【文献】
PIRALI,T. et al,Triazole-Modified Histone Deacetylase Inhibitors As a Rapid Route to Drug Discovery,Journal of Combinatorial Chemistry,2008年,Vol.10, No.5,p.624-627
【文献】
SHEN,J. et al,Histone Deacetylase Inhibitors through Click Chemistry,Journal of Medicinal Chemistry,2008年,Vol.51, No.23,p.7417-7427
【文献】
CHEN,P.C. et al,Synthesis and structure-activity relationship of histone deacetylase (HDAC) inhibitors with triazole,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2008年,Vol.16, No.9,p.4839-4853
【文献】
太田庸介ら,Click Chemistryを用いたHDAC8阻害剤の創製,メディシナルケミストリーシンポジウム講演要旨集,2009年,p.88-9
【文献】
太田庸介ら,Click Chemistryを用いたHDAC8阻害剤の探索,日本病院薬剤師会東海ブロック学術大会講演要旨集,2009年,p.86
【文献】
SUZUKI,T. et al,An Unexpected Example of Protein-Templated Click Chemistry,Angewandte Chemie, International Edition,2010年,Vol.49, No.38,p.6817-20,Published online;August 16,2010
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Xはフェニル基、p-メトキシベンジル基、ナフチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、チオフェン基、フェニルスルファニル基、フェニルスルフィニル基及びフェニルスルホニル基のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のヒドロキサム酸誘導体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、穏やかな条件下で迅速に反応が進行する、Cu(I)を触媒としたアジドとアルキンとの1,3-双極子付加環化反応(Huisgen反応、別名:クリック反応、下記具体例参照)を利用して、HDAC8阻害活性を有する化合物の探索を網羅的に行った。このクリック反応は副生成物が生成しないため、精製操作が不要という利点もある。
【0020】
クリック反応を用いた分子設計は、次の方針に基づいて行った。
すなわち、クリック反応の一方の基質となるアルキン化合物は、HDAC8の結晶構造解析をもとに、酵素活性の中心となる亜鉛に配位可能なヒドロキサム酸構造を有するアルキン化合物から選んだ。
また、クリック反応の他方の基質となるアジド化合物は、HDAC8のサブポケットに収まるであろうアジド化合物から選んだ。
具体的には、下記構造式で示される複数のアルキン化合物のうちの一種と、複数のアジド化合物のうちの一種とをクリック反応によって環化させ、様々なヒドロキサム酸誘導体を合成し、HDAC8に対する阻害活性を調べた。
【0022】
<アルキン化合物の合成>
上記(化4)に示すアルキン化合物(A−1)及びアルキン化合物(A−2)の合成は、下記(化5)の合成ルートに従って行った。以下に詳細を述べる。
【0024】
プロピオール酸ヒドロキサミド(A−1)の合成
工程1:プロピオール酸 (2-テトラヒドロピラニルオキシ) アミド(102)の合成
プロピオール酸(101)(300 mg) をジクロロメタン (6 mL) に溶解し、NH
2OTHP (552 mg) を加えた。氷冷下、反応液にジクロロメタン (9 mL) に溶解させたDCC (972 mg) を滴下し、氷冷下30分間撹拌し、さらに室温で3時間撹拌した。氷浴で反応液を冷却し、ろ過した後、ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=3:2) で精製し、化合物(102)(416 mg, 収率57%) を淡黄色オイルとして得た。得られたプロピオール酸 (2-テトラヒドロピラニルオキシ) アミド(102)の
1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.76 (1H, s), 5.01 (1H, s), 3.96 (1H, t, J = 10.2 Hz), 3.69-3.65 (1H, m), 2.89 (1H, s), 1.94-1.78 (3H, m), 1.71-1.61 (3H, m)
【0025】
工程2:プロピオール酸ヒドロキサミド(A−1)の合成
上記のようにして得られたプロピオール酸 (2-テトラヒドロピラニルオキシ) アミド(102)(416 mg)と、トシル酸一水和物 (46.8 mg)とをメタノール (20 mL) に溶解し、室温で30時間撹拌した。反応液を減圧下で濃縮後、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1) で精製し、粗結晶 (147 mg, 収率70%) を得た。粗結晶をMeOHから再結晶しプロピオール酸ヒドロキサミド(A−1)(70 mg, 収率33%)を白色個体としてを得た。このものの融点データ、
1H-NMRデータ、
13C-NMRデータ及びHRMS (EI)データを以下に示す。
融点:68.9-70.9 ℃
1H-NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 11.2 (1H, br), 9.28 (1H, s), 4.18 (1H, s)
13C-NMR (DMSO- d
6, 600 MHz, δ; ppm) 149.15, 77.32, 76.03
HRMS (EI) Calcd. for C
3H
3O
2N 85.016, Found 85.015.
【0026】
プロピオール酸 (2-アミノフェニル)アミド(A−2)の合成
上記化合物(A−1)の合成と同様の方法により、化合物(A−2)を合成した。すなわち、NH
2OTHPの代わりにo-フェニレンジアミン (509 mg) を用いて化合物(A−2)(26.4 mg, 収率3.8%) を白色固体として得た。得られた化合物(A−2)の融点データ、
1H-NMRデータ、
13C-NMRデータ及びMS (EI)データを以下に示す。
融点:127-128 °C
1H-NMR (DMSO- d
6, 500 MHz, δ; ppm) 9.97 (1H, s), 7.15 (1H, d, J = 7.9 Hz), 6.93 (1H, t, J = 7.6 Hz), 6.73 (1H, d, J = 7.9 Hz), 6.55 (1H, t, J = 7.6 Hz), 4.91 (2H, s), 4.32 (1H, s)
13C-NMR (DMSO- d
6, 500 MHz, δ; ppm) 149.94, 141.94, 126.59, 125.52, 121.65, 116.01, 115.96, 78.43, 76.61
MS (EI) m/z 160 (M
+); Anal. Calcd. for C
9H
8N
2O: C, 67.49; H, 5.03; N, 17.49. Found: C, 67.80; H, 5.09; N, 17.11
【0027】
アルキン化合物(A−mP−1)及びアルキン化合物(A−mP−2)の合成
アルキン化合物(A−mP−1)及びアルキン化合物(A−mP−2)は、下記化6の合成ルートに従って合成した。以下に詳細を述べる。
【0029】
3-エチニル-N-ヒドロキシベンズアミド(A−mP−1)の合成
工程1:3-ヨード安息香酸メチルエステル (104) の合成
3-ヨード安息香酸 (103) (3.00 g) をメタノール (60 mL) に溶解し、濃硫酸 (2 mL) を加え、21時間還流した。反応液を濃縮し、残渣を酢酸エチル (100 mL) に溶解させ、有機層を水 (100 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、3-ヨード安息香酸メチルエステル (104) (3.04 g, 収率96%) を淡黄色固体として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.38 (1H, t, J = 1.5 Hz), 8.00 (1H, dt, J = 1.5, 7.9 Hz), 7.88 (1H, m), 7.19 (1H, t, J = 7.9 Hz), 3.92 (3H, s).
【0030】
工程2:3-[(トリメチルシリル) エチニル] 安息香酸メチルエステル (105) の合成
工程1で得られた3-ヨード安息香酸メチルエステル (104) (3.04 g) をTHF (24 mL) に溶解し、PdCl2(PPh3)2 (244 mg)、CuI (133 mg)、トリエチルアミン (6 mL)、トリメチルシリルアセチレン (1.37 g) を加え、アルゴン雰囲気下、室温で26時間撹拌した。反応液をろ過し、ろ液を濃縮後、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=50:1) で精製し、表題化合物 (2.42 g, 収率90%) を白色固体として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.14 (1H, t, J = 1.5 Hz), 7.98 (1H, dt, J = 1.2, 7.9 Hz), 7.63 (1H, dt, J = 1.4, 7.6 Hz), 7.38 (1H, t, J = 7.8 Hz), 3.92 (3H, s), 0.259 (9H, s)
【0031】
工程3:3-エチニル安息香酸 (106) の合成
工程2で得られた3-[(トリメチルシリル) エチニル] 安息香酸メチルエステル (105) (2.42 g) をメタノール (30 mL) に溶解し、氷冷下2N水酸化ナトリウム水溶液 (10.4 mL) を加え、7時間室温で撹拌した。反応液を2N 塩酸で酸性 (pH 3~4) とし、減圧下で濃縮した。残渣に水 (100 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を飽和食塩水 (100 mL) で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、3-エチニル安息香酸 (106) (1.50 g, 収率99%) を白色固体として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.24 (1H, t, J = 1.5 Hz), 8.09 (1H, dt, J = 1.5, 7.9 Hz), 7.73 (1H, dt, J = 1.4, 7.6 Hz), 7.46 (1H, t, J = 7.8 Hz), 3.15 (1H, s)
【0032】
工程4:3-エチニル-N-(2-テトラヒドロピラニルオキシ) ベンズアミド (107) の合成
工程3で得られた3-エチニル安息香酸 (106) (669 mg)、EDCI (1.49 g)、 HOBt・H
2O (1.19 g)、 NH2OTHP (1.07 g)をDMF (10 mL) に溶解し、室温で31時間撹拌した。反応液に水 (100 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=1:1) で精製し、3-エチニル-N-(2-テトラヒドロピラニルオキシ) ベンズアミド (107)(1.04 g, 収率93%) を白色固体として得た。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.78 (1H, s), 7.85 (1H, s), 7.75 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.63 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.41 (1H, t, J = 7.9 Hz), 5.08 (1H, t, J = 3.0 Hz), 4.02-3.98 (1H, m), 3.69-3.65 (1H, m), 3.14 (1H, s), 1.93-1.84 (3H, m), 1.68-1.60 (3H, m).
【0033】
工程5:3-エチニル-N-ヒドロキシベンズアミド(A−mP−1)の合成
工程4で得られた3-エチニル-N-(2-テトラヒドロピラニルオキシ) ベンズアミド (107) (1.04 g)とトシル酸一水和物 (80.7 mg)とをメタノール (30 mL) に溶解し、室温で20時間撹拌した。反応液を減圧下で濃縮後、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=1:1) で精製し、表題化合物 (585 mg, 収率86%) の粗結晶を得た。粗結晶をMeOHから再結晶し、3-エチニル-N-ヒドロキシベンズアミド(A−mP−1)(304 mg, 収率45%)を白色固体として得た。
融点:165-166 ℃
1H-NMR (DMSO-d6, 500 MHz, δ; ppm) 11.3 (1H, br), 9.14 (1H, br), 7.82 (1H, s), 7.78 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.62 (1H, d, J = 7.6Hz), 7.49 (1H, t, J = 7.8 Hz), 4.28 (1H, s)
13C-NMR (DMSO-d6, 600 MHz, δ; ppm) 163.07, 134.07, 133.08, 129.81, 128.89, 127.35, 121.75, 82.65, 81.40
MS (EI) m/z 161 (M
+); Anal. Calcd. for C
9H
7NO
2 : C, 67.07; H, 4.38; N, 8.69, Found: C, 66.89; H, 4.47; N, 8.71
【0034】
N-(2-アミノフェニル) 3-エチニルベンズアミド(A−mP−2)の合成
工程 1:N-(2-アミノフェニル)3-エチニルベンズアミド(A−mP−2)の合成
前述した3-エチニル-N-ヒドロキシベンズアミド(A−mP−1)の合成における工程3で得られた3-エチニル安息香酸 (106) (526 mg)とEDCI (1.52 g)と HOBt・H
2O (1.21 g)と o-フェニレンジアミン (3.89 g)と をDMF (10 mL) に溶解し、室温で32時間撹拌した。反応液に水 (100 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=1:1) で精製し、粗結晶 (770 mg, 収率91%) を得た。粗結晶をMeOH-CH
2Cl
2から再結晶し、N-(2-アミノフェニル) 3-エチニルベンズアミド(A−mP−2)(516 mg, 収率61%)を白色個体として得た。
融点:194-195 ℃
1H-NMR (DMSO-d6, 500 MHz, δ; ppm) 9.73 (1H, br), 8.09 (1H, br), 7.99 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.67 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.53 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.15 (1H, d, J = 7.9 Hz), 6.97 (1H, m), 6.78 (1H, dd, J =1.2, 7.9 Hz), 6.59 (1H, t, J = 7.3 Hz), 4.93 (2H, br), 4.30 (1H, s)
13C-NMR (DMSO-d6, 600 MHz, δ; ppm) 164.47, 143.28, 135.09, 134.35, 130.88, 128.85, 128.38, 126.86, 126.69, 122.96, 121.76, 116.20, 116.06, 82.92, 81.43
MS (EI) m/z 236 (M
+); Anal. Calcd. for C
15H
12N
2O・1/3H2O : C, 74.36; H, 5.27; N, 11.56, Found: C, 74.67; H, 5.21; N, 11.68.
【0035】
化合物(A−pP−1)及び(A−pP−2)の合成は、下記化7の合成ルートに従って合成した。以下に詳細を述べる。
【0037】
4-エチニル-N-ヒドロキシベンズアミド(A−pP−1)の合成
工程1:4-ヨード安息香酸メチルエステル(109)の合成
3-ヨード安息香酸メチルエステル (104)の合成と同様の合成方法により、4-ヨード安息香酸 (3.00 g)を用いて、4-ヨード安息香酸メチルエステル(109)(3.14 g、収率99 %)を白色固体として得た。得られた化合物(109)の
1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.81 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.75 (2H, d, J = 8.8 Hz), 3.91 (3H, s)
【0038】
工程2:4-[(トリメチルシリル) エチニル] 安息香酸メチルエステル(110)の合成
上記工程1で得られた化合物(109) (2.03 g) をTHF (16 mL) に溶解し、PdCl
2(PPh
3)
2 (267 mg)、CuI (145 mg)、トリエチルアミン (4 mL)、トリメチルシリルアセチレン (1.49 g) を加え、アルゴン雰囲気下、80℃で18時間撹拌した。反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1) で精製し、化合物(110)(1.89 g, 収率64%) を黄色固体として得た。得られた化合物(110)の
1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.97 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.52 (2H, d, J = 8.5 Hz), 3.92 (3H, s), 0.261 (9H, S).
【0039】
工程3:4-エチニル安息香酸(111)の合成
上記化合物(105)の合成と同様の操作により化合物(109)(1.89 g)を処理して、化合物(110)(1.10 g, 収率92%) を茶色固体として得た。得られた化合物(110)の
1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.07 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.59 (2H, d, J = 8.5 Hz), 3.27 (1H, s)
【0040】
工程4:4-エチニル-N-(2-テトラヒドロピラニルオキシ) ベンズアミド(112)の合成
前述した3-エチニル-N-(2-テトラヒドロピラニルオキシ) ベンズアミド (107)の合成と同様の方法により、化合物(112)を合成した。すなわち、3-エチニル安息香酸(106)の代わりに、4-エチニル安息香酸(111))(524 mg)を用いて、化合物(112)(759 mg, 収率86%)を茶色固体として得た。得られた化合物(112)の
1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.78 (1H, br), 7.72 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.55 (2H, d, J = 8.2 Hz), 5.08 (1H, s), 4.02-3.98 (1H, m), 3.68-3.65 (1H, m), 3.21 (1H, s), 1.92-1.84 (3H, m), 1.67-1.59 (3H, m).
【0041】
工程5:4-エチニル-N-ヒドロキシベンズアミド(A−pP−1)の合成
3-エチニル-N-(2-テトラヒドロピラニルオキシ)ベンズアミド(107)の代わりに、4-エチニル-N-(2-テトラヒドロピラニルオキシ) ベンズアミド(112)(759 mg)を用いて、化合物(A−pP−1)(128 mg, 収率26%)を茶色固体として得た。得られた化合物(A−pP−1)の融点データ、
1H-NMRデータ、
13C-NMRデータ及びMS (EI)データを以下に示す。
融点:166-167 ℃
1H-NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 11.3 (1H, br), 9.12 (1H, br), 7.75 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.55 (2H, d, J = 8.2 Hz), 4.37 (1H, s)
13C-NMR (DMSO-d
6, 600 MHz, δ; ppm) 163.23, 132.77, 131.61, 127.04, 124.25, 82.72, 82.66
MS (EI) m/z 161 (M
+); Anal. Calcd. for C
9H
7NO
2・1/10H
2O : C, 66.33; H, 4.45; N, 8.60. Found: C, 66.48; H, 4.72; N, 8.87
【0042】
N-(2-アミノフェニル) 4-エチニルベンズアミド(A−pP−2)の合成
4-エチニル-N-ヒドロキシベンズアミド(A−pP−1)の合成における工程4と同様の合成方法により、化合物(A−pP−2)を合成した。すなわち、3-エチニル安息香酸(106)の代わりに、4-エチニル安息香酸(111)(402 mg)を用いて、化合物(A−pP−2)(245 mg, 収率38%)を茶色固体として得た。得られた化合物(A−pP−2)の融点データ、
1H-NMRデータ、
13C-NMRデータ及びMS (EI)データを以下に示す。
融点:181-183 ℃
1H-NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 9.73 (1H, br), 7.99 (2H, d, J = 7.9 Hz), 7.61 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.15 (1H, d, J = 7.3 Hz), 6.99-6.96 (1H, m), 6.78-6.77 (1H, m), 6.61-6.58 (1H, m), 4.92 (2H, s), 4.41 (1H, s)
13C-NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 164.41, 143.13, 134.62, 131.47, 127.96, 126.67, 126.52, 124.45, 122.90, 116.06, 115.95, 82.82, 82.79
MS (EI) m/z 236 (M
+); Anal. Calcd. for C
15H
12N
2O・1/5H
2O : C, 75.11; H, 5.21; N, 11.68. Found: C, 75.08; H, 5.09; N, 11.67
【0043】
化合物(A−S−1)及び化合物(A−S−2)の合成は下記化8の合成ルートに従って行った。以下に詳細を述べる。
【0045】
5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸ヒドロキサミド(A−S−1)の合成
工程1:5-ブロモ-2-チオフェンカルボン酸メチルエステル(114)の合成
前述した3-ヨード安息香酸メチルエステル(104)の合成における3-ヨード安息香酸 (103)の代わりに、5-ブロモ-2-チオフェンカルボン酸 (113) (1.00 g)を用い、同様の方法により化合物(114) (1.03 g、収率96 %)を白色固体として得た。得られた化合物(114)の
1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.55 (1H, d, J = 4.3 Hz), 7.07 (1H, d, J = 4.0 Hz), 3.88 (3H, s)
【0046】
工程2:5-トリメチルシラニルエチニルチオフェン-2-カルボン酸メチルエステル(115)の合成
上記の方法で得られた5-ブロモ-2-チオフェンカルボン酸メチルエステル(114)(1.03 g)をジエチルアミン(16 mL)に溶解し、PdCl
2(PPh
3)
2(32.7 mg)、CuI (13.3 mg)、トリメチルシリルアセチレン(687 mg)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で18時間撹拌した。反応液を減圧下で濃縮後、残渣にEt2O (50 mL) を加え、有機層を1N 塩酸水溶液 (50 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム (50 mL)、飽和食塩水 (50 mL) で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=20:1) で精製し、化合物(115)(895 mg, 収率81%) を黄色固体として得た。得られた化合物(115)の
1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.63 (1H, d, J = 4.0 Hz), 7.16 (1H, d, J = 4.0 Hz), 3.88 (3H, s), 0.257 (9H, S)
【0047】
工程3:5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸(116)の合成
工程2で得られた5-トリメチルシラニルエチニルチオフェン-2-カルボン酸メチルエステル(115)(895 mg)を用いて、前述した化合物(A−mp−1)の合成における工程3と同様の方法で5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸(116) (224 mg, 収率90%) を白色固体として得た。
得られた化合物(116)の
1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 7.64 (1H, d, J = 4.0 Hz), 7.40 (1H, d, J = 3.7 Hz), 4.80 (1H, s)
【0048】
工程4:5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸 (2-テトラヒドロピラノキシ) アミド(117)の合成
5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸(116)(150 mg)を用いて、前述した化合物(A−mp−1)の合成における工程4と同様の合成方法により、化合物(117)(224 mg, 収率90%) を白色固体として得た。得られた化合物(117)の
1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 11.9 (1H, br), 7.62 (1H, d, J = 2.7 Hz), 7.39 (1H, d, J = 4.0 Hz), 4.96 (1H, s), 4.77 (1H, s), 4.05-4.01 (1H, m), 3.55-3.53 (1H, m), 1.73-1.71 (3H, m), 1.55-1.53 (3H, m)
【0049】
工程5:5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸ヒドロキサミド(A−S−1)の合成
化合物(A−mp−1)の合成における工程5と同様の合成方法により、化合物(117)を合成した。すなわち、3-エチニル-N-(2-テトラヒドロピラニルオキシ)ベンズアミド(117)の代わりに、上記(ステップ5−4)で合成した5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸 (2-テトラヒドロピラノキシ) アミド(117) (224 mg)を用いて、化合物(A−S−1)(52 mg, 収率35%)を茶色固体として得た。得られた化合物(A−S−1)の融点データ、
1H-NMRデータ、
13C-NMRデータ及びMS (EI)データを以下に示す。
融点:146-147 ℃
1H-NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 11.4 (1H, br), 9.25 (1H, br), 7.53 (1H, d, J = 3.4 Hz), 7.36 (1H, d, J = 4.0 Hz), 4.74 (1H, s)
13C-NMR (DMSO-d
6-, 500 MHz, δ; ppm) 158.32, 138.73, 133.83, 127.36, 124.66, 86.93, 76.20
MS (EI) m/z 167 (M
+); Anal. Calcd. for C
7H
5NO
2S・1/5H
2O : C, 49.23; H, 3.19; N, 8.20. Found: C, 49.10; H, 3.18; N, 8.07
【0050】
5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸 (2アミノフェニル) アミド(A−S−2)の合成
上記5-エチニルチオフェン-2-カルボン酸 (116)(100 mg)を用い、化合物(A−mP−1)の合成の工程4と同様の方法により、化合物(A−S−2)(49 mg, 収率31%) を茶色固体として得た。得られた化合物(A−S−2)の融点データ、
1H-NMRデータ、
13C-NMRデータ及びMS (EI)データを以下に示す。
融点:143 ℃
1H-NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 9.88 (1H, br), 7.98 (1H, d, J = 3.0 Hz), 7.51 (1H, d, J = 4.0 Hz), 7.17 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.07-7.04 (1H, m), 6.85 (1H, dd, J = 1.2, 8.2 Hz), 6.66 (1H, dt, J = 1.2, 7.9 Hz), 5.01 (2H, s), 4.83 (1H, s)
13C-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 159.04, 143.46, 141.22, 133.93, 128.97, 127.03, 126.98, 125.45, 122.13, 116.17, 116.01, 87.04, 76.42
MS (EI) m/z 242 (M
+); Anal. Calcd. for C
7H
5NO
2S・1/4H
2O : C, 63.27; H, 4.29; N, 11.35. Found: C, 63.17; H, 4.30; N, 11.29
【0051】
下記化9の合成ルートに従って、化合物(B−1〜5)及び化合物(B−7)を合成した。以下に詳細を述べる。
【0053】
2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) (1.00 g) に0.5M アジ化ナトリウムDMSO溶液 (14.9 mL) を加え、室温で1.5時間撹拌した。氷冷下で水 (34.0 mL) を加え、反応液を酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を水 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=50:1) で精製し、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))(631 mg, 収率76%) を淡黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.33-7.21 (5H, m), 3.50 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.89 (2H, t, J = 7.31 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 600 MHz, δ; ppm) 137.99, 128.72, 128.62, 126.76, 52.44, 35.33
なお、(B−1(n=1))の化合物を合成しようとする場合は、(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の替りに、(2-ブロモメチル) ベンゼンを用いればよい。
【0054】
3-フェニルプロピルアジド(B−1(n=3))の合成
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の代わりに3-フェニルプロピルブロマイド (118b) (1.00 g) を用い、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成と同様の方法により表題化合物 (445 m g、収率55 %)を淡黄色オイルとして得た。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.31-7.17 (5H, m), 3.28 (2H, t, J = 6.9 Hz), 2.69 (2H, t, J = 7.6 Hz), 1.91 (2H, m)
13C-NMR (CDCl
3, 600 MHz, δ; ppm) 140.85, 128.51, 128.45, 126.14,50.64, 32.76, 30.43
【0055】
4-フェニルブチルアジド(B−1(n=4))の合成
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の代わりに4-フェニルブチルブロマイド (118c) (1.00 g) を用い、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成と同様の方法により4-フェニルブチルアジド(B−1(n=4))(475 mg、収率58 %)を淡黄色オイルとして得た。
1H-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.30-7.17 (5H, m), 3.28 (2H, t, J = 6.9 Hz), 2.65 (2H, t, J = 7.5 Hz), 1.74-1.68 (2H, m), 1.66-1.60 (2H, m)
13C-NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 141.80, 128.37, 128,35, 125.89, 51.34, 35.35, 28.42
【0056】
5-フェニルペンチルアジド(B−1(n=5))の合成
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の代わりに(5-ブロモペンチル) ベンゼン (118d) (1.00 g) を用い、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成と同様の方法により5-フェニルペンチルアジド(B−1(n=5))(627 mg、収率75 %)を淡黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.29-7.16 (5H, m), 3.25 (2H, t, J = 7.0 Hz), 2.65 (2H, t, J = 7.6 Hz), 1.68-1.59 (4H, m), 1.44-1.38 (2H, m)
13C NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 142.26, 128.34, 128.29, 125.73, 51.36, 35.74, 30.94, 28.72, 26.34
【0057】
4-メトキシベンジルアジド(B−2)の合成
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の代わりに4-メトキシベンジルブロマイド (118e) (1.00 g) を用い、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成と同様の方法により4-メトキシベンジルアジド(B−2)(485 mg、収率60 %)を淡黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.24 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.91 (2H, d, J = 8.5 Hz), 4.26 (2H,s), 3.81(3H, s);
13C NMR (CDCl
3, 600 MHz, δ; ppm) 159.60, 129.72, 127.36, 114.16, 55.26, 54.36; HRMS (EI) Calcd. for C
8H
9ON
3 163.075, Found 163.076.
【0058】
3-フェニルベンジルアジド(B−3−m)の合成
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の代わりに3-フェニルベンジルブロマイド (118f) (1.00 g) を用い、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成と同様の方法により3-フェニルベンジルアジド(B−3−m)(662 mg、収率78 %)を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.59-7.52 (4H, m), 7.46-7.42 (3H, m), 7.37-7.34(1H, m), 7.29 (1H, d, J = 7.6 Hz), 4.39 (2H,s)
13C NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 141.95, 140.66, 135.94, 129.28, 128.84, 127.56, 127.20, 127.14, 127.00, 126.98, 54.87
HRMS (EI) Calcd. for C
13H
11N
3 209.095, Found 209.096
【0059】
4-フェニルベンジルアジド(B−3−p)の合成
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の代わりに4-フェニルベンジルブロマイド (118g) (1.00 g) を用い、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成と同様の方法により4-フェニルベンジルアジド(B−3−p)(180 mg、収率21%)を淡黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.62-7.59 (4H, m), 7.45 (2H, t, J = 7.6 Hz), 7.40-7.35 (3H, m), 4.39 (2H,s)
13C NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 141.31, 140.54, 134.37, 128.84, 128.67, 127.58, 127.52, 127.13, 54.57
HRMS (EI) Calcd. for C
13H
11N
3 209.095, Found 209.095
【0060】
3-フェノキシベンジルアジド(B−4−m)の合成
3-フェノキシベンジルアジド (B-4-m)
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の代わりに3-フェノキシベンジルクロライド (118h) (1.00 g) を用い、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成と同様の方法により3-フェノキシベンジルアジド(B−4−m)(1.03 g、収率86%)を淡黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.37-7.32 (3H, m), 7.12 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.05-7.01 (3H, m), 6.89-6.96 (2H, m), 4.30 (2H,s)
13C NMR (CDCl
3, 600 MHz, δ; ppm) 157.79, 156.78, 137.29, 130.19, 129.85, 123,60, 122.77, 119.15, 118.48, 118.27, 54.42
HRMS (EI) Calcd. for C
13H
11ON
3 225.090, Found 225.090
【0061】
1-アジドメチルナフタレン(B−5−1)の合成
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の代わりに1-クロロメチルナフタレン (118i) (1.00 g) を用い、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成と同様の方法により1-アジドメチルナフタレン(B−5−1) (948 mg、収率91%)を淡黄色オイルとして得た。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.01 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.88-7.83 (2H,m), 7.58- 7.50 (2H, m), 7.46-7.42 (2H, m), 4.74 (2H, s)
13C NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 133.87, 131.32, 130.93, 129.39, 128.77, 127.23, 126.69, 126.12, 125.17, 123.442, 52.97
HRMS (EI) Calcd. for C
11H
9N
3 183.080, Found 183.080
【0062】
2-アジドメチルナフタレン(B−5−2)の合成
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の代わりに2-ブロモメチルナフタレン (118j) (1.00 g) を用い、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成と同様の方法により2-アジドメチルナフタレン(B−5−2)(684 mg、収率83%)を白色固体として得た。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.88-7.84 (3H, m), 7.78 (1H, s), 7.53-7.49 (2H, m), 7.43 (1H, dd, J = 1.5, 8.2 Hz), 4.51 (2H, s)
13C NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 133.28, 133.11, 132.83, 128.79, 127.96, 127.77, 127.19, 126.48, 126.35, 125,86, 55.05
HRMS (EI) Calcd. for C
11H
9N
3 183.080, Found 183.080
【0063】
アジドメチルシクロヘキサン(B−7)の合成
アジドメチルシクロヘキサン (B-7) の合成
(2-ブロモエチル) ベンゼン (118a) の代わりにブロモメチルシクロヘキサン (118k) (1.00 g) を用い、2-フェネチルアジド(B−1(n=2))の合成と同様の方法によりアジドメチルシクロヘキサン(B−7)(727 mg、収率92%)を淡黄色オイルとして得た
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 3.11 (2H, d, J = 6.7 Hz), 1.78-1.67 (5H, m), 1.59-1.51 (1H, m), 1.29-1.11 (3H, m), 1.01-0.92 (2H, m)
13C NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 58.08, 38.09, 30.67, 26.27, 25.76
【0064】
下記化10の合成ルートに従って、化合物(B−6)及び化合物(B−8)を合成した。以下に詳細を述べる。
【0066】
アジドメチルシクロペンタン(B−6)の合成
工程1:シクロペンチルメチルトシレート (120a)の合成
シクロペンタンメタノール (119a) (500 mg) をピリジン (5 mL) に溶解し、氷冷下、TsCl (1.43 g) を加え、反応液を室温で36時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮後、残渣に酢酸エチル (50 mL) を加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (50 mL)、飽和食塩水 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=50:1) で精製し、シクロペンチルメチルトシレート (120a)(864 mg、収率68%) の無色オイルを得た。得られた化合物(120a)の
1H NMRデータを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.79 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.35 (2H, d, J = 7.9 Hz), 3.89 (2H, d, J = 7.3 Hz), 2.50 (3H, s), 2.24-2.15 (1H, m), 1.74-1.68 (2H, m), 1.57-1.49 (4H, m), 1.22-1.15 (2H, m)
【0067】
工程2:アジドメチルシクロペンタン(B−6)の合成
上記工程1で得られたシクロペンチルメチルトシレート (120a) (1.13 g) に0.5M アジ化ナトリウムDMSO溶液 (26.6 mL) を加え、室温で1時間、80℃で5時間撹拌した。氷冷下で水 (50 mL) を加え、反応液を酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を水 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧下で濃縮し、アジドメチルシクロペンタン(B−6)(147 mg、収率26%) を黄色オイルとして得た。得られた化合物(B−6)の
1H NMRデータ及び
13C NMRデータを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 3.20 (2H, d, J = 7.3 Hz), 2.19-2.10 (1H, m), 1.83-1.77 (2H, m), 1.64-1.55 (4H, m), 1.29-1.21 (2H, m)
13C NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 56.51, 39.64, 30.33, 25.28
【0068】
1-アジドメチルアダマンタン(B−8)の合成
工程1:1-アダマンチルメチルトシレート (120b) の合成
上記アジドメチルシクロペンタン(B−6)の合成における工程1と同様の合成方法により、化合物(120b)を合成した。すなわち、シクロペンタンメタノール (119a) の代わりに1-アダマンタンメタノール (119b) (320 mg) を用い、化合物(120b) (519 mg、収率84%) を白色固体として得た。得られた化合物(120b)の
1H NMRデータを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.78 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.34 (2H, d, J = 7.9 Hz), 3.56 (2H, s), 2.45 (3H, s), 1.96 (3H, s), 1.70 (3H, d, J = 12 Hz), 1.60 (3H, d, J = 11 Hz), 1.47 (6H, d, J = 2.4 Hz)
【0069】
工程2:1-アジドメチルアダマンタン(B−8)の合成
上記アジドメチルシクロペンタン(B−6)の合成における工程2と同様の合成方法により、化合物(B−8)を合成した。すなわち、シクロペンチルメチルトシレート (120a)の代わりに1-アダマンチルメチルトシレート (120b) (435 mg)を用い、化合物(B−8)(519 mg、収率84%) を無色オイルとして得た。得られた化合物(B−8)の
1H NMRデータ、
13C NMRデータ及びHRMS (EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 2.95 (2H, s), 1.99 (3H, s), 1.72 (3H, d, J = 12 Hz), 1.64 (3H, d, J = 12 Hz), 1.52 (6H, d, J = 2.4 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 64.37, 40.09, 36.85, 34.78, 28.21
HRMS (EI) Calcd. for C
11H
17N
3 191.142, Found 191.142
【0070】
下記化11の合成ルートに従って、化合物(B−4−p)を合成した。以下に詳細を述べる。
【0072】
4-フェノキシベンジルアジド(B−4−p)の合成
工程1:4-フェノキシフェニルメタノール(122)の合成
4-フェノキシ安息香酸 (121) (2.00 g) をTHF (45 mL) に溶解し、THF (65 mL) に懸濁させたLiAlH4 (1.06 g) を氷冷下で滴下し、反応液を7時間還流した。反応液を冷却後、水 (1 mL), 15%水酸化ナトリウム水溶液 (1 mL)、水 (3 mL) を順に加え、沈殿物をろ過した。得られた沈殿物をTHF (100 mL) で洗浄し、ろ液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=3:1) で精製し、表題化合物 (1.63 g, 収率87%)を白色個体として得た。得られた化合物(122)の
1H NMRデータを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.35-7.31 (4H, m), 7.10 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.02-7.00 (4H, m), 4.67 (2H, d, J = 5.8 Hz), 1.62 (1H, s, J = 5.8 Hz)
【0073】
工程2:4-フェノキシベンジルアジド(B−4−p)の合成
アルゴン雰囲気下、上記工程1で得られた4-フェノキシフェニルメタノール (122) (300 mg)、DPPA (495 mg) を無水DMF (2.7 mL) に溶解した。氷冷下でDBU (274 mg) を加え、2時間撹拌し、さらに室温で24時間撹拌した。反応液に水を加え、反応液を酢酸エチル (30 mL) で抽出した。有機層を2N 塩酸水溶液 (30 mL)、飽和食塩水 (30 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n-ヘキサン:酢酸エチル=50:1) で精製し、表題化合物 (103 mg, 収率30%)を無色オイルとして得た。得られた化合物(B−4−m)の
1H NMRデータ、
13C NMRデータ及びHRMS (EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3,500 MHz, δ; ppm) 7.37-7.31 (2H, m), 7.10 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.02-7.00 (4H, m), 2H (d, J = 5.8 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 157.49, 156.81, 130.01, 129.81, 123.57, 119.15, 118.89, 54.30
HRMS (EI) Calcd. for C
13H
11ON
3 225.090, Found 225.090
【0074】
<クリック反応によるヒドロキサム酸誘導体の合成>
(実施例1〜24及び比較例1〜90)
以上のようにして合成したアルキン化合物(A−1、A−2、A−mP−1、A−mP−2、A−pP−1、A−pP−2、A−S−1及びA−S−2)と、アジド化合物(B−1(n=1)、B−1(n=2)、B−1(n=3)、B−1(n=4)、B−1(n=5)、B−2、B−3−m、B−3−p、B−4−m、B−4−p、B−5−1、B−5−2、B−6、B−7、B−8)とをカップリングさせて、後述する実施例1〜24及び比較例1〜90のヒドロキサム酸誘導体を合成した
【0075】
すなわち、
図1に示すように、96ウェルプレート上で、上記の方法により合成したアルキン化合物25mMのDMSO溶液20μL (最終濃度5 mM)と、上記の方法により合成したアジド化合物25 mMのDMSO溶液20μL(最終濃度6 mM)と、5mM TBTAのDMSO溶液10μL(最終濃度10mol%)と、2mM硫酸銅(II)五水和物の水溶液25μL(最終濃度10mol%)とを混合し、最後に10mMアスコルビン酸ナトリウム水溶液25μL(最終濃度50mol%)を加え、室温で1-3日撹拌した。反応の終点は、TLCで分析し、単離や精製は行わなかった。
【0076】
こうしてウェルプレート上でのクリック反応で合成した実施例1〜24及び比較例1〜90の化合物の構造式を表1、表2及び表3に示す。
【0080】
―活性試験―
(HDACs及びHDAC8の阻害活性試験)
上記のようにして合成した実施例1〜24及び比較例1〜90のヒドロキサム酸誘導体について、単離・精製なしに直接HDAC阻害試験を行った。HDACsおよびHDAC8阻害活性の測定はCyclex社のHDAC蛍光アッセイキットを用いて以下のように行った。
【0081】
すなわち、下記表4に従って96 well plateに調製した試薬を加えた後、基質とリジルエンドペプチターゼ(LEP)を含むOne-step assay buffer または、HDAC8 reaction buffer を全てのwell plateに加え、1時間室温でインキュベーションした。最後にトリコスタチンA(TSA)または、(10X Stop solution)を加え反応を止めた後、プレートリーダーで蛍光強度を測定した。酵素活性は、下記の数1に従って算出した。
【0084】
・HDAC8に対する阻害活性
HDAC8阻害活性試験の結果を
図2及び
図3に示す。
図2及び
図3に示すように、実施例1〜24はHDAC8に対する阻害活性を示し、実施例1及び実施例2はPCI−34051と同程度であった。また、実施例1のHDAC8に対する阻害活性は、SAHAよりもかなり高かった。また、実施例2のHDAC8に対する阻害活性は、SAHAやPCI−34051と比較して、非常に高かった。
【0085】
・HDACsに対する阻害活性
HDACs阻害活性試験の結果を
図4及び
図5に示す。
図4及び5に示すように、実施例1〜24についてはHDACsに対する阻害活性は弱いものであった。特に、実施例1及び実施例2についてはSAHAよりもかなり低く、PCI−34051と同程度であった。
また、実施例1〜12は、HDAC8に対する阻害活性は高いにもかかわらず、HDACsに対する阻害活性は弱いものであり、HDAC8に対する優れた選択的阻害作用が認められた。特に、n=1〜3の範囲にある実施例1〜3においては、極めて優れた選択的阻害作用が認められた。
【0086】
なお、
図2〜5のグラフ中、Cu(I)―LのLは、基質を加えないでクリック反応の反応促進リガンドであるトリス[(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾリル−4−イル)メチル]アミン(TBTA)のみを加えたブランク試験の結果を示す。
図2〜5のグラフから、Cu(I)及びTBTAは、HDACによる脱アセチル化反応に対して、ほとんど影響しないことが分かる。
【0087】
以上の結果より、実施例1〜24のヒドロキサム酸誘導体は、HDAC8の機能を阻害することが分かった。
【0088】
<実施例1及び実施例2のヒドロキサム酸誘導体のスケールアップ合成>
実施例1及び実施例2のヒドロキサム酸誘導体について、さらにスケールアップして合成し、単離・精製を行った。
【0089】
1)実施例1(C16)の単離・精製
3-エチニル-N-ヒドロキシベンズアミド (A-mP-1) (43.2 mg)とベンジルアジド (51.8 mg)とTBTA (14.2 mg)とをメタノール(5 mL)に溶解し、水(5 mL)に溶解させた硫酸銅(II)五水和物(6.69mg)、アスコルビン酸ナトリウム(26.5mg)を加え、室温で24時間撹拌した。反応液を濃縮後、残渣を酢酸エチル(50mL)に溶解し、有機層を水(50mL)で洗浄し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(展開溶媒n-ヘキサン:酢酸エチル=1:2)で精製し、粗結晶(82.2 mg,収率104%)を得た。粗結晶をMeOHから再結晶し、実施例1の化合物(C16)(40.9 mg, 収率52%)を白色個体として得た。得られた実施例1の化合物(C16)の融点データ、
1H-NMRデータ、
13CNMRデータ及びMS(FAB)データを以下に示す。
融点:154-155℃
1H-NMR(DMSO- d
6,600 MHz, δ; ppm) 11.3 (1H, br), 9.08 (1H, s) 8.69 (1H, s), 8.23 (1H, t, J = 1.6 Hz), 7.98 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.69 (1H, dt, J = 7.9, 1.4 Hz), 7.52 (1H, t, J = 7.7 Hz), 7.42-7.34 (5H, m), 5.67 (2H, s)
13C NMR (DMSO- d
6, 500 MHz, δ; ppm) 163.93, 146.07, 135.89, 133.45, 130.80, 128.99, 128.79, 128.18, 127.93, 127.63, 126.18, 123.73, 121.90, 53.06
MS (FAB) m/z 295 (MH+); Anal. Calcd. for C
16H
14N
4O
2・H
2O : C, 61.53; H, 5.16; N, 17.94. Found: C, 61.43; H, 5.25; N, 17.98.
【0090】
2)実施例2(C17)の単離・精製
(2-アジドエチル)ベンゼン(108)(895mg)とベンジルアジド (51.8 mg)とTBTA (14.2 mg)とをメタノール(5 mL)に溶解し、水(5 mL)に溶解させた硫酸銅(II)五水和物(6.69mg)、アスコルビン酸ナトリウム(26.5mg)を加え、室温で24時間撹拌した。その後、上記実施例1の多量合成と同様に精製して、実施例2(C17)(552 mg, 収率97%) を茶色固体として得た。融点データ、
1H NMRデータ、
13C NMRデータ及びMS (FAB)データを以下に示す。
融点:168-170 ℃
1H NMR (DMSO- d
6, 600 MHz, δ; ppm) 11.3 (1H, br), 9.08 (1H, s) 8.59 (1H, s), 8.20 (1H, d, J = 1.6 Hz), 7.93 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.68 (1H, dt, J = 6.5, 1.2 Hz), 7.52 (1H, t, J = 7.7 Hz), 7.30-7.2 (5H, m), 4.68 (2H, t, J = 7.3 Hz), 3.23 (2H, t, J = 7.3 Hz)
13C NMR (DMSO- d
6, 500 MHz, δ; ppm) 163.98, 145.53, 137.56, 133.49, 130.96, 128.99, 128.65, 128.41, 127.54, 126.58, 126.03, 123.68, 121.90, 50.65, 35.49
MS (FAB) m/z 309 (MH+); Anal. Calcd. for C
17H
16N
4O
2・H
2O : C, 62.57; H, 5.56; N, 17.17. Found: C, 62.21; H, 5.52; N, 17.25
【0091】
(HDACs、HDAC1、HDAC2、HDAC4、HDAC6及びHDAC8の阻害活性試験)
上記のようにして単離・精製した実施例1及び実施例2のヒドロキサム酸誘導体並びに比較例27及び比較例30のヒドロキサム酸誘導体について、HDACs、HDAC1、HDAC2、HDAC4、HDAC6及びHDAC8の阻害活性試験を行った。
【0092】
1)HDAC1、HDAC2、HDAC4、HDAC6及びHDAC8の阻害活性試験
HDAC1, HDAC2, HDAC4, HDAC6阻害活性の測定はBIOMOL社のSIRT1、HDAC1蛍光アッセイキット、BPS社のHDAC class2α蛍光アッセイキットとBIOMOL社から購入したHDAC2、HDAC6を用いて以下のように行った。
5倍阻害剤 (最終濃度100〜0.01μM) 10 μL とHDAC1 (あるいはHDAC2、HDAC4、HDAC6:最終濃度) 15μLと2倍基質 25μlとを混合し、室温あるいは37℃で30分反応させた。この反応液にディベロッパーとトリコスタチンAの混合溶液50μLを添加後、プレートリーダーを用いて蛍光強度 (蛍光測定波長:460 nm) を測定し、IC
50値 (酵素を50%阻害する阻害剤濃度) を算出した。
2)HDACs及びHDAC8の阻害活性試験
HDACsとHDAC8阻害活性の測定はCyclex社のHDACs、HDAC8蛍光アッセイキットを用いて次の方法により行った。
すなわち、5-10倍希釈したHDAC8あるいはHDACs 10μLと、5-10倍阻害剤溶液 5-10 μL (最終濃度100〜0.01μM)と、HDAC8リアクションバッファー溶液35μLあるいはワンステップアッセイバファー溶液30 μLとを混合し、室温で1時間反応させた。この反応液に2倍のストップ溶液50μLあるいは5倍のトリコスタチンA 12 μLを添加し、蛍光プレートリーダーを用いて蛍光強度 (蛍光測定波長:460 nm) を測定し、IC
50値 (酵素を50%阻害する阻害剤濃度) を算出した。また、本阻害活性試験で用いたHDACsは、Hela細胞由来のものを使用した。
また、比較のためにSAHA及びPCI−34051についても、同様にHDACs、HDAC1、HDAC2、HDAC4、HDAC6及びHDAC8の阻害活性試験を行った。
【0093】
その結果、表5に示すように、実施例1及び実施例2のヒドロキサム酸誘導体のHDAC8阻害活性は、SAHAのHDAC8阻害活性よりも高く、PCl−34051と同程度となった。
一方、HDACs、HDAC1、HDAC2、HDAC4及びHDAC6に対する阻害活性試験では、実施例1及び実施例2のヒドロキサム酸誘導体は、SAHAと比較して、全てについて阻害活性が低かった。
また、実施例2のヒドロキサム酸誘導体は、PCI−34051と比較して、HDAC1及びHDAC4の阻害活性に対してPCI−34051と同程度の低い活性を示した。
【0095】
以上の結果より、実施例1及び実施例2のヒドロキサム酸誘導体は、HDAC8の酵素活性を選択的に阻害することのできることが分かった。
【0096】
(造血器腫瘍細胞増殖阻害活性試験)
実施例1及び実施例2のヒドロキサム酸誘導体について、さらに造血器腫瘍細胞増殖阻害活性試験(MTS法)を行った。
【0097】
1)細胞調製液の作成
各種造血器腫瘍細胞浮遊液(Jurkat, MOLT4F, HH, Hut78, MT2, MT4)を1300rpm 5minで遠心した。沈澱した細胞を2×10
5/mlの細胞濃度になるように培地で調整した。続いて、調整した細胞調整液を平底96well plateに50μlずつ分注した。
2)化合物の調製液の作成
実施例1及び実施例2のヒドロキサム酸誘導体及びPCI−34051を保存原液で200μM, 20μM, 6.66μM, 2μM, 666nM,及び200nMにそれぞれ調整した。
3)細胞調製液と化合物の調製液の混合
1)で作成した細胞調製液の入った各wellに2)で調整した化合物の調製液を三つ組みで50μlづつ分配した。また、コントロールとして、細胞液50μlとヂメチルスルホキシド(DMSO)入り培地50μlとを混合したwellを三つ組みで用意した。また、ブランクとして培地100μlを入れたwellを三つ組みで用意した。表6に各wellの化合物の調製液の濃度を示す。
【0098】
【表6】
4)培養
37℃、5% CO
2環境下で72時間培養し、その後、各wellにMTS液20μlずつ分配し、さらに2時間の培養を行った。
5)測定
培養終了後、各wellの吸光度を測定した。各well の吸光度の値は490nmの測定値から650nmの測定値をベースとして差し引いた値を採用した。そして、下記数2で示される式で、各wellの吸光度を百分率で算出した。また、算出された値3つの平均とその標準偏差を算出し、増殖曲線グラフを作成し、さらに、増殖曲線グラフよりGI
50値を読み取った。
【0100】
結果を下記表7に示す。この表から、実施例1及び2のヒドロキサム酸誘導体は、造血器腫瘍細胞株Jurkat, MOLT4F, Hut78, MT2及びMT4に対して、PCI−34051と同程度の増殖阻害効果を有しており、特に、造血器腫瘍細胞株HHに対しては、PCI−34051よりも高い阻害活性を示すことが分かった。以上の結果から、実施例1及び実施例2のヒドロキサム酸誘導体は、HDAC8阻害剤のみならず、抗がん剤としての利用も期待することができる。
【0101】
【表7】
T-ALL; T細胞性リンパ芽球性白血病、CTCL;皮膚原発T細胞性リンパ腫
ATLL;成人T細胞性白血病/リンパ腫
【0102】
以上のように、実施例2の化合物(C17)はHDAC8に対し、優れた選択的阻害作用を示した。このため、さらに優れたHDAC8に対する選択的な阻害作用を有する化合物を見出すべく、実施例2の化合物(C17)をリード化合物として、以下に示す様々な誘導体を合成し(化12参照)、そのHDAC8の活性に対する選択的な阻害作用について調べた。
【0104】
すなわち、このアルキン化合物と、下記化13に示す様々なアジド化合物を合成し、それらの化合物とアルキン化合物(A−mP−1)とのクリック反応を行い、実施例2の化合物(C17)に類似した化合物を合成した。詳細は以下のとおりである。
【0106】
<アジド化合物の合成>
上記(化13)に示すアジド化合物(B−1(n=2):2X)、(B−1(n=2):3X)、(B−1(n=2):4X)(ただし、Xはメチル基、メトキシ基、クロロ基、フッ素基、フルオロ基、ニトロ基のいずれか一つを示す。)の合成は、下記化14の合成ルートに従って行った。
【0108】
2-メチルフェネチルアジド [B-1(n=2):2-Me] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) (1.10 g) に0.5M アジ化ナトリウムDMSO溶液 (13.3 mL) を加え、室温で5時間攪拌した。氷冷下で水 (30 mL) を加え、反応液を酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を水 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=50:1) で精製し、表題化合物 (847 mg, 収率95%) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.16 (4H, s), 3.47 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.91 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.34 (3H, s)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 136.20, 136.07, 130.48, 129.34, 126.96, 126.25, 51.44, 32.62, 19.31
FTIR (neat, cm
-1) 2090
MS (EI) m/z 133 (M
+−28)
【0109】
3-メチルフェネチルアジド [B-1(n=2):3-Me] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに3-メチルフェネチルブロマイド (201b) (1.10 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (724 mg, 収率81%) を無色オイルとして得た。。1H NMRデータ、13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS (EI)データを以下に示す。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.21 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.07−7.01 (3H, m), 3.49 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.86 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.34 (3H, s)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 138.28, 137.94, 129.55, 128.54, 127.52, 125.73, 52.50, 35.27, 21.38
FTIR (neat, cm
-1) 2090
MS (EI) m/z 133 (M
+−28)
【0110】
4-メチルフェネチルアジド [B-1(n=2):4-Me] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに4-メチルフェネチルブロマイド (201c) (1.05 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (720 mg, 収率85%) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.13 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.11 (2H, d, J = 8.2 Hz), 3.48 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.86 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.33 (3H, s)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 136.36, 134.92, 129.33, 128.62, 52.59, 34.92, 21.05
FTIR (neat, cm
-1) 2090
HRMS (EI) Calcd. for C
9H
11N
3 161.095, Found 161.094
【0111】
2-メトキシフェネチルアジド [B-1(n=2):2-OMe] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに2-メトキシフェネチルブロマイド (201d) (1.00 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (590 mg, 収率72%) を淡黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.24 (1H, dt, J = 1.8, 5.9 Hz), 7.16 (2H, dd, J = 1.5, 5.8 Hz), 6.91 (1H, dt, J = 1.2, 6.2 Hz), 6.86 (1H, d, J = 8.2 Hz), 3.83 (3H, s), 3.47 (2H, t, J = 7.6 Hz), 2.92 (2H, t, J = 7.6 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 157.57, 130.61, 128.17, 126.23, 120.56, 110.35, 55.24, 50.97, 30.34
FTIR (neat, cm
-1) 2090
HRMS (EI) Calcd. for C
9H
11ON
3 177.090, Found 177.090
【0112】
3-メトキシフェネチルアジド [B-1(n=2):3-OMe] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに3-メトキシフェネチルブロマイド (201e) (796 mg) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (581 mg, 収率89%) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.24 (1H, t, J = 7.9 Hz), 6.82-6.76 (3H, m), 3.81 (3H, s), 3.50 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.87 (2H, t, J = 7.3 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 159.83, 139.61, 129.66, 121.07, 114.62, 112.05, 55.20, 52.38, 35.40
FTIR (neat, cm
-1) 2090
HRMS (EI) Calcd. for C
9H
11ON
3 177.090, Found 177.091
【0113】
4-メトキシフェネチルアジド [B-1(n=2):4-OMe] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに4-メトキシフェネチルブロマイド (201f) (796 mg) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (840 mg, 収率>100%) を淡黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.14 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.86 (2H, d, J = 8.5 Hz), 3.80 (3H, s), 3.46 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.84 (2H, t, J = 7.2 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 158.50, 130.06, 129.73, 114.09, 55.28, 52.73, 34.50
FTIR (neat, cm
-1) 2090
HRMS (EI) Calcd. for C
9H
11ON
3 177.090, Found 177.090
【0114】
2-クロロフェネチルアジド [B-1(n=2):2-Cl] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに2-クロロフェネチルブロマイド (201g) (1.09 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (815 mg, 収率90%) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.37 (1H, d, J = 7.0 Hz), 7.26-7.21 (3H, m), 3.53 (2H, t, J = 7.3 Hz), 3.03 (2H, t, J = 7.3 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 135.57, 134.07, 131.11, 129.71, 128.39, 127.02, 50.63, 33.29
FTIR (neat, cm
-1) 2090
HRMS (EI) Calcd. for C
8H
8N
3Cl 181.041, Found 181.040
【0115】
3-クロロフェネチルアジド [B-1(n=2):3-Cl] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに3-クロロフェネチルブロマイド (201h) (1.28 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (850 mg, 収率80%) を淡黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.25−7.22 (3H, m), 7.11 (1H, d, J = 6.7 Hz), 3.51 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.87 (2H, t, J = 7.2 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 140.06, 134.43, 129.90, 128.92, 127.04, 126.97, 52.13, 35.03
FTIR (neat, cm
-1) 2090
MS (EI) m/z 153 (M
+−28)
【0116】
4-クロロフェネチルアジド [B-1(n=2):4-Cl] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに4-クロロフェネチルブロマイド (201i) (1.11 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (844 mg, 収率92%) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.29 (2H, d, J = 8.2 Hz), 7.15 (2H, d, J = 8.2 Hz), 3.49 (2H, t, J = 7.2 Hz), 2.86 (2H, t, J = 7.2 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 136.52, 132.66, 130.11, 128.79, 52.27, 34.72
FTIR (neat, cm
-1) 2090
HRMS (EI) Calcd. for C
8H
8N
3Cl 181.041, Found 181.040
【0117】
2-フルオロフェネチルアジド [B-1(n=2):2-F] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに2-フルオロフェネチルブロマイド (201j) (1.01 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (718 mg, 収率82%) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.26−7.22 (2H, m), 7.11−7.03 (2H, m), 3.52 (2H, t, J = 7.0 Hz), 2.94 (2H, t, J = 7.0 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz, δ; ppm); 161.24, 131.15, 128.69, 124.90, 124.23, 115.45, 51.08, 29.00
FTIR (neat, cm
-1) 2090
MS (EI) m/z 137 (M
+−28)
【0118】
3-フルオロフェネチルアジド [B-1(n=2):3-F] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに3-フルオロフェネチルブロマイド (201k) (1.13 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (872 mg, 収率95%) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.31−7.26 (1H, m), 7.01−6.93 (3H, m), 3.52 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.89 (2H, t, J = 7.3 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm); 162.96, 140.54, 130.12, 124.42, 115.69, 113.75, 52.13, 35.09
FTIR (neat, cm
-1) 2090
MS (EI) m/z 137 (M
+−28)
【0119】
4-フルオロフェネチルアジド [B-1(n=2):4-F] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに4-フルオロフェネチルブロマイド (201l) (1.09 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (839 mg, 収率95%) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.19−7.17 (2H, m), 7.01 (2H, t, J = 8.7 Hz), 3.49 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.86 (2H, t, J = 7.3 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm); 161.83, 133.72, 130.22, 115.49, 52.51, 34.58
FTIR (neat, cm
-1) 2090
HRMS (EI) Calcd. for C
8H
8N
3Cl 165.070, Found 165.070
【0120】
2-(トリフルオロメチル)フェネチルアジド [B-1(n=2):2-CF
3] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに2-(トリフルオロメチル)フェネチルブロマイド (201m) (1.04 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (780 mg, 収率88%) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.66 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.51 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.39− 7.35 (2H, m), 3.51 (2H, t, J = 7.3 Hz), 3.08 (2H, t, J = 7.3 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 131.93, 131.73, 128.99, 127.00, 126.29 (q, J = 6.2 Hz), 125.56, 123.38, 52.08, 32.30
FTIR (neat, cm
-1) 2094
MS (EI) m/z 187 (M
+−28)
【0121】
3-(トリフルオロメチル)フェネチルアジド [B-1(n=2):3-CF
3] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに3-(トリフルオロメチル)フェネチルブロマイド (201n) (1.12 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (825 mg, 収率87%) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 600 MHz, δ ppm) 7.52 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.48 (1H, s), 7.46− 7.41 (2H, t, m)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ ppm); 139.01, 132.22, 129.11, 125.52 (q, J = 3.6 Hz), 123.74 (q, J = 3.6 Hz), 52.11, 35.16
FTIR (neat, cm
-1) 2094
MS (EI) m/z 153 (M
+−28)
【0122】
4-(トリフルオロメチル)フェネチルアジド [B-1(n=2):4-CF
3] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに4-(トリフルオロメチル)フェネチルブロマイド (201o) (1.16 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (882 mg, 収率90%) を淡黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 600 MHz, δ ppm) 7.58 (2H, d, J = 8.1 Hz), 7.34 (2H, d, J = 8.0 Hz), 3.55 (2H, t, J = 7.1 Hz), 2.95 (2H, t, J = 7.1 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz, δ; ppm); 142.16, 129.13, 125.60 (q, J = 3.4 Hz), 125.08, 123.27, 52.02, 35.16
FTIR (neat, cm
-1) 2094
MS (EI) m/z 153 (M
+−28)
【0123】
2-ニトロフェネチルアジド [B-1(n=2):2-NO
2] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに2-ニトロフェネチルブロマイド (201p) (1.23g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (937 mg, 収率91%) を黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.99 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.58 (1H, t, J = 7.5 Hz), 7.45−7.41 (2H, m), 3.64 (2H, t, J = 6.9 Hz), 3.18 (2H, t, J = 6.9 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 149.34, 133.28, 133.13, 132.86, 128.14, 125.14, 51.48, 33.00
FTIR (neat, cm
-1) 2090, 1519, 1342
MS (EI) m/z 164 (M
+−28)
【0124】
3-ニトロフェネチルアジド [B-1(n=2):3-NO
2] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに3-ニトロフェネチルブロマイド (201q) (1.14g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (589 mg, 収率62%) を黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.13−8.11 (2H, m), 7.58 (1H, d J = 7.6 Hz), 7.51 (1H, t J = 7.8 Hz), 3.60 (2H, t, J = 6.9 Hz), 3.00 (2H, t, J = 6.9 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 148.47, 140.15, 135.09, 129.58, 123.70, 122.01, 51.86, 34.98
FTIR (neat, cm
-1) 2090, 1523, 1346
MS (EI) m/z 164 (M
+−28)
【0125】
4-ニトロフェネチルアジド [B-1(n=2):4-NO
2] の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに4-ニトロフェネチルブロマイド (201r) (1.51 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (1.17 g, 収率93%) を黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.19 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.40 (2H, d, J = 8.5 Hz), 3.59 (2H, t, J = 6.9 Hz), 3.00 (2H, t, J = 6.9 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 147.05, 145.77, 129.70, 123.89, 51.72, 35.19
FTIR (neat, cm
-1) 2090, 1516, 1342
MS (EI) m/z 164 (M
+−28)
【0126】
アジド化合物(B−9−1)及びアジド化合物(B−10)の合成
アジド化合物(B−9−1)及びアジド化合物(B−10)は、下記化15の合成ルートに従って合成した以下詳細を述べる。
【0128】
1-(2-アジドエチル)ナフタレン (B-9-1) の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに1-(2-ブロモエチル)ナフタレン (202a) (1.17 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (898 mg, 収率91%) を黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.00 (1H, d, J = 8.5 Hz), 7.89−7.87 (1H, m), 7.77 (1H, d, J = 8.2 Hz), 7.56−7.38 (4H, m), 3.64 (2H, t, J = 7.6 Hz), 3.38 (2H, t, J = 7.6 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz, δ; ppm) 133.93, 133.86, 131.70, 129.01, 127.68, 127.00, 126.27, 125.72, 125.55, 123.14, 51.74, 32.49
FTIR (neat, cm
-1) 2090
HRMS (EI) Calcd. for C
12H
11N
3 197.095, Found 197.095
【0129】
3-(2-アジドエチル)インドール (B-10) の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに3-(2-ブロモエチル)インドール (202b) (1.12 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (858 mg, 収率92%) を淡黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.01 (1H, s), 7.59 (1H, dd, J = 1.2, 7.9 Hz), 7.37 (1H, dt, J = 0.9, 8.2 Hz), 7.21 (1H, m), 7.14 (1H, m), 7.07 (1H, d, J = 2.4 Hz), 3.57 (2H, t, J = 7.2 Hz), 3.07 (2H, dt, J = 0.9, 7.0 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz, δ; ppm) 136.25, 127.13, 122.24, 122.21, 119.56, 118.52, 112.37, 111.27, 51.66, 25.09
FTIR (neat, cm
-1) 2090
HRMS (EI) Calcd. for C
10H
10N
4 186.091, Found 186.090
【0130】
アジド化合物(B−9−2)及びアジド化合物(B−11〜17)の合成
アジド化合物(B−9−2)及びアジド化合物(B−11〜17)は、下記化16の合成ルートに従って合成した以下詳細を述べる。
【0132】
2-(2-アジドエチル)ナフタレン (B-9-2) の合成
2-ナフタレンエタノール (203a) (1.00 g) をCH
2Cl
2 (4 mL) に溶解し、氷冷下でトリエチルアミン (705 mg)、MsCl (789 mg) を加えた。反応液を室温で3時間攪拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (30 mL) により反応を止めた。反応液をCHCl
3 (50 mL) で抽出し、有機層を水 (50 mL) 、飽和食塩水 (50 mL) で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、ろ液を減圧濃縮し、対応するメシル体を得た。次いでメシル体に0.5M アジ化ナトリウムDMSO溶液 (13.9 mL) を加え、80℃で2時間攪拌した。反応液に水 (30 mL) を加え、反応液を酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を水 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=50:1) で精製し、粗結晶 (906 mg, 収率79%, 2 steps) を得た。粗結晶をAcOEt/n−hexanから再結晶し、表題化合物 (319 mg) を白色個体として得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.83−7.79 (3H, m), 7.68 (1H, s), 7.49−7.43 (2H, m), 7.35 (1H, dd, J = 1.8, 8.2 Hz), 3.60 (2H, t, J = 7.3 Hz), 3.06 (2H, t, J = 7.3 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 135.49, 133.58, 132.38, 128.33, 127.69, 127.55, 127.31, 126.98, 126.19, 125.65, 52.41, 35.52
FTIR (neat, cm
-1) 2075
HRMS (EI) Calcd. for C
12H
11N
3 197.095, Found 197.095
【0133】
3-(2-アジドエチル)チオフェン (B-11) の合成
2-ナフタレンエタノール (203a) の代わりに3-チオフェンエタノール (203b) (1.08 g) を用い、上述の (B-9-2) の合成と同様の方法により表題化合物 (1.08 g, 収率84%, 2 steps) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.29 (1H, m), 7.06 (1H, d, J = 1.8 Hz), 6.98 (1H, d, J = 4.3 Hz), 3.51 (2H, t, J = 7.0 Hz), 2.93 (2H, t, J = 7.0 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz, δ; ppm) 138.26, 127.97, 125.95, 121.79, 51.79, 29.81
FTIR (neat, cm
-1) 2086
MS (EI) m/z 125 (M
+−28)
【0134】
2-(2-アジドエチル)ピリジン (B-12) の合成
2-ピリジンエタノール (203c) (1.10 g)、CBr
4 (3.26 g)をCH
2Cl
2 (10 mL) に溶解させ、CH
2Cl
2 (5 mL) に溶解したPPh
3 (2.58 g) を氷冷下で加えた。反応液を室温で1時間攪拌した後、反応液を減圧下で濃縮した。残渣をリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1) で精製し、対応するブロモ体 ( 596mg, 収率36 %) を得た。次いでブロモ体に0.5M アジ化ナトリウムDMSO溶液 (7.68 mL) を加え、室温で2時間攪拌した。氷冷下で水 (30 mL) を加え、反応液を酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を水 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1) で精製し、表題化合物 (207 mg, 収率44%) を淡黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.57 (1H, d, J = 4.3 Hz), 7.64 (1H, dt, J = 1.5, 7.6 Hz), 7.21−7.16 (2H, m), 3.72 (2H, t, J = 7.0 Hz), 3.06 (2H, t, J = 7.0 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz, δ; ppm) 158.04, 149.60, 136.55, 123.57, 121.84, 50.70, 37.52
FTIR (neat, cm
-1) 2090
MS (EI) m/z 119 (M
+−28)
【0135】
5-(2-アジドエチル)-4-メチルチアゾール (B-13) の合成
2-ナフタレンエタノール (203a) の代わりに5-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルチアゾール (3d) (856 mg) を用い、上述の (B-9-2) の合成と同様の方法により表題化合物 (867 m g, 収率86%, 2 steps) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 8.62 (1H, s), 3.51 (2H, t, J = 6.9 Hz), 3.04 (2H, t, J = 6.9 Hz), 2.43 (3H, s)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 150.06, 150.02, 127.01, 52.06, 26.27, 14.95
FTIR (neat, cm
-1) 2090
HRMS (EI) Calcd. for C
6H
8N
4S 168.047, Found 198.048
【0136】
4-(2-アジドエチル) モルホリン (B-14) の合成
2-ナフタレンエタノール (203a) の代わりに4-(2-ヒドロキシエチル) モルホリン (203e) (1.02 g) を用い、、上述の (B-9-2) の合成と同様の方法により表題化合物 (607 m g, 収率50%, 2 steps) を黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、及びFTIRデータを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 3.73 (4H, t, J = 4.7 Hz), 3.35 (2H, t, J = 5.9 Hz), 2.60 (2H, t, J = 5.9 Hz), 2.51 (4H, t, J = 4.6 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 66.91, 57.63, 53.62, 47.94
FTIR (neat, cm
-1) 2094
【0137】
(2-アジドエチル)シクロペンタン (B-15) の合成
2-シクロペンタンエタノール (203f) (1.07 g) をピリジン (10 mL) に溶解し、氷冷下、TsCl (2.69 g) を加え、反応液を室温で7時間攪拌した。溶媒を減圧下で濃縮後、残渣に酢酸エチル (50 mL) を加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (50 mL)、1N 塩酸水溶液 (50 mL)、 飽和食塩水 (50 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧濃縮し、対応するトシル体を得た。次いでトシル体に0.5M アジ化ナトリウムDMSO溶液 (22.4 mL) を加え、80℃で22時間攪拌した。氷冷下で水 (50 mL) を加え、反応液を酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を水 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=30:1) で精製し、表題化合物 (694 mg, 収率53%, 2 steps) を淡黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、及びFTIRデータを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 3.27 (2H, t, J = 7.3 Hz), 1.87−1.78 (3H, m), 1.64−1.62 (4H, m), 1.60−1.49 (2H, m)
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz, δ; ppm) 50.83, 37.41, 34.92, 32.48, 25.05
FTIR (neat, cm
-1) 2090
【0138】
(2-アジドエチル)シクロヘキサン (B-16) の合成
2-シクロペンタンエタノール (203f) の代わりに2-シクロヘキサンエタノール (203g) (1.18 g) を用い、上述の (B-15) の合成と同様の方法により表題化合物 (779 m g, 収率55%, 2 steps) を淡黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、及びFTIRデータを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 3.29 (2H, t, J = 7.2 Hz), 1.72−1.61 (5H, m), 1.50 (2H, q, J = 7.1 Hz), 1.38−1.37 (1H, m), 1.28−1.11 (3H, m), 0.951 (2H, m)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 49.20, 36.05, 35.00, 33.02, 26.44, 26.14
FTIR (neat, cm
-1) 2090
【0139】
(2-アジドエチル)-1-アダマンタン (B-17) の合成
2-シクロペンタンエタノール (203f) の代わりに1-アダマンタンエタノール (203h) (1.07 g) を用い、上述の (B-15) の合成と同様の方法により表題化合物 (960 m g, 収率79%, 2 steps) を無色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、及びFTIRデータを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 3.27 (2H, t, J = 7.9 Hz), 1.96 (3H, s), 1.72−1.62 (6H, m), 1.51 (6H, d, J = 2.1 Hz), 1.40 (2H, t, J = 7.9 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 46.61, 42.42, 42.34, 36.98, 31.80, 30.93, 28.55
FTIR (neat, cm
-1) 2090
【0140】
アジド化合物(B−19)及びアジド化合物(B−20)の合成
アジド化合物(B−19)及びアジド化合物(B−20)は、下記化17の合成ルートに従って合成した以下詳細を述べる。
【0142】
2-アジドアセトフェノン (B-19) の合成
2-メチルフェネチルブロマイド (201a) の代わりに2-ブロモアセトフェノン (204) (1.06 g) を用い、上述の [B-1(n=2):2-Me] の合成と同様の方法により表題化合物 (452 mg, 収率53%) を黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.93−7.90 (2H, m), 7.65−7.61 (1H, m), 7.52−7.49 (2H, m), 4.57 (2H, s)
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz, δ; ppm) 193.19, 134.41, 134.15, 129.00, 127.95, 54.90
FTIR (neat, cm
-1) 2098, 1693
MS (EI) m/z 133 (M
+−28)
【0143】
(E)-(2-アジドビニル) ベンゼン (B-20) の合成
硫酸銅 (118 mg)、アジ化ナトリウム (575 mg) をメタノール (20 mL) に溶解させ、 その反応液に(E)-2-フェニルビニルボロン酸 (1.09 g) を加え、室温で30時間攪拌した。減圧下、反応液を濃縮後、残渣を酢酸エチル (100 mL) で希釈し、水 (100 mL)、飽和食塩水 (100 mL) で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1) で精製し、表題化合物 (425 mg, 収率40%) を黄色オイルとして得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びHRMS(EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.32−7.20 (5H, m), 6.61 (1H, d, J = 14 Hz), 6.27 (1H, d, J = 14 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 125 MHz, δ; ppm) 135.02, 128.76, 127.39, 126.68, 125.82, 119.80
FTIR (neat, cm
-1) 2090, 1635
HRMS (EI) Calcd. for C
8H
7N
3 145.064, Found 145.065
【0144】
<クリック反応によるヒドロキサム酸誘導体の合成>
以上のようにして合成したアジド化合物(B−1(n=2):2X)、(B−1(n=2):3X)、(B−1(n=2):4X)、(ただし、Xはメチル基、メトキシ基、クロロ基、フッ素基、フルオロ基、ニトロ基のいずれかひとつを示す。)、(B−9−1)、(B−9−2)、(B−10)〜(B−20)と、アルキン化合物(A−mP−1)とのクリック反応を行い、後述する実施例25〜55のヒドロキサム酸誘導体を合成した。
【化18】
【0145】
すなわち、
図1に示すように、96ウェルプレート上で25 mM Alkyne DMSO溶液20 μL (最終濃度5 mM)、25 mM Azide DMSO溶液20 μL (最終濃度6 mM)、5 mM TBTA DMSO溶液 10 μL (最終濃度10 mol%)、2 mM硫酸銅(II)五水和物水溶液 25 μL (最終濃度10 mol%) を混合し、最後に10 mMアスコルビン酸ナトリウム水溶液25 μL (最終濃度50 mol%) を加え、室温で24時間攪拌した。反応の終点はTLCで分析し、単離や精製は行わなかった。
【0146】
こうしてウェルプレート上でのクリック反応で合成した実施例25〜55の化合物の構造式を表8に示す。
【0148】
―活性試験―
(HDACs及びHDAC8の阻害活性試験)
上記のようにして合成した実施例25〜55のヒドロキサム酸誘導体について、単離・精製なしに直接HDAC阻害試験を行った。HDACs及びHDAC8阻害活性の測定は、Cyclex社のHDAC蛍光アッセイキットを用いて行った。
【0149】
HDACs及びHDAC8阻害活性の測定は、前述した実施例1〜24のヒドロキサム酸誘導体及び比較例1〜90のヒドロキサム酸誘導体に対するHDACs及びHDAC8阻害活性の測定と同様の方法により行った。
【0150】
・HDAC8に対する阻害活性
その結果、
図6に示すように、実施例25〜55のヒドロキサム酸誘導体は全てHDAC8に対する阻害活性を示した。その中でも実施例44及び実施例52のヒドロキサム酸誘導体は、公知のHDAC8阻害剤であるSAHAと同程度の阻害活性を示した。また、実施例25〜43、実施例45〜51及び実施例53〜55のヒドロキサム酸誘導体はについては、SAHAよりも高い阻害活性を示し、公知のHDAC8阻害剤であるPCI−34051と同程度という、高い阻害活性を示した。
【0151】
・HDACsに対する阻害活性
HDACsに対する阻害活性試験の結果を
図7に示す。
図7に示すように、実施例25〜55のヒドロキサム酸誘導体は、リード化合物とした実施例2のヒドロキサム酸誘導体と同様、HDACsに対する阻害活性はほとんどなかった。
以上のように、実施例25〜55のヒドロキサム酸誘導体は、HDAC8に対する阻害活性は高いにもかかわらず、HDACsに対する阻害活性は弱いものであり、HDAC8に対する優れた選択的阻害作用が認められた。
【0152】
なお、
図6及び
図7のグラフ中、Cu(I)―LのLは、基質を加えないでクリック反応の反応促進リガンドであるトリス[(1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾリル−4−イル)メチル]アミン(TBTA)のみを加えたブランク試験の結果を示しており、Cu(I)及びTBTAは、HDACによる脱アセチル化反応に対して、ほとんど影響しないことが確認された。
【0153】
また、
図2〜
図7から、、実施例1〜55のヒドロキサム酸誘導体の中でも、のまた、ヒドロキサム酸基がメタ位に結合している誘導体(すなわち、実施例1〜12及び実施例25〜55)がHDACsよりもHDAC8に対する選択的な阻害作用が顕著であることが分かった。さらには、実施例25〜55のヒドロキサム酸誘導体は、HDAC8の機能を特に選択的に阻害することが分かった。その中でも実施例46及び実施例53のヒドロキサム酸誘導体は、表9に示すように、特に優れたHDAC8に対する選択的な阻害作用を示すことが分かった。
【0155】
<実施例46(C142)、実施例53(C149)、実施例56(C152)及び実施例57(C153)のヒドロキサム酸誘導体のスケールアップ合成>
実施例46及び実施例53のヒドロキサム酸誘導体について、さらにスケールアップして合成し、単離・精製を行った。また、実施例53のヒドロキサム酸誘導体のスルフィド結合は、酸化されてスルフィニル化合物やスルホニル化合物になり易かったため、コントロールとして実施例53が酸化されてスルフィニル体となった実施例56のヒドロキサム酸誘導体及び実施例53がさらに酸化されてスルホニル体となった実施例57のヒドロキサム酸誘導体を合成した(化19)。
【0157】
実施例46のヒドロキサム酸誘導体の合成
実施例46のヒドロキサム酸誘導体は、下記化20の合成ルートに従って合成した。以下詳細を述べる。
【0159】
実施例46(C142)(N-ヒドロキシ-3-[1-(2-チオフェン-3-イルエチル)-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル]-ベンズアミド)の合成
上述で合成した3-エチニル-N-ヒドロキシベンズアミド (A-mP-1) (43.2 mg)、上述で合成した3-(2-アジドエチル)チオフェン (B-11) (130 mg)、及びTBTA (37.5 mg) をメタノール (3 mL) に溶解し、水 (3 mL) に溶解させた硫酸銅(II)五水和物 (17.7 mg)、アスコルビン酸ナトリウム (70.1 mg) を加え、室温で12時間攪拌した。反応液を濃縮後、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 酢酸エチル) で精製し、粗結晶 (280 mg, 収率>100%) を得た。粗結晶をMeOHから再結晶し、表題化合物 (115 mg) を白色個体として得た。融点データ、
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、及びMS (FAB)データを以下に示す。
融点:164−166 ℃
1H NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 11.3 (1H, br), 9.09 (1H, s) 8.59 (1H, s), 8.21 (1H, s), 7.94 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.68 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.52 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.48−7.46 (1H, m), 7.24 (1H, s), 7.00 (1H, d, J = 4.8 Hz), 4.67 (2H, t, J = 7.3 Hz), 3.25 (2H, t, J = 7.3 Hz)
13C NMR (DMSO-d
6, 150 MHz, δ; ppm) 163.88, 145.47, 137.68, 133.40, 130.89, 128.93, 128.11, 127.48, 126.12, 125.95, 123.62, 122.01, 121.59, 49.94, 30.08
MS (FAB) m/z 315 (MH
+); Anal. Calcd. for C
15H
14N
4O
2S
: C, 57.31; H, 4.49; N, 17.82. Found: C, 57.23; H, 4.77; N, 17.60
【0160】
実施例53、実施例56及び実施例57のヒドロキサム酸誘導体の合成
実施例53、実施例56及び実施例57のヒドロキサム酸誘導体は、下記化21の合成ルートに従って合成した。以下詳細を述べる。
【0162】
実施例53(C149)(N-ヒドロキシ-3-(1-フェニルスルファニルメチル-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル)-ベンズアミド)の合成
上述の3-(2-アジドエチル)チオフェン (B-11) の代わりにアジドフェニルメチルスルフィド (B-18) (106 mg) を用い、実施例46(C142)の単離・精製と同様の方法により、粗結晶(165 mg, 94%) を得た。粗結晶をMeOHから再結晶し、表題化合物 (80.3 mg) を白色個体として得た。融点データ、
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、及びMS (FAB)データを以下に示す。
融点:160−161 ℃
1H NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 11.3 (1H, br), 9.09 (1H, s) 8.63 (1H, s), 8.21 (1H, t, J = 1.5 Hz), 7.96 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.70 (1H, dt, J = 1.2, 7.6 Hz), 7.52 (1H, t, J = 7.9 Hz), 7.45−7.43 (2H, m), 7.37-7.30 (3H, m), 6.01 (2H, s)
13C NMR (DMSO-d
6, 125 MHz, δ; ppm) 163.87, 146.10, 133.47, 132.27, 130.66, 130.52, 129.31, 129.06, 127.79, 127.70, 126.35, 123.71, 121.37, 52.02
MS (FAB) m/z 327 (MH
+); Anal. Calcd. for C
16H
14N
4O
2S: C, 58.88; H, 4.32; N, 17.17. Found: C, 58.72; H, 4.34; N, 16.97.
【0163】
実施例56(C152)(3-(1-ベンゼンスルフィニルメチル-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル)-N-ヒドロキシベンズアミド)の合成
工程1:アジドメタンスルフィニルベンゼン (206) の合成
上述で合成したアジドフェニルメチルスルフィド (B-18) (144 mg) をジクロロメタン (5 mL) に溶解させ、氷冷下ジクロロメタン (5 mL) に懸濁させたmCPBA (214 mg) を加え、30分攪拌する。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 (50 mL) を加え、酢酸エチル (100 mL) で抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー (展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1) で精製し、表題化合物 (104 mg, 収率66%) を白色固体として得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS (EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.69−7.67 (2H, m), 7.59−7.57 (3H, m), 4.27 (1H, d, J = 12 Hz), 4.05 (1H, d, J = 12 Hz)
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz, δ; ppm) 140.80, 131.96, 129.52, 124.40, 71.86
FTIR (neat, cm
-1) 2083, 1033
MS (EI) m/z 153 (M
+−28)
【0164】
工程2:3-(1-ベンゼンスルフィニルメチル-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル)-N-ヒドロキシベンズアミド(実施例56、C152)の合成
3-(2-アジドエチル)チオフェン (B-11) の代わりに、上述の実施例56工程1で得られたアジドメタンスルフィニルベンゼン (206) (89.2 mg) を用い、実施例46(C142)の単離・精製と同様の方法により、粗結晶 (98.3 mg, 70%) を得た。粗結晶をMeOHから再結晶し、表題化合物 (43.7 mg) を白色個体として得た。融点データ、
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、及びMS (FAB)データを以下に示す。
融点:188−189 ℃
1H NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 11.3 (1H, br), 9.11 (1H, s) 8.47 (1H, s), 8.22 (1H, s), 7.97 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.72 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.60−7.52 (6H, m), 5.99 (1H, d, J = 13 Hz), 5.77 (1H, d, J = 13 Hz)
13C NMR (DMSO-d
6, 125 MHz, δ; ppm) 163.71, 145.44, 140.08, 133.39, 131.59, 130.25, 129.17, 129.04, 127.65, 126.37, 124.35, 123.65, 122.91, 68.54
MS (FAB) m/z 343 (MH
+); Anal. Calcd. for C
16H
14N
4O
3S・1/4H
2O
: C, 55.40; H, 4.21; N, 16.15. Found: C, 55.71; H, 4.29; N, 15.95.
【0165】
実施例57(C153)(3-(1-ベンゼンスルホニルメチル-1H-[1,2,3]トリアゾール-4-イル)-N-ヒドロキシベンズアミド)の合成
工程1:アジドメタンスルホニルベンゼン (207) の合成
mCPBAを2等量用いて実施例56工程1と同様の方法により、表題化合物 (175 mg, 収率97%) を白色固体として得た。
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、FTIRデータ及びMS (EI)データを以下に示す。
1H NMR (CDCl
3, 500 MHz, δ; ppm) 7.98−7.96 (2H, m), 7.75−7.72 (1H, m), 7.65−7.61 (2H, m), 4.31 (1H, s)
13C NMR (CDCl
3, 150 MHz, δ; ppm) 136.60, 134.70, 129.55, 128.84, 69.21
FTIR (neat, cm
-1) 2117, 1307, 1138
MS (EI) m/z 169 (M
+−28)
【0166】
工程2:3-(1-ベンゼンスルホニルメチル-1H-[1,2,3]トリアゾー-4-イル)-N-ヒドロキシベンズアミド (実施例57、C153)の合成
3-(2-アジドエチル)チオフェン (B-11) の代わりに実施例56工程1で得られたアジドメタンスルホニルベンゼン (207) (172 mg) を用い、、実施例46(C142)の単離・精製と同様の方法により、粗結晶 (114 mg, 54%) を得た。粗結晶をMeOHから再結晶し、表題化合物 (84.5 mg) を白色個体として得た。融点データ、
1H NMRデータ、
13C NMRデータ、及びMS (FAB)データを以下に示す。
融点:192−194 ℃
1H NMR (DMSO-d
6, 500 MHz, δ; ppm) 11.3 (1H, br), 9.12 (1H, s) 8.62 (1H, s), 8.24 (1H, s), 8.00 (1H, d, J = 7.6 Hz), 7.80 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.74 (3H, d, J = 7.3 Hz), 7.65 (2H, t, J = 7.6 Hz), 7.55 (1H, t, J = 7.6 Hz), 6.40 (2H, s)
13C NMR (DMSO-d
6, 125 MHz, δ; ppm) 163.66, 145.95, 135.84, 134.83, 133.40, 129.93, 129.49, 129.08, 128.43, 127.75, 126.58, 123.71, 123.09, 67.15
MS (FAB) m/z 359 (MH
+); Anal. Calcd. for C
16H
14N
4O
4S
: C, 53.62; H, 3.94; N, 15.63. Found: C, 53.58; H, 4.27; N, 15.32
【0167】
(HDACs、HDAC1、HDAC2、HDAC4、HDAC6及びHDAC8の阻害活性試験
上記のようにして単離・精製した実施例2、実施例46、実施例53、実施例56及び実施例57のヒドロキサム酸誘導体について、HDACs、HDAC1、HDAC2、HDAC4、HDAC6及びHDAC8の阻害活性試験を行った。
【0168】
1)HDAC1、HDAC2、HDAC4、HDAC6及びHDAC8の阻害活性試験
HDAC1、HDAC2、HDAC4、HDAC6、HDACs及びHDAC8の阻害活性の測定は、上述の方法と同様の方法により行った。
【0169】
阻害活性試験の結果を下記表10に示す。
【表10】
【0170】
表10に示すように、HDAC8阻害活性試験において、実施例2のヒドロキサム酸誘導体をリード化合物として合成した類縁体の実施例46、実施例53、実施例56及び実施例57のヒドロキサム酸誘導体は、実施例2のヒドロキサム酸誘導体と同様HDAC8を選択的に阻害し、その阻害活性はSAHAよりも遥かに高く、PCl−34051と同程度あるいはそれ以上のHDAC8阻害活性を示すことが分かった。
【0171】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。