特許第5725430号(P5725430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5725430固相接合ウエハの支持基板の剥離方法および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725430
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】固相接合ウエハの支持基板の剥離方法および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20150507BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
   H01L21/268 E
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-539639(P2013-539639)
(86)(22)【出願日】2012年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2012076656
(87)【国際公開番号】WO2013058222
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2014年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-228545(P2011-228545)
(32)【優先日】2011年10月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 経宏
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−266892(JP,A)
【文献】 特開2005−129652(JP,A)
【文献】 特表2003−531492(JP,A)
【文献】 特表2001−525991(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0178173(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/268
H01L 21/336
H01L 27/12
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siウエハと当該Siウエハの裏面に固相接合された支持基板とを含む固相接合ウエハから前記支持基板を剥離する方法であって、
前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面に集光点を合わせて、Siウエハに透過性の波長光を用いたレーザー光を照射して、前記固相接合界面の外周部の少なくとも一部に破断層を形成する破断層形成工程と、
前記破断層を剥離する破断層剥離工程と、
前記固相接合界面を剥離する接合界面剥離工程と
を少なくとも含み、
前記Siウエハは薄肉化されたものであり、この薄肉化されたSiウエハの厚さが6インチ径で300μm未満、8インチ径で400μm未満である固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法。
【請求項2】
前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面にボイドが存在する請求項1記載の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法。
【請求項3】
前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面に酸化膜が存在する請求項1または請求項2記載の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法。
【請求項4】
前記レーザー光が固相接合ウエハの側面から照射される請求項1〜請求項3のいずれかに記載の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法。
【請求項5】
前記レーザー光が固相接合ウエハ面に垂直方向から照射される請求項1〜請求項3のいずれかに記載の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法。
【請求項6】
前記支持基板がSiウエハ、表面にSiO層を有するSiウエハ、SiCウエハから選ばれるいずれかの基板である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法。
【請求項7】
半導体装置の製造方法であって、
Siウエハの裏面に支持基板を固相接合する固相接合工程と、
前記Siウエハの表面に機能構造を形成する機能構造形成工程と、
前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面に集光点を合わせて、Siウエハに透過性の波長光を用いたレーザー光を照射して、前記固相接合界面の外周部の少なくとも一部に破断層を形成する破断層形成工程と、
前記破断層を剥離する破断層剥離工程と、
前記固相接合界面を剥離する接合界面剥離工程と、
接合界面剥離工程後のSiウエハの裏面に裏面処理をする裏面処理工程と
を少なくとも含み、
前記Siウエハは薄肉化されたものであり、この薄肉化されたSiウエハの厚さが6インチ径で300μm未満、8インチ径で400μm未満である半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面にボイドが存在する請求項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面に酸化膜が存在する請求項または請求項記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記レーザー光が固相接合ウエハの側面から照射される請求項〜請求項のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記レーザー光が固相接合ウエハ面に垂直方向から照射される請求項〜請求項のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記支持基板がSiウエハ、表面にSiO層を有するSiウエハ、SiCウエハから選ばれるいずれかの基板である請求項〜請求項11のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WSS(Wafer Support System)ウエハ(固相接合ウエハ)、特には、その支持基板の剥離方法および該方法を用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワーデバイスは、エネルギー損失低減、放熱性など特性面の観点から、半導体基板の薄肉化を図ることに大きな利点が認められる。半導体基板の薄肉化はプロセスへの投入当初から厚みの薄いウエハ(薄ウエハ)にして半導体デバイスを製造することができれば、最も製造効率がよいので、厚みの薄いウエハを支障なく流せるウエハプロセスの確立が強く求められている。しかし、現実には厚みの薄いウエハをプロセス当初から流すと熱による応力でウエハ割れなどが増加し易くなるため、通常は、図3に示すように、プロセスへの投入当初は厚いウエハとして、例えば、8インチ径、厚さ725μmのSiウエハ100aを用意する(図3(a))。Siウエハ100aのいずれか一方の表面からIGBTに必要なMOS(金属酸化膜半導体)ゲート構造(図示せず)、エミッタ金属電極(図示せず)などのデバイス構造を形成する(図3(b))。表面側にデバイス構造が形成された後、プロセス後半の最後に近い工程でSiウエハ100aの薄肉化工程、例えばSiウエハ100aの裏面側を研削装置とCMP(化学機械的研磨装置)で研磨して厚さ100μmのSiウエハ100bとする(図3(c)。Siウエハ100b裏面側に必要なコレクタ層(101)およびコレクタ電極(102)の形成(図3(d))後、ブレードダイシングによるIGBTチップ(103)化(図3(e))が行われる。このように、実際にはウエハ割れを防ぐために、ウエハプロセスの後半で目的の薄い基板厚に仕上げるプロセスとする製法が多く行われている。その結果、投入時のSiウエハ厚さの80%以上のシリコン基板が裏面研削工程の段階で除去される結果となる。研削されたシリコン粉塵には、砥石の成分やドーピングによる不純物元素が混ざっているため再生利用がほとんどできない。
【0003】
また、Siウエハの強度を保持することとウエハを薄肉化することを両立させる技術には、補強リブ方式とWSS方式による技術が知られている。補強リブ方式は、前述の裏面研削の際に裏面の最外周エッジ部分を約3mm程度の幅でリング状に残してその内周側をくりぬくように研削して剛性を保ったまま薄いウエハで製造工程を流す製造方法である(図2)。この図2では、図2(c)、(d)の裏面研削に係わる工程以外は図3と同様の工程となる。
【0004】
一方、WSS方式には仮貼り方式や直接接合方式(固相接合方式)がある。支持基板をウエハ裏面に接着剤で貼り付ける仮貼り方式は、接着後に高温処理が行えないので、当初は厚いウエハを投入し、高温処理工程が終了する後半以降のウエハプロセスで、ウエハ強度の保持のため表面側に支持基板を接着剤で貼り付け、その後ウエハ裏面を研削してSiウエハにするとともに、Siウエハの裏面側に半導体デバイスとして必要な処理を施し、処理後支持基板をSiウエハから剥離する方式である。
【0005】
支持基板を裏面に接着剤なしに接合する直接接合方式は、既存のSiウエハ固相接合技術を利用するものである。固相接合ならば、支持基板をSiウエハに接合させたままでも、ウエハプロセスの前半に行われる不純物熱拡散工程のような高温処理を支障なく行うこともできる。しかし、もともと再度剥離することを前提にした技術ではないので、固相接合されたSiウエハから支持基板を容易に剥離する方法が実用化されていないことに問題がある。
【0006】
これらの補強リブ方式やWSS方式によっても、Siウエハの強度が保たれるので、搬送時のウエハ割れリスクの低減や反りの低減などを実現することができる。これ以降の説明では、WSS方式またはWSSウエハと言えば、固相接合によりウエハに支持基板が直接接合された方式または固相接合ウエハを言うこととする。
【0007】
また、別途ステルスダイシングというウエハをチップへ分割する技術が知られている。このステルスとは、隠れたとか、見えないという意味である。この分割技術によれば、シリコンに透過性のある赤外波長レーザー光の焦点をSiウエハの内部に合わせるとともに、このレーザー照射をウエハ内のチップの切断領域に沿って格子状に走査させることにより、ウエハ表面にダメージを与えずに内部のみにレーザーによる破断層を形成することができる。この破断層には内部応力とこの内部応力に伴ってウエハ表面方向に走る亀裂が形成される。続いてテープエキスパンドなど外部応力を加えることにより、このウエハ表面方向に走る亀裂を成長させてウエハを矩形状チップに分割することができる。このステルスダイシング技術では、既存のブレードダイシングなどで発生しやすいエッジ面のチッピングが裏面、表面側エッジともにほとんど見られず、さらに表面吸収型レーザー加工や切削加工と異なり粉塵などの飛散もないという特長もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−103424号公報
【特許文献2】特開2012−79836号公報
【特許文献3】特開2010−79871号公報
【特許文献4】特開2006−43713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ウエハプロセスにSiウエハを流す場合、6インチ径でウエハ厚300μm程度以上、8インチ径でウエハ厚400μm程度以上がウエハ割れなどの問題を実質的に発生させずに処理できるウエハ厚の下限と言われている。しかしながら、このウエハ厚の下限より薄いウエハをそのままウエハプロセスに投入する場合、Siウエハは反りが大きくなるので、特に露光時にTTV(Total Thickness Vaiation:平坦度)が悪く良好な解像度を得ることが難しい。また、不純物熱拡散などの高温処理では、ウエハの変形から結晶欠陥が発生し易くなる。また、6インチ径でウエハ厚300μm、8インチ径でウエハ厚400μmのように前述の処理可能範囲の下限のウエハ厚さでも、例えば、さらに仕上げウエハ厚100μmに薄くするために研削する場合、元のウエハ厚の2/3、3/4が研削により無駄に除去されることになる。言い換えれば、ウエハプロセスへの投入当初から仕上げ厚さのウエハまたはそれに近い厚さのウエハを用いると、材料の節約と研削工程の簡素化が実現でき、コスト的にも改善されることは明白である。また、補強リブ方式ウエハの場合でも、ウエハ裏面を外周部以外の中央部をくり抜くので、研削により除去される割合は前述の場合とあまり変わらない。
【0010】
本発明は、以上説明した点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ウエハプロセス投入時よりSiウエハを実質的にウエハ割れなく使うことができ、Siウエハと支持基板との剥離が容易で、ウエハコストを低減することができる固相接合ウエハの支持基板の剥離方法および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記本発明の目的を達成するために、本発明では、Siウエハと当該Siウエハの裏面に固相接合された支持基板とを含む固相接合ウエハから前記支持基板を剥離する方法であって、前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面に集光点を合わせて、Siウエハに透過性の波長光を用いたレーザー光を照射して、前記固相接合界面の外周部の少なくとも一部に破断層を形成する破断層形成工程と、前記破断層を剥離する破断層剥離工程と、前記固相接合界面を剥離する接合界面剥離工程とを少なくとも含む支持基板を剥離する方法とする。
【0012】
また、本発明は、前記本発明の目的を達成するために、半導体装置の製造方法であって、Siウエハの裏面に支持基板を固相接合する固相接合工程と、前記Siウエハの表面に機能構造を形成する機能構造形成工程と、前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面に集光点を合わせて、Siウエハに透過性の波長光を用いたレーザー光を照射して、前記固相接合界面の外周部の少なくとも一部に破断層を形成する破断層形成工程と、前記破断層を剥離する破断層剥離工程と、前記固相接合界面を剥離する接合界面剥離工程と、接合界面剥離工程後のSiウエハの裏面に裏面処理をする裏面処理工程とを少なくとも含む半導体装置の製造方法とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウエハプロセス投入時よりSiウエハを実質的にウエハ割れなく使うことができ、Siウエハと支持基板との剥離が容易で、ウエハコストを低減することができる固相接合ウエハの支持基板の剥離方法および半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明にかかる固相接合方式を用いたIGBTのウエハプロセス((a)〜(g))を示す半導体基板(ウエハ)の断面図である。
図2】従来のIGBTのウエハプロセス((a)〜(e))で、裏面研削が補強リブ方式で研削される半導体基板(ウエハ)の断面図である。
図3】従来のIGBTのウエハプロセス((a)〜(e))を示す半導体基板(ウエハ)の断面図である。
図4】本発明にかかる異なる固相接合方式を用いたIGBTのウエハプロセス((a)〜(g))を示す半導体基板(ウエハ)の断面図である。
図5】本発明にかかる固相接合方式を説明するSiウエハの断面図と平面図である。
図6】Siウエハと支持基板との固相接合界面にボイドが存在する固相接合ウエハの断面図および超音波影像写真である。
図7】Siウエハと支持基板との固相接合界面に酸化膜が存在する固相接合ウエハの断面図である。
図8】本発明にかかる破断層剥離工程と接合界面剥離工程の一実施形態を示す断面図である。
図9図8とは異なる本発明にかかる破断層剥離工程と接合界面剥離工程の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、その一態様を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0016】
本発明の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法は、破断層形成工程と、破断層剥離工程と、接合界面剥離工程とを少なくとも含む。破断層形成工程は、Siウエハと支持基板との固相接合界面に集光点を合わせて、Siウエハに透過性の波長光を用いたレーザー光を照射して、固相接合界面の外周部の少なくとも一部に破断層を形成する工程である。破断層は、レーザー光により改質された層であり、支持基板を剥離する際の起点となる層である。
【0017】
レーザーによる切断方法は、半導体Siウエハのダイシング技術として既に知られている(例えば特許文献4)。この切断方法は、Si(シリコン)半導体ウエハ内部にレーザーの焦点を合わせるとともにチップ化切断線に沿って格子状にレーザー照射を走査させる。これにより、ウエハ内部に破断層を有する切断部をチップ化切断線に沿って格子状に形成する。その後、機械的にウエハをダイシングテープごとエキスパンドすることにより分割しチップ化する方法である。従来のようにSiウエハ表面にSi材料に吸収性の高い波長のレーザー光の焦点を合わせるレーザースクライブ方式ではアブレーションが生じ易く、Siの一部が溶融微粒子となって飛び散り、特に切断部エッジ周辺にはSiの溶融微粒子が固まり、Siのデブリが発生するため綺麗な切断面にならない。そのため、Siウエハに透過性の波長光を用いたレーザー光をSiウエハ内部にレーザー光の焦点を合わせることにより、Siウエハ表面にはレーザー光の痕跡を残さずに、照射エネルギーを高めたSiウエハ内部のみに破断層を形成する微粒子のない切断方法が好ましいのである。破断層はSiウエハの単結晶構造が細断された状態にされているので、単結晶体のSiウエハに比して機械的強度が弱くなっており、剥離され易い状態になっている。本発明ではかかるステルスダイシング技術に用いられているレーザー光を用いる。Siウエハと支持基板との固相接合界面に集光点を合わせて、Siウエハに透過性の波長光を用いたレーザー光を照射することにより、固相接合界面の外周部の少なくとも一部に破断層を形成する。破断層は、固相接合界面の外周部全体に形成してもよく、外周部の一部に形成してもよい。
【0018】
具体的には、Siウエハに透過性の波長光を用いたレーザー光をSi支持ウエハ(支持基板)外周(ウエハの側面)方向から固相接合された界面内部に焦点を合わせるように照射し、外周に沿ってある程度以上の長さでリング状にまたはウエハ外周の一部領域に所要の範囲に照射することにより、それぞれ破断層を形成する。形成された破断層は機械的強度が弱いので、その破断層は容易に剥離でき、その剥離を起点にSiウエハの中心部に向かって亀裂が生じる。この亀裂は、バルクよりも結合の弱い固相接合界面に沿って走るので、Siウエハと支持基板とを徐々に引き離すと剥離することができる。
【0019】
破断層剥離工程は、前記破断層形成工程にてレーザー光により改質された破断層を剥離する工程である。Siウエハと支持基板とを別々に固定し、固相接合界面の破断層を破断する方向へ力を加えることにより、破断層が剥離する。Siウエハおよび支持基板の固定方法としては、例えばSiウエハの表面(おもてめん)と支持基板の裏面をそれぞれ真空チャック、静電チャックする方法等が挙げられる。
【0020】
接合界面剥離工程は、固相接合界面を剥離する工程である。破断層剥離工程と同様に固相接合界面を破断する方向へ力を加えることにより、破断層の剥離を起点に固相接合界面に沿って亀裂が生じ、固相接合界面を剥離することができる。破断層剥離工程と同様に、Siウエハと支持基板とを別々に固定して接合界面を剥離する。接合界面剥離工程は、破断層の形成状態に応じて、破断層剥離工程後あるいは破断層剥離工程と同時に行う工程である。
【0021】
本発明の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法は、上記工程の他、Siウエハおもて面を真空チャック、静電チャック等しながら冷却し、支持基板側をランプ、レーザー、ホットプレート等で加熱する事で表面と支持基板の熱膨張差で剥離するといった工程を含んでもよい。
【0022】
本発明の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法では、前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面にボイドが存在することができる。固相接合界面に未接合部分としてボイドのような隙間があることにより、接合界面剥離工程において固相接合界面の剥離が容易となる。ボイドは、支持基板の表面に形成されている凹凸に由来する。支持基板をSiウエハと接合する前に、支持基板の表面にプラズマを部分的に照射すれば、支持基板の表面に凹部ができる。この凹部が固相接合界面のボイドとなり、ボイドはSiウエハと接合しないため、接合界面剥離工程における剥離が容易となる。
【0023】
本発明の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法では、前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面に酸化膜が存在することができる。固相接合界面に未接合部分として酸化膜があることにより、接合界面剥離工程において固相接合界面の剥離が容易となる。酸化膜は、支持基板の表面に形成されている。支持基板をSiウエハと接合する前に、酸化膜はプラズマ等を照射して除去される。プラズマを部分的に照射すれば、支持基板に酸化膜が残る。この酸化膜が固相接合界面の酸化膜となり、酸化膜はSiウエハと接合しないため、接合界面剥離工程における剥離が容易となる。本発明の支持基板を剥離する方法では、上記固相接合界面にボイドと酸化膜が共に存在してもよい。
【0024】
本発明の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法では、前記レーザー光が固相接合ウエハの側面から照射されることが好ましい。Siウエハ表面には、酸化膜、Poly−Si膜、金属膜等から成るデバイスが形成されているため、レーザー光が透過されない、またデバイスの機能を阻害してしまうからである。
【0025】
本発明の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法では、前記レーザー光が固相接合ウエハ面に垂直方向から照射されることも好ましい。斜めから照射した場合、支持基板表面で反射し十分なエネルギーを剥離界面に伝える事ができない場合がある。またレーザー照射装置内外に損傷を与えてしまう可能性がある。Siウエハ表面には、酸化膜、Poly−Si膜、金属膜等から成るデバイスが形成されているため、レーザー光が透過されないからである。
【0026】
本発明の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法では、前記支持基板がSiウエハ、表面にSiO層を有するSiウエハ、SiCウエハから選ばれるいずれかの基板であることが好ましい。これらの基板であれば、Siウエハとの接合性が良好であるからである。
【0027】
本発明の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法では、前記Siウエハの厚さが6インチ径で300μm未満、8インチ径で400μm未満であることが好ましい。これらの厚さであれば、ウエハを薄くするために化学機械的研磨等により過剰に研磨する必要が無いため、ウエハコストを充分に低減することができる。ウエハコスト低減の観点からは、Siウエハの厚さは、6インチ径で100μm〜150μm、8インチ径で100μm〜200μmであることが、より好ましい。
【0028】
次に、本発明の半導体装置の製造方法について説明する。本発明の半導体装置の製造方法は、固相接合工程と、機能構造形成工程と、破断層形成工程と、破断層剥離工程と、接合界面剥離工程と、裏面処理工程とを少なくとも含む。固相接合工程は、Siウエハの裏面に支持基板を固相接合する工程である。固相接合方法としては、例えば水素結合法等によりSiウエハと支持基板を接合する方法が挙げられる。具体的には、Siウエハや支持基板の接合面上の酸化膜層や吸着層を除去して鏡面仕上げをし、水蒸気雰囲気中でSiウエハと支持基板の鏡面を対向させて貼り合せて熱処理(300℃〜700℃)を施して水素結合反応を生じさせる。そして、貼り合わせた基板をさらに結晶塑性温度を超える温度、例えば800℃〜1000℃に加熱すると、Siウエハと支持基板との間の原子が相互に移動して強固に貼り合され、固相接合ウエハとなる。
【0029】
機能構造形成工程は、Siウエハの表面に機能構造を形成する工程である。例えばIGBTデバイスの製造を目的とした場合、IGBTのMOSゲート構造(選択的に形成したp型のベース領域、当該ベース領域内に選択的に形成したn型のエミッタ領域、エミッタ領域とSiウエハ表面との間のベース領域上に設けたゲート絶縁膜とゲート電極等)、エミッタ電極等の表面側に必要とされる機能構造を形成する。
【0030】
破断層形成工程は、Siウエハと支持基板との固相接合界面に集光点を合わせて、Siウエハに透過性の波長光を用いたレーザー光を照射して、固相接合界面の外周部の少なくとも一部に破断層を形成する工程である。破断層は、レーザー光により改質された層であり、支持基板を剥離する際の起点となる層である。
【0031】
破断層剥離工程は、前記破断層形成工程にてレーザー光により改質された破断層を剥離する工程である。Siウエハと支持基板とを別々に固定し、固相接合界面の破断層を破断する方向へ力を加えることにより、破断層が剥離する。Siウエハおよび支持基板の固定方法としては、例えばSiウエハの表面(おもてめん)と支持基板の裏面をそれぞれ真空チャック、静電チャックする方法等が挙げられる。
【0032】
接合界面剥離工程は、固相接合界面を剥離する工程である。破断層剥離工程と同様に固相接合界面を破断する方向へ力を加えることにより、破断層の剥離を起点に固相接合界面に沿って亀裂が生じ、固相接合界面を剥離することができる。破断層剥離工程と同様に、Siウエハと支持基板とを別々に固定して接合界面を剥離する。接合界面剥離工程は、破断層の形成状態に応じて、破断層剥離工程後あるいは破断層剥離工程と同時に行う工程である。
【0033】
裏面処理工程は、接合界面剥離工程後のSiウエハの裏面に裏面処理をする工程である。裏面処理としては、nバッファ層、pコレクタ層、コレクタ電極等の形成である。
【0034】
本発明の半導体装置の製造方法は、上記工程の他、Siウエハを個々のチップに分割するダイシング工程や、Siウエハおもて面のAl電極上にAu/Ni膜を形成するめっき工程、といった工程を含んでもよい。
【0035】
本発明の半導体装置の製造方法では、前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面にボイドが存在することができる。固相接合界面に未接合部分としてボイドのような隙間があることにより、接合界面剥離工程において固相接合界面の剥離が容易となる。
【0036】
本発明の半導体装置の製造方法では、前記Siウエハと前記支持基板との固相接合界面に酸化膜が存在することができる。固相接合界面に未接合部分として酸化膜があることにより、接合界面剥離工程において固相接合界面の剥離が容易となる。本発明の半導体装置の製造方法では、上記固相接合界面にボイドと酸化膜が共に存在してもよい。
【0037】
本発明の半導体装置の製造方法では、前記レーザー光が固相接合ウエハの側面から照射されることが好ましい。Siウエハ表面には、酸化膜、Poly−Si膜、金属膜等から成るデバイスが形成されているため、レーザー光が透過されない、またデバイスの機能を阻害してしまうからである。
【0038】
本発明の半導体装置の製造方法では、前記レーザー光が固相接合ウエハ面に垂直方向から照射されることも好ましい。斜めから照射した場合、支持基板表面で反射し十分なエネルギーを剥離界面に伝える事ができない場合がある。またレーザー照射装置内外に損傷を与えてしまう可能性がある。Siウエハ表面には、酸化膜、Poly−Si膜,金属膜等から成るデバイスが形成されているため、レーザー光が透過されないからである。
【0039】
本発明の半導体装置の製造方法では、前記支持基板がSiウエハ、表面にSiO層を有するSiウエハ、SiCウエハから選ばれるいずれかの基板であることが好ましい。これらの基板であれば、Siウエハとの接合性が良好であるからである。
【0040】
本発明の半導体装置の製造方法では、前記Siウエハの厚さが6インチ径で300μm未満、8インチ径で400μm未満であることが好ましい。これらの厚さであれば、ウエハを薄くするために化学機械的研磨等により過剰に研磨する必要が無いため、ウエハコストを充分に低減することができる。ウエハコスト低減の観点からは、Siウエハの厚さは、6インチ径で100μm〜150μm、8インチ径で100μm〜200μmであることが、より好ましい。
【0041】
以下、本発明の固相接合ウエハから支持基板を剥離する方法およびこの方法を用いた半導体装置の製造方法の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
図1を参照して、本発明の固相接合ウエハの支持基板の剥離方法を用いた半導体装置の製造方法の実施例1について詳細に説明する。図1はすべてウエハの断面図である。8インチ径で厚さ400μm未満のFZ−n型Siウエハ1aに対し、同径の厚さ300μmのCZ−p型Si支持ウエハ2aを支持基板として用意する(図1(a))。ここで、図4(a)に示すように、Siウエハ1bを厚さ100μm、支持ウエハ2bを厚さ700μmとしてもよい。図4ではSiウエハ1bとして、ほぼ仕上げウエハの厚さである100μmの厚さとし、700μmの厚い支持ウエハ2bを固相接合により接合したSi固相接合ウエハ3bを用いるので、図1の方法と異なり、図1(e)の裏面研削工程が不要となるが、その他の工程は同様である。
【0043】
図1の説明に戻り、両Siウエハ1aとSi支持ウエハ2aを、有機系接着剤を用いることなく、直接に周知の水素結合法などにより貼り付ける。具体的には、Siウエハ1a、Si支持ウエハ2aの貼着面となる両主面に鏡面仕上げを施す。清浄な水蒸気雰囲気中で2枚のSiウエハ1aとSi支持ウエハ2aの鏡面を対向させて貼り合せて熱処理(300〜700℃)を施すと、Siウエハ1aとSi支持ウエハ2a表面では、HO分子を介して水素結合反応が生じる。この貼り合わされたSiウエハ1aとSi支持ウエハ2aに対して、結晶塑性温度を超える800〜1000℃に加熱すると、2枚のSiウエハ1aとSi支持ウエハ2a間の原子が相互に移動して強固に貼り合されたSi固相接合ウエハ3aとなる(図1(b))。このSi固相接合ウエハ3aについて、Siウエハ1a側をおもて面、Si支持ウエハ2a側を裏面とする。
【0044】
材料の異なるウエハ間の貼り合せの場合でも、周知の水素結合反応等を利用し、2枚のウエハを相互に密着させた状態で結晶塑性温度以上に加熱し、その後にこれらを冷却することで固相接合ウエハとすることはできるが、固相接合されたウエハには元のウエハの膨張係数差に起因する歪み、反り等が発生し易い。すなわち、Si(シリコン)との熱膨張係数差が大きく異なる半導体ウエハ同士または金属基板を貼り合せる場合には、ウエハ接合の時、特にウエハの冷却工程の時に熱膨張係数差に起因する歪みや反りが発生し、貼り合わせウエハに反りやダメージが生じやすい。従って、できるだけ、Siとの熱膨張係数の差が小さい基板同士を貼り合わせることが好ましい。
【0045】
Si固相接合ウエハ3aのおもて面側に、例えばIGBTデバイスの製造が目的ならば、IGBTのMOSゲート構造(選択的に形成したp型のベース領域、当該ベース領域内に選択的に形成したn型のエミッタ領域、エミッタ領域とSiウエハ1a表面との間のベース領域上に設けたゲート絶縁膜とゲート電極)、エミッタ電極等の表面側に必要とされる機能構造を形成する。このMOSゲート構造などの表面側機能構造の形成にはウエハの高い平坦度を要するホトリソグラフィ工程や1000℃以上の高温処理を必要とする不純物熱拡散工程が含まれる。Si固相接合ウエハ3aの平坦度が高ければ、問題なく表面側のMOSゲート構造を形成することができる(図1(c))。支持基板としてSi支持ウエハを用いれは、Si固相接合ウエハ3aの耐熱温度もSi半導体基板と変わらない。図1(c)の符号4は、前述のIGBTのMOSゲート構造、エミッタ電極等のおもて面側機能構造の断面を示す。
【0046】
表面側機能構造が形成されたSi固相接合ウエハ3aの側面の外方からレーザー光5をウエハ面に平行にSi固相接合ウエハ3aの外周部内部の固相接合界面に焦点を結ぶように照射して破断層を形成する(図1(d))。このレーザー光5の照射はSi固相接合ウエハ3aからSi支持ウエハを剥離するための準備工程である。この準備工程を含めた剥離工程について図5を参照してさらに説明する。図5に示すように、表面側処理を終えたSi固相接合ウエハ3bにレーザー光5の焦点をSi固相接合ウエハ3bの外周端から3mm程度内側の領域にかけて照射することにより、固相接合界面に合わせて破断層6を設ける。破断層6の円周方向の長さは全周(図5(c))でもよいし、全周の全てに必ずしも破断層6を設けなくてもよいが、半円周程度の長さに形成することが好ましい。破断層6を全周に形成するには図5(c)に示すようにレーザー照射をする際にウエハを矢印のように回転させることが好ましい。また、必ずしも、円周方向でなくとも、Si固相接合ウエハ3bの外周端の一部に外周端から中心方向に、例えば10mm程度の内側まで、焦点位置を深くするように走査し照射して破断層6を形成するならば、円周方向の破断層6の長さを20mm程度に短くすることもできる(図5(d))。また、Si固相接合ウエハ3aの外周部の固相接合界面にレーザー光を照射する際に、前述の説明では、ウエハ面に平行にウエハ側方から照射したが、ウエハ面に垂直な方向からの照射により、固相接合界面の外周部に焦点を当てるようにしてもよい。
【0047】
以下に、レーザー照射方法について説明する。光子のエネルギーhvが材料の吸収のバンドギャップEよりも小さいと、材料が光学的に透明となる。よって、材料に吸収が生じる条件は、hv>Eである。しかし、光学的に透明でも、レーザー光の強度を非常に大きくすると、nhv>Eの条件(n=2、3、4・・・)で材料に吸収が生じる。この現象を多光子吸収という。パルス波の場合、レーザー光の強度はレーザー光の集光点のピークパワー密度(W/cm)で決まり、例えばピークパワー密度が1×10(W/cm)以上の条件で多光子吸収が生じる。ピークパワー密度は、(集光点におけるレーザー光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザー光のビームスポット断面積×パルス幅)により求められる。また、連続波の場合、レーザー光の強度はレーザー光の集光点の電界強度(W/cm)で決まる。
【0048】
本発明の破断層形成工程では、多光子吸収が生じる条件で固相接合界面に集光点を合わせてレーザー光を照射して破断層を形成する。本発明では、Siウエハがレーザー光を吸収することによりSiウエハが発熱して破断層が形成されるのではなく、レーザー光はSiウエハを透過して固相接合界面に多光子吸収を発生させて破断層を形成する。レーザー光はSiウエハに吸収されないので、Siウエハの表面が溶融することはない。
【0049】
本発明の破断層形成工程において、レーザー光およびレーザー光の照射条件は、次のとおりとすることができる。
(A)レーザー光
光源:半導体レーザー励起Nd:YAGレーザー
波長:1064nm
レーザー光スポット断面積:3.14×10−8cm
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
パルス幅:30ns
出力:出力<1mJ/パルス
レーザー光品質:TEM00
偏光特性:直線偏光
(B)集光用レンズ
レーザー光波長に対する透過率:60%
(C)Si固相接合ウエハを載置する載置台の移動速度:100mm/秒
【0050】
なお、レーザー光品質がTEM00とは、集光性が高くレーザー光の波長程度のスポット径まで集光可能を意味する。
【0051】
支持基板であるSi支持ウエハ2aをSiウエハ1aから剥離する際は、図1(d)に示すように、Si支持ウエハ2外周の一部を持ち上げ、まず、ウエハ外周部に設けられている破断層6を剥離させて剥離のきっかけを作り、次にウエハ全体を持ち上げるまで徐々に順に引き上げて全体を剥離する方法とする。また、そのウエハの持ちあげを数段に分けてもよい。持ち上げる角度を制限すれば、持ち上げられるSiウエハ1aが薄くなっていても、割れない程度に反り上がる結果、貼り合せたSi固相接合ウエハ3aから支持基板であるSi支持ウエハ2aを剥離することができる。
【0052】
Si支持ウエハ2aを剥離した後、Siウエハの剥離面の破壊層等を除去したり、Siウエハ1aを更に薄くする必要のある場合は、従来のプロセスと同様に剥離面を研削やCMP(Chemical Mechanical Pollishing :化学機械研磨)または、薬品によるエッチング処理をしてウエハ厚を100μmとする(図1(e))。研磨したウエハ面(裏面)に所要の裏面処理を加える。裏面処理としては、nバッファ層(図示せず)、pコレクタ層7、コレクタ電極8などの形成がある(図1(f))。ダイシング工程((図1(g))を経てIGBTチップ9が製造される。
【0053】
図6は、Siウエハと支持基板との固相接合界面にボイドが存在する固相接合ウエハの断面図および超音波影像写真である。8インチ径で厚さ400μm未満のFZ−n型Siウエハ1cに対し、同径の厚さ300μmのCZ−p型Si支持ウエハ2cを支持基板として用意する(図6(a))。ここで、Si支持ウエハ2cは、Siウエハ1cとの貼り合わせ面に部分的にボイド10を有する。ボイド10は、支持ウエハ2cをSiウエハと接合する前に、支持ウエハ2cの表面にプラズマを全面的または、部分的に照射することにより、形成することができる。Siウエハ1cとSi支持ウエハ2cを貼り合わせてSi固相接合ウエハ3cとした場合に、固相接合界面にボイドが存在する(図6(b))。固相接合界面に未接合部分としてボイドのような隙間があることにより、接合界面剥離工程において固相接合界面の剥離が容易となる。図6(c)は、Si固相接合ウエハの超音波影像写真である。Si固相接合ウエハのSiウエハの表面方向から撮った写真であり、接合界面で白い斑点状に分布しているボイドが確認される。
【0054】
図7は、Siウエハと支持基板との固相接合界面に酸化膜が存在する固相接合ウエハの断面図である。8インチ径で厚さ400μm未満のFZ−n型Siウエハ1dに対し、同径の厚さ300μmのCZ−p型Si支持ウエハ2dを支持基板として用意する(図7(a))。ここで、Si支持ウエハ2dは、Siウエハ1dとの貼り合わせ面に部分的に酸化膜11を有する。酸化膜を部分的に有するSi支持ウエハ2dは、表面全体に酸化膜を有する支持ウエハを、Siウエハと接合する前に、支持ウエハの表面にプラズマを部分的に照射して酸化膜を部分的に除去することにより、形成することができる。Siウエハ1dとSi支持ウエハ2dを貼り合わせてSi固相接合ウエハ3dとした場合に、固相接合界面に酸化膜が存在する(図7(b))。固相接合界面に未接合部分として酸化膜があることにより、接合界面剥離工程において固相接合界面の剥離が容易となる。
【0055】
図8は、本発明にかかる破断層剥離工程と接合界面剥離工程の一実施形態を示す断面図である。Siウエハ1cとボイド10を有するSi支持ウエハ2cを貼り合わせ、更におもて面側機能構造4を形成したSi固相接合ウエハ3cを例とする(図8(a))。このSi固相接合ウエハ3cの側面から固相接合界面へレーザー光5を照射し、固相接合界面の全周の全てに破断層6を形成する(図8(a))。次に、おもて面側機能構造4を形成したSiウエハ1cのおもて面を吸着装置12、および吸着装置13で固定する。Si支持ウエハ2cの裏面はウエハ固定ステージ14でバキュームチャックまたは静電チャックすることにより、固定する(図8(b))。
吸着装置12は、吸着装置12の吸着面と吸着装置13の吸着面を面一の状態で同時に可動し、さらに、吸着装置13とは独立して吸着装置12のみでも可動できるように構成されている。
そして、吸着装置13は静止した状態で吸着装置12をSiウエハ1cの端部を持ち上げる方向(図8(c)の矢印の方向)へ持ち上げる。そして、Siウエハ1cとSi支持ウエハ2cの固相接合界面端部(各ウエハの外周端部)の破断層6を剥離し、固相接合界面全体を剥離するきっかけ(剥離部)を作る(図8(c))。
このときの端部を持ち上げる方向は、吸着装置12,13の吸着面に垂直の方向よりややSiウエハの内側に傾斜した方向である。内側への傾斜が大きいと、固相接合界面の端部の剥離のきっかけを作りやすいが、吸着装置12と吸着装置13との境界付近に大きな応力がかかってしまう。したがって、Siウエハ1cが割れない程度(たとえば5°程度)に、傾けてSiウエハ1cの外周を持ち上げるとよい。
その後、吸着装置12の吸着面を吸着装置13の吸着面と面一の状態に戻し、続いて、吸着装置12,13の吸着面を面一に保ったまま、先に吸着装置12によって形成された剥離部から連続して剥離する方向(図8(d)の矢印の方向)に持ち上げる。吸着装置12,13の吸着面を徐々に傾けていき、固相接合界面全体を剥離する(図8(d))。吸着装置12と吸着装置13を段階的に引っ張ることにより、破断層6の剥離を起点にして固相接合界面に沿って亀裂が生じることで、固相接合界面にて剥離することができる。この例では、固相接合界面にはボイド10があり、ボイド10の部分では固相接合がされていないため、剥離が容易である。
ここで、吸着装置12によって吸着するのは、図5(d)のように、ウエハの一部にのみレーザーを照射した場合は、そのレーザーを照射した箇所とするのがよい。
図8に示したように、吸着装置12,13を備えた剥離装置は、固相接合界面にはボイド10のある場合に限らず用いることができる。たとえば、ボイド10を設けずに固相接合し、図5(c)(d)のようにレーザーを照射した半導体基板に対しても適用できる。
【0056】
図9は、図8とは異なる本発明にかかる破断層剥離工程と接合界面剥離工程の一実施形態を示す断面図である。Siウエハ1cとボイド10を有するSi支持ウエハ2cを貼り合わせ、更におもて面側機能構造4を処理したSi固相接合ウエハ3cを例とする(図9(a))。おもて面側機能構造4を処理したSiウエハ1cの表面に、接着剤15でサポート材16を貼り付ける(図9(a))。サポート材16は、Si、SiCおよびガラス等を素材とする。このSi固相接合ウエハ3cの側面または裏面からSi固相接合ウエハ3cへレーザー光5を照射し、固相接合界面の全周の全てに破断層6を形成する(図9(b))。次に、サポート材16の裏面およびSi支持ウエハ2cの裏面を、それぞれウエハ固定ステージ17、14でバキュームチャックまたは静電チャックすることにより、固定する(図9(c))。そして、ウエハ固定ステージ17を吸着面に垂直の方向よりややSiウエハの内側に傾斜した方向(図9(d)の矢印の方向)へ引っ張ることにより端部から持ち上げ、固相接合界面端部と当該端部の破断層6を剥離し、固相接合界面全体を剥離するきっかけを作る(図9(d))。その後、ウエハ固定ステージ17をさらに矢印の方向へ引っ張ることにより持ち上げ、固相接合界面全体を剥離する(図9(d))。ウエハ固定ステージ17を外し、サポート材16は固定した状態で(図9(e))、剥離面は、必要に応じてCMP研磨して表面を平滑化した後、nバッファ層、pコレクタ層、コレクタ電極などを形成する裏面処理を加える。そして、サポート材16を外し、ダイシング工程を経てチップ化される。
図9に示した構成は、固相接合界面にはボイド10のある場合に限らず用いることができる。たとえば、ボイド10を設けずに固相接合し、図5(c)(d)のようにレーザーを照射した半導体基板に対しても適用できる。
【0057】
以上説明した実施例では、支持基板として、Si半導体基板を用いたが、異なる支持基板として、例えば、表面にSiO層を有するSi半導体基板、SiC半導体基板から選ばれるいずれかの基板とすることもできる。
【0058】
以上説明した実施例によれば、ウエハプロセス投入時よりSiウエハを実質的にウエハ割れなく使うことができ、ウエハと支持基板との剥離が容易で、ウエハコストを低減することができる固相接合ウエハの支持基板の剥離方法および半導体装置の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1a、1b、1c、1d Siウエハ
2a、2b、2c、2d Si支持ウエハ、支持基板
3a、3b、3c、3d Si固相接合ウエハ
4 おもて面側機能構造
5 レーザー光
6 破断層
7 Pコレクタ層
8 コレクタ電極
9 IGBTチップ
10 ボイド
11 酸化膜
12 吸着装置
13 吸着装置
14 ウエハ固定ステージ
15 接着剤
16 サポート材
17 ウエハ固定ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9