特許第5725402号(P5725402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5725402-せん断装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725402
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】せん断装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/14 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   G01N11/14 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-273404(P2010-273404)
(22)【出願日】2010年12月8日
(65)【公開番号】特開2012-122831(P2012-122831A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】愿山 靖子
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 賢一
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕次
(72)【発明者】
【氏名】大野 淳平
(72)【発明者】
【氏名】塔本 晃弘
【審査官】 ▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−209337(JP,A)
【文献】 特公平01−015027(JP,B2)
【文献】 特開昭54−134498(JP,A)
【文献】 特開2003−014604(JP,A)
【文献】 特開平09−089745(JP,A)
【文献】 特開2000−329673(JP,A)
【文献】 特開平06−347392(JP,A)
【文献】 特開2001−194283(JP,A)
【文献】 実開平06−080163(JP,U)
【文献】 特開2001−272323(JP,A)
【文献】 特開2001−121532(JP,A)
【文献】 特開平02−041327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00−11/16
G01N 19/00
B29B 7/00− 7/94
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に原材料(M)を収容可能な空間を有するケース(10)と、そのケース(10)の底を上下方向に貫通する軸(3)と、その軸(3)に固定されその軸(3)とともに回転する羽根(20)と、前記軸(3)を回転させるモータ(7)と、前記ケース(10)内に原材料(M)を収容して前記軸(3)を回転させることにより前記羽根(20)で前記原材料(M)を混練する際における前記羽根(20)又は前記軸(3)に作用するトルクを検出するトルク検出手段とを備え、
前記ケース(10)は、前記空間の上部を閉じる蓋(12)を有し、前記羽根(20)は前記軸(3)に対してその軸(3)の上端に設けたネジ孔(3b)に前記蓋(12)を開けた状態で上方から下方に向かってねじ込み可能なボルト(22)を介して着脱可能で、前記羽根(20)と前記軸(3)とを分離した状態で、前記ケース(10)と前記軸(3)とは上下方向に着脱可能であることを特徴とすせん断装置。
【請求項2】
前記羽根(20)の外縁と、前記ケース(10)の内面との最小隙間(w0)は、前記原材料(M)の混練に必要な寸法に設定されていることを特徴とする請求項に記載のせん断装置。
【請求項3】
前記羽根(20)は、前記原材料(M)を混練するために使用する連続混練機のパドルであることを特徴とする請求項に記載のせん断装置。
【請求項4】
前記蓋(12)は、外部から内部に収容された原材料(M)を視認可能な透明の部材で構成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一つに記載のせん断装置。
【請求項5】
前記ケース(10)は内外を結ぶ排気口を有し、前記排気口を通じて前記ケース(10)内を減圧可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一つに記載のせん断装置。
【請求項6】
前記モータ(7)はサーボモータであり、前記トルク検出手段は、少なくとも、そのサーボモータに流れる電流値を検出する手段と、その検出した電流値に基づいてトルクの数値を算出する手段と、そのモータ(7)の単位時間当たりの回転数を検出する手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一つに記載のせん断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体、粉体、半固体などの各種原材料の特性を計測するせん断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体、粉体、半固体などの各種原材料を混練する際に、混練機が用いられる。この混練機で扱われる原材料としては、例えば、食品、薬品、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、廃棄物などが挙げられる。
【0003】
また、それらの原材料を連続的に撹拌・混練する連続混練機として、一般に、2軸混練機が使用される。2軸混練機として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0004】
2軸混練機の構成は、一般に、水平な筒状のケーシング内に、その筒軸方向に沿って混練軸が回転可能に挿通されている。また、混練軸には混練用のパドルと呼ばれる羽根が固定されている。
ケーシングの一端の投入口から原材料をケーシング内に送り込み、混練軸を駆動力によって軸周りに回転させることにより、羽根とケーシング内壁との間で原材料を混練し、混練の終了した処理物は、ケーシングの他端の排出口から排出される(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この混練において、混練軸をどのような回転速度に設定するかといった要件によって、羽根とケーシング内壁との間で原材料に作用するせん断力、せん断速度が異なり、また、それによって、投入口から排出口までに至る時間や原材料の発熱温度が異なるので、原材料の混練度合いに差異を生じることとなる。
さらに、羽根の形状や、その羽根とケーシング内壁との間の隙間の大きさ、あるいは、ケーシング内における原材料への加水条件、加熱条件など種々の要件によっても、原材料の混練度合いに差異を生じる。
【0006】
このため、混練機による混練を開始する前に、例えば、バッチ式の溶融装置を用いて、所定の温度で溶融した原材料にトルクを与え、任意のせん断速度下において、そのせん断速度に対応するトルクを、トルクレリーサを介して計測する手法を採用する場合もある。これにより、原材料に付与されたトルクと、その際に発生するせん断速度を特定し、混練機における前記回転速度等を決定することができる。
【0007】
なお、ゴムや樹脂等の各種試料の粘性を評価する指標として、ムーニー粘度がある。そのムーニー粘度を計測するための粘度測定装置として、例えば、特許文献2,3に記載のものがある。
この粘度測定装置は、試料室内に原材料を投入してその資料室内で羽根(ロータ)を回転させ、その羽根に作用するトルク(反トルク)をロードセルにより検出することで、原材料の粘性を測定するものである(例えば、特許文献2,3参照)。
【0008】
また、特許文献4,5には、羽根を回転させるのに要するモータの回転エネルギーを測定することによって、原材料を混練するのに要する消費エネルギーを把握する試験装置の技術が開示されている。
この試験装置では、ケーシング内に収容した原材料の混練時に、羽根に負荷されるトルクをトルクセンサーで検出してトルク曲線を得るとともに、この混練状態における原材料の発熱温度を温度センサーで検出して発熱温度曲線を得ることによって、混練状態にある原材料の動的な特性を評価できるようになっている(例えば、特許文献4,5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−121532号公報
【特許文献2】特開2001−272323号公報
【特許文献3】特開平8−68471号公報
【特許文献4】特開昭61−209337号公報
【特許文献5】特公平1−15027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように、混練の対象物である原材料は、加水条件や加熱条件など種々の要件に応じて、その溶融挙動(加熱温度と溶融の程度との関係)などが変化する。すなわち、それらの要件によって、相変化の挙動はその都度異なってくる。
【0011】
このため、前記のバッチ式の溶融装置による限られた条件での測定では、混練機による混練条件の設定に必要な原材料の特性(機械的性質。以下、特性と称する。)を、全て把握することができない。或るせん断速度と、そのせん断速度に対応するトルクとを測定するに留まり、多数のデータが取得できないからである。
【0012】
また、特許文献2,3の粘度測定装置を使用しても、このような混練条件の設定に必要な原材料の特性の把握は容易ではない。特許文献2,3の粘度測定装置は、単に原材料の粘度を測定するものであり、その測定時において、原材料を混練するものではないからである。
【0013】
この点、特許文献4,5の試験装置によれば、混練状態にある原材料の動的な特性を評価できるから、混練機による混練条件の設定に必要な原材料の特性を、ある程度把握することができる。
【0014】
ところで、この種の試験装置は、試験に際し、原材料の混練を必要とするため、羽根周囲をその軸周り全周に亘って連続的に原材料で満たす必要がある。
しかし、特許文献4,5の試験装置は、羽根を固定する軸が横向きであるため、軸の下方に原材料が溜まりやすい。このため、原材料が下方に溜まらないようにするため、試験には、ある一定量以上の原材料を必要とする。すなわち、少量の原材料で試験を行うことができなかった。
【0015】
さらに、その原材料の投入や取出しは、ケーシング上部に設けた投入口や下部のノズル等の開口部から行うため、原材料の全量の入れ替えが困難である。これは、投入口やノズル等の開口部は、羽根の側面、すなわち、その羽根を固定する軸の軸周り一定の方位に面しているので、その投入口やノズルの反対側の空間(ロータや軸を挟んで反対側の空間)の原材料を容易に除去できないからである。
【0016】
このように、特許文献4,5の試験装置によれば、原材料の全量の入れ替えが困難であるため、試験の施工数に限界があり、多くのデータを取得することが困難である。
【0017】
そこで、この発明は、少量の原材料であっても試験を行うことができ、また、原材料のケーシングへの入れ替えを容易とすることで、混練条件の設定に必要な原材料の特性を把握しやすいようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、この発明は、内部に原材料を収容可能な空間を有するケースと、そのケースの底を上下方向に貫通する軸と、その軸に固定されその軸とともに回転する羽根と、前記軸を回転させるモータと、前記ケース内に原材料を収容して前記軸を回転させることにより前記羽根で前記原材料を混練する際における前記羽根又は前記軸に作用するトルクを検出するトルク検出手段とを備えることを特徴とするせん断装置とした。
【0019】
この構成によれば、羽根を固定する軸を上下方向に配置したので、試験に際し、少量の原材料であっても、その充填高さを抑えれば、原材料を羽根周囲の軸周り全周に亘って連続的に満たすことができる。このため、少量の原材料であっても試験を行うことができる。
また、原材料は、軸及び羽根の上方からケーシング内へ入れ替えできるので、その作業が容易である。このため、試験の施工数を増やすことができ、多くのデータを取得することにより、混練条件の設定に必要な原材料の特性を容易に把握できるようになる。
【0020】
また、この構成において、前記羽根は前記軸に対して着脱可能で、前記羽根と前記軸とを分離した状態で、前記ケースと前記軸とは上下方向に着脱可能である構成を採用することができる。
【0021】
この構成によれば、原材料の特性の測定を終えた後、次なる原材料で測定を行う際の作業を、さらに容易とし得る。すなわち、羽根と軸、及びケースと軸との分離に、煩雑な作業を伴わない。羽根と軸とを分離した状態にして、ケースと軸とは上下方向に着脱可能だからである。また、ケースを上向きにした状態で軸に着脱できるから、従来のような、羽根を固定する軸が横向きの装置と比較して、内部の原材料がこぼれにくい。このため、さらに短時間で多数の試験を行うことが可能となる。
【0022】
なお、使用することができる原材料としては、混練機、特に、連続式混練機で混練する対象となる素材であり、液体、粉体、半固体の別を問わない。特に、ホットメルト(常温では固体又は粉体で、熱すると粘りを持つもの)の混練において、上記の構成は有利である。
【0023】
なお、このせん断装置で測定される原材料の特性に関するデータとしては、少なくとも、軸の単位時間当たりの回転数と、その回転による原材料の混練時において、トルク検出手段によって検出されるトルクが挙げられ、このトルクが、軸の回転数の変化に応じて断続的に、あるいは、軸の回転数の変化とともに連続的に検出されるようになっていることが望ましい。また、内部の原材料の温度を測定するセンサーを備え、時間経過に応じて、原材料の温度が検出できるようになっていることが望ましい。さらに、ヒーターや冷却水管を備えれば、羽根の回転数を一定とした状態で原材料の温度を変化させ、その温度の変化に伴うトルクの変化を検出することができる。これにより、或る回転数において、最適なトルクを生じさせる原材料の温度を把握することができる。
【0024】
また、この構成によれば、原材料を収容するケースと軸との着脱が容易であるから、ケースを多数用意しなくても、その都度清掃して繰り返し用いることも可能となる。
【0025】
さらに、軸に対するケースや羽根の着脱が容易であるから、形状、寸法の異なる様々な仕様のケースや羽根を用意しておけば、その羽根とケースとの組合わせによって、例えば、高価な原材料を用いる場合等においては、微少量の原材料を用いた試験にも対応できるようになる。
【0026】
これらの構成において、前記羽根の外縁と、前記ケースの内面との最小隙間は、前記原材料の混練に必要な寸法に設定されていることが望ましい。混練機において実際に行う混練環境により近づけることが有効だからである。
【0027】
また、前記羽根は、前記原材料を混練するために使用する連続混練機のパドルである構成を採用することができる。
この構成によれば、このせん断装置で原材料の特性を測定した後、その測定データに基づいて、データの変換、換算等を伴うことなく、連続式混練機で原材料の混練を行う際の混練条件を設定することができる。得られたデータは、連続式混練機に使用するパドルと同じ仕様のパドルを用いたデータだからである。
【0028】
これらの各構成において、前記ケースは、前記空間の上部を閉じる蓋を有し、その蓋は、外部から内部に収容された原材料を視認可能な透明の部材で構成してもよい。
原材料をケース外から可視化することにより、混練過程を肉眼で観察できるので、最適な混練状態でのデータを取得しやすい。
【0029】
また、これらの各構成において、前記ケースは内外を結ぶ排気口を有し、前記排気口を通じて前記ケース内を減圧可能である構成を採用することができる。
この構成によれば、ケース内の空間を真空状態や、あるいは減圧状態に設定することができる。
【0030】
また、これらの各構成において、前記モータはサーボモータであり、前記トルク検出手段は、少なくとも、そのサーボモータに流れる電流値を検出する手段と、その検出した電流値に基づいてトルクの数値を算出する手段と、そのモータの単位時間当たりの回転数を検出する手段とを備える構成を採用することができる。
【0031】
また、軸の駆動装置であるモータをサーボモータとすることにより、モータの回転数を適宜設定することで、その回転数と発生したトルク、あるいは、その際の原材料の温度等の各要素の相関関係に関わる多くのデータを取得でき、そのデータに基づいて、原材料のレオロジー特性を容易に把握することができる。
レオロジー特性の把握により、混練機における任意の混練条件に対応して、原材料の混練中、及び混練後の仕上がり(物性)の予測ができるようになる。
【発明の効果】
【0032】
この発明は、混練用の羽根を軸に対して着脱可能としその、羽根と軸とを分離した状態で、ケースと軸とを上下方向に着脱可能としたので、羽根と軸、及び、ケースと軸との分離に煩雑な作業を伴わない。また、ケースを上向きにした状態で軸に着脱できるから、従来のような、羽根を固定する軸が横向きの装置と比較して、内部の原材料がこぼれにくい。このため、短時間で多数の試験を行うことで、多くのデータを取得することができる。したがって、混練条件の設定に必要な原材料の特性を、容易に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】この発明の一実施形態の断面図
図2】(a)は図1の要部拡大図、(b)は(a)の平面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、連続混練機による原材料Mの混練を開始する前に、その原材料Mの特性を把握するために使用するせん断装置1である。
【0035】
このせん断装置1によって得られた原材料Mの特性に基づいて、連続混練機によって原材料Mの混練する際の混練条件を決定することができる。
【0036】
なお、使用する原材料Mとしては、医薬(固体分散体)や、ナノ粒子(樹脂コンパウンド)、樹脂液などを想定しているが、混練の対象となる他の素材を使用してもよい。
【0037】
せん断装置1の構成は、図1に示すように、ケーシング2の下部にモータ7が配置され、そのモータ7の回転軸(図示せず)に接続された軸3がケーシング2内で上下方向に配置されている。軸3は、ケーシング2に軸周り回転自在に支持されている。
【0038】
ケーシング2の上部には、内部に原材料Mを収容可能な空間を有するケース10が設けられている。このケース10は、凹状のケース本体11と、そのケース本体11の上部を閉じる蓋12とを有している。蓋12は、パッキン13を介してケース本体11の上部に固定され、その蓋12によって、原材料Mを収容可能な空間が閉じられる。
【0039】
このケース10は、下部支持部材4と上部支持部材5とを介してケーシング2の上部に固定されている。
【0040】
下部支持部材4は、図示しないボルト等の係止手段によって、ケーシング2の上端に固定される。また、その下部支持部材4の上面側に設けた凹状の収容部4cに、前記ケース本体11がぴったりと嵌め込まれている。この実施形態では、ケース本体11は、その外形が図2(b)に示すように平面視円形であり、下部支持部材4の凹状の収容部4cも同一の平面視形状となっている。ケース本体11に被せられる蓋12も、平面視同一の平面視形状である。
【0041】
また、下部支持部材4の上端に、上部支持部材5が固定されている。上部支持部材5は環状を成し、その内径部に段部5aが設けられている。この段部5aが、前記下部支持部材4上に載置されたケース本体11及び蓋12の外縁にぴったりと嵌るように、上部支持部材5が被せられる。この状態で、固定手段6によって、下部支持部材4と上部支持部材5とを固定することにより、ケース10が動かないように固定されている。また、蓋12もケース本体11に固定される。なお、固定手段6の具体的な構造は、ネジ固定や嵌め込み固定など、周知の手法を採用できる。
【0042】
さらに、このせん断装置1は、温度センサー(図示せず)を備えている。温度センサーは、下部支持部材4に設けた孔を通じて外部からケース本体11の外面に至り、そのケース本体11の温度を検出できるようになっている。また、その下部支持部材4の外側には、ヒーターと冷却水配管(いずれも図示せず)が設けられており、そのヒーターによる加熱と冷却水による冷却により、ケース本体11内の温度調節が可能となっている。
【0043】
また、この実施形態では、ケース10に、そのケース10内の空間とケース10外とを結ぶ排気口(図示せず)が設けられている。この排気口に減圧ポンプ、真空ポンプ等を接続することにより、ケース10内の空間を減圧状態に、あるいは真空状態にすることができるようになっている。この排気口は、例えば、ケース10のケース本体11を内外に貫通する孔と、上部支持部材5を内外に貫通する孔とを連通させ、その上部支持部材5の孔に前記ポンプ等を接続可能とすればよい。
【0044】
このとき、下部支持部材4の収容部4cの底に設けた上向き凸部4aが、ケース本体11の底面に設けた凹部11aに入り込むことで、ケース10が下部支持部材4に対して位置決めされている。
【0045】
ケース本体11には、そのケース本体11の底の中央部を上下方向に貫通する孔11bが設けられている。また、下部支持部材4の前記収容部4cの底の中央部にも、その下部支持部材4を上下方向に貫通する孔4bが設けられている。
【0046】
軸3の上端部には、他の部分(大径部と称する)よりもやや小径の接続部3aが設けられている。軸3の大径部が下部支持部材4の前記孔4bに挿通され、さらに、相対的に小径の接続部3aが、ケース本体11の孔11bに挿通されている。
孔4b,11bの内面と軸3の外面とは、図示しないブッシュ等を介して、がたつきが生じないように回転可能に支持され、特に、孔4bの内面と軸3の外面との間は、ケース10内に収容された原材料M等が漏れ出ないようにシールされている。なお、ケース10内の空間を真空にする場合は、例えば、ウィルソンシールを用いることができる。
【0047】
ケース本体11内に突出した軸3の接続部3aには、羽根20が取付けられる。この実施形態では、羽根20は、連続式混練機の混練軸に取付けられるパドル(以下、パドル20と称する。)を使用している。
【0048】
図2(a)に示すように、軸3の接続部3aにパドル20を宛がい、さらに、そのパドル20の上面側に押さえ部材21を宛がった上で、ボルト22を押さえ部材21に挿通し、さらに、そのボルト22をパドル20の孔20cに挿通し、接続部3aのネジ孔3bにねじ込んで、パドル20を軸3に固定する。
【0049】
モータ7の駆動力によって軸3が軸周り回転し、その軸3の回転とともに、パドル20も軸周り回転する。パドル20の回転により、原材料Mは、そのパドル20に設けた作用部20aの外縁とケース10の内面との相対移動によってせん断力が付与され、徐々に混練されていく。
【0050】
このとき、ケース10内の空間は、図2(b)に示すように平面視円形であり、パドル20の作用部20aの外縁と、ケース本体11の内面との最小隙間w0は、原材料Mの混練に必要な寸法に設定されている。通常は、2〜3mm以下に設定される。
【0051】
なお、この実施形態では、パドル20は、従来例で示した特許文献1に記載のヘリカルパドルを用いている。
ヘリカルパドルは、図2(b)に示すように、平面視ラグビーボール型の断面を有し、すなわち、軸3の接続部3aが挿通される孔20cを備えた基部20bから、半径方向両側に向かって先細りの作用部20aを有する。パドル20は、この断面形状を維持しながら、両作用部20aが、下方に向かうにつれて徐々に軸周り同じ方向へ変位して、全体として螺旋状を成している。
連続式混練機においては、原材料Mは、この螺線の作用により軸方向へ移送されるが、このせん断装置1では、原材料Mは、螺旋の作用により下方へ(ケース本体11の底へ)押し付けられることとなる。なお、原材料Mの種別や測定する条件によっては、パドル20をフラットなものとしてもよい。
【0052】
また、この実施形態では、その蓋12は、ケース10の外部から、ケース10の空間内に収容された原材料Mを視認可能な透明の部材で構成されている。
原材料Mをケース10の上方から可視化することにより、混練過程を肉眼で観察できるので、最適な混練状態でのデータを取得しやすいようになっている。
【0053】
また、このせん断装置1は、ケース10内に原材料Mを収容して、軸3を回転させることによりパドル20で原材料Mを混練する際における、そのパドル20又は軸3に作用するトルクを検出するトルク検出手段(図示せず)を備えている。
【0054】
この実施形態では、モータ7としてサーボモータを採用しており、このため、トルク検出手段としては、そのサーボモータに流れる電流値を検出する手段と、その検出した電流値に基づいてトルクの数値を算出する手段と、そのモータの回転軸の単位時間当たりの回転数を検出する手段とを備えている。
【0055】
なお、このトルク検出手段により検出される電流値、それに伴って算出されたトルク値、モータの回転軸の単位時間当たりの回転数との関係は、各データが、軸の回転数の変化に応じて断続的に、あるいは、軸の回転数の変化とともに連続的に検出されるようになっているので、それらのデータを基に、原材料Mの特性を把握することができる。この特性に基づいて、連続式混練機で同じ原材料Mの混練を行う際の混練条件を容易に設定することができる。
【0056】
また、パドル20は、その原材料Mを混練するために使用する連続混練機に使用するパドル20であるから、このせん断装置1で原材料Mの特性に関するデータを測定した後、その測定データに基づいて、容易に連続式混練機で原材料Mの混練を行う際の混練条件を評価することができる。
【0057】
なお、せん断装置の駆動源にサーボモータを採用したことにより、予め設定されたプログラムを用いて、簡単に連続式混練機の混練条件を評価することができる。
すなわち、プログラムを用いれば、例えば、サーボモータの回転数を0→500rpm→0と変化させ、その際の軸3の回転トルクを、前記電流値を用いてサーボモータからフィードバックし、そのフィードバックされたトルクを、回転数の変化と併せて連続的に記録装置に記録することができる。また、その間における温度の変化も、回転数の変化や時間経過と併せて記録装置に記録しておくことができる。
そして、記録に基づいて、例えば、連続式混練機にて採用するべき一定の回転数を決定すれば、その回転数に設定した場合に、連続式混練機において、時間経過とともに、原材料Mに対して作用するトルクがどのように変化していくか、あるいは、温度がどのように変化していくかを予め評価することができる。トルクの変化や温度の変化が把握されていれば、混練後の仕上がりの物性を特定することができる。
【0058】
さらに、ヒーターによる加熱機能や冷却水による冷却機能を用い、例えば、パドル20の回転数を一定とした状態で原材料の温度を変化させ、その温度の変化に伴うトルクの変化を検出することができる。これにより、或る回転数において、温度とトルクとの関係を評価することができる。
また、例えば、温度を一定とした状態でパドル20の回転数を変化させ、その回転数の変化に伴うトルクの変化を検出することができる。これにより、或る温度において、トルクと回転数との関係を評価することができる。
これらのデータは、パドル20の形状や大きさによっても異なってくるので、予め、形状や大きさの異なるパドル20をいくつか用意し、その複数のパドル20のデータを取得することにより、最適なパドル20を選択するための比較検討をすることもできる。
【0059】
また、上記の各評価において、ケース10の上部から透明な蓋12を通じてケース10の内部を視覚で観察可能であることから、例えば、原材料Mの相変化する時点における各パラメータの値を把握することができる。さらに、ケース10に設けた排気口を使用して、そのケース10内の空間を真空状態とすることで、真空状態における原材料Mの評価も可能である。
【0060】
このせん断装置1では、パドル20は軸3に対して着脱可能である。すなわち、ボルト22を緩めて押さえ部材21を除去すれば、パドル20は軸3に対して上方へ引き抜くことができる。また、軸3にパドル20を取付ける場合は、その逆の作業となる。
【0061】
さらに、パドル20と軸3とを分離した状態としておけば、ケース10(ケース本体11)は、軸3に対して上方へ引き抜くことができる。また、軸3にケース10を取付ける場合は、その逆の作業となる。
【0062】
このように、パドル20やケース10が軸3に対して着脱自在であることから、このせん断装置1で原材料Mの特性の測定を終えた後、次なる原材料Mで測定を行う際の作業が容易である。
すなわち、パドル20と軸3、及び、ケース10と軸3との分離に、煩雑な作業を伴わない。また、ケース10は、ケース本体11の凹部が上向きになった状態で軸3に着脱できるから、従来のような、羽根を固定する軸が横向きの装置と比較して、内部の原材料Mがこぼれにくい。このため、短時間で多数の試験を行うことで、多くのデータを取得することができる。したがって、混練条件の設定に必要な原材料の特性を、容易に特定できる。
【0063】
また、このように、原材料Mを収容するケース10と軸3との着脱が容易であるから、ケース10を多数用意しなくても、その都度清掃して繰り返し用いることも可能となる。軸3とパドル20とケース10とが完全に分離するからである。
【0064】
さらに、軸3に対するケース10やパドル20の着脱が容易であるから、形状、寸法の異なる様々な仕様のケース10やパドル20を用意しておけば、そのパドル20とケース10との組合わせによって、例えば、高価な原材料を用いる場合等においては、微少量の原材料を用いた試験にも対応できるようになる。
【0065】
なお、これらの実施形態では、その原材料Mを実際に混練する連続式混練機のパドル20を用いたが、それ以外のパドル、すなわち、種々の混練機に用いられる混練用の羽根などを用いてもよい。
このとき、羽根の外縁と、ケースの内面との最小隙間w0は、原材料Mの混練に必要な寸法に設定されていることが望ましい。混練機において実際に行う混練環境により近づけることが有効だからである。
【符号の説明】
【0066】
1 せん断装置
2 ケーシング
3 軸
3a 接続部
3b ネジ孔
4 下部支持部材
4a 凸部
4b 孔
5 上部支持部材
6 固定手段
7 モータ(サーボモータ)
10 ケース
11 ケース本体
11a 凹部
11b 孔
12 蓋
13 パッキン
20 羽根(パドル)
20a 作用部
20b 基部
20c 孔
21 押さえ部材
22 ボルト
M 原材料
図1
図2