特許第5725487号(P5725487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5725487
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】バイオレメディエーション剤
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/10 20060101AFI20150507BHJP
   C12F 3/10 20060101ALI20150507BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20150507BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   B09B3/00 EZAB
   C12F3/10
   C12N1/16 G
   C12N1/20 D
   C12N1/20 F
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-125501(P2014-125501)
(22)【出願日】2014年6月18日
【審査請求日】2014年6月25日
【審判番号】不服2014-25588(P2014-25588/J1)
【審判請求日】2014年12月15日
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】393005989
【氏名又は名称】株式会社國場組
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡嘉敷 唯章
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 美奈
(72)【発明者】
【氏名】崎濱 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大城 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 英次
(72)【発明者】
【氏名】幸地 優作
【合議体】
【審判長】 河原 英雄
【審判官】 川端 修
【審判官】 中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−073475(JP,A)
【文献】 国場組など、微生物を活用した土壌浄化技術開発へ ,日本経済新聞 電子版,日本,日本経済新聞社,2012年 3月17日,URL,http://www.nikkei.com/article/DGXNASJC16028_W2A310C1LX0000/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡盛蒸留粕を有効成分とする石油系炭化水素分解用バイオレメディエーション剤。
【請求項2】
石油系炭化水素で汚染された土壌に散布するものである請求項1記載の石油系炭化水素分解用バイオレメディエーション剤。
【請求項3】
泡盛蒸留粕が、泡盛もろみからのアルコール蒸留時の残渣として得られたものである請求項1または2記載の石油系炭化水素分解用バイオレメディエーション剤。
【請求項4】
泡盛蒸留粕とリン化合物を有効成分として含有する石油系炭化水素分解用バイオレメディエーション用組成物。
【請求項5】
石油系炭化水素で汚染された土壌に散布するものである請求項記載の石油系炭化水素分解用バイオレメディエーション組成物。
【請求項6】
リン化合物が、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カルシウム、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、リン酸マグネシウムおよびリン酸アンモニウムよりなる群から選ばれたものである請求項4または5記載のバイオレメディエーション組成物。
【請求項7】
泡盛蒸留粕と、リン化合物とを、石油系炭化水素で汚染された土壌に散布することを特徴とする土壌中の石油系炭化水素の浄化方法。
【請求項8】
石油系炭化水素で汚染された土壌1kg当り、乾燥固形物換算で5ないし100gの泡盛蒸留粕と、リン化合物を正リン酸換算で0.1ないし5gを散布する石油系炭化水素で汚染された土壌の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオレメディエーション剤に関し、更に詳細には、土壌中の微生物を活性化することで土壌中の石油系炭化水素を有効に分解することのできる石油系炭化水素分解用バイオレメディエーション剤およびバイオレメディエーション用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
石油系炭化水素などの石油製品等を取り扱う事業所、例えば、石油供給施設や工場、軍事基地等の敷地では、しばしば石油製品が漏出し、土壌を汚染していることがある。そして、これらの敷地を別の用途あるいは事業に転用するに当たっては、石油系炭化水素(以下、「石油類」と略称する)汚染された土壌自体を取り除いたり、あるいはこの土壌中の石油類を分解したり、あるいは回収して除去することが求められている。
【0003】
従来、石油類で汚染された土壌を浄化する方法としては、例えば、掘削により石油類で汚染された土壌を除去する方法のほか、石灰や酸化分解を利用する化学分解法、吸着剤を用いる吸着法、微生物等を利用したバイオレメディエーション法等が知られている。
【0004】
上記のバイオレメディエーション法は生物的環境修復(浄化)技術であって、これには、大きく分けて、次の2つの方法がある。すなわち、汚染土壌中にもともと生息している土着微生物に対し、栄養成分や酸素等を供給し、これを活性化して汚染に対する自浄作用を増強、強化するバイオスティミュレーションと、汚染物質を分解する能力を有する外来微生物を別の場所で予め培養し、これを汚染土壌に導入(投入)するバイオオーグメンテーションである(特許文献1)。
【0005】
このバイオレメディエーションを利用した浄化方法は、環境負荷及び処理コストが低いという利点を有する反面、石油類を分解する能力を有する微生物が十分に土壌中に生息し、かつ、これが十分な能力で石油類を分解することが必要であるため、いつでも利用可能というものではなく、汚染原因である石油類の種類や、その汚染程度を見極めて採用する必要があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−307051
【特許文献2】特開2002−224658
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、石油類で汚染された土壌を、効率良く、バイオレメディエーション法により浄化する技術を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、基本的に石油類で汚染された土壌中には、石油類に対して耐性をもち、更にはそれらを分解する能力を有する微生物が生育しているはずであるとの認識にたち、これに基づいて、このような微生物を更に活性化させることができれば、土壌中の石油類の分解は容易であるとの着想を得た。そして更に、石油類に対する耐性と、分解性を有する微生物の活性を向上する物質を鋭意検索していたところ、泡盛蒸留粕が、石油類を分解する微生物の活性化に有用であることを見出した。
【0009】
そして、このものを石油類で汚染された土壌に散布し、バイオレメディエーションを行えば効率良く汚染土壌中の石油類を分解できること、更にこれにリン化合物を加えればより効率高く汚染土壌中の石油類が分解できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、泡盛蒸留粕を有効成分とする石油系炭化水素分解用バイオレメディエーション剤を提供するものである。
【0011】
また本発明は、泡盛蒸留粕とリン化合物を有効成分として含有する石油系炭化水素分解用バイオレメディエーション用組成物を提供するものである。
【0012】
更に本発明は、泡盛蒸留粕とリン化合物とを、石油類で汚染された土壌に散布することを特徴とする土壌中の石油類の浄化方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の試験群1についての、経時的な土壌中の油分の低下を示す図面である。
図2】実施例1の試験群2についての、経時的な土壌中の油分の低下を示す図面である。
図3】実施例1の試験群3についての、経時的な土壌中の油分の低下を示す図面である。
図4】実施例1の試験群4についての、経時的な土壌中の油分の低下を示す図面である。
図5】実施例4の、重油添加土壌中の経時的なTPH残存率を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、バイオレメディエーション剤およびバイオレメディエーション用組成物とは、石油類により汚染された土壌に散布することにより、土壌中の微生物の活性を高め、この微生物の作用により土壌中の石油類を分解する製剤および組成物を意味する。また、石油類とは、石油系炭化水素を意味するものであり、これには、ナフサ(ガソリン)、灯油、軽油、重油等が含まれる。
【0015】
本発明において、バイオレメディエーション剤やバイオレメディエーション用組成物の有効成分として使用される泡盛蒸留粕は、泡盛の製造過程でもろみを蒸留することにより得られるものである。より具体的には、アルコール発酵もろみ液から蒸留によりアルコール分を分離して残った部分を泡盛蒸留粕として使用することができる。
【0016】
泡盛は、沖縄県で生産される蒸留酒であるが、いわゆる焼酎とは、(1)原料米としてインディカ米を使用する、(2)麹菌に黒麹菌を使用する、(3)原料の全てを米麹とした一次仕込みである等の点で相違する。従って、この泡盛生産により副生する泡盛蒸留粕も、例えば、含有する有機酸の種類、量などの点において、焼酎の蒸留粕とは相違するものである。
【0017】
次に、一般的な泡盛蒸留粕の組成の分析値および既に報告されている泡盛蒸留粕の成分等について報告された結果を以下に示す。このうち、表1は本発明の実施例で使用された泡盛蒸留粕の成分を分析した値であり、表2および表3は、泡盛蒸留粕の各種成分および有機酸組成を報告した論文より引用したものである。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
上記した泡盛蒸留粕が本発明のバイオレメディエーション剤の有効成分として使用できるが、このものは泡盛蒸留粕溶液そのままで使用しても良く、また、適当な手段で液体分と固形分を分離し、液体分をそのまま、あるいは濃縮した濃縮液や、さらにこれを乾燥した乾燥物、あるいは泡盛蒸留粕溶液を適当な溶媒で希釈した希釈液の状態で使用しても良い。また、上記固形分をそのまま、あるいは適当な手段で乾燥させ、さらに粉末にして使用しても良い。
【0022】
上記泡盛蒸留粕のバイオレメディエーション剤としての使用量は、土壌中に含まれる石油類の量やその質(重油分が多いか、軽油分が多いか)等により実験的に決めることが望ましいが、例えば、軽油を10g/kg程度含有する土壌1kgに対しては、泡盛蒸留粕を、その乾燥固形物換算で5ないし100g程度となる量を散布すればよい。なお、通常得られた状態での泡盛蒸留粕(溶液)中での固形分は、0.5〜10%程度である。
【0023】
このような条件で上記土壌に泡盛蒸留粕を散布し、14ないし28日間程度放置することで、土壌中の石油類が0.6g/kg以下まで分解される。
【0024】
なお、特許文献2には、蒸留粕を用いて土壌や地下水中の有機塩素系化合物を分解する方法が開示されている。しかし、この方法は、有機塩素系化合物を分解するものであり、しかも具体的に使用される蒸留粕は、泡盛とは異なる製法で得られる焼酎のものであるから、本発明とは関連がないものである。
【0025】
本発明のバイオレメディエーション用組成物においては、よりその効果を高めるため、リン化合物を配合することができる。配合されるリン化合物としては、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カルシウム、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、リン酸マグネシウム、リン酸アンモニウム等や、リン酸を含むことが知られている鶏糞等を利用することができる。
【0026】
このリン化合物は、上記泡盛蒸留粕と組合せ、バイオレメディエーション用組成物で使用されるが、その形態は特に制約されるものではない。しかし、泡盛蒸留粕が液状の場合は、リン化合物も適切な溶媒に溶解させて液状とし、これを混合することが好ましい。
【0027】
本発明のバイオレメディエーション用組成物の調製において、リン化合物を配合する場合には、石油類に汚染された土壌(以下、「油汚染土壌」という)に対して、正リン酸換算で0.01から0.5質量%程度、好ましくは、0.05質量%から0.2質量%となる量とすれば良い。
【0028】
上記の、リン化合物と泡盛蒸留粕を組合せたバイオレメディエーション用組成物は、前記したバイオレメディエーション剤とほぼ同様に使用すればよいが、この組成物の方が土壌中の石油類を分解する能力が高いので、石油類でより高度に汚染された被処理土壌や、石油類中でも重油類がより多い被処理土壌に適する。
【0029】
なお、本発明のバイオレメディエーション用組成物においては、必要により更に含窒素化合物を配合することもできる。このような含窒素化合物の例としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、アミノ酸、タンパク質等を挙げることができる。この含窒素化合物の配合する場合の量は特に制約はないが、その添加量は処理すべき油汚染土壌について実験的に決めることができる。なお、これらの含窒素化合物に代えて、空気中の窒素を固定化できる能力を有する微生物を利用することもできる。
【0030】
次に本発明のバイオレメディエーション剤やバイオレメディエーション用組成物(以下、「レメディエーション剤等」という)を利用した、油汚染土壌の浄化方法について説明する。
【0031】
本発明のレメディエーション剤等を使用し、油汚染土壌を浄化するには、必要量のレメディエーション剤等を油汚染土壌に散布すればよい。ここでレメディエーション剤等の必要量は、一般的な使用量を散布してもよいが、予め処理すべき油汚染土壌の代表的部分を採取し、この中の石油類の分解に必要な量を実験的に調べてから散布することが好ましい。
【0032】
また、本発明のレメディエーション法では、主に好気性の微生物の働きにより土壌中の石油類を分解するので、レメディエーション剤等を散布した後はこれに適合した処置をしておくことが好ましい。すなわち、大気中の空気と接触するように、撹拌もしくは通気、またはその両方をしておくことが好ましい。
【0033】
上記のレメディエーション法においては、土壌中の石油類が分解され、浄化されるまでには一般的に、21日ないし180日程度、好ましくは90日程度を要するが、その終点は、簡易な方法では石油臭の消失により、正確には土壌中の石油類を分析することで判断することができる。
【0034】
このようにレメディエーション処理された土壌中では、一般の土壌中に比べ、石油類に対して耐性を有する微生物や、更に石油類を分解する能力を有する微生物が優占的な菌相を示す。具体的には、Achromobacter属、Agromyces属、Arthrobacter属、Bacillus属、Bordetella属、Cupriavidus属、Endosymbiont属、Ensifer属、EnterobacterGordonia属、Lysobacter属、Microbacterium属、Micrococcus属、Ochrobactrum属、Pandoraea属、Pseudomonas属、Sinorhizobium属、Stenotrophomonas属、Streptomyces属等の、鉱物油の成分であるアルカンを資化する微生物(細菌)として、沖縄で分離された菌株[沖縄微生物ライブラリーに保管・公開(http://omljp.jimdo.com/機能性評価/アルカン資化性/)]として知られている微生物等の作用によって石油類が分解されるものと考えられる。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0036】
実 施 例 1
軽油浄化実験(1):
大宜味(国頭マージ)を試験土壌として、土壌中の軽油の分解実験を行った。まず、試験土壌を風乾後、2mm目の篩にかけ整粒し、更に土壌中の水分が20〜21%程度となるよう調整した。これを1kgずつポリ容器に取り、これに下記の各試験群の組成となるよう、泡盛蒸留粕(固形分換算)およびリン酸水素二カリウム(正リン酸換算)を加えた。
【0037】
本試験で使用した泡盛蒸留粕は、前記した蒸留粕B(忠孝酒造より入手)であり、試験土壌である国頭マージ中の栄養分は、下記表4の通りであった。
【0038】
【表4】
【0039】
次いでこれに、2日〜1週間ウェザリングした軽油(エネオス社製)を、1質量%となるよう加え、そのまま30℃の温室中に放置した。これを1週間ごとに撹拌するとともに、軽油の含有量をガスクロマトグラフィーで測定した。なお、同時に水分量も測定し、不足の場合は、加水し当初の水分量に調整した。
【0040】
一週間ごとの軽油の含有量測定結果を、試験群1についての結果を図1に、試験群2についての結果を図2に、試験群3についての結果を図3に、試験群4についての結果を図4にそれぞれ示す。
【0041】
試験群1−a: 蒸留粕 0%(対照)
試験群1−b: 蒸留粕 0.5%
試験群1−c: 蒸留粕 1%
試験群1−d: 蒸留粕 5%
試験群1−e: 蒸留粕 10%
【0042】
試験群2−a: 蒸留粕 0%(対照)
試験群2−b: 蒸留粕 0% 、リン 0.01%
試験群2−c: 蒸留粕 0.5% 、リン 0.01%
試験群2−d: 蒸留粕 1% 、リン 0.01%
試験群2−e: 蒸留粕 5% 、リン 0.01%
試験群2−f: 蒸留粕 10% 、リン 0.01%
【0043】
試験群3−a: 蒸留粕 0%(対照)
試験群3−b: 蒸留粕 0% 、リン 0.05%
試験群3−c: 蒸留粕 0.5%、 リン 0.05%
試験群3−d: 蒸留粕 1% 、リン 0.05%
試験群3−e: 蒸留粕 5% 、リン 0.05%
【0044】
試験群4−a: 蒸留粕 0%(対照)
試験群4−b: 蒸留粕 0% 、リン 0.1%
試験群4−c: 蒸留粕 0.5% 、リン 0.1%
試験群4−d: 蒸留粕 1% 、リン 0.1%
試験群4−e: 蒸留粕 5% 、リン 0.1%
試験群4−f: 蒸留粕 10% 、リン 0.1%
【0045】
図1ないし図4に示した結果から、蒸留粕の添加により軽油の分解は早くなるが、5%以上ではその効果が頭打ちになること(図1)、およびリン化合物を添加することでより軽油の分解が早くなることが明らかとなった(図2図4)。また、ガスクロマトグラフィーによっても、軽油が分解、消失していることが確認できた。
【0046】
実 施 例 2
軽油浄化実験(2):
大宜味(国頭マージ)を試験土壌として、土壌中の軽油の分解実験を行った。まず、試験土壌を風乾後、2mm目の篩にかけ整粒し、更に土壌中の水分が20〜21%程度となるよう調整した。この土壌55kgに対して、実施例1と同じ軽油(エネオス社製)550gを加え、更に下記の量の蒸留粕(忠孝酒造より入手)およびリン化合物若しくは鶏糞を加えて、よく混合撹拌し、試験群5および6の土壌とした。この試験土壌を、空気の供給装置および下部に3本の散気管を設置したプラスチックの箱(横54〜54.5cm×奥行き36〜37cm×高さ30cm)に入れ、土壌中にコンプレッサーで空気を送り込んだ。送気量は、1.25L/minに調整した。
【0047】
試験群5: リン酸水素二カリウム 30.9g
蒸留粕(乾燥固形分10%) 1,100g
試験群6: 鶏糞(N 3%、P 6%、K 3.5%、C/N=6)
91.6g(P換算で0.01%)
蒸留粕(乾燥固形分10%) 1,100g
【0048】
これを、そのまま30℃の温室中に放置し、1週間ごとに撹拌するとともに、全石油系炭化水素(TPH)濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。なお、同時に水分量も測定し、不足の場合は、加水し当初の水分量に調整した。また、対照群としては、軽油のみを加えた水分調整後の土壌を利用した。
【0049】
ガスクロマトグラフィーでのTPHの測定から計算した土壌中のTPHの残存率を表5に示した。
【0050】
【表5】
【0051】
この結果から明らかなように、何も加えない対照では、5週間たっても加えた軽油が80%程残っているのに対し、蒸留粕とリン化合物(リン酸水素二カリウムまたは鶏糞)を加えた場合には、軽油の残存量が、10〜20%程度に減っていた。
【0052】
実 施 例 3
軽油浄化実験(3):
実施例2と同様にして、試験土壌を調製した。次いでこの土壌55kgに、実施例1で使用したのと同じ軽油550gと、蒸留粕(忠孝酒造より入手)および過リン酸石灰を下記の量で加え、よく混合撹拌して試験群7および8の土壌とした。この試験土壌を、空気の供給装置および下部に3本の散気管を設置したプラスチックの箱(横54〜54.5cm×奥行き36〜37cm×高さ30cm)に入れ、土壌中にコンプレッサーで空気を送り込んだ。送気量は、1.25L/minに調整した。
【0053】
試験群7: 過リン酸石灰(水溶性リン酸として14.5%) 38g
蒸留粕(乾燥固形分10%) 550g
試験群8: 過リン酸石灰(水溶性リン酸として14.5%) 38g
蒸留粕(乾燥固形分10%) 1,100g
【0054】
これを30℃の温室中に放置し、1週間ごとに撹拌するとともに、全石油系炭化水素(TPH)濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。なお、同時に水分量も測定し、不足の場合は、加水し当初の水分量に調整した。また、対照群としては、軽油のみを加えた水分調整後の土壌を利用した。
【0055】
ガスクロマトグラフィーでのTPHの測定から計算した土壌中のTPHの残存率を表6に示した。
【0056】
【表6】
【0057】
この結果から明らかなように、何も加えない対照群では、10週間たっても加えた軽油が65%程残っているのに対し、蒸留粕と過リン酸石灰を加えた場合には、軽油の残存量が、10%以下に減っていた。
【0058】
実 施 例 4
重油浄化実験:
実施例2と同様にして、試験土壌を調製した。次いでこの土壌55kgに550gのA重油と、蒸留粕(忠孝酒造より入手)を1,100gおよびリン酸水素二カリウムを61.8gを加え、試験群9の土壌とした。この試験土壌を、空気の供給装置および下部に3本の散気管を設置したプラスチックの箱(横54〜54.5cm×奥行き36〜37cm×高さ30cm)に入れ、土壌中にコンプレッサーで空気を送り込んだ。送気量は、1.25L/minに調整した。
【0059】
これを30℃の温室中に放置し、1週間ごとに撹拌するとともに、全石油系炭化水素(TPH)濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。なお、同時に水分量も測定し、不足の場合は、加水し当初の水分量に調整した。また、対照群としては、A重油のみを加えた水分調整後の土壌を利用した。
【0060】
ガスクロマトグラフィーでのTPHの測定から計算した土壌中のTPHの残存率を図5に示した。
【0061】
この結果から明らかなように、何も加えない対照群では、約5週間たっても加えたA重油がほぼ100%残っているのに対し、蒸留粕とリン酸水素二カリウムを加えた試験群9では、A重油の残存量が、30%程度に減っていた。

【要約】
【課題】石油系炭化水素で汚染された土壌を、効率良く、バイオレメディエーション法により浄化する技術を提供すること。
【解決手段】泡盛蒸留粕を有効成分とするバイオレメディエーション剤、泡盛蒸留粕とリン化合物を有効成分として含有するバイオレメディエーション用組成物並びに泡盛蒸留粕と、リン化合物とを、石油系炭化水素で汚染された土壌に散布することを特徴とする土壌中の石油系炭化水素の浄化方法。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5