(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料ガスと酸化剤ガスとにより発電を行う複数の燃料電池セルが配列された燃料電池セルスタックと、前記燃料電池スタックの上方において前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとを燃焼させる燃焼部と、を有する燃料電池モジュールであって、
前記燃料電池モジュールは、被改質ガスを水蒸気改質反応により前記燃料ガスに改質するために必要な水蒸気を、内部で水を蒸発させることで生成する加熱容器を有し、
前記加熱容器は、前記複数の燃料電池セルが配列された前記燃料電池セルスタックの長手方向に延在するとともに、前記燃焼部から排出される排出ガスに曝され、
前記加熱容器は内部に、前記被改質ガスを供給する被改質ガス供給管と、前記水を供給する水供給管と、生成された前記水蒸気と前記燃料ガスとの混合ガスが排出される排出口と、を備え、
前記被改質ガス供給管及び前記水供給管は、前記加熱容器の内部に収容された多数の粒状体により、前記加熱容器の内部の水蒸気分圧の上昇を緩和する緩衝空間に連通するように、前記加熱容器内の同一の側面において接続され、
前記被改質ガス供給管及び前記水供給管は、前記排出口と前記加熱容器の長手方向において一端近傍と他端近傍とに引き離されていることを特徴とする燃料電池モジュール。
前記水供給管及び前記被改質ガス供給管の一方の先端部は、他方の先端部よりも前記加熱容器の中央部寄りに位置するよう配置され、前記双方の先端部の間には少なくとも一つの粒状体が配置されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池モジュール。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の燃料電池装置(特許文献1)においては、蒸発器で生成した水蒸気を改質器へ供給する経路の耐食性が問題となる場合があった。すなわち、高温の水蒸気を金属製の配管で改質器に供給すると、配管の腐食が生じるおそれがあった。
【0008】
一方、特許文献2に記載されたように、水又は水蒸気を被改質ガスと混合すれば、水蒸気のみを配管で改質器に供給する場合に比べ、配管の腐食を軽減することができる。しかしながら、このように対応した場合には、被改質ガスを安定的に蒸発器に供給し続けることが困難となる場合がある。すなわち、蒸発器において、水の突沸等により急激に多量の水蒸気が発生して蒸発器内の水蒸気分圧が急激に上昇し、それにより、被改質ガスが蒸発器に流入できなくなり、必要量の被改質ガスを供給できなくなるという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、水蒸気と被改質ガスとを蒸発器で混合して配管の腐食を防止しながらも、被改質ガスを安定的に蒸発器へ供給することができる燃料電池モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、被改質ガスを水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器で生成した燃料ガスの供給を受けて発電を行う燃料電池とを有する燃料電池モジュールであって、その内部で水を加熱する加熱容器を有し前記改質器で使用する水蒸気を生成する蒸発器と、前記加熱容器内に被改質ガスを供給する被改質ガス供給管と、前記加熱容器内に水を供給する水供給管とを備え、前記被改質ガス供給管及び水供給管は、前記加熱容器内の同一空間であり多数の粒状体が収容された緩衝空間に連通するよう接続されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された本発明においては、水供給管から蒸発器の加熱容器内の緩衝空間に供給された水の突沸等により、水蒸気分圧の急激な上昇が生じても、そこに収容されている粒状体が緩衝材となって被改質ガス供給管への影響が緩和される。従って、加熱容器15c内の水蒸気分圧の上昇によって、被改質ガス供給管から加熱容器内への被改質ガスの供給が阻害される事態を防止し、被改質ガスを安定的に蒸発器へ供給することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記加熱容器の底面で、前記水供給管から水が滴下する範囲に、少なくとも一つの粒状体が配置されている。
【0013】
水供給管から蒸発器の加熱容器の底面に滴下した水が球状になると、その体積に対し表面積が小さいため突沸の原因となったり、蒸発に時間を要することで被改質ガスとの混合がスムースに行えなくなるといった事態が生じる。本発明によれば、水供給管より滴下した水は、粒状体に接触し、その表面を伝って広がることで、表面積が大きくなり蒸発しやすくなるため、突沸が抑制されて被改質ガスをさらに安定的に蒸発器へ供給することができるとともに、水蒸気と被改質ガスとを良好に混合することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記水供給管及び被改質ガス供給管の少なくとも一方の先端部が、網状部材で覆われている。
【0015】
このように構成された本発明においては、緩衝空間に配置された粒状体が、水供給管、被改質ガス供給管に詰まることを網状部材により防止することができる。従って、水又は被改質ガスの緩衝空間への供給をスムースなものとし、水又は水蒸気と被改質ガスとをさらに良好に混合させることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記水供給管及び被改質ガス供給管の一方の先端部は、他方の先端部よりも前記加熱容器の中央部寄りに位置するよう配置され、前記双方の先端部の間には少なくとも一つの粒状体が配置されている。
【0017】
このように構成された本発明においては、水供給管の先端部から供給された水が緩衝空間で蒸発して水蒸気分圧が急激に高まっても、被改質ガス供給管の先端部との間に配置された粒状体により、その影響を確実に緩和し、被改質ガス供給管から緩衝空間内へ安定的に被改質ガスを供給することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の燃料電池モジュールによれば、水蒸気と被改質ガスとを蒸発器で混合して配管の腐食を防止しながらも、被改質ガスを安定的に蒸発器へ供給することができる燃料電池モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による燃料電池モジュールを説明する。
図1は本発明の一実施形態によるカバー部材が外された状態の燃料電池モジュールを示す斜視図であり、
図2は本発明の一実施形態による燃料電池モジュールを
図1のA方向から見た断面図であり、
図3は本発明の一実施形態による燃料電池モジュールを
図1のB方向から見た断面図である。
【0021】
カバー部材(
図1及び
図3には明示せず、
図2にその外形を二点鎖線で示す)は、正面側の側壁と、長手方向の一対の側壁と、背面側の側壁と、天井とによって直方体状に形成される。各側壁の下端部には、フランジ部が形成され、そのフランジ部をベース部材2に当接させることで、カバー部材とベース部材2とによって密閉される空間が形成されている。カバー部材とベース部材2とはボルト(図示せず)によって固定され、そのボルトがカバー部材に設けられた取り付け穴を貫通し、ベース部材2に設けられた取り付け穴2aを貫通することで固定されている。
【0022】
カバー部材とベース部材2とによって形成される内部空間は、仕切り板15によって二つの空間に分離されている。仕切り板15によって分離されている空間の内、燃料電池本体である燃料電池セルスタック90が配置されている空間が発電室16である。仕切り板15によって分離されている空間の内、他方の空間が排出ガス室17(排出ガス室)である。尚、カバー部材の内壁面と仕切り板15とは、直接若しくは何らかの密着用部材(例えば、可撓性のある薄板部材)を介して間接的に密着している。
【0023】
仕切り板15は、ベース部材2に設けられた支持部材15aに戴置され、ベース部材2と所定距離を保って保持されている。支持部材15aは、仕切り板15を長手方向の両端において支持するように一対設けられている。従って、一対の支持部材15a,15a間には隙間15b(流入口)が形成されている。カバー部材の壁面に設けられた排気ガス通路(図示しない)を通った排出ガスは、この隙間15bから排出ガス室17へと導入される。排出ガス室17へと導入された排出ガスは、排気口11(流出口)から外部へと排出される。
【0024】
仕切り板15にはガスタンク3が載置されている。ガスタンク3には、燃料電池本体となる燃料電池セルスタック90が10個並べて配置されており、ガスタンク3から燃料ガスが、それぞれの燃料電池セルスタック90を構成する燃料電池セル4に供給される。
【0025】
より具体的には、ガスタンク3の上面には、燃料電池セルスタック90の下支持板90bとほぼ同じ形状の開口部(図示しない)が設けられており、その開口部に下支持板90bを密接させてガスタンク3と各燃料電池セルスタック90とが接続されている。従って、燃料電池セルスタック90を構成する燃料電池セル4は、その先端部分を上部側に向けてガスタンク3に立設されている。
【0026】
各燃料電池セル4は、管状であり、燃料電池セル4の管内を燃料電池セル4の一方の端部から他方の端部へと流れるガスと、その管外を一方の端部から他方の端部へと流れるガスの作用により作動する。本実施形態では、燃料電池セル4の管内を流れるガスは、水素又は炭化水素燃料等を改質した改質ガス等の燃料ガスであり、燃料電池セル4の管外を流れるガスは、酸素を含む空気等の酸化剤ガス(発電用空気)である。
【0027】
次に、燃料電池セル4を含む燃料電池セルユニット30について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、本発明の一実施形態による燃料電池モジュールの燃料電池セルユニットを示す正面図である。
図4に示すように、燃料電池セルユニット30は、燃料電池セル4によって形成され且つ上下方向に延びる管状構造体であり、円筒形の燃料電池セル4と、燃料電池セル4の一方の端部4aに取り付けられた内側電極端子40と、他方の端部4bに取り付けられた外側電極端子42と、を有している。
【0028】
燃料電池セル4は、円筒形の内側の電極層44と、円筒形の外側の電極層48と、これらの電極層44、48の間に配置された円筒形の電解質層46と、内側の電極層44の内側に構成される貫通流路50とを有している。また、燃料電池セル4の一方の端部4aに、内側の電極層44が電解質層46及び外側の電極層48に対して露出した内側電極露出周面44aと、電解質層46が外側の電極層48に対して露出した電解質露出周面46aとが設けられている。燃料電池セル4の他方の端部4bは、外側の電極層48が露出した外側電極露出周面48aによって構成されている。貫通流路50は、燃料ガス流路として機能する。内側電極露出周面44aは、内側の電極層44と電気的に通じる内側電極外周面でもある。外側電極露出周面48aは、外側の電極層48と電気的に通じる外側電極外周面でもある。
【0029】
内側の電極層44は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体、の少なくとも一種から形成される。電解質層46は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。外側の電極層48は、例えば、Sr、Caから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。この場合、内側の電極層44が燃料極になり、外側の電極層48が空気極になる。内側の電極層44の厚さは、例えば、1mmであり、電解質層46の厚さは、例えば、30μmであり、外側の電極層48の厚さは、例えば、30μmであり、その外径は、例えば、1〜10mmである。
【0030】
内側電極端子40は、内側電極露出周面44aを全周にわたって外側から覆うように配置され且つそれと電気的に接続された本体部分40aと、本体部分40aから燃料電池セル4の長手方向に延びる管状部分40bとを有している。本体部分40a及び管状部分40bは、円筒形であり且つ同心に配置され、管状部分40bの管径は、本体部分40aの管径よりも細くなっている。管状部分40bは、貫通流路50と連通し且つ外部と通じる接続流路40cを有している。本体部分40aと管状部分40bとの間の段部40dは、内側の電極層44の端面44bと当接している。
【0031】
外側電極端子42は、外側電極露出周面48aを全周にわたって外側から覆うように配置され且つそれと電気的に接続された本体部分42aと、本体部分42aから燃料電池セル4の長手方向に延びる管状部分42bとを有している。本体部分42a及び管状部分42bは、円筒形であり且つ同心であり、管状部分42bの管径は、本体部分42aの管径よりも細くなっている。管状部分42bは、貫通流路50と連通し且つ外部と通じる接続流路42cを有している。本体部分42aと管状部分42bとの間の段部42dは、環状の絶縁部材52を介して外側の電極層48、電解質層46及び内側の電極層44の端面44cと当接している。
【0032】
内側電極端子40の全体形状と外側電極端子42の全体形状とは同一である。また、内側電極端子40と燃料電池セル4、及び、外側電極端子42と燃料電池セル4とは、その全周にわたって導電性のシール材54によってシールされ且つ固定されている。シール材54は、例えば、銀、銀とガラスの混合物、金、ニッケル、銅、チタンなどを含む各種ロウ材である。
【0033】
内側電極端子40の接続流路40c、燃料電池セル4の貫通流路50、及び外側電極端子42の接続流路42cは、燃料電池セルユニット30の管内流路30cを構成する。
【0034】
続いて、燃料電池セルユニット30を含む燃料電池セルスタック90について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、本発明の一実施形態による燃料電池モジュールの燃料電池セルスタックを示す斜視図である。燃料電池セルスタック90は、16本の燃料電池セルユニット30と、上支持板90aと、下支持板90bと、接続部材90cと、外部端子90dとを備えている。
【0035】
上支持板90a及び下支持板90bは矩形であり、それぞれ、燃料電池セルユニット30を2列×8行で支持するように燃料電池セルユニット30の管状部分40b、42bに嵌合する貫通孔(図に明示しない)を有している。上支持板90a及び下支持板90bは、電気絶縁性材料で形成されており、例えば、耐熱性のセラミックスで形成されている。具体的には、アルミナ、ジルコニア、スピネル、フォルステライト、マグネシア、チタニアなどを用いることが好ましい。
【0036】
16本の燃料電池セルユニット30は、それらが電気的に直列に接続されるように配列されている。詳細には、燃料電池セルユニット30は、隣接した燃料電池セルユニット30の内側電極端子40が交互に上側及び下側に配置されるように配列されている。更に、16本の燃料電池セルユニット30を電気的に直列に接続するための接続部材90cが設けられている。接続部材90cは、隣接した1つの内側電極端子40と1つの外側電極端子42とを電気的に接続する。直列に接続された16本の燃料電池セルユニット30の両端部の内側電極端子40及び外側電極端子42にはそれぞれ、外部と電気的な接続を行うための外部端子90dが設けられている。接続部材90c、外部端子90dは、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金、クロム基合金などの耐熱金属や、ランタンクロマイトなどのセラミック材料で形成される。各燃料電池セルスタック90の外部端子90dは電気的に直列に接続されていて、その両端には電極棒13,14に接続されている。
【0037】
図4及び
図5を参照しながら説明したように、燃料電池セルスタック90において、燃料電池セルユニット30の内側電極端子40が設けられている端部4aと外側電極端子42が設けられている端部4bとは上下交互になるように配置されている。
【0038】
ここで、
図1〜3に戻り、説明を続ける。更に、引き続く説明においては、
図6乃至
図8も参照する。
図6は本発明の一実施形態による燃料電池モジュールの蒸発器を示す斜視図であり、
図7は
図6に示す蒸発器のX−X断面図及びY−Y断面図であり、
図8は
図6に示す蒸発器に用いられる網状部材を示す図である。
図3に示すように、本実施形態では、燃料電池セルスタック90の上方に位置するように、改質器5が配置されている。改質器5には、配管6C(管路)と配管6Dとが繋がれていて、これらの配管6C及び配管6Dによって、改質器5は燃料電池セルスタック90と所定間隔をおいて上方に位置するように保持されている。配管6Cは、改質器5に被改質ガスとしての都市ガス及び水蒸気を供給するための配管であって、仕切り板15に対して立設されている。配管6Dは、改質器5において改質された燃料ガスをガスタンク3に供給するための配管であって、ガスタンク3に対して立設されている。
【0039】
蒸発器19は内部に空間を有する直方体形状の加熱容器15cを有し、その側面15c1に被改質ガス供給管6A及び水供給管6Bが接続され、それぞれの管路は加熱容器15cの内部に連通している。
図7に詳細に示すように、被改質ガス供給管6Aは、その先端部6A1が加熱容器15cの内面と略面一となる位置で側面15cに接続されている一方、水供給管6Bは、その先端部6B1が加熱容器15cのさらに中央部寄りに位置するよう挿入して接続されている。これにより、被改質ガス供給管6Aからは被改質ガスである都市ガスが、水供給管6Bからは水が、加熱容器15c内の同一空間に供給される。
【0040】
詳細には、被改質ガス供給管6A及び水供給管6Bは、いずれも、粒状体であるセラミックボールCBが多数収容された加熱容器15c内の緩衝空間BSに連通している。特に、水供給管6Bの先端部6B1から加熱容器15cの底面15c2に矢印W1、W2のように水が滴下し得る範囲Sには、少なくとも一つのセラミックボール(CB1、CB2等)を配置している。また、上述したように、水供給管6Bの先端部6B1は、被改質ガス供給管6Aの先端部6A1よりも加熱容器15cの中央部寄りに位置しているが、両者の間にも少なくとも一つのセラミックボール(CB3、CB4等)を配置している。本実施形態では、セラミックボールCBは球状を成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の形状をとりうる。
【0041】
ここで、本実施形態においては、加熱容器15c内は仕切られておらず、一つの空間のみが形成されているが、上流側/下流側、または上方/下方などで適宜仕切りを設けて分割してもかまわない。但し、その場合にも、被改質ガス供給管6A及び水供給管6Bは、内部にセラミックボールCBが配置された同一空間に連通するよう接続する必要がある。
【0042】
被改質ガス供給管6Aの先端部6A1は、緩衝空間BSから網状部材20によって覆われている。
図8に詳細に示すように、網状部材20は、円環状の枠体20aと、枠体20a内で線材を交差させることで形成された網20bと、線材の間に形成される通気孔20cから成り、ステンレス等の耐熱性の高い金属で形成されている。この網状部材で被改質ガス供給管6Aの先端部6A1を覆うことにより、通気孔20cを介して緩衝空間BSへの都市ガスの供給を可能としながらも、緩衝空間BSのセラミックボールCBが被改質ガス供給管6A内へ侵入することによる目詰まりを防止することができる。
【0043】
図2及び
図3に示すように、蒸発器15cは排出ガス室17内に配置されているため、後述する燃焼部18から排出される排出ガスに曝されて高温となる。従って、水供給管6Bによって加熱容器15c内の緩衝空間BSに供給された水も加熱され、蒸発して水蒸気となる。この水蒸気は、被改質ガス供給管6Aから緩衝空間BSに供給される都市ガスと混合され、この混合ガスは加熱容器内15cで加熱されたあと、加熱容器15cの上面に接続された配管6Cを通して改質器5に供給される。このとき、水蒸気と都市ガスはセラミックボールCBの間隙を流れることで撹拌されて一層混合されるとともに、熱伝導性の高いセラミックボールの表面から受熱し、効率良く加熱される。水蒸気を都市ガスと混合することで、配管6C内の腐食を軽減することができる。
【0044】
各図面には明示しないが、本実施形態では、被改質ガス供給管6Aと水供給管6Bとのそれぞれに電磁弁が取り付けられていて、それぞれの電磁弁は制御部としてのCPUから出力される指示信号に応じて開閉し、改質器5に供給する被改質ガスと空気と水蒸気の比率を変更可能なように構成されている。
【0045】
改質器5に導入された被改質ガスとしての都市ガスは、改質器5内に収められている改質触媒によって改質される。改質された燃料ガスは、配管6Dを通ってガスタンク3へと供給される。改質器5に対して配管6Cが繋がっている部分と、改質器5に対して配管6Dが繋がっている部分とは、長手方向において一端近傍と他端近傍とに引き離されている。これによって、改質器5に供給された燃料ガス及び空気は改質触媒に十分に触れることが可能となる。
【0046】
改質器5には、改質触媒が封入されている。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したもの、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したもの、が適宜用いられる。これらの改質触媒は球体である。
【0047】
本実施形態では、改質器5及び各燃料電池セルスタック90を覆うように、流路部材7が設けられている。流路部材7は、空気流路外壁71,72と、空気分配室73と、空気集約室74,75と、空気流路管76a,76b,77a,77bと、外壁78,79を有している。流路部材7は、長手方向に空気流路外壁71,72が、短手方向に外壁78,79が、それぞれ配置され、それらの部材によって箱状となるように形成されている。流路部材7は、改質器5及び各燃料電池セルスタック90を覆うように、仕切り板15に立設されている。続く説明では、流路部材7の仕切り板15に当接する側を下方とし、その下方と反対側を上方として説明する。
【0048】
空気分配室73は、外壁79の外側上方に取り付けられている。すなわち、空気分配室73は、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の外側且つ短手側の上方に取り付けられている。空気分配室73には、空気供給管7Aが繋がれており、酸化剤ガスとしての空気が供給される。空気分配室73には、空気流路管76a,76b,77a,77bも繋がれている。
【0049】
空気流路管76a,76bは、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の内側且つ長手側の上方に、空気流路外壁71に沿うように配置されている。空気流路管76aは、空気流路外壁71側に、空気流路管76bは、空気流路管76aよりも内側に、それぞれ配置されている。空気流路管76a,76bの一端は外壁79を貫通して空気分配室73に繋がれており、他端は空気集約室74に繋がれている。従って、空気分配室73に流入した空気は、空気流路管76a,76bを通り、空気集約室74へと流れ込んで再合流する。
【0050】
空気流路管77a,77bは、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の内側且つ長手側の上方に、空気流路外壁72に沿うように配置されている。空気流路管77aは、空気流路外壁72側に、空気流路管77bは、空気流路管77aよりも内側に、それぞれ配置されている。空気流路管77a,77bの一端は外壁79を貫通して空気分配室73に繋がれており、他端は空気集約室75に繋がれている。従って、空気分配室73に流入した空気は、空気流路管77a,77bを通り、空気集約室75へと流れ込んで再合流する。
【0051】
空気集約室74,75は、外壁78の内側上方に取り付けられている。すなわち、空気集約室74,75は、空気流路外壁71,72と外壁78,79とによって形成される箱状体の内側且つ短手側の上方に取り付けられている。空気集約室74は空気流路外壁71と密着するように配置されており、空気集約室74に流れ込んだ空気は空気流路外壁71へと流れ出すように構成されている。一方、空気集約室75は空気流路外壁72と密着するように配置されており、空気集約室75に流れ込んだ空気は空気流路外壁72へと流れ出すように構成されている。
【0052】
空気流路外壁71,72は、それぞれが二重壁構造となっていて、それぞれの内部を空気が流れることができるように構成されている。より具体的には、空気流路外壁71は、上方から三室に分割された構造となっており、上方から順に、第一室91、第二室92、第三室93として形成されている。空気集約室74から流れ込んだ空気は、第一室91に流れ込んだ後、第二室92に流れ込み、その後第三室93に流れ込む。同様に、空気流路外壁72も、上方から三室に分割された構造となっており、上方から順に、第一室94、第二室95、第三室96として形成されている。空気集約室75から流れ込んだ空気は、第一室94に流れ込んだ後、第二室95に流れ込み、その後第三室96に流れ込む。
【0053】
第三室93,96にはそれぞれ、所定間隔をおいて複数の空気流入孔93a,96aが形成されている。空気流入孔93a,96aは、燃料電池セルスタック90が連設されている方向に、各燃料電池セル4間の間隙に向かう位置であって、燃料電池セル4に対する上下方向の位置が略同一となるように、複数個形成されている。
【0054】
空気流路外壁71,72に流れ込んだ空気は、空気流入孔93a,96aを通って発電室16内の燃料電池セル4近傍へと流れ込むように構成されている。空気流入孔93a,96aを通って流れ込んだ空気(発電用空気)は、燃料電池セル4の外側を通って各燃料電池セル4の下方から上方へと流れる。各燃料電池セル4の上方に至った空気(発電用空気)は、各燃料電池セル4の管内流路を通った燃料ガスと合わせて燃焼される。
【0055】
各燃料電池セルスタック90の上方は、空気(発電用空気)と燃料ガスとが混合して燃焼する燃焼部18となっている。燃料ガスは、ガスタンク3から、燃料電池セルユニット30の管内流路30cを通り、燃焼部18に向けて上昇する。また、燃料電池セル4の外側を流れる空気も、燃焼部18に向けて上昇する。空気流路外壁72の燃焼部18に対応する部分には点火装置挿入穴97が設けられ、燃焼ガスと空気との燃焼を開始させるための点火装置(図示しない)が点火装置挿入穴97から燃焼部18に突出されている。この点火装置により燃料ガスと空気とが混合して燃焼する。燃料電池セルスタック90を構成する燃料電池セル4は、燃焼部18によって上方から加熱される。また、空気流入孔93a,96aを通って流れ込む空気も、上述したように空気流路管76a,76b,77a,77b、空気流路外壁71,72を通る間に、燃焼部18における燃焼によって加熱される。
【0056】
本実施形態による燃料電池モジュール102においては、被改質ガス供給管6A及び水供給管6Bは、加熱容器15c内の同一空間であり多数のセラミックボールCBが収容された緩衝空間BSに連通するよう接続されているため、水供給管6Bから蒸発器19の加熱容器15c内の緩衝空間BSに供給された水の突沸等により、水蒸気分圧の急激な上昇が生じても、そこに収容されているセラミックボールCBが緩衝材となって被改質ガス供給管6Aへの影響が緩和される。従って、加熱容器15c内の水蒸気分圧の上昇によって、被改質ガス供給管6Aから加熱容器15c内への都市ガスの供給が阻害される事態を防止し、都市ガスを安定的に蒸発器19へ供給することができる。
【0057】
また、加熱容器15cの底面15c2で、水供給管6Bから水が滴下する範囲Sに、少なくとも一つのセラミックボール(CB1、CB2等)が配置されている。水供給管6Bから蒸発器19の加熱容器15cの底面15c2に滴下した水が球状になると、その体積に対し表面積が小さいため突沸の原因となったり、蒸発に時間を要することで都市ガスとの混合がスムースに行えなくなるといった事態が生じる。本実施形態によれば、水供給管6Bより滴下した水は、範囲Sに配置されたセラミックボール(CB1、CB2等)に接触して、その表面を伝って広がることで、表面積が大きくなり蒸発しやすくなるため、突沸が抑制されて都市ガスをさらに安定的に蒸発器へ供給することができるとともに、水蒸気と被改質ガスとを良好に混合することができる。
【0058】
水供給管6Bの先端部6B1は、被改質ガス供給管6Aの先端部6A1よりも加熱容器15cの中央部寄りに位置するよう配置され、双方の先端部の間には少なくとも一つのセラミックボール(CB3、CB4等)を配置したことで、水供給管6Bの先端部6B1から供給された水が緩衝空間BSで蒸発して水蒸気分圧が急激に高まっても、被改質ガス供給管の先端部との間に配置されたセラミックボール(CB3、CB4等)により、その影響を確実に緩和し、被改質ガス供給管6Bから緩衝空間BS内へ安定的に都市ガスを供給することができる。尚、先端部を加熱容器15cの中央部よりに位置させる配管として、上記とは逆に被改質ガス供給管6Aを選択してもよい。