(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725512
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】生体サンプルの細菌検査方法および関連機器
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20150507BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20150507BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12Q1/04
G01N33/483 C
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-551542(P2011-551542)
(86)(22)【出願日】2010年2月24日
(65)【公表番号】特表2012-518428(P2012-518428A)
(43)【公表日】2012年8月16日
(86)【国際出願番号】IB2010000369
(87)【国際公開番号】WO2010097685
(87)【国際公開日】20100902
【審査請求日】2013年2月22日
(31)【優先権主張番号】UD2009A000047
(32)【優先日】2009年2月25日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】511207877
【氏名又は名称】アリファックス ホールディング エスピーエー
【氏名又は名称原語表記】ALIFAX HOLDING SPA
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100097180
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 均
(74)【代理人】
【識別番号】100110917
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100156834
【弁理士】
【氏名又は名称】橋村 一誠
(74)【代理人】
【識別番号】100147393
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 一基
(74)【代理人】
【識別番号】100146639
【弁理士】
【氏名又は名称】船本 康伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167896
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ガリアーノ, パオロ
(72)【発明者】
【氏名】マンスティ, アレサンドロ
【審査官】
福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05012119(US,A)
【文献】
特開昭61−247376(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/023470(WO,A1)
【文献】
特開2003−057157(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0269853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C12Q 1/00−1/70
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(12)内に収容された生体サンプル(11)の分析装置であって、
前記分析装置は前記生体サンプル(11)に対して光拡散技術に基づいた光学的測定を行うことができる試験器具(16)を有し、
前記試験器具(16)は少なくとも前記生体サンプル(11)内の細菌培養に対して用いられ、
前記試験器具(16)は第1光線(B0)を前記生体サンプル(11)の前記容器(12)に向かって放つことのできるエミッタ手段(20)と、前記生体サンプルの前記容器(12)から拡散される光線を少なくとも検出し、前記拡散される光線と相関性を有する相対信号(S2、S4)をコントロールユニット(18)に送信するセンサー手段(22、24)とを有し、
前記コントロールユニット(18)は直接的または間接的に前記信号(S2、S4)を処理することで少なくとも前記生体サンプル(11)内で起こり得る細菌培養を確認できる分析装置であって、
前記容器(12)は規定の平面(P)に沿って配置され、さらに、前記生体サンプル(11)の少なくとも1部を収容可能で、且つ、前記生体サンプル(11)内で細菌培養が可能となるように内部に液体培地を有するマイクロ容器(14)を少なくとも有し、
前記エミッタ手段(20)および前記センサー手段(22、24)は前記マイクロ容器(14)に対応するように配置可能で、
前記センサー手段(22、24)は前記平面(P)に対して前記エミッタ手段(20)と同じ側に位置する第1センサー手段(22)と、前記平面(P)に対して前記エミッタ手段(20)と反対側に位置する第2センサー手段(24)とを有し、
前記第1センサー手段(22)は規定の前記マイクロ容器(14)から発せられる後方散乱放射物(B2)を検出し、前記第2センサー手段(24)は規定の前記マイクロ容器(14)から発せられる前方散乱放射物(B4)を検出し、前記後方散乱放射物(B2)および前記前方散乱放射物(B4)から各々、第1信号(S2)および第2信号(S4)を導きだし、前記コントロールユニット(18)に送信し、
前記容器(12)は前記平面(P)に沿って展開するマイクロプレート(12)で、前記マイクロ容器(14)は前記平面(P)に沿って行と列を成して配置される各ウェル(14)であり、
前記試験器具(16)は、立て続けに複数の隣接する前記マイクロ容器(14)に対して作動可能なように、前記平面(P)に沿って移動可能であることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記第1光線(B0)が規定の前記マイクロ容器(14)に対して、上部または下部から当たるように前記エミッタ手段(20)を配置することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記エミッタ手段(20)が前記容器(12)の前記平面(P)に対して垂直に配置され、対応する前記第1光線(B0)が前記マイクロ容器(14)に対して垂直に当たることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記エミッタ手段(20)が前記容器(12)の平面(P)に対して傾いて配置され、対応する第1光線(B0)が前記マイクロ容器(14)に、垂直方向(Y)に対して、90°とは異なる所定の傾斜角度(θ)を成して当たることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記ウェル(14)は各々、前記第1光線(B0)および前記後方散乱放射物(B2)の通路である上開口部(14a)と、前記前方散乱放射物(B4)を通過させるのに適切な材料でできている底壁(14c)とを有していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ウェル(14)は各々、側部への光の拡散を防ぐ不透明な側壁(14b)を有しており、他の隣接するウェル(14)に干渉しないようになっていることを特徴とする請求項1または5の何れかに記載の装置。
【請求項7】
プレートまたは前記マイクロプレート(12)がポリスチレンまたはメタクリレートにより形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の装置。
【請求項8】
前記第1センサー手段(22)および前記第2センサー手段(24)は、規定の垂直方向(Y)に対して各々、−90°〜+90°の規定の角度(α、β)を成すように配置されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の装置内の光拡散技術に基づく試験装置(16)の使用方法であって、
液体培地内の懸濁液中の生体サンプル(11)を含むマイクロ容器(14)の1面から発せられる後方散乱放射物と、前記マイクロ容器(14)の反対の面から発せられる前方散乱放射物とを検出し、少なくとも前記マイクロ容器(14)内の前記生体サンプル(11)の細菌培養を測定する方法。
【請求項10】
容器(12)内に収容された生体サンプル(11)の分析方法であって、
前記容器(12)は、規定の平面(P)に沿って配置されるマイクロプレート(12)で、さらに、前記生体サンプル(11)の少なくとも1部が収容可能で、且つ、前記生体サンプル(11)内の細菌培養が可能となるように内部に液体培地が提供され、前記平面(P)に沿って行と列を成して配置される各ウェル(14)であるマイクロ容器(14)を少なくとも有し、
前記分析方法は、光拡散技術に基づく光学的測定が行われる試験ステップを含み、
前記試験ステップは、少なくとも前記生体サンプル(11)内の細菌培養に対して測定が行われ、
前記試験ステップは、第1光線(B0)を前記生体サンプル(11)の前記容器(12)に当て、少なくとも前記生体サンプル(11)の前記容器(12)から拡散される光線を検出し、さらに直接的または間接的に前記拡散された光線と相関性を有する信号(S2、S4)を処理することにより測定が行われる方法において、
前記第1光線(B0)を発する前記マイクロ容器(14)に関連する前記平面(P)と同じ側において、規定の前記マイクロ容器(14)から発せられる後方散乱放射物(B2)を検出し、さらに、前記マイクロ容器(14)に関連する前記平面(P)と反対側において、規定の前記マイクロ容器(14)から発せられる前方散乱放射物(B4)を検出し、前記後方散乱放射物(B2)と前記前方散乱放射物(B4)とから前記信号(S2、S4)を導き出し、
前記生体サンプル(11)に対して光拡散技術に基づいた光学的測定を行うことができる試験器具(16)が、立て続けに複数の隣接する前記マイクロ容器(14)に対して作動可能なように、前記平面(P)に沿って移動可能であることを特徴とする分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体または固体の生体サンプルを分析する装置に関し、概して細菌学的および診断的な調査を行うことを目的として特に液体培地における細菌培養速度の測定を行う装置、あるいは、マクファーランド濁度標準(McFarland standardization)の感受性試験を目的として濁度を測定し、臨床型(clinical type)あるいは標準型(normal type)の抗生物質の感受性あるいは耐性記録の分析を行う装置に関する。
【0002】
分析用生体サンプルとしては、例えば、尿, 気管支の吸引物, 血液, 希釈血液あるいは溶解血液、その他であっても良い。
【背景技術】
【0003】
本出願人による文献WO−A−2006/021519により、血液または尿などの生体サンプル中の細菌の有無を検出し、さらに細菌を同定し得る分析装置が知られている。
【0004】
上記知られている装置には光散乱に基づくレーザー光エミッタが提供され、前記エミッタは、透明ガラスまたはプラスチックでできていて生体サンプルに接種される培養液を含む試験管または小瓶(flacon)に、レーザー光を当てる。懸濁液中の細菌が培養中に散乱する光は、相対信号を処理装置に送信する適切なセンサーにより検出される。前記処理装置は微生物の有無を検出し、さらに、存在している可能性のある微生物を分類または同定し得る。
【0005】
有効かつ有利であることを示すこの種の装置は、全てをさらにコンパクトにし、かつ、作業者および作業環境にとってより安全にする必要性が持ち上がっている。これは知られている装置が分析用容器あるいは小瓶を使用するために、全体的に大きく嵩張るからである。
【0006】
上記装置はさらに潜在的な感染物質が高生産される要因となる。前記感染物質は作業者の危険性を意味し、複雑な処理プロセスを必要とする。
【0007】
さらに必要とする分析の数が益々増えているということを鑑みると、上記のような分析装置の生産における問題は切迫している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、操作部のかさを減らし、潜在的な感染物質を減らすことが可能な分析装置を提供することである。
【0009】
本出願人は、従来技術の問題点を克服し、上記やその他の目的や利点を得るために、本発明を考え出し、試験し、具体化した。
【0010】
本発明は、独立の請求項に記載されその特徴が明らかにされている。一方、従属請求項には、本発明の他の特徴または発明の主な態様の改良について記載されている。
【0011】
上記の目的に従って、本発明に係る分析装置が容器内に含まれた生体サンプルを分析するために用いられた。これは特に、しかし限定的ではなく、細菌学的調査をし細菌培養を測定することにより細菌の有無を確認し、さらに可能であれば細菌を分類し同定するために行われる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る分析装置は前記生体サンプルに対して光散乱技術に基づいた光学的測定を行うことができる試験器具を有し、少なくとも前記生体サンプル内の細菌培養に対して用いられる。前記試験器具は、第1光線を前記生体サンプルの前記容器に向かって放つことのできるエミッタ手段と、前記生体サンプルの前記容器から拡散される光線を少なくとも検出し、前記拡散される光線と相関性を有する相対信号をコントロールユニットに送信するセンサー手段とを有し、前記コントロールユニットは直接的または間接的に前記信号を処理することで少なくとも前記生体サンプル内の細菌培養を、もし起きていれば、確認できる分析装置。
【0013】
本発明によると、前記容器は規定の平面に沿って配置され、さらに、前記生体サンプルの少なくとも1部を収容可能で、且つ、前記生体サンプル内で細菌培養が可能となるように内部に液体培地を有するマイクロ容器を少なくとも有している。
【0014】
ここに、また、以下に記す「マイクロ容器」とは、微生物学において一般的に用いられるプレートまたはマイクロプレートのウェルまたはマイクロウェル、キュベットまたはマイクロキュベットとして知られる測定セル(reading cell)またはマイクロセル、あるいは伝統的に用いられる小瓶(flacons)や試験管などの非常に限られたサイズの容器で、例えば、高さ3〜20mmで公称直径3〜20mmである。
【0015】
本発明によると、前記エミッタ手段および前記センサー手段は前記マイクロ容器に対応するように配置可能である。
【0016】
前記センサー手段は、前記平面に対して前記エミッタ手段と同じ側に位置する第1センサー手段と、前記容器の前記平面に対して常に前記エミッタ手段と反対側に位置する第2センサー手段とを有している。
【0017】
前記第1センサー手段は、常に分析されている規定の前記マイクロ容器から発せられる後方散乱放射物を検出し、前記第2センサー手段は常に規定の前記マイクロ容器から発せられる前方散乱放射物を検出する。
【0018】
本発明によると、前記後方散乱放射物および前記前方散乱放射物から各々、第1信号および第2信号が導きだされ、前記コントロールユニットに送信される。前記信号は細菌培養および全ての必要な分析を確認するために使用される。ある実施形態によると、エミッタ手段が配置されているので、規定のマイクロ容器の上部あるいは下部から第1光線が当たる。
【0019】
その他の実施形態によると、エミッタ手段が容器の平面に対して垂直に配置され、対応する第1光線がマイクロ容器に対して実質的に垂直に当たる。
【0020】
有利なことに本発明の革新的な特徴の一定の組み合わせによって、光散乱技術を用いたサンプルの詳細な分析が、サンプルの形のサイズや大きさに関わらず、可能となっている。これは、エミッタ手段やセンサーが垂直に進む光線を用いて作動するためである。
【0021】
その他の実施形態によると、エミッタ手段が容器の平面に対して傾いて配置され、対応する第1光線が前記マイクロ容器に、垂直方向に対して90°ではない所定の傾斜角度
を成して当たる。
【0022】
有利な実施形態として、容器が微生物学で一般的に使用されているタイプのマイクロプレート(例えば96または384ウェルなど)であり、平面に沿って展開し、マイクロ容器は前記平面に沿って行と列を成して配置される各ウェルである。
【0023】
概してマイクロ要素またはウェルは、各々、第1光線および後方散乱放射物の通路である上開口部と、前方散乱放射物を通過させるのに適切な材料でできている底壁とを有している。
【0024】
有利なことに、前記ウェルは各々、側部への光の拡散を防ぐ不透明な側壁を有しており、他の隣接するウェルに干渉しないようになっている。
【0025】
プレートまたはマイクロプレートがポリスチレンまたはメタクリレートにより形成されている。
【0026】
第1センサー手段および第2センサー手段は、規定の垂直方向に対して各々、約−90°〜+90°の規定の角度を成すように配置されている。
【0027】
光散乱技術に基づく以下の試験器具の使用方法は本発明の範囲に属する。前記試験器具は、液体培地内の懸濁液中の生体サンプルを含むマイクロ容器の1面から発せられる後方散乱放射物とマイクロ容器の反対の面から発せられる前方散乱放射物とを検出し、少なくともマイクロ容器内の生体サンプルの細菌培養を測定する。
【0028】
有利なことに光散乱型の前記試験器具によると、分析対象のサンプル内で起こり得る細菌の増殖曲線をプレートの1以上のウェルにて検出できる。
【0029】
上記検出は、分析のどの段階でなされたかに応じて、細菌の有無の決定(迅速な培養テスト:quick culture test)、細菌の同定、Raa試験(残留抗生物質活性)、臨床的耐性試験、あるいは上記のような検出を要するその他の試験または分析に用いられる。
【0030】
本発明を溶解血液の分析に適用する場合、本願の装置は透明なマイクロウェルに対して垂直な光線とともに作動するため、溶解している小球により起こり得る妨害を阻止できる。
【0031】
一方で、透明な液体に適用する場合、光の進行を平行または垂直に測定した場合に極めて正確であると推定され、透明な側壁のマイクロウェルまたはマイクロキュベットを使用することが有利となる。
【0032】
光散乱検出器と連結しているマイクロプレートまたはその他のマイクロ容器を利用するメリットの1つは、光拡散に通常用いる容器と比較して、マイクロプレートが必要なサンプルの量を適切に満たすことができ少しの浪費もしないことにある。前記サンプルは試薬や検出に必要な種々の液体を含み、蛍光成分なども含む。
【0033】
さらに、本発明に係るマイクロプレートまたはサイズが限定されたその他の類似の容器であって、マイクロアレイ、マイクロキュベットなどを用いることにより、分析装置のかさや潜在的な感染物質の製造を減らすことができる。
【0034】
さらに、上記のような単独の分析装置の作動性は非常に上がっている。つまり前記装置は立て続けに複数の隣接するマイクロ容器に対して作動することができ、前記マイクロ容器の各々は正確で十分な、そして過剰でない量のサンプルおよび培養液で満たされ、物質の浪費および分析時間を制御している。
【0035】
容器内に収容された生体サンプルの分析方法であって、前記容器は、規定の平面に沿って配置され、さらに、前記生体サンプルの少なくとも1部が収容可能で、且つ、前記生体サンプル内の細菌培養が可能となるように内部に液体培地が提供されているマイクロ容器を少なくとも有する。前記分析方法は光拡散技術に基づく光学的測定が行われる試験ステップを含み、前記試験ステップは少なくとも前記生体サンプル内の細菌培養に対して測定が行われ、前記試験ステップは、第1光線を前記生体サンプルに当て、少なくとも前記生体サンプルの前記容器から拡散される光線を検出し、さらに直接的または間接的に前記拡散された光線と相関性を有する信号を処理することにより測定が行われる。本発明によると、前記第1光線を発する前記マイクロ容器に関連する前記平面と同じ側において、規定の前記マイクロ容器から発せられる後方散乱放射物を検出し、さらに、前記マイクロ容器に関連する前記平面と反対側において、規定の前記マイクロ容器から発せられる前方散乱放射物を検出する。分析方法はさらに、前記後方散乱放射物と前記前方散乱放射物とから前記信号を導き出す。
【0036】
本発明のこれらの特徴は、添付の図面を参照し非限定的な例として挙げられる、以下の好適な実施形態の記載から明らかとなる。
図1は、本発明と共に使用する容器の略図である。
図2は、本発明に係る装置の一部の略図である。
図3は、
図2の拡大詳細図である。
図4は、
図2に示す装置の一部の変形である。
図5は、本発明に係る器具の1実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付の図面の本発明に係る装置10は、生体サンプル11を分析するため、特に、細菌培養を測定し、生体サンプル中に含まれる細菌の有無を同定するために用いられる。装置10は、例えば、マイクロプレート(96ウェル)、マイクロアレイ(384ウェル)、 マイクロキュベット、ガラス製マイクロセル、 側壁が不透明なマイクロキュベット(光線の拡散を防ぐため)などの小型容器に光散乱技術を利用する。
【0038】
装置10はまた、感受性試験用のマクファーランド濁度標準を目的として、抗生物質に対する感受性、耐性記録、臨床または標準型の分析を行うために、濁度を測定することに用いられる。
【0039】
上記の場合には装置10が、実質的に水平な平面P(
図2)に沿って配置されている96のマイクロ要素またはウェル14(
図1)により形成されるマイクロプレート12を有している。
【0040】
ウェル14は、優生培地などの適切な液体培地内における細菌培養のための容器、または分析する生体サンプル11内の、細菌の有無を確認および/または細菌のタイプを同定するために用いられる生化学反応のための容器として機能する。
【0041】
プレート12は、細菌培養を促進するために例えば約35℃〜37℃などの適切な恒温であっても良く、好ましくは撹拌されても良い。
【0042】
本発明が要するように光散乱技術を用いて使用すると、プレート12とウェル14は所定の電磁放射線と適合し、好ましくは透明または可視光に対して透過性を有する。
【0043】
概して極めて明確で均一な優れた光学的性能を有することが好ましいプレート12を採用するので、分析中に光がウェル14の中を通ることができるよう、高い性能を有する。例えば、プレート12がポリスチレンまたはメタクリレートでできているので、前記最適な光学的性能を具現化できる。
【0044】
各ウェル14は、サンプルが挿入され光が通過する上部14aと光に対して透過性を有する底壁14aとを有している。
【0045】
多数の隣接するウェル14が存在する場合の1つの解決策として、それらの側壁14bを黒化するなど、いずれにしても光を透過させない状態にして、ウェル14が隣接するウェルに対して生じさせる可能性のある光の干渉を取り除く方法がある。典型的には接種前に生体サンプルを試験管に保存し、好ましくは移動および選択ユニット(図示なし)を用いてその一部を取り出し、プレート12の1以上のウェル14内に置き、所定の分析を行う。
【0046】
装置10はまた光散乱技術に基づく試験器具16を有していて、検出ステップが1以上のウェル14に対して行われ、各ウェル14内の細菌培養または抑制動力学(inhibition kinetics)により生じる適切な信号が評価される。以下に図示する(
図2、3、5参照)。
【0047】
装置10はさらにコントロールユニット18を有している。コントロールユニット18は電子計算機などで、そのメモリーには試験器具16を操作できるようコンピュータープログラムがロードされている。コントロールユニット18は便宜上
図5にのみ示した。コントロールユニット18はハードウェア接続Cによって、試験器具16(
図5)の起動/停止を制御可能なインターフェース・カード19に接続されていて、その略図はコマンドおよび制御信号S0により示されている。
【0048】
試験器具16により収集されたデータは、インターフェース・カード19によりコントロールユニット18に送信される。インターフェース・カード19は収集したデータを増幅し、フィルターをかけ、処理する。
【0049】
上記のようにすることで、コントロールユニット18が各ウェル14中の細菌培養または抑制動力学を評価することができる(細菌培養試験)。
【0050】
コントロールユニット18はまた、サンプルの運動やセレクションユニット(存在していれば)を活性化することができる。
【0051】
図2、
図3に示す実施形態によると、試験器具16が光エミッタ20を有している。光エミッタ20はマイクロプレート12の前記平面Pに対して垂直上方または垂直下方で、且つ、マイクロプレート12を構成している種々のウェル14に対応するように、配置されている。エミッタ20は、偏向または平行なB0で示されるレーザー光線を、分析のためにウェル14に向かって放つことが可能である。前記レーザー光線はマイクロプレート12の平面Pに対して90°傾いているので、溶解血液の分析において溶解した小球(玉)が妨害する可能性を防ぐ有利な解決策となる。光線B0は、マイクロプレート12の対応するウェル14から、特にマイクロプレート12のウェル14中の液体培地で培養される生体サンプルによって、拡散される。
【0052】
エミッタ20は複数のセンサー22、24と結合していて、マイクロプレート12の平面Pに対して垂直上方または垂直下方に配置されている。
【0053】
特に
図2に示す実施形態では、2つの第1センサー22が提供され、それらはマイクロプレート12に対してエミッタ20と同じ側に配置され、3つの第2センサー24が、マイクロプレート12の平面Pに対してエミッタ20と反対側に配置されている。上記より、センサーの数は異なっても良いことが解る。
【0054】
第1センサー22および第2センサー24は共に、垂直方向に対して異なる角度を有する。前記垂直方向は「Y」で示され、光線B0の路と一致する。
図3では角度は「α」「β」で示されていて、それらは概して垂直線「Y」に対して−90°〜+90°を成している。
図2に例示された1つの解としては、2つの上部センサー22を+45°および−45°の位置に配置し、3つの下部センサーのうち外部2つを各々+45°および−45°の位置に配置し、中心部の1つを0°の位置、つまり垂直線「Y」と一直線になる位置に配置されている。
【0055】
異なる実施形態では、図示されていないが、第1および第2センサー22、24が異なる角度、例えば0°、30°、90°などに配置されていても良い。
【0056】
さらにセンサー22、24は分析の要求に従い、対応するウェル14から様々な距離に配置されている。実際、放たれた光線B0が一端当たると、増殖性の細菌が存在するウェル14内の生体サンプル11は拡散光線B2、B4を放ち、それらをコントロールユニット18が処理し、細菌培養の経時展開を示す特定の曲線を提供する。
【0057】
センサー22、24は、ウェル14に含まれる生体サンプル11により発せられる拡散光線B2、B4を周期的に検出し、それらを信号S2、S4としてコントロールユニット18に送信する。
【0058】
特に第1センサー22は、光線B2により示されるウェル14に当たる光の後方散乱を周期的に検出し、一方第2センサー24は、光線B4により示されるウェル14内を通る光の前方散乱を検出する。
【0059】
図3は1つのウェル14の詳細を示す。
図3では、第1センサー22と第2センサー24とを各々1つ用いていて、それらはマイクロプレート12の平面Pに対して反対側に位置する。
【0060】
センサー22とセンサー24は、検出される各光線B2、B4と相関性を有する相対信号S2、S4をインターフェース19に送信する。前記インターフェース19は前記信号をアナログからデジタルに変換し、前方散乱および後方散乱の相対値をコントロールユニット18に送信する。前記コントロールユニット18は、前記信号を必要な分析および評価を行うために処理する。
【0061】
一端変換されると、各々が各センサー22、24と相関性を有する信号S2、S4により、細菌懸濁液の濁度の経時展開、つまり細菌培養を示す第1および第2曲線を定義できる。コントロールユニット18は信号S2、S4を処理して、前記曲線から各々に対応する2つの異なる曲線を定義する。
【0062】
異なる各曲線は、第1曲線と第1センサー22により検出され検出開始時に得られる濁度の第1瞬時値との差と、第2曲線と関連する第2センサー24により検出される検出開始時に得られる濁度の第2瞬時値との差とにより得られる。
【0063】
コントロールユニット18は分類されたデータを記憶する記憶手段を含む。前記記憶手段により、2つの異なる曲線の展開から、細菌培養が起きる生体サンプル内に存在する細菌のタイプあるいは細菌が属するファミリーを見つける。
【0064】
第1センサー22により得た信号から導き出される第1曲線は、細菌の有無および細菌負荷の経時的な計測結果に関する。第2センサー24により得た信号から導き出される第2曲線は一方、細菌の形態によって、より特徴付けられている。
【0065】
異なる曲線から非線形回帰モデルに基づいて特定の数学的パラメータが推定される。さらに派生するパラメータ得るために、2つの曲線のホモローグなパラメータを組み合わせること(例えば、比や差や和を計算することにより)も可能である。
【0066】
これらのパラメータ全体は、試験用のサンプル中に存在する細菌の曲線の特性を示す総合的な描写(synthetic description)を提供する。
【0067】
図4は試験器具16のその他の実施形態を示し、便宜上符号116で示してある。
図1〜3に示す実施形態と同一の部位には、それらと同じ符号で特定している。試験器具116は、マイクロプレートに対して垂直でなく、垂直方向Yに対して規定の角度θを成しているエミッタ120を提供する。センサー22および24の位置は
図1〜3に示されている種々の形態のままである。このようにすることで、照らされたサンプルの最終形態(final segment)により生じる光散乱要素の少なくとも一部が、放たれる放射物B1の方向に対して90°の方向に進み、マイクロプレートに対して垂直に位置しているエミッタ20を用いた場合のように側壁14bにより吸収されることなく、ウェル14の底壁14cを通り、センサー24により検出される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】
図1は、本発明と共に使用する容器の略図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る装置の一部の略図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る器具の1実施形態の略図である。