(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725482
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】膜蒸着のための液体流量制御
(51)【国際特許分類】
F16K 7/14 20060101AFI20150507BHJP
G01F 1/00 20060101ALI20150507BHJP
G01F 1/68 20060101ALI20150507BHJP
G01F 1/84 20060101ALI20150507BHJP
F16K 7/17 20060101ALI20150507BHJP
F16K 31/02 20060101ALI20150507BHJP
F16K 31/122 20060101ALI20150507BHJP
F16K 23/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
F16K7/14 A
G01F1/00 X
G01F1/68 Z
G01F1/84
F16K7/17 A
F16K31/02 A
F16K31/122
F16K23/00
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-48065(P2013-48065)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2013-210095(P2013-210095A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2014年5月29日
(31)【優先権主張番号】61/609,616
(32)【優先日】2012年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/785,819
(32)【優先日】2013年3月5日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506286940
【氏名又は名称】エムエスピー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135873
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100122736
【弁理士】
【氏名又は名称】小國 泰弘
(74)【代理人】
【識別番号】100122747
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100132540
【弁理士】
【氏名又は名称】生川 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125106
【弁理士】
【氏名又は名称】石岡 隆
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ワイ・エイチ・リウ
(72)【発明者】
【氏名】トゥク・エム・ディン
(72)【発明者】
【氏名】ヤミン・マー
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−089532(JP,A)
【文献】
特開平08−200525(JP,A)
【文献】
特開平11−319660(JP,A)
【文献】
特開2005−113221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/14
F16K 7/17
F16K 23/00
F16K 31/02
F16K 31/122
G01F 1/00
G01F 1/68
G01F 1/84
H01L 21/02
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる隙間の分だけ互いから分離されたオリフィスおよび隣接する可撓性ダイヤフラムを含み、前記ダイヤフラムがオリフィスを通って流れる液体の流速を制御するために隙間を異ならせるのに、またはオリフィスを通って流れる液体のポジティブ液体遮断を提供するのに十分な可撓性を持ち、
ポジティブ液体流れ遮断のために、前記可撓性ダイヤフラムに力を働かせるばねを含み、
圧電変換器が前記可撓性ダイヤフラムと接触しており、前記ダイヤフラムとピストンの間に位置しており、
前記圧電変換器は、電気を受け取って前記可撓性ダイヤフラムに作用させる力を変化させ、
前記ピストンが、前記可撓性ダイヤフラムに対する前記ばねの力に対抗する力を作り出すため、及び、前記ダイヤフラムを液体流量制御のための位置に配置するため、圧縮された気体によって動作可能であり、
前記ばねが、ポジティブ液体流れ遮断のために、力を前記圧電変換器に働かせることによって、前記変換器を前記可撓性ダイヤフラムに向かって動かすことが可能であり、
前記オリフィスの下流に出口を持ち、蒸発のために液体を送出する流路、及び
前記出口で形成される液体しずくの大きさを小さくするために、前記流路の前記出口の近くに気体が高速で流れるように気体を向ける気体流路をさらに含む、
液体流量を制御するための装置。
【請求項2】
前記気体の流速が、毎秒20メートルより高い、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記可撓性ダイヤフラムが金属である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記ダイヤフラムがステンレス鋼である、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記圧電変換器が、液体の流速を制御するために、前記可撓性ダイヤフラムに力を提供する、請求項1記載の装置。
【請求項6】
液体が選択された流速で流れることを許容するように、前記装置を動作させるための、液体流量センサおよび電子回路をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項7】
液体を隙間へ送出するための、容器内の加圧された液体源をさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項8】
液体が流れる隙間の分だけ互いから分離されたオリフィスおよび隣接する可撓性ダイヤフラムを含む装置によって、液体流量を制御するための方法であって、
前記オリフィスは、ガス流路の出口の実質的に中心に位置する液体出口を含み、
オリフィスを通って流れる液体の流速を制御するために、またはオリフィスを通って流れる液体のポジティブ液体遮断を提供するために、隙間の大きさを異ならせるように前記ダイヤフラムを曲げること、および、
前記液体出口で形成された液体しずくの大きさを小さくするために、前記ガス流路の出口を気体が高速で流れ、前記気体が、前記ガス流路の出口を、前記液体が前記液体出口を流れる方向と実質的に同じ方向に流れるように、前記気体を供給すること、を含み、
前記液体出口が前記オリフィスの下流に位置しており、前記オリフィスと流体連通している、
方法。
【請求項9】
毎秒20メートルより高い速度で気体が流れることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
圧電変換器が液体の流速を制御するためにダイヤフラムを曲げる動作が可能なように、可撓性ダイヤフラムと接触している圧電変換器をさらに提供する、請求項8記載の方法。
【請求項11】
ポジティブ液体流れ遮断のために、可撓性ダイヤフラムに力を働かせるためのばねを提供する、請求項8記載の方法。
【請求項12】
可撓性ダイヤフラムへのばねの力に対抗し、それによってダイヤフラムを液体流量制御のための位置に配置するための、ばねに対する、気体によって生成された力をさらに提供する、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年3月12日出願の米国特許仮出願第61/609,616号の米国特許出願であって、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の背景
半導体デバイス作製のための薄膜蒸着は、一般的に、気相過程、たとえば化学蒸着(CVD)、プラズマ蒸着(PECVD)、または原子層蒸着(ALD)を経て成し遂げられる。過程は典型的には、薄膜を形成するために、基板が、昇温された温度で前駆体蒸気に曝された、真空条件下の蒸着チャンバにおいて行われる。もし前駆体化学物質が室温で液体ならば、所望の薄膜を形成するため、前駆体液体はまず蒸気を生成するために蒸発されなければならない。
【0003】
近代的な半導体デバイス作製は、典型的には液体源蒸発装置を用いて、薄膜蒸着のための蒸気を生成する。最も広く用いられる蒸発器は、液体が加熱された蒸発器の中へ直接注入されてオンデマンドで、つまり必要に応じて蒸気を生成するので、DLI蒸発器ともいわれる直接液体注入蒸発器である。
【0004】
DLI蒸発器へ流入する気体および液体の流速は、正確に測定され、精密に制御されなければならない。正確な液体流量制御は、通常、必要とされる液体の流速が比較的低いこと、ならびにいくつかの液体特性、たとえば蒸発器の中への液体の実際の送出速度に影響を及ぼすことがある粘度および表面張力から、気体流量の正確な制御よりも困難である。
【0005】
流体の流速は、応用分野によって大きく異なることがある。大きな工業施設では、液体流速は、毎分キログラム以上の範囲であることがある。半導体および研究所調査の応用分野では、要求される液体流速は、一般的にはるかに低くなる。流速は典型的には50g/min未満であり、0.1mg/min、つまり0.0001g/minもの低さであることもあり、またはさらに低い流速であることもある。本開示の方法および装置は、このような低い液体流速の制御に特に適している。
【0006】
本開示の概要
本開示は、半導体、集積回路デバイス作製における薄膜蒸着のための液体源蒸発での液体流量の精密な制御のための方法および装置に関するものである。方法および装置は、非半導体の応用分野、たとえば研究所調査、および精密な液体流量制御のために集積回路デバイス製造と同様の要求が存在するいくつかの工業応用分野でも同様に、膜蒸着にも有用である。
【0007】
本開示は、液体流量を制御するための装置を含むものであって、装置は、液体が流れる隙間の分だけ互いから分離されたオリフィスおよび隣接する可撓性ダイヤフラムを含む。ダイヤフラムは、隙間を変化させるのに十分な可撓性があり、それによってオリフィスを流れる液体の流速を制御する、または、オリフィスを流れる液体のポジティブ液体遮断(positive liquid shutoff)を提供する。
【0008】
本開示はまた、液体が流れる隙間の分だけ互いから分離されたオリフィスおよび隣接する可撓性ダイヤフラムを含み、オリフィスを流れる液体の流速を制御するために、またはオリフィスを流れる液体のポジティブ液体遮断(positive liquid shutoff)を提供するために、隙間の大きさを変化させるように前記ダイヤフラムを曲げる装置によって、液体流量を制御するための方法も含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】液体流量制御および遮断のための従来のシステムの模式図である。
【
図2】本開示の好適な実施形態における液体流量制御および液体遮断装置の模式図である。
【
図3】本開示の液体流量制御および遮断装置を活用した蒸気生成システムの模式図である。
【0010】
例示的実施形態の説明
図1は、半導体の応用分野における液体流量制御のための従来のシステムの模式図である。
図2は、本開示の好適な実施形態における液体流量制御および液体遮断装置の模式図である。図面全体を通して、同様の要素には同様の参照符号が用いられるだろう。
【0011】
図1に示される従来のシステムでは、加圧下の液体源10、が、概して20の場所で示される液体遮断バルブに接続される。液体遮断バルブの下流は、概して60で示される液体流量センサ、および概して80で示される液体流量制御バルブである。システムの全パーツは、
図1に示されるように、小径管によって接続される。接続管は、典型的には、ステンレス鋼製である。
【0012】
遮断バルブ20は、一般的に、源10からの液体がバルブの中へ流入するための入口流路25、流量制御オリフィス30、液体遮断のためのOリングシール40を備えた可動固体部材35、および液体が遮断バルブ20から流出するための出口流路45を含む。バルブ20が、
図1に示されるようにそのオープン位置にあるときには、源10内の加圧された液体は流路25の中へ、そしてオリフィス30を経て流路45の中へ流入し、そして遮断バルブ20から流出するだろう。固体可動部材35は、作動機構50によって、バルブをクローズするためにはオリフィス30に向かう方向へ、バルブをオープンするためにはオリフィスから離れる方向へ動かすことができる。バルブはそのようにしてオン及びオフすることが可能であり、源10からの液体を必要に応じてバルブを通して流すことを許容することができる。
【0013】
作動機構50、は、通常、図示しない内部ばねを含む。機構50を作動させるために電力がオフされたときには、内部ばねは、バルブを閉じるために、可動固体部材35をオリフィス30に対して強く押しつける力を働かせるだろう。このようなバルブは、一般に、ノーマルクローズバルブといわれる。
【0014】
バルブを開くために必要とされる動作を発生させるために、作動機構50は、ばねの力に打ち勝って、可動固体部材35をそのノーマルクローズ位置から
図1に示されるオープン位置へ動かすための電気的な力を作り出す電気ソレノイドを含んでもよい。代替として、圧縮された気体圧力によって動作する空気圧ピストンは、ばねの力に対抗するため、およびバルブをそのオープン位置へ動かすために必要とされる力を作り出すのに用いることができる。電気的に動作するパイロット機構は、バルブをオープンまたはクローズするために、ピストンを所望の方向へ動かすように圧縮された気体を電気的にオンまたはオフするピストンと併せて用いることができる。
【0015】
流量センサ60は、通常、筐体70の内側のセンサ管65を含む。実際の流量感知機構および付随する電子回路は、通常、センサ60を流れる液体の流速に応答して電気信号出力を生成するために、同じ筐体内に配置される。最も広く用いられる感知機構は、流れる液体ストリームによって作り出された熱効果により、加熱されたセンサ管内の液体の流速を感知する、熱式のそれである。この応答は、感知機構および電子回路によって電子的に検出される。別の広く用いられる液体流量センサは、振動するセンサ管を通過する流れる液体に起因するコリオリ力によって作り出された機械的効果に応答して、電気出力信号を生じるコリオリ力センサである。これらの液体流量感知技術の動作原理は、液体流量センサ設計の当業者には周知である。それは、本開示においてさらに説明されないだろう。
【0016】
流量制御バルブ80も、液体遮断バルブ20と同様に、入口流路85、制御オリフィス90、出口流路95、およびOリングシール105を備える可動固体部材100、および可動固体部材100を動かすための作動機構110を含む。その作動機構50が可動固体部材35を、バルブをオープンするには完全なオープン位置へ、またはバルブをクローズするには完全なクローズ位置へ動かすだけでよい遮断バルブ20とは違って、流量制御バルブ80の作動機構110は、その完全なクローズとその完全なオープン位置との間の中間位置の範囲に、可動固体部材100を動かすことが可能でなければならない。動きは非常に精密でもなければならないから、作動機構は、液体の流速を特定の値に制御するために、精密な場所でその位置を維持することができる。くわえて、流量制御システムの応答速度も非常に速くなるように、一つの位置から別の位置への動きも非常に速くなければならない。その結果、流量制御バルブ80内の可動固体部材100の動きを制御するのに、精密、正確、および速い作動機構110が用いられなければならない。これらの理由で、精密な液体流量制御のために要求される機械的動きを生じさせるために、電気ソレノイドまたは圧電変換器が用いられることが多い。両方とも、電気入力信号に応答して、小さいが精密な機械的動きを生じさせることが可能である。圧電変換器の場合、動きは、圧電効果を有する固体材料の膨張または収縮によって生じる。固体物は、DC印加電圧信号に応答して膨張または収縮するだろう。センサ出力電圧が設定点値と等しくなるまで入力DC電圧を調節することができるように、フィードバック電子制御によって、流量センサ出力電圧と設定点電圧とを比較することができる。この手段によって、液体流速は、その動作流量範囲内で特定の値に制御および設定すること、ならびに所望の液体流速が維持されるべき期間中、その値で維持ができる。
【0017】
圧電変換器によって動作する制御バルブの一つの欠点は、変換器に印加された電力がオフされたときに、通常、バルブがオープンすることである。この理由で、電気的に動作する制御バルブは、バルブがそのノーマルオープン、待機位置に配置されたときに加圧された液体が液体流量制御バルブ70を経て流出することを防止するために、
図1に示されるように遮断バルブと併せて用いられることが多い。
【0018】
図1の液体遮断バルブ20がそのノーマルクローズ待機位置に配置されるときには、オリフィス30が可動固体部材30によって閉じられているために、遮断バルブ20内の制御オリフィス30の下流のすべての空きスペースは空となっている。バルブ20が開いたときには、源10からの液体は、接続管120を経て、流量センサ60内の流量感知管75の中に流入するだろう。この流れは、次に、流量制御バルブ80内の入口流路85に流入し、次に、オリフィス90を経て下流側の流路95に流入し、そして、送出管140から流出するだろう。これらすべてのスペースは、初めは空っぽであり、オペレーションの間に液体で充填されるだろう。これらの空きスペースをまとめた合計容積は、システムの液体死容積といわれる。
【0019】
図1の従来の液体流量制御システムにおける死容積内の液体の量は、良好に設計されていないシステムにおいて、かなり大きくなることがある。良好に設計されたシステムにおける典型的な死容積は、100μlのオーダーである。良好に設計されていないシステムにおいて、死容積ははるかに大きいことがある。死容積が数千マイクロリットルの範囲であることは、珍しいことではない。
図1の流量制御システムが十分に長い時間にわたって待機位置に配置されると、オペレーションの間は液体で充填されている死容積は、スタンバイの間オープンである制御バルブ70を経て死容積から液体が漏出することにより、全く空っぽになることがある。立ち上げの際は、加圧された源10からの初期の液体の流れは、液体が送出管140の端部150に達することができ、液体が蒸気を生成するための蒸発器の中へ流入するために、第1にこの空っぽの死容積スペースを充填するためにその中へ流入する。システムが短時間の間だけ待機状態に置かれると、液体が制御バルブ80を経て少量だけ漏出するだろう。再立ち上げの際は、空っぽの死容積を液体流れによって充填するために、短時間だけかかるであろう。そのため、下流側の蒸気生成蒸発器へ送出される実際の液体は、液体の流れが再び開始される前に死容積がどの程度まで液体で充填されているかによって大きく異なりうる。このようなことが、そのほかの点では正確および精密な液体流量制御システムにおいて、蒸発器への液体の実際の送出速度のある程度のばらつきをひき起こす。
【0020】
例示の目的で、100μlの合計死容積は、空っぽの死容積を充填するために100μl/分の液体流量を必要とする。これは、開始に際して、100μl/分の液体流量が1分後までに送出管140の出口150に達していないことを意味する。1分、または60秒の遅延は、ほとんどの応用分野でかなりの弊害になるだろう。この困難は、通常、分流器バルブが気体/蒸気混合物を膜蒸着のための蒸着チャンバの中へ送出するために動作することができる所望の分流期間に達するまで、蒸発器の出力気体/蒸気混合物を真空ポンプに向けるために動作することができる分流器バルブを、蒸発器の出力に設置することによって克服される。上述の例では、バルブが気体/蒸気混合物を蒸着手段の膜蒸着チャンバへ送出するために向けることができる前に、分流器バルブは1.0分間動作しなければならない。最終的な結果、液体送出システムの死容積によって作り出された問題を克服するために、時間と材料(液体)の両方が浪費される。
【0021】
液体の流速がより低い、または死容積がより大きい、またはその両方のときには、問題はさらに重大である。液体送出システムの死容積に起因する制御されていない液体の送出は、特に集積回路デバイスの大量の商業生産において、動作上の困難を引き起こすことが多かった。
【0022】
死容積の問題は、システム内部の死容積を最小化するように、液体送出システムを設計することによって部分的に克服することができる。問題を最小化することができるが、完全になくすことはできない。
図1に示される従来のシステムにおいて、死容積の問題を克服するために必要とされる労力は、時にはかなりのものになることがある。
【0023】
液体の死容積の問題にくわえて、液体を低速で送出管140へ送出することは、液体の表面張力に起因する管140の端部150での液体のしずくを形成する原因になるだろう。管140の端部150からより多くの液体が流出するので、液体のしずくは管140に付着したままであるが、より大きくなるだろう。しずくに蓄積された液体が十分に大きくなり、しずくの重量が表面張力の効果に打ち勝つのに十分に大きいとき、しずくは管140から離れて落下し始めるだろう。送出管140の端部150に付着した液体のしずくは、蒸発しないだろう。液体が蒸発器の下流にある蒸発器内の加熱された環境内へ送出されるときにだけ、蒸発することができる。その結果、このようなシステムからの蒸気生成速度は安定していないだろう。蒸気は、各しずくが管150から離れて落下し、加熱された蒸発器へ送出されるときに、定期的な噴出の形態で生成されるだろう。
【0024】
液体の表面張力を克服するのに十分な重量を持つしずくの大きさは、液体濃度、その表面張力と同様に、送出管140の直径によるだろう。典型的なしずくの大きさは、液体、たとえば水について、50μlのオーダーである。100μl/分の液体の流速で、50μlのしずくを毎分2しずくの速度で形成し、結果として毎分2パルスの速度で蒸気の脈動を引き起こす。
図1の従来の液体送出システムにおける液体死容積および不安定な蒸気生成を克服するために、
図2の装置を用いることができる。
【0025】
図2は、液体の流速および液体遮断を制御するための、組み合わせられた液体流量制御および遮断装置を活用した新しい新規のシステムを例示する。装置は、一般的に200の場所で示される。別段の記述がなければ、システムの全パーツは、円形、つまり丸い断面を持つ円筒形の形状である。パーツは、典型的には、ステンレス鋼製である。装置は、下部本体ピース210、円形の金属ダイヤフラム220の形態の可撓性固体部材からなり、ねじ280の手段によって、圧縮ピース270および中央本体ピース260によって所定位置にしっかりと保持される。ねじ280が締められるときには、圧縮ピース270はダイヤフラム220の縁をきつく圧縮して、金属ダイヤフラム220の縁のまわりに圧縮シールを形成するだろう。下部本体ピース210は、図示しない外部の源からの加圧された液体が、ダイヤフラム下方のスペース230へ流入するのを許容する入口液体流路240を備える。液体は、次に、液体送出管としても機能する出口流路250を経て流れる。出口流路250から流出する液体は、次に、同様に図示しない下流の蒸気生成装置の中へ流入する。流路250は、スペース230内の液体が入ることができるオリフィスを形成する入口245、および、同様に図示しない外部の蒸気生成装置への送出のために液体が出ることができる出口255を有する。
【0026】
中央本体ピース260は、上端部330および下端部340を有する圧電変換器310を備える。変換器310は、上部止めとして働く中央本体ピース260の内表面335との間で所定位置にしっかりと保持される一方で、下端部340はダイヤフラム220に対して強く押しつけられる。ダイヤフラムは可撓性があり、ばねのように作用してその2つの端部の間で圧電変換器を支える。DC電圧が一対の入力線320を経て印加されるときには、圧電変換器は膨張してその長さが増大する。圧電変換器の増大した長さは、ダイヤフラム220と接触しているその下端部340が動く原因になり、そのため、ダイヤフラムを下方へ動かし、それによってダイヤフラム220の下表面222および流路250のオリフィス入口245を分離する隙間225の幅を小さくするだろう。外部の源内の加圧された液体は一定の圧力で保たれるので、隙間スペース225を小さくすることは、入口オリフィス245を経る液体の流速を減少させる原因になるだろう。十分に高いDC電圧が圧電変換器に印加されるときには、ダイヤフラムは隙間をクローズするために動き、それによって液体流速をゼロに近い値に変えるだろう。この手段によって、単に圧電変換器に印加されるDC電圧を変えることによって、装置を経て流れる液体の流速がゼロ近くからある上限まで変化することができる。
【0027】
隙間スペース225は、非常に小さい。典型的には、それは約0.1mm未満である。明瞭にするため、
図1に示される隙間スペースは、設計をより詳細に示すために大きく拡大されている。下部本体ピース210の他のパーツ、たとえば、流路250の長さおよびその直径も、明瞭にするため、設計をより詳細に示すために大きく拡大されている。
【0028】
液体の流速を制御することにくわえて、本開示の装置200は、上部本体ピース360内に包含される液体遮断機構も含む。上部本体ピース360は、
図2に示されるように、ばね370を内包しており、ばね370は、その外周のまわりにOリングシール410および420を備える可動空気圧ピストン380を押圧する。圧縮された気体が図示しない外部の圧縮された気体源から気体入口390を経て上部本体ピース360の中に導入されるので、圧縮された気体は上部本体ピース360の中へ流入して、ピストン380を介してばね370の力に対抗する力を働かせるだろう。ピストン380は、そのため、
図2に示されるように、その下端部430が、圧電変換器310から上方に持ち上げられて離れた状態となるだろう。上部本体ピース360には小さい通気孔395があるので、ピストン380の上表面に作用する圧力は、実質的に周囲大気圧と同じだろう。この位置において、圧電変換器の上端部330は、中央本体ピース260の表面335と強く接触しているだろう。この位置では、圧電変換器310は、隙間スペース225を制御するように動作して、上記で説明したように、バルブを通過する液体の流速を制御することができる。
【0029】
圧縮された気体がオフされたときには、ばね370の力によってピストン380の下端部420が下方へ動いて圧電変換器310を下方に押圧する。これにより、同様に、ダイヤフラム220と接触している圧電変換器の下端部340が可撓性のあるダイヤフラム220の中心を押し、下方に移動して隙間225をクローズして液体の流れを遮断する。この位置において、
図2の装置は、その待機遮断位置にある。装置は、液体の流れを強力なばねの力によって完全に遮断するように、強力なばね370を有するように設計される。そのため、
図2の装置は、その通常の待機位置において、または電力がオフされたときにおいて、ポジティブ液体遮断バルブとして機能することができる。そして、通常動作の間に電力がオンとなったときには、装置は、ピストン380の下端部430が圧縮された気体圧力によって圧電変換器310から持ち上げられるので、流速制御バルブとして機能することができる。
【0030】
図2に示す流量制御/流量遮断装置の組み合わせにおいては、液体の流量制御と遮断のために必要とされる独立した構成要素の数が減っているので、コストが節減される。より重要なことには、液体死容積が大幅に減少する。液体死容積<10μlを容易に達成可能であり、より綿密な設計によって、2μlもの低い死容積が達成される。
【0031】
上記で説明したように、
図1の液体送出管140の端部150から流出する液体は、液体の表面張力により、しずくを形成するだろう。表面張力によって管140の端部に付着したしずくの中へ、より多くの液体が流入するので、しずくは、そのため、より大きくなるだろう。充分な液体がしずく内に蓄積されたときに、しずくの重量は液体の表面張力に打ち勝って、しずくが送出管140の端部から離れて自由落下しずくを形成する原因になるだろう。このような液体送出システムの出力は、もはや安定していないだろうが、離散した個別のしずくの形態で、定期的な間隔で送出管140の端部から落下する。
【0032】
同じ現象は、本開示の液体送出装置でも起こりうる。液体流路250は、液体表面張力により液体のしずくが同様に形成される出口255を持つ液体送出管として働く。液体表面張力によるしずく形成の問題を克服するために、本開示の
図2の装置は、入口ガス流路290も含む。圧縮された気体源がガス流路290に接続されるときに、気体は出口オリフィス300から流出して高速ガスジェットを形成するであろう。この高速ガスジェットは、毛細管250の端部に蓄積してしずくを形成する液体を、液体が出口255に蓄積し始めるとすぐにせん断して取り除く剪断力を形成する。その結果、液体表面張力に起因する不安定な液体の流れは、すっかりなくなってはいないが、このような装置によって大部分は克服することができる。
【0033】
液体しずくを端部255から引き離すのに必要とされる気体速度は、気体、液体の分子量、および送出管250の端部155のまわりの気体流れシステムの設計による。図示のシステムにおいて、管250は気体オリフィス300内の中心に位置しており、音速が最も効果的である。実際には、音速の5から10%ほど低い気体速度が、かなり効果的であることができる。音速334m/sの窒素については、〜20m/sの気体速度を効果的に用いることができる。
【0034】
図2の装置が特に液体流量制御に有用である一方で、同じ装置はいくつかの応用分野では気体流量の制御に用いることもできる。装置は、特に低い流速での液体の制御に有用である。同じ設計および特徴は、高い流速での液体流量の制御にも有用である。
【0035】
図3は、
図2の装置を活用して、気体および液体の流速を制御して、薄膜蒸着のための蒸気を生成する典型的なシステムを示す。本開示の液体流量制御および遮断装置は、一般的に200の場所で示される。源180は、加圧下の液体の源である。それは液体流量センサ185に接続され、それが次に装置200において液体入口流路240に接続される。くわえて、気体入口流路390に接続された圧縮された気体の源170があり、上記で説明したように、装置内の空気圧ピストンを動作させるための圧縮された気体を提供する。圧縮された気体の源190は、気体流量コントローラ190に接続されて、それが次に入口気体流路290に接続されて、装置を動作させるのに必要とされるキャリアガスを提供する。出口390から流出する気体および液体は、次に、
図3に示されるように蒸発器400の加熱された蒸発チャンバの中へ流入して、基板上の薄膜蒸着のための気体/蒸気混合物を生成する。
【0036】
本開示を好適な実施形態を参照しながら説明してきたが、当業者には、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない範囲で、形態および詳細を変更してもよいことが認識されるだろう。