(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
骨組織に締結され、インプラント(2)と複数の締結具(3)とを備えるインプラントシステムであって、前記インプラントは、前記骨組織と接触する骨側部分を有し、前記骨側部分は、前記骨側部分に限定された複数の締結構造を備え、前記締結具(3)は、遠位側と近位側とを有し、前記遠位側は、前記骨組織中に固定されるように構成されており、前記近位側は前記インプラント(2)の前記締結構造のうち1つと接続されるように構成されており、すなわち前記締結具の近位側は前記インプラントの骨組織から遠い方の面に達しておらず、前記締結具は各々、前記締結構造の1つに割当てられており、前記接続は、前記インプラントを前記締結具(3)の前記近位側に押付けることによって実現可能であり、前記遠位側は、前記骨組織中の対応する開口に達し、機械的発振を用いてその内部に固定される形状を有し、固定されるための機械的発振によって液化可能な材料を備える、インプラントシステム。
前記締結構造と前記締結具の前記近位側とのうち一方は、アンダーカットされた窪み(5)を含み、前記締結構造と前記締結具とのうちの他方は、前記アンダーカットされた窪みに挿入可能またはスナップ留め可能な突起を含む、請求項1に記載のインプラントシステム。
前記締結構造と前記締結具の前記近位側とのうち一方は、円錐形の突起(6)を含み、前記締結構造と前記締結具の前記近位側とのうちの他方は、円錐形の窪み(50)を含み、前記円錐形の突起(6)を前記円錐形の窪み(50)に押込むと、圧入接続が起こる、請求項1に記載のインプラントシステム。
前記締結構造は、熱可塑性特性を備えた第1の材料からなる部位(60)であり、前記締結具(3)の前記近位側は、熱可塑性特性を備えた第2の材料を含み、前記第1の材料と前記第2の材料とは溶接可能である、請求項1に記載のインプラントシステム。
前記インプラントは、脛骨プラトー置換インプラント、または、関節窩のための、寛骨臼のための、肘、手首、足首、もしくは指の関節のための、または大腿頭のための表面置換型インプラントである、請求項1から6のいずれか1項に記載のインプラントシステム。
請求項1に記載のインプラントシステムを含むキットであって、前記キットは、インプラント(2)と複数の締結具(3)とからなるインプラントシステムを備え、前記インプラントは、骨組織と接触する骨側部分を含み、前記骨側部分に限定された複数の締結構造を備え、前記締結具(3)は各々、前記骨組織中に固定されるのに適した遠位側と、前記インプラント(2)の前記締結構造のうち1つと接続されるのに適した近位側とを備え、前記キットはさらに、前記インプラント(2)の前記骨側部分に適合した骨側と前記インプラント(2)にある前記締結構造の位置に対応した位置にある貫通孔とを備えたテンプレート(10)および/または前記インプラントの関節側部分に適合したプレス工具を備える、キット。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1A、
図1B、および
図1Cには、この発明に従ったインプラントシステムとインプラントを締結する方法との第1の例示的な実施例が示されている。これら図面には、例示的な用途として、脛骨プラトー(関節面)の表面置換が説明されている。上記で既に述べたように、この発明に従ったインプラントおよび方法は、脛骨プラトーの表面置換に適し
ているのみならず、ヒトまたは動物の関節の関節面の任意の置換にも本質的に適しており、各特定の用途は、特に関節側の形状および設計についてのインプラントの対応する適合と、数、寸法、および骨およびインプラントに対する位置についての締結具の対応する適合とを必要とする。この挙げられた適合を、当業者は問題なく実行することができる。
図1Aから
図1Cに示されたインプラントおよび方法は、(たとえば骨折後)骨を支持するまたは安定化するのにも適しており、そのような場合、インプラントは、板またはロッドとして形作られており、通常、皮質骨組織中に締結具を用いて固定されている。
【0018】
図1Aには、一般的に知られた方法で表面置換するために準備された脛骨1と、概ね平坦な形態のインプラント2と、複数の締結具3とが断面で示されており、複数の締結具のうちたとえば4つは、締結プラトーインプラントを固定するために必要である(
図1Cには、上面から見た、脛骨プラトー上にある締結具の例示的な位置が示されている)。インプラントの関節側部分でインプラント中にロックされる軸受要素4も示されている。
【0019】
インプラント2は、一般的に知られているように、たとえば、金属(たとえばチタン、チタン合金、CoCr鋳造合金)、セラミック材料(たとえば酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウム)、複合材料(たとえば充填PEEK)または充填剤なしの高強度プラスチック材料(好ましくは、ガラス転移温度が100℃を超える結晶性重合体または熱硬化性プラスチック)からなる。インプラント2の骨側部分に設けられた締結構造は、この場合においては、アンダーカットされた窪み5であり、この窪みの位置が締結具3の固定位置を決定する。
【0020】
図1Aに従った実施例において、締結具3は、熱可塑性特性を備えた医学上許容される材料からなる単純なピンである。このピンの近位端は、窪み5の入口に適合しており、このピンの遠位端は、たとえば先が尖っているか、または先細になっている。
【0021】
図1Bには、この発明に従った方法の4つの連続した段階が示されており、
図1Aに従ったインプラントシステムは、膝関節に面した脛骨1の端部に取付けられている。
【0022】
まず、締結具3を骨組織1中に固定するための開口部20を、骨組織1に、有利にはテンプレート10と穿孔工具11とを用いて形成する。テンプレート10の形状は、(特に骨側で)インプラント2と対応しており、インプラントにある窪み5の位置に対応した位置(
図1C)にある孔12を含み、この孔の直径は、穿孔工具11の直径に適合している。テンプレート10を、準備された骨表面上に適切な手段で固定し、開口部20を、穿孔工具11を孔12を通して移動させることによって形成する。有利には、穿孔工具11は、開口部20に必要な深さを設定するための一般的に知られた手段を含む。
【0023】
開口部20が形成されたら、テンプレート10を取除き、締結具3を次々と開口部中に固定し、締結具のうち1つを各々、開口部のうちの1つの中に位置決めし、次に、開口部20の中に押込み、同時に、発振工具21(たとえば締結具3の近位面に適合した遠位結合面を備えた超音波装置のソノトロード(sonotrode))を用いて振動させる。発振によって開口部20の底部および/または壁で生じる締結具3の表面と骨組織との間の摩擦は、締結具3の熱可塑性材料の液化と、液状での骨組織への圧入を引起こし、同時に、締結具3は、開口部20の中を前進する。締結具3が十分に開口部20の中を前進すると、すなわち、十分な量の熱可塑性材料が骨組織に押込まれると、発振が停止されるので、骨組織に浸透している液化した材料は再凝固し、よって、締結具3は、骨組織中に本質的に確実な嵌合接続によって固定される。
図1Cには、骨組織中に固定された4つの締結具3が示されている。
【0024】
いったんすべての締結具3を固定すれば、インプラント2を、骨組織から突出する締結
具3の近位側が窪み3の中に位置するように締結具3の上に位置決めする。次に、面がインプラント2の関節側部分に適合したプレス工具30を用いて、インプラント2を骨表面に向かって押し、熱が適切な方法で(たとえば熱導体または加熱要素31を介して)締結具位置と対応したインプラント領域に供給される。締結具3の近位端は、プレス工具30からインプラント2、または締結具3のそれぞれに対して加えられる圧力によって、窪み5の中に押込まれる。締結具の熱可塑性材料は、局所的に加熱されたインプラントとの接触を通じてしなやかになり、窪み5のアンダーカットされた形状に形態が適合し、よって、所望される確実な嵌合接続をインプラント2と締結具3との間に生み出す。
【0025】
完成された骨1中へのインプラント2の固定は、
図1Bの最下部に示されている。好ましくは、特に表面置換型インプラントについては、締結具3の長さは、
図1Bの最下部に示されるように、インプラント2の骨側部分が締結具3間で骨組織に触れるような長さである。これにより、骨に面した表面が予めそのように処理されている(たとえばチタンもしくはチタン合金の粗面化された表面またはリン酸カルシウム系被膜のある表面)インプラントの骨結合が可能になる。
【0026】
図1Aおよび
図1Bに従った締結具3に適した熱可塑性特性を備えた材料は、たとえば以下の通りである。乳酸および/もしくはグリコール酸系重合体(PLA、PLLNA、PGA、PLGAなど)、またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖類、ポリジオキサノン(PD)、ポリ酸無水物、ポリペプチドなどの吸収性重合体、または挙げられた重合体を成分として含む共重合体もしくは複合材料に相当するもの。または、ポリオレフィン(たとえばポリエチレン)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリアリールケトン、ポリイミド、ポリフェニルサルファイド、もしくは液晶重合体LCP、ポリアセタール、ハロゲン化重合体、特にハロゲン化ポリオレフィン、ポリフェニルサルファイド、ポリスルフォン、ポリエーテル、などの非吸収性重合体、または挙げられた重合体を成分として含む同等の共重合体もしくは複合材料。
【0027】
分解性材料の特定の実施例は、すべてベーリンガー(Boehringer)社製のLR706 PLDLLA 70/30、R208 PLDLA 50/50、L210S、およびPLLA100%Lのようなポリラクチドである。適切な分解性重合体材料の一覧は、エーリヒ・ヴィンターマンテル(Erich Wintermantel)およびソクウ・ハ(Suk-Woo Haa)著、「生体適合性材料および方法を用いた医薬技術(Medizinaltechnik mit biokompatiblen Materialien und Verfahren)」、第3版、シュプリンガー(Springer)、ベルリン、2002(以下「ヴィンターマンテル」と呼ぶ)、第200頁にもあり、PGAおよびPLAについての情報は、第202頁以下を参照、PCLについては第207頁、PHB/PHV共重合体については第206頁、ポリジオキサノンPDSについては第209頁を参照。もう1つの生体吸収性材料についての論考は、たとえば、CA ベイリー(Bailey)他、J Hand Surg[Br]、2006年4月、31(2)、208−12にある。
【0028】
非分解性材料の特定の実施例は、ポリエーテルケトン(PEEK−Optima(登録商標)、グレード450および150、インビビオ社(Invibio Ltd)、ポリエーテルイミド、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシメチレンである。重合体および用途の概略表はヴィンターマンテル、第150頁にあり、特定の例は、ヴィンターマンテル第161頁以下(PE、Hostalen Gur 812、ヘキスト社(Hoechst AG))、第164頁以下(PET)、第169頁以下(PA、すなわちPA6およびPA66)、第171頁以下(PTFE)、第173頁以下(PMMA)、第180頁(PUR、表参照)、第186頁以下(PEEK)、第189頁以下(PSU)、第191頁以下(POM−ポリアセタール、デルリン(Delrin)(登録商標)、テナック(Tenac)(登録商標)もプロテック(P
rotec)社による内部人工器官において用いられている)にある。
【0029】
熱可塑性材料は、さらなる機能に役立つ異質な相または化合物を含んでもよい。とりわけ、熱可塑性材料は、(たとえばリン酸カルシウムセラミックまたはガラスの)混合繊維またはひげ結晶および複合材料を表わすものによって強化されてもよい。熱可塑性材料は、さらに、その場で膨張するまたは溶解する(細孔を生成する)成分(たとえば、ポリエステル、多糖類、ハイドロゲル、リン酸ナトリウム)またはその場で放出されてたとえば治癒および再生の促進のような治療効果を有する化合物、たとえば成長因子、抗生物質、または炎症抑制剤を含んでもよい。さらに、たとえばハイデマン(Heidemann)他、「水溶性リン酸水素ナトリウムの混合物による予め分解されたPDLLAのpH安定化(pH-stabilization of predegraded PDLLA by an admixture of water-soluble sodiumhydrogenphosphate)」、Biomaterials、2002年9月、23(17)、3567−74に説明されるように、リン酸ナトリウムもしくはカルシウムまたは炭酸カルシウムのような緩衝剤が吸収性熱可塑性材料に酸性分解の有害作用に対抗して含まれてもよい。熱可塑性材料が吸収性の場合、そのような化合物の放出は遅延される。
【0030】
用いられる充填剤には、分解性重合体で用いられる分解性、骨刺激性充填剤が含まれてもよく、β型リン酸三カルシウム(TCP)、ヒドロキシアパタイト(HA、結晶化度<90%、またはTCP、HA、DHCP、バイオガラスの混合物が含まれてもよい(ヴィンターマンテル参照)。
【0031】
非分解性重合体のための、部分的にのみ分解性であるまたは殆ど分解性でない骨結合刺激性充填剤には、バイオガラス、ヒドロキシアパタイト(結晶化度>90%)、HAPEX(登録商標)、が含まれる。SMリー(Rea)他、J Mater Sci Mater Med.、2004年9月、15(9)、997−1005、参照。ヒドロキシアパタイトについては、L.ファン(Fang)他、Biomaterials、2006年7月、27(20)、3701−7、M. ホァン(Huang)他、J Mater Sci Mater Med、2003年7月、14(7)、655−60、およびW. ボンフィールド(Bonfield)およびE. ターナー(Tanner)、Materials World、1997年1月、第5巻第1号、18−20参照。
【0032】
生理活性充填剤の実施例およびその論考は、たとえば、X. ホァン(Huang)およびX. ミャオ(Miao)、J Biomater App. 、2007年4月、21(4)、351−74、JA ジュハズ(Juhasz)他、Biomaterials、2004年3月、25(6)、949−55にある。
【0033】
充填剤の特定の種類には、粗い種類:5−20μm(含量、好ましくは10-25容量%)、サブミクロン(析出からのナノ充填剤、好ましくは板状、アスペクト比>10、10−50nm、含量0.5から5容量%)が含まれる。
【0034】
上記で論じられたように固定されている締結具について、熱可塑性材料は、0.5GPaを超える、すなわち通常2から200kHzの範囲の周波数を有する機械的振動を殆ど減衰させずに近位面から骨組織と接触している表面まで伝達することができる弾性係数を有することが有利である。熱荷重を許容可能な範囲に保つために、材料は約350℃未満の温度で液化する。挙げられた接触領域において液化を開始させるおよび/または促進するために、こういった接触領域に、機械的振動を一層減衰させ、したがってより加熱され易く、それとともに液化する「より軟らかい」材料からなる好ましくは薄い接触層を設けることが有利であることがある。そのような接触層を設けるのに適した方法および材料は、この明細書中に引用により援用される同時係属中の米国出願第60/888798号に説明されている。たとえばポリエーテルアリールケトン(PEEKまたはPEAK)またはPLLAなどの結晶化度が高い熱可塑性材料については、上述の方法の固定は、挙げら
れた接触層なしには殆ど不可能である。
【0035】
図1Aおよび
図1Bに示されるこの発明の実施例は、以下の利点を含む。
・熱可塑性材料および機械的発振を用いて固定することは、特に、安定性の殆どない骨組織(海綿状または骨粗鬆症の骨組織)中への固定に適している。
【0036】
・固定部3の近位側についての形態要請は、最小限であり(それらは窪み5に挿入可能でなくてはならない)、そのため、こうした側面は、骨質の違いによる個々の締結具3の異なる固定深さを補償するために、固定後にトリミングすることができる。締結具の余分な長さは、たとえば単に切り取ることができるので、そのようなトリミングは、非常に単純である。
【0037】
・締結具の近位端よりも少なくとも僅かに大きくなるよう設計された窪み5は、締結具の固定後、インプラントの横方向の位置を調整することを少なくとも適度な程度可能にする。
【0038】
・締結具3は、骨状態および/または表面置換される関節面に亘る荷重分布に適合させることができる任意の選択された、特に非円形の断面を含んでもよい。
【0039】
・締結具3は、インプラントの固定に加えてさらなる機能を果たしてもよく、特に、安定性の殆どない骨組織の強化、骨組織中の裂傷の修復、または骨断片もしくは増強材料の締結である。
【0040】
図1Aから
図1Cに従ったインプラントシステムと、方法とは、大きく異なって変形することができる。いくつかの例は以下のとおりである。
【0041】
・窪み5は、インプラントの骨側部分の突起に位置しており、開口部20の入口は、その中に突起を位置決めすることができるよう、対応する幅を含む(
図2に従った実施例に類似する)。
【0042】
・締結具3は、全体が熱可塑性材料からなるわけではなく、金属、セラミック、インプラント術条件下で液化しない熱可塑性材料、または熱硬化性プラスチック材料からなるコアを含み、このコアの表面は、液化可能な熱可塑性材料で、完全にまたは部分的にのみ覆われている(例は
図6および
図7参照)。締結具は、液化可能な材料がその中に置かれる液化不可能な鞘も含んでもよく、振動が加えられ、材料がそれとともに液化されると、液化可能な材料は、鞘から適切な開口部を通して鞘におよび骨組織中に搾り出される。液化可能な材料として、熱可塑性重合体もしくは重合体、セラミック、または揺変特性のある水硬性セメント(たとえばシンセス(Synthes)社製Norian(登録商標)またはセンターパルス(Centerpulse)社製Sulfix(登録商標))が鞘に設けられてもよい(例は
図11および
図13参照)。
【0043】
・上述のコアまたは鞘は、液化可能な材料がないままであり、骨結合を促進するように構成されている表面領域を含み、および/またはこの明細書中に引用により援用されるUS−7008226およびWO−2005/079696公報に開示されたセルフカット式刃を含んでもよい。
【0044】
・締結具のコアまたは鞘は、アンダーカットされた空洞を含み、インプラント部は、締結構造として働く熱可塑性材料からなる突起を含む。
【0045】
・締結具3の遠位側の熱可塑性材料と近位側の熱可塑性材料とは、異なる。
・締結具3は、断面が円形以外のピンであり、そのため、上述の穿孔工具11以外の手段が開口部20を作るために提供される。
【0046】
・締結具3はピン状ではないが、
図1Cに鎖線で示され3′で表示されるように、舌またはブレード状であり、たとえばインプラント2の縁部に平行に延在する。
【0047】
・形状および/または寸法が異なる締結具3は、関節面上に、負荷レベルが異なる位置に対して設けられる。
【0048】
・締結具3は、機械的発振によってではなく、硬化性骨セメントを用いて開口部20中に固定されている。
【0049】
・締結具3は、細く先端が尖っており、開口部20を設けることなしに(または、たとえば皮質骨層のみを通した部分的開口部だけを設けて)、機械的発振および圧力を用いて骨組織中に固定される。
【0050】
・インプラントは、それ自体知られた方法で、インプラントの骨側部分にあり、かつ骨組織中に位置する対応する軸開口部7′中に位置決めされる軸7(
図1Aに鎖線によって示されている)または櫛状部も含んでもよい。剪断応力の吸収のための最先端の技術に従って設けられるそのようなシャフトまたは櫛状部は、しかしながら、そのような剪断応力は締結具3によって容易に吸収されるので、この発明に従って不要である。
【0051】
・熱供給に代えて、機械的発振がインプラントの関節側の近位端を加熱するためにインプラント中に結合されてもよい。この目的を達成するために、
図5に示されるように、たとえば発振工具32が用いられる。この工具は、たとえば、超音波装置の一部であり、発振する延長部33を備えた遠位端を含み、この延長部の位置は、締結具の位置に適合している。
【0052】
・締結具3は、熱可塑性材料と機械的発振とを用いて開口部中に固定されており、締結具の近位側は、骨表面に対して予め定められた位置に保たれている。そのような固定する手順の例は、
図12に説明されている。さらなる実施例は、この明細書中に引用により援用される同時係属中の米国出願第60/983791号に説明されている。
【0053】
・締結具は、締結するステップの前は、開口部20の中に単に位置決めされており、締結具の固定と締結具の近位側へのインプラントの締結とは、機械的振動をインプラント中に結合することによって同時に実現される(
図13参照)。
【0054】
図2には、この発明に従ったインプラントシステムに適したインプラント2と締結具3との間の接続と、骨組織1中への締結具3の適切な固定とのもう1つの例示的な実施例が示されており、インプラント2の一部のみと単一の締結具3が軸方向の断面で示されており、インプラントは、もう一度、やや平らなまたは平坦なインプラント、たとえば表面置換型インプラントとして形作られている。
図2の左手側には、既に固定された締結具3と締結具に取付けられる前のインプラント2とが示されている。右手側には、締結するステップ後のインプラントが示されている。
【0055】
再び、インプラント2は、締結構造として、たとえば突起6に位置したアンダーカットされた窪み5を含む。締結具3は、ねじ状の遠位側と、ねじ回し工具(たとえば外側もしくは内側六角形またはすり割りを含む)に結合され、窪み5に適合されるように構成された近位頭40とを含む。突起6および/または頭40は、頭40が窪み5の中にスナップ留めされることを可能にするのに十分な弾性がある。インプラント2の骨側の表面と骨表
面との間の骨結合のための接触を確立するために、締結具3を受けるために骨組織1に設けられる開口部は、突起6に適合した入口41を含む。この入口41から、ねじのために孔を設けてもよく、または、ねじは、前もって穿孔せずに、骨組織1に捩じ込んでもよい。
【0056】
窪み5を備えた突起6に代えて、締結構造を構成する頭を、インプラントに設けてもよく、締結具は、この頭に適合したアンダーカットされた窪みを備える。ねじとして設計された締結具の遠位側に代えて、締結具は、超音波振動を用いた固定に適した熱可塑性特性を備えた材料からなる表面も、少なくとも部分的に含んでもよい。そのような締結具の例は、
図6に示されている。
【0057】
図2に類似して、
図3には、この発明に従ったインプラントシステムに適したインプラント2と締結具3との間のもう1つの接続と、骨組織1中への締結具3の適切な固定が示されている。インプラントは、また、やや平らな形状であり、したがって、たとえば、関節の関節面の表面置換に適している。
【0058】
再び、
図1Aから
図1Cに従った実施例について説明されたように、締結具3は、たとえば少なくとも部分的に、機械的発振によって液化可能な熱可塑性材料からなり、骨組織1にある対応する開口部20中に機械的発振によって固定される。締結具は、円錐形開口部50を含み、この円錐形開口部は、インプラント2の骨側部分にある対応するかつ等しく円錐形の突起6に適合しており、このため、突起6を開口部50に押込み、圧入接続(圧入)によってその中に保持することができる。固定するステップに必要なのは、実にそのような押込みだけである。適用可能な場合、開口部50の壁と突起6の壁との間の接続は、超音波溶接によって強化されてもよい。そのような場合、円錐突起6または少なくともその表面も、熱可塑性材料からならなくてはならず、この材料は、締結具3の熱可塑性材料に融合させることができる。そのような溶接は、
図3の右手側に示されるように、発振工具21をインプラント2の関節側部分に突起6と対向して当てることによって実現することができる。一方の側(円錐6または円錐形開口部50)だけを熱可塑性材料で被覆し、対向する側に、熱可塑性材料が発振によって液化されると、熱可塑性材料によって浸透される表面構造を設けることも可能であり、これは、確実な嵌合接続をもたらす。
【0059】
図3に示されるインプラント2と締結具3との間の類似した接続は、円錐形の開口部がインプラントに位置し、円錐が締結具3に位置する場合実現される。そのような締結具3は、
図7に示されている。円錐51と、締結具3の遠位側まで延在するコア52とは、たとえば金属からなり、コア52は、少なくとも部分的に熱可塑性材料53によって囲まれている。
【0060】
図4には、この発明に従った方法に適したインプラント2と締結具3との間のもう1つの接続と、骨組織1中への締結具3の固定とが示されており、再び、やや平らなインプラント、たとえば表面置換型インプラントが想定されている。
【0061】
締結具3は、少なくともその近位側に、熱可塑性特性を備えた材料を含み、尖った先端と切断する刃とを備え、かつバーブとして働く構造を備え得る錨のような形状である。締結具3は、骨組織1中に打込まれることによって固定される。インプラント2は、その骨側部分にある締結構造として、締結具3の熱可塑性材料と融合することができる材料からなる部位60を含む。有利には、締結具3の近位側と部位60とは、それらが少なくとも僅かに噛合うようセルフセンタリングするために設計されている(たとえば、図示するように僅かに凹状および凸状である)。インプラント2を締結具3と接続するために、発振工具21(たとえば超音波装置のソノトロード)がインプラント2の関節側部分に当てられ、部位60の位置は、有利には、そのように印が付けられている。
【0062】
図4に従った締結具3は、ピン状であってもよいが、特に、ブレード形状でもあってもよい(
図14A参照)。
【0063】
図8には、この発明に従ったインプラントシステムのもう1つの例示的な実施例が非常に概略的に示されている。このインプラントシステムは、大腿頭(凸関節面)を表面置換する働きをする。先行の
図1から
図7に示されたこの発明のすべての実施例も、この場合に適用することができる。同様に、板またはロッド状のインプラントを骨に固定することができ、この板またはロッドは、たとえば骨折の場合、支持および安定化機能を有する。主に海綿状の骨組織に取付けられる表面置換型インプラントとは対照的に、挙げられた板またはロッドは、通常、皮質骨組織に取付けられ、通常、インプラントの骨側部分で骨結合は所望されない。
【0064】
これまでに説明されたインプラントは、やや平らな形状であり、骨組織に面したインプラント側面は、本質的に工具を当てるためにアクセス可能である。しかしながら、この発明に従った方法は、そうでない場合にも適用可能である。そのような用途の例は、2つの椎骨間に導入され、この椎骨のうちの少なくとも1つに、またはたとえば股関節人工器官の軸などの管状骨中に固定されるインプラント軸に、固定される椎間板インプラントである。関節表面置換型インプラントについても、特に、インプラントが膝関節に脛骨端部を完全にアクセス可能にすることなく導入される場合、脛骨プラトーインプラントについても同様であることがある。
【0065】
図9および
図10には、インプラントがその埋込まれる位置まで、インプラントが締結される骨表面に垂直な方向ではなく実質的に平行な方向に移動される必要があり、かつインプラントの骨側と対向する側面へのアクセスが不可能なように、インプラント術部位へのアクセスが制限されている場合特に、上に挙げた用途に適したこの発明に従ったインプラントシステムの2つの実施例が説明されている。締結具3を固定する手順と、締結具とインプラントの締結構造との間の接続を確立するための手段および方法とは、上述のものと実質的に同様であり、したがって、再び詳細に説明する必要はない。
【0066】
図9には椎間板インプラント2が示されている。締結具3は、椎体70の上側(および/または下側)の中に固定される。インプラント2を2つの隣接する椎骨間に位置決めし、固定するために、インプラントを、締結具3の軸に垂直に締結具3の近位側の側方領域に押付けることにより(プレス工具30を用いて熱または機械的発振も伝達されてもよい)、この側方領域はインプラントにある窪みの側壁と接続される。押しやすくするために、インプラントにある窪みは、有利には横方向に互い違いであり、インプラントの先頭側に溝状に開いている(図示せず)。
【0067】
図9に示された原理が人工器官軸に適用された場合、インプラントの下方および上方に表わされる骨組織は、軸がその中に固定される管状骨の壁であり、締結具は、好ましくは、すべての側面に設けられるであろう。
図9に示された原理が脛骨プラトーインプラントに適用される場合、インプラントの下方に現される骨組織は脛骨の膝端部であり、インプラントの上方に表わされる組織は、それぞれ大腿骨の膝端部または半月板である。挙げられたすべての場合において、インプラントの骨側と対向するインプラントの側面は、圧力をかけるためにおよび締結するステップに必要なエネルギを結合するためにアクセスすることができない、または十分にはできない。
【0068】
締結具を、液化可能な材料と機械的振動とを用いて、
図9および
図10に示されるようにアクセスの自由度が制限されたインプラント術部位中に固定するためには、発振方向の向きを変えることができる振動工具を用いることが有利である。そのような工具は、たと
えばWO−2007/101362公報に説明されている。
【0069】
図10には、
図9に従ったものと類似した用途のもう1つの実施例が示されており、締結具3は、骨表面に実質的に垂直な方向に固定されておらず、傾斜している。この実施例は、人工器官軸を管状骨中に固定するのに特に適しているが、たとえば上述のように、たとえば椎間板インプラントまたは脛骨プラトーインプラントなどの他のインプラントにも適している。
【0070】
図11には、さらに前で既に述べた、鞘80と、鞘内に位置する液化可能な材料とを含む締結具3が示されており、この液化可能な材料は、その近位端に振動工具が当てられると、少なくとも部分的に液化され、鞘に設けられた開口部から搾り出される。
図11には、左手側に、固定されるために位置決めされた締結具と、締結具の上方に、鞘の近位端に締結されるのに適したインプラント2の締結構造とが示されている。右手側には、締結具の固定および締結具の近位側へのインプラントの固定後の、締結具およびインプラントが示されている。
【0071】
開口部20が骨組織に設けられており、締結具はその中に位置決めされる。鞘を開口部20に押込むことによって開口部20の底部が損傷することを防止することが所望される場合、鞘80の近位端に直径が開口部20の直径よりも大きいフランジ81を設け、少なくとも鞘80の軸方向の長さと同じ深さの開口部を選択することが提案される。締結具は、開口部20中に、振動工具(図示せず)を液化可能な材料の近位端に押付け、それとともに材料を少なくとも部分的に液化させ、材料を鞘開口部から骨組織中に押出すことによって固定される。
【0072】
インプラント2の締結構造は、熱可塑性材料からなるまたは熱可塑性材料で被覆された突起82を含み、この突起の断面は、鞘の開口領域の断面よりも僅かに大きい。この開口領域の内側に、たとえばねじ山83または他の適切な構造が設けられている。インプラント2が鞘の近位側に押付けられ、同時に振動されると、突起82は、鞘80の開口に押込まれ、それによって突起の熱可塑性材料は液化され、ねじ山83と接触し、ねじ山に押込まれ、再凝固すると、このねじ山と確実な嵌合接続を形成する。
【0073】
鞘80の外側表面に、US−7008226公報に開示された骨結合を促進することができる表面および/またはWO−2005/079696公報に開示されたセルフカット式刃を設けることは、有利であることがある。
【0074】
図12には、骨組織中に固定することができる締結具の例が示されており、締結具の近位端は、骨表面に対して予め定められた位置を維持し、たとえば、示されるように、骨表面と面一である。再び、締結具3は、左手側に、対応する開口部20中に固定されるためにその中に位置決めされているときが、右手側に、固定された構成で示されており、インプラントが締結具の近位側に締結されている。
【0075】
締結具3は、2つの部分からなる。熱可塑性材料からなる管85と、これも熱可塑性材料からなってもよい底板86とである。底板は、振動工具87の遠位端に接続されており、たとえばこの遠位端にねじ付けられており、振動工具は、管85と、管状の反対要素88とを貫通している。固定する手順のために、振動工具87は、反対要素88と、管85と、底板86とを取付けられた状態で、開口部20の中に位置決めされ、反対要素88は、その遠位端が固定後締結具の近位端の位置となるよう予め定められた位置にあるよう、ある位置に固定される。次に、振動工具は、底板86が管85を反対要素88に押付け、これより、管の材料が底板86と接触する場所で液化し、少なくとも付近の骨組織に浸透し、これにより管が底板に融合するように、開口部20から離れる方向に引張られ、振動
される。振動を通じて、(熱可塑性材料からなる場合)底板は、次第に振動工具を底板86から引抜くことができるよう、暖まり、それと共に軟化し、底板は、固定された締結具の一部として骨組織中に残る。底板86が熱可塑性材料からならない場合、振動工具87は、固定する手順の後、振動工具を捩じ取ることによって底部から分離することができ、または振動工具は、その近位端がインプラントの締結に役立つので、置いておかれてもよい。
【0076】
図12の右手側に示されるように、締結具と接続されるのに適したインプラント2の締結構造は、たとえば、液化可能ではない材料からなるアンダーカットされた突起82である。突起82は、振動されながら、固定された締結具に押込まれる。
【0077】
図12に示されたものと類似した締結具および固定する手順のさらなる実施例は、同時係属中の米国出願第60/983791号に開示されており、締結具を位置決めし、固定するのに適したインプラント術システムの例は、同時係属中の米国出願第61/033066号に開示されている。
【0078】
図13には、まず締結具3を骨開口部20の中に位置決めし、次にインプラント2を締結具の近位端の上に位置決めし、次に圧力および振動を締結具に加え、それとともに、締結具を固定し、本質的に同時にインプラントを締結具に締結するのに適した締結具3とインプラント2の締結構造とが示されている。再び、締結具は、鞘80と、鞘の中にある液化可能な材料とを含む。インプラント2は、締結構造として、アンダーカットされた遠位空洞を備えた突起を含み、突起の断面は、鞘80の内側断面に適合している。インプラントを開口部20の中に位置決めされた締結具に押付け、機械的振動をインプラントに加えると、振動している突起82は、鞘内側の液化可能な材料に押付けられることにより、少なくとも部分的にこの材料を液化し、この材料を鞘から一方では骨組織中へ、他方では突起の空洞へ押込んで、両方の場所で、再凝固すると、確実な嵌合接続を形成する。
【0079】
図14Aから
図14Cには、この発明に従ったインプラントシステムに適用可能なさらなる締結具と締結具アセンブリとの例が示されている。
【0080】
図14Aには、ブレード状締結具が示されている。
図1Cに示されるように、そのような締結具(3′)は、2つ以上のピン状の締結具を代替してもよく、十分に長くかつ適当な形状である場合、締結具アセンブリという意味で、上述の複数の締結具の機能を引受けることができる。そのようなやや長いブレード状または舌状でもある締結具は、好ましくは、湾曲したまたは折畳まれた形状(ジグザグまたは波形)を有し、または、たとえば、閉じられて円形または楕円形を形成する。
【0081】
鋭い遠位側を有する、
図14Aに示されたブレード状締結具は、骨組織中に打込まれるのに適している。近位側は、熱可塑性材料の被膜を含み、
図1Aから
図1Cに示されたインプラントに締結されるのに適している。明らかに、締結構造と締結具の近位側とのすべての他の組合せが、ブレードまたは舌状の締結具についても適用可能である。
【0082】
図14Bおよび
図14Cには、複数のブレード状締結具を備えたピン状締結具のアセンブリが示されており、ブレード状締結具は、ピン状締結具の近位部分から放射状に延在する(
図14B:近位側から見た図、
図14C:ピン軸に垂直に見た図)。ピン状締結具は、たとえば、熱可塑性材料から作られているが、ブレード状締結具は、金属から作られており、鋭い遠位端と、
図14Aのブレード状締結具について示した形状の重合体で被覆された近位頭とを有する。締結具アセンブリを骨組織中に固定するために、ピン状締結具に対応する開口部が設けられており、ピン状締結具は、振動されると開口部中に導入され、それとともに固定され、ブレード状締結具は、骨組織中に切り込んで、圧入によって骨組
織中に固定される。そのときブレード状締結具は、ピン状締結具と骨組織中の開口部とによってそれぞれ案内され、この案内は、
図14Bおよび
図14Cに従った締結具アセンブリの、
図14Aに示されたブレード状締結具と比較しての利点を構成する。
【0083】
特に、表面置換型インプラントは、インプラントの骨側部分の骨結合が非常に所望されるが、インプラントの骨側部分をできるだけ多く骨組織と直接接触したままにし、できるだけ少なく、小さな開口部を骨に設け、しかしそれでも、インプラントの骨への十分に強い締結を実現することが重要である。そのような用途には、
図14Aから
図14Cに示された締結具アセンブリを用いることが有利であることがある。
【0084】
さらに前で既に述べたように、締結具を固定する手順と、締結具と上述の図面に示された以外のインプラントの締結構造とを接続する手順とを組合せることが可能である。同様に、当業者にとって、図中に示された実施例の他の特性を上記に明示的に説明された組合せとは異なる方法で組合せることができることは明らかである。そのような代替的な組合せも、この発明の一部である。