特許第5725285号(P5725285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725285
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】消火ボトル
(51)【国際特許分類】
   A62C 19/00 20060101AFI20150507BHJP
   A62D 1/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   A62C19/00
   A62D1/00
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-32591(P2011-32591)
(22)【出願日】2011年1月31日
(65)【公開番号】特開2012-157673(P2012-157673A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2014年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】510221043
【氏名又は名称】株式会社ナカムラ消防化学
(72)【発明者】
【氏名】中村 眞輔
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−118210(JP,A)
【文献】 特開平05−317451(JP,A)
【文献】 特開2010−119754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 19/00
A62D 1/00 − 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A火災消火用が、塩化アンモニウム(NHCl)が12〜15重量%、薬剤炭酸カリウム(KCO)が7〜9重量%、薬剤第二リン酸アンモニウム((NHHPO)が2〜3重量%、薬剤炭酸水素ナトリウム(NaHCO)が1.8〜2.5重量%の原料を、水70〜80重量%で溶解した水溶液薬剤からなる水溶液と、B火災消火用液状薬剤とを衝撃破損性容器に充填したことを特徴とする投擲型消火ボトル。
【請求項2】
上記A火災消火用薬剤が塩化アンモニウム(NHCl)が13.3〜13.9重量%、上記薬剤炭酸カリウム(KCO)が8.4〜8.8重量%、上記薬剤第二リン酸アンモニウム((NHHPO)が2.5〜2.6重量%、上記薬剤炭酸水素ナトリウム(NaHCO)が2.0〜2.1重量%の原料を、水70〜80重量%で溶解した水溶液薬剤からなる水溶液と、B火災消火用液状薬剤とを衝撃破損性容器に充填したことを特徴とする請求項1に記載の投擲型消火ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木材、紙、油類用火災の消火ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
室内火災発生時において、投げるだけで、木材や紙のA火災消火のみならず、油類のB火災消火にも有効で、瞬時に消火できる消火ボトルが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特許第3081531号公報
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の消火ボトルでは、木材や紙の火災にのみ消火出来ていたが、油類の火災に際しては、消火に至らなかった。
【0005】
本発明は、前述したような状況を起こさない、木材や紙などのA火災消火のみならず、同時に油類のB火災消火にも効果があり、誰でも容易に使用できる消火ボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、A火災消火用薬剤と、B火災消火用薬剤とを衝撃破損性(脆性破壊)容器にそれぞれ充填した消火ボトルで、A火災消火用薬剤は、原料が薬剤塩化アンモニウム(NHCl)と、薬剤炭酸カリウム(KCO)と、薬剤第二リン酸アンモニウム((NHHPO)と、薬剤炭酸水素ナトリウム(NaHCO)とからなり、各それぞれの薬剤、塩化アンモニウム(NHCl)10〜16重量%、薬剤炭酸カリウム(KCO)6〜10重量%、薬剤第二リン酸アンモニウム((NHHPO)2〜4重量%、薬剤炭酸水素ナトリウム(NaHCO)1〜3重量%の原料を、水70〜80重量%で溶解した水溶液薬剤からなる水溶液に、水成膜泡消火薬剤(3%型)を加えて成る消火薬剤を、衝撃破損性(脆性破壊)容器に詰めて火元に投げて使う消火弾である。
【0007】
上記衝撃破損性(脆性破壊)容器は、誰にでも投げることが出来る重量で衝撃に弱く破裂しやすいプラスティックボトルに詰め投擲を行うことで消火させることが出来る。
【発明の効果】
上記構成とした本発明に関わる消火ボトルでは、木材や紙などのA火災消火のみならず、同時に油類のB火災消火にも有効で、誰でも容易に使用できて、瞬時に消火できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
表1を参考に、本発明に関わる具体的な実施例を以下説明する。
【実施例】
【0009】
本発明は、A火災消火用薬剤と、B火災消火用薬剤とを衝撃破損性(脆性破壊)容器にそれぞれ充填した消火ボトルで、A火災消火用薬剤は、原料が薬剤塩化アンモニウム(NHCl)と、薬剤炭酸カリウム(KCO)と、薬剤第二リン酸アンモニウム((NHHPO)と、薬剤炭酸水素ナトリウム(NaHCO)とからなり、各それぞれの薬剤、塩化アンモニウム(NHCl)10〜16重量%、薬剤炭酸カリウム(KCO)6〜10重量%、薬剤第二リン酸アンモニウム((NHHPO)2〜4重量%、薬剤炭酸水素ナトリウム(NaHCO)1〜3重量%の原料を、水70〜80重量%で溶解した水溶液薬剤からな水溶液に、水成膜泡消火薬剤(3%型)を加えて成る消火薬剤を、衝撃破損性(脆性破壊)容器に詰めて火元に投げて使う消火弾である。で、本発明に係る比較試験結果を、表1を参照して、以下説明する。
【表1】
消火器の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第27号)第3条第1項に定める第一消火試験により第二模型を使用。
着火剤ガソリン1.5L、着火後3分で投擲開始、投てき距離は、1m。
試料1から3は、塩化アンモニウムの重量を変えて製造、消火は早い。
試料4と5は、炭酸カリウムの重量を変えて製造、消火は早い。
試料6と7は、第二リン酸アンモニウムの重量を変えて製造、消火は早い。
試料8は、薬剤が少なすぎると、化学反応が弱いため、消火に時間を要した。
試料9と10は、薬剤が多すぎて、水に溶解し難くなり、消火能力が低下した。
図示を省略したが、本商品を火元へ投擲することにより衝撃で容器が破裂、拡散した消火液が燃焼している熱により化学反応を起こし熱を抑え酸素を奪うことで消火させることが出来た。消火時の化学式は下記の通りとなる。
(1)塩化アンモニウムと薬剤炭酸カリウムは常温でも化学反応し弱いアンモニア臭を発する。
2NHCl+KCO → 2NH+CO+2KCl+H
4NH+3O → 2N+6H
NHは熱を加えることにより反応が加速する要素を持ち、本商品を火元へ投擲することで、火元の熱に反応し分解され、その際発生する気体により空気(酸素)を奪い、燃焼を抑えることが出来る。
なお、塩化アンモニウムが10重量%以下では、再燃の可能性があり、塩化アンモニウムが16重量%以上でも、再燃の可能性がある。好ましくは、塩化アンモニウムが12〜15重量%、最も好ましくは、塩化アンモニウムが13.3〜13.9重量%となった。更に、炭酸カリウムが6重量%以下では、再燃の可能性があり、炭酸カリウムが10重量%以上でも、再燃の可能性がある。好ましくは、炭酸カリウムが7〜9重量%、最も好ましくは、炭酸カリウムは8.4〜8.8重量%となった。
(2)第二リン酸アンモニウムはこれまで消火器などで消火剤として使用されている薬剤で(1)と加わることにより消火能力が高まる。また、第二リン酸アンモニウムが2重量%以下では、(1)の反応が促進されず、第二リン酸アンモニウムが4重量%以上では、(1)の反応が促進されない。好ましくは、第二リン酸アンモニウムが2〜3重量%、最も好ましくは、第二リン酸アンモニウムは2.5〜2.6重量%となった。
(3)炭酸水素ナトリウムは高温では分解されCOを発生する要素を持ち、火元へ投擲、火元の熱に反応し分解されることで、本商品の消火能力を高める効用がある。
2NaHCO → NaCO+HO+CO
NaCO → NaO+CO
加えて、炭酸水素ナトリウムが1重量%以下では、常温での(1)の反応を抑制できず、炭酸水素ナトリウムが3重量%以上では、常温での(1)の反応を促進してしまう。好ましくは、炭酸水素ナトリウムが1.8〜2.5重量%、最も好ましくは、炭酸水素ナトリウムが2.0〜2.1重量%となった。
(4)水成膜泡消火薬剤は主成分の炭酸カリウムと油脂が反応(鹸化)し、高温の油を瞬時に不燃化するため油類(ガソリン・灯油)の火災消火に効果があり、本商品の消火能力を高める効用がある。
最後に、水成膜泡消火薬剤は石油類火災用であり、3容量%を溶解して使用する。
(5)このことから、現在家庭内に多くある油製品可燃物にも対応可能なことから、従来製品化されていたA火災のみ対応していた消火弾に比べ、有効性は向上されたと判断できる。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、火災発生時には消火に使用する消火ボトルであり、平時は規格H190×Φ70mmとコンパクトなサイズでどこにでも据置ことが可能で、又梱包箱を、誰でも見つけ易い壁に吊り下げることも可能で紛失の恐れが少ない。また、容器は円筒型容積650ml、総重量720g、持ちやすく使用しやすい構造とした。家庭内の初期消火での使用が主な目的ではあるが、森林火災消火にも活用できる。