【文献】
H.Kawarada et al.,Electrolyte-Solution-Gate FETs Using Diamond Surface for Biocompatible Ion Sensor,phys. stat. sol.,2001年,(a)185, No.1,p.79-83
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ガラス電極式pHセンサでは、参照極が収容されるホルダー膜内の内部液が被測定液へ漏洩することに起因する被測定液等の汚染、内部液の水分蒸発による状態変化や内部液の結晶化などの不具合が発生することがある。
【0005】
本発明の目的は、参照極の不具合を解消したpHセンサ等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明のpHセンサおよびpH測定方法は以下のとおりである。
(1)
参照極と、作用極とを備え、前記参照極および前記作用極の出力に基づいて被測定液のpHを測定するpHセンサにおいて、
前記参照極はpチャネル電界効果トランジスタにより構成され、
前記pチャネル電界効果トランジスタのゲートが水素イオン鈍感応終端を有するダイヤモンド表面として形成され、
前記ダイヤモンド表面はドープダイヤモンドで形成されたものである
ことを特徴とするpHセンサ。
(2)
前記pチャネル電界効果トランジスタのソースに電位が与えられソースフォロア回路が形成される
ことを特徴とする
(1)に記載のpHセンサ。
(3)
参照極および作用極に被測定液を接触させるステップと、
前記参照極および前記作用極の出力に基づいて前記被測定液のpHを測定するステップと、を備えるpH測定方法において、
前記参照極はpチャネル電界効果トランジスタにより構成され、
前記ゲートが水素イオン鈍感応終端を有するダイヤモンド表面として形成され、
前記ダイヤモンド表面はドープダイヤモンドで形成されたものである
ことを特徴とするpH測定方法。
(4)
前記pチャネル電界効果トランジスタのソースに電位が与えられソースフォロア回路が形成される
ことを特徴とする
(3)に記載のpH測定方法。
【0007】
本発明のpHセンサは、参照極と、作用極とを備え、前記参照極および前記作用極の出力に基づいて被測定液のpHを測定するpHセンサにおいて、pチャネル電界効果トランジスタにより構成され、前記pチャネル電界効果トランジスタのゲートが水素イオン鈍感応終端を有するダイヤモンド表面として形成されることを特徴とする。
このpHセンサによれば、参照極が内部液を含まないpチャネル電界効果トランジスタにより構成されているので、参照極における内部液の漏洩や経時劣化等の問題を解消できる。このとき、参照極は、pチャネル電界効果トランジスタにより構成される。
【0008】
前記ダイヤモンド表面が水素終端処理を施したアズ・グローンダイヤモンドにより構成されてもよい。
【0009】
前記ダイヤモンド表面を構成するsp3結合の結晶の含有量がsp2結合の結晶の含有量より多いとよい。
つまり、前記ダイヤモンド表面を構成するダイヤモンドはsp3結合の結晶からなる炭素構造体が最も好ましいがsp2結合の結晶を含んでいても良い。sp2結合の結晶を含む場合、(sp3結合の結晶の含有量)/(sp2結合の結晶の含有量)の値が高い方が良い。
【0010】
前記ダイヤモンド表面が水素終端処理を施したアズ・グローンダイヤモンドの水素終端の一部を酸素終端またはフッ素終端に置換した水素イオン鈍感応終端であってもよい。
【0011】
前記作用極をガラス電極により構成してもよい。
【0012】
前記作用極をゲートが水素イオン感応膜とされた電界効果トランジスタにより構成してもよい。詳しくは、MOS型FETのゲート酸化膜の表面の金属導電膜のかわりに水素イオンに感応する膜を備えたイオン感応性電界効果トランジスタとする。
【0013】
前記電界効果トランジスタの温度を検出する温度センサを備えてもよい。
【0014】
本発明のpH測定方法は、参照極および作用極に被測定液を接触させるステップと、前記参照極および前記作用極の出力に基づいて前記被測定液のpHを測定するステップと、を備えるpH測定方法において、前記参照極はpチャネル電界効果トランジスタにより構成され、前記ゲートが水素イオン鈍感応終端を有するダイヤモンド表面として形成されることを特徴とする。
このpH測定方法によれば、参照極がpチャネル電界効果トランジスタにより構成されているので、参照極における内部液の漏洩や経時劣化等の問題を解消できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のpHセンサによれば、参照極がpチャネル電界効果トランジスタにより構成されているので、参照極における内部液の漏洩や経時劣化等の問題を解消できる。
【0016】
本発明のpH測定方法によれば、参照極がpチャネル電界効果トランジスタにより構成されているので、参照極における内部液の漏洩や経時劣化等の問題を解消できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明によるpHセンサの実施形態について説明する。本実施形態のpHセンサは、本発明におけるpチャネル電界効果トランジスタとしてのダイヤモンドISFETによる参照極と、ガラス電極とを組み合わせた例を示す。
【0019】
図1は、本発明の第1実施例のpHセンサの構成を示す断面図であり、
図2は、
図1の実施例のISFET部分の平面図である。
【0020】
図1の実施例を説明する。参照極1は、表面にダイヤモンド薄膜12が形成されたシリコンウェハ11と、ダイヤモンド薄膜12の表面に形成されたドレイン13と、ダイヤモンド薄膜12の表面にドレイン13と対向して形成されたソース14と、ドレイン13およびソース14を覆う保護膜15と、を備える。
【0021】
ドレイン13とソース14との間に被測定液3が充填される。ダイヤモンド薄膜12は、被測定液3に接液する。本実施形態のpHセンサでは、ドレイン13およびソース14に挟まれた接液する領域がゲート10として機能する。ドレイン13、ソース14、ゲート10は、pチャネル電界効果トランジスタを形成し、イオン感応性電界効果トランジスタ(ISFET;Ion Sensitive Field Effect Transistor)を形成する。また、ダイヤモンド薄膜12を有することから、ダイヤモンドISFETともいう。
【0022】
作用極として機能するガラス電極2は、内部液22(例えばpH7の塩化カリウム溶液)が充填されたガラス膜21と、ガラス膜21の内部に配置された塩化銀電極等の内部電極23と、ガラス膜21を支持するガラス支持管24と、を備える。また、内部電極23からの出力は、出力端子23Aに導かれる。ガラス膜21とガラス支持管24とは、被測定液に接液する。なお、
図1の実施例では、ガラス電極2の幅がドレイン13とソース14との間の距離よりも小さく記載しているが、一般的には、ガラス電極2の幅がドレイン13とソース14との間の距離よりも大きくなる。
【0023】
図2は、
図1の実施例のドレイン13、ソース14、ゲート10のISFET部分における平面図である。
図1の実施例と同一の要素に同一の符号を付している。
図1の断面図は、
図2の実施例の中央部分における、図中の平面I−Iの断面に相当する。
【0024】
ドレイン13およびソース14の電極や間隔等のサイズについては任意の数値を適用できるが、例えば、
図2の実施例におけるドレイン13とソース14との距離α:10〜1000μm、ソース14のISFET部の幅(ドレイン13のISFET部の幅)β:0.01〜50mm、ソース14の長さ(ドレイン13の長さ)γ:5〜50mm、ソース14の幅(ドレイン13の幅)δ:5〜100mmの範囲とすることが好適である。
【0025】
次に、本実施形態のpHセンサの動作について説明する。
【0026】
図1に示すように、pH測定時には、ガラス電極2のガラス膜21の外表面に被測定液3が接触する。また、参照極1のドレイン13およびソース14に挟まれたゲート10の領域において、ダイヤモンド薄膜12の表面に被測定液3が接触する。一方、保護膜15の存在のため、ドレイン13およびソース14に直接、被測定液3が接触することはない。
【0027】
内部電極23は内部液22を介してガラス膜21の内壁に電気的に接続されるので、出力端子23Aにはガラス膜21の内壁に応じた電位が出力される。
【0028】
一方、ゲート10の電位は、被測定液3に接触する擬似参照極(不図示)により制御される。擬似参照極に電位を印加することにより、被測定液3を介してドレイン13およびソース14に挟まれた領域に電位が与えられる。すなわちシリコンウェハ11上に形成されたISFETのゲート10の電位を制御できる。ISFETのゲート10の電位およびゲート10の電流は、例えば、ソース14に正の電位(対ドレイン電圧)を与えた状態で、ソースフォロア回路のような電気回路を用いて読み取ることができる。
【0029】
したがって、出力端子23Aの出力電位、すなわちガラス電極2の出力電位から、被測定液のpHを算出することができる。
【0030】
さらに、上述の実施例とは別に、擬似参照極を設けない場合には、擬似参照極を用いてゲート10の電位を制御する代わりに、ガラス電極2に電位を印加することにより被測定液3を介して参照極1のゲート20の電位を制御することができる。
【0031】
次に、ダイヤモンド薄膜12の成膜プロセスについて説明する。
【0032】
図3は、
図1の実施例のダイヤモンド薄膜12の成膜プロセスを示すフローチャートである。
【0033】
図3のステップS1では、シリコンウェハ11の一方の表面を研磨する。シリコンウェハ11とダイヤモンド層との密着性を向上させるために、算術平均粗さRa:0.1〜15μm、最大高さRz:1〜100μmとするのが望ましい。
【0034】
次に、ステップS2では、ダイヤモンド粉末の核付けを行う。
【0035】
この工程では、均一なダイヤモンド層を成長させるために、研磨後のシリコンウェハ11の一方の表面にダイヤモンドの核付け処理を行う。核付け方法としては、ダイヤモンド微粒子が入った溶液を超音波法、浸漬法、その他の方法でシリコンウェハ11の表面に塗布し、溶媒乾燥させる方法等を用いることができる。
【0036】
次に、ステップS3では、ダイヤモンドの成膜処理を行う。
【0037】
この工程では、熱フィラメントCVD法によりダイヤモンドを成膜する。炭素源(例えば、メタン、アルコール、アセトンなどの低分子有機化合物)を水素ガスなどとともにフィラメントに供給する。炭素ラジカルなどが発生する温度域(例えば、1800〜2800℃)までフィラメントを加熱して、この雰囲気内にダイヤモンドが析出する温度領域(例えば、750〜950℃)になるようにシリコンウェハ11を配置する。混合ガスの供給速度は反応容器のサイズに依るが、圧力は15〜760Torrであることが好ましい。シリコンウェハ上には通常0.001〜2μmの粒径のダイヤモンド微粒子層が析出する。このダイヤモンド微粒子層の厚さは蒸着時間により調節することができるが、経済性の観点から0.5〜20μmとするのが好ましい。
【0038】
次に、ステップS4では、アズ・グローンダイヤモンドの水素終端化処理を行う。
【0039】
この工程では、ダイヤモンド成膜後のアズ・グローンダイヤモンドの水素以外の終端(例えば、炭素終端や酸素終端など)を水素終端に置換することで高密度水素終端とする。高密度水素終端処理の方法としては、弗化水素酸水溶液による処理、水素プラズマ処理、水素雰囲気中の加熱処理、水素ラジカル処理、陰極還元法のいずれかを選択することができる。2種類以上の方法を組み合わせて、水素終端化処理の効率を高めてもよい。
【0040】
水素プラズマ処理としては、例えば、1kw、H2−flow 400sccm、プラズマ照射時間5時間の処理条件でダイヤモンド終端の水素密度を高密度化できる。また、陰極還元法としては、例えばアズ・グローン状態の導電性ダイヤモンド電極に約−1.8Vの電圧を印加して0.1M硫酸水溶液(H2SO4)中に30分間以上浸漬する方法を使用できる。
【0041】
なお、ステップS1の工程およびステップS2の工程、ステップS4の工程についてはそれぞれ省略してもよい。
【0042】
以上の工程を経て作成されたダイヤモンド表面の水素終端の定性定量に関しては、例えばX線光電子分光法(XPS)、二次イオン質量分析計(SIMS)、FT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)など、従来から知られている解析方法により検査することができる。こうして、ダイヤモンド薄膜12が形成される。
【0043】
次に、ダイヤモンド薄膜12が形成されたシリコンウェハ11にダイヤモンドISFETを製造するプロセスの一例を示す。
【0044】
まず、ダイヤモンド薄膜12の表面を部分的に酸素終端化する。この工程では、ダイヤモンド薄膜12の表面にレジストをスピンコートし、露光、現像によりレジストをパターニングする。その後、酸素RIEによりダイヤモンド薄膜12の露出領域のみを選択的に酸素終端化し、溶媒と超音波照射によりレジストを除去する。なお、この工程において、ダイヤモンド薄膜12と被測定液とが接触するドレイン13およびソース14に挟まれたゲート10の領域およびドレイン13・ソース14の下部領域については、酸素終端化することはない。
【0045】
次に、ダイヤモンド薄膜12の表面にレジストをスピンコートし、露光、現像によりレジストをパターニングする。その後、Au/Tiスパッタリングしてリフトオフすることにより、
図2に示すパターンのAu/Ti薄膜がダイヤモンド薄膜12上に形成される。これにより、ドレイン13およびソース14が形成される。
【0046】
次に、ダイヤモンド薄膜12およびAu/Ti薄膜が形成された基板上に保護膜15となるレジストをスピンコートし、露光、現像によりレジストをパターニングする。レジストの除去領域では、ダイヤモンド薄膜12が露出した状態となる。ドレイン13およびソース14の間のゲート10がこの領域に相当し、この領域では被測定液がダイヤモンド薄膜12に直接接触する。
【0047】
上記実施形態では、基板としてシリコンウェハを用いる例を示したが、基板の材質は任意である。
【0048】
また、基板上へダイヤモンド皮膜を坦持させる方法は上記の方法に限定されず、任意のものを使用できる。代表的な成膜法としては気相合成法が使用でき、気相合成法としては、CVD(化学蒸着)法、物理蒸着(PVD)法、プラズマジェット法などがある。また、CVD法としては、熱フィラメントCVD法またはマイクロ波プラズマCVD法などがある。
【0049】
また、いずれのダイヤモンド成膜法を用いた場合であっても、合成されたダイヤモンド層は多結晶であり、ダイヤモンド層中にアモルファスカーボンやグラファイト成分が残存する場合がある。ダイヤモンド層の安定性の観点からアモルファスカーボンやグラファイト成分は少ないほうが好ましく、ラマン分光分析において、ダイヤモンドに帰属する1332cm−1付近(1321〜1352cm−1の範囲)に存在するピーク強度I(D)と、グラファイトのGバンドに帰属する1580cm−1付近(1560〜1600cm−1の範囲)のピーク強度I(G)の比I(D)/I(G)が1以上であり、ダイヤモンドの含有量がグラファイトの含有量より多くなることが好ましい。
【0050】
なお、基板上にダイヤモンド薄膜を形成する代わりに、Si、炭素などの基板を用いず、自立性のダイヤモンドバルク体を使用してもよい。
【0051】
上記のダイヤモンドISFETのゲート10の部分には、水素終端処理をしたダイヤモンド薄膜12を配置しているが、ゲート10の部分が水素イオン鈍感応終端を有するダイヤモンド表面とされていればよく、水素終端処理を施す場合に限定されない。
【0052】
本発明において、ダイヤモンドISFETのゲート部分のダイヤモンド表面に要求される条件は、水素イオン濃度が1.0×10−1mol/L〜1.0×10−14mol/Lの範囲において電位が安定し、もしくはイオン感応性が実用上問題にならない程度に電位の一定性が保たれるように、終端元素が制御されていることである。これにより、参照極は内部液を含まない固体の構造体となり、従来のガラス電極のような内部液に起因する問題を回避できる。
【0053】
水素イオン濃度が1.0×10−1mol/L〜1.0×10−14mol/Lの範囲において電位が安定し、もしくはイオン感応性が実用上問題にならないようなダイヤモンド表面として、水素プラズマ処理によりアズ・グローンダイヤモンドの水素密度を高めたダイヤモンド、水素終端ダイヤモンドを部分的に酸素終端化したダイヤモンド、水素終端ダイヤモンドを部分的に酸素終端化したダイヤモンド、水素終端ダイヤモンドを部分的にフッ素終端化したダイヤモンドなどが利用できる。
【0054】
図4は、水素イオン感応性と酸素終端置換度との関係を示す特性図であり、縦軸に水素イオン感応性を、横軸に酸素終端置換度をそれぞれ示している。ここでいう酸素終端置換度は、以下の式で表される。
【0056】
ただし、A:「酸素終端のダイヤモンド表面の炭素数」、B:「酸素終端以外のダイヤモンド表面の炭素数」
である。
【0057】
酸素終端置換度0%とは、酸素終端が存在しないダイヤモンド表面を意味し、酸素終端置換度100%とは、酸素終端しか存在しないダイヤモンド表面を意味する。例えば、水素終端化処理をしたアズ・グローンダイヤモンドは酸素終端置換度が0%に近い値となる。
【0058】
図4に示すように、水素イオン感応性は、酸素終端置換度が0%から増加してゆくに従い増大するが、やがて減少に転じ、酸素終端置換度が一定値を越えると、ほぼゼロとなる。本発明におけるゲート部分では、例えば、
図4においてイオン鈍感応性が得られる、a%以下の範囲、またはb%以上の範囲の酸素終端置換度が選択される。
【0059】
また、水素終端化したアズ・グローンダイヤモンドの水素終端の一部を酸素終端またはフッ素終端に置き換えた水素イオン鈍感応終端をゲート部分に使用してもよい。
【0060】
以上のように、本発明によれば、被測定液である液体電解質をゲートとした終端制御ダイヤモンドのISFETを参照極として使用することで、高温高圧および耐酸耐アルカリ性に優れた内部液不要な参照極を有するpHセンサを獲得できる。
【0061】
これにより、従来の内部液含有型参照極の課題である内部液漏洩や経時劣化の問題を解消できるとともに、例えば化学合成プラントの半導体製造プロセスの強酸、強アルカリ条件下や、タンパク質などの生体関連物質を扱うバイオプロセスでの正確な測定を可能とするpHセンサを提供することができ、生産プロセスのpH値可視化に寄与する。
【0062】
本発明におけるダイヤモンドISFETに用いるダイヤモンドの種類としては、例示したダイヤモンド多結晶体以外に、単結晶のものを使用することもできる。また、導電性ダイヤモンド(ドープドダイヤモンド;多結晶、単結晶)のほか、ダイヤモンドライクカーボン、導電性ダイヤモンドライクカーボン(ドープドダイヤモンドライクカーボン)、ECRスパッタカーボン、RFスパッタカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノチューブ等の単体およびそれらを主成分とする導電性炭素材料を使用することができる。ダイヤモンド、ECRスパッタカーボン、ダイヤモンドライクカーボンのように主にsp2に対するsp3比率(sp3/sp2 ratio)が高い構造体であればより好適であり、sp3組成比率が最も高いダイヤモンドが本発明を実施する場合に最も好適である。
【0063】
導電性ダイヤモンド皮膜(ドープドダイヤモンド)を坦持させる場合、いずれの方法でも、ダイヤモンド原料として水素ガスおよび炭素源の混合ガスが用いられるが、ダイヤモンドに導電性を付与するために、原子価の異なる元素(ドーパント)を微量添加してもよい。ドーパントとしては、ホウ素、リン、窒素が好ましく、好ましい含有率は1〜100000ppm、さらに好ましくは100〜10000ppmである。
【0064】
上記実施形態では、作用極としてガラス電極を用いた例を示したが、作用極の種類は限定されない。
【0065】
図5は本発明の第2実施例のpHセンサの構成を示す断面図であり、作用極としてp型シリコン半導体(ISFET)を用いたpHセンサの構成を示す断面図である。
図5において、
図1と同一要素には同一符号を付している。
【0066】
図5に示すように、p型シリコン半導体(ISFET)を用いた作用極4は、基板41上に形成されたドレイン43と、基板41上のドレイン43と対向する位置に形成されたソース44と、ドレイン43およびソース44を被覆する保護膜45と、ドレイン43およびソース44間のゲート部分において基板41上に形成された薄いゲート絶縁膜42と、を備える。このゲート絶縁膜42は、イオン感応性である。ゲート絶縁膜42としては、例えば、五酸化タンタル(Ta2O5)が使用出来る。
【0067】
pH測定時には、作用極4のゲート絶縁膜42および参照極1のダイヤモンド薄膜12のゲート部分に被測定液3が接触する。
【0068】
被測定液3に電気的に接触する擬似参照極(不図示)を介して被測定液3に電位を与える。
【0069】
作用極4のゲート10の電位およびゲート10の電流は、例えば、ソース44に正の電位(対ドレイン電圧)を与えた状態で、ソースフォロア回路のような電気回路を用いて読み取ることができる。また、ゲート10の電位は、例えば、ソース14に正の電位(対ドレイン電圧)を与えた状態で、ソースフォロア回路のような電気回路を用いて読み取ることができる。
【0070】
被測定液3のpHは、作用極4の電位と、参照極1の電位との差分に基づいて算出される。
【0071】
次に、
図6および
図7を参照して、ダイヤモンドISFETの温度補償を行う例を示す。
【0072】
図6は、本発明の第3実施例の参照極の構成を示す断面図であり、サーミスタを設けた参照極の構成を示す断面図である。
図7は、
図6の実施例のISFET部分の平面図であり、
図6のVII−VII線方向から見た平面図である。
図6および
図7において、
図1および
図2と同一要素には同一符号を付している。
【0073】
図6および
図7に示すように、参照極1Aのシリコンウェハ11上に、温度センサとしてのサーミスタ5が形成され、サーミスタ5の抵抗値変化に基づいてISFETの温度特性が補償される。この場合には、被測定液の温度によらず、常に正確なpHを測定することができる。作用極の出力値についても、サーミスタ5の抵抗値変化に基づいて、同様に温度補償することができる。
【0074】
図6〜
図7に示す参照極は、上記のガラス電極あるいはp型シリコン半導体を用いたISFETのほか、任意の作用極と組み合わせて使用することができる。
【0075】
以上説明したように、本発明のpHセンサによれば、参照極がpチャネル電界効果トランジスタにより構成されているので、参照極における内部液の漏洩や経時劣化等の問題を解消できる。
【0076】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、参照極と、作用極とを備え、前記参照極および前記作用極の出力に基づいて被測定液のpHを測定するpHセンサ等に対し、広く適用することができる。