(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725305
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】2線式伝送器起動回路
(51)【国際特許分類】
H04B 3/02 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
H04B3/02
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-250104(P2012-250104)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-99734(P2014-99734A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2014年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 大輔
【審査官】
高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−174236(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0154709(US,A1)
【文献】
特開2006−293871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサの検出信号を所定の直流電流に変換する電流変換部を有し、起動時における電力を安定に供給するように設けられた2線式伝送器起動回路において、
前記電流変換部と並列に起動電流生成回路が接続され、
前記起動電流生成回路は、抵抗とシャントレギュレータが直列接続された第1の直列回路と、スイッチング素子と抵抗が直列接続された第2の直列回路とを含み、
前記シャントレギュレータの制御端子は前記第2の直列回路のスイッチング素子と抵抗との接続点に接続され、
前記第2の直列回路のスイッチング素子の制御端子は前記第1の直列回路の抵抗とシャントレギュレータとの接続点に接続されていることを特徴とする2線式伝送器起動回路。
【請求項2】
前記スイッチング素子は電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の2線式伝送器起動回路。
【請求項3】
前記スイッチング素子は接合型トランジスタであることを特徴とする請求項1記載の2線式伝送器起動回路。
【請求項4】
前記電流変換部における2線式伝送線のいずれか一方には伝送線に流れる電流を検出するための抵抗が接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の2線式伝送器起動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2線式伝送器起動回路に関し、詳しくは、回路構成の簡略化に関する。
【0002】
一般的に、2線式伝送器では、起動時における電力の供給を確保して伝送器の安定性を図るために、起動回路が設けられている。
図4は、従来の2線式伝送器起動回路の一例を示す回路図である。
【0003】
図4において、2線式伝送器10は、2線式の伝送線L1、L2に接続される。これら2線式伝送器10および伝送線L1、L2は、スマート(smart)またはフィールドバス(foundation,Profibus)として形成される。
【0004】
2線式伝送器10は、起動回路20と、電流変換部30と、電力供給部40と、内部回路50を備えている。
【0005】
起動回路20において、カレントミラーを構成する一方のトランジスタQ1のエミッタは抵抗R1を介して伝送線L1に接続され、他方のトランジスタQ2のエミッタは抵抗R2を介して伝送線L1に接続されている。トランジスタQ1のコレクタは電源電圧Vccを有する電源線Vccに接続されている。トランジスタQ2のコレクタは、トランジスタQ1のベースとトランジスタQ2のベースとの接続点に接続されている。これらトランジスタQ1のベースとトランジスタQ2のベースとトランジスタQ2のコレクタとの接続点は、スイッチSWと定電流源Iの直列回路を介して共通電位点COMに接続されている。
【0006】
電流変換部30は、図示しないセンサの検出信号を4〜20mAの直流電流に変換するものであって、一端が伝送線L1に接続されて他端が電源線Vccに接続された電流源I2と、伝送線L2に直列接続された抵抗R3と、抵抗R3の両端の電圧を測定する電圧測定部Vと、この電圧測定部Vの電圧測定結果に基づき出力電流が所定値になるように電流源I2を制御する電流源制御部CTLとで構成されている。
【0007】
電源線Vccと共通電位点COMとの間には、抵抗Raと抵抗Rbとの直列回路が接続されている。比較器CMPの非反転入力端子は抵抗Raと抵抗Rbとの接続点に接続されて、比較器CMPの反転入力端子は基準電圧源Vref1に接続されている。比較器CMPの出力信号は、スイッチSWをオンオフ駆動する。
【0008】
電力供給部40は、抵抗Raと抵抗Rbとの直列回路と並列に接続されている。なお、電力供給部40は、たとえばツェナーダイオードZDで構成されている。このツェナーダイオードZDのアノードは共通電位点COMに接続され、カソードは電源線Vccに接続されている。なお、電力供給部40はツェナーダイオードに代えて、誤差増幅器などを用いて形成することも可能である。
【0009】
内部回路50は、圧力や温度などの物理量を測定する図示しないセンサと、このセンサの出力信号に対して所定の信号処理を施す図示しないマイクロプロセッサなどで構成されている。この内部回路50は電力供給部40と並列に接続され、電力供給部40の出力電圧により駆動される。
【0010】
図4の回路の動作を説明する。ここで、前述のように電源線Vccの内部電源電圧をVccとし、伝送線L2の電圧をVaとし、伝送線L1の電圧をVbとし、トランジスタQ1のベースとトランジスタQ2のベースとトランジスタQ2のコレクタと比較器CMPの出力端子との接続点の電圧をVeとし、抵抗Raと抵抗Rbと比較器CMPの非反転入力端子との接続点の電圧をVnとする。
【0011】
起動前、スイッチSWはオンになっており、定電流源Iは電圧Vccが立ち上がっていない状態でも所定の電流を流すように動作している。これにより、比較器CMPの非反転入力電圧Vnは抵抗Rbでプルダウンされ、電圧Vn<電圧Vref1になることから比較器CMPの出力はロウとなり、電圧Veはロウとなる。
【0012】
そして、起動時、電圧Vbの上昇により、トランジスタQ1とQ2は共にオンとなり、トランジスタQ1のコレクタ電流Istが流れる。コレクタ電流Istは、電圧Vccの上昇を促進する。なお、抵抗R1、R2は、コレクタ電流Istの上限を抑制する。
【0013】
さらに、電圧Vccが所定の電圧になって電圧Vnも所定の電圧となる(電圧Vn>電圧Vref1)と比較器CMPの出力はハイとなり、電圧VeもハイとなってトランジスタQ1とQ2は共にオフとなる。すなわち、起動回路20は、電流変換部30の出力電圧が所定の値以上のときに停止する。
【0014】
定常動作時、トランジスタQ1とQ2は共にオフとなる。詳しくは、電圧Vccが十分に大きいため電圧Vnは十分に大きくなり(電圧Vn>電圧Vref1)、比較器CMPの出力はハイとなって電圧Veは十分に大きくなる。この結果、トランジスタQ1とQ2のベース電流は流れず、トランジスタQ1とQ2のコレクタ電流は流れない。
【0015】
特許文献1には、
図4と同様な2線式伝送器起動回路の構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−174236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、
図4の回路構成によれば、内部の電源電圧Vccが立ち上がっていない状態でも動作するような定電流源Iを用意しなければならず、回路構成が煩雑になるという問題点がある。
【0018】
本発明は、このような従来の問題点に着目したものであり、その目的は、回路構成が簡略化された2線式伝送器起動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような課題を達成する請求項1の発明は、
センサの検出信号を所定の直流電流に変換する電流変換部を有し、起動時における電力を安定に供給するように設けられた2線式伝送器起動回路において、
前記電流変換部と並列に起動電流生成回路が接続され、
前記起動電流生成回路は、抵抗とシャントレギュレータが直列接続された第1の直列回路と、スイッチング素子と抵抗が直列接続された第2の直列回路
とを含み、
前記シャントレギュレータの制御端子は前記第2の直列回路のスイッチング素子と抵抗との接続点に接続され、
前記第2の直列回路のスイッチング素子の制御端子は前記第1の直列回路の抵抗とシャントレギュレータとの接続点に接続されていることを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1記載の2線式伝送器起動回路において、
前記スイッチング素子は電界効果トランジスタであることを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明は、請求項1記載の2線式伝送器起動回路において、
前記スイッチング素子は接合型トランジスタであることを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の2線式伝送器起動回路において、
前記電流変換部における2線式伝送線のいずれか一方には伝送線に流れる電流を検出するための抵抗が接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
これらにより、電源起動前から動作する定電流源が不要になり、2線式伝送器起動回路の回路構成を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【
図4】従来の2線式伝送器起動回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、
図4と共通する部分には同一の符号を付けている。
図1と
図4の違いは、起動電流生成回路の構成にある。起動電流生成回路は、抵抗R1と集積回路化されたシャントレギュレータSRとスイッチング素子として用いる電界効果トランジスタM3と抵抗R4とで構成されている。
【0026】
図1において、抵抗R1と直列にシャントレギュレータSRが接続され、この抵抗R1とシャントレギュレータSRの直列回路は電流変換部30と並列に接続されている。そして、この抵抗R1とシャントレギュレータSRの直列回路と並列に、電界効果トランジスタM3と抵抗R4との直列回路が接続されている。電界効果トランジスタM3のドレインは電流変換部30の一端に接続され、ゲートは抵抗R1とシャントレギュレータSRの接続点に接続され、ソースはシャントレギュレータSRの制御端子に接続されている。
【0027】
また、シャントレギュレータSRと並列に電界効果トランジスタM2が接続され、電界効果トランジスタM2のゲートは電界効果トランジスタM1と抵抗R2との直列回路の電界効果トランジスタM1と抵抗R2との接続点に接続されている。この電界効果トランジスタM1と抵抗R2との直列回路の抵抗R2の一端は電流変換部30の一端に接続され、電界効果トランジスタM1のソースは共通電位点COMに接続されている。電界効果トランジスタM1のゲートは、比較器CMPの出力端子に接続されている。
【0028】
このような構成において、シャントレギュレータSRは、抵抗R4の両端の電圧がシャントレギュレータSR内部の基準電圧源Vref2と同じ電圧になるように、電界効果トランジスタM3のゲートを制御する。この結果、起動電流として機能する電界効果トランジスタM3のドレイン電流Id3は、
Id3=Vref2/R4
となる。
【0029】
起動電流生成回路で生成された起動電流は、電源投入時に内部の電源電圧Vccを急速に立ち上げる。
【0030】
内部の電源電圧Vccがある値以上になると、比較器CMPが作動し、その後、電界効果トランジスタM1と電界効果トランジスタM2は電界効果トランジスタM1→電界効果トランジスタM2のように順次導通し、電界効果トランジスタM3がカットオフすると、起動電流は停止する。
【0031】
図4に示した従来回路では、内部の電源電圧Vccが立ち上がっていない状態でも動作するような定電流源Iを用意する必要があったが、
図1の本発明ではこのような定電流源Iが不要となり、より簡単に起動回路を構成できる。
【0032】
なお、
図1の実施例では、スイッチング素子として電界効果トランジスタM1〜M3を用いる例を示したが、
図2に示すように少なくともいずれかをバイポーラ接合トランジスタQ3〜Q5に置き換えてもよい。
【0033】
また、
図1および
図2の実施例では、2線式の伝送線L1、L2のうち、一方の伝送線L2にその伝送線L2に流れる電流を検出するための抵抗R3を直列接続する例を示したが、
図3に示すように、他方の伝送線L1にその伝送線L1に流れる電流を検出するための抵抗R3を直列接続するようにしてもよい。
【0034】
以上説明したように、本発明によれば、電源起動前から動作する定電流源が不要な回路構成が簡略化された2線式伝送器起動回路を提供することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 2線式伝送器
20 起動回路
30 電流変換部
40 電力供給部
50 内部回路