(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725478
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】排ガス用脱硝処理装置と方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20150507BHJP
B01F 3/02 20060101ALI20150507BHJP
B01F 5/00 20060101ALI20150507BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
F02C7/00 BZAB
B01F3/02
B01F5/00 D
B01D53/36 101A
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-266450(P2012-266450)
(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-111912(P2014-111912A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2012年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
(74)【代理人】
【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子
(72)【発明者】
【氏名】落合 亮太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 清高
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−765(JP,A)
【文献】
特開平11−300164(JP,A)
【文献】
特開平9−137915(JP,A)
【文献】
特開昭49−13732(JP,A)
【文献】
特開昭49−114727(JP,A)
【文献】
特開2007−275838(JP,A)
【文献】
特開2010−281275(JP,A)
【文献】
特開平8−108045(JP,A)
【文献】
特開2002−332806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
B01D 53/94
B01F 3/02
B01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンから排出する排ガスが流れる排ガスダクトにアンモニア接触還元用の脱硝反応器を設け、
該脱硝反応器の前流側の排ガスダクトに空気を導入して排ガスを500℃以下に冷却するための排ガス希釈空気ファンと該排ガス希釈空気ファンからの排ガス希釈空気を流す排ガス希釈空気ダクトを排ガスダクトに接続し、
高温排ガス逆流防止用の逆止ダンパを排ガス希釈空気ダクト内に配置し、
排ガスダクト内にシール用空気を導入するシール空気ファン付のシール空気配管を逆止ダンパを設置した部位より後流側の排ガス希釈空気ダクトに接続し、さらに排ガス希釈空気ダクトは排ガスダクトの上方部位に一旦立ち上げ、その後、排ガス希釈空気ダクトに接続したミキシングフォイルにより排ガスダクトの上方部位から排ガスダクト内に挿入する配置とし、
排ガス希釈空気ダクトからの排ガス希釈空気と排ガスとを混合するための混合器として複数のスリットを有するミキシングフォイルを脱硝反応器の前流側の排ガスダクトに配置したことを特徴とする排ガス用脱硝装置。
【請求項2】
脱硝反応器の入口側の排ガスダクトに温度計を設置し、該温度計により脱硝反応器の入口温度が設定値以上の高温になった場合に、ガスタービンをトリップさせる制御機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の排ガス用脱硝装置。
【請求項3】
排ガス希釈空気ファンがトリップした場合に、ガスタービンをトリップさせ、同時にシール空気ファンを起動させる制御機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の排ガス用脱硝装置。
【請求項4】
ガスタービン排ガスが逆流することを防止しながら排ガス希釈用の空気をガスタービンからの排ガスが流れる排ガスダクトの上方部位に一旦立ち上げた後に、該排ガスダクトに配置したミキシングフォイルを経由して排ガスダクト内に導入し、さらに、ガスタービン排ガスが逆流することを防止しながらシール用空気を排ガスと排ガス希釈用の空気を混合する前の排ガスダクトに導入することを特徴とする排ガス用脱硝方法。
【請求項5】
アンモニア接触還元式の脱硝反応を行う直前の排ガスダクト内の排ガス温度が設定値以上の高温になった場合に、ガスタービンをトリップさせることを特徴とする請求項4記載の排ガス用脱硝方法。
【請求項6】
排ガス希釈空気が排ガスダクト内に導入出来なくなった場合に、ガスタービンをトリップさせ、同時にシール用空気を導入することを特徴とする請求項4又は5記載の排ガス用脱硝方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンから排出される高温排ガスの脱硝処理装置と方法に係り、特に高温排ガス冷却用として排ガス希釈用空気を混入することが可能な高温排ガスの脱硝処理をする装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンから排出される高温排ガスの脱硝装置として、大気を吸引もしくは加圧して導入し、排ガスと混合させる混合器を設け、排ガス温度を使用する脱硝触媒の脱硝効率の高い温度範囲に冷却制御する高温排ガス脱硝装置が特開平4−4021号公報などで知られている。
【0003】
この発明によると、高温排ガス系にベンチュリ機構を設けて大気を直接吸引混合する手段や、ファンもしくはコンプレッサにより大気を昇圧して高温排ガス系に導入し、排ガスと混合させることで、排ガス温度を冷却制御することに特徴がある。
【0004】
また、特開平8−108045号公報には、ガスタービン下流の排ガス系統に空気冷却器を設けて排ガス温度を低下させた後、アンモニアを注入して脱硝触媒層へ導入することで排ガスの脱硝を行う装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−4021号公報
【特許文献2】特開平8−108045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1(特開平4−4021号公報)記載の発明においては、燃焼排ガスを冷却する際に高温排ガスと希釈空気を混合する混合器を使用しているが、特に混合器から脱硝反応器までの混合距離が十分でない場合は、後流側の温度分布を均一にすることは困難である。
【0007】
また特許文献2(特開平8−108045号公報)記載の発明においては、空気冷却器により排ガス温度を低下させている。空気冷却器では、煙突効果により冷却空気を供給しており、動力を必要としないという効果がある反面、温度調整が困難である。また、空気流通孔の間を通過するガスや冷却空気温度が上下で異なることから、後流側の温度分布を均一にすることは困難である。
【0008】
さらに上記発明においては、ガスタービンがトリップした場合の保護装置が設置されておらず、ガスタービンへ高温排ガスが逆流する可能性がある。
本発明の課題は、ガスタービンから排出される高温排ガスの脱硝処理を行う脱硝処理装置と方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、ガスタービン(3)から排出する排ガスが流れる排ガスダクト(12)にアンモニア接触還元用の脱硝反応器(4)を設け、該脱硝反応器(4)の前流側の排ガスダクト(12)に空気を導入して排ガスを500℃以下に冷却するための排ガス希釈空気ファン(6)と該排ガス希釈空気ファン(6)からの排ガス希釈空気を流す排ガス希釈空気ダクト(10)を排ガスダクト(12)に接続し、
高温排ガス逆流防止用の逆止ダンパ(8)を排ガス希釈空気ダクト(10)内に配置し、排ガスダクト(12)内にシール用空気を導入するシール空気ファン(7)付のシール空気配管(11)を逆止ダンパ(8)を設置した部位より後流側の排ガス希釈空気ダクト(10)に接続し、さらに排ガス希釈空気ダクト(10)は排ガスダクト(12)の上方部位に一旦立ち上げ、その後、排ガス希釈空気ダクト(10)に接続したミキシングフォイル(1)により排ガスダクト(10)の上方部位から排ガスダクト(12)内に挿入する配置とし、排ガス希釈空気ダクト(10)からの排ガス希釈空気と排ガスとを混合するための混合器として複数のスリット(2)を有するミキシングフォイル(1)を脱硝反応器(4)の前流側の排ガスダクト(12)に配置したことを特徴とする排ガス用脱硝装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、
脱硝反応器(4)の入口側の排ガスダクト(12)に温度計を設置し、該温度計により脱硝反応器(4)の入口温度が設定値以上の高温になった場合に、ガスタービン(3)をトリップさせる制御機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の排ガス用脱硝装置である。
【0011】
請求項3記載の発明は、
排ガス希釈空気ファン(6)がトリップした場合に、ガスタービン(3)をトリップさせ、同時にシール空気ファン(7)を起動させる制御機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の排ガス用脱硝装置である。
【0012】
請求項4記載の発明は、
ガスタービン排ガスが逆流することを防止しながら排ガス希釈用の空気をガスタービン(3)からの排ガスが流れる排ガスダクト(12)の上方部位に一旦立ち上げた後に、該排ガスダクト(12)に配置したミキシングフォイル(1)を経由して排ガスダクト(12)内に導入し、さらに、ガスタービン排ガスが逆流することを防止しながらシール用空気を排ガスと排ガス希釈用の空気を混合する前の排ガスダクト(12)に導入することを特徴とする排ガス用脱硝
方法である。
【0013】
請求項5記載の発明は、ア
ンモニア接触還元式の脱硝反応を行う直前の排ガスダクト(12)内の排ガス温度が設定値以上の高温になった場合に、ガスタービン(3)をトリップさせることを特徴とする
請求項4記載の排ガス用脱硝方法である。
【0014】
請求項6記載の発明は、
排ガス希釈空気が排ガスダクト(12)内に導入出来なくなった場合に、ガスタービン(3)をトリップさせ、同時にシール用空気を導入することを特徴とする請求項
4又は5記載の排ガス用脱硝方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の排ガス処理装置における脱硝装置への排ガス入口温度(500℃以下)は従来のコンバインドサイクルの温度(350℃)に比べて高温となっているため、排ガス流速が大きく、混合器設置による圧力損失への影響が大きくなるという課題があったが、請求項1、
4記載の発明によれば混合器としてミキシングフォイル1を採用
して混合性能改善を可能とするだけでなく、排ガス流速増加による圧損増加分を極力低減することが期待でき、排ガス希釈空気ファン6側の圧損も低減することが可能である。
さらに、各ミキシングフォイル1間の排ガス流速が大きくなるため、各スリット2の出口の圧力が負圧となり、排ガス希釈空気ファン6側の吐出圧低減効果があり、また排ガス希釈空気ファン6側の吐出圧を低減することで、ファン動力低減となり、脱硝装置全体の効率的運用が可能となる。
【0018】
また、請求項1、4記載の発明によれば、高温排ガス逆流防止用の逆止ダンパ8をミキシングフォイル1の前流側の排ガス希釈空気ダクト10に配置し、該逆止ダンパ8とミキシングフォイル1の間にシール用空気が流通するシール空気配管11に空気を送るシール空気ファン7を設けたので、タービントリップ時にも高温排ガスが排ガス希釈空気ダクト10、シール空気配管11に逆流することがなくなる。
【0019】
また、請求項
1、4記載の発明によれば
、高温排ガス逆流防止用の逆止ダンパ8を排ガス希釈空気ダクト10内に配置し、排ガスダクト12内にシール用空気を導入するシール空気ファン7付のシール空気配管11を逆止ダンパ8を設置した部位より後流側の排ガス希釈空気ダクト10に接続し、さらに排ガス希釈空気ダクト10は排ガスダクト12の上方部位に一旦立ち上げ、その後、排ガス希釈空気ダクト
10に接続したミキシングフォイル1により排ガスダクト12の上方部位から排ガスダクト12内に挿入する配置としたこと及び、排ガス希釈用の空気を排ガスダクトの上方部位に一旦立ち上げた後に、ミキシングフォイルを経由して排ガスダクトの上方部位から排ガスダクト内に導入し、さらに、ガスタービン排ガスが逆流することを防止しながらシール用空気を排ガスと排ガス希釈用の空気を混合する前の排ガスダクトに導入することにより、高温の気体は上昇する性質があるため、発電所全体が停電した場合においても、配置上高温排ガスは排ガスダクト12上部の排ガス希釈空気ダクト10に留まり、排ガス希釈空気ファン6やシール空気ファン7まで高温の状態で到達することを防ぐことができる効果がある。
【0020】
請求項
2、5記載の発明によれば、請求項
1、4記載の発明の効果に加えて、脱硝反応器4の入口側の排ガスダクト12内の温度により脱硝反応器4の前記入口温度が設定値以上の高温になった場合に、ガスタービン3をトリップさせることができ、従来よりも安全性が高くなる。
【0021】
請求項
3、6記載の発明によれば、請求項1
又は2、又は請求項
4又は5記載の発明の効果に加えて、排ガス希釈空気ファン6がトリップした場合に、ガスタービン3をトリップさせ、同時にシール空気ファン7を起動させることができ、従来よりも安全性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】
図1のミキシングフォイルの概略斜視図(
図2(a))とミキシングフォイルが設置される排ガスダクト部分の平面図(
図2(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
本発明の一実施形態の排ガス処理システムの概要を
図1に示す。ガスタービン排ガスは排ガスダクト12から空気と排ガスを混合する混合器(ミキシングフォイル)1へ送り込まれる。混合器(ミキシングフォイル)1の後流側の排ガスダクト12にはアンモニア注入ノズル16とアンモニア接触還元触媒を有する脱硝反応器4と煙突5が順次配置されている。
【0024】
アンモニア注入ノズル16は
図1ではミキシングフォイル1と脱硝反応器4の間に設置しているが、この位置よりも前流側の排ガスダクト12に設置しても良い。
また、排ガス希釈空気ファン6により導入される空気が排ガス希釈空気ダクト10を経由してミキシングフォイル1に導入され、排ガスダクト12から供給される排ガスと混合される。排ガス希釈空気ファン6により導入される排ガス希釈空気とアンモニア注入ノズル16から注入されるアンモニアを排ガス希釈空気ダクト10内で混合し、その後ミキシングフォイル1により排ガス希釈空気とアンモニアの混合度合いを高めてもよい。
【0025】
排ガス希釈用の空気を希釈空気ダクト10から脱硝反応器4が設置されている排ガスダクト12内の前流側に混入することにより、脱硝反応器4の入口での排ガス温度を冷却して、脱硝触媒の性能及び脱硝反応器4の構造強度を保つことができる。
【0026】
本実施例においては、排ガスと空気の混合器としてミキシングフォイル1を採用することにより、高温排ガスの冷却効果を高め、混合器1と脱硝反応器4までの混合距離が十分でない場合においても、後流側の温度分布を均一にすることが可能である。
【0027】
ガスタービン3から排出する排ガス量は100%負荷時で約280,000m
3N/hであり、排ガス温度は約550℃である。この排ガスを脱硝触媒の脱硝反応効率が高い温度範囲(500℃以下)に下げるために必要な空気量は、約50,000m
3N/hであり、この風量を吐出できるファンを排ガス希釈空気ファン6として選定する。
【0028】
また、排ガス希釈空気ダクト10には逆止ダンパ8を設置し、排ガスダクト12内の高温排ガスが排ガス希釈空気ダクト10に逆流するのを防止して排ガス希釈空気ファン6の保護を図る。さらに、ミキシングフォイル1と逆止ダンパ8との間にシール空気配管11を接続し、シール空気配管11にシール空気ファン7を設置することで、排ガス希釈空気ファン6がトリップした時に排ガスダクト12内の高温排ガスがシール空気配管11及び排ガス希釈空気ファン6に逆流するのを防止する。また、シール空気配管11には逆止弁9を設けることで、発電所全体の停電時にも排ガスがシール空気配管11及び排ガス希釈空気ファン6に逆流するのを防ぐことが可能である。
【0029】
また、
図1に示すように、排ガス希釈空気ダクト10は排ガスダクト12の上部に一旦立ち上げ、その後、ミキシングフォイル1を排ガスダクト12の上部から排ガスダクト12内に挿入する配置とする。高温の気体は上昇する性質があるため、発電所全体が停電した場合においても、配置上高温排ガスは排ガスダクト12上部の排ガス希釈空気ダクト10に留まり、排ガス希釈空気ファン6やシール空気ファン7まで高温の状態で到達することを防ぐことができる。
【0030】
ミキシングフォイル(混合器)1の構造は
図2に示すように、上部から見ると、ガス流れ上流側が曲形となり、下流側となるにつれ先細りした構造物であり、側面には複数のスリット2が設けられている。
【0031】
ミキシングフォイル1の両側面に設けられるスリット2の個数と大きさは、排ガス希釈空気ファン6側の許容圧力損失にも関わってくるが、排ガス流れのシミュレーション結果に従い、スリット2の大きさを変えたり、部分的にスリット2を間引きする等により、排ガスの空気の混合性を改善することも可能である。
【0032】
また、シール空気ファン7はプラント運転時においては、基本的に停止した状態であるが、排ガス希釈空気ファン6の停止信号により、起動する構成とする。
また、本実施例では排ガス系統と空気系統の間にミキシングフォイル1を設置した構成としているため、発電所全体の停電時等においても、ガスタービン3からの高温排ガスが空気系統へ流入する際の抵抗体としてミキシングフォイル1が働く。
【0033】
さらに、シール空気ファン7は排ガス希釈空気ダクト10に接続するシール空気配管11に逆止弁9付きで設けられ、また排ガス希釈空気ファン6は排ガス希釈空気ダクト10内に逆止ダンパ8付きで設けられるので、発電所全体の停電時等においても、高温排ガスがシール空気ファン7と排ガス希釈空気ファン6に逆流することを防ぐことが出来る。
【符号の説明】
【0034】
1. ミキシングフォイル 2. スリット
3. ガスタービン 4. 脱硝反応器
5. 煙突 6. 排ガス希釈空気ファン
7. シール空気ファン 8. 逆止ダンパ
9. 逆止弁 10. 排ガス希釈空気ダクト
11. シール空気配管 12. 排ガスダクト