特許第5725407号(P5725407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725407
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】昇降式足場装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 1/20 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   E04G1/20 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-59870(P2011-59870)
(22)【出願日】2011年3月1日
(65)【公開番号】特開2012-180730(P2012-180730A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2014年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】佐當 裕
【審査官】 瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−063761(JP,A)
【文献】 特開平06−233438(JP,A)
【文献】 実開平04−079871(JP,U)
【文献】 特公昭49−019140(JP,B1)
【文献】 実開平07−038421(JP,U)
【文献】 特開平04−297658(JP,A)
【文献】 実開平07−019486(JP,U)
【文献】 特開昭61−010668(JP,A)
【文献】 特開2009−107746(JP,A)
【文献】 実開昭59−040273(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/20
E04G 3/28
B66B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びたタワー部と、
前記タワー部に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、
前記昇降部の略側方方向に延びて連結され、かつ前記昇降部の昇降によって昇降する足場部と、
前記足場部の端部に設けられ前記足場部の延出方向に進退自在な延出部と、
前記足場部の昇降前において前記延出部が進退動作している状態を検出するための状態検出手段と、
前記状態検出手段による検出結果に基づいて前記昇降部の昇降を禁止するよう制御する禁止制御手段と、
を備えることを特徴とする、昇降式足場装置。
【請求項2】
上下方向に延びたタワー部と、
前記タワー部に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、
前記昇降部の略側方方向に延びて連結され、かつ前記昇降部の昇降によって昇降する足場部と、
前記足場部の延出方向と直交する直交方向に前記足場部を移動させる移動手段と、
前記足場部の昇降前において前記移動手段によって前記足場部が移動している状態を検出するための状態検出手段と、
前記状態検出手段による検出結果に基づいて前記昇降部の昇降を禁止するよう制御する禁止制御手段と、
を備えることを特徴とする、昇降式足場装置。
【請求項3】
上下方向に延びたタワー部と、
前記タワー部に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、
前記昇降部の略側方方向に延びて連結され、かつ前記昇降部の昇降によって昇降する足場部と、
前記昇降部と前記足場部との間に備えられた、両者を連結自在な連結手段と、
前記足場部の昇降前において前記連結手段による連結が解除されている状態を検出するための状態検出手段と、
前記状態検出手段による検出結果に基づいて前記昇降部の昇降を禁止するよう制御する禁止制御手段と、
を備えることを特徴とする、昇降式足場装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビル等の建築工事において敷設される仮設足場に用いられ、特に作業床が昇降移動可能な昇降式足場装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、仮設足場は、例えばビル等の建築工事において建築物に沿うようにして設けられ、作業者が作業を行うための作業床を有している。近年では、作業床が上下方向に昇降移動することが可能な昇降式足場装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2881677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
上記昇降式足場装置の中には、例えば2本のタワーを有し、これらのタワー間に作業床を有する足場部が連結され、この足場部が水平状態を維持したまま昇降するものが知られている。すなわち、この昇降式足場装置は、建築物が立設された地盤上において例えば2本のタワーが所定の間隔を隔てて並設され、各タワーに沿って上下方向に昇降可能な昇降部がそれぞれ備えられている。
【0004】
この昇降式足場装置によれば、両昇降部が同時に昇降されるので、足場部がほぼ水平を維持したまま上昇及び下降する。例えば、足場部が所定の高さ位置まで上昇して停止されると、足場部に搭乗している作業者は、所定の高さ位置で高所作業を行うことができる。
【0005】
上記昇降式足場装置では、足場部の所定位置に作業者が乗降するための開閉自在な扉が設けられている。例えば足場部には、作業者が足場部から墜落することを防止するための手摺が設けられているが、上記扉はこの手摺の一部によって構成され、平面視で一端を支点にして扇状に移動することにより開閉自在とされている。
【0006】
しかしながら、この昇降式足場装置では、上記扉が開状態のまま足場部が昇降移動すると、作業者が転倒して開状態である扉から墜落する場合があるといったおそれが生じる。昇降式足場装置では、昇降移動する足場部には作業者が搭乗しているので、作業者の安全性を十分に考慮したものが要請されている。
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、足場部が昇降移動する際に足場部に搭乗している作業者の安全性を確保することのできる昇降式足場装置を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供される昇降式足場装置は、上下方向に延びたタワー部と、前記タワー部に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、前記昇降部の略側方方向に延びて連結され、かつ前記昇降部の昇降によって昇降する足場部と、前記足場部の端部に設けられ前記足場部の延出方向に進退自在な延出部と、前記足場部の昇降前において前記延出部が進退動作している状態を検出するための状態検出手段と、前記状態検出手段による検出結果に基づいて前記昇降部の昇降を禁止するよう制御する禁止制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
本発明の昇降式足場装置は、上下方向に延びたタワー部と、前記タワー部に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、前記昇降部の略側方方向に延びて連結され、かつ前記昇降部の昇降によって昇降する足場部と、前記足場部の延出方向と直交する直交方向に前記足場部を移動させる移動手段と、前記足場部の昇降前において前記移動手段によって前記足場部が移動している状態を検出するための状態検出手段と、前記状態検出手段による検出結果に基づいて前記昇降部の昇降を禁止するよう制御する禁止制御手段と、を備えるとよい。
【0012】
本発明の昇降式足場装置は、上下方向に延びたタワー部と、前記タワー部に沿って昇降自在に設けられた昇降部と、前記昇降部の略側方方向に延びて連結され、かつ前記昇降部の昇降によって昇降する足場部と、前記昇降部と前記足場部との間に備えられた、両者を連結自在な連結手段と、前記足場部の昇降前において前記連結手段による連結が解除されている状態を検出するための状態検出手段と、前記状態検出手段による検出結果に基づいて前記昇降部の昇降を禁止するよう制御する禁止制御手段と、を備えるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、足場部が昇降される前に、例えば扉が開状態である場合、足場部の延出部が進退移動している場合、足場部が延出方向の直交方向に移動している場合、昇降部と足場部との連結を解除している場合、あるいは電源ケーブルが過伸長の状態である場合には、昇降部の昇降動作が禁止される。したがって、足場部に搭乗している作業者の安全性を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の昇降式足場装置を示す正面図である。
図2】第1モータとピニオンの配置関係を示し、(a)は側面図、(b)は背面図である。
図3】第1側方部に対する第1進退部の収納状態を示し、(a)は第1進退部が第1側方部内に収納され退入された状態であり、(b)は第1進退部が第1側方部の外部に進出された状態である。
図4】足場部が建築物に対して接近する状態を示し、(a)は水平移動部が基準位置にある場合、(b)は水平移動部が変位位置にある場合である。
図5】足場部の扉の開状態を示す図である。
図6】第1水平移動部と第1側方部の接続状態を示し、(a)は第1側方部が第1水平移動部に対して延びた状態、(b)は第1側方部が旋回された状態である。
図7】制御盤及び操作ボックスを示す正面図である。
図8】昇降式足場装置の電気的構成を示すブロック図である。
図9】制御部による状態検出制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る昇降式足場装置(以下、単に「足場装置」という)を示す正面図である。この足場装置は、例えば建築工事の仮設足場に用いられるものであり、特に作業床が昇降する昇降式のものである。
【0018】
足場装置は、図1に示すように、2本のタワーを備えている。足場装置は、所定の高さを有する第1タワー1と、所定の間隔を隔てて並設された第2タワー2と、両タワー1,2に支持された昇降移動可能な足場部3とを備えている。第1タワー1及び第2タワー2は、ほぼ同様の構成とされている。なお、以下の説明では、構成が共通する部材については同符号で示す。
【0019】
各タワー1,2は、これを支持するためのベース部4をそれぞれ有している。ベース部4は、略平板状に形成されており、ベース部4の角部には、複数のジャッキ機構5が設けられている。ジャッキ機構5は、それぞれの高さを調整することにより、ベース部4を水平状態に維持するものである。ジャッキ機構5には、ジャッキボルトが弛緩していることを検出する図略のジャッキ弛緩検出センサ42(後述)が設けられている。
【0020】
ベース部4には、アウトリガー機構6が設けられている。アウトリガー機構6は、ベース部4から放射状に延びた複数の部材からなり、各タワー1,2を地盤Gに対して支持するためのものである。このアウトリガー機構6の各端部には、ジャッキ機構6aが設けられている。ジャッキ機構6aには、ジャッキボルトが弛緩していることを検出する図略のアウトリガー用ジャッキ弛緩検出センサ43(後述)が設けられている。
【0021】
ベース部4には、図示しない移動用車輪が設けられている。移動用車輪は、各タワー1,2を建築現場の所定位置に移動させるためのものである。移動用車輪には、ブレーキ機構が付随しており、ブレーキ機構にはこれによる制動が行われていないことを検出するための図略のブレーキ制動検出センサ44(後述)が設けられている。
【0022】
第1及び第2タワー1,2は、外形が略直方体の枠状に形成された枠部材7が複数個連接された構成とされている。具体的には、第1及び第2タワー1,2は、ベース部4の中央部において最下段の枠部材7が取付けられ、その枠部材7の上方に他の枠部材7が積み重ねられて構成される。
【0023】
第1タワー1の各枠部材7の内部空間には、上下方向に延びた第1ラック8が設けられている。第1ラック8は、長尺状に形成され、図2(b)に示すように、その一方側端面に複数のピニオン10が歯合される歯合部8aが形成されている。同様に、第2タワー2の各枠部材7の内部空間には、上下方向に延びた第2ラック9が設けられている。第2ラック9は、第1ラック8と同様の構成とされている。
【0024】
第1タワー1には、それに沿って上下方向に昇降自在とされた第1昇降部11が設けられている。第1昇降部11は、高さ方向に延びた略直方体の枠状に形成されている。第1昇降部11は、図略のガイドローラを介して枠部材7の外表面に沿って昇降される。また、第2タワー2には、それに沿って上下方向に昇降自在とされた第2昇降部12が設けられている。第2昇降部12は、第1昇降部11と同様の構成とされている。
【0025】
第1昇降部11には、図1及び図2に示すように、これを昇降させるための第1モータ13が取付けられている。第1モータ13は、誘導モータとされ、その回転を停止させるブレーキ機構が備えられている。なお、第1モータ13は、実際には並設された2つのモータによって構成され、一方のモータが故障した場合等に他方のモータを使用するといった非常時の安全性を考慮したものとされている。よって、以下の説明では、2つのモータを総称して第1モータ13と呼称する。
【0026】
一方、第2昇降部12には、これを昇降させるための第2モータ14が取付けられている。第2モータ14は、第1モータ13と同様の構成とされている。
【0027】
第1昇降部11には、それを覆うようにかつ前後方向(図1において紙面の手前又は奥行き方向)に水平移動自在な第1水平移動部15が設けられている。また、第2昇降部12には、それを覆うようにかつ前後方向に水平移動自在な第2水平移動部16が設けられている。第1及び第2水平移動部15,16は、足場部3を前後方向に移動させるためのものである。第1及び第2水平移動部15,16は、それぞれ前後方向に延びた略直方体の枠状に形成されている。
【0028】
足場部3は、第1及び第2水平移動部15,16の間及び第1及び第2水平移動部15,16の側方に略水平方向に延びて設けられている。足場部3は、略直方体の枠状に形成された本体部3aと、本体部3aの上面に配された作業床(図略)と、作業者の転落を防止するための手摺3bとを有している。
【0029】
より詳細には、足場部3は、第1及び第2水平移動部15,16の間に設けられた中間部18と、第1水平移動部15の左方向に延びた第1側方部19と、第2水平移動部16の右方向に延びた第2側方部20とによって構成されている。第1側方部19には、左方向に進退自在とされた第1進退部21が設けられている。また、第2側方部20には、右方向に進退自在とされた第2進退部22が設けられている(図1は、第1進退部21及び第2進退部22がそれぞれ進出した状態を示している。)。
【0030】
すなわち、図3に示すように、第1進退部21は、第1側方部19内に収納され退入された状態(図3(a)参照)と、第1側方部19の外部に進出された状態(図3(b)参照)とに進退自在とされている。また、第2進退部22は、第1進退部21と同様に、第2側方部20に対して進退自在とされている。第1及び第2側方部19,20には、第1及び第2進退部21,22が進退移動中であることを検出するための図略の進退移動検出センサ38(後述)がそれぞれ設けられている。
【0031】
第1水平移動部15の周囲には、中間部18と第1側方部19とを結ぶ第1補助部23が設けられ、第2水平移動部16の周囲には、中間部18と第2側方部20とを結ぶ第2補助部24が設けられている。これら第1補助部23及び第2補助部24が設けられることにより、足場部3の作業床は、右端に配される第1進退部21から左端に配される第2進退部22にわたってその作業床がほぼ面一とされる。したがって、足場部3に搭乗した作業者は、第1進退部21から第2進退部22に一旦足場部3から降りることなく移動することができる。
【0032】
ここで、第1及び第2水平移動部15,16は、図4(a)に示す基準位置(ベース部4が設置された位置)と、図4(b)に示す建築物B側に接近した変位位置との間で図略の移動機構によって移動自在とされている。これにより、足場部3は、第1及び第2水平移動部15,16の移動にともなって建築物Bに接近し、足場部3に搭乗した作業者がより作業し易くなるように構成されている。なお、図4は、第1水平移動部15の移動状態を示しているが、第2水平移動部16も同様に建築物B側に接近移動する。
【0033】
本実施形態の足場装置では、第1及び第2昇降部11,12には、第1及び第2水平移動部15,16が上記移動機構によって水平移動中であることを検出するための図略の水平移動検出センサ37(後述)が設けられている。
【0034】
第1進退部21の端部には、図5に示すように、作業者が足場部3に搭乗するために開閉自在とされた扉25が設けられている。扉25は、手摺3bの一部として形成されている。一方、図示しないが、第2進退部22の端部には、同形状の扉25が設けられている。本実施形態の足場装置では、これらの扉25の開状態を検出する図略の扉開状態検出センサ36(後述)がそれぞれ設けられている。
【0035】
第1側方部19は、図6に示すように、第1水平移動部15に対して図略の旋回機構により旋回自在とされている。すなわち、第1側方部19は、第1水平移動部15に対して左方向に延びた状態(図6(a)参照)と、所定角度で旋回された状態(図6(b)参照)とに変位自在とされている。
【0036】
第1側方部19は、図6(a)の状態においては、第1連結機構27及び第2連結機構28によって第1水平移動部15と連結されている。第1連結機構27は、第1水平移動部15と第1側方部19とからそれぞれ突設された突設部15a,19aが図略の連結ピンによって互いに係止された構成とされている。また、第2連結機構28は、同様に、第1水平移動部15と第1側方部19とからそれぞれ突設された突設部15b,19bが図略の連結ピンによって互いに係止された構成とされている。
【0037】
図6(b)に示すように、例えば第1連結機構27の連結ピンを外し第1側方部19を手前側に折り曲げるように移動させれば、第1側方部19全体が手前側に旋回される。また、逆に、第2連結機構28の連結ピンを外し第1側方部19を奥行き側に折り曲げるように移動させれば、第1側方部19全体が奧行き側に旋回される。
【0038】
なお、図示しないが、第2側方部20も第2水平移動部16に対して旋回自在とされている。本実施形態の足場装置では、第1連結機構27及び第2連結機構28に、いずれかの連結ピンが抜脱されていることを検出する、すなわち第1連結機構27又は第2連結機構28による連結が解除されている状態を検出する図略のピン抜脱検出センサ39(後述)がそれぞれ設けられている。
【0039】
図1に戻り、第1及び第2タワー1,2には、足場部3の中間部18、第1側方部19及び第2側方部20を担持支持するための担持機構29がそれぞれ設けられている。第1及び第2側方部19,20は、それらが旋回されるときにおいて各担持機構29によってそれぞれ担持される。本実施形態の足場装置では、各担持機構29にこれらが旋回していることを検出する図略の担持機構旋回検出センサ40(後述)がそれぞれ設けられている。
【0040】
第1及び第2側方部19,20の手摺3bには、制御盤30がそれぞれ設けられている。制御盤30には、制御部35(後述)が内装されている。制御盤30の前面には、図7に示すように、モニタ部31及び非常停止ボタン32が設けられている。モニタ部31は、タッチパネルを有する液晶表示器によって構成されている。非常停止ボタン32は、緊急時に足場部3の昇降を強制的に停止するために押下されるものである。
【0041】
2つの制御盤30のうちいずれか一方の制御盤30には、操作ボックス34が接続されている。操作ボックス34は、足場部3の昇降動作を作業者が操作入力するためのものである。操作ボックス34は、図7の円内に示すように、上昇スイッチ34a及び下降スイッチ34bを備えている。上昇スイッチ34aは、足場部3を上昇させるためのものであり、下降スイッチ34bは、足場部3を下降させるためのものである。なお、上昇スイッチ34a及び下降スイッチ34bは、押下した場合にのみ制御部35に操作信号が伝達されるモーメンタリ型のスイッチとされる。
【0042】
図1には示していないが、制御盤30並びに第1及び第2モータ13,14には、これらを駆動させるための電源電圧を供給する電源ケーブルが敷設されて接続されている。第1及び第2昇降部11,12並びに足場部3は上下方向に昇降移動するため、電源ケーブルはいわゆるバスケット方式で敷設されている。すなわち、電源ケーブルは、その一部が、地盤G上に設けられたバスケット(図略)の内部に、とぐろを巻いた状態で収納されてあり、他の一部が、バスケットから空中を介して第1及び第2昇降部11,12の第1及び第2モータ13,14に、あるいは足場部3の制御盤30に接続されている。
【0043】
電源ケーブルには、図示しないが、例えばロードセル等によって構成され、電源ケーブルが過伸長である状態を検出する(電源ケーブルのテンションが大となった場合を検出する)ためのケーブル過伸長検出センサ41(後述)が設けられている。
【0044】
図8は、本足場装置の電気的構成を示すブロック図である。この足場装置では、制御盤30に例えばシーケンサからなる制御部35が備えられている。制御部35には、モニタ部31及び非常停止ボタン32が接続されている。制御部35は、モニタ部31に対して表示すべき表示データを送出するとともに、モニタ部31からのタッチパネルによる操作信号に基づいて各種のデータ処理を行う。制御部35は、非常停止ボタン32からの押下信号が入力されると、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を強制的に停止させるよう制御する。
【0045】
制御部35には、第1モータ13及び第2モータ14が接続されている。制御部35は、第1及び第2モータ13,14に対して駆動信号をそれぞれ送出する。これにより、第1及び第2モータ13,14は、この駆動信号に応じて独立にオン、オフ動作する。
【0046】
制御部35には、操作ボックス34が接続され、操作ボックス34から上昇スイッチ34a及び下降スイッチ34bによる操作信号が入力される。制御部35は、それらの操作信号に基づいて第1及び第2モータ13,14をオン、オフ動作させ、これにより、足場部3を昇降動作させる。
【0047】
制御部35には、扉開閉検出センサ36、水平移動検出センサ37、進退移動検出センサ38、ピン抜脱検出センサ39、担持機構旋回検出センサ40、ケーブル過伸長検出センサ41、ジャッキ弛緩検出センサ42、アウトリガー用ジャッキ弛緩検出センサ43、及びブレーキ制動検出センサ44が接続されている。
【0048】
制御部35は、扉開閉検出センサ36から扉25が開状態であることを示す信号が伝達された場合、水平移動検出センサ37から足場部3が水平方向に移動中であることを示す信号が伝達された場合、進退移動検出センサ38から第1及び第2進退部21,22が進退移動していることを示す信号が伝達された場合、ピン抜脱検出センサ39から第1及び第2側方部19,20と第1及び第2水平移動部15,16とをそれぞれ連結するための連結ピンが外されたことを示す信号が伝達された場合、担持機構旋回検出センサ40から各担持機構29が旋回していることを示す信号が伝達された場合、ケーブル過伸長検出センサ41から電源ケーブルが過伸長である状態を示す信号が伝達された場合、ジャッキ弛緩検出センサ42からベース部4のジャッキ機構5のジャッキボルトが弛緩していることを示す信号が伝達された場合、アウトリガー用ジャッキ弛緩検出センサ43からアウトリガー機構6のジャッキボルトが弛緩していることを示す信号が伝達された場合、あるいはブレーキ制動検出センサ44からベース部4の移動用車輪のブレーキ機構による制動が行われていないことを示す信号が伝達された場合には、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させ、足場部3の昇降を禁止する。
【0049】
次に、制御部35における状態検出制御について、図9に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。本実施形態では、作業者によって昇降動作させるための操作が行なわれた後、上述した各種センサの出力が一つでも異常である場合に足場部3の昇降を禁止するようにし、昇降時の安全性を確保するようにしている。
【0050】
具体的には、制御部35は、作業者が操作ボックス34を介して上昇操作(上昇スイッチ34aを押下)したかあるいは下降操作(下降スイッチ34bを押下)したかの判別を行う(S1)。具体的には、制御部35は、上昇スイッチ34aからの上昇操作信号を受けたか、あるいは下降スイッチ34bからの下降操作信号を受けたかの判別を行う。
【0051】
制御部35は、上昇操作信号又は下降操作信号を受けると(S1:YES)、扉25が開状態であるか否かを判別する(S2)。具体的には、制御部35は、扉開閉検出センサ36から扉25が開状態であることの検出信号が伝達されたか否かによってステップS2の判別を行う。ここで、図5に示したように、扉25が開状態である場合、扉開閉検出センサ36はその状態を検出し、その検出信号を制御部35に伝達する。
【0052】
制御部35は、上記検出信号が伝達されると、扉25が開状態であると判別し(S2:YES)、第1及び第2モータ13,14を駆動させないよう制御する(S3)。すなわち、作業者によって操作ボックス34を介して足場部3を昇降させるための操作信号が入力されているにもかかわらず、足場部3の扉25が開状態である場合には、足場部3の昇降動作を禁止する。これにより、足場部3に搭乗している作業者の安全性を確保することができる。
【0053】
ステップS2において扉25が閉状態である場合(S2:NO)、制御部35は、第1及び第2昇降部11,12が前後方向に移動中であるか否かを判別する(S4)。具体的には、制御部35は、水平移動検出センサ37から足場部3が水平方向に移動中であることの検出信号が伝達されたか否かによってステップS4の判別を行う。
【0054】
ここで、図4に示したように、第1及び第2昇降部11,12が前後方向に移動中である場合、水平移動検出センサ37はその状態を検出し、その検出信号を制御部35に伝達する。制御部35は、上記検出信号に基づいて第1及び第2昇降部11,12が前後方向に移動中であると判別し(S4:YES)、第1及び第2モータ13,14を駆動させないよう制御する(S3)。
【0055】
ステップS4において第1及び第2昇降部11,12が前後方向に移動中でない場合(S4:NO)、制御部35は、第1及び第2進退部21,22が左右方向に進退移動中であるか否かを判別する(S5)。具体的には、制御部35は、進退移動検出センサ38から第1及び第2進退部21,22が水平方向に進退移動中であることの検出信号が伝達されたか否かによってステップS5の判別を行う。
【0056】
ここで、図3(b)に示したように、第1及び第2進退部21,22が左右方向に進退移動中である場合、進退移動検出センサ38はその状態を検出し、その検出信号を制御部35に伝達する。制御部35は、上記検出信号に基づいて第1及び第2進退部21,22が左右方向に進退移動中であると判別し(S5:YES)、第1及び第2モータ13,14を駆動させないよう制御する(S3)。
【0057】
ステップS5において第1及び第2進退部21,22が左右方向に進退移動中でない場合(S5:NO)、制御部35は、第1連結機構27又は第2連結機構28の連結ピンが抜脱しているか否かを判別する(S6)。具体的には、制御部35は、ピン抜脱検出センサ39から連結ピンが抜脱していることの検出信号が伝達されたか否かによってステップS6の判別を行う。
【0058】
ここで、図6(b)に示したように、連結ピンが抜脱している場合、ピン抜脱検出センサ39はその状態を検出し、その検出信号を制御部35に伝達する。制御部35は、上記検出信号に基づいて連結ピンが抜脱していると判別し(S6:YES)、第1及び第2モータ13,14を駆動させないよう制御する(S3)。
【0059】
ステップS6において連結ピンが抜脱していない場合(S6:NO)、制御部35は、担持機構29が旋回中であるか否かを判別する(S7)。具体的には、制御部35は、担持機構旋回検出センサ40から担持機構29が旋回中であることの検出信号が伝達されたか否かによってステップS7の判別を行う。
【0060】
担持機構29が旋回中である場合、担持機構旋回検出センサ40はその状態を検出し、その検出信号を制御部35に伝達する。制御部35は、上記検出信号に基づいて担持機構29が旋回中であると判別し(S7:YES)、第1及び第2モータ13,14を駆動させないよう制御する(S3)。
【0061】
ステップS7において担持機構29が旋回中でない場合(S7:NO)、制御部35は、電源ケーブルが過伸長の状態であるか否かを判別する(S8)。具体的には、制御部35は、ケーブル過伸長検出センサ41から電源ケーブルが過伸長の状態であることの検出信号が伝達されたか否かによってステップS8の判別を行う。
【0062】
電源ケーブルが過伸長の状態である場合、ケーブル過伸長検出センサ41はその状態を検出し、その検出信号を制御部35に伝達する。制御部35は、上記検出信号に基づいて電源ケーブルが過伸長の状態であると判別し(S8:YES)、第1及び第2モータ13,14を駆動させないよう制御する(S3)。
【0063】
ステップS8において電源ケーブルが過伸長の状態でない場合(S8:NO)、制御部35は、ジャッキ機構5のジャッキボルトが弛緩しているか否かを判別する(S9)。具体的には、制御部35は、ジャッキ弛緩検出センサ42からジャッキボルトが弛緩していることの検出信号が伝達されたか否かによってステップS9の判別を行う。
【0064】
ジャッキ機構5のジャッキボルトが弛緩している場合、ジャッキ弛緩検出センサ42はその状態を検出し、その検出信号を制御部35に伝達する。制御部35は、上記検出信号に基づいてジャッキボルトが弛緩していると判別し(S9:YES)、第1及び第2モータ13,14を駆動させないよう制御する(S3)。
【0065】
ステップS9においてジャッキボルトが弛緩している場合(S9:NO)、制御部35は、アウトリガー機構6のジャッキボルトが弛緩しているか否かを判別する(S10)。具体的には、制御部35は、アウトリガー用ジャッキ弛緩検出センサ43からアウトリガー機構6のジャッキボルトが弛緩していることの検出信号が伝達されたか否かによってステップS10の判別を行う。
【0066】
アウトリガー機構6のジャッキボルトが弛緩している場合、アウトリガー用ジャッキ弛緩検出センサ43はその状態を検出し、その検出信号を制御部35に伝達する。制御部35は、上記検出信号に基づいてアウトリガー機構6のジャッキボルトが弛緩していると判別し(S10:YES)、第1及び第2モータ13,14を駆動させないよう制御する(S3)。
【0067】
ステップS10においてアウトリガー機構6のジャッキボルトが弛緩していない場合(S10:NO)、制御部35は、ベース部4の移動用車輪のブレーキ機構による制動が行われていないか否かを判別する(S11)。具体的には、制御部35は、ブレーキ制動検出センサ44からベース部4の移動用車輪のブレーキ機構による制動が行われていることの検出信号が伝達されたか否かによってステップS11の判別を行う。
【0068】
ベース部4の移動用車輪のブレーキ機構による制動が行われていない場合、ブレーキ制動検出センサ44はその状態を検出し、その検出信号を制御部35に伝達する。制御部35は、上記検出信号に基づいてベース部4の移動用車輪のブレーキ機構による制動が行われていないと判別し(S11:YES)、第1及び第2モータ13,14を駆動させないよう制御する(S3)。
【0069】
ステップS11においてベース部4の移動用車輪のブレーキ機構による制動が行われている場合(S11:NO)、制御部35は、第1及び第2モータ13,14に対してそれぞれ正転方向(上昇)又は逆転方向(下降)に駆動するための駆動信号を送出する。これにより、第1及び第2モータ13,14は、正転方向又は逆転方向にそれぞれ回転駆動される(S12)。
【0070】
第1タワー1では、第1モータ13が回転駆動されると、第1モータ13に枢軸された第1ピニオン15が回転する。そして、第1ピニオン15と第1ラック8とが協動することにより、第1昇降部11が第1タワー1に沿って昇降する。同様に、第2タワー2では、第2モータ14が回転駆動されると、第2モータ14に枢軸されたピニオンが回転する。そして、ピニオンと第2ラック9とが協動することにより、第2昇降部12が第2タワー2に沿って昇降する。このように、第1及び第2昇降部11,12が昇降すると、それにともなって足場部3が昇降する。
【0071】
このように、本実施形態では、作業者によって足場部3を昇降させるための操作信号が入力されているにもかかわらず、扉25が開状態である場合、第1及び第2昇降部11,12が前後方向に移動中である場合、第1及び第2進退部21,22が左右方向に進退移動中である場合、連結ピンが抜脱されている場合、担持機構29が旋回中である場合、電源ケーブルが過伸長の状態である場合、ジャッキ機構5のジャッキボルトが弛緩している場合、アウトリガー機構6のジャッキボルトが弛緩している場合、又はブレーキ機構による制動が行われていない場合には、足場部3の昇降動作が禁止される。したがって、足場部3に搭乗している作業者の安全性を十分に確保することができる。
【0072】
ステップS12において、第1及び第2モータ13,14が駆動されると、ステップS1に戻る。すなわち、作業者が上昇スイッチ34a又は下降スイッチ34bを押下しなくなったか否かが判別され、上昇スイッチ34a又は下降スイッチ34bが押下され続けていると判別した場合(S1:NO)、第1及び第2モータ13,14の回転駆動を停止させる(S3)。これにより、足場部3の昇降が停止される。
【0073】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態においては、上記の各検出センサが検出信号を出力した場合には、作業者にその旨を報知するようにしてもよい。報知の方法としては、パトライト(登録商標)等を用いて表示又は音声等で行うようにしてもよい。あるいは、操作盤30の表示部31に、各検出センサが検出信号を出力したことを表示させるようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、足場部3を昇降させる前において各検出センサが検出信号を出力した場合に、足場部3の昇降を禁止するようにしたが、足場部3が昇降している最中に各検出センサのいずれかが検出信号を出力した場合、足場部3の昇降を停止させるようにしてもよい。例えば、足場部3が昇降している最中に扉開状態検出センサ36によって扉25が開かれたことが検出された場合、あるいはケーブル過伸長検出センサ41によって電源ケーブルが過伸長の状態であることが検出された場合に、足場部3の昇降動作を停止させてもよい。
【0075】
また、例えば上記実施形態では、複数の検出センサを設けられている場合を示したが、検出センサの数、形態、構成等は上記実施形態に限るものではない。また、第1及び第2タワー1,2、足場部3、第1及び第2昇降部11,12、第1及び第2モータ13,14、制御盤30並びに扉開状態検出センサ36等の各種センサの構成は、適宜設計変更可能である。また、本実施形態の足場装置では、第1及び第2タワー1,2を有していたが、この構成に限らず、例えば一つのタワーで構成されていてもよい。また、制御盤30は、一つで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 第1タワー
2 第2タワー
3 足場部
5 ジャッキ機構
6 アウトリガー機構
11 第1昇降部
12 第2昇降部
13 第1モータ
14 第2モータ
15 第1水平移動部
16 第2水平移動部
21 第1進退部
22 第2進退部
25 扉
29 担持機構
35 制御部
36 扉開状態検出センサ
37 水平移動検出センサ
38 進退移動検出センサ
39 ピン抜脱検出センサ
40 担持機構旋回検出センサ
41 ケーブル過伸長検出センサ
42 ジャッキ弛緩検出センサ
43 アウトリガー用ジャッキ弛緩検出センサ
44 ブレーキ制動検出センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9