特許第5725518号(P5725518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5725518レーザ光遮蔽部材、レーザ処理装置およびレーザ光照射方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725518
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】レーザ光遮蔽部材、レーザ処理装置およびレーザ光照射方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/20 20060101AFI20150507BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20150507BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20150507BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20150507BHJP
   B23K 26/066 20140101ALI20150507BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01L21/20
   H01L21/268 J
   H01L21/268 T
   H01L29/78 627G
   B23K26/066
   B23K26/36
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-86972(P2013-86972)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-212178(P2014-212178A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】鄭 石煥
(72)【発明者】
【氏名】澤井 美喜
(72)【発明者】
【氏名】次田 純一
【審査官】 豊田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−145745(JP,A)
【文献】 特開2006−013050(JP,A)
【文献】 特開2002−324759(JP,A)
【文献】 特表2005−510063(JP,A)
【文献】 特開2012−081478(JP,A)
【文献】 特開2011−071524(JP,A)
【文献】 特開2003−045803(JP,A)
【文献】 特開2010−264471(JP,A)
【文献】 特開平05−208289(JP,A)
【文献】 特開2010−089094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/268
B23K 26/066
B23K 26/351
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインビーム形状のレーザ光に対し、長軸方向の一部で短軸方向に沿って短軸幅全幅の透過を遮蔽し、長軸端部を除いた範囲で前記短軸幅全幅の遮蔽以外では前記レーザ光が透過されて、被処理体に照射される複数の分断されたラインビームを形成する遮蔽部材であって、
当該遮蔽部材は、前記ラインビームの短軸幅を超える長さで遮蔽形状が伸長し、かつ前記長さ方向において段階的または連続的にその幅形状が変化し、前記ラインビーム形状のレーザ光の光路に対し、一部または全部が前記長さ方向において前記レーザ光の短軸幅方向に相対的にスライド移動可能に設置され、前記移動に伴って前記レーザ光を遮蔽する前記遮蔽形状が変化して、分断された前記ラインビームの形状調整が可能とされていることを特徴とするレーザ光遮蔽部材。
【請求項2】
ラインビーム形状のレーザ光に対し、長軸方向の一部で短軸方向に沿って短軸幅全幅の透過を遮蔽し、前記短軸幅全幅の遮蔽以外では前記レーザ光が透過されて、被処理体に照射される複数の分断されたラインビームを形成する遮蔽部材であって、
当該遮蔽部材は、前記ラインビーム形状のレーザ光の光路に対し、一部または全部が相対的に回転移動可能に設置され、前記移動に伴って前記レーザ光に対する遮蔽形状が変化して、分断された前記ラインビームの形状調整が可能とされていることを特徴とするレーザ光遮蔽部材。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記ラインビームの短軸幅を超える長さで遮蔽形状が伸長し、かつ前記長さ方向において段階的または連続的にその幅形状が変化し、前記ラインビーム形状のレーザ光の光路に対し、一部または全部が前記長さ方向において前記レーザ光の短軸幅方向に相対的にスライド移動可能に設置され、前記回転または/および前記スライド移動に伴って前記レーザ光に対する前記遮蔽形状が変化して、分断された前記ラインビームの形状調整が可能とされていることを特徴とする請求項2記載のレーザ光遮蔽部材。
【請求項4】
前記ラインビームの形状調整が前記ラインビームの長軸方向の長さ調整であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のレーザ光遮蔽部材。
【請求項5】
レーザ光を出力するレーザ光源と、前記レーザ光をラインビーム形状に整形して被処理体に導く光学系と、前記レーザ光の照射に備えて前記被処理体を保持する被処理体保持部と、請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ光遮蔽部材を備え、
前記レーザ光遮蔽部材は、前記ラインビーム形状とされたレーザ光が導波され、前記被処理体保持部に保持された前記被処理体に至る光路上で前記ラインビームの長軸方向の一部で短軸軸方向に沿って短軸幅全幅の透過を遮蔽し、長軸端部を除いた範囲で前記短軸幅全幅の遮蔽以外では前記レーザ光を透過させて、複数の分断されたラインビームを形成できるように配置されることを特徴とするレーザ処理装置。
【請求項6】
前記被処理体が積層構造を有しており、前記被処理体の剥離加工を行うものであることを特徴とする請求項に記載のレーザ処理装置。
【請求項7】
前記被処理体が半導体層を有する基板であり、前記半導体層の結晶化または結晶の活性化を行うものであることを特徴とする請求項5または6に記載のレーザ処理装置。
【請求項8】
前記被処理体がプラスチック基板であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のレーザ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラインビーム形状のレーザ光を分断して複数のラインビームを得るレーザ光遮蔽部材、ラインビームを分断して被処理体を処理するレーザ処理装置およびレーザ光照射方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイに用いられる加工対象物に対して、ラインビームを用いてレーザ加工を行う方法が知られている。
このようなレーザ加工では、例えば、所望の位置のみに形成した安定かつ高品質な半導体膜(シリコン膜)に、線状あるいは矩形状(帯状)に集光された連続発振レーザ光をオン/オフしながら走査してアニールし、帯状多結晶シリコン膜に改質するものが知られている(特許文献1参照)。
また、システム・オン・ガラス等への適用に際し、TFTのトランジスタ特性を高レベルで均質化し、特に周辺回路領域において移動度に優れ高速駆動が可能なTFTを実現するために、ガラス基板上でa−Si膜2を線状(リボン状)、又は島状(アイランド状)にパターニングし、a−Si膜の表面又はガラス基板の裏面に対し、CWレーザ3から時間に対して連続的に出力するエネルギービームを矢印の方向へ照射走査して、a−Si膜を結晶化するものが知られている(特許文献2、図1(a)(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−151668号公報
【特許文献2】特開2005−354087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように従来のレーザアニール装置では、レーザ光をレーザ加工対象物に照射し、レーザアニール処理を行う際に、レーザ加工対象物の大きさに合わせてレーザ光のビーム長さを調整するとともに、ビーム長軸の端に発生するエネルギー密度が不均一な部分を取り除くことを目的として長軸方向にビーム遮蔽材を用いられている。
そして、基板が大型になるにつれ、ビームサイズも大きくしてスキャン回数を減らすことで生産性を向上している。
しかし、基板によっては照射してはいけない部分があり、例えばレーザ光を照射すると焼けてしまう部分が存在することがある。レーザ光が照射されると不純物が発生するなどの問題が発生するものもある。このため、その部分への照射を避けるためにレーザ光のビーム長を短くして対処する方法があるが、生産性が低下する問題がある。
【0005】
この発明は、上記のような従来のものの問題を解決するためになされたもので、被処理体に対し照射を回避した部分を確保できるようにラインビームを分断して、分断したラインビームを被処理体に照射可能にするレーザ光遮蔽部材、レーザ処理装置およびレーザ光照射方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明のレーザ光遮蔽部材のうち、第1の本発明は、ラインビーム形状のレーザ光に対し、長軸方向の一部で短軸方向に沿って短軸幅全幅の透過を遮蔽し、長軸端部を除いた範囲で前記短軸幅全幅の遮蔽以外では前記レーザ光が透過されて、被処理体に照射される複数の分断されたラインビームを形成する遮蔽部材であって、
当該遮蔽部材は、前記ラインビームの短軸幅を超える長さで遮蔽形状が伸長し、かつ前記長さ方向において段階的または連続的にその幅形状が変化し、前記ラインビーム形状のレーザ光の光路に対し、一部または全部が前記長さ方向において前記レーザ光の短軸幅方向に相対的にスライド移動可能に設置され、前記移動に伴って前記レーザ光を遮蔽する前記遮蔽形状が変化して、分断された前記ラインビームの形状調整が可能とされていることを特徴とする。
第2の本発明のレーザ光遮蔽部材は、前記第1の本発明において、ラインビーム形状のレーザ光に対し、長軸方向の一部で短軸方向に沿って短軸幅全幅の透過を遮蔽し、前記短軸幅全幅の遮蔽以外では前記レーザ光が透過されて、被処理体に照射される複数の分断されたラインビームを形成する遮蔽部材であって、当該遮蔽部材は、前記ラインビーム形状のレーザ光の光路に対し、一部または全部が相対的に回転移動可能に設置され、前記移動に伴って前記レーザ光に対する遮蔽形状が変化して、分断された前記ラインビームの形状調整が可能とされていることを特徴とする。
第3の本発明のレーザ光遮蔽部材は、前記第の本発明において、前記遮蔽部材は、前記ラインビームの短軸幅を超える長さで遮蔽形状が伸長し、かつ前記長さ方向において段階的または連続的にその幅形状が変化し、前記ラインビーム形状のレーザ光の光路に対し、一部または全部が前記長さ方向において前記レーザ光の短軸幅方向に相対的にスライド移動可能に設置され、前記回転または/および前記スライド移動に伴って前記レーザ光に対する前記遮蔽形状が変化して、分断された前記ラインビームの形状調整が可能とされていることを特徴とする。
の本発明のレーザ光遮蔽部材は、前記第1〜第3の本発明のいずれかにおいて、 前記ラインビームの形状調整が前記ラインビームの長軸方向の長さ調整であることを特徴とする
【0007】
の本発明のレーザ処理装置は、レーザ光を出力するレーザ光源と、前記レーザ光をラインビーム形状に整形して被処理体に導く光学系と、前記レーザ光の照射に備えて前記被処理体を保持する被処理体保持部と、請求項1〜4のいずれかに記載のレーザ光遮蔽部材を備え、
前記レーザ光遮蔽部材は、前記ラインビーム形状とされたレーザ光が導波され、前記被処理体保持部に保持された前記被処理体に至る光路上で前記ラインビームの長軸方向の一部で短軸軸方向に沿って短軸幅全幅の透過を遮蔽し、長軸端部を除いた範囲で前記短軸幅全幅の遮蔽以外では前記レーザ光を透過させて、複数の分断されたラインビームを形成できるように配置されることを。
の本発明のレーザ処理装置は、前記第の本発明において、前記被処理体が積層構造を有しており、前記被処理体の剥離加工を行うものであることを特徴とする。
の本発明のレーザ処理装置は、前記第5または第6の本発明において、前記被処理体が半導体層を有する基板であり、前記半導体層の結晶化または結晶の活性化を行うものであることを特徴とする。
の本発明のレーザ処理装置は、前記第5〜第7の本発明のいずれかにおいて、前記被処理体がプラスチック基板であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、遮蔽部材によってラインビームが分断され、分断されたラインビームが被処理体に照射される。遮蔽部材は、移動によって分断された後のラインビームの形状を変更することができ、被処理体に対する照射パターンを複数得ることができる。
なお、被処理体としては、ラインビームのレーザ光を照射して処理をする各種のものを対象とすることができ、その目的も剥離や結晶化、活性化など種々のものが挙げられる。これらの目的のため、被処理体としては、半導体層を有するガラス基板やプラスチック基板などが例示される。
【0009】
また、ラインビーム形状に整形されるレーザ光は、パルス発振レーザ光、連続発振レーザ光などに限定されるものではなく、レーザの種別もガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザ等、特に限定されるものではない。
遮蔽部材は、移動によって遮蔽形状が変化し、分断された後のラインビーム形状を変更し得るものである。移動によって変化する遮蔽形状は、移動とともに連続的に変化するものであってもよく、また、段階的に変化するものであってもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0010】
なお、遮蔽部材の遮蔽は、レーザ光の透過を完全に防止する他に、透過率を低下させて被処理体の照射面における影響を排除できる程度にレーザ光が透過するものであってもよい。
また、遮蔽部材の移動は、スライド移動や回転移動などにより行うことができ、回転移動においても複数の回転軸によって回転するものであってもよい。スライド移動は、遮蔽部材の面方向に沿って移動させる他、遮蔽部材の面方向とは交差する方向に移動させるものであってもよい。また、これらを組み合わせることも可能である。
遮蔽部材の移動は、手動、駆動のいずれによって行うものであってもよく、また、制御による自動移動がなされるものであってもよい。なお、遮蔽部材の移動は、ラインビームの光路に対し相対的に移動できるものであればよく、ラインビームの移動によって遮蔽部材の相対的な移動がなされるものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本願発明によれば、ラインビームを遮蔽部材の移動位置によって決定される形状で分断されたラインビームを得て、これを被処理体に照射することができ、光学系の交換や調整時間などを必要とすることなく照射に支障がある部位や照射をしたくない部位などにレーザ光を照射することなくラインビームを被処理体に照射することができ、生産性よく、また、品質よく所望の加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態である、遮蔽部材を含むレーザ処理装置の概略を示す図である。
図2】同じく、分断前後におけるラインビームの長軸方向断面のビームプロファイルを示す図である。
図3】同じく、遮蔽部材近傍の光路を示す概略図、分断されたビームプロファイルを示す概略図、半導体基板の平面を示す図である。
図4】同じく、遮蔽部材の詳細形状を示す平面図および正面図である。
図5】同じく、遮蔽部材の移動に伴う遮蔽形状の変化を説明する平面図および正面図である。
図6】同じく、遮蔽部材の変更例を示す平面図である。
図7】同じく、遮蔽部材の他の変更例を示す平面図である。
図8】同じく、遮蔽部材のさらに他の変更例を示す平面図である。
図9】同じく、遮蔽部材のさらに他の変更例を示す平面図である。
図10】同じく、遮蔽部材のさらに他の変更例を示す正面である。
図11】同じく、遮蔽部材のさらに他の変更例を示す正面である。
図12】同じく、遮蔽部材のさらに他の変更例を示す平面図である。
図13】従来のレーザ処理装置における長軸端部遮蔽部近傍を示す概略図およびビームプロファイルの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係る遮蔽部材を備えるレーザ処理装置を図1に基づいて説明する。
レーザ処理装置1は、処理室2を備えており、処理室2内に走査装置3が設けられている。走査装置3上には基台4が設置されており、基台4は走査装置3によってX方向(走査方向)に移動可能とされており、基台4は、さらにY方向への移動が可能となったものであってもよい。
また、処理室2には、外部からラインビームを導入する導入窓6が設けられている。
【0014】
レーザ処理時には、基台4上にガラス基板100aなどに非晶質のシリコン膜100bなどを形成した半導体基板100が設置される。半導体基板100は、被処理体に相当する。また、被処理体は半導体基板100に限定されるものではなく、例えば、プラスチック基板に半導体膜などを形成したものなどを被処理体とすることができる。
なお、本実施形態のレーザ処理装置は、非晶質膜をレーザ処理により結晶化するレーザアニール処理に関するものとして説明するが、本願発明としてはレーザ処理の内容がこれに限定されるものではなく、例えば、非単結晶の半導体膜を単結晶化したり、結晶半導体膜の改質を行うものであってよい。また、被処理体の剥離を行うものであってもよい。
【0015】
処理室2の外部には、レーザ光源10が設置されている。レーザ光源10は、パルス発振レーザ光、連続発振レーザ光のいずれのレーザ光を出力するものであってもよく、本発明としてはいずれかに限定されるものではない。
この実施形態では、レーザ光源10においてパルス状のレーザ光15が出力されるものとする。レーザ光15は、必要に応じてアテニュエータ11でエネルギー密度が調整され、反射ミラー12a、ホモジナイザ12b、反射ミラー12c、集光レンズ12dなどを含む光学系12でラインビーム形状などへの整形や偏向などがなされる。なお、光学系12を構成する光学部材は上記に限定されるものではなく、各種レンズ、ミラー、導波部などを備えることができる。上記光学系12によってビーム断面形状がライン形状とされたラインビーム150が得られる。ラインビーム150のサイズは特に限定されるものではないが、被処理体表面上における形状として、例えば短軸幅0.155〜0.450mm、長軸幅370〜1300mmを例示することができる。
【0016】
また、集光レンズ12dと導入窓6との間には、ラインビーム150の光路上に位置してラインビーム150を分断して複数のラインビームに整形する遮蔽部材13とラインビーム150の長軸端部を遮蔽する長軸端部遮蔽部20とが配置されている。遮蔽部材13と長軸端部遮蔽部20とは一体になっているものであってもよく、また、別体で構成されているものであってもよい。
遮蔽部材13は、ラインビーム150の光路に対し移動可能となっており、手動による移動位置調整または/および駆動部による移動位置調整が可能になっている。移動は、上記光路に対し相対的にスライド移動したり、回転移動したりすることにより行うことができ、またこれらを組み合わせたものであってもよい。遮蔽部材13は、ラインビーム150の光路外に退避可能でラインビーム150の遮蔽に際しラインビーム150の光路内に移動するものであってもよく、光路内でのみ移動するものであってもよい。この実施形態では、光学系12と導入窓6との間に遮蔽部材13を配置しているが、導入窓から被処理体に至る間に遮蔽部材13を位置させる構成とすることもできる。
【0017】
また、レーザ処理装置1には、走査装置3、遮蔽部材13の駆動部(図示しない)、レーザ光源10などを制御する制御部7を備えている。制御部7は、CPUやこれを動作させるプログラム、記憶部などにより構成される。
【0018】
次に、レーザ処理装置1の動作について説明する。
レーザ光源10において、制御部7の制御によって所定の繰り返し周波数でパルス発振されて、所定出力でレーザ光15が出力される。レーザ光15は、例えば、波長400nm以下、パルス半値幅が200n秒以下のものが例示される。ただし、本発明としてはこれらに限定されるものではない。
レーザ光15は、制御部7により制御されるアテニュエータ11でパルスエネルギー密度が調整される。アテニュエータ11は所定の減衰率に設定されており、シリコン膜100bへの照射面上で結晶化に最適な照射パルスエネルギー密度が得られるように、減衰率が調整される。例えば非晶質のシリコン膜100bを結晶化するなどの場合、その照射面上において、エネルギー密度が250〜500mJ/cmとなるように調整することができる。
【0019】
アテニュエータ11を透過したレーザ光15は、光学系12でラインビーム形状に整形かつ短軸幅を集光されてラインビーム150となる。ラインビーム150は、例えば、シリコン膜100b上で長軸側の長さが370〜1300mm、短軸側の長さが100μm〜500μmとなるように整形される。
【0020】
ラインビーム150は、図2の長軸方向断面ビームプロファイルに示すように、最大エネルギー強度に対し96%以上となる平坦部150aと、長軸方向の両端部に位置し、前記平坦部150aよりも小さいエネルギー強度を有し、外側に向けて次第にエネルギー強度が低下するスティープネス部150bとを有している。スティープネス部150bは、最大強度の10%〜90%の範囲の領域とすることができる。
【0021】
図13は、従来のレーザアニール処理装置における光路の概要を示すものである。このレーザ処理装置においても、上記実施形態のレーザ処理装置1と同様に、反射ミラー12c、集光レンズ12dなどの光学系を備えており、集光レンズ12dと図示しない導入窓との間の光路に、ラインビーム150の長軸端部を遮蔽する長軸端部遮蔽部20が配置されている。長軸端部遮蔽部20によってラインビームの長軸端部をカットすることでラインビーム150のスティープネス部150bの傾斜を小さくすることができる。図13には、長軸端部がカットされたラインビーム150のビームプロファイルが併せて示されている。
【0022】
本実施形態では、制御部7で遮蔽部材13の移動を制御して、ラインビーム150の一部を遮蔽し、分断したラインビームを得る。
図3にその例を示す。遮蔽部材13および長軸端部遮蔽部20を通過したラインビーム150は、長軸方向端部が長軸端部遮蔽部20で遮蔽されるとともに、平坦部の一部が、ラインビーム150の長軸方向に間隔を空けて位置する遮蔽部材13の遮蔽部130で遮蔽されて長軸長さが短くなった複数の分断されたラインビーム151が得られ、該ラインビーム151が半導体基板100に照射される。
図3(a)には、分断されたラインビーム151のビームプロファイルを併せて示す。より詳細なビームプロファイルは、図2(b)に示す。ラインビーム151は、各ラインビーム151毎に平坦部151aと長軸方向両側のスティープネス部151bとを有しており、隣接する平坦部151a同士は、遮蔽部130の間隔に応じた間隔を有している。
【0023】
また、図3(b)に、被処理部110が縦横に間隔をおいて割り当てられた半導体基板100の平面図を示す。ラインビーム151は、被処理部110の幅(図では左右方向)に合わせた長軸長さを有するように分断される。したがって、被処理部110の配列に合わせて遮蔽部材13には遮蔽部130が配列されている。
【0024】
レーザ処理装置1では、所定の走査速度でシリコン膜100bを移動させつつラインビーム151を照射することで被処理部110の配列に合わせてラインビーム151のオーバーラップ照射を行うことができる。所定時間の照射後、レーザ光の照射を短時間OFFして、再度レーザ光を照射することで、走査方向に未照射領域110aを確保できる。これを繰り返すことで被処理部110以外にはレーザ光を照射しないようにして半導体基板100に対し処理をして島状に分布した処理部111が得られる。
また、遮蔽部材13は、移動によって遮蔽部130の形状や位置を変更することができ、これにより分断されるラインビームの形状を変更することができる。以下、説明する。
【0025】
図4は、遮蔽部材13の詳細な形状を示すものである。
遮蔽部材13は、ラインビーム150の短軸方向に沿って段階的に幅の異なる遮蔽部130を有しており、ラインビーム150の長軸方向では、各遮蔽部130の幅は同じになっている。各遮蔽部130は、基部で連結されており、各遮蔽部130が一体になって移動することができる。遮蔽部材13をラインビーム150の短軸方向に移動させ、所定の遮蔽幅で遮蔽部130をラインビーム150に位置させると、該遮蔽幅に応じて分断されたラインビームの形状を調整することができる。
なお、遮蔽部の形状は、遮蔽縁の縁方向がラインビームの長軸方向に対して垂直または任意の角度をなすこと、且つラインビームの照射方向における断面が遮蔽縁に向かって小さくなるのが望ましく、さらには遮蔽縁が鋭くなっているのがより望ましい。これにより、遮蔽部の遮蔽縁によってラインビーム150の回折が発生して半導体基板100に対する悪影響が生じるのを防止または抑制することができる。
【0026】
図5(a)〜(d)は、遮蔽部材13が光路に対し移動して、光路に位置する遮蔽部130の幅が変更された状態と、分断されたラインビームのビームプロファイルの概略形状を示すものである。この遮蔽部材13では、分断された各ラインビームの長軸方向長さと間隔と段階的に調整することができる。
【0027】
図6は、他の例の遮蔽部材13aを示すものである。
遮蔽部材13aは、ラインビーム150の短軸方向に沿って幅が連続的に変化する2等辺三角形状の遮蔽部130aを間隔を置いて有している。なお、各遮蔽部130aは、互いに独立して移動が可能であり、ラインビーム150の短軸方向に移動させることで遮蔽幅を変更して分断されたラインビームの長軸長さを調整することができる。また、一部の遮蔽部130aを光路に位置させ、他の遮蔽部130aを光路外に位置させることで分断されたラインビームの数を変えることもできる。
また、この形態では、長軸端部遮蔽部20が、ラインビーム150の長軸方向に移動可能になっており、光学系12での調整に合わせることで、分断されたラインビームの両側端部間の大きさを変更することができる。
【0028】
図7は、さらに他の例の遮蔽部材13bを示すものである。
遮蔽部材13bは、遮蔽部材13と同様に、ラインビーム150の短軸方向に沿って段階的に長軸方向の幅が異なる形状を有している。ただし、遮蔽部材13bは、遮蔽部材13と異なり、各遮蔽部130bが単独で前記短軸方向に移動可能になっており、各遮蔽部130bをラインビーム150の短軸方向に移動させることで遮蔽幅を変更して分断されたラインビームの長軸長さを調整することができる。また、一部の遮蔽部130bを光路に位置させ、一部の遮蔽部130bを光路外に位置させることで分断されたラインビームの数を変えることもできる。
【0029】
上記各遮蔽部材では、ラインビーム150の短軸方向に沿って段階的または連続的に長軸方向幅が同一傾向(増加または減少)で変化するものについて説明したが、増加、減少の傾向を有することなく長軸方向幅が移動位置によって異なるものであってもよい。
図8は、さらに他の例の遮蔽部材13cを示すものである。
遮蔽部材13cは、ラインビーム長軸方向に間隔を置いて複数の遮蔽部130cを有しており、各遮蔽部130cは単独で前記短軸方向に移動可能になっている。遮蔽部130cは、前記短軸方向位置において一定の増加または減少傾向を有することなく異なる長軸方向幅を有しており、各遮蔽部130cをラインビーム150の短軸方向に移動させることで遮蔽幅を変更して分断されたラインビームの長軸長さを調整することができる。なお、各遮蔽部130cの前記長軸方向幅は、前記短軸方向において大小の傾向を有しておらず、短軸方向の移動位置に応じて適宜の幅を有するように構成されている。
【0030】
また、上記各遮蔽部材では、各遮蔽部同士が同じ形状を有するものとして説明したが、各遮蔽部が異なる形状を有するものであってもよい。
図9は、さらに他の例の遮蔽部材13dを示すものである。この形態では、遮蔽部130dと遮蔽部131dとが長軸方向で交互に配列されており、互いに異なる形状を有している。遮蔽部130dでは、前記短軸方向に沿って段階的に前記長軸方向幅が変化するように構成されている。したがって、同一の方向に移動させることで、順次長軸方向幅を増大または減少させることができる。遮蔽部131dは、長軸方向幅の変化に一定の増加または減少の傾向がなく、短軸方向位置に応じて適宜の長軸方向幅を有している。
遮蔽部130dと遮蔽部131dとを適宜移動させることで多様な長さで、分断されたラインビームを得ることができる。なお、この実施形態では、形状の異なる遮蔽部材が交互に配列されているものとして説明したが、本発明としては、配列方法が特に限定されるものではなく、形状の異なる遮蔽部材の種別も特に限定されるものではない。
【0031】
なお、上記各遮蔽部では、短軸方向に沿って遮蔽部が移動するものについて説明したが、短軸方向とは角度を有するように短軸方向と同一面内で移動するものであってもよく、また短軸方向と同一面内で長軸方向に沿って移動するものであってもよい。さらには、短軸方向とは角度を有する面内で移動するものであってもよい。移動方向は一方向に限らず、複数方向に行われるものでもよい。
【0032】
上記各実施形態では、遮蔽部がスライド移動するものについて説明したが、遮蔽部が回転移動するものであってもよい。以下説明する。
図10は、他の遮蔽部材13eを示すものであり、長軸方向に沿って間隔をおいて複数の遮蔽部130eが配置されている。遮蔽部130eは、平板状の形状を有し、ラインビーム150の短軸方向に沿った回転軸を有しており、該回転軸に従って回転駆動することができる。この回転によって、ラインビーム150の照射方向における長軸方向での遮蔽有効幅を変更することができる。各遮蔽部130eは、互いに連動して回転するものであってもよく、また、一部または全部でそれぞれが独立して回転するものであってもよい。独立して回転可能な場合、一部または全部の遮蔽部130e間の回転角度が異なることで遮蔽形状を変更させることができる。
図11は、さらに他の例の遮蔽部材13fを示すものであり、長軸方向に沿って間隔をおいて複数の遮蔽部130fが配置されている。遮蔽部130fは、ラインビーム150の短軸方向に沿った回転軸を有しており、該回転軸に従って回転駆動することができる。各遮蔽部130fは、外周面の形状が周方向位置で異なっており、上記回転によって、回転位置に応じてラインビーム150に対する長軸方向での遮蔽有効幅を変更することができる。また、各遮蔽部130fは、前記実施形態と同様に、互いに連動して回転するものであってもよく、また、一部または全部でそれぞれが独立して回転可能なものであってもよい。独立して回転可能な場合、一部または全部の遮蔽部130e間の回転角度が異なることで遮蔽形状を変更させることができる。
なお、上記実施形態では、回転軸が短軸方向に沿ったものとして説明したが回転軸の方向が特に限定されるものではなく、また、回転軸を複数有するものであってもよい。
【0033】
また、上記各遮蔽材は、長軸方向における左右形状が対称になっているものについて主として説明をしたが、左右形状が異なるものであってもよい。
図12は、他の例の遮蔽部材13gを示すものである。
遮蔽部材130gは、長軸方向右側でラインビーム150の短軸方向に沿って外側片の傾斜が連続的に変化し、長軸方向左側で外側片が短軸方向に沿った直角三角形状を有しており、短軸方向の移動位置に応じて連続して長軸方向幅が変化する。この遮蔽部13gを短軸方向に移動させることで分断されたラインビームの長軸方向長さを調整することができ、分断されたラインビームの長軸方向の端部位置を片側で調整することができる。各遮蔽部130gは、連動するものであってもよく、また、一部または全部の遮蔽部で独立して移動できるものであってもよい。
【0034】
上記で説明した各遮蔽部材の形状は、例示として示されるものであり、本願発明として遮蔽部材の形状が特定のものに限定されるものではなく、移動に応じて遮蔽形状を変更できるものであればよい。
【0035】
なお、上記で説明した各遮蔽部材の、少なくともレーザ光が照射される側の表面は、レーザ光の反射を防ぐために、粗面とするのが望ましい。または、各遮蔽部材の上面は、角度を付けることでレーザ光の入射角に対して90度にならないようにすることも可能である。これらの対策によってレーザ光の垂直反射により、光学系に反射光が戻らないようにすることができる。
もしくは、遮蔽部材の表面はラインビームが反射するようにし、かつその上面は角度を付けて、光学系とは異なる方向に反射光を反射させるようにしてもよい。この反射光の強度(パワーもしくはエネルギー密度など)を計測する計測器を設け、計測結果を利用してレーザ光のエネルギー出力を調整したり、アテニュエータの減衰率を調整したりすることにより、レーザ加工対象物に一定のパワーが到達するようにすることができる。
【0036】
また、上記の実施形態では、遮蔽部材の全部が移動するものについて説明したが、例えば固定遮蔽部と可動遮蔽部との組み合わせによって遮蔽形状を変えて分断されたラインビームの形状を調整するようにしてもよい。
【0037】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本願発明は、上記実施形態の内容に限定されるものではなく、本願発明の範囲を逸脱しない限りは適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 レーザ処理装置
2 処理室
3 走査装置
4 基台
6 導入窓
7 制御部
10 レーザ光源
12 光学系
12a 反射ミラー
12b ホモジナイザ
12c 反射ミラー
12d 集光レンズ
13、13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g 遮蔽部材
130、130a、130b、130c、130d、131d、130e、130f、130g 遮蔽部
20 長軸端部遮蔽部
100 半導体基板
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