(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記された吸気制御弁では、
図9(a)に示すように、シール材67はボディ62外周のシール溝62Dに嵌着される概して矩形状断面の嵌着部68と、嵌着部68からシール対象内面66fに向かって垂直に突出した先端シール部69とを有し、先端シール部69は、ボディ62による分割面に関して対称な概して半円状の断面を有する構成とされている。そこで、ボディ62をシール対象内面66fに装着すると、先端シール部69は、
図9(b)に示すように、同分割面に関する対称性を維持したまま、同シール対象内面66fによって嵌着部68側に押し潰された状態となる。尚、この構成では、サージタンクの上下室のいずれか一方からの高い空気圧によって先端シール部69が横倒し状に変形を受けて空気が漏れることを抑制するためには、先端シール部69に或る程度の剛性を確保する必要がある。したがって、先端シール部69を構成する三角形状断面の頂点の角度を余り鋭角とせず、比較的剛性の高い材料でシール材を構成する等の配慮が求められる。
【0006】
その結果、ボディ62をシール対象内66fに装着する時には、断面が半円状の先端シール部69を嵌着部68側に圧縮するように変形するための大きな荷重が必要となり、その結果としてシール対象内面66fと先端シール部69との間の接触面積も増すので、必然的に、両部材の間で作用する面圧や摩擦抵抗が高くなる傾向が生じ、シール対象内面66fに対するボディ62の装着に困難さが生じる傾向があった。
【0007】
また、同様の理由から、ボディ62をシール対象内面66fに装着する時には、両部材間で作用する高い面圧や摩擦抵抗によって、シール材67の嵌着部68がボディ62外周のシール溝62Dから脱落し易くなる、或いは、局所的にボディ62の装着方向に引き伸ばされるため、シール性が悪化する虞があった。さらに、先端シール部69によってボディ62に発生する反力によってボディ62が変形し、そのためボディ62とシール材67の嵌着部68との間から空気漏れが生じる虞もあった。
【0008】
尚、特許文献1には、シール材67の嵌着部68に生じる反力を緩和する目的で、嵌着部68の下端にトンネル状の溝部70を設けて断面がアーチ状のシール材67としてもよいとの考えが記されているが、シール材67を構成する材料の持つ高い剛性のために、シール材67全体に十分な変形容易性を与えることは出来ない。そのため、低荷重で大きな圧縮を得ることが出来ず、挿入荷重過大という問題の効果的な解決にはなり難かった。
【0009】
尚、この種の吸気制御弁に関連する他の先行技術文献情報として上に示す特許文献2では、先端シール部としてボディによる分割面に沿って平行に延びた2つの突状が設けられている。しかし、特許文献2でも、個々の突状は特許文献1の例と同様にシール対象内面に向かって垂直に突出した構成を採っているので、上述した、シール対象内面に対するボディの装着が容易でないという問題、及び、シールの嵌着部の脱落や引き伸ばしに基づくシール性の悪化や、ボディの変形に基づく空気漏れの虞という問題点は同様であった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術による吸気制御弁が与える課題に鑑み、シール対象内面と先端シール部との間で作用する面圧を十分に低く抑えながらも、バルブ全閉時における上下室の間での空気洩れを十分に抑止できるため、シール対象内面に対するボディの装着が容易で、しかも、シールの嵌着部の脱落や引き伸ばしに基づくシール性の悪化や、ボディの変形に基づく空気漏れが生じ難い吸気制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による吸気制御弁の第1の特徴構成は、
多気筒内燃機関のサージタンクの内部を2分割するように延出されたボディと、
前記ボディに形成された流体通路を開閉操作すべく回動操作される弁体と、
前記サージタンクのシール対象内面と前記ボディの外周の間をシールするシール材とを備え、
前記シール材のシール部が、前記ボディによる分割面に対して互いに相反する方向に延出した状態で前記シール対象内面と当接する2つの当接部で構成し
、
前記シール材が、前記ボディに支持された被支持部と、前記被支持部から前記シール対象内面に向かって延出した2つの中間部とを備え、前記当接部が前記各中間部から延出し、
前記中間部が、前記シール対象内面に対する吸気制御弁の装着に際して前記シール対象内面との当接によって先ず弾性変形する変形容易部を構成している点にある。
【0012】
上記の特徴構成による吸気制御弁では、外周シール材に何らかの外力を受ける以前の初期状態から、当接部どうしは互いに相反する左右方向に延出しているので、吸気制御弁をサージタンクの内部に挿入−装着する際には、当接部が容易にボディ側に近付く形態の弾性曲げ変形を受けるため、吸気制御弁の装着がスムースに行える。また、装着時や装着後にボディが外周シール材から受ける反力も小さくなるので、この反力によるボディの変形が抑制され、その結果、ボディの変形に基づく、ボディと切り欠きの間やボディと弁体の間のシール性への悪影響も回避される。吸気制御弁を装着後は、外周シール材の当接部は、シール対象内面に対して弱い復元力で押付けられているだけであるが、弁体の全閉時には、高圧になったサージ室に面する側の当接部が空気圧によってシール対象内面に強く押付けられることで、シール性が自動的に高まるため、高い気密性を保持することができる。
尚、本明細書中では、吸気制御弁のサージタンクの内部への装着後、使用開始中にサージ室の圧力の高まりに応じてシール対象内面と接触可能となる部位を当接部と呼ぶ。吸気制御弁のサージタンクの内部への装着段階では、基本的に、当接部の最先端付近など一部のみがシール対象内面と接触することとなる。
【0013】
【0014】
また、本構成であれば、吸気制御弁の装着時に、当接部に加えて中間部もシール対象内面との当接によってボディ側に弾性変形できるので、挿入荷重が更に減少し、吸気制御弁の装着がよりスムースに行える。また、本構成であれば、被支持部から延出した単一の中間部から2つの当接部が延出した構成に比して、吸気制御弁の装着後に各サージ室から掛かる脈動差圧で発生する中間部の付け根の応力振幅が片振幅のみとなり、シール材の耐疲労特性が向上する。
【0015】
【0016】
また、本構成であれば、吸気制御弁を装着する際には、被支持部と当接部とを接続する中間部が、当接部とシール対象内面との接当によって先行して弾性変形し、当接部などの部位は弾性変形し難いため、シール対象内面と接触する部位は、当接部の最先端付近に制限され易くなる。その結果、シール対象内面との当接面積が小さく抑えられ、挿入荷重が小さくなって生産性が向上し、過大挿入荷重に対応した生産設備投資も不必要となる。また、挿入荷重の低下により、サージタンクへの装着時における外周シール材の引き摺り等による脱落といった品質不具合も回避される。
【0017】
本発明の他の特徴構成は、
多気筒内燃機関のサージタンクの内部を2分割するように延出されたボディと、
前記ボディに形成された流体通路を開閉操作すべく回動操作される弁体と、
前記サージタンクのシール対象内面と前記ボディの外周の間をシールするシール材とを備え、
前記シール材のシール部が、前記ボディによる分割面に対して互いに相反する方向に延出した状態で前記シール対象内面と当接する2つの当接部で構成し、
前記シール材が、前記ボディに支持された被支持部と、前記被支持部から前記シール対象内面に向かって延出した2つの中間部とを備え、前記当接部が前記各中間部から延出し、
前記中間部と前記当接部の先端とが、前記シール対象内面に対する吸気制御弁の装着に際して前記シール対象内面との当接によって弾性変形し易い変形容易部となっている点にある。
【0018】
本構成であれば、吸気制御弁を装着する際には、被支持部と当接部とを接続する中間部と当接部の先端とが、シール対象内面との接当によって弾性変形し易く、当接部の基端側部位などは弾性変形し難いため、装着段階では当接部の最先端付近のみがシール対象内面と接触することとなる。その結果、シール対象内面との当接面積が小さく抑えられ、挿入荷重が小さくなって生産性が向上し、過大挿入荷重に対応した生産設備投資も不必要となる。また、挿入荷重の低下により、サージタンクへの装着時における外周シール材の引き摺り等による脱落といった品質不具合も回避される。さらに、中間部だけでなく当接部の先端も弾性変形し易いので、サージ室が低圧時におけるシール性も確保され易い。
【0019】
本発明の他の特徴構成は、前記2つの当接部が、前記サージタンクに装着前の状態において、前記シール対象内面に向かって次第に外側に広がるように延出している点にある。
【0020】
本構成であれば、吸気制御弁を装着する際に、当接部が所定の向きに曲げ変形するように手動で補助的に調整しながら装着する必要がない。また、本構成であれば、吸気制御弁を装着後は、2つの当接部が、シール対象内面に近付くに連れて次第に離間する形態でシール対象内面と当接するので、シール対象内面に近付くに連れて次第に近接するようにシール対象内面と当接する構成に比して、高圧になったサージ室に位置する側の当接部が空気圧によって容易にシール対象内面に強く押付けられることで、高い気密性を保持することができる。
【0021】
本発明の他の特徴構成は、前記ボディの少なくとも一部に前記分割面に沿って湾曲した湾曲部が備えられ、
前記シール材の該当部位は前記湾曲部に沿った曲げ変形を伴って取り付けられ、
前記シール材の前記該当部位では、前記曲げ変形前の状態において、前記2つの当接部の各先端どうしの間隔が前記湾曲部の曲率半径の小ささに応じて変更されている点にある。
【0022】
ボディの湾曲部の曲率半径が小さい箇所に取り付けるシール材の部位では、取り付けのための曲げ変形によって、2つの当接部がボディ側に倒れ込む現象が生じるため、サージタンクへの装着後に、シール対象内面と適切な当接状態が得られない虞がある。しかし、本構成であれば、シール材の該当部位では、曲げ変形前の状態において、2つの当接部の各先端どうしが湾曲部の曲率半径の小ささに応じて互いにより近接して又はより離間して配置されているため、取り付けのために曲げ変形させると、各当接部がボディ側に適宜倒れ込み、2つの当接部の各先端どうしが湾曲部以外の一般部位と同程度の間隔で配置され、シール対象内面との適切な当接状態が得られる。
【0023】
本発明の他の特徴構成は、前記ボディの少なくとも一部に前記分割面に沿って湾曲した湾曲部が備えられ、
前記シール材の該当部位は前記湾曲部に沿った曲げ変形を伴って取り付けられ、
前記シール材の前記該当部位では、前記曲げ変形前の状態において、前記2つの当接部の延出量が前記湾曲部の曲率半径の小ささに応じて大とされている点にある。
【0024】
ボディの湾曲部の曲率半径が小さい箇所に取り付けるシール材の部位では、取り付けのための曲げ変形によって、2つの当接部がボディ側に倒れ込む現象が生じるため、サージタンクへの装着後に、シール対象内面と適切な当接状態が得られない虞がある。しかし、本構成であれば、シール材の該当部位では、曲げ変形前の状態において、2つの当接部の延出量が湾曲部の曲率半径の小ささに応じて大とされているため、取り付けのために曲げ変形させると、各当接部がボディ側に適宜倒れ込むことで、2つの当接部の延出量が湾曲部以外の一般部位の延出量と同程度となり、シール対象内面との適切な当接状態が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
(吸気系の構成)
図1は、或るV型6気筒エンジンの吸気系1と6つのシリンダC1〜C6との関係を示す。吸気系1は、エアーフィルタ(不図示)を介して吸気30が供給される吸気路3と、吸気路3とシリンダC1〜C6との間に介装されたサージタンク5とを備える。吸気路3にはスロットル弁2が設けられている。サージタンク5は隔壁6によって上下2つのサージ室7a,7bに分割され、図で上方に示す第1サージ室7aには奇数番シリンダC1,C3,C5が、下方の第2サージ室7bには偶数番シリンダC2,C4,C6が吸気管4を介して延設されている。
【0027】
吸気系1では、特定のエンジン回転数領域で吸気圧力の共振が発生する。この共振は、サージタンク5やその上流にある吸気路3等の容積や長さ等により決定される周波数と、シリンダの吸気周波数とが合致した際に発生する。共振が発生すると、吸気系1の圧力が高くなり、過給効果を得ることが可能となる。この過給効果によりシリンダの吸入空気量が増加しエンジン出力を向上させることができる。
【0028】
上述の共振を発生させる目的で、吸気系1には、上下のサージ室7a,7bどうしを連通させる開状態と遮断する閉状態の間で切り換えるための吸気制御弁10が設けられている。吸気制御弁10が全開状態にあるとき、サージ室7a,7bどうしが連通されて、サージタンク5の容量が拡大し、全閉状態にあるときサージタンク5の容量が縮小される。シリンダに対するサージタンク5の容量が変化することで、共振周波数も変化する。このため、エンジンの運転状態に合わせて適正にバルブを開閉することで、吸気系の共振数端数を変更し、過給効果を得て、幅広いエンジン回転領域でエンジン出力を向上することが可能となる。
【0029】
上方の第1サージ室7aと下方の第2サージ室7bとは、隔壁6の一部に形成された切り欠き6pによって連通しており、この切り欠き6pに、吸気効率向上の為に大型化された吸気制御弁10が装着されている。吸気制御弁10を開閉操作するためのアクチュエータ40は車両などに設置されたECUから送られる電気信号によって駆動される電気制御式のものを適用できる。
【0030】
吸気制御弁10が全閉位置の状態でエンジンが運転されている場合は、シリンダC1〜C6シリンダの各々によって順次吸気が行われるので、隔壁6を挟んだ2つのサージ室7a,7bに交互に圧力が発生する。仮に吸気制御弁10の閉位置において切り欠き6pと吸気制御弁10との間などで流体洩れが生じると、吸気系1に期待通りの共振周波数が得られず、過給効果が損なわれる。
【0031】
(吸気制御弁の構成)
図2〜
図4に示すように、吸気制御弁10は、隔壁6の切り欠き6pに装着されるボディ12と、シャフト15に支持された弁体14とを有する。シャフト15は両端でボディ12の一部に枢支されている。ボディ12は隔壁6の切り欠き6pに沿って全周に延びたフレーム状を呈し、そのフレームの内側に流体通路10Aが形成されている。
図3に示すように、ボディ12の内周面には流体通路10A内に延出するシール受け部13が形成されている。シール受け部13はボディ12のほぼ全周に亘って延設されている。
図3では弁体14の閉位置を実線で図示しており、開位置を二点鎖線で示している。
【0032】
図3に示すように、弁体14は、シャフト15に取り付けられた樹脂製板状のバルブ本体16と、バルブ本体16の周縁に配置されたゴム製などの弾性シール材17とを備える。弾性シール材17は、バルブ本体16の外周に外嵌される取付け部18と、取付け部18の周縁の一部から弁体14の中心部分寄りに傾斜して突設されたリップ部19とを備えている。リップ部19は取付け部18の外周面の一部から弁体14の中心部分寄りに傾斜して突設されている。アクチュエータ40による弁体14の回動操作によって流体通路10Aが開閉操作され、弁体14の閉位置では、これらのリップ部19が各シール受け部13に押し付けられ、上下のサージ室7a,7bが遮断される。
【0033】
図2に示すように、吸気制御弁10は、サージタンク5の吸気路3とは反対側に形成された開口部5Aから挿入され、吸気制御弁10のフランジ10Fに形成された貫通孔に挿通したボルト(不図示)などでサージタンク5に固定されている。こうしてサージタンク5に吸気制御弁10が装着されると、サージタンク5の内部が吸気制御弁10のボディ12によって上下のサージ室7a,7bに2分割される。
図4における紙面はボディ12による分割面と一致する。
【0034】
(外周シール材の構成)
図2−
図4に示すように、吸気制御弁10のボディ12の外周にはゴム製で帯状の外周シール材20(ガスケット)が取り付けられている。ボディ12をサージタンク5の切り欠き6pへ装着することにより、ボディ12とサージタンク5の切り欠き6pの端面6f(シール対象内面の一例)との間隙に外周シール材20が充填された状態となり、高い気密性を保持することができる。
図4に示すように、ボディ12は概してU字状を呈するため、外周シール材20は、ボディ12の先端に取り付けられる中央部20Aと、中央部20Aの両端からそれぞれ延設された左右一対の辺状部20Bとを有する。左右の辺状部20Bの領域を矢印Eによって示している。
【0035】
図5(a)は、
図4において、左右の辺状部20Bを、中央部20Aに対して直線状に揃うように分割面(紙面)に沿って伸ばした状態を示す側面図である。他方、
図5(b)は、左右の辺状部20Bを直線状に伸ばした外周シール材20を、
図4の右側から紙面に沿って見た平面図である。中央部20Aは、側面視及び平面視において、辺状部20Bに比して概して幅広に形成されている。ボディ12に取り付ける前の外周シール材20は、
図5(a)、
図5(b)に示すように概して直線状を呈し、ボディ12への取り付け時には、
図4に示すように、ボディ12の輪郭形状に合わせて湾曲状に弾性変形された状態で取り付けられる。
【0036】
ボディ12をサージタンク5の切り欠き6pへ装着した状態では、
図7に一例を示すように、中央部20Aは、その外周側に形成された溝状間隙24などが、サージタンク5の切り欠き6pの端面6fから開口部5A向きに突設された係合突起6Qと嵌合することによって係止される。他方、左右の辺状部20Bに対応する部位には係合突起6Qなどが設けられておらず、
図6(a)及び
図6(b)に一例を示すように、基本的にY字状に開いた一対の当接部23fが切り欠き6pの端面6fに押付けられて、更に広げられる形態でシール状態を実現する。
【0037】
(第1パターン部と第2パターン部の構成)
図5(a)に示すように、辺状部20Bの大半は、
図5(c)のような断面形状を備えた第1パターン部S1と、
図5(d)のような断面形状を備えた第2パターン部S2とが、交互に繰り返す形態で構成されている。
図5(c)に示すように、第1パターン部S1は、ボディ12のシール溝12Dに係入される概して矩形の嵌合部21d(被支持部の一例)と、嵌合部21dの左右両端から端面6f(シール対象内面)に向かって平行に延設された一対の中間部22dと、中間部22dの先端からボディ12による分割面に対して互いに相反する方向に延出した一対の当接部23dとを有する。より具体的には、一対の当接部23dは、分割面に対して左右外向き斜めに、且つ、左右対称状に延出している。
【0038】
図5(d)に示すように、第2パターン部S2もまた、ボディ12のシール溝12Dに係入される概して矩形の嵌合部21f(被支持部の一例)と、嵌合部21fの左右両端から端面6fに向かって平行に延設された一対の中間部22fと、各中間部22fの先端からボディ12による分割面に対して互いに相反する方向に延出した一対の当接部23fとを有する。より具体的には、一対の当接部23fは、分割面に対して左右外向き斜めに、且つ、左右対称状に延出している。
【0039】
第1パターン部S1と第2パターン部S2とは基本的に同様の断面形状を備えている。両者の相違点は、第2パターン部S2の嵌合部21fが、余分な左右の肉盛り部21Aによって、第1パターン部S1の嵌合部21dよりも幅広に形成されている点にある。ボディ12のシール溝12Dの幅は、辺状部20Bに対応する箇所の全長に亙って一定とされている。外周シール材20の取り付け時、シール溝12Dよりも十分に幅広に形成された、第2パターン部S2の嵌合部21fがシール溝12Dに対して圧入されることで、左右の辺状部20Bがボディ12に係止される。他方、第1パターン部S1の嵌合部21dはシール溝12Dよりも僅かに幅狭く形成されているため、圧入を介さずにシール溝12Dに係入される。外周シール材20は第1パターン部S1の嵌合部21dも含めて各嵌合部がシール溝12Dの底部に押付けられた形態で取り付けられるので嵌合部の下面を介しての空気漏れは生じない。
【0040】
外周シール材20に何らかの外力を受ける前から、当接部23d,23fどうしはボディ12による分割面に対して互いに相反する方向に、具体的には左右斜めに外開き状に延出しており、しかも、外周シール材20の中間部22d,22fと当接部23d,23fは、いずれも嵌合部21d,21f等に比して十分に幅狭く形成されている。したがって、サージタンク5への装着時には、中間部22d,22fまたは当接部23d,23fが、端面6fとの接当に基づいて、容易に一定の方向でボディ12側に倒れ込む形態の弾性変形をするため、吸気制御弁10の挿入−装着がスムースに行える。また、装着時や装着後にフレーム状のボディ12が外周シール材20から受ける反力も小さくなるので、この反力によるボディ12の変形を抑制することができる。その結果、ボディ12の変形に基づく、ボディ12と切り欠き6pの間やボディ12と弁体14の間のシール性への悪影響も回避される。
【0041】
各中間部22d,22fどうしの間には十分な幅の溝状間隙24が形成されている結果、中間部22d,22f(第1の変形容易部の一例)は、当接部23d,23fの基端側よりも幅狭く形成され、低剛性となっている。当接部23d,23fは先端から基端側に向けて徐々に太くなっているため高剛性であり、中間部22d,22fに比べると変形し難くなっている。そのため、吸気制御弁10の挿入−装着の際には、中間部22d,22fが端面6fとの接当によって他の部位よりも先行して弾性変形し、当接部23d,23fはその最先端部を除いて弾性変形を起こし難い。
【0042】
このような構成とすることで、吸気制御弁10の挿入−装着の際に、外周シール材20の中で端面6fと接触する部位は、各当接部23d,23fの先端付近の内側の局部に制限され、端面6fとの当接面積が小さく抑えられるために、挿入荷重が小さくなって挿入−装着が簡単になる。その結果、生産性が向上し、過大挿入荷重に対応した生産設備投資も不必要となる。また、挿入荷重の低下により、サージタンク5への吸気制御弁10の組付時における外周シール材20の引き摺り等による脱落といった品質不具合も回避される。
【0043】
装着の完了後は、外周シール材20の当接部23d,23e,23f(シール部の一例)は、隔壁6の端面6fに対して、主に中間部22d,22e,22fの比較的弱い復元力で押付けられているだけである。弁体14の全閉時には、上下のサージ室7a,7bに吸気脈動が交互に印加されるが、
図6(c)に示すように、その高圧になったサージ室7a,7bに面する側の当接部23d,23fの大半が切り欠き6pに強く押付けられることで、シール性が自動的に高まるため、高い気密性を保持することができる。尚、特に低圧時におけるシール性を確保するために、当接部23d,23fの最先端部(第2の変形容易部の一例)は、切り欠き6pとの接当によって弾性変形し易いように、比較的幅を狭く形成されている。
【0044】
各中間部22c,22d,22eどうしの間に設けられた溝状間隙24の底平面部は、溝などの無い中実状とし、ゴム量を多くすることで、高剛性となるように構成している。このように構成することで、外周シール材20をボディ12のシール溝12Dへ組付ける際に、該当する底平面部に荷重を加えて組付けることで、当接部23c,23d,23eや中間部22c,22d,22eへの傷や破れ等を回避することが可能となる。
【0045】
また、溝状間隙24の底平面部の左右両隅は、溝状間隙24の空間内に中心を持つ円弧からなるR状の断面形状を備えるため、中間部22d,22e,22fの変形時に生じる応力を分散することができる。その結果、当接部23d,23e,23f及び中間部22d,22e,22fの耐疲労特性が向上する。また、溝状間隙24を設けることによりゴム使用量を削減しコスト低減にも貢献でき、且つ、外周シール材20全体の軽量化も図ることができる。
【0046】
尚、
図4に示すように、辺状部20Bのうちで中央部20Aに近接する部位は、対応するボディ12の外周の湾曲部の曲率半径が小さくなっている。そのため、外周シール材20をボディ12の外周に取り付ける際、辺状部20Bの該当箇所を同湾曲部の曲率半径に合わせて曲げ変形させることによって、2つの当接部23dがボディ12側に倒れ込む現象が生じ、サージタンク5への装着後に切り欠き6pと適切な当接状態が得られない虞がある。
【0047】
そこで、辺状部20Bの該当部位では、曲げ変形前の状態において、2つの当接部23d,23fの各先端どうしが湾曲部の曲率半径に応じて、曲率半径が小さいほど互いに近接して配置されている。すなわち、取り付けのために辺状部20Bを曲げ変形させると、各当接部23d,23fがボディ側に適宜倒れ込み、2つの当接部23d,23fの各先端どうしの間隔が湾曲部以外の一般部位と同程度の寸法となり、端面6fとの適切な当接状態が得られる。
【0048】
2つの当接部23d,23fの各先端どうしを互いに近接して配置するための具体的な形態としては、一対の当接部23d,23fどうしがなす角度を小さめに設定する方法を採ることができるが、別の方法として、当接部23d,23fどうしがなす角度は変更せずに、互いに平行な一対の中間部22d,22fどうしの距離を近づける方法を採ってもよい。
或いは、2つの当接部23d,23fの各先端どうしを互いに近接して配置する方法の代わりに、辺状部20Bの該当部位では、曲げ変形前の状態において、2つの当接部23d,23fの延出量が、湾曲部の曲率半径に応じて他の一般部位よりも大となるように構成してもよい。
また、2つの当接部23d,23fの各先端どうしを互いに近接して配置する方法と、2つの当接部23d,23fの延出量を大とする方法とが、辺状部20Bの該当部位に同時に適用された形態としてもよい。
【0049】
(第3パターン部と第4パターン部の構成)
図5(f)に示すように、辺状部20Bの最も端部寄りの領域には、第2パターン部S2の溝状間隙24と一対の当接部23fの間の空間とを無くした断面形状の第4パターン部S4が設けられている。
また、
図5(e)に示すように、第4パターン部S4よりも中央寄りの2つの第1パターン部S1の間には、第2パターン部S2に比して更に幅広の嵌合部21eを備えた第3パターン部S3が設けられている。
【0050】
第3パターン部S3は、ボディ12の基端寄りの位置に形成されたロック溝12Eに係入される係止部となっている。ロック溝12Eは、外周シール材20に外力を加えない状態での外周シール材20の長手方向の中心(
図5(a)のh−h面と一致する)から第3パターン部S3までの距離に比して、若干フランジ10F寄りに設置されている。
【0051】
したがって、外周シール材20をボディ12の外周に取り付ける際には、先ず外周シール材20の中間部22dをボディ12の先端に係止させた上で、外周シール材20の両端をフランジ10F向きに所定値を越える力で引っ張ることで初めて第3パターン部S3の嵌合部21eをロック溝12Eに係入させることができる(以降、引き締め形態の嵌合手段と呼ぶことにする)。
【0052】
すなわち、アルコール燃料に対応する目的などで、外周シール材20を構成するゴム素材の硬度及び強度は比較的高く設定されているため、ボディ12のU字状角部では取り付けられた外周シール材20が直線状の元の形状に戻ろうとする反力が比較的大きい。しかし、引き締め形態の嵌合手段として、ロック溝12Eの位置を上述したように設定することにより、取り付け後の外周シール材20に保持された張力によって、ゴム反力による外周シール材20の浮き上がりや離脱が効果的に抑制される。
【0053】
尚、中央部20Aの離脱を防止する目的で、中央部20Aの両端とボディ12の間にも、同様の引き締め形態の嵌合手段を設けてもよい。このように、外周シール材20全体で計4箇所以上の引き締め形態の嵌合手段を設けることで、ゴム反力による外周シール材20の離脱が効果的に防止される。更に、4箇所以上の締め代嵌合を左右非対称で設置することで、誤組付け防止を図ることも可能である。
【0054】
また、ロック溝12Eの位置を上述したように設定することにより、ボディ12の先端への中間部22dの係止に続いて、第3パターン部S3をロック溝12Eに係入させた後で、第2パターン部S2の嵌合部21fを一つずつシール溝12Dに係入させていけばよいので、外周シール材20の取り付け作業も簡単になる。
【0055】
最も端部寄りの第4パターン部S4は、溝状の空間を全て無くすことで、隣接する第1パターン部S1のどうしを接続するリブを構成し、当接部23dや中間部22dの間の空間を介して、2つのサージ室7a,7bの一方から他方へ空気が流入することを抑制している。このようなリブは両端面の他にも追加的に設けてあってもよい。このようなリブは、当接部23d,23c,23eが圧力差によって横倒しされる現象を抑制することができる。その結果、圧力脈動影響下でも高い気密性を保持することができる。また、シール溝12Dへの外周シール材20の取り付けを容易にする目的で、外周シール材20の底面にトンネル状の溝を断続的に設けてもよい。これによって、ゴム使用量の削減と外周シール材20全体の軽量化をさらに進めることができる。
【0056】
第4パターン部S4が構成する前記リブから第3パターン部S3までの距離は、ボディ12側の溝長さに対して僅かに長めに設定されている。したがって、外周シール材20の両端の各端面がボディ12のフランジ10F側の端面に弾性的に押付けられる結果となり、ガスケット端部での上下室連通を防ぐことで、更なる高シール性を確保している。
【0057】
(第5パターン部と第6パターン部の構成)
前述したように、中央部20Aの長さの大半を占める第5パターン部S5の溝状間隙24は、その一対の側面部25iによって、ボディ12側から突出した係合突起6Qと嵌合する。
図5(b)に示すように、外周シール材20の長手方向に関する中心位置には、平面視で円弧状の輪郭を備えた中心突起20Tが形成されている。
図5(h)は、中心突起20Tに該当する箇所の断面を示しており、
図5(h)中に記された2本の破線で挟まれた領域が、中心突起20Tの無い第5パターン部S5の一般的な断面形状を示している。
ボディ12のシール溝12Dの対応箇所にも中心突起20Tと一致する形状の幅広部が形成されており、同幅広部に中心突起20Tを係止させることで、外周シール材20の長手方向に関するセンタリングが行われる。
【0058】
第6パターン部S6は、幅広の第5パターン部S5と幅の狭い辺状部20Bとをなだらかに接続する部位となっているが、この第6パターン部S6の溝状間隙24もまた、係合突起6Qを受け入れ、その中間部22gと当接部23gとの境界付近によって、ボディ12側から突出した係合突起6Qと嵌合する。
このように、第5パターン部S5や第6パターン部S6が係合突起6Qと嵌合することで、中央部20Aが前記分割面と垂直な方向に関するボディ12の正しい位置に位置決めされる。
【0059】
弁体14を支えるボディ12は、弁体14やボディ12に掛かる振動や脈動圧力差により、先端付近での上下振動や回転振れが大きい。しかし、前述したように、外周シール材20の中央部20Aに形成されたコ字状の溝状間隙24がサージタンク5側の係合突起6Qを嵌合状に受け入れることによって、ボディ12の振れなどが抑制される。また、サージタンク5に対する吸気制御弁10の装着時には、溝状間隙24と係合突起6Qとの嵌合によって、吸気制御弁10はサージタンク5の切り欠き6pに対してセルフセンターリングされる。さらに、外周シール材20を介すことによりボディ12と端面6f(シール対象内面)との直接接触がない為、干渉音といった不具合の未然防止にも役立てられる。
【0060】
〔別実施形態〕
〈1〉当接部23d,23e,23fが外力を受けない自然状態において中間部22d,22e,22fと同様に平行に延設されており、吸気制御弁10をサージタンク5の内部に挿入−装着する際に、当接部23d,23e,23fを手動や専用治具でボディ12側に近付くように変形させながら装着する形態で実施することも可能である。
【0061】
〈2〉嵌合部21d,21e,21fから単一の中間部22d,22e,22fが延設され、この単一の中間部22d,22e,22fの先端から2つの当接部23d,23e,23fがボディ12による分割面に対して互いに相反する方向に延出している構成としてもよい。
【0062】
〈3〉
図8(a)に例示するように、嵌合部51の上端の左右両端から、一対の中間部52と当接部53とが外周シール材20の中心線に向かって円弧状に連続的に延出している形態で実施することも可能である。ここでは、隔壁6の端面6fには辺状部20Bに沿って延びる突起6Rが形成してあり、吸気制御弁10をサージタンク5の内部に挿入−装着すると、
図8(b)に示すように、当接部53の外側面が端面6fに押付けられた状態となる。サージ室7a,7bのいずれかが高圧になると、当接部53の先端が突起6Rの側面と端面6fとのコーナー付近に押付けられる形態で気密状態が確保される。
【0063】
図5〜
図7の実施形態では、湾曲部の曲率半径が小さいボディ12の外周に取り付けられる外周シール材20の部位では、外周シール材20を曲げ変形させる前の状態において、2つの当接部23d,23fの各先端どうしを、ボディ12の湾曲部の曲率半径の小ささに応じて互いに近接して配置した構成を記した。他方、
図8(a)に示す実施形態では、逆に、外周シール材20を曲げ変形させる前の状態において、2つの当接部53の各先端どうしを曲率半径の小ささに応じて互いに離間して配置しておくことで、取り付けのために辺状部20Bを曲げ変形させると、各当接部53がボディ側に適宜倒れ込み、2つの当接部53の各先端どうしの間隔が湾曲部以外の一般部位と同程度の寸法となり、端面6fとの適切な当接状態が得られる場合もある。