(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
閉経後の女性において、尿失禁、膣萎縮、萎縮性膣炎、膣の乾燥、性交疼痛症および性機能障害から選ばれた、膣の疾患または問題を獲得する可能性の処置および/または減少において使用するための薬剤の製造におけるデヒドロエピアンドロステロン、デヒドロエピアンドロステロン−スルフェート、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよび4−アンドロステン−3,17−ジオンからなる群から選択される性ステロイド前駆体の使用であって、ここにおいて、前記薬剤は13mg/日以下の治療量で前記性ステロイド前駆体が膣内投与されるように調製される、使用。
前記性ステロイド前駆体の治療量は、増加した循環するエストロゲンと共に乳癌および子宮癌のリスクを回避するために、エストラジオールの循環レベルを正常な閉経後の女性に見られる値よりも高く上昇させない、請求項1に記載の使用。
前記性ステロイド前駆体が、併用療法の一部として、治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータと別個または同時に投与するように調製される、請求項1に記載の使用。
前記治療有効量の選択的エストロゲン受容体モジュレータが、閉経後の女性に通常存在する乳癌および子宮癌のリスクを低下させるため、ならびに骨減少、脂肪蓄積および2型糖尿病を予防するために有効である、請求項7に記載の使用。
前記薬剤が、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、オビュール剤、坐剤、リングなどからなる群から選択される膣内製剤の形態である、請求項1〜10のいずれかに記載の使用。
デヒドロエピアンドロステロン、デヒドロエピアンドロステロン−スルフェート、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオールおよび4−アンドロステン−3,17−ジオンからなる群から選択される性ステロイド前駆体を含み、医薬的に許容可能な賦形剤、希釈剤またはキャリアをさらに含み、13mg/日以下の前記性ステロイド前駆体の投与量を供するように調製される、膣内投与用の医薬組成物。
前記賦形剤、希釈剤またはキャリアが、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸または硬化脂肪酸の純粋または混合の天然または半合成のトリグリセリド、ジグリセリドまたはモノグリセリド;バター;パーム油、パーム核油、部分的に水素化された綿実油およびやし油ならびにそのトリグリセリド誘導体;水素化された脂肪アルコールおよびエステル;ステアリン酸ポリオキシル;再編成硬化植物油;天然植物油から誘導されるモノグリセリドとジグリセリドとトリグリセリドとの共融混合物;トリグリセリドエステル;Tween61;カカオ脂;および前述のものの組み合わせからなる群から選択される、請求項19に記載の膣坐剤。
Witepsol H−15が、飽和脂肪酸C12−C18のトリグリセリドと対応する部分グリセリド(ハードファット)の様々な部分との混合物により置き換えられる、請求項23または24に記載の膣坐剤。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
略式の引用でここで議論された文献のリストは以下のとおりである。
【0032】
膣の乾燥は、閉経後の女性の75%に見られる(Wines and Willsteed 2001;N.A.M.S.2007)。様々な理由、特に、エストロゲンによる合併症の懸念により、膣萎縮を有し症状を示す女性の20〜25%だけが内科療法を求めている(Pandit and Ouslander 1997;N.A.M.S.2007)。したがって、膣萎縮を罹患する多数の女性の、寿命の大部分に対する生活の質を改善する明確な医療ニーズおよび大きな機会が存在する。のぼせは、時間がたつにつれて自然に軽減するが、膣萎縮の症状、すなわち、膣の乾燥、陰門膣の過敏/かゆみおよび性交疼痛症は、通常、処置しないと時間がたつにつれて重症度が増すと言及することができる。
【0033】
卵巣によるエストロゲン分泌が閉経時に終わるという周知の事実に基づくと、今のところ、全身性および局所性のエストロゲンが、膣萎縮を処置するための唯一のアプローチである。しかしながら、全身性のエストロゲンとプロゲスチン(HRT)およびエストロゲンのみ(ERT)は、乳癌(Steinberg,Thacker et al.1991;Sillero−Arenas,Delgado−Rodriguez et al.1992;Colditz,Egn et al.1993;Colditz,Hankinson et al.1995;Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer 1997;Hulley 2002;Beral 2003;Chlebowski,Hendrix et al.2003;Holmberg and Anderson 2004;Lyytinen,Pukkala et al.2006;Corrao,Zambon et al.2008;Holmberg,Iversen et al.2008;Li,Plummer et al.2008)、卵巣癌(Garg,Kerlikowske et al.1998;Coughlin,Giustozzi et al.2000;Lacey,Mink et al.2002;Riman,Dickman et al.2002;Rodriguez,Patel et al.2002;Rossouw,Anderson et al.2002;Lyytinen,Pukkala et al.2006)ならびに子宮体癌(エストロゲンのみ)(Gambrell,Massey et al.1980;Persson,Adami et al.1989;Voigt,Weiss et al.1991;Jick,Walker et al.1993;Grady,Gebretsadik et al.1995;Beral,Bull et al.2005)のリスクを上昇させると示されている。Women’s Health Initiative Studyの後の公表(Rossouw,Anderson et al.2002)は、最も大きな衝撃を与え、ゆえに、閉経期症状の利用可能な処置に関する安全性に疑念が植え付けられた(Archer 2007)。
【0034】
膣内製剤は、エストロゲンに対する全身曝露を回避するために開発されたが、長期間にわたる研究から、すべての膣内エストロゲン製剤が比較的高い血清エストロゲンレベル(直接測定されるか、またはその全身性作用を介して測定される)をもたらすことが異議なく証明されている(Englund and Johansson 1978;Rigg,Hermann et al.1978;Martin,Yen et al.1979;Furuhjelm,Karlgren et al.1980;Deutsch,Ossowski et al.1981;Mandel,Geola et al.1983;Nilsson and Heimer 1992;Nachtigall 1995;Ayton,Darling et al.1996;Dugal,Hesla et al.2000;Rioux,Devlin et al.2000;Manonai,Theppisai et al.2001;Notelovitz,Funk et al.2002;Ponzone,Biglia et al.2005;Weisberg,Ayton et al.2005;Galhardo,Soares et al.2006;Kendall,Dowsett et al.2006;Long,Liu et al.2006;Bachmann,Lobo et al.2008)。血清エストロゲンレベルの有意な上昇を示すこれらのデータは、膣内エストロゲン製剤の使用もまた、潜在的に乳癌および子宮癌のリスクの上昇に関連することを明確に示唆している(Kvorning and Jensen 1986;Mattson,Culberg et al.1989;Rosenberg,Magnusson et al.2006;N.A.M.S.2007)。実際に、子宮内膜に対する膣エストロゲン製剤の刺激作用についての関心が本格的に高まっている((N.A.M.S.2007)。
【0035】
エストロゲンの膣内投与後の血清エストラジオール(E
2)レベルの最近の測定は、特異性、正確性、信頼性および感度を欠く技術であるラジオイムノアッセイを用いたものだった(Rinaldi,Dechaud et al.2001)。本発明者らは、最もよく使用されている2つのエストロゲン製剤の膣内投与後に、GLP(優良試験所基準)承認の質量分析アッセイを用いて血清エストロゲンを測定した(Labrie,Cusan et al.2008)。この研究は、E
2丸剤(25μgE
2/日)とコンジュゲートエストロゲンクリーム(1gの0.625mgのコンジュゲートエストロゲン/日)の両方が、毎日処置した1週間後に、閉経後の女性の血清E
2が約5倍増加させることを決定的に示しうる。そのようなデータから、膣に局所的に適用されるエストロゲンの作用が、膣に限定される可能性は低く、以前に提唱されたように(Englund and Johansson 1978;Rigg,Hermann et al.1978;Martin,Yen et al.1979;Furuhjelm,Karlgren et al.1980;Deutsch,Ossowski et al.1981;Mandel,Geola et al.1983;Nilsson and Heimer 1992;Nachtigall 1995;Ayton,Darling et al.1996;Dugal,Hesla et al.2000;Rioux,Devlin et al.2000;Manonai,Theppisai et al.2001;Notelovitz,Funk et al.2002;Ponzone,Biglia et al.2005;Weisberg,Ayton et al.2005;Galhardo,Soares et al.2006;Kendall,Dowsett et al.2006;Long,Liu et al.2006;Bachmann,Lobo et al.2008)全身性作用が予想されると示唆される。
【0036】
上で示された、全身的と局所的の両方で投与されるエストロゲンの安全性についての懸念に加えて、最近のデータは、女性が閉経時にエストロゲン不足となることだけでなく、30歳代から次第に、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)からアンドロゲンおよび/またはエストロゲンへのイントラクライン変換によって特定の末梢標的組織において生成されるアンドロゲンも不足することを、明確に証明している(Labrie,Belanger et al.1988;Labrie 1991;Labrie,Luu−The et al.2003;Labrie,Luu−The et al.2005)。実際に、血清DHEAおよびDHEA−スルフェートは、30歳の時に見られるピークから(Orentreich,Brind et al.1984;Labrie,Belanger et al.1997;Labrie,Luu−The et al.2003)閉経時の60%低下した値に次第に減少する(Labrie,Belanger et al.2006)。
【0037】
女性におけるアンドロゲンの役割に関して、女性が、男性において観察されるアンドロゲンの50%も分泌すると言及することは重要である(Labrie,Belanger et al.1997;Labrie,Luu−The et al.2005)。血清DHEAは、女性において一連の生理学的役割を果たすアンドロゲンの主要な供給源であるので(Labrie,Luu−The et al.2003;Labrie 2007)、閉経時にすでに見られる循環DHEAの60%の減少は、総アンドロゲンプールの同様の60%の減少をもたらし(Labrie,Belanger et al.2006)、その結果、骨、筋肉、皮膚、乳腺、膣、脳における低男性化(hypoandrogenicity)、ならびにグルコース、インスリンおよび脂質の代謝に対する低男性化の潜在的な徴候および症状がもたらされる(Labrie,Luu−The et al.2003;Labrie 2007)。アンドロゲン標的組織の中でも、最近のデータは、ラットにおいて、DHEA投与後に膣がアンドロゲンに対して感受性となり、膣の表面の上皮層に対してだけでなく、固有層内および筋層上のコラーゲン線維に対しても有益な作用がもたらされることが示された(Berger,El−Alfy et al.2005)。
【0038】
経皮的または局所的に投与されたDHEAが膣に対して有益な作用を示した、本発明者らの前臨床研究(Sourla,Flamand et al.1998;Berger,El−Alfy et al.2005)および臨床研究(Labrie,Diamond et al.1997;Labrie,Cusan et al.2008)のデータに基づくと、この臨床試験は、12週間にわたって毎日投与される膣内DHEAの3つの用量の作用についての前向き無作為化プラセボ対照試験であり、これは、主要な目標としての、表層細胞および傍基底細胞、膣のpHならびに膣萎縮の最も厄介な症状の変化に対するものである。このデータは、局所的に投与されたDHEAが、膣萎縮の徴候および症状のすべてを治すのに非常に有効かつ迅速であり、DHEA投薬の2週間ですでにほぼ最大の作用が達成されており、他のすべてのステロイドが、変化しないままか、または十分に、正常な閉経後の女性に見られる範囲内のまま、血清エストロゲンまたはアンドロゲンの有意な変化を引き起こさないことを明確に示している。
【0039】
DHEAを膣に局所的に投与するとき、膣において局所的に生成されるエストロゲンおよびアンドロゲンの有益な作用は、血液中にエストラジオールまたはテストステロンが有意に放出されることなく達成される(Labrie,Cusan et al.J.Ster.Biochem.Mol.Biol.近刊)。細胞内分泌学(intracrinology)のプロセスによってDHEAからアンドロゲンおよび/またはエストロゲンが形成される際、その応答は各組織の各細胞に特異的に存在する酵素機構の活性に依存するので、任意の組織における作用の予測は不可能である。したがって、1つの組織においてDHEAから生成されるアンドロゲンおよびエストロゲンから、類似のアンドロゲンおよびエストロゲンが別の組織において生成されうる程度を予測することは不可能である。
【0040】
臨床試験ERC−210(実施例3)の結果は、ホルモン前駆体補充療法(HPRT)としてのDHEAの局所投与が、閉経後の女性における膣萎縮の症状および徴候のすべてを治す際において非常に有効かつ迅速であることを初めて明確に証明している。最も重要なことには、このことは、血清DHEAおよびその任意の代謝産物が変化することなく、または正常な閉経後の女性に見られる値の範囲内にすべて十分に入る最小の変化で、活性なエストロゲンまたはアンドロゲンの血清レベルを上昇させない用量の(0.5%)DHEAにおいて達成されている(Labrie,Cusan et al.2008)。
【0041】
閉経後の女性の75%が、膣萎縮を罹患しており(Wines and Willsteed 2001;N.A.M.S.2007)、ゆえに彼女らの寿命の大部分における生活の質に影響が及んでいるが、たった20%だけが処置を求めている(Pandit and Ouslander 1997)。エストロゲンの高い血中濃度に関する乳癌の不安が、関与する主要な理由である。体循環中へのエストロゲン分泌は、もっぱら卵巣起源であり、それは閉経時に終わるので、閉経後の女性へのエストロゲンの投与は、生理学的でないと思われる。WHIの余波の中、女性の生活の質を改善し、リスクを最小にし、利益を最大にしつつ、エストロゲンの閉経期の利点のすべてをもたらしうる代替のホルモン療法のタイプおよび製剤を探索することが、科学的挑戦である(Archer 2007)。非エストロゲンベースの処置が、確かな有効性を示さないので(Nelson,Vesco et al.2006;Suckling,Lethaby et al.2006)、女性およびその医師は、膣萎縮に対して安全でない処置法を有し続けている。
【0042】
様々な形態のエストロゲンが、陰門膣の萎縮に対して有効な処置である(Pandit and Ouslander 1997;Utian,Shoupe et al.2001)。実際に、膣のE
2錠剤は、E
2リング(Weisberg,Ayton et al.2005)ならびにコンジュゲートエストロゲンクリーム(Rioux,Devlin et al.2000;Manonai,Theppisai et al.2001)と類似の有効性を示している。
【0043】
この新規HPRTは、膣内E
2またはコンジュゲートエストロゲンで処置された後に、質量分析によって測定された血清E
2の5倍増加と好対照である(Labrie,Cusan et al.2008)。血清エストロゲンの変化についてのこれらの最近のデータは、すべての膣内エストロゲン製剤が、高い血清エストロゲン濃度(ラジオイムノアッセイによって直接測定されるか、または全身性作用を介して測定される)をもたらすことを示す長期間にわたる一連の研究によって確認されたものである(Englund and Johansson 1978;Rigg,Hermann et al.1978;Martin,Yen et al.1979;Furuhjelm,Karlgren et al.1980;Deutsch,Ossowski et al.1981;Mandel,Geola et al.1983;Nilsson and Heimer 1992;Nachtigall 1995;Ayton,Darling et al.1996;Dugal,Hesla et al.2000;Rioux,Devlin et al.2000;Manonai,Theppisai et al.2001;Notelovitz,Funk et al.2002;Ponzone,Biglia et al.2005;Weisberg,Ayton et al.2005;Galhardo,Soares et al.2006;Kendall,Dowsett et al.2006;Long,Liu et al.2006;Bachmann,Lobo et al.2008)。
【0044】
膣エストロゲンを用いるときに報告される最もよくある有害事象は、膣の出血および乳房痛であり、この両方ともが、高い血清エストロゲンに続発するものである(Suckling,Lethaby et al.2006)。これらの副作用は、E
2リング、コンジュゲートエストロゲンクリームならびにE
2錠剤について報告されている(Ayton,Darling et al.1996;Weisberg,Ayton et al.2005)。上で述べたように、子宮内膜に対する膣エストロゲンの刺激作用についての懸念も存在する(N.A.M.S.2007)。24週間にわたって膣の錠剤を投与された女性の9%において、子宮の出血、乳房痛および会陰部痛が報告され、コンジュゲートエストロゲン膣クリーム群では、34%が同じ症状を訴えた(Rioux,Devlin et al.2000)。(Suckling,Lethaby et al.2006)は、様々な膣エストロゲン調製物間で差異がないと報告した。
【0045】
乳癌を処置するためのアロマターゼ阻害剤を使用することによって、閉経後の女性における萎縮性膣炎が悪化しうるか、または誘導されうることは、周知である。実際に、これらの薬物は、すべての組織におけるE
2生合成を減少させることによって乳癌に対する利点を発揮するので、閉経期の症状の頻度および重症度が高まる(Fallowfield,Cella et al.2004;Morales,Neven et al.2004)。アロマターゼ阻害剤で処置された7人の乳癌患者が、2週間にわたって25μgという1日量でVagifemを投与され、次いで、その後1週間に2回投与されるという最近の研究では、血清E
2が、2週間で3pmol/lから72pmol/lという中央値に上昇した(3〜232の範囲)(Kendall,Dowsett et al.2006)。血清E
2レベルは、その後、通常、40pmol/l以下の値に低下するが、第7〜10週目に137および219pmol/lという値が見られた。Premarinクリームを投与された患者は、2週間で83pmol/lという血清E
2レベルを有した。E
2測定のための血液サンプリングは、患者の来院時に行ったものであり、Vagifem投与後の最も高い血清E
2レベルに対応するタイミングである可能性は低いことに注意すべきである。したがって、(Kendall,Dowsett et al.2006)に報告されている値は、おそらく、膣内Vagifem丸剤またはPremarinクリームの投与後の血清E
2の真の増加を不明な程度に過小評価している。その著者らは、アロマターゼ阻害剤とともにVagifemを使用することが、禁忌となると結論づけた。アロマターゼ阻害剤で処置された乳癌女性において得られたこれらの知見は、閉経後の女性において、任意の膣エストロゲン調製物ならびに任意の経口または経皮的エストロゲン調製物を使用することについて重大な問題を提起している。
【0046】
乳癌の高リスクをもたらす様々な膣エストロゲン調製物で処置した後の血清E
2の比較的大きい上昇は、十分に認識されている問題である(Rosenberg,Magnusson et al.2006)。少数の事象および短期間の追跡を有する研究(1472人の女性のうちの4.7%のサブグループ)では、膣エストロゲンを使用した女性のサブグループにおける無病生存率の統計学的有意差は見出されなかった(Dew,Wren et al.2003)が、アロマターゼ阻害剤による処置の目的が、E
2生合成の最大阻害を的確に達成することであるとき、乳癌治療中に血清E
2レベルを上昇させることは、妥当または許容可能でないとみられる。
【0047】
Vagifemを用いた初期の研究では、E
2錠剤は、25μg用量で投与されるとき、80pmol/lという血清E
2レベルをもたらし、14時間以降は50pmol/l未満の値だった(Kvorning and Jensen 1986)。Vagifemを用いた最近の研究では、最大および平均の24h血清E
2濃度は、用量25μgに対してそれぞれ180±99pmol/lおよび84pmol/lと測定され、用量10μgに対しては、81±62pmol/lおよび40pmol/lという値が見られた(Notelovitz,Funk et al.2002)。他の膣エストロゲン錠剤およびクリームは、なおもより高い血清エストロゲンレベルをもたらした(Schiff,Tulchinsky et al.1977;Rioux,Devlin et al.2000)。
【0048】
10μgおよび25μgというE
2膣錠剤を用いた場合、血清E
2は、約35pmol/lという基底値からそれぞれ約90および160pmol/lという最大値に上昇することが見いだされた(Nilsson and Heimer 1992)。Vagifemを用いたときの血清E
2は、第1日目において51±34pg/mlというCmaxが報告され、この値は、実際に第14日目(47±21pg/ml)および第84日目(49±27pg/ml)において変化しなかった(Vagifem,Physician Package Insert 1999)。
【0049】
別の研究では、25μgのVagifemで処置した52週間後に、E
2の血清レベルが、10.3±21.5pg/mlから9.9pg/mlに変化しないままであったと報告された(Bachmann,Lobo et al.2008)。このようなデータは、たいがい、Vagifemを適用した3または4日後に血液サンプリングが行われるという事実によって説明されうる。閉経後の女性において質量分析によって測定される正常なE
2血清レベルは、2〜3倍低いので、その研究における処置前の高い血清E
2レベルが、使用された免疫ベースのアッセイの特異性の欠如に最も関係する可能性があることに言及することも重要である(Labrie,Belanger et al.2006)。
【0050】
初期の研究では、1.25mgのPremarinの経口投与および膣投与によって、E
2およびエストロンの血清レベルが、投与後の24時間にそれぞれ少なくとも100pg/mlおよび1000pg/mlまでもたらされ、そのレベルは、膣適用後にいくらか高かった。ほとんどの被験体において血清ゴナドトロピンレベルが低下した(Englund and Johansson 1978)。同様のデータは、(Rigg,Hermann et al.1978)によって報告された。最近の研究では、0.625mgのPremarinを毎日、経口投与または膣内投与した3ヶ月後に、血清E
2レベルが、それぞれ83.1および58.6pg/mlに上昇し(Long,Liu et al.2006)、コンジュゲートエストロゲンの経口投与と比べて、血清E
2は膣内投与後に36%低下しただけだったので、ゆえに膣内と経口の両方のエストロゲン投与後の非常に重要な全身性曝露が説明される。1週間に3回、1日あたり2gという用量でPremarin膣クリームを用いた12週間の研究では、21%の女性が、プロゲストーゲン試験後に出血を起こした(Nachtigall 1995)。さらに、これらの女性のうち、12%が、超音波検査時に子宮内膜の厚さの増加を示した。
【0051】
膣リングを使用したとき、血清E
1、E
2またはE
1Sレベルが上昇しなかったことが報告された(Nachtigall 1995;Gupta,Ozel et al.2008)が、60歳を超える女性ではE
1SおよびE
2の有意な増加が観察された(Naessen,Rodriguez−Macias et al.2001)。最近の研究のESTリング群では、血清E
2は、第24週目に16±22pmol/lから49±64pmol/lに増加した(Weisberg,Ayton et al.2005)。一方、Vagifem群では、血清E
2は、15±33pmol/lから36±51pmol/lに増加した。それにもかかわらず、これらの著者らは、血清E
2が、正常な閉経後の女性に見られる値の範囲内またはその値の付近のままであると報告した。ESTリングまたはVagifemで処置した48週間で、30〜32%の女性が、頻尿を訴え、36〜39%が、尿意逼迫を訴え、18〜33%が、性交疼痛症を訴えた(Weisberg,Ayton et al.2005)。
【0052】
3つの研究は、リングを挿入した後の最初の0.5〜8時間に、正常な周期女性において見られる血清エストロゲンの低い領域または100〜200pmol/Lに達する血清エストロゲンの急な増加を除いて、E
2膣リングが90日間にわたって低い血清E
2をもたらすことを証明している(Holmgren,Lindskog et al.1989;Schmidt,Andersson et al.1994)(Baker and Jaffe 1996)。膣内経路によって7.5μgのE
2を毎日送達することによって全身性作用がもたらされることは、そのような膣内用量のE
2で処置された2年後の、股関節部および腰椎の全体の骨塩密度の有意な増加の観察結果によって示される(Salminen,Saaf et al.2007)。
【0053】
上で述べたように、子宮内膜に対する膣エストロゲンの刺激作用についての懸念が存在する(N.A.M.S.2007)。32人の女性を25μgの膣内E
2(Vagifem)で処置した12週間後、1人の患者が、異型性でない単純な過形成を有した(Bachmann,Lobo et al.2008)。80人の女性が関与した24週間にわたる研究では、増殖性の子宮内膜が1例見られ(Rioux,Devlin et al.2000)、別の31人の女性の52週間にわたる研究では、2人が、増殖性の子宮内膜を有した(Mettler and Olsen 1991)。
【0054】
1週間に3回、2gという用量でPremarin膣クリームを用いた12週間にわたる研究では、21%の女性が、プロゲストーゲン試験後に出血を起こした(Nachtigall 1995)。これらのうち、12%が、超音波検査によって子宮内膜の厚さの増加が示された。1週間に3回、膣内に投与される0.3mgという用量のコンジュゲートエストロゲンを使用することによって、子宮内膜の増殖が、20例中1例だけで見られたので、子宮内膜の増殖は、まれであったとしても誘導されることがある(Nachtigall 1995)。
【0055】
徐放エストラジオールリング(ESTリング)は、0.625mgのPremarinクリームと同様の子宮内膜の増殖を誘導した(Ayton,Darling et al.1996)が、1.25mgのPremarinクリームよりは子宮内膜の増殖を誘導しなかった(Nachtigall 1995)。実際に、膣リング(ESTリング)とコンジュゲートエストロゲンクリーム(Premarinクリーム)の両方が、子宮内膜の増殖を誘導すると示されている(Nachtigall 1995;Ayton,Darling et al.1996)。E
2リングを用いたときに、子宮内膜のポリープにおける中程度の子宮内膜の増殖または過形成に関する2つの症例が見られ(Nachtigall 1995)、E
2錠剤と比較されるコンジュゲートエストロゲンクリームの治験においてコンジュゲートエストロゲンクリームを用いたときに、過形成に関する2つの症例が見られた(1例は、単純性であり、もう1例は、複合性であり、その両方が非定型性であった)(Rioux,Devlin et al.2000)。E
2膣錠剤は、エストリオール膣錠剤と同様の子宮内膜の過形成に関連した(Dugal,Hesla et al.2000;Manonai,Theppisai et al.2001)が、コンジュゲートエストロゲンクリームよりも低い程度の子宮内膜の過形成に関連した(Manonai,Theppisai et al.2001)。
【0056】
局所的に膣内に適用した後の血清エストロゲンレベルは、経口または経皮的なHRTまたはERTに比べて低い程度に上昇するが、乳癌のリスクが課題として残り、膣内エストロゲンの安全性は疑わしい(Suckling,Lethaby et al.2006;N.A.M.S.2007)。実際に、経口または経皮的な投与経路に比べて、膣内投与後の血清エストロゲンの増加は小さいが、すべての膣内エストロゲン製剤について、正常な閉経後のレベルよりも高いレベルに有意に上昇する(Ponzone,Biglia et al.2005)。
【0057】
エストロゲン投与に関連する高い乳癌リスクに加えて、卵巣のエストロゲン分泌は、閉経時にすべての女性において終わるので、膣萎縮を罹患していない閉経後の女性(閉経後の集団の25%と推定される)と、膣萎縮を罹患する残りの75%の閉経後の女性との間の真のホルモンの差(Wines and Willsteed 2001;N.A.M.S.2007)は、体循環中のエストロゲンの分泌に関係しないことを念頭に置いておくことが、重要である。その結果として、エストロゲン分泌の不足は、大部分の閉経後の女性において膣萎縮の症状が生じることに対する妥当な説明ではない。
【0058】
しかしながら、性ステロイド形成は、閉経時において卵巣機能の休止とともに停止しない。女性における内分泌生理学の理解の最近の進歩は、閉経後に、副腎によって分泌されるDHEAが、もっぱら標的組織において生成される性ステロイドの唯一の供給源であることを示している(Labrie 1991)。全身循環中に分泌される卵巣起源のエストロゲン(測定可能である)とは異なり、DHEAは、各組織におけるステロイド産生酵素の発現レベルに従って様々な速度で末梢組織において変換される不活性な前駆体である。細胞内分泌学のプロセスは、循環中に活性なステロイドを著しく放出することなく、活性な性ステロイドの局所的な組織内形成を可能にする(Labrie,Dupont et al.1985;Labrie,Belanger et al.1988;Labrie 1991;Labrie,Luu−The et al.2005)。
【0059】
しかしながら、DHEAの分泌は、年齢とともに減少し、60%の減少が、閉経時にすでに観察されている(Labrie,Luu−The et al.2003;Labrie,Belanger et al.2005;Labrie,Luu−The et al.2005;Labrie,Belanger et al.2006;Labrie,Luu−The et al.2006;Labrie 2007)。症状のある閉経後の女性と無症状の閉経後の女性との唯一の差異は、副腎によって分泌されるDHEAの量またはDHEAに対する膣組織の感度である。様々な女性の感度の差は、各組織における各細胞型に特異的な酵素機構の活性レベルに、不明な程度に関係する可能性がある(Labrie 1991;Labrie,Belanger et al.2005)。この知識から、DHEAは、閉経後の女性のための生理学的なホルモン補充療法になるが、エストロゲンはそうならない。
【0060】
本発明者らの以前の研究において十分に証明されているように(Labrie 1991;Labrie,Luu−The et al.2003;Labrie,Luu−The et al.2005;Labrie,Belanger et al.2007)、生理学的な量の外因性DHEAを補充することによって、必要とされる細胞内分泌学のステロイド産生酵素を含む適切な標的組織においてのみアンドロゲンおよび/またはエストロゲンの生合成が可能となる(Labrie,Luu−The et al.2005)。末梢の標的組織においてDHEAから局所的に合成された活性なアンドロゲンおよびエストロゲンは、その形成が生じた細胞と同じ細胞においてその作用を発揮する。最も重要なことには、活性な性ステロイドが循環中にごくわずかしか漏出しないので、循環エストロゲンまたは循環アンドロゲンが有意に変化することなく、著明で有益な作用が膣において観察されると説明される(Labrie,Cusan et al.2008)。標的組織におけるエストロゲンおよびアンドロゲンのこの局所的な生合成、作用および不活性化は、過剰な性ステロイドに対する他の組織の曝露を排除するので、乳癌、卵巣癌および子宮癌をはじめとした、多量のエストロゲンの曝露による望ましくない副作用の高リスクが排除される(Gambrell,Massey et al.1980;Persson,Adami et al.1989;Steinberg,Thacker et al.1991;Voigt,Weiss et al.1991;Sillero−Arenas,Delgado−Rodriguez et al.1992;Colditz,Egn et al.1993;Jick,Walker et al.1993;Colditz,Hankinson et al.1995;Grady,Gebretsadik et al.1995;Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer 1997;Garg,Kerlikowske et al.1998;Coughlin,Giustozzi et al.2000;Hulley 2002;Lacey,Mink et al.2002;Riman,Dickman et al.2002;Rodriguez,Patel et al.2002;Rossouw,Anderson et al.2002;Beral 2003;Chlebowski,Hendrix et al.2003;Holmberg and Anderson 2004;Beral,Bull et al.2005;Lyytinen,Pukkala et al.2006;Corrao,Zambon et al.2008;Holmberg,Iversen et al.2008;Li,Plummer et al.2008)。
【0061】
現在、pHの変化が、膣萎縮治療の有益な作用を反映する妥当なパラメータとして認識されている。25μgのE
2による膣内処置の12週間後に、5.0未満のpHを有する患者のパーセンテージは、プラセボ群における21%と比べて、51%だった(Bachmann,Lobo et al.2008)。しかしながら、ベースラインでは、対応する2つの群における11.2%および13%の女性が、5.0未満のpHを有した。臨床試験ERC−210(実施例3)において、治療の開始時に5.0未満のpHを有した患者は存在せず、12%、36%、46%および48%が、それぞれ0%、0.25%、0.5%および1.0%のDHEA群において、12週間で5.0未満のpH値を有した。
【0062】
臨床試験ERC−210(実施例3)では、膣の上皮細胞の成熟に対するDHEAの作用は、特に迅速である:0.5%DHEAオビュール剤を用いるとき、傍基底細胞に対して79%という最大作用が、2週間ですでに観察され、表層細胞に対して発揮される48%という最大刺激作用が、同じ時間間隔において観察された。一方、表層細胞のパーセンテージに対して85%という0.5%DHEAの最大作用が、4週間で達成された。同様に、最も厄介な症状に対して63%という0.5%DHEAの最大作用が、2週間で観察され、87%が、4週間で達成された。さらに、プラセボ群における48.8%と比べて、0.5%DHEA群では、17.8%の女性だけが、12週間で、最も厄介な症状に変化が無いと報告した。
【0063】
使用された3つのDHEAの用量において、傍基底細胞の%が1ヶ月後に20%未満に減少したので、傍基底細胞に対するDHEAの作用は、迅速である。表層細胞の%に対する作用もまた、非常に迅速であり、高い(1%)DHEA用量を用いたとき、100%の作用が2週間で見られた。膣エストロゲンのクリームまたは錠剤を用いた研究において、12週間で測定された約50%の作用が、2週間で観察された(Rioux,Devlin et al.2000)。このようなデータは、DHEAの作用の迅速性が、膣のE
2およびコンジュゲートエストロゲン製剤の作用に比べて、劣っておらず、おそらく勝っていることを示唆している。
【0064】
71人の閉経後の女性における経口エストロゲンの作用に関する研究では、0.3mgの経口合成コンジュゲートエストロゲンを毎日投与することにより、傍基底細胞が23%から2.3%に減少し、表層細胞が、2.1%から15.9%に増加した(Marx,Schade et al.2004)。0.3mgおよび0.625mgの用量のコンジュゲートウマエストロゲンと比較した研究では(Utian,Shoupe et al.2001)、0.625mgの用量が、表層細胞の%に対してより大きな作用を示した。
【0065】
最近の研究において、膣の成熟値(VMV)が、エストロゲン処置群において、ベースラインの27.45から56.85に上昇した(p<0.0001)(Simon,Reape et al.2007)。エストロゲン処置群において、表層細胞のパーセンテージは、ベースラインから17.15増加し、傍基底細胞のパーセンテージは、41.66%減少した。同じ研究において、膣のpHは、エストロゲン群においてベースラインの6.74から5.05に低下した(1.69または24%の低下))。最も厄介な症状の重症度は、プラセボ群における2.59から1.84への減少(−0.75)と比べて、エストロゲン群では2.58から1.04に減少した(−1.54)。エストロゲンを用いて観察されたそのようなデータは、0.5%DHEA群における12週間での最も厄介な症状の重症度の1.56の減少および臨床試験ERC−210(実施例3)において観察されたプラセボ群における0.67の減少に匹敵する。
【0066】
第12週目において、11%のESTリング被験体および24%のVagifem被験体が、持続性の萎縮性の上皮を有していた。第48週目において、そのそれぞれの値は、8%および14%であった(Weisberg,Ayton et al.2005)。VagifemまたはESTリングによる処置の48週間で、膣の乾燥が33%の女性になおも存在していた(Weisberg,Ayton et al.2005)。一方、ESTリングおよびVagifemで処置した後、それぞれ15%および20%の女性において外陰部のそう痒症が存在したままであり、ESTリングおよびVagifemで処置した後、それぞれ33%および28%の女性がなおも性交疼痛症を有していた。プロゲストーゲン試験後の出血は、Vagifem群において7%、ESTリング群において0%であった。
【0067】
0.625mgのPremarin(クリーム)を経口的または膣内に毎日投与した3ヶ月後、それぞれ70.6%および75%の性交疼痛症の改善が観察された(Long,Liu et al.2006)。この研究において、1gの0.625mgPremarinが、性機能障害の処置に対する最小用量であることが結論付けられた。
【0068】
25μgのE
2を膣内に投与された女性のうち、処置の12ヶ月後に、12.4%の症例において性交疼痛症が持続していた(Simunic,Banovic et al.2003)。局所的なE
2錠剤の治療の成功率は、患者が判断するとき84.5%であり、医師が判断するとき86.1%であった(Simunic,Banovic et al.2003)。Bachman et al,1992(Bachmann,Notelovitz et al.1992)は、経口エストロゲン補充療法に対して40〜50%の女性が、膣の乾燥を持続して訴えたと報告している。
【0069】
DHEAで処置した12ヶ月後に以前に報告されたように(Labrie,Diamond et al.1997)、臨床試験ERC−210(実施例3)は、処置前および処置の12週間後に得られた子宮内膜の生検の組織病理学検査によって示されるように、ホルモン前駆体DHEAを膣内投与した3ヶ月後の子宮内膜の組織学に対して作用を示さない。これらの知見は、ヒト子宮内膜にアロマターゼ活性が無いことと一致する(Baxendale,Reed et al.1981;Bulun,Lin et al.2005)。これらの知見は、生涯にわたってDHEAが連続的に分泌されるにもかかわらず、子宮内膜の萎縮が閉経後の特徴であるという十分に認識されている臨床所見によってもまた強く裏付けられる(Labrie,Luu−The et al.2005;Labrie,Belanger et al.2006)。DHEAをエストロゲンに変換するのに必要なステロイド産生酵素がヒト子宮内膜に存在しないことは、子宮内膜の機能が卵巣および胎盤起源のホルモンによって本質的に制御される生殖年齢中にもっぱら活性な子宮内膜の生理学的役割と一致する。卵巣によるエストロゲン分泌が休止した後のエストロゲンの任意の継続的な作用を正しいと評価しうる、閉経後の子宮内膜の生理学的役割は存在しない。したがって、DHEAからのエストロゲンの合成に必要な酵素は、卵巣起源のエストロゲンに完全に依存している組織である子宮内膜において発現されない。
【0070】
単独で投与されるエストロゲンは、子宮内膜の増殖を刺激すると長い間知られてきた(Smith,Prentice et al.1975)のに対し、エストロゲンと併用して投与されるプロゲスチンは、エストロゲンのその刺激作用を阻害する(Feeley and Wells 2001)。アンドロゲン受容体が、ヒト子宮内膜および間質において発現されるので(Mertens,Heineman et al.1996)、アンドロゲンの作用を調査した臨床研究が、閉経後の女性において比較的高い用量のテストステロン(ウンデカン酸テストステロン,1日おきに40mg)が子宮内膜に対して影響しないと示した(Zang,Sahlin et al.2007)ことを言及することは興味深い。吉草酸エストラジオール(2mg/日)を投与された女性では、処置の3ヶ月で、テストステロンの同時投与が増殖を28%に減少させつつ、Kiラベリングが、50%増加した。Ki67ラベリングは、エストロゲンを投与された2つの群においてのみ増加したが、間質にテストステロンを加えることによって減少した。テストステロンは、女性における子宮内膜の増殖に対して刺激作用を有しないが、子宮内膜においていくらかの抗エストロゲン様作用を発揮するとみられる。
【0071】
FDAの指導は、エストロゲンとプロゲスチンの両方に対して最少の用量および曝露量を開発するスポンサーを奨励しているが、我々は、膣萎縮の症状および血管運動の症状を治す際にエストロゲンが有効であるが、全身性のエストロゲンは、25%の閉経後の女性が膣萎縮の中程度から重篤な症状を回避するのを可能にする生理学的ホルモンではないと認識しなければならない。これらの女性は、その閉経後のすべての期間にわたって比較的無症状のままである。閉経後の女性(症状のある女性と無症状の女性の両方)における性ステロイドの唯一の供給源は、細胞内分泌学のメカニズムによる、副腎性DHEAからのエストロゲンおよびアンドロゲンの局所的な生合成である。DHEAの補充は、閉経後の症状を罹患する女性に、その症状に関与する不足量のDHEAを提供することを可能にする唯一の生理学的アプローチである。ホルモン前駆体補充療法(HPRT)と呼ばれるアプローチを用いるとき、細胞内分泌学のプロセスによって細胞内で生成されるDHEAおよび性ステロイドに多く曝露されるので、膣萎縮および血管運動の症状は、膣萎縮の症状を有しない閉経後の女性に伴うリスクよりも高くないリスクで治されるべきである。
【0072】
本発明に従って投与される性ステロイド前駆体は、好ましくは、(1)膣内に投与されるとき、0.5〜100mg/日(好ましくは、3〜50mg/日、最も好ましくは、3〜13mg/日)という投薬量の範囲;(2)皮膚上に投与されるとき、15〜200mg/日(好ましくは、30mg〜100mg/日)という投薬量の範囲;(3)経口的に投与されるとき、10〜200mg/日(好ましくは、25mg〜100mg/日)という投薬量の範囲、例えば、75mg/日;または(4)非経口的に(すなわち筋肉内または皮下に)投与されるとき、1.0〜25mg/日(好ましくは、3.25〜20mg/日)という投薬量の範囲で投与される。
【0073】
膣投与用の医薬組成物において、DHEAまたは他の前駆体は、好ましくは、該組成物の総重量に対して0.1〜10重量%、より好ましくは、0.2〜3.0パーセント、特に、0.25〜2.0パーセントの濃度で存在する。例えば、1日に1回投与される0.5%DHEA(組成物の総重量に対して)を有する1.3ミリリットル(mL)の膣坐剤は、望ましくは、6.5mg/日のDHEAを提供する。所望の範囲内の投薬量を維持しつつ、様々な濃度に応じて、より大きい坐剤またはより小さい坐剤を使用してもよい。
【0074】
皮膚に対する投与用の医薬組成物において、DHEAまたは他の前駆体は、好ましくは、該組成物の総重量に対して0.1〜10重量%、より好ましくは、0.2〜2.0パーセント、特に、0.3〜1.5パーセントの濃度で存在する。
【0075】
経口投与用の医薬組成物において、DHEAまたは他の前駆体は、好ましくは、該組成物の総重量に対して5〜98重量%、より好ましくは、10〜50パーセント、特に、15〜40パーセントの濃度で存在する。
【0076】
非経口(すなわち筋肉内または皮下)投与用の医薬組成物において、DHEAまたは他の前駆体は、好ましくは、0.2mg/mL〜25mg/mL、より好ましくは、0.65〜15mg/mL、特に、2mg/mL〜10mg/mLの濃度で存在する。
【実施例1】
【0078】
臨床治験ERC−213
膣萎縮を有する閉経後の女性における膣坐剤投与後のDHEAバイオアベイラビリティ、第I相無作為化プラセボ対照
1週間にわたるDHEA坐剤の毎日投与の薬物動態および局所作用
本研究の主な目的は、異なる4つのDHEA濃度において坐剤を毎日、膣内適用した後のDHEAおよびその代謝産物の全身バイオアベイラビリティの評価であった。本研究は、1治療群あたり10人の被験体の無作為化プラセボ対照二重盲検治験であった。したがって、40人の閉経後の女性を無作為化して、以下のDHEA濃度の1日量の1つの坐剤を投与した:0.0%、0.5%(6.5mgのDHEA/坐剤)、1.0%(13mgのDHEA/坐剤)または1.8%(23.4mgのDHEA/坐剤)。
【0079】
短期間におけるDHEAの局所的な作用の徴候を得るために、処置前ならびに処置の7日後に成熟指標ならびに膣のpHを測定した。
【0080】
図1B、表1および表2に図示されているように、0.5%、1.0%および1.8%のDHEAを含む1.3mlの坐剤を毎日、膣内に適用することにより、血清DHEAが漸進的に増加し、AUC
0−24h値は、それぞれ24.8±4.8ng.h/ml、56.2±8.9ng.h/ml(p<0.05)、76.2±10.3ng.h/ml(p<0.01)および114.3±9.97ng.h/ml(p<0.01)だった。したがって、0.5%、1.0%および1.8%の用量のDHEAにおいて、対照に対して、それぞれ127%、207%および361%の増加だった。他のすべてのステロイドについて観察したとき、第1日目および第7日目において同様のAUC
0−24h値が観察された。
【0081】
実際に、最高用量で処置された後のDHEAの4.76±0.42ng/mlという平均血清値(表2)は、47人の30〜35歳の閉経前の正常な女性において見られる4.47±2.19ng/mlという値と類似している(Labrie,Belanger et al.2006)。いずれの用量のDHEAが使用された後の血清DHEAも、正常な閉経前の女性の範囲内に入ったままであることが
図7Aに十分に図示されている。
【0082】
以前に、DHEAの経口投与または経皮的投与の後に観察されたように(Labrie,Belanger et al.2007)、血清5−ジオールは、DHEAのパターンとほぼ重ねることができるパターンをたどるが、一層低い濃度が見られる。実際に、AUC
0−24h値は、第7日目のプラセボ群における5.60±0.60ng.h/mlから、0.5%、1.0%および1.8%のDHEA用量においてそれぞれ9.83±1.14(p<0.05)、13.8±1.87(p<0.01)および21.0±1.66(p<0.01)になる(1D,表1)。このような変化は、対照に対して75%、147%および276%の増加に相当する。1.8%のDHEA用量だけが、DHEAを毎日膣内投与した第7日目における24hにおいて、正常な閉経前の女性に見られる値を超えて血清5−ジオールを増加させる(
図7B)。
【0083】
血清TestoのAUC0−24h値は、0.5%用量において有意な変化を示さなかった(プラセボ群の2.58±0.33ng.h/mlに対して2.79±0.30ng.h/ml)(
図2B)。1.0%および1.8%の用量では、4.54±0.91ng.h/ml(p<0.05)および5.97±0.69ng.h/ml(p<0.01)というAUC0−24h値が見られた(表1)。これらの値は、それぞれ0.11±0.0(N.S.)、0.12±0.01(N.S.)、0.19±0.04(p<0.05)および0.25±0.03(p<0.01)ng/mlという平均血清Testoレベルに言い換えられる。使用された最も高い1.8%のDHEA用量でさえも、血清Testoレベルは、0.18±0.07ng/ml(0.06〜0.31、第5〜第95百分位数)と測定された閉経前の女性の正常範囲内に入ったままであった(Labrie,Belanger et al.2006)(
図7E)。一方、1.0%用量(0.18±0.07ng/ml)は、正常な閉経前の女性において見られる値、すなわち0.19±0.4に厳密に対応する(
図7E)。
【0084】
図2CおよびDにおいて、血清DHTは、プラセボ群における第7日目の0.58±0.07ng.h/mlから、0.5%、1.0%および1.8%のDHEA群においてそれぞれ0.93±0.11(N.S.)、1.31±0.26(p<0.05)および1.93±0.23(p<0.01)ng.h/mlというAUC
0−24h値に増加した(表
1)。これらの値は、0.02±0.01、0.04±0.01、0.05±0.01および0.08±0.01ng/mlという平均血清DHTレベルに対応し(表2)、ゆえに、最も高いDHEA用量において、閉経前の女性において観察された0.07±0.03ng/mlという正常な血清DHTレベルに達した(Labrie,Belanger et al.2006)(
図7F)。
【0085】
プラセボ群において第7日目の平均血清E
1レベルが、12.6±1.41ng/mlと測定された(表2)が、0.5%のDHEA用量と有意な変化はなかった(15.4±2.04ng/ml)。1.0%および1.5%のDHEA用量において、それぞれ24.1±3.54ng/ml(p<0.01)および25.0±2.85ng/ml(p<0.01)への増加が観察された。対応するAUC
0−24h値は、
図3Bに図示され、表1に示されている。
【0086】
プラセボ群および0.5%DHEA群における平均血清E
2レベルが、それぞれ、2.77±0.29pg/mlおよび4.04±0.69pg/ml(N.S.)と測定された(表2)。6.01±1.31pg/ml(p<0.05)および5.68±0.84pg/ml(p<0.05)という平均血清E
2濃度が、1.0%および1.8%のDHEA用量を投与された女性の第7日目に、プラセボに対してそれぞれ3.18および2.85pg/mlという絶対的な増加で見られた。類似の知見が、プラセボ群および0.5%DHEA群においてそれぞれ0.12±0.02ng/mlおよび0.13ng/ml(N.S.)という平均血清レベルを有する血清E
1−Sについて観察された(表2)。1.0%および1.8%のDHEA群において、それぞれ0.18±0.03ng/mlおよび0.25±0.25ng/mlという値が測定された。1.8%DHEA群だけが、プラセボ群に対して統計的有意差(p<0.01)を示す。
【0087】
4BおよびDに見られるように、類似のパターンが、E
1−SとDHEA−Sの両方で見られる。血清DHEA−SのAUC0−24値は、プラセボ群において8.35±2.22ng.h/mlと測定され、0.5%DHEA群において13.3±3.16ng.h/mlと測定された(N.S.)。より高い2つのDHEA用量を用いるとき、AUC
0−24h値は、それぞれ16.5±2.71ng.h/ml(N.S.)および19.3±3.59ng.h/ml(p<0.05)と測定された(
図4D,表1)。DHEAのすべての用量におけるDHEA−Sのこれらの値は、1.27±0.62ng/mlという平均を示す閉経前の女性において観察された血清DHEA−Sレベルより低いままである(7C)。
【0088】
図5Bに図示されるように、DHEA投与後の第7日目における血清4−ジオンのAUC
0−24h値は、プラセボ群および0.5%DHEA群において、それぞれ6.34±0.80および8.71±0.84ng.h/ml(N.S.)と測定された。より高い2つのDHEA用量では、4−ジオンのAUC
0−24h値は、それぞれ11.1±1.51(p<0.01)および11.9±0.81(p<0.01)ng.h/mlにわずかに増加した。7Dおよび表2に見られるように、血清4−ジオンのこれらのすべての値は、正常な閉経前の女性において観察される平均血清4−ジオン濃度より十分に低いままだった。実際に、最も高いDHEA用量は、0.50±0.03ng/mlという平均血清4−ジオン濃度をもたらし、30〜35歳の周期女性における平均値は、0.96±0.35ng/mlである(Labrie,Belanger et al.2006)(Appendix 2)ので、閉経前の女性において観察される血清4−ジオンレベルの50%に達しただけである。
【0089】
ADT−G、3α−ジオール−3Gおよび3α−ジオール−17Gの血清レベルの測定値の重大な役割を考慮すると(Labrie,Belanger et al.2006)、ADT−Gの血清レベルが、プラセボ群における6.97±1.20ng/mlという平均値から、0.5%DHEA群において19.2±3.99ng.h/mlに増加した(p<0.01)という5Dおよび表2に見られる結果は、興味深い。1.0%DHEA群および1.8%DHEA群では、それぞれ19.7±2.48および25.7±2.88ng.h/mlという値が測定された(両方のDHEA処置群においてプラセボに対してp<0.01)。少数のアンドロゲン代謝産物である、3α−ジオール−3Gおよび3α−ジオール−17Gについても同様の変化が見られる(6B、6D、8Bおよび8C、表1および表2)。
図8に図示されるように、使用された最も高い用量のDHEAであっても、ADT−G3α−ジオール−3Gおよび3α−ジオール−17Gの平均血清レベルは、閉経前の女性に見られる平均血清レベルよりも低い36%、11%および6%にとどまったことを示すことは重要である。
【0090】
表2に示されるように、1.8%のDHEA(23.4mgのDHEA)を含む1.3mlの坐剤を投与した第7日目の24時間にわたって測定されたアンドロゲン代謝産物のグルクロニドの合計は、たった28.2ng/mlであるが、30〜35歳の閉経前の女性における同じ代謝産物の平均血清濃度は、42.8ng/mlである(Labrie,Belanger et al.2006)(Appendix 2)。したがって、使用された最も高いDHEA用量は、正常な若い周期女性に見られる総アンドロゲン代謝産物に対応する値の65.7%しかもたらさない。一方、0.5%および1.0%のDHEA用量は、それぞれ21.02ngおよび21.53ng/mlというアンドロゲン代謝産物の合計をもたらし、ゆえに、閉経前の女性において観察される値の49.0%および50.2%に対応するだけである(
図9)。本発明者らは、100mgのDHEAを毎日経口投与することにより、閉経前の女性において見られるレベルの74%がもたらされることを以前に見いだしていた(Labrie,Belanger et al.2007)。
【0091】
本発明者らは、DHEAの経口投与または経皮的投与の後に、血清DHEAの変化が、血清ADT−G、3α−ジオール−3Gおよび3α−ジオール−17Gの変化によって反映されるステロイド形成の変化の約100%過大評価であることを以前に観察していた(Labrie,Belanger et al.2007)。
図9に見られるように、平均血清DHEAレベルは、プラセボ群の閉経前の女性において観察された値の23%から、0.5%、1.0%および1.8%のDHEA用量を投与された女性において、それぞれ52%、71%および106%になった。
図9のデータは、DHEAを膣内投与した後の血清DHEAの変化もまた、アンドロゲン形成の変化の過大評価であること、および血清E
1−Sの変化がより小さかった(表1)と説明されるのでおそらくさらに大きなエストロゲン形成の変化の過大評価であることを示唆する。実際に、1.0%用量では、血清アンドロゲン代謝産物は、閉経前の女性において見られる値から31.6%増加し、血清DHEAは、49.1%増加した(55%の過大評価)。最も高いDHEA用量では、血清アンドロゲン代謝産物は、47.1%増加し、血清DHEAは、83.5%増加した(77%の過大評価)。
【0092】
【表17】
【0093】
【表18】
【0094】
(Labrie,Belanger et al.2006)
しかしながら、表3に示されるように、プラセボ群では、多くのステロイドの処置前値のほうが低いという傾向が強かったことを言及するべきである。これは、プラセボ群における、DHEA、DHEA−S、4−ジオン、Testo、DHT、E
2、ADT−Gおよび3α−ジオール−17Gに対する特に低い値に関係する。0.5%および1.0%の用量のDHEAを投与した後に観察された平均血清ステロイド値のすべてが、正常な閉経前の女性に見られる値の範囲内のままであるか、またはその値よりも十分に低いままであるので、この明らかな偏りを補正する試みがなされていなかった。0.5%DHEA坐剤を毎日投与した第7日目に測定されたすべてのステロイドの平均24h血清レベルが、正常な55〜65歳の女性において測定された値にほぼ正確に対応するが、1.0%DHEA坐剤が、55〜65歳の正常な女性において観察される範囲内の値をもたらすと言及することは興味深い(Labrie,Belanger et al.2006)。
【0095】
アンドロゲン代謝産物は、外因性DHEAから活性なアンドロゲンへの変換に関する最も信頼できる尺度であるので、本データは、本研究において使用された最も高い用量のDHEAであっても、正常な閉経前の女性に見られる正常範囲内である血清ステロイドレベルに関するFDAの要件を満たすと示唆している。
【0096】
【表19】
【0097】
DHEA坐剤を毎日投与したたった1週間後に、成熟指標が、0.5%、1.0%および1.8%のDHEA群においてそれぞれ107%(p<0.01)、75%(p<0.05)および150%(p<0.01)増加した(
図10A)。プラセボ群では、第1日目と第7日目との間で変化は観察されなかった。一方、膣のpHは、0.5%、1.0%および1.8%のDHEA群においてそれぞれ6.29±0.21から5.75±0.27に(p<0.05)、6.47±0.23から5.76±0.22に(p<0.01)、そして6.53±0.25から5.86±0.28に(p<0.05)低下した(
図10B)。プラセボ群では、膣のpHの変化は観察されなかった。
【実施例2】
【0098】
閉経後の女性における経口および経皮的デヒドロエピアンドロステロンのバイオアベイラビリティおよび代謝
1.緒言
ヒトは、他の霊長類とともに、不活性な前駆体ステロイドであるDHEAおよび特にDHEA−Sを大量に分泌する副腎を有する点において動物種の中でも独特であり、DHEAおよびDHEA−Sは、末梢組織において、活性なアンドロゲンおよび/またはエストロゲンに変換される(Labrie,1991;Labrie,Belanger et al.,1995;Labrie,Luu−The et al.,1997;Labrie,Simard et al.,1996;Labrie,Luu−The et al.,2005;Labrie,Poulin et al.,2006およびSimpson 2000)。実際に、成人男性および成人女性における血漿DHEA−Sレベルは、テストステロンのレベルよりも100〜500倍高く、エストラジオールのレベルよりも1000〜10,000倍高いことから、アンドロゲンおよび/またはエストロゲンへの変換のための基質の大きな貯蔵所が、DHEAを活性な性ステロイドに変換するのに必要な酵素機構を有する末梢の細胞内分泌組織内に提供される(Labrie 1991およびLabrie,Luu−The et al.,2005)。実際のところ、細胞内分泌学なる用語は、1988年に初めて造り出され(Labrie,Belanger et al.,1988)、その用語は、活性なステロイドが、不活性になる前に細胞外空間内および全身循環中に全く放出されずに、または最小の放出を伴ってその作用を発揮する同じ細胞内で生成される活性なステロイドの合成を説明するための用語である(Labrie,1991)。
【0099】
副腎によるDHEA−Sの形成が年齢とともに著明に減少することによって(Belanger et al.,1994;Vermeulen and Verdonck,1976;およびMigeon et al.,1957)、インスリン抵抗性(Schriock et al.1988およびColeman et al.1982)および肥満症(Nestler et al.1988;MacEwen and Kurman,1991およびTchernof et al.1995)などの加齢性疾患に強く関連する位置である末梢の標的組織におけるアンドロゲンおよびエストロゲンの形成が劇的に減少する。さらに、閉経後の女性に投与されるDHEAの利点、特に、経口投与(Villareal and Holloszy,2004;Baulieu et al.,2000;Morales,et al.1994;およびKawano et al.2003)および経皮的投与(Diamond et al.,1996およびLabrie Diamond et al.1997)の後の、骨、皮膚、膣、グルコースおよびインスリンの代謝、体脂肪量、ならびに健康に対する利点に注目が集まっている。したがって、これらの2つの投与経路の後のDHEAのバイオアベイラビリティ、薬物動態および代謝についてのより正確な知識を得ることが、特に重要になる。
【0100】
本発明者らは、2週間にわたって経皮的に投与される薬理学的用量のDHEAを使用することにより、血清テストステロン(testo)およびエストラジオール(E
2)のレベルの測定値が、アンドロゲンおよびエストロゲンの真の細胞内プールの信頼できる評価を提供しないことをすでに示しているので(Labrie,Belanger et al.,1997;Labrie,Belanger et al.,2006およびLabrie,Belanger,et al,2007b)、本発明者らは、DHEAおよび9つのステロイド(活性なアンドロゲンおよびエストロゲンならびにそれらの代謝産物と最も密接に関連すると知られているもの)の血清レベルを比較した。DHEAクリームまたはゲルを用いて経口経路によって、そして経皮的にDHEAを毎日投与した第1日目および2週間後に、血清ステロイドレベルの24時間の変化の詳細な解析を行った。
【0101】
2.被験体および方法
IRBが承認し、書面によるインフォームドコンセントを行った後に、36人の健常な60〜70歳の閉経後の女性が、本研究に参加した。体重は、Metropolitan Life Tablesによる正常な体重の±20%以内であった。
【0102】
有意な代謝もしくは内分泌の障害、冠状動脈の(coronarian)疾患または高血圧症に罹患している被験体はいなかった。スクリーニングのために来院する前の6ヶ月以内にアンドロゲンまたはアナボリックステロイドで処置されていた女性はいなかった。すべての参加者は、病歴を有し、このプロトコルのスクリーニングフェーズ中、徹底的な理学的検査および血清生化学プロファイル(脂質、全血球計算値、尿解析および詳細な血清ホルモンの測定を含む)を受けた。
【0103】
3.研究デザイン、処置および測定
本研究は、1治療群あたり12人の被験体の無作為化非盲検治験であった。書面によるインフォームドコンセントを得て、女性が適格であると見出した後、各被験体を無作為化して、DHEAをクリーム、ゲルによって、または経口的に投与した。14日間にわたって毎日朝食前に、研究クリニックにおいて、4gの10%DHEAゲルまたは4gの10%DHEAクリームのいずれかを大腿の合計30cm×30cmの範囲に適用して被験体に投与するか、またはDHEAの50mgカプセル剤を2つ、朝食前に経口的に適用した。
【0104】
スクリーニング時、そして投薬の第1日目、ならびに第2、4、7、10および14日目のDHEAを適用する前の08:00〜09:00hに血液サンプリングを行った。第1日目および第14日目では、DHEA投与後の0.5h、1h、1.5h、2h、3h、4h、5h、6h、7h、8h、12hおよび24hにおいて血液サンプルを採取した。
【0105】
4.血清ステロイド解析
電子衝撃または化学イオン化を用いるガスクロマトグラフィ/質量分析(DHEA、5−ジオール、4−ジオン、テストステロン、E
1およびE
2)によって、および報告されているように(Labrie,Belanger et al.,2006;Labrie,Belanger,et al,2007bおよびSwanson et al.2007)ターボイオンスプレーを用いる液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析(DHEA−S、E
1−S、ADT−Gおよび3α−ジオール−G)によって、DHEA、DHEA−S、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール(5−ジオール)、テストステロン、アンドロステンジオン(4−ジオン)、17β−エストラジオール(E
2)、エストロン(E
1)、エストロンスルフェート(E
1−S)、アンドロステロングルクロニド(ADT−G)およびアンドロスタン−3α,17β−ジオールグルクロニド(3α−ジオール−G)を測定した。
【0106】
5.計算および統計解析
第1日目および第14日目において、各ステロイドの血清濃度の曲線下面積を0h〜24hに測定した(AUC
0−24h)。線形台形法(モデル非依存性)によって、その曲線下面積を計算した。DHEAゲル、DHEAクリームおよびDHEAカプセル剤の相対的なバイオアベイラビリティは、対数変換されたAUC値の平均値の差に基づいた。すべての計算は、SASソフトウェア(SAS Institute,Cary,NC、 USA)を用いて行われた。
【0107】
6.結果
50mgのDHEAのカプセル剤2個を経口投与することによって、血清DHEAが、2.3±0.3ng/mlから、1hで最大値の15.6±2.5ng/mlに増加し、その後、6hで5.7±0.5ng/mlまで段階的に減少した後、24hまでプラトーであった(
図11A)。大腿の皮膚の30cm×30cmの範囲に4gの10%DHEAゲルまたはクリームを適用したとき、血清DHEAレベルは、12hで増加し始め、24hでそれぞれ8.2±2.0および8.0±1.2nmol/1という値に達しただけだった(
図11A)。最初に前駆体ステロイドを皮膚上に適用した後、24hまで調べた時点のいずれにおいてもDHEAの血清レベルについてクリームとゲルとの間に有意差はなかった。
【0108】
DHEAを最初に経口投与した後に血清5−ジオールを測定したとき、5−ジオールの濃度は、0.31±0.03ng/mlという処置前の濃度から、1hで最大値の1.19±0.13ng/mlに増加し、その後ゆっくりと段階的に減少し、24で0.79±0.05ng/mlに達した(
図11B)。5−ジオールの血清レベルは、クリームまたはゲルによってDHEAを経皮的に投与した後、一層ゆっくりと増加し、24hでクリームに対する1.00±0.14ng/mlおよびゲルに対する0.72±0.14ng/mlという最初の統計学的に有意差の値に達したことが同じ図において見られる。
【0109】
経口のDHEAを投与した後、血清4−ジオンは、0.6±0.1ng/mlから、1hで最大値の9.5±2.2ng/mlに増加した後、8h〜24hに約1.2ng/mlというプラトーである値まで急速に減少した(
図12A)。一方、クリームまたはゲルによってDHEAを投与した後、血清4−ジオンの最初の有意な増加は、24hでクリームおよびゲルについてそれぞれ0.9±0.1および0.8±0.1ng/mlという値で観察されただけだった。
【0110】
類似のパターンが、血清テストステロンについて観察された。実際に、DHEAの50mgカプセル剤2個を経口投与した後の血清テストステロンは、0.38±0.03ng/mlから、1hで最大値の0.79±0.14ng/mlに増加した。この増加の後、6hで0.30±0.08ng/mlに急速に減少し、それに続いてその後24hまでプラトーだった(
図12B)。DHEAがクリームまたはゲルとして適用されたときは、最初の増加は、24hで約0.45ng/mlという値で観察された。
図13AおよびBに見られるように、経口経路または経皮的経路によるDHEAの最初の投与は、最初の24hにおいてはE1またはE2の血清レベルに対して統計学的に有意な作用を有しなかった。
【0111】
一方、血清DHEA−Sは、同様のパターンをたどるが、50mgのDHEAのカプセル剤2個を経口投与した後、DHEAおよび5−ジオールと比べてわずかに遅れた(
図14A)。したがって、血清DHEA−Sは、0.4±0.1μg/mlから、1hで7.7±1.0μg/mlに、2hで最大値の8.4±0.6μg/mlに増加し、24hで2.7±0.3μg/mlに段階的に減少した。DHEAをクリームまたはゲルで投与した後、最初の24hにおいて血清DHEA−Sの有意な変化は観察されなかった。一方、血清E1−Sは、最初の投与の後、最初の24hにおいて有意に変化しなかった。
【0112】
アンドロゲンの主要な代謝産物である血清ADT−Gは、14±3ng/mlから、1hで760±150ng/mlに、そして2hで790±140ng/mlに増加し、次いで、12hで92±5ng/ml、24hで70±5ng/mlに段階的に減少した(
図15A)。一方、血清3α−ジオール−Gは、2.2±0.5ng/mlから2h後に14.5±2.0ng/mlに増加した(
図15B)。しかしながら、その後、3α−ジオール−Gについて観察された減少は、ADT−Gの減少よりもかなりゆっくりであり、DHEAを経口投与した2h〜24hには、約40%の減少が観察されただけだった。皮膚上に4gの10%DHEAを適用した後、血清ADT−Gまたは3α−ジオール−Gは、24hまで著しく変化しなかった(
図15B)。
【0113】
毎日投薬した第14日目において同じ動態パラメータの測定を繰り返したとき、50mgのDHEAのカプセル剤2個を投与することによって、4.2±0.4ng/mlという投薬前の値から、1hで14.8±4.4ng DHEA/mlという最大濃度がもたらされ、続いて24hで4.5±0.4ng/mlに段階的に減少したことが分かった(
図16A)。一方、DHEAをクリームまたはゲルによって投与したときは、24hにわたって有意な変化は観察されず、血清DHEAは、クリームを適用した後、10ng/ml〜15ng/mlのままであり、ゲルを適用した後、7ng/ml〜11ng/mlのままだった。
【0114】
同様に、処置の第14日目において血清5−ジオールを測定したとき、このステロイドの血清濃度は、0.46±0.04ng/mlから、1hで1.37±0.21ng/mlに増加し、その後ゆっくりと減少し、24hで0.64±0.06ng/mlに達した(
図16B)。DHEAについて観察されたように、血清5−ジオールは、24hにわたって、クリームの適用後に約1.5〜1.9ng/ml、およびゲルの適用後に1.0〜1.3ng/mlで、ほぼ一定のままだった。
【0115】
投薬の第14日目において血清4−ジオンを測定したとき、このステロイドの血清濃度は、1.3±0.2ng/mlから1hで最大値の9.8±1.7ng/mlに増加した後、6hで1.5±0.1ng/mlに急速に減少し、24hで1.2±0.1ng/mlの値が測定された(
図17A)。クリームまたはゲルとしてDHEAを皮膚上に適用した後、血清4−ジオンは、2hで約2.5ng/mlに有意でなく増加し、その後、その値は、24hまで1.0〜1.6ng/mlでプラトーのままだった(
図17A)。
【0116】
100mgのDHEAを経口投与した後、血清テストステロンは、投薬の第14日目に、0.31±0.04ng/mlから1hで最大値の0.83±0.11ng/mlに増加した後、24hで0.37±0.04ng/mlという値まで段階的に減少した(
図17B)。クリームまたはゲルとしてDHEAを適用した後、テストステロンの血清レベルは、24hにわたって、約0.3ng/mlで変化しないままであり、この値は、処置前から有意に異なっていない。第1日目に観察されたように、経口経路または経皮的経路による毎日のDHEAの第14回目の投与の後の24hにわたるE1(
図18A)またはE2(
図18B)の血清レベルは、有意に変化しなかった。
【0117】
血清DHEA−Sは、1.95±0.15μg/mlという投薬前のレベルから、1hで8.3±0.4μg/mlに増加し、24hで2.6±0.3μg/mlに段階的に減少した(
図19A)。皮膚上にDHEAを適用した後は、血清DHEA−Sの有意な変化は観察されなかった。一方、経口経路または経皮的経路による毎日のDHEAの第14回目の投与の後、血清E
1−Sは、24hにわたって変化しなかった(
図19B)。
【0118】
第1日目よりも第14日目のほうが、より高いレベルから開始するにもかかわらず、血清ADT−Gは、66±1ng/mlから1hで996±105ng/mlに急速に増加し、その後、12hで116ng/ml、24hで91±15ng/mlに段階的に減少した(
図20A)。皮膚上にDHEAを適用した後、血清ADT−Gレベルの有意な変化は、生じなかった。一方、血清3α−ジオール−Gは、毎日の100mgのDHEAの第14回目の経口投与の後、12±2.5ng/mlから2hで29.4±5.5ng/mlに増加し、その後、ゆっくりと減少し、24hで13±3.0ng/mlに達した。血清3α−ジオール−Gについては、DHEAを経皮的投与した後に、有意な変化は観察されなかった(
図20B)。
【0119】
DHEAおよびその代謝産物の蓄積のより厳密な尺度を得るために、次に、本発明者らは、投薬の第1日目および第14日目に測定された血清ステロイド濃度の曲線下面積(AUC
0−24h値)を比較した。
図11、
図12、
図13、
図14、
図15、
図16、
図17、
図18、
図19および
図20から予測することができるように、エストロゲンの代謝産物(E
1−S)およびアンドロゲンの代謝産物(ADT−Gおよび3α−ジオール−G)を除くすべてのステロイドのAUC
0−24h値が、これらのステロイドのいくらかの蓄積に起因して、経口経路によるDHEAの投与の第1日目および第14日目において類似している(表4)。一方、DHEAを経皮的投与した後は、クリームまたはゲルでの投与後に、DHEAがよりゆっくりと吸収されることに起因して、投薬の第1日目と比べて、それぞれ155%および86%高い値であるDHEAのAUC
0−24h値が第14日目において観察された。示されなかったE
1、E
2およびテストステロンを除く他のすべてのステロイドについても、より高い値が観察される。
【0120】
【表20】
【0121】
括弧内の値は、%変動係数を表している。DHEAは、経口経路(2×50mgカプセル剤)によって、または4gの10%DHEAクリームもしくは4gの10%ゲルの皮膚上への適用に従って、投与された。
【0122】
表5および
図21に明らかに見られるように、投薬前のレベルと比べて、投薬の第14日目において測定された血清E
1、E
2またはテストステロンのAUC
0−24h値に有意な変化はなかった。しかしながら、他の2つのすべてのステロイドについて、有意な増加が観察された。したがって、2週間にわたって100mgのDHEAで毎日経口投薬した後、ステロイド投与後の24hにわたって測定されるDHEAの濃度曲線下面積は、処置前の値に対して167%増加したのに対し、5−ジオール、4−ジオン、DHEA−S、E
1−S、ADT−Gおよび3α−ジオール−Gが、それぞれ138%、238%、873%、60%、1820%および874%増加したことが観察された。
【0123】
【表21】
【0124】
DHEAは、経口経路によって投与されるか、またはクリームもしくはゲルによって経皮的に投与された。スクリーニングを含む処置前の血清ステロイド基礎レベルに24hを掛けることによって、AUC
0−24h基礎値を計算した。
【0125】
DHEAクリームまたはゲルを投与した後に、DHEAおよび5−ジオール以外で、小さな増加が観察された。実際のところ、DHEAクリームを適用した後、DHEA−SのAUC
0−24h値は、104%増加しただけだったのに対し、4−ジオン、E
1−S、ADT−Gおよび3α−ジオール−GのAUC
0−24h値は、対照に対してそれぞれ77%、72%、234%および145%増加した。一方、DHEAおよび5−ジオールに対するAUC値は、それぞれ406%および363%増加した(表5,
図21)。類似しているがいくらか小さい増加が、DHEAゲルを用いたときに観察され、ここで、血清4−ジオン、DHEA−S、E
1−S、ADT−Gおよび3α−ジオール−GのAUC
0−24h値は、対照に対して65%、91%、96%、56%および30%増加したのに対し、DHEAおよび5−ジオールに対するAUC
0−24h値は、それぞれ249%および238%増加した。
【0126】
本発明者らの最近の知見(Labrie,Belanger et al.,2007b)は、外来性DHEA投与後に観察される血清DHEAの変化が、性ステロイド形成の真の変化の少なくとも100%の過大評価であることを示している。これらのデータの裏付けとして、
図21は、クリームまたはゲルによるDHEA投与後の血清DHEAの変化が、DHEAの直接の代謝産物である5−ジオールを除く測定されたすべてのステロイドの血清レベルの変化の著明な過大評価であることを示している。DHEAクリームについては、血清4−ジオン、DHEA−S、E1−S、ADT−Gおよび3α−ジオール−GのAUC
0−24h値の変化は、血清DHEAについて観察された処置前レベルに対する406%の増加と比べて、たった77%、104%、72%、234%および145%である。
【0127】
アンドロゲンについて、現在、ウリジングルクロノシルトランスフェラーゼ2B7(UGT 2B7)、UGT 2B15およびUGT 2B17が、ヒトにおけるすべてのアンドロゲンおよびそれらの代謝産物のグルクロン酸化に関与する3つの酵素であると確立されている(Belanger et al.2003)。すべてのヒトUDT−グルクロノシルトランスフェラーゼの同定および特徴づけが最近になって完了したことにより、女性と男性の両方において、アンドロゲンのグルクロニド誘導体を総アンドロゲン活性のマーカーとして使用することが可能である(Labrie,Belanger et al.,2006;Labrie,Belanger,et al,2007bおよびSwanson et al.2007)。したがって、すべてのアンドロゲンが、ADT−Gおよび3α−ジオール−Gに代謝されるので、活性なアンドロゲンへの変換についての経皮的DHEAの有効性のパーセンテージの推定は、ADT−Gおよび3α−ジオール−Gの変化を加えるとき、52%と推定される(406%というDHEAの変化に比べて、重みづけられた211%値)。同様に、DHEAゲル投与後の、血清DHEAの249%の増加は、血清4−ジオン、DHEA−S、E1−S1、ADT−Gおよび3α−ジオール−GのAUC
0−24h値のそれぞれたった65%、91%、96%、56%および30%の増加になる。
【0128】
DHEAの経口投与後の、腸および肝臓における高レベルのグルクロン酸化が、ADT−Gおよび3α−ジオール−Gの高血清レベルを説明するので(Belanger et al.2003)、経口DHEA後の血清DHEAの167%増加と比べて血清E1−Sの比較的小さな増加(60%)は、エストロゲンへの相対的な変換効率が36%であることを示唆する。以前に示されているように(Labrie,Belanger et al.,1997;Labrie,Belanger et al.,2006;Labrie,Belanger,et al,2007b)、本データは、閉経後の女性に投与されたDHEAが、エストロゲンではなく主にアンドロゲンに変換されることを示唆している。
【0129】
考察
本データは、クリームまたはゲルによるDHEAでの長期間の処置の間、すべてのステロイドの濃度が急速にプラトーに達し、皮膚上にDHEAを毎日適用している間中に測定されたいずれのステロイドの血清濃度も検出可能な変化を示さないことを明らかに示している。したがって、最初にDHEAを経皮的に投与した後の24hから、すべてのステロイドの濃度は、同じレベルのままであり、ゆえにDHEAを皮膚上に毎日適用することによって、DHEAおよびそのすべての代謝産物の血清レベルが一定に維持されることが示される。閉経後の女性において、血清DHEAの日内変動が、正常な閉経前の周期女性における状況と比べて比較的小さいことがすでに知られている(Lui and Laughlin,1990)。
【0130】
本データは、DHEAを毎日経口投与した後に、DHEAまたはその代謝産物が有意に蓄積しないことも示している。さらに、経口経路または経皮的経路によるDHEAの投与後のDHEAの代謝は、定量的に類似しており、定量的な差は、経口投与後の腸肝の代謝によって説明される。
【0131】
経皮的投与に対して経口投与後の、DHEAおよび5−ジオールの低いAUC
0−24h値と組み合わされる血清DHEA−S、ADT−Gおよび3α−ジオール−Gの高いAUC
0−24h値は、消化管を通ることによる代謝および/または肝臓への初回通過によって、DHEA−スルホトランスフェラーゼの活性を介したDHEAからDHEA−Sへの高レベルの変換がもたらされるだけでなく(Luu−The et al.,1995)、DHEAからアンドロゲンへの代謝の増加および肝臓グルクロノシルトランスフェラーゼの活性を介したアンドロゲンの不活性化ももたらされる(Belanger et al.2003;Turgeon et al.,2001およびHum et al.,1999)ことを示唆している。実際に、表
4に示されるように、100mgのDHEAを経口投与した第14日目における144ng h/ml(AUC
0−24h)のDHEAへの曝露によって、ADT−Gおよび3α−ジオール−Gについてそれぞれ5607ng h/mlおよび453ng h/mlというAUC
0−24h値がもたらされる。一方、10%DHEAクリームで経皮的投与した後、DHEA、ADT−Gおよび3α−ジオール−GについてのAUC値は、それぞれ273ng h/ml、977ng h/mlおよび114ng h/mlである。したがって、経口投与後、1ng h/mlというDHEAは、アンドロゲンの2つの代謝産物の組み合わせ(ADT−Gと3α−ジオール−G)に対する42.1ng h/mlというAUC値に相当し、DHEAクリームを適用した後の1ng h/mlのDHEA曝露は、2つのアンドロゲン代謝産物の合計に対する4.0ng h/mlに相当する。このようなデータは、経口経路によってDHEAを投与することによって、少なくとも使用された用量で経皮的投与した後よりも約10倍高いレベルの、DHEAからADT−Gおよび3α−ジオール−Gへの変換がもたらされることを示唆している。ゲルによってDHEAを投与した後に得られたデータについて同じ計算を行うとき、1ng h/mlのDHEAへの曝露は、ADT−Gと3α−ジオール−Gに対する2.7ng h/mlというAUC
0−24h値をもたらし、ゆえにDHEAの経口投与と経皮的投与との間のなおもより高い比が示唆される。
【0132】
表4に示されるように、DHEAを経口投与した後、1ng h/mlというDHEAのAUC
0−24h値は、DHEA−Sについて660ng h/mlというAUC
0−24h値をもたらすが、クリームまたはゲルによって前駆体ステロイドを適用した後、73ng h/
mlおよび99ng h/
mlという対応する値が観察される。したがって、試験された条件下においてDHEAを経皮的投与したときと比べて、循環DHEAに同じく曝露した後の循環中の経口投与後のDHEA−Sの量(血清AUC
0−24h値)は、6.7〜9.0倍多い。本データは、DHEAが胃腸管および肝臓を通過したときの、血清DHEA−S、ADT−Gおよび3α−ジオール−Gレベルに対する影響と類似していることを示している。
【0133】
小さい差が見られるが、前駆体ステロイドの経皮的投与と比べてDHEAの経口投与後に比較的高レベルの血清4−ジオンが観察される。したがって、DHEAを経口投与した後、1ng h/ml値のDHEA AUC
0−24hは、0.3ng h/ml 4−ジオンAUC
0−24h値をもたらすのに対し、クリームおよびゲルによるDHEAの投与後にそれぞれ0.08ng h/mlおよび0.11ng h/mlという値が観察される。循環中において測定されるとき、DHEAの経皮的投与と比べて、経口投与後の4−ジオンへのDHEAの変換は、2.70〜3.76倍高い。
【0134】
表5のデータは、DHEA AUC
0−24h値が、100mgのDHEAを毎日経口投与した後、処置前の基礎レベルと比べて対照に対して167%増加し、4gの10%DHEAのクリームおよびゲルを毎日経皮的投与することによって、血清DHEAレベルがそれぞれ406%および249%上昇することを示している。経口経路による100mgと比べて、400mgのDHEAが皮膚上に適用されるので、線形性を仮定すると、本データは、経口経路が、DHEAのクリームおよびゲルのために使用される製剤と比べてそれぞれ2.9倍および4.8倍有効であることを示唆している。
【0135】
閉経後の女性において行われた研究でもまた、150mgおよび300mgの微粉化DHEAを経口投与することによって、300mgの投薬の後に約1.5mg/ml、15ng/mlおよび2.75ng/ml、ならびに150mgのDHEAの投薬の後に10μg/ml、12μg/mlおよび1.6ng/mlという最大血清DHEA−S、DHEAおよびテストステロンがそれぞれもたらされた(Buster et al.1992)。これらの先の結果の検討から、血清DHEA−Sの20倍増加が、血清テストステロンのたった6.9倍の増加をもたらし、血清DHEAが、11.6倍に増加したことが示される。さらに、ラジオイムノアッセイにおける3分の2の非特異的結合を考慮に入れるために、測定された血清テストステロン値を3分の1に調整するとき、血清テストステロンレベルは、150mgのDHEA用量を投与した後の12hにわたって生理学的レベル以内のままだった(Buster et al.1992)。
【0136】
経口経路と経皮的経路との間で観察された血清DHEAに対する同様の差異が、17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼによってDHEAから直接変換される5−ジオールについて見られる(Labrie,Luu−The,et al.2000)。実際に、5−ジオールのAUC
0−24h値は、100mgのDHEAの経口投与後に対照に対して約138%増加し、400mgのDHEAクリームおよびゲルの適用後にそれぞれ363%および218%の増加が測定される。
【0137】
上で述べたように、ヒトは、他のいくつかの霊長類とともに、前駆体ステロイドであるDHEAおよびDHEA−Sを大量に分泌する副腎を有する点において独特であり、DHEAおよびDHEA−Sは、末梢の細胞内分泌組織において、4−ジオンに変換され、次いで、能力のあるアンドロゲンおよび/またはエストロゲンに変換される(Labrie,1991;Labrie,Belanger,et al,1995;Labrie et al.1996;Labrie,Luu−The,et al,1997;Simpson,2000;Labrie,Luu−the,et al.2005;Labrie,Poulin,et al.,2006およびLabrie,Belanger,et al.,1998)。ゆえに、注目すべきは、非常に複雑な(sophisticated)内分泌系およびパラクリン系を有することに加えて、ヒトは、末梢組織に性ステロイド形成を広く与えていることであるLabrie,1991)および(Belanger,et al.,1998)。実際に、下等な哺乳動物では、卵巣および精巣は、アンドロゲンおよびエストロゲンの独占的な供給源であるが、その状況は、ヒトおよび高等な霊長類では非常に異なり、活性な性ステロイドは、大部分が、または完全に、末梢組織において局所的に合成され、ゆえに、局所的な要求に対して性ステロイドの形成および代謝を調整する制御が標的組織に与えられている。
【0138】
DHEAおよびDHEA−Sの副腎での分泌は、6〜8歳の小児における副腎皮質徴候発現の間において増加し、循環DHEA−Sの最大値は、20〜30歳の間に達する。その後、血清DHEAおよびDHEA−Sレベルは、著しく低下する(Belanger et al.1994)。実際に、70歳において、血清DHEA−Sレベルは、そのピーク値の約20%まで減少し、85〜90歳までに95%減少しうる(Belanger et al.1994)および(Migeon et al.,1957)。年齢を重ねるにつれて副腎によるDHEAおよびDHEA−Sの形成が70〜95%減少することによって、末梢の標的組織におけるアンドロゲンおよびエストロゲンの形成は、劇的に減少する(Labrie,Belanger et al.,2006)。末梢組織における性ステロイドの形成のそのような著明な減少は、加齢に関連する一連の疾患の病原に広範囲に関与するだろう。
【0139】
先に述べたように、末梢の標的組織におけるDHEAおよびDHEA−Sから活性なアンドロゲンおよび/またはエストロゲンへの変換は、各細胞型における様々なステロイド産生酵素および代謝酵素の発現レベルに依存する(Labrie,1991)。DHEAおよびDHEA−Sからアンドロゲンおよび/またはエストロゲンへの変換に関与するステロイド産生酵素をコードするほとんどの組織特異的遺伝子の構造の解明が、この分野を急速に発展させた(Labrie,Belanger et al,1995;Labrie,Luu−The et al.,1997;Labrie,Simard et al.,1996;Labrie,Luu−The et al.,2005;Labrie,Poulin et al.,Labrie,Luu−The,et al.2000,Labrie,Sugimoto,et al.1992,Labrie,Simard et al,1992;Luu−The,et al.1995;およびLabrie,Durocher et al.1995)。
【0140】
正常な女性において比較的高いレベルのアンドロゲン代謝産物が存在することを示すデータ(Labrie,Belanger,et al.1997;Labrie,Belanger et al.,2006;Labrie,and Belanger,et al,2007b)は、アンドロゲンが、女性において主要な生理学的役割であるが未だ過小評価されている役割を果たすことを強く示唆している。女性において20〜30歳から40〜50歳にかけて血清DHEAが44.5%減少すること(Belanger et al.,2006)は、閉経より先に起こる骨減少をうまく説明することができるだろう。実際に、加齢性の骨減少は、40歳代に開始し、骨代謝の変化は、閉経前に広範囲に見られると報告されている(Mazess 1982;Riggs,et al.1981およびJohnston et al.1985)。これらの知見と一致して、骨密度は、検査されたすべての部位において、閉経前の女性よりも閉経期前後と分類される女性のほうが低かった(Steinberg,et al.,1989)。これらの知見と一致して、副腎による前駆体アンドロゲン分泌の変化は、閉経時に突然停止する卵巣エストロゲン分泌の減少よりも10〜20年先に起きる(Labrie,Belanger,et al.2006)。
【0141】
血清DHEAおよびDHEA−Sが、21歳から50歳の間に50%減少するだけでなく、同様の減少が血清テストステロンについても観察されることを認めることが重要である(Zumoff et al.1995)。そのようなデータは、アンドロゲンまたはそれらの前駆体によるホルモン補充療法が、副腎によるアンドロゲン前駆体分泌の早期の減少および血清テストステロンの平行した減少を補うために、閉経時に早期に開始されるべきであることを首尾良く示唆しているだろう(Labrie,2006)。
【0142】
末梢の標的組織において合成された活性なアンドロゲンおよびエストロゲンは、その起源の細胞においてそれらの活性を発揮し、活性な性ステロイドは、非常に少ない拡散しか生じないので、循環中では非常に低いレベルとなる。実際に、以前に観察され(Labrie,Belanger et al.,1997)、本研究で確認されたように、DHEA投与の最も有意な作用は、DHTの代謝産物のグルクロニド誘導体、すなわちADT−Gおよび3α−ジオール−Gの循環レベルに対して見られるが、テストステロン、E1またはE2の血清レベルの有意な変化は、まったく見られないか、ほんの少し見られるだけである。これらの活性なステロイドは、副腎前駆体であるDHEAおよびDHEA−SからDHTを合成する適切なステロイド産生酵素ならびにDHTを不活性な代謝産物であるADTおよび3α−ジオール(グルクロン酸化によってさらに修飾される)に変換する酵素を有する末梢の細胞内分泌組織において局所的に生成される(Belanger et al.2003)。
【0143】
最近の研究では、50mgのDHEAを毎日経口投与しても、血清テストステロンまたはDHTに対して有意な影響はないが、DHEAおよびADT−Gは、同程度に(80〜90%)増加した(ArIt et al.2001)。別の研究では、25mgのDHEAを6ヶ月間にわたって毎日経口投与した後、閉経後の女性における投薬前のDHEA−Sの血清レベルは、0.55μg/mlから約1.4μg/mlに上昇した(Casson et al.1998)。しかしながら、DHEAを最後に投与した23h後に測定された血清DHEAおよびテストステロンレベルは、有意に変化しなかった。別の研究からは、50mgのDHEAを毎日経口投薬することによって、血清アンドロゲンレベルが閉経前の範囲になることが示唆されている(Buster et al.1992)。
【0144】
本データは、DHEAおよびDHEA−Sが、特定の末梢の細胞内分泌組織において活性なアンドロゲンおよび/またはエストロゲン(これらは、循環中に活性なステロイドを全く放出せずに、またはほんの少し放出を伴って、それらの合成部位においてそれらの生物学的作用を発揮することができる)に変換されることを明らかに証明している。したがって、テストステロン、E1またはE2の血清レベルの変化は、DHEAからアンドロゲンまたはエストロゲンへの変換のパラメータとして使用することができない(Labrie,Belanger et al.,2006)。実際に、活性なステロイドは、それが合成されて、その作用を発揮する同じ細胞において、グルクロン酸化および硫酸化された不活性な代謝産物に代謝され、その不活性な代謝産物は、最終的に細胞外コンパートメント内に拡散し、循環中で測定されうる(Labrie,Belanger et al.,2006;Labrie,Belanger et al.,1997およびLabrie,Belanger et al.2007)。アンドロゲンのコンジュゲートの代謝産物の測定は、女性において総アンドロゲンプールを正確に推定することを可能にする唯一のアプローチである。おそらく、エストロゲンについても同様の状況が存在するが、エストロゲン代謝の薬物動態の正確な評価およびそれらの代謝産物の同定は、未だ確立されていない。
【実施例3】
【0145】
臨床試験ERC−210
膣萎縮の生理学的処置法である膣内DHEA
被験体および方法
本研究は、1治療群あたり50人の被験体(合計200人の被験体)の第III相、前向き、多施設、無作為化、プラセボ対照二重盲検治験である。したがって、200人の閉経後の女性を無作為化し、以下のDHEA濃度:0.0%、0.25%(3.25mgのDHEA)、0.5%(6.5mgのDHEA)または1.0%(13mgのDHEA)のオビュール剤を、アプリケーターを用いて膣内に適用して毎日投与した。本研究を、2つのフェーズ、すなわち、スクリーニングと、その後の12週間にわたる処置期間に分けた。
【0146】
選択規準は、以下であった:
−aまたはbまたはcのいずれかを満たす閉経後の女性:
a.少なくとも1年間月経が無い、または;
b.6ヶ月以上12ヶ月未満にわたって月経が無い女性または子宮摘出術時に閉経前だった、子宮摘出術を受けた女性における40mlU/mL以上のFSHレベル(第1日目より前の60日以内)、または;
c.両側卵巣摘出術後、6週間以上経過していること(スクリーニングのための来院時)。
−以下の症状のうち少なくとも1つの中程度から重度の症状を自ら特定している女性:
・膣の乾燥(症状なし、軽度、中程度または重度)。
・膣および/または外陰部の過敏/かゆみ(症状なし、軽度、中程度または重度)。
・性行為に関連する膣の疼痛(症状なし、軽度、中程度または重度)。
【0147】
女性は、どの症状が処置の開始時に自分自身にとって最も厄介であるかを特定するべきである。この症状の変化を追跡し、処置効果を評価するために用いる。
−40〜75歳の女性。
−本研究に参加する意志があり、インフォームドコンセントに署名していること。
−低い成熟指標を有する(膣スミアにおいてガイダンスの部分(part of guidance)が表層細胞の5%より大きくない)女性。
−5より高い膣のpHを有する女性
−研究開始の9ヶ月以内の正常なマンモグラフィ。
−正常な乳房検査。
−(第1日目の)最近の12ヶ月以内の正常なPAPスミア(炎症性の変化を含む)。子宮摘出術を受けた女性の場合、PAPスミアは、少なくとも1枚のスライドからなる。
−以前または現在、麻薬中毒またはアルコール中毒でないこと。
−ボディマス指数(BMI)(WHO)によるところの18.5〜35という理想体重の範囲内の体重。
−肝臓もしくは腎臓の障害または薬物もしくはステロイドの代謝に影響を及ぼすと知られている状態を有していないこと。
−正常なベースラインの血液学、臨床化学および尿検査。
−HIV1/HIV2ならびにB型肝炎およびC型肝炎についての血清学が陰性であること。
【0148】
除外規準は、以下であった:
−診断未確定の異常な生殖器の出血。
−皮膚癌(非メラノーマ)以外の癌と以前に診断されていること。
−スクリーニング時において行われた生検における子宮内膜の過形成または子宮体癌。
−活性な血栓塞栓性の疾患またはその履歴。
−重大な代謝または内分泌の疾患。
−臨床的に重大な胃腸、肝臓または胆嚢の疾患。
−従来の治療によって制御されない反復性の片頭痛。
−従来の治療によって制御されない真性糖尿病。
−以前のホルモン療法における重大な合併症。
−研究登録(スクリーニングのための来院)前の3ヶ月以内のエストロゲンのみの注射薬治療またはプロゲスチン植込錠の使用。
−研究登録前の6ヶ月以内のエストロゲン小丸薬またはプロゲスチン注射薬の使用。
−ベースライン評価前の8週間における、経口エストロゲン、プロゲスチンもしくはDHEAの曝露または子宮内プロゲスチン治療。
−ベースライン評価前の4週間における膣のホルモン製品(リング、クリームまたはゲル)または経皮的エストロゲンのみまたはエストロゲン/プロゲスチン製品。
患者は、以下のとおり洗い流しを行うことができるが、膣萎縮についての質問票には、必要な洗い流し期間後に回答しなければならない:
・以前の経口エストロゲン、DHEAおよび/またはプロゲスチン治療に対して、少なくとも8週間の洗い流し期間。
・以前の経皮的ホルモン治療に対して、少なくとも4週間の洗い流し期間。
・膣の乾燥のために局所的に送達されたホルモン補充療法に対して、少なくとも4週間の洗い流し期間。
・以前のエストロゲン小丸薬治療またはプロゲスチン注射薬治療に対して、少なくとも6ヶ月。
・以前の子宮内プロゲスチン治療に対して、8週間以上。
・以前のプロゲスチン植込錠およびエストロゲンのみの注射薬治療に対して、6ヶ月以上。
−スクリーニングのための来院の前の3ヶ月以内にアンドロゲンまたはアナボリックステロイドで以前に処置されていること。
−研究開始の6週間以内の経口コルチコステロイドによる処置。
−コルチコステロイドを長期間使用することが許されていないこと(断続的な点鼻薬または皮膚、眼もしくは耳への外用剤は認められる)。
−心不全または著明な冠状動脈心疾患。
−160/95mmHg以上の高血圧症または標準的な治療によって制御されない高血圧症。
−臨床的に重大なうつが確認されていること、または重篤な精神医学的障害の履歴が確認されていること。
−スクリーニングのための来院の30日以内の任意の治験薬物の投与。
−臨床的に関連性のある異常な血清生化学または血液学。
−低悪性度扁平上皮内病変(LGISIL)またはそれより悪い病変を示すベースラインの子宮頸部細胞診。
−1日に10本を超えるタバコを吸うこと。
−エストロゲンの代謝を干渉する薬物(例えば、ケトコナゾール、ステロイド形成阻害剤またはステロイド作用阻害剤)。
−SERMまたはステロイド受容体と相互作用する薬物。
−子宮線維腫の存在が、既知であるか、または婦人科学の検査時に触知可能であること。
−凝固障害であるか、または抗凝固薬で治療中であること。
【0149】
臨床検査
通常の臨床検査、すなわち血液学(全血球計算値および凝固を含む)、血液化学および尿検査をすべての来院時に行った。血清FSHは、6ヶ月以上12ヶ月未満にわたって月経が無いか、または子宮摘出術時に閉経前だった女性のみにおいて測定される必要があった。DHEA、DHEA−S、アンドロスト−5−エン−3β,17β−ジオール(5−ジオール)、ジヒドロテストステロン(DHT)、テストステロン(testo)、アンドロステンジオン(4−ジオン)、エストロン(E
1)、エストラジオール(E
2)、E
1−S、アンドロステロングルクロニド(ADT−G)、アンドロスタン−3α、17β−ジオール−3G(3α−ジオール−3G)および3α−ジオール−17Gの血清ステロイドレベルは、報告されているように(Labrie,Belanger et al.2006;Labrie,Belanger et al.2007;Labrie,Cusan et al.2008)、質量分析によってLaboratory of Molecular Endocrinology,CHUL Research Centerにおいて測定された。
【0150】
膣のpHおよび細胞診
成熟指標およびパパニコロウ(PAP)スミアについては、処置レジメンについて知らされていない同じ細胞病理学者(Dr.Robert Dube,Department of cytology−pathology,Enfant−Jesus Hospital,Quebec City,Canada)によってすべてのサンプルが検査された。表層型(S)、中層型(I)および傍基底型(P)の扁平上皮細胞型に細胞を分類するために100個の細胞について行った(Meisels 1967;Wied 1993)。
【0151】
Ayreスパーテルの丸い先端を用いて、膣の側壁の中部3分の1を擦過することによって膣スミアを得た。次いで、その材料をスライドガラスに塗布し、Spray−Cyteを用いて直ちに固定した。成熟指標を決定するために、これらのサンプルを中央検査機関に送付した。
【0152】
鉗子を用いて膣の側壁にpH指示片を直接適用することによって、膣のpHを測定した。パパニコロウスミアについては(最近の12ヶ月間において行われていない場合)、子宮頸内膜、子宮頸外部および膣円蓋から検体を得て、サイトスプレー(cytospray)によって直ちに固定した。上記検体は、Ayreスパーテルを用いて採取された。
【0153】
子宮内膜の生検
子宮内膜の生検は、スクリーニング時および研究の終わりの第3ヶ月目において行われた。すべての生検は、中央検査機関の同じ病理学者(Dr.Robert Dube,Department of cytology−pathology,Enfant−Jesus Hospital,Quebec City,Canada)によって検査された。
【0154】
膣の検査
各部位における研究を担当する婦人科医または医師が、2、4、8および12週間という同じ時間間隔において、膣の検査を行うことにより、膣萎縮の主要な徴候、すなわち膣の分泌、膣の色、膣上皮の完全性および膣上皮の表面の厚さについての重症度(症状なし、軽度、中程度または重度(それぞれ0、1、2および3という値を用いて解析される))を評価した。
図26〜29に見られるように、膣萎縮の4つすべての徴候に関して、時間依存的かつ用量関連かつ統計学的に有意な改善が見られた。実際に、婦人科医およびまたは医師によって観察された有益な作用は、最も厄介な症状について女性自身が報告した作用とほぼ重ね合わせられる。
【0155】
スクリーニング時、次いで、第1日目ならびに2、4、8および12週間で、膣の検査を行った。以下の重症度:症状なし、軽度、中程度または重度に従って、膣の分泌、膣の色、膣上皮の完全性および膣上皮の表面の厚さを評価した。重症度の定義は、以下のとおりであった:
a)膣の分泌
萎縮なし:膣壁上の顕著な正常で明らかな分泌。
軽度:分泌によって表層が被覆されている、膣鏡の挿入が困難。
中程度:膣円蓋全体を覆うには不十分、膣鏡を挿入する際には疼痛を防ぐために潤滑が必要な場合がある。
重度:分泌なし、炎症性の顕著な潰瘍化、腟鏡を挿入する際には疼痛を防ぐために潤滑が必要。
b)膣上皮の完全性
萎縮なし:正常。
軽度:擦過すると膣の表面から出血する。
中程度:軽く接触すると膣の表面から出血する。
重度:接触する前から膣の表面に点状出血があり、軽く接触すると出血する。
c)膣上皮の表面の厚さ
萎縮なし:円蓋には、ひだがあり、弾性がある。
軽度:ひだは少ないが、膣円蓋の顕著な弾性はいくらかある。
中程度:平らで、膣円蓋の弾性がいくらかある。
重度:平らで弾性がなく、膣の上部1/3は収縮しているか、または膣の正常状態を喪失している(膀胱瘤および直腸瘤)。
d)膣の色
萎縮なし:ピンク色。
軽度:それよりも薄い色。
中程度:蒼白色。
重度:透明で、色がないか、または炎症を起こしているかのいずれか。
【0156】
統計
観察数、平均値または必要に応じて幾何平均、標準偏差、平均値の標準誤差、95%両側信頼区間(CI)、中央値、連続変数に対する最小値および最大値、ならびにカテゴリーデータについて1カテゴリーあたりの数およびパーセントを示す要約の表が作成される。別段記載されない限り、統計解析は、0.05という両側有意水準において行われる。要約のためのカテゴリーは、一般に、DHEA処置の用量レベル、すなわち、0%(プラセボ)、0.25%、0.5%および1.0%のDHEAからなる。
【0157】
解析に対する主要エンドポイントは、以下のものからなる:
被験体にとって最も厄介であるとその被験体によって特定された中程度から重度の症状の統計学的に有意な改善。その症状の重症度は、症状の重症度の増加:症状なし、軽度、中程度または重度に基づく。これらの評定は、それぞれ0、1、2および3という値を用いて解析される;すべての被験体が、2または3と類別される少なくとも1つのベースライン症状を有していなければならない。対象の症状は、膣の乾燥、膣および/または外陰部の過敏/かゆみ、ならびに性行為に関連する膣の疼痛である。
【0158】
傍基底細胞の統計学的に有意な減少および表層細胞の統計学的に有意な増加。パーセンテージを単位として、データを評価する。成熟値もまた計算する。
【0159】
膣のpHの統計学的に有意な低下。
解析集団
包括解析集団(Intent−to−Treat(ITT)Population)は、ベースライン時および少なくとも1回のベースライン後に有効性を評価された、処置を受けた被験体からなる。誤った処置を受けた可能性のある被験体は、無作為化されているので解析される。この解析集団は、主要な解析集団とみなされるべきである。ベースライン後の観察値が欠けているこの集団内の被験体については、有効性解析のために最後の値が引き延ばされる。
【0160】
プロトコルに従った(PP)集団は、有効性データを歪めると考えられる主要なプロトコル違反をすることなく、12週間の時点においてその研究を完了する処置集団のサブセットからなる。主要なプロトコル違反は、列挙されたデータの再検討およびプロトコル逸脱の報告の監視に基づいて、盲検法の研究が破られる前に判定される。PP集団内の被験体は、被験体の日誌データに基づいて、その被験体に対するプロトコル指定の期間において少なくとも90%の必要数の研究処置の適用を受けていなければならない。PP集団内の被験体は、来院空白(visit window)スケジュール:第14日目について±3日、ならびに第4、8および12週目について±7日に準拠しなければならない。誤った処置を受けたが、受けた処置を確実に確かめることができる被験体は、そのデータを歪める他の違反を有しない場合、処置されたとして、PP集団において解析される。PP集団は、有効性データ解析のための補助的な集団となる。
【0161】
安全性集団(Safety Population)は、いずれかの被験物質(任意の用量のDHEAまたはプラセボ)の投与を受け、利用可能な任意の安全性情報を有するすべての被験体と定義される。すべての安全性データ解析は、この集団に基づく。解析は、実際に施された処置に基づく。
【0162】
有効性の評価
有効性の解析は、主にITT集団において行われ、プロトコルに従った集団は、補助的な有効性解析を提供する。主要な研究目的は、膣萎縮を罹患する閉経後の女性におけるDHEAの局所的な作用に対する膣粘膜のパラメータの用量反応を評価すること、詳細には、膣の粘膜に対して最大作用をもたらす最少用量のDHEAを決定することによって、その用量反応を評価することである。この目的を扱う相互に主要な(co−primary)有効性エンドポイントは、傍基底細胞の減少、膣のpHの低下、表層細胞の増加(これらのエンドポイントは、集合的に、生理学的パラメータと示される)および被験体自身が報告する最も厄介な症状(膣の乾燥、膣および/または外陰部のかゆみ/過敏、ならびに性行為に関連する膣の疼痛(これらのエンドポイントは、集合的に、症状スコアパラメータと示される)を含む)である。これらの主要エンドポイントに加えて、成熟値もまた計算される。自身が報告した症状のスコアは、以下の値:症状なし、軽度、中程度または重度(それぞれ0、1、2または3という値を用いて解析される)をとる。すべてのエンドポイントが、プラセボに対して統計学的に有意な作用を証明しなければならないので、複数のエンドポイントに対して統計上の調整は必要ない。
【0163】
解析のための主な時点は、2、4および8週間にわたるデータの追加の提示とともに、12週間での評価である。ベースライン時からベースライン後の評価の変化は、解析ならびにプラセボとの差のために使用される。
【0164】
結果
傍基底細胞は、通常、少なくとも1つの中程度から重度の膣萎縮の症状を罹患する閉経後の女性の膣スミアにおける主なカテゴリーであるので、処置の2週間ですでに、最も少ない用量のDHEA(0.25%)では、傍基底細胞の%が、56.0から26.5%に29.5±0.51%減少し、0.5%および1.0%のDHEA用量を用いたときは、それぞれ37.8±0.46%および36.6%の減少が同じ時間間隔で観察されたことが
図22および表6に見られる。12週間という標準的な処置期間において、0.25%、0.5%および1.0%のDHEA用量を用いたとき、それぞれ39.5±0.57%(p<0.000001)、45.6±0.55%(p<0.000001)および45.2±0.53%(p<0.000001)の減少が観察されたが、プラセボ群ではいかなる時間間隔においても有意な作用は観察されなかった。
【0165】
プラセボ群では表層細胞の%変化について12週間で有意な作用が見られなかったが(表6)、0.25%、0.5%および1.0%のDHEA群では、それぞれ3.96±0.10%(p=0.0002)、6.71±0.14%(p=0.00001)および5.92±0.12%(p=0.00001)の増加が測定された。0.5%のDHEA用量では、2週間で最大作用の48.0%に達し、4および8週間では、最大作用の84.8%および99.0%が達成されたことも見られる。1.0%DHEA用量では、最大作用は、2週間ですでに達成された。
図23は、様々なDHEA用量および時間間隔における表層細胞の%の絶対値を図示している。
【0166】
膣のpHは、12週間で、プラセボ群において6.52±0.13から0.47±0.11単位低下した(表
7、
図24)のに対し、0.25%、0.50%および1.0%のDHEA処置群では、それぞれ6.49±0.12から1.12±0.11単位の低下(p=0.0005)、6.56±0.13から1.35±0.3pH単位の低下、6.56±0.13から1.35±0.13pH単位の低下、および6.34±0.3から1.39±0.14pH単位の低下が観察された(表7)。0.5%DHEA用量では、pHに対する最大作用の70.6%および94.1%(1.36pH単位の低下)が、それぞれ処置の2および4週間で達成されたことが同じ表に見られる。一方、低い0.25%DHEA用量では、12週間で、0.5%DHEAの最大作用の83.0%に達しただけだった。4、8および12週間後において、0.50%と1.0%のDHEA用量の間にpH変化の有意差は観察されなかった(表7)。
図24は、様々なDHEA用量および時間間隔におけるpHの絶対値を図示している。
【0167】
すべての女性が、中程度から重度であると自身で評価する、以下の膣萎縮の症状:乾燥、膣もしくは外陰部の過敏/かゆみまたは性行為時の膣の疼痛のうちの1つ以上を登録時に有する必要があった。症状なし、軽度、中程度または重度と報告される自身が特定した症状を、それぞれ0、1、2および3という値を用いて解析した。表8に示されるように、12週間で、最も厄介な症状の重症度は、プラセボ群において0.67±0.15減少し、0.25%DHEA群において1.27±0.16減少し(プラセボに対してp=0.004)、0.5%DHEA投与群において1.56±0.15減少し(プラセボに対してp<0.0001)、そしてより高い1.0DHEA用量投与群において1.37±0.14減少した(プラセボに対してp=0.0008)。
図25は、様々なDHEA用量および時間間隔における最も厄介な症状の改善の程度を図示している。膣の乾燥、性行為に関連する疼痛ならびに膣および/または外陰部の過敏/かゆみは、ベースラインにおいて最も厄介な症状として確認された。プラセボ群では、膣の乾燥が、参加者によって述べられる改善の%を占めた。
【0168】
図25に図示されるように、最も厄介な症状の改善は、0.25%DHEA用量においてすでに非常に有意に異なっていた(p=0.004)。12週間でスコアが変化しないか、または1悪化した女性のパーセンテージは、プラセボ群における53.5%から、0.25%、0.5%および1.0%の群においてそれぞれ27.5%、17.8%および19.6%であった(表9)。重症度のカテゴリーの2または3の改善が、プラセボで処置された女性の21.8%において観察されたのに対し、0.25%、0.5%および1.0%のDHEA製剤を投与された50.0%、53.3%および47.9%の女性がそのような重要な改善を報告した。重度から症状なしに減少した女性は、上記の同じDHEA処置群における7.5%、20%および10.9%と比較して、プラセボ群ではたった4.6%だった。
【0169】
各研究部位における臨床試験を担当する婦人科医または医師が、2、4、8および12週間という同じ時間間隔において、膣の検査を行うことにより、膣萎縮の主要な徴候、すなわち膣の分泌、膣の色、膣上皮の完全性および膣上皮の表面の厚さについての重症度(症状なし、軽度、中程度または重度(それぞれ0、1、2および3という値を用いて解析される))を評価した。
図26〜29に見られるように、膣萎縮の4つすべての徴候に関して、時間依存的で用量関連かつ統計学的に非常に有意な改善が見られた。実際に、婦人科医およびまたは医師によって観察された有益な作用は、最も厄介な症状について女性自身が報告した作用、そしてDHEA作用の客観的なパラメータである膣の傍基底細胞および表層細胞ならびにpHに対する作用とほぼ重ね合わせられる。
【0170】
図30および31は、最近の研究(Labrie,Cusan et al.2008)から入手されたDHEAおよびその代謝産物のうちの11個の平均24h(処置の第1日目および第7日目に測定されたAUC
0−24h値から計算される)血清ステロイドレベルを図示している。血清DHEAおよび5−ジオール(および第1日目における4−ジオン)だけが、有意に増加しているが、十分に、閉経後の女性に見られる値の範囲内であると見られる(Labrie,Belanger et al.2006)。血清エストロゲン(E
1、E
2およびE
1S)ならびに血清アンドロゲン(testoおよびDHT)は、有意に影響されない。
【0171】
【表22】
【0172】
【表23】
【0173】
【表24】
【0174】
【表25】
【0175】
医薬組成物の実施例
好ましい活性な性ステロイド前駆体であるDHEAを利用したいくつかの医薬組成物が、以下に例として示されるが、それらに限定されない。活性成分の濃度は、本明細書中に記述されるように広い範囲にわたって変化しうる。含められうる他の成分の量およびタイプは、当該分野で周知である。
【0176】
【表26】
【0177】
【表27】
【0178】
Whitepsol H−15基剤(Medisca,Montreal,Canadaから入手可能)を用いて、DHEA坐剤を調製した。他の任意の脂肪親和性基剤(例えば、バター、カカオバター、Cotomar、Dehydag Base、Fattibase、Hexaride Base95、Hydrokote、Suppocire、Wecobee、カカオ脂、Japocire、Ovucire、Massa Estarinumまたは前述のものの他の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない)が使用されうる。
【0179】
【表28】
【0180】
膣または経口のゼラチンカプセル剤
上記の製剤において、DHEAの代わりに他の性ステロイド前駆体を用いてもよい。併せた重量パーセンテージが、好ましくは、上記の実施例において与えられた単一の前駆体に対する重量パーセンテージである場合は、2つ以上の前駆体を含めてもよい。
【0181】
好ましい実施形態および実施例に関して本発明を説明してきたが、本発明は、それによって限定されない。当業者は、本明細書中の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明のより広い適用性および範囲を容易に認識するだろう。