特許第5725549号(P5725549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ FDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5725549-電力分配装置 図000002
  • 特許5725549-電力分配装置 図000003
  • 特許5725549-電力分配装置 図000004
  • 特許5725549-電力分配装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725549
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】電力分配装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/54 20060101AFI20150507BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01H9/54 B
   H02J13/00 311E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-75625(P2011-75625)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-209211(P2012-209211A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2014年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168457
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】山下 正▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】花川 健二
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−009139(JP,U)
【文献】 特開2009−081948(JP,A)
【文献】 特開2002−125315(JP,A)
【文献】 特開2010−040207(JP,A)
【文献】 特開2009−004365(JP,A)
【文献】 特開2000−166088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直流電圧の直流電力を受電する受電部と、
前記受電部で受電した直流電力が供給される配電部と、
前記受電部で受電した直流電力の電圧を第1直流電圧より低い第2直流電圧に変換する直流電圧変換装置と、
前記受電部で受電した直流電力の前記配電部への供給を接点でON/OFF可能に設けられ、前記直流電圧変換装置が出力する第2直流電圧が印加されて駆動されるリレーと、
前記リレーに対する第2直流電圧の印加をON/OFF可能なリレー駆動回路と、
前記リレー駆動回路を制御する制御装置と、を備える電力分配装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力分配装置において、外部装置と前記制御装置との通信インタフェース機能を有する通信装置をさらに備える、ことを特徴とした電力分配装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力分配装置において、前記配電部が複数設けられており、前記リレー及び前記リレー駆動回路が複数の前記配電部の各々に対応して複数設けられている、ことを特徴とした電力分配装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力分配装置において、前記制御装置は、外部装置から全リレー駆動要求を受信したことを条件として、時間差をもって複数の前記リレーの駆動制御を順次実行する、ことを特徴とした電力分配装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電力分配装置において、前記配電部に流れる電流を検出する電流検出回路をさらに備え、
前記制御装置は、前記リレーの駆動制御を実行した後、前記配電部に流れる電流を検出し、検出した電流が一定電流未満である場合には前記リレーの駆動を停止し、検出した電流が一定電流以上である場合には前記リレーの駆動状態を維持する配電制御手段を含む、ことを特徴とした電力分配装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力分配装置において、前記制御装置は、前記配電制御手段による配電制御を定期的に実行する、ことを特徴とした電力分配装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電力分配装置において、前記リレー駆動回路は、手動操作可能なスイッチを含み、前記スイッチの操作によって前記リレーをON/OFF可能である、ことを特徴とした電力分配装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電力分配装置において、前記リレー駆動回路は、前記リレーが駆動状態であるときに点灯する表示灯を含む、ことを特徴とした電力分配装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を機器に分配する電力分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信技術の発展により、例えば各種コンピュータ(メインフレーム、サーバー等)やデータ通信装置等が設置されて運用されるIDS(インターネットデータセンター)等の情報通信設備においては、必要とされる電力量も増大の一途をたどっており、その消費電力の抑制が課題となっている。情報通信設備において各機器に電力を給電するシステムとしては、一般的に交流給電システムが採用されている。交流給電システムにおいては、まず商用交流電力が直流電力に変換され、情報通信設備のUPS(無停電電源システム)のバッテリに充電される。またその直流電力は、AC100〜200Vの交流電力に変換されて各機器に分配される。各機器は、分配された交流電力を直流電力に変換し、さらにその直流電力を所望の電圧の直流電力に変換する。つまり交流給電システムにおいては、合計4回の電力変換が必要になるため、電力変換による電力損失が大きいという課題がある。
【0003】
近年は、情報通信設備における消費電力を削減するために、高電圧直流給電(HVDC)技術を用いた直流給電システムが注目されつつある。直流給電システムは、商用交流電力を直流電力に変換した後、その直流電力をそのまま各機器に分配するため、電力変換の回数は2回で済むことになる。つまり直流給電システムは、交流給電システムと比較して、電力を変換する回数を少なくすることができるため、電力変換時の損失が減少し、電力の利用効率を向上させることができる(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−118173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような給電システムにおいては、電力を各機器に分配する電力分配装置(Power Distribution Unit:PDU)が用いられる。一般的に電力分配装置には、受電した電力を複数の機器に分配する複数のレセプタクル(配電部)が設けられている。各機器は、電源ケーブルのプラグを電力分配装置のレセプタクルに接続することによって、電力分配装置から電力の供給を受ける。
【0006】
しかしながら従来の電力分配装置は、単に受電した電力を複数のレセプタクルに一律に分配するだけの機能しか有していない。そのため従来の電力分配装置は、例えば種々の条件に応じて、複数のレセプタクルへの配電を個々に自動的にON/OFF制御するといった高度な配電制御を行いたいというニーズに対応できないという課題がある。
【0007】
このような状況に鑑み本発明はなされたものであり、その目的は、種々の条件に応じて配電を自動的にON/OFF制御することが可能な電力分配装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様は、電力を受電する受電部と、前記受電部で受電した電力が供給される配電部と、前記受電部で受電した電力の前記配電部への供給を接点でON/OFF可能に設けられたリレーと、前記リレーを駆動するリレー駆動回路と、前記リレー駆動回路を制御する制御装置と、を備える電力分配装置である。
【0009】
配電部への電力供給をON/OFF可能なリレーを駆動するリレー駆動回路を設け、さらにリレー駆動回路を制御する制御装置を設けることによって、種々の条件に応じて配電部への電力供給のON/OFFを自動的に制御することが可能になる。
これにより本発明の第1の態様によれば、種々の条件に応じて配電を自動的にON/OFF制御することが可能な電力分配装置を提供することができるという作用効果が得られる。
【0010】
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様は、前述した本発明の第1の態様において、外部装置と前記制御装置との通信インタフェース機能を有する通信装置をさらに備える、ことを特徴とした電力分配装置である。
このような特徴によれば、本発明の第1の態様による作用効果に加えて、さらに外部装置からの遠隔操作によって配電をON/OFF制御することが可能になる。
【0011】
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様は、前述した本発明の第2の態様において、前記配電部が複数設けられており、前記リレー及び前記リレー駆動回路が複数の前記配電部の各々に対応して複数設けられている、ことを特徴とした電力分配装置である。
本発明の第3の態様によれば、複数の配電部が設けられた電力分配装置において、前述した本発明の第2の態様による作用効果を得ることができる。
【0012】
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様は、前述した本発明の第3の態様において、前記制御装置は、外部装置から全リレー駆動要求を受信したことを条件として、時間差をもって複数の前記リレーの駆動制御を順次実行する、ことを特徴とした電力分配装置である。
【0013】
外部装置から全リレー駆動要求を受信して配電部に接続された機器への電力供給を開始するときには、電力供給の開始直後に、その機器への突入電流による大きな電力消費が瞬間的に生ずることがある。そのため仮に複数のリレーを同時に駆動して複数の機器への電力供給を同時に開始した場合、極めて大きな電力消費が瞬間的に発生する可能性があり、例えば受電部へ電力を供給する電源装置(商用交流電力を直流電力に変換する電力変換装置等)が過電流保護機能等によって停止してしまう虞が生ずる。
【0014】
本発明の第4の態様においては、外部装置から全リレー駆動要求を受信して配電部に接続された機器への電力供給を開始するときに、時間差をもって複数の前記リレーの駆動制御を順次実行するので、極めて大きな電力消費が瞬間的に発生することを未然に防止することができる。したがって本発明の第4の態様によれば、例えば受電部へ電力を供給する電源装置が過電流保護機能等によって停止してしまう虞を低減させることができる。
【0015】
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様は、前述した本発明の第1〜第4の態様のいずれかにおいて、前記配電部に流れる電流を検出する電流検出回路をさらに備え、前記制御装置は、前記リレーの駆動制御を実行した後、前記配電部に流れる電流を検出し、検出した電流が一定電流未満である場合には前記リレーの駆動を停止し、検出した電流が一定電流以上である場合には前記リレーの駆動状態を維持する配電制御手段を含む、ことを特徴とした電力分配装置である。
【0016】
例えば情報通信設備で複数の同種のサーバーが稼働している状態において、いずれか一のサーバーの稼働率が低い状態である場合には、他のサーバーに処理を集約してそのサーバーを停止させれば、サーバー機能を維持したまま電力消費を削減することが可能になる。
本発明の第4の態様によれば、配電部から電力を供給している機器の稼働状態を配電部に流れる電流から判定し、稼働していない或いは稼働率が低い機器への電力供給を停止することができるので、その機器が担うべき機能を損なうことなく情報通信設備における消費電力を削減することができる。
【0017】
<本発明の第6の態様>
本発明の第6の態様は、前述した本発明の第5の態様において、前記制御装置は、前記配電制御手段による配電制御を定期的に実行する、ことを特徴とした電力分配装置である。
本発明の第6の態様によれば、機器の稼働状態を定期的に判定して、稼働していない或いは稼働率が低い機器への電力供給を停止するので、情報通信設備における消費電力を継続的に削減することができる。
【0018】
<本発明の第7の態様>
本発明の第7の態様は、前述した本発明の第1〜第6の態様のいずれかにおいて、前記受電部で受電した第1直流電圧の直流電力の電圧を第1直流電圧より低い第2直流電圧に変換する直流電圧変換装置をさらに備え、前記リレーは、前記直流電圧変換装置が出力する第2直流電圧が印加されて駆動され、前記リレー駆動回路は、前記リレーに対する第2直流電圧の印加をON/OFFする、ことを特徴とした電力分配装置である。
【0019】
直流給電システムにおいて配電部からプラグを取り外す際には、リレー駆動回路によりリレーをOFFし、配電部への直流電力の供給を遮断した状態で行うことによって、配電部とプラグとの間に持続的にアークが発生することを未然に防止することができる。そして受電した直流電力の電圧を第1直流電圧より低い第2直流電圧に変換する直流電圧変換装置を設け、その第2直流電圧でリレーを駆動する構成とすることによって、リレーをON/OFFさせるリレー駆動回路で持続的にアークが発生する虞を低減させることができる。
【0020】
これにより本発明の第7の態様によれば、直流給電システムにおいて、プラグを取り外す際に持続的にアークが発生する虞が少ない電力分配装置を提供することができる。
【0021】
<本発明の第8の態様>
本発明の第8の態様は、前述した本発明の第7の態様において、前記リレー駆動回路は、手動操作可能なスイッチを含み、前記スイッチの操作によって前記リレーをON/OFF可能である、ことを特徴とした電力分配装置である。
本発明の第8の態様によれば、配電部からプラグを取り外す際には、スイッチを操作してリレーをOFFした状態で行うことによって、配電部とプラグとの間に持続的にアークが発生することを未然に防止することができる。
【0022】
<本発明の第9の態様>
本発明の第9の態様は、前述した本発明の第7の態様又は第8の態様において、前記リレー駆動回路は、前記リレーが駆動状態であるときに点灯する表示灯を含む、ことを特徴とした電力分配装置である。
配電部に対するプラグの挿抜を行う操作者は、リレーの駆動状態、すなわち直流電力が配電部へ供給されている状態であるか否かを表示灯で視覚的に確実に認識することができる。したがって本発明の第9の態様によれば、直流電力が配電部へ供給されている状態で操作者が誤って配電部からプラグを取り外してしまう虞を低減させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、種々の条件に応じて配電を自動的にON/OFF制御することが可能な電力分配装置を提供することができるという作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】直流給電システムの概略構成図。
図2】カバーを外して内部が視認可能な状態の電力分配装置の平面図。
図3】電力分配装置の正面図。
図4】電力分配装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
尚、本発明は、以下説明する実施例に特に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変形が可能であること言うまでもない。
【0026】
<直流給電システム>
給電システムの一例としての直流給電システム100の構成について、図1を参照しながら説明する。
図1は、直流給電システム100の概略構成図である。
【0027】
直流給電システム100は、例えば各種コンピュータ(メインフレーム、サーバー等)やデータ通信装置等が設置されて運用されるIDS等の情報通信設備に設置される給電システムである。直流給電システム100は、電源システム10、電力分配装置(PDU)20及び複数の負荷機器30で構成されている。
【0028】
電源システム10は、AC/DCコンバータ11、充電器12、バッテリ13及びDC−DCコンバータ14を備えている。
AC/DCコンバータ11は、AC200Vの商用交流電力をDC250V〜400Vの直流電力に変換する電力変換装置である。AC/DCコンバータ11が出力する直流電力は、電力分配装置20へ出力されるとともに、充電器12へ出力される。充電器12は、AC/DCコンバータ11が出力する直流電力の一部をバッテリ13に充電する。バッテリ13に充電された電力は、例えば商用交流電力の停電時に、DC−DCコンバータ14を介して電力分配装置20へ出力される。DC−DCコンバータ14は、バッテリ13の出力電圧をDC250V〜400Vに変換して電力分配装置20へ出力する。
【0029】
電力分配装置20は、複数の出力レセプタクル21を備えており、その複数の出力レセプタクル21を介して、電源システム10から受電したDC250V〜400Vの直流電力を複数の負荷機器30に分配する。電力分配装置20の構成については後述する。
【0030】
負荷機器30は、例えばメインフレームやサーバー等の情報通信装置である。負荷機器30は、プラグ31が先端に設けられた電源ケーブル32及びDC−DCコンバータ33を備えている。負荷機器30は、電力分配装置20の出力レセプタクル21にプラグ31を嵌合させることによって、DC250V〜400Vの直流電力が電源ケーブル32を介してDC−DCコンバータ33へ供給される。DC−DCコンバータ33は、電力分配装置20から分配されたDC250V〜400Vの直流電力をその負荷機器30に対応する直流電圧(例えばDC48V)に変換する。負荷機器30は、DC−DCコンバータ33が出力する直流電圧で動作する。
【0031】
<電力分配装置(PDU)>
本発明に係る電力分配装置20の構成について、図2図4を参照しながら説明する。 図2は、カバーを外して内部が視認可能な状態の電力分配装置20の平面図である。図3は、電力分配装置20の正面図である。図4は、電力分配装置20の回路図である。
【0032】
電力分配装置20は、複数の出力レセプタクル21、入力レセプタクル22、DC−DCコンバータ23、複数のリレー24、複数のスイッチ25及び複数のLED表示灯26を備えており、これらが筐体2に収容されて構成されている。
【0033】
「配電部」としての出力レセプタクル21は、電源システム10が出力するDC250V〜400Vの直流電力を負荷機器30へ分配するものであり、負荷機器30のプラグ31が嵌合する開口部が筐体2の前面に露出した状態で配設されている。「受電部」としての入力レセプタクル22は、電源システム10が出力するDC250V〜400Vの直流電力を受電する。入力レセプタクル22で受電した直流電力は、複数の出力レセプタクル21へ供給される。「直流電圧変換装置」としてのDC−DCコンバータ23は、入力レセプタクル22で受電したDC250V〜400Vの直流電力の電圧(第1の直流電圧)を、それより低い例えばDC12V(第2直流電圧)に変換する。
【0034】
リレー24は、複数の出力レセプタクル21に個々に対応して複数設けられている。リレー24は、直列に接続された2つの駆動コイルL1、L2、独立した2つの接点S1、S2を含む。接点S1は、出力レセプタクル21への直流電力供給経路の+側に直列に接続されている。接点S2は、出力レセプタクル21への直流電力供給経路の−側(GND側)に直列に接続されている。つまりリレー24は、入力レセプタクル22で受電したDC250V〜400Vの直流電力の出力レセプタクル21への供給を接点S1、S2でON/OFF可能に設けられている。
【0035】
2つの駆動コイルL1、L2に直流電圧が印加されていない非駆動状態では、リレー24は、2つの接点S1、S2が開いてOFFした状態となる。そしてリレー24は、DC−DCコンバータ23が出力するDC12Vの直流電圧が2つの駆動コイルL1、L2に印加されることによって駆動され、それによって2つの接点S1、S2が閉じてONした状態となる。このリレー24は、接点S1、S2にアークが発生して接点S1、S2に損傷等が生ずる虞を低減させる観点から、接点S1、S2に生ずるアークを消弧する機構を備えた公知の直流高電圧リレーを用いるのが好ましい。
【0036】
「リレー駆動回路」を構成するスイッチ25は、複数のリレー24に個々に対応して複数設けられており、筐体2の前面に露出した状態で手動操作可能に配設されている。スイッチ25は、リレー24の駆動コイルL2とDC−DCコンバータ23のGND端子との間に直列に接続されている。リレー24に対するDC−DCコンバータ23の出力電圧(第2直流電圧:例えばDC12V)の印加は、このスイッチ25を操作することによってON/OFFすることができる。つまりスイッチ25を操作することによって、リレー24をON/OFFすることができ、それによって出力レセプタクル21への直流電力の供給をON/OFFすることができる。
【0037】
「表示灯」としてのLED表示灯26は、複数のスイッチ25に個々に対応して複数設けられており、筐体2の前面に露出した状態で点灯状態を前面から視認可能に配設されている。LED表示灯26は、LED(発光ダイオード)を含み、DC−DCコンバータ23の出力端子の+側にLEDのアノード端子が接続され、リレー24の駆動コイルL2とスイッチ25との間にLEDのカソード端子が接続されている。つまりLED表示灯26は、スイッチ25がONされてリレー24が駆動状態(ON状態)であるときに点灯する。したがって出力レセプタクル21に対する負荷機器30のプラグ31の挿抜を行う操作者は、リレー24の駆動状態、すなわちDC250V〜400Vの直流電力が出力レセプタクル21へ供給されている状態であるか否かをLED表示灯26で視覚的に確実に認識することができる。
【0038】
このような構成の本発明に係る電力分配装置20において、出力レセプタクル21から負荷機器30のプラグ31を取り外す際には、スイッチ25を操作してリレー24をOFFし、出力レセプタクル21への直流電力の供給を遮断した状態で行う。それによって出力レセプタクル21とプラグ31との間に持続的にアークが発生することを未然に防止することができる。そして本発明に係る電力分配装置20は、電源システム10から受電したDC250V〜400Vの直流電力の電圧(第1直流電圧)をより低い例えばDC12V(第2直流電圧)に変換するDC−DCコンバータ23が設けられており、その低い電圧でリレー24を駆動する構成となっている。それによってリレー24をON/OFFさせるスイッチ25で持続的にアークが発生する虞を低減させることができる。
【0039】
このようにして本発明によれば、直流給電システム100において、負荷機器30のプラグ31を取り外す際に持続的にアークが発生する虞が少ない電力分配装置20を提供することができる。
【0040】
また本発明の「リレー駆動回路」は、リレー24に対するDC−DCコンバータ23の出力電圧の印加をON/OFF可能なものであれば、どのような回路であってもよく、上記実施例のスイッチ25に特に限定されないのは言うまでもない。例えば出力レセプタクル21に対するプラグ31の挿抜を電気的又は機械的に検出し、出力レセプタクル21とプラグ31との接点が開離する前にリレー24が自動的にOFFする回路構成としても良い。この場合は、例えば機械式スイッチや接点等でリレー24をON/OFFする回路構成とすることもできるし、電磁リレーやソリッドステートリレーでリレー24をON/OFFする回路構成とすることもできるし、トランジスタやFET等の半導体スイッチでリレー24をON/OFFする回路構成とすることもできる。
【0041】
また本発明においては、上記説明した実施例のように、リレー24が駆動状態(ON状態)であるときに点灯する「表示灯」(LED表示灯26)を設けるのが好ましい。これは本発明に必須の要素ではないが、そのような構成とすることによって、直流電力が出力レセプタクル21へ供給されている状態で、操作者が誤って出力レセプタクル21からプラグ31を取り外してしまう虞を低減させることができる。
【0042】
さらに本発明に係る電力分配装置20は、制御装置27、電界効果トランジスタ(FET)28及び電流検出用トランス(カレントトランス)29を備えており、これらが筐体2に収容されて構成されている。
【0043】
制御装置27は、いわゆるマイコン制御装置やPLC(Programmable Logic Controller:プログラマブル・ロジック・コントローラ)であり、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)271、リレードライバー272、通信インタフェース273及び電流検出部274を含む。
【0044】
CPU271は、ROM(図示せず)等に予め記憶された制御プログラムを実行する。リレードライバー272は、電界効果トランジスタ28をON/OFFしてリレー24をON/OFFする回路である。「通信装置」としての通信インタフェース273は、例えばRS232C等のシリアルインタフェース、イーサネット(登録商標)とTCP/IPプロトコルを用いた有線LAN、IEEE802.11規格に準拠した無線LAN、ADSL、光通信回線等により、遠隔地にある外部装置40と電力分配装置20制御装置27との通信インタフェース機能を実現する。電流検出部274は、電流検出用トランス29の出力信号が入力される。
【0045】
「リレー駆動回路」を構成する電界効果トランジスタ28は、複数のリレー24に個々に対応して複数設けられており、ドレイン端子がリレー24とスイッチ25との接続点に接続され、ソース端子がDC−DCコンバータ23のGNDに接続され、ゲート端子がリレードライバー272に接続されている。リレー24に対するDC−DCコンバータ23の出力電圧(例えばDC12V)の印加は、この電界効果トランジスタ28をON/OFF制御することによってON/OFFすることができる。つまり電界効果トランジスタ28をON/OFF制御することによって、リレー24をON/OFFすることができ、それによって出力レセプタクル21への直流電力の供給をON/OFFすることができる。この「リレー駆動回路」は、電界効果トランジスタ28に代えて、例えばバイポーラトランジスタ、電磁リレー、ソリッドステートリレー等を用いてもよい。
【0046】
「電流検出回路」としての電流検出用トランス29は、複数の出力レセプタクル21に個々に対応して複数設けられ、リレー24の接点S1と出力レセプタクル21の+端子との間の配線に直列に設けられており、出力レセプタクル21に流れる電流を検出する。この「電流検出回路」は、電流検出用トランス29に代えて、例えばシャント抵抗器等を用いてもよい。
【0047】
このような構成の本発明に係る電力分配装置20は、出力レセプタクル21への電力供給をON/OFF可能なリレー24を駆動するリレー駆動回路(電界効果トランジスタ28)が設けられており、さらにリレー駆動回路を制御する制御装置27を設けられていることによって、種々の条件に応じて出力レセプタクル21への電力供給のON/OFFを自動的に制御することが可能になる。したがって本発明に係る電力分配装置20によれば、種々の条件に応じて負荷機器30への配電を自動的にON/OFF制御することができる。
【0048】
また本発明に必須の構成要素ではないが、本発明に係る電力分配装置20は、上記説明したように制御装置27に通信インタフェース273を設けるのが好ましい。それによって外部装置40からの遠隔操作によって負荷機器30へ配電をON/OFF制御することが可能になる。
【0049】
さらに制御装置27は、CPU271が実行する制御プログラムによって、例えば以下のような制御を実行する。
制御装置27は、例えば外部装置40から全リレー駆動要求を受信したことを条件として、時間差をもって複数のリレー24の駆動制御(リレー24をONする制御)を順次実行する。より具体的には制御装置27は、通信インタフェース273を介して外部装置40からの全リレー駆動要求をCPU271が受信したときに、複数のリレー24を全て同時に駆動せずに、例えば2〜3秒間隔で複数のリレー24の駆動制御を順次実行する。それによって、リレー24のON時に出力レセプタクル21に突入電流が流れるタイミングを複数の出力レセプタクル21間でずらすことができる。つまり複数の出力レセプタクル21に同時に突入電流が流れることを防止することができる。それによって極めて大きな電力消費が瞬間的に発生することを未然に防止することができる。したがって例えば、入力レセプタクル22へ電力を供給する電源システム10が過電流保護機能等によって停止してしまう虞を低減させることができる。
尚、上記の時間差は、任意の時間に設定することができるが、極めて大きな電力消費が瞬間的に発生することを未然に防止する観点から、リレー24のON時に出力レセプタクル21に突入電流が流れる時間を考慮して設定するのが好ましく、例えばリレー24のON時に出力レセプタクル21に突入電流が流れる時間よりも長い時間に設定するのがより好ましい。
【0050】
また制御装置27は、例えば複数のリレー24に各々に対し、以下のような配電制御を実行する。
制御装置27は、リレー24の駆動制御を実行した後、出力レセプタクル21に流れる電流を電流検出用トランス29で検出する。そして検出した電流が一定電流未満である場合にはリレー24の駆動を停止し、検出した電流が一定電流以上である場合にはリレー24の駆動状態(ON状態)を維持する(配電制御手段)。
【0051】
このような配電制御を実行することによって、例えば直流給電システム100で複数の同種の負荷機器30(サーバー等)が稼働している状態において、いずれか一の負荷機器30の稼働率が低い状態である場合には、他の負荷機器30に処理を集約してその負荷機器30を停止させれば、負荷機器30が担うべき機能を維持したまま電力消費を削減することが可能になる。すなわち上記の配電制御手段によれば、出力レセプタクル21から電力を供給している負荷機器30の稼働状態を出力レセプタクル21に流れる電流から判定し、稼働していない或いは稼働率が低い負荷機器30への電力供給を停止することができるので、負荷機器30が担うべき機能を損なうことなく情報通信設備における消費電力を削減することができる。
尚、上記の一定電流の値は、任意の電流値に設定することができるが、稼働率が低い負荷機器30への電力供給を停止するという観点から、負荷機器30の仕様や特性等に応じて、負荷機器30の稼働率と電力消費とのバランスを考慮して設定するのが好ましく、例えば一定以下の稼働率で負荷機器30が動作しているときの電流値を目安に設定するのがより好ましい。
【0052】
さらに制御装置27による上記の配電制御は、定期的に実行するのがより好ましい。複数の負荷機器30の稼働状態を定期的に判定して、稼働していない或いは稼働率が低い負荷機器30への電力供給を停止するので、情報通信設備における消費電力を継続的に削減することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 電源システム
20 電力分配装置
21 出力レセプタクル
22 入力レセプタクル
23 DC−DCコンバータ
24 リレー
25 スイッチ
26 LED表示灯
27 制御装置
28 電界効果トランジスタ(FET)
29 電流検出用トランス(カレントトランス)
30 負荷機器
31 負荷機器のプラグ
100 直流給電システム
271 CPU
272 リレードライバー
273 通信インタフェース
274 電流検出部
L1、L2 リレーの駆動コイル
S1、S2 リレーの接点
図1
図2
図3
図4