特許第5725497号(P5725497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725497
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】鉄道用レール
(51)【国際特許分類】
   E01B 19/00 20060101AFI20150507BHJP
   C23C 4/08 20060101ALI20150507BHJP
   C23F 13/00 20060101ALI20150507BHJP
   C23C 4/06 20060101ALI20150507BHJP
   C23C 4/12 20060101ALI20150507BHJP
   C23C 4/02 20060101ALI20150507BHJP
   C23C 4/18 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   E01B19/00 Z
   C23C4/08
   C23F13/00 C
   C23C4/06
   C23C4/12
   C23C4/02
   C23C4/18
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-216397(P2010-216397)
(22)【出願日】2010年9月28日
(65)【公開番号】特開2012-72565(P2012-72565A)
(43)【公開日】2012年4月12日
【審査請求日】2013年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510258212
【氏名又は名称】関谷 昌一
(73)【特許権者】
【識別番号】510258223
【氏名又は名称】平井 靖男
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】関谷 昌一
(72)【発明者】
【氏名】田淵 剛
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−100801(JP,A)
【文献】 特開2004−351348(JP,A)
【文献】 実開昭53−109209(JP,U)
【文献】 特開平09−268503(JP,A)
【文献】 特開平05−214701(JP,A)
【文献】 特開平09−125221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 19/00
C23C 4/02
C23C 4/06
C23C 4/08
C23C 4/12
C23C 4/18
C23F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛部(21)とアルミニウム部(22)とが40:60〜50:50の体積比で非層状態に堆積する溶射皮膜(2)を、低温アーク溶射によって、底部(4)の下面(4B)から腹部(6)にわたる表面に被覆形成し、上記溶射皮膜(2)の平均膜厚寸法(T)を、200μm≦T≦500μmに設定し、
上記底部(4)を締結部材(3)(3)によって枕木(M)に固着した使用状態下で、上記締結部材(3)(3)の押圧部(30)(30)が弾発付勢力(F)をもって接触する上記底部(4)の上面(4A)に於て、上記溶射皮膜(2)の膜厚寸法(T)を、上記平均膜厚寸法(T)よりも局部的に厚く形成して、締結用の被押圧部(20)(20)を設けたことを特徴とする鉄道用レール。
【請求項2】
上記溶射皮膜(2)は、100g/m〜240g/mの無機質系封孔剤にて封孔処理されている請求項1記載の鉄道用レール。
【請求項3】
上記溶射皮膜(2)は、母材レール鋼(1)の表面をブラスト処理によって粗面形成して平均表面粗さ(R)を50μm以上とした被溶射面部(15)上に形成されている請求項1又は2記載の鉄道用レール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用レールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道用のレール鋼に金属を溶射し、トンネルや踏切、海岸沿いの地域等の腐食環境下でも腐食しにくい防食レールが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−62515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の防食レールは、亜鉛−アルミニウム合金から成る線材を、ガス炎で溶融し、さらに溶融した合金に圧縮空気流を当てて細粒化し、溶融状態の液滴を加速して被溶射面に衝突堆積させて皮膜を形成する溶線式フレーム溶射にて防錆処理を行っていた。亜鉛−アルミニウム合金は、アルミニウムの含有量を体積比で15%程度とするのが限度であり、従来の防食レールは、その亜鉛−アルミニウム合金の線材を溶射材料として用いるため、アルミニウムの含有率が低く、溶射皮膜の耐蝕性が十分でなかった。また、溶射皮膜が粗雑となって、水や酸素の透過を防止することができなかった。さらに、溶線式フレーム溶射は、ガス炎による溶融の熱量が高く、吹き付ける溶射材料の温度が非常に高温となるため、被溶射面が歪みを発生し、溶射皮膜が剥離して傷や割れ目を生じ易くなっていた。海底トンネルや地下トンネル等の腐食環境下で、鉄道用レールに傷や割れ目等から水分等が浸透すると発錆や腐食が発生し、レール寿命が短くなるという欠点があった。
【0005】
そこで、本発明は、海底トンネルや海岸沿い、又は、連接軌道踏切等に敷設する鉄道用レール及び締結部材の耐腐食性を改善し、また、レールに確実に耐腐食性を付与できる防錆処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鉄道用レールは、亜鉛部とアルミニウム部とが40:60〜50:50の体積比で非層状態に堆積する溶射皮膜を、低温アーク溶射によって、底部の下面から腹部にわたる表面に被覆形成し、上記溶射皮膜の平均膜厚寸法を、200μm≦T≦500μmに設定し、上記底部を締結部材によって枕木に固着した使用状態下で、上記締結部材の押圧部が弾発付勢力をもって接触する上記底部の上面に於て、上記溶射皮膜の膜厚寸法を、上記平均膜厚寸法よりも局部的に厚く形成して、締結用の被押圧部を設けたものである
た、上記溶射皮膜は、100g/m〜240g/mの無機質系封孔剤にて封孔処理されているものである。
また、上記溶射皮膜は、母材レール鋼の表面をブラスト処理によって粗面形成して平均表面粗さを50μm以上とした被溶射面部上に形成されているものである
【発明の効果】
【0007】
発明の鉄道用レールによれば、密着性に優れた緻密な溶射皮膜を強固に形成することができる。よって、確実に底部の腐食を防止でき、海水に触れたり、あるいは、迷走電流が流れるような厳しい腐食環境下で、長期間使用することができる
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の鉄道用レールの実施の一形態を示した断面正面図である。
図2図1のX部拡大図である。
図3図1のY部拡大図である。
図4】鉄道用レール及び締結部材の使用状態を示した断面正面図である。
図5】鉄道用レール及び締結部材の使用状態を示した平面図である。
図6】鉄道用レールのブラスト処理工程を示した断面正面図である。
図7】鉄道用レールの防錆処理工程を示した断面正面図である。
図8】金属溶射手段の一例を示した簡略図である。
図9】鉄道用レールの封孔処理工程を示した断面正面図である。
図10】他の締結部材を示した断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明を詳説する。
図1は、本発明の実施の一形態を示したものであり、鉄道用レール本体Rは、海底トンネルや海岸沿い、又は、連接軌道踏切等に敷設することを想定して作製され、母材レール鋼1が海水の塩害による腐食や電食に耐えられるように防錆処理が施されている。
本発明の鉄道用レール本体Rは、底部4の上面4A及び下面4Bに、亜鉛とアルミニウムとが40:60〜50:50の体積比で構成される溶射皮膜2を被覆形成している。溶射皮膜2は、鉄道用レール本体Rの底部4の下面4Bから腹部6にわたる表面に被覆形成されている。(なお、本発明に於て、上記底部4を底壁部と呼ぶこともある。)
対象となる母材レール鋼1は、30kgレール、37kgレール、40kgNレール、50kgNレール、及び、60kgレール等が適用され、化学成分が、C:0.5%〜0.75%、Si:0.15%〜0.35%、Mn:0.60%〜1.10%、P:0.045%以下、S:0.050%以下の鋼鉄製であって、機械的性質が、引張強さ:690N/mm以上、伸び9%以上、硬さ235HB以上のものが用いられる。
【0010】
図2図3に示すように、溶射皮膜2は、亜鉛部21とアルミニウム部22とが非層状態に堆積している。言い換えると、溶射皮膜2は、亜鉛とアルミニウムが不均一に積み重なった状態であり、断面視で亜鉛とアルミニウムが不均等に分布している。つまり、擬合金皮膜と呼ばれるものである。
溶射皮膜2は、母材レール鋼1の表面をブラスト処理によって粗面形成して平均表面粗さRを50μm以上とした被溶射面部15上に形成されている。被溶射面部15は、溶射皮膜2が被覆形成される母材レール鋼1の底部10及び腹部11の表面に形成されている。
溶射皮膜2は、その表面から被溶射面部15までの膜厚寸法Tを、所定の複数箇所で計測し平均した数値を平均膜厚寸法Tとし、その平均膜厚寸法Tを、200μm≦T≦500μmに設定している。溶射皮膜2は、局部的に厚く形成して、最大で2000μm程度の膜厚寸法TMAXに形成することも可能である。
溶射皮膜2は、100g/m2〜240g/mの無機質系封孔剤にて封孔処理されている。具体的には、無機質系封孔剤として、「ケイソルGSガード」(中国塗装株式会社製)が用いられる。
【0011】
上述のように、鉄道用レール本体Rに溶射皮膜2を被覆形成する方法として、低温アーク溶射法がある。
図6図9に基づいて、その具体的形態を説明すると、まず、図6に示すように、母材レール鋼1の頭部12を、ガムテープ等の養生部材14で被覆し、母材レール鋼1の底部10の下面10Bが上方になるように上下逆さまに倒立させた状態とし、母材レール鋼1の底部10及び腹部11の全面にわたってブラスト処理を行って、被溶射面部15を形成する。この工程を、ブラスト処理工程とし、除錆度:(JIS)Sa=2.5以上、粗さ:(JIS)R=45μm以上の処理グレードを備えるステンレススラグから成る研磨材が用いられる。研磨材の処理グレードがこれより低いと、母材レール鋼1の表面硬度が高いため、十分に粗面形成できない虞れがある。
【0012】
次に、図7図8に示すように、防錆処理工程として、母材レール鋼1の表面に溶射皮膜2を形成する。この防錆処理工程は、金属溶射手段7を用いて低温アーク溶射法によって行われる。
金属溶射手段7にて、亜鉛線材Zとアルミニウム線材Aの間でアーク放電を発生させて亜鉛線材Zとアルミニウム線材Aとを同時に溶融し、その後方から圧縮空気を噴射して亜鉛微細粒23とアルミニウム微細粒24とする。溶融した亜鉛微細粒23とアルミニウム微細粒24とを、40:60〜50:50の体積比で被溶射面部15に吹き付ける。
そして、母材レール鋼1の被溶射面部15上で、亜鉛微細粒23とアルミニウム微細粒24とを固化し、図2図3に示すような、亜鉛部21とアルミニウム部22とが非層状態に堆積する溶射皮膜2を成膜する。
また、金属溶射手段7は、アーク放電によって溶融した亜鉛とアルミニウムの外周を囲むようにして、環状噴射口7Aから噴射した圧縮空気により低気圧気流圏で、亜鉛微細粒23及びアルミニウム微細粒24を形成し、被溶射面部15に吹き付けて到達する直前の温度を40℃〜80℃として、被溶射面部15の温度が異常上昇しないように溶射を行なう。より好ましくは、亜鉛微細粒23及びアルミニウム微細粒24が被溶射面部15に当たる直前の温度は、50℃以下とするのが良い。このようにして、溶射皮膜2が、低温アーク溶射にて成膜される。
【0013】
次に、図9に示すように、封孔処理工程として、溶射皮膜2の表面に、100g/m〜240g/mの無機質系封孔剤を、スプレーにて噴霧、又は、刷毛にて塗布する。封孔剤は、溶射皮膜2中の微細孔に浸透して隙間を塞ぎ、その後固化して水やガスの浸入を防止する。
【0014】
図1図3、及び、図4図5図10に示すように、本発明のレール本体Rは、底部(底壁部)4を締結部材3,3によって枕木(まくらぎ)Mに固着した使用状態下で、締結部材3,3の押圧部30,30が接触する底部(底壁部)4の上面4Aに於て、溶射皮膜2の膜厚寸法Tを、500μm〜2000μmに局部的に厚く形成して、締結用の被押圧部20,20を設けている。より好ましくは、被押圧部20の膜厚寸法Tを、500μm〜1200μmに設定するのが良い。
レール本体Rは、合成ゴムから成る軌道パッド8を介して枕木Mに載置され、長手方向の所定間隔毎に配設された締結部材3,3により底部4の上面4Aを押圧されて枕木Mに固定される。レール本体Rは、締結部材3の押圧部30が底部4の上面4Aに接触する位置を予め把握し、損耗し易い被押圧部20の膜厚寸法Tを局部的に厚くして、溶射皮膜2が摩擦により薄くなって食孔が形成されるの防止している。なお、締結部材3の押圧部30が接触する以外に、母材レール鋼1に電流を流すことで電食が発生し易い部位の溶射皮膜2を、局部的に厚く形成しておくことも望ましい。
【0015】
図4図5に示すように、締結部材3は、材料が(JIS)G4801のSUP9から成り、線ばね状に形成されている。締結部材3は、枕木Mに固着される固着部材9の取付孔9Aに一端の挿入部33を挿入し、かつ、他端の押圧部30を、約12.5kNの弾発付勢力Fをもって底部4の上面4Aに押し付けている。
また、図10に示すように、締結部材3は、(JIS)E1118で規定するような板バネ状とするも好ましい。締結部材3,3は、それぞれボルトによって枕木Mに固着され、弾発付勢力Fをもって底部4の上面4Aに押し付ける押圧部30,30を有する。
【0016】
締結部材3は、低温アーク溶射によって、亜鉛とアルミニウムとが40:60〜50:50の体積比で構成される溶射皮膜部32が被覆されている。
溶射皮膜部32は、締結部材3の表面の全体に一定の膜厚寸法Tをもって均一に被覆形成されている。溶射皮膜部32は、図2と同様に、亜鉛部21とアルミニウム部22とが非層状態に堆積する擬合金皮膜である。溶射皮膜部32は、平均表面粗さRを50μm以上に粗面形成した被溶射面上に形成され、膜厚寸法Tを200μm〜500μmの範囲内で一定としている。溶射皮膜部32は、100g/m〜240g/mの無機質系封孔剤にて封孔処理されている。
【0017】
上述した本発明の鉄道用レールの使用方法(作用)について説明する。
本発明の鉄道用レールに於て、溶射皮膜2は、低温アーク溶射によって形成された擬合金皮膜であるため、被溶射面部15の歪みによる剥離を生じることなく母材レール鋼1に密着する。溶射皮膜2は、アルミニウム部22の表面に酸化皮膜(Al)を形成し、緻密であり、かつ、水や酸素を透過しにくく、しかも、耐蝕性に優れている。また、溶射皮膜2は、亜鉛部21が鉄よりもイオン化し易いため、母材レール鋼1が腐食するのを防止する。亜鉛部21が放出した電子が介在して、水と酸素が反応し、水酸化イオンを生じ、亜鉛イオンと水酸化イオンが反応すると、水酸化亜鉛から成る白錆が発生する。アルミニウム部22の酸化皮膜は、亜鉛部21を被覆し、過度にイオン化して溶出することを防止すると共に、水・酸素の透過を抑制し、防錆作用を長期にわたって適正に保持する。このように、溶射皮膜2は、母材レール鋼1に対して電気科学的な防食・防錆作用を長期にわたって発揮する。
従って、鉄道用レール本体Rは、海底トンネルや海岸沿い、又は、連接軌道踏切等に敷設する場合であっても、海水による塩害や電食に耐え、従来工法以上の長期間にわたって使用することが可能である。
【0018】
また、鉄道用レール本体Rは、水・海水に接触し易い底部4の上面4A及び下面4Bを、溶射皮膜2によって被覆し、腐食によるレール寿命の短命化を抑制する。鉄道用レール本体Rは、ブラスト処理工程から封孔処理工程に至る加工段階で、上下逆さまとして倒立させるため、溶射皮膜2が底部4の下面4Bに正確に成膜される。つまり、レール本体Rの防錆を行なう上で、最も重要な底部4の下面4Bに、確実かつ均整を保って溶射皮膜2が形成される。
しかも、底部4の上面4Aに於て、締結部材3の押圧部30が接触する部位、又は、電食発生部位で、溶射皮膜2の膜厚寸法Tを局部的に厚くして、溶射皮膜2が損耗して発錆・腐食を生じるのを確実に防止する。
【0019】
また、本発明の締結部材3に於て、溶射皮膜部32は、低温アーク溶射によって形成された擬合金皮膜であり、電気科学的な防食・防錆作用を長期にわたって発揮する。
使用状態下で、締結部材3は、非常に大きな弾発付勢力Fをレール本体Rの底部4に常時付与する。よって、締結部材3には、弾発付勢力Fを生みだすための内部ひずみが生じる。締結部材3は、内部ひずみに対する応力を、全体で均等に分散して負担する。溶射皮膜部32は、締結部材3の表面の全体を、一定の膜厚寸法Tをもって均一に被覆し、締結部材3内部の応力のバランスを崩すことなく形成される。
従って、締結部材3は、海底トンネルや海岸沿い、又は、連接軌道踏切等に敷設する鉄道用レールの固定に用いる場合であっても、海水による塩害や電食に耐え、従来工法以上の長期間にわたって使用することが可能である。
【0020】
以上のように、本発明に係る鉄道用レールは、底部4の上面4A及び下面4Bに、亜鉛とアルミニウムとが40:60〜50:50の体積比で構成される溶射皮膜2を被覆形成したので、溶射皮膜2の密着性が良く、十分に厚く被覆でき、かつ、緻密な溶射皮膜2を強固に形成することができる。よって、確実に底部4の腐食を防止でき、海水に触れたり、あるいは、迷走電流が流れるような厳しい腐食環境下で、長期間使用することができる。
【0021】
また、溶射皮膜2は、亜鉛部21とアルミニウム部22とが非層状態に堆積しているので、電気科学的な防食・防錆作用を長期にわたって発揮できる。
【0022】
また、溶射皮膜2が、低温アーク溶射によって形成されたので、溶射皮膜2が剥離による割れ目や傷を生じることなく、確実に防錆できる。
【0023】
また、溶射皮膜2の平均膜厚寸法Tを、200μm≦T≦500μmに設定しているので、防食・防錆作用を長期にわたって発揮できる。
【0024】
また、溶射皮膜2は、100g/m〜240g/mの無機質系封孔剤にて封孔処理されているので、水やガスの浸入を確実に防止でき、防食・防錆作用を長期にわたって発揮できる。
【0025】
また、溶射皮膜2は、母材レール鋼1の表面をブラスト処理によって粗面形成して平均表面粗さRを50μm以上とした被溶射面部15上に形成されているので、溶射皮膜2が母材レール鋼1に確実に密着し、防食・防錆作用を長期にわたって発揮できる。
【0026】
また、底部4を締結部材3,3によって枕木Mに固着した使用状態下で、締結部材3,3の押圧部30,30が接触する底部4の上面4Aに於て、溶射皮膜2の膜厚寸法Tを、500μm〜2000μmに局部的に厚く形成して、締結用の被押圧部20,20を設けたので、溶射皮膜2が損耗して発錆・腐食を生じるのを防止でき、防食・防錆作用を長期にわたって発揮できる。
【0027】
また、鉄道用レール防錆処理方法は、母材レール鋼1の表面を粗面形成して被溶射面部15を形成し、亜鉛線材Zとアルミニウム線材Aの間でアーク放電を発生させて亜鉛線材Zとアルミニウム線材Aとを同時に溶融し、その後方から圧縮空気を噴射して亜鉛微細粒23とアルミニウム微細粒24とし、亜鉛微細粒23とアルミニウム微細粒24とを40:60〜50:50の体積比で被溶射面部15に吹き付け、亜鉛部21とアルミニウム部22とが非層状態に堆積する溶射皮膜2を成膜するので、母材レール鋼1への密着性に優れた緻密な溶射皮膜2を強固に形成することができる。よって、母材レール鋼1の表面に確実に防錆処理を施し、海水に触れたり、あるいは、迷走電流が流れるような厳しい腐食環境下で、長期間使用することができる。また、電気科学的な防食・防錆作用を長期にわたって発揮できる。
【0028】
また、亜鉛微細粒23及びアルミニウム微細粒24を、被溶射面部15に吹き付けて到達する直前の温度を40℃〜80℃としたので、溶射皮膜2が剥離による割れ目や傷を生じることなく、確実に防錆できる。
【0029】
また、母材レール鋼1の頭部12を養生部材14で被覆し、母材レール鋼1の底部10の下面10Bが上方になるように上下逆さまに倒立させた状態とし、母材レール鋼1の底部10の全面にわたって、被溶射面部15を形成して成膜するので、溶射皮膜2が底部4の下面4Bに均一かつ正確に被覆形成できる。
【0030】
また、締結部材は、低温アーク溶射によって、亜鉛とアルミニウムとが40:60〜50:50の体積比で構成される溶射皮膜部32が被覆されているので、密着性に優れた緻密な溶射皮膜部32を強固に形成することができる。
【0031】
また、溶射皮膜部32が、締結部材3の表面の全体に一定の膜厚寸法Tをもって均一に被覆形成されているので、締結部材3の内部応力のバランスを崩すことなく溶射皮膜部32を被覆形成でき、海水に触れたり、あるいは、迷走電流が流れるような厳しい腐食環境下で、長期間使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 母材レール鋼
2 溶射皮膜
3 締結部材
4 底部
4A 上面
4B 下面
腹部
10 底部
10B 下面
12 頭部
14 養生部材
15 被溶射面部
20 被押圧部
21 亜鉛部
22 アルミニウム部
23 亜鉛微細粒
24 アルミニウム微細粒
30 押圧部
32 溶射皮膜部
T 平均膜厚寸法
膜厚寸法
膜厚寸法
平均表面粗さ
M 枕木(まくらぎ)
A アルミニウム線材
Z 亜鉛線材
弾発付勢力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10