化することを特徴とする請求項1に記載の二値化処理装置。
【請求項3】
処理対象の画像の注目成分について二値化する請求項1または請求項2に記載の二値化処理装置の構成を有する第1の二値化手段と、前記画像の補助成分について二値化する請求項1または請求項2に記載の二値化処理装置の構成を有する第2の二値化手段と、前記第1の二値化手段による二値化結果と前記第2の二値化手段による二値化結果を合成する合成手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記合成手段は、前記第1の二値化手段による二値化結果において境界が存在しない領域について前記第2の二値化手段による二値化結果を重畳することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
コンピュータに、請求項1または請求項2に記載の二値化処理装置の機能を実行させるものであることを特徴とする二値化処理プログラム。
【請求項6】
コンピュータに、請求項3または請求項4に記載の画像処理装置の機能を実行させるものであることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二値化処理装置、画像処理装置、二値化処理プログラム、画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
旧来より濃淡画像やカラー画像を二値化し、データ量を元の画像よりも減らして保存したり、他の用途に利用している。たとえば特許文献1では、局所領域の平均濃度に応じて閾値を決定し、二値化している。この技術を含め、一般的な二値化の技術では、他の部分より濃い部分を一方の値に、薄い部分を他方の値に割り付ける。従って、他の部分より濃い背景に、さらに濃い情報が含まれている場合、いずれも一方の値になる。もちろん、他の部分より薄い情報が薄い背景に含まれている場合も、他方の値に割り付けられる。
【0003】
例えば特許文献2には、局所領域において、エッジ画素の平均濃度に従って閾値を決定し、二値化することが記載されている。この技術では、エッジ部分が二値の一方の値に変換されるが、それ以外の部分は濃淡に関係なく他方の値に変換されることになる。
【0004】
また、例えば特許文献3には、エッジ形成画素の画素値に基づいて閾値を決定し、その閾値を画像全体あるいは1ライン分の画素に対して用い、二値化することが記載されている。この技術では、閾値より大きい、あるいは小さい値の背景と情報が存在する場合、これらは区別されずに二値のいずれかの値に変換されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−354248号公報
【特許文献2】特開2009−535899号公報
【特許文献3】特開2006−245660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高濃度背景中の高濃度情報や低濃度背景中の低濃度情報について背景を再現しつつ情報の存在を表すことができる二値化処理装置および二値化処理プログラムと、そのような二値化処理装置または二値化処理プログラムを用いた画像処理装置および画像処理プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の発明は、注目画素を含むあらかじめ決められた範囲の局所領域における前記注目画素の値の変位を算出する変位算出手段と、前記変位算出手段により算出した変位をN値化するN値化手段と、前記N値化手段でN値化された変位の値が最大値または最小値の場合に前記局所領域における平均値を閾値とし、最大値及び最小値以外の場合に固定値を閾値として、前記注目画素の値を二値化する選択二値化手段を有することを特徴とする二値化処理装置である。
【0008】
本願請求項2に記載の発明は、本願請求項1に記載の発明の構成に、さらに、N値化手段でN値化された変位の値が最大値または最小値から他の値に変化した境界位置から前記注目画素までの距離を算出する距離算出手段を有し、前記選択二値化手段は、前記N値化手段でN値化された変位の値が最大値または最小値ではなく前記距離算出手段で算出した距離が前記境界位置から予め決められた範囲である場合には前記固定値を修正して閾値とし、前記注目画素の値を二値化することを特徴とする二値化処理装置である。
【0009】
本願請求項3に記載の発明は、処理対象の画像の注目成分について二値化する請求項1または請求項2に記載の二値化処理装置の構成を有する第1の二値化手段と、前記画像の補助成分について二値化する請求項1または請求項2に記載の二値化処理装置の構成を有する第2の二値化手段と、前記第1の二値化手段による二値化結果と前記第2の二値化手段による二値化結果を合成する合成手段を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0010】
本願請求項4に記載の発明は、本願発請求項3に記載の明における前記合成手段が、前記第1の二値化手段による二値化結果において境界が存在しない領域について前記第2の二値化手段による二値化結果を重畳することを特徴とする画像処理装置である。
【0011】
本願請求項5に記載の発明は、コンピュータに、請求項1または請求項2に記載の二値化処理装置の機能を実行させるものであることを特徴とする二値化処理プログラムである。
【0012】
本願請求項6に記載の発明は、コンピュータに、請求項3または請求項4に記載の画像処理装置の機能を実行させるものであることを特徴とする画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本願請求項1に記載の発明によれば、高濃度背景中の高濃度情報や低濃度背景中の低濃度情報について背景を再現しつつ情報の存在を表すことができる。
【0014】
本願請求項2に記載の発明によれば、高濃度背景中の高濃度情報や低濃度背景中の低濃度情報を輪郭再現する際の輪郭再現の幅を揃えることがでる。
【0015】
本願請求項3に記載の発明によれば、注目成分だけでなく補助成分の境界情報を再現することができる。
【0016】
本願請求項4に記載の発明によれば、注目成分の二値化結果を損なうことなく補助成分の二値化結果を反映することができる。
【0017】
本願請求項5に記載の発明によれば、本願請求項1または請求項2に記載の発明の効果を得ることができる。
【0018】
本願請求項6に記載の発明によれば、本願請求項3または請求項4に記載の発明の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。
図2】本発明の本発明の第1の実施の形態における動作の具体例の説明図である。
図3】本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。
図4】本発明の本発明の第2の実施の形態における動作の具体例の説明図である。
図5】本発明の本発明の第2の実施の形態における動作の別の具体例の説明図である。
図6】本発明の第3の実施の形態を示す構成図である。
図7】本発明の本発明の第3の実施の形態における動作の具体例の説明図である。
図8】本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す構成図である。図中、11は変位算出部、12はN値化部、13は選択二値化部である。処理対象の画像が与えられ、各画素を順に注目画素として二値化する。
【0021】
変位算出部11は、注目画素を含むあらかじめ決められた範囲の局所領域における注目画素の値の変位を算出する。変位は符号付きであり、注目画素の値が局所領域の他の画素の値よりも小さいほど、一方の符号にて大きな絶対値を示し、局所領域の他の画素の値よりも大きいほど、もう一方の符号にて大きな絶対値を示す。変位の具体例としては、局所領域における画素の値の平均値あるいは2次微分値などと注目画素の値との差分などであってよい。画素の値としては、濃度や明度、彩度、色相などのほか、色値であってよい。局所領域の大きさは、文字線画などの単一境界構造を捉えるだけの大きさがあればよく、また境界の再現を維持するのに必要な大きさであればよい。また、特性の異なる周辺の境界を含まない大きさであるとよい。
【0022】
N値化部12は、変位算出部11により算出した変位を、あらかじめ設定されているN−1個の閾値と比較してN値化する。なおNは3以上の整数である。
【0023】
選択二値化部13は、N値化部12でN値化された値に従って、少なくとも固定値または局所領域における平均値のいずれかを閾値として選択して、注目画素の値を二値化する。
【0024】
なお、N値化部12ではN値化した画像を作成しなくても、N値化部12から閾値との比較結果を出力し、選択二値化部13では比較結果を受け取って閾値を選択するように構成してもよい。
【0025】
図2は、本発明の本発明の第1の実施の形態における動作の具体例の説明図である。図2(A)には、処理対象の画像の具体例を部分的に示している。この例では、領域1、領域2、領域3の各領域において色が異なっている。図2(A)に矢線で示した色濃度(明度)の変化を図2(B)に示している。領域1は領域2、領域3よりも色濃度が低く、領域2は領域1、領域3よりも色濃度が高い。
【0026】
変位算出部11は、局所領域における注目画素の値の変位を算出する。この例では局所領域の色濃度の平均値を算出し、平均値と注目画素の色濃度の値との差を変位とする。局所領域の色濃度の平均値を図2(B)において破線で示している。この色濃度の平均値と注目画素の色濃度の値との差を、図2(B)では2つの注目画素において矢線で示しており、これが変位となる。変位の一例を図2(C)に示している。注目画素の色濃度が平均値よりも小さい場合に符号を‘−’、大きい場合に符号を‘+’としている。
【0027】
N値化部12では、変位をN値化する。ここでは3値化することとし、図2(C)に示した変位を、あらかじめ設定されている2つの閾値により3値化する。3値化した結果を図2(D)に一例を示している。図2(D)に示した例では、3値を白、灰、黒として示している。
【0028】
選択二値化部13では、3値化された値に従って閾値を選択し、注目画素の値を二値化する。この例では、3値のうち白、黒となった領域では局所領域の色濃度の平均値を閾値として選択し、注目画素の値を二値化する。また、3値のうち、灰となった領域では、あらかじめ設定されている固定閾値を選択し、注目画素の値を二値化する。選択した閾値を図2(E)に示している。
【0029】
局所領域の色濃度の平均値を閾値として選択した領域では、図2(B)に破線で示した平均値よりも色濃度が低いか高いかにより二値化すればよい。この例では、注目画素の色濃度が閾値となる平均値よりも低い場合に、二値の一方の値である白、注目画素の色濃度が閾値となる平均値よりも高い場合に、二値の他方の値である黒とする。
【0030】
また、固定閾値を選択した領域では、図2(B)に一点鎖線で示した固定閾値よりも色濃度が低いか高いかにより二値化すればよい。この例では、注目画素の色濃度が固定閾値よりも低い場合に、二値の一方の値である白、注目画素の色濃度が固定閾値よりも高い場合に、二値の他方の値である黒とする。
【0031】
このようにして二値化された結果を図2(F)に示している。例えば、図2(B)に一点鎖線で示す固定閾値により二値化した場合には、領域2と領域3は黒に二値化され、領域2と領域3の区別はつかない。しかし、領域2と領域3の境界部分に、白に二値化された領域が生じているため、両者の存在が表されることになる。また、領域2も領域3も色濃度が例えば固定閾値に比べて高いことを、黒に二値化されたことにより表される。
【0032】
図3は、本発明の第2の実施の形態を示す構成図である。図中、14は距離算出部である。この第2の実施の形態では、上述の第1の実施の形態に、距離算出部14を設けた構成を示している。
【0033】
距離算出部14は、N値化部12でN値化された特定の値から注目画素までの距離を算出する。N値化された特定の値としては、N値のうちの最大値または最小値あるいはその両方とするとよい。距離は、例えば画素数などで代用するとよい。
【0034】
この第2の実施の形態における選択二値化部13では、N値化部12でN値化された値とともに、距離算出部14で算出した距離に従って、二値化のための閾値を選択する。より具体的には、N値化された値から閾値を選択するが、距離が予め決められている範囲内であって、距離を算出する際の境界の変位の符号と注目画素の変位の符号とが逆の場合には、閾値を注目画素の変位とは逆符号の側へ補正する。この閾値の補正により二値化結果に逆転が生じる場合があり、それによって情報の存在が表されることになる。また、距離を予め決められている範囲内としているため、二値化結果の逆転は当該範囲を幅とする領域で生じることになる。
【0035】
図4は、本発明の本発明の第2の実施の形態における動作の具体例の説明図である。図4(A)には、処理対象の画像中の色濃度の変化の具体例を部分的に実線で示している。この例では、領域1、領域2、領域3の各領域において色が異なっている。領域1は領域2、領域3よりも色濃度が低く、領域2は領域1、領域3よりも色濃度が高い。
【0036】
変位算出部11は、局所領域における注目画素の値の変位を算出する。この例では局所領域の色濃度の平均値を算出し、平均値と注目画素の色濃度の値との差を変位とする。局所領域の色濃度の平均値を図4(A)において破線で示している。この色濃度の平均値と注目画素の色濃度の値との差を、図4(A)では2つの注目画素において矢線で示しており、これが変位となる。変位の一例を図4(B)において細線で示している。注目画素の色濃度が平均値よりも小さい場合に符号を‘−’、大きい場合に符号を‘+’としている。
【0037】
N値化部12では、変位をN値化する。ここでは3値化することとし、図4(B)に細線で示した変位を、あらかじめ設定されている2つの閾値(破線で示す)により3値化する。3値化した結果を図4(B)では実線で示している。図4(B)に示した例では、3値を白、灰、黒として示している。この場合、黒は変位の符号が+の側であり、白は変位の符号が−の側であるものとしている。また、黒及び白が3値の最大値及び最小値となる。
【0038】
距離算出部14は、N値化部12でN値化された特定の値、ここでは黒と白の境界から注目画素までの距離を算出する。図4(B)において境界位置として矢線で示した位置が、黒または白の境界位置であり、この境界位置から異なる3値の値の側への距離を算出することになる。
【0039】
選択二値化部13では、3値化された値に従って閾値を選択し、注目画素の値を二値化する。この例では、3値のうち白、黒となった領域では局所領域の色濃度の平均値を閾値として選択する。また、3値のうち、灰となった領域では、あらかじめ設定されている固定閾値を選択する。さらに灰となった領域については、距離算出部14で算出された距離が予め決められている範囲内であって、距離を算出する際の境界の変位の符号と注目画素の変位の符号とが逆の場合には、閾値を注目画素の変位とは逆符号の側へ補正する。
【0040】
図4(B)において距離が予め決められている範囲内の領域として、a、b、c、dの領域がある。領域aは白の境界から予め決められている範囲の領域である。この領域aの場合、白の境界における変位の符号は−であり、領域aの画素が注目画素となった場合の変位の符号も−であって、同符号であることから閾値の補正は行わない。また、領域bは黒の領域から予め決められている範囲の領域である。この領域bでは3値化結果が灰ではないので閾値の補正は行わない。領域cに付いても、白の領域から予め決められている範囲の領域であるが、3値化結果が灰ではないので閾値の補正は行わない。
【0041】
領域dは黒の領域から予め決められている範囲の領域である。この領域dの場合、黒の境界における変位の符号は+であり、領域dの画素が注目画素となった場合の変位の符号は−であって、逆符号となる。この場合には、閾値を変位の符号である−とは逆符号の側、すなわち+の側へ補正する。
【0042】
図4(C)には図4(A)に示した色濃度の変化とともに、選択し、また補正した閾値の変化を破線で示している。また、この閾値で二値化された結果を図4(D)に示している。この二値化結果の例では、注目画素の色濃度が閾値以下の場合に二値の一方の値である白、注目画素の色濃度が閾値よりも高い場合に、二値の他方の値である黒としている。
【0043】
領域1では固定閾値が選択された領域と局所領域の色濃度の平均値を閾値として選択した領域があるが、いずれも注目画素の色濃度が閾値以下となり、二値化結果は白となる。領域2では局所領域の色濃度の平均値を閾値として選択しており、注目画素の色濃度が閾値より大きいことから、二値化結果は黒となる。領域3では、3値化の結果が灰であることから固定閾値を選択し、注目画素の色濃度が固定閾値より大きいことから二値化結果は黒となるが、領域2との境界から予め決められている範囲の領域dでは、固定閾値を+側に補正している。この補正によって、領域3のうちの領域dでは注目画素の色濃度が補正した固定閾値以下となっており、白に二値化されることになる。図4(D)から、領域2の領域3と隣接する予め決められている領域において二値の値が変更されており、この部分が領域2と領域3の境界が存在していることを表すことになる。
【0044】
なお、上述の説明では黒または白の境界から予め決められている範囲であって、3値化の値が灰の場合に、補正を行うか否かを判断しているが、灰以外の場合についても補正を行うか否かを判断して閾値の補正を行ってもよい。この場合、3値の値が黒に隣接する白の領域、あるいは白に隣接する黒の領域となるが、これらの領域では境界の画素における変位の符号と注目画素における変位の符号とは逆になり、閾値が補正されることになる。しかし、補正は注目画素における変位の符号とは逆方向に補正することから、二値化の結果は変わらない。例えば黒に隣接する白の領域で閾値を+の側に補正しても、もともと閾値以下で白となっていた二値化結果は閾値を+側に補正しても変わらない。白に隣接する黒の領域についても、もともと閾値より大きい値のために黒となっていた二値化結果は、閾値を−側に補正しても変わらない。
【0045】
また、上述の説明では黒または白の境界からの距離が予め決められている範囲内であって、距離を算出する際の境界の変位の符号と注目画素の変位の符号とが逆という条件を満たした場合に、閾値を補正することとしているが、これに限らない。例えば黒の境界から上述の条件を満たした場合には二値化の結果を白とし、また、白の境界から上述の条件を満たした場合には二値化の結果を黒としてもよい。
【0046】
図5は、本発明の本発明の第2の実施の形態における動作の別の具体例の説明図である。図5(A)には、処理対象の画像中の色濃度の変化の具体例を部分的に実線で示している。この例では、領域1、領域2、領域3の各領域において色が異なっている。領域1は領域2、領域3よりも色濃度が低く、領域2は領域1、領域3よりも色濃度が高い。図4に示した具体例と比べて領域2が広くなっている。
【0047】
変位算出部11の動作については図4の具体例で説明しており、図5(A)において破線で示した局所領域の色濃度の平均値と注目画素の色濃度の値との差を変位として求める。この具体例においても、注目画素の色濃度が平均値よりも小さい場合に符号を‘−’、大きい場合に符号を‘+’とする。
【0048】
N値化部12では、変位をN値化する。ここでは5値化することとし、5値化した結果を図5(B)に示している。図5(B)に示した例では、5値を白、白弱、灰、黒弱、黒として示している。なお、黒及び白が5値の最大値及び最小値となる。
【0049】
距離算出部14は、N値化部12でN値化された特定の値、ここでは黒と白の境界から注目画素までの距離を算出する。図5(B)において境界位置として矢線で示した位置が、黒または白の境界位置であり、この境界位置から異なる5値の値の側への距離を算出することになる。
【0050】
選択二値化部13では、5値化された値に従って閾値を選択し、注目画素の値を二値化する。この例では、5値のうち白、黒となった領域では局所領域の色濃度の平均値を閾値として選択する。また、5値のうち、灰となった領域では、あらかじめ設定されている固定閾値を選択する。
【0051】
白弱と黒弱は、基本的には灰として予め設定されている固定閾値を選択するが、黒の境界からの距離が予め決められている範囲内である白弱については、固定閾値を+側へ補正し、あるいは二値化結果を白とする。黒の境界からの距離が予め決められている範囲内である白弱は、黒の境界での変位の符号は+であり、白弱の注目画素における変位の符号は−であって、逆符号となっている。このことから、閾値を+の側へ補正し、あるいは二値化結果を白とするのである。
【0052】
また、白の境界からの距離が予め決められている範囲内である黒弱については、固定閾値を−側へ補正し、あるいは二値化結果を黒とする。白の境界からの距離が予め決められている範囲内である黒弱は、白の境界での変位の符号は−であり、黒弱の注目画素における変位の符号は+であって、逆符号となっている。このことから、閾値を−の側へ補正し、あるいは二値化結果を黒とするのである。
【0053】
黒の境界からの距離が予め決められている範囲内である黒弱、白の境界からの距離が予め決められている範囲内である白弱については、境界における変位の符号と注目画素における変位の符号がともに+または−となることから条件を満たさず、固定閾値を補正せずに使用する。
【0054】
図5(B)に示した5値化結果の例では、白または黒の境界から予め決められている範囲の領域としてp、q、r、s、t、uの6領域が存在するが、このうち領域uにおいて、黒の境界に白弱が隣接しており、条件を満たす。この領域uのうち5値の値が白弱の領域において、固定閾値を+側に補正して二値化し、あるいは二値化の結果として白とする。
【0055】
選択した閾値を図5(C)に示し、また、二値化された結果を図5(D)に示している。この二値化結果の例では、注目画素の色濃度が閾値以下の場合に二値の一方の値である白、注目画素の色濃度が閾値よりも高い場合に、二値の他方の値である黒としている。
【0056】
領域1では、5値の値が灰と白弱の領域で固定閾値が選択され、白の領域で局所領域の色濃度の平均値が閾値として選択される。いずれも注目画素の色濃度が閾値以下となり、二値化結果は白となる。領域2では、5値の値が黒の領域では局所領域の色濃度の平均値が閾値として選択され、また、黒弱及び灰の領域では固定閾値が選択される。いずれも注目画素の色濃度が閾値より大きく、二値化結果は黒となる。
【0057】
領域3では、5値の値が灰の領域では固定閾値が選択され、注目画素の色濃度が閾値より大きいことから二値化結果は黒となる。また、5値の値が白弱の領域では、固定閾値に対して+側への補正が施され、この例では補正後の固定閾値が注目画素の色濃度よりも大きいこととし、二値化結果は白となっている。閾値を補正する代わりに、二値化の結果を白としてもよい。図5(D)から、領域2の領域3と隣接する予め決められている領域において二値の値が変更されており、この部分が領域2と領域3の境界が存在していることを表すことになる。
【0058】
なお、この具体例においても、白弱、黒弱以外の場合でも黒または白の境界から予め決められている範囲であれば変位の符号を判断して条件を満たせば閾値に対して補正を行ってもよい。上述の具体例では、5値化したことで条件の適否の判断を白弱、黒弱に限定して判断すればよいようにしている。
【0059】
図6は、本発明の第3の実施の形態を示す構成図である。図中、21は第1二値化部、22は第2二値化部、23は合成部である。第1二値化部21は、処理対象の画像の注目成分について二値化する。二値化の方法は、上述の第1または第2の実施の形態で説明した方法で行う。注目成分としては、明度成分とするとよい。もちろん明度以外の成分を注目成分としてもよい。
【0060】
第2二値化部22は、処理対象の画像の補助成分について二値化する。二値化の方法は、上述の第1または第2の実施の形態で説明した方法で行う。補助成分としては、色差成分とするとよい。もちろん、注目成分以外の成分であれば、どのような成分を補助成分としてもよい。
【0061】
合成部23は第1二値化部21による二値化結果と、第2二値化部22による二値化結果を合成する。合成の際には、第1二値化部21による二値化結果において境界が存在しない領域について、第2二値化部22による二値化結果を重畳する。
【0062】
図7は、本発明の第3の実施の形態における動作の具体例の説明図である。図7(A)には、処理対象の画像の具体例を部分的に示している。この例では、領域1、領域2、領域3の各領域において色差成分が異なっている。領域1は領域2、領域3よりも明度が高く、領域2と領域3の明度は差がないものとしている。図7(A)に矢線で示した明度成分の変化を図7(B)に示している。また、色差成分の変化を図7(E)に示している。
【0063】
まず、第1二値化部21では、ここでは第1の実施の形態で説明した方法により、明度成分に対して二値化処理を行う。明度成分について、局所領域における注目画素の値の変位を算出し、この変位をここでは3値化する。これにより図7(C)に示す3値化結果が得られたものとしている。3値のうち黒及び白の領域では局所領域の色濃度の平均値を閾値として選択し、注目画素の値を二値化する。また、3値のうち、灰となった領域では、あらかじめ設定されている固定閾値を選択し、注目画素の値を二値化する。二値化した結果を図7(D)に示している。
【0064】
一方、第2二値化部22では、ここでは第1の実施の形態で説明した方法により、色差成分に対して二値化処理を行うが、この例では色差成分の微分値の絶対値を求め、さらにその微分値について予め決められた範囲の平均値である局所平均値を求める。図7(E)において、色差成分の微分値(絶対値)を実線で、また局所平均値を破線で、それぞれ示している。そして、その局所平均値と注目画素の色差成分の微分値との差を変位とする。図7(E)では2つの注目画素において変位を矢線で示している。なお、変位の符号は、注目画素の色差成分の微分値が局所平均値よりも小さい場合に符号を‘−’、大きい場合に符号を‘+’としている。
【0065】
このようにして得られる変位を、ここでは3値化する。3値化した結果を図7(F)に示している。図7(F)では、3値を弱、中、強として示している。この3値のうち、弱と強の値をとる領域では色差成分の微分値の局所平均値を閾値として選択し、注目画素の色差成分の微分値を二値化する。また、中の値をとる領域では、固定閾値を選択し、注目画素の色差成分の微分値を二値化する。固定閾値は、その一例を図7(E)に一点鎖線で示している。このようにして各領域で選択した閾値を用いて二値化した結果を図7(G)に示している。
【0066】
合成部23は、図7(D)に示した第1二値化部21による二値化結果と、図7(G)に示した第2二値化部22による二値化結果を合成する。合成の際には、図7(D)に示した第1二値化部21による二値化結果において境界が存在しない領域について、第2二値化部22による二値化結果を重畳する。図7(G)の領域1と領域2の境界付近(領域a)については、図7(D)において二値の反転が存在することから反映させない。また、図7(G)の領域2と領域3の境界付近(領域b)については、図7(D)においては現れていないことから、この領域2と領域3の境界付近(領域b)に対応する図7(D)の二値化結果を反転させる。このようにして合成した結果を図7(H)に示している。図7(D)に示した明度成分についての二値化結果では領域2と領域3の区別が付かないが、図7(G)に示した色差成分から得た二値化結果を反映させることにより、領域2と領域3の区別が付く二値化結果が得られている。
【0067】
なお、この例では注目成分を明度成分、補助成分を色差成分としたが、これに限らず、二値画像に明示したい成分を注目成分及び補助成分とすればよい。また、この例では第1二値化部21及び第2二値化部22は上述の第1の実施の形態で説明した構成であるものとしているが、これに限らず、いずれか一方あるいは両方とも第2の実施の形態で説明した構成であってもよい。
【0068】
また、例えばYCrCb表色系を用いた場合、色差成分としてはCrとCbの2つが存在することになる。このような場合、それぞれの色差成分の微分値の絶対値から上述の実施の形態で説明した二値化処理を行い、それぞれの結果を重畳する処理(両者とも「弱」であれば「弱」、一方でも「強」であれば「強」とする処理)を行って第1二値化部21による二値化結果としてもよい。他にも、それぞれの色差成分の微分値の絶対値を加算し、その結果から上述の実施の形態で説明した二値化処理を行い第1二値化部21による二値化結果とする方法もある。さらに、色差成分の微分値の絶対値に代えて、色差成分そのものを用いてもよい。
【0069】
図8は、本発明の各実施の形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、31はプログラム、32はコンピュータ、41は光磁気ディスク、42は光ディスク、43は磁気ディスク、44はメモリ、51はCPU、52は内部メモリ、53は読取部、54はハードディスク、55はインタフェース、56は通信部である。
【0070】
上述の本発明の各実施の形態及びその変形例で説明した各部の機能を全部あるいは部分的に、コンピュータにより実行可能なプログラム31によって実現してもよい。その場合、そのプログラム31およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶させておけばよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部53に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部53にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク41、光ディスク42(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク43、メモリ44(ICカード、メモリカード、フラッシュメモリなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
【0071】
これらの記憶媒体にプログラム31を格納しておき、例えばコンピュータ32の読取部53あるいはインタフェース55にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム31を読み出し、内部メモリ52またはハードディスク54(磁気ディスクやシリコンディスクなどを含む)に記憶し、CPU51によってプログラム31を実行することによって、上述の本発明の各実施の形態及びその変形例として説明した機能が全部あるいは部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラム31をコンピュータ32に転送し、コンピュータ32では通信部56でプログラム31を受信して内部メモリ52またはハードディスク54に記憶し、CPU51によってプログラム31を実行することによって実現してもよい。
【0072】
コンピュータ32には、このほかインタフェース55を介して様々な装置と接続してもよい。例えば情報を表示する表示手段や利用者からの情報を受け付ける受付手段等も接続されていてもよい。また、例えば画像読取装置がインタフェース55を介して接続され、画像読取装置で読み取った画像あるいは該画像に処理を施した画像を処理対象の画像として本発明の各実施の形態及びその変形例で説明した処理を行ってもよい。処理後の二値化した画像は、他のプログラムに渡してもよいし、ハードディスク54に記憶させ、またはインタフェース55を介して記憶媒体に記憶させ、あるいは通信部56を通じて外部へ転送してもよい。さらに、画像形成装置がインタフェース55を介して接続されていてもよく、処理後の二値化した画像を画像形成装置により形成してもよい。
【0073】
もちろん、部分的にハードウェアによって構成することもできるし、全部をハードウェアで構成してもよい。あるいは、他の構成とともに本発明の各実施の形態及びその変形例で説明した機能の全部あるいは部分的に含めたプログラムとして構成してもよい。もちろん、他の用途に適用する場合には、その用途におけるプログラムと一体化してもよい。
【符号の説明】
【0074】
11…変位算出部、12…N値化部、13…選択二値化部、14…距離算出部、21…第1二値化部、22…第2二値化部、23…合成部、31…プログラム、32…コンピュータ、41…光磁気ディスク、42…光ディスク、43…磁気ディスク、44…メモリ、51…CPU、52…内部メモリ、53…読取部、54…ハードディスク、55…インタフェース、56…通信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8