特許第5725550号(P5725550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5725550鋼材温度推定方法および鋼材温度推定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725550
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】鋼材温度推定方法および鋼材温度推定システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/18 20060101AFI20150507BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   G01N25/18 L
   E04B1/94 N
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-82205(P2011-82205)
(22)【出願日】2011年4月1日
(65)【公開番号】特開2012-215529(P2012-215529A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2013年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】坂本 成弘
(72)【発明者】
【氏名】道越 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】森川 昌司
(72)【発明者】
【氏名】鍛冶 秀樹
【審査官】 高橋 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−013066(JP,A)
【文献】 特開2000−065450(JP,A)
【文献】 特開2006−078185(JP,A)
【文献】 特開2003−251652(JP,A)
【文献】 特開2001−090225(JP,A)
【文献】 特開2005−030063(JP,A)
【文献】 特開2004−176490(JP,A)
【文献】 特開平10−008588(JP,A)
【文献】 特開2004−351406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/18
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性の耐火塗料が塗布された鋼材の被加熱時の温度を推定する鋼材温度推定方法であって、
以下の式(2)〜(5)に従ってα、α、T、Tを算定し、当該算定したα、α、T、Tを用いた以下の式(1)に従って、鋼材の温度Tに基づいて熱貫流率αを算定する第1の手順と、
当該算定した熱貫流率αを用いて、前記鋼材の所定時間経過後の温度変化量を算定する第2の手順と、
前記鋼材の温度Tと前記鋼材の温度変化量との和を、次の鋼材の温度Tとする第3の手順と、を繰り返すことにより、鋼材の温度の経時変化を推定することを特徴とする鋼材温度推定方法。
【数1】
【数2】
ここで、DFTは耐火塗料の塗膜の厚さ(mm)、Hp/Aは加熱周長/加熱断面積(1/m)である
【請求項2】
前記第2の手順では、熱貫流率αを以下の式(6)に代入して、前記鋼材の所定時間経過後の温度変化量を算定することを特徴とする請求項に記載の鋼材温度推定方法。
【数3】
ここで、Tfは火災雰囲気温度、Aは加熱断面積、ρは鋼材の密度、cは鋼材の比熱、Vは鋼材の体積、ΔTSは鋼材の温度変化量である
【請求項3】
発泡性の耐火塗料が塗布された鋼材の被加熱時の温度を推定する鋼材温度推定システムであって、
以下の式(2)〜(5)に従ってα、α、T、Tを算定し、当該算定したα、α、T、Tを用いた以下の式(1)に従って、鋼材の温度Tに基づいて熱貫流率αを算定する熱貫流率算定手段と、
当該算定した熱貫流率αを用いて、前記鋼材の所定時間経過後の温度変化量を算定する温度変化量算定手段と、
前記鋼材の温度Tと前記鋼材の温度変化量との和を、次の鋼材の温度Tとする鋼材温度更新手段と、を備えることを特徴とする鋼材温度推定システム。
【数4】
【数5】
ここで、DFTは耐火塗料の塗膜の厚さ(mm)、Hp/Aは加熱周長/加熱断面積(1/m)である
【請求項4】
前記温度変化量算定手段は、熱貫流率αを以下の式(6)に代入して、前記鋼材の所定時間経過後の温度変化量を算定することを特徴とする請求項に記載の鋼材温度推定システム。
【数6】
ここで、Tfは火災雰囲気温度、Aは加熱断面積、ρは鋼材の密度、cは鋼材の比熱、Vは鋼材の体積、ΔTSは鋼材の温度変化量である
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材温度推定方法および鋼材温度推定システムに関する。詳しくは、火災などの被加熱時の鋼材の温度を推定する鋼材温度推定方法および鋼材温度推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、火災時に建物の構造部材である鋼材を保護するために、鋼材表面には耐火被覆が施される。耐火被覆としては、吹付けロックウール、耐火ボード、巻きつけ耐火材、耐火塗料などがある。
このうち、耐火塗料は、加熱されていない状態では薄い塗膜を形成しているが、火災時に加熱されると、塗膜が発泡して炭化層を形成し、これにより、保護対象である鋼材の温度上昇を緩和する。
【0003】
したがって、耐火塗料の膜厚、火災時に鋼材が規定温度以下となるように設計している。ここで、耐火塗料の膜厚を設計するに当たり、耐火塗料を塗布した鋼材温度を予測する必要がある。
そこで、以下の式(a)が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【数1】
【0005】
ここで、FRは鋼材が座屈温度に到達する時間であり、Hp/Aは加熱周長/鋼材断面積で表される鋼材の形状特性であり、DFTは耐火塗料の膜厚であり、α、α、α、α、αは実験により決定される係数である。
【0006】
このうち、α〜αの5つの係数決定するために、少なくとも5回の実験を行う必要がある。
具体的には、ISO834で規定された火災を受ける膜厚を設計する場合、Hp/AおよびDFTのうち少なくとも一方が互いに異なる試験体を5つ用意する。次に、これら5つの試験体についてISO834の火災温度曲線による加熱実験を行い、規定温度(たとえば500℃)に達する時間FRを測定する。そして、最小二乗法を用いて、α〜αを算定する。
【0007】
この求めたα〜αを式(a)に代入すると、式(a)は、ISO834の火災温度曲線で加熱された場合における、DFTとHp/Aの関係を表すことになる。よって、この式(a)に、膜厚の検討対象である鋼材のHp/Aの値を代入することで、膜厚DFTを算定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−30063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の方法では、少なくとも5つの試験体について実験を行う必要がある。
また、火災温度曲線がISO834と異なる場合には、α〜αを改めて算定する必要があり、対象となる火災温度曲線による耐火実験を少なくとも5回行う必要がある。
したがって、コストおよび時間がかかる、という問題があった。
【0010】
本発明は、コストおよび時間を削減しつつ鋼材の温度を推定できる鋼材温度推定方法および鋼材温度推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の鋼材温度推定方法は、被加熱時の鋼材の温度を推定する鋼材温度推定方法であって、鋼材の温度Tに基づいて、定数α、α、T、Tを用いた以下の式(1)に従って、熱貫流率αを算定する第1の手順と、当該算定した熱貫流率αを用いて、前記鋼材の所定時間経過後の温度変化量を算定する第2の手順と、前記鋼材の温度Tと前記鋼材の温度変化量との和を、前記鋼材の温度Tとする第3の手順と、を繰り返すことにより、鋼材の温度の経時変化を推定することを特徴とする。
【数2】
【0012】
また、請求項に記載の鋼材温度推定方法は、前記第1の手順では、前記式(1)中のα、α、T、Tを以下の式(2)〜(5)のように算定することを特徴とする。
【数3】
【0013】
ここで、DFTは耐火塗料の塗膜の厚さ(mm)、H/Aは加熱周長/加熱断面積(1/m)である。
【0014】
請求項に記載の鋼材温度推定方法は、前記第2の手順では、熱貫流率αを以下の式(6)に代入して、前記鋼材の所定時間経過後の温度変化量を算定することを特徴とする。
【数4】
ここで、Tは火災雰囲気温度、Tは鋼材の温度、Aは加熱断面積、ρは鋼材の密度、cは鋼材の比熱、Vは鋼材の体積である
【0015】
ここで、耐火塗料が塗布された鋼材であって、当該耐火塗料の膜厚は、請求項1または2に記載の鋼材温度推定方法を用いて設計されたことが好ましい。
【0016】
請求項に記載の鋼材温度推定システムは、被加熱時の鋼材の温度を推定する鋼材温度推定システムであって、鋼材の温度TSに基づいて、定数α、α、T、Tを用いた以下の式(1)に従って、熱貫流率αを算定する熱貫流率算定手段と、当該算定した熱貫流率αを用いて、前記鋼材の所定時間経過後の温度変化量を算定する温度変化量算定手段と、前記鋼材の温度Tと前記鋼材の温度変化量との和を、前記鋼材の温度Tとする鋼材温度更新手段と、を備えることを特徴とする。
【数5】
【0017】
また、請求項に記載の鋼材温度推定システムは、前記熱貫流率算定手段は、前記式(1)中のα、α、T、Tを以下の式(2)〜(5)のように算定することを特徴とする。
【数6】
【0018】
ここで、DFTは耐火塗料の塗膜の厚さ(mm)、H/Aは加熱周長/加熱断面積(1/m)である。
【0019】
請求項に記載の鋼材温度推定システムは、前記温度変化量算定手段は、熱貫流率αを以下の式(6)に代入して、前記鋼材の所定時間経過後の温度変化量を算定することを特徴とする。
【数7】
ここで、Tは火災雰囲気温度、Aは加熱断面積、ρは鋼材の密度、cは鋼材の比熱、Vは鋼材の体積、ΔTは鋼材の温度変化量である
【0020】
この発明によれば、α、α、T、Tの4つの係数のみで決定される式(1)を用いて熱貫流率αを求めた。さらに、これら係数α、α、T、Tを式(2)〜(5)のように算定した。これら式(1)〜(5)による推定値を、ドイツの「道路トンネル内の施設と交通に関する規制」に規定されているRABT加熱曲線およびISO834加熱曲線による加熱実験の実験値と比較したところ、比較的一致することが判った。
よって、従来のように耐火塗料を塗布した鋼材の加熱実験を行うことなく、熱貫流率αを求めることができる。これにより、コストおよび時間を削減しつつ、鋼材の温度Tの経時変化を推定して、耐火塗料の膜厚を設計できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来のように耐火塗料を塗布した鋼材の耐火実験を行うことなく、熱貫流率αを求めることができる。これにより、コストおよび時間を削減しつつ、鋼材の温度Tの経時変化を推定して、耐火塗料の膜厚を設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る鋼材温度推定システムのブロック図である。
図2】前記実施形態に係る鋼材温度推定システムの動作を示すフローチャートである。
図3】火災雰囲気温度と鋼材の温度との関係を示す概念図である。
図4】鋼材厚4.5mmのRABT加熱試験における経過時間と鋼材温度との関係を示す図である。
図5】鋼材厚13mmのRABT加熱試験における経過時間と鋼材温度との関係を示す図である。
図6】鋼材厚4.5mmのRABT加熱試験における鋼材の温度と耐火塗料の熱貫流率の関係を示す図である。
図7】鋼材厚13mmのRABT加熱試験における鋼材の温度と耐火塗料の熱貫流率の関係を示す図である。
図8】前記実施形態に係る近似式を示す図である。
図9】鋼材厚4.5mmRABT加熱試験結果と近似式による推定値との比較を示す図である。
図10】鋼材厚13mmRABT加熱試験結果と近似式による推定値との比較を示す図である。
図11】ISO834加熱曲線による加熱試験結果と近似式による推定値との比較を示す図(その1)である。
図12】ISO834加熱曲線による加熱試験結果と近似式による推定値との比較を示す図(その2)である。
図13】ISO834加熱曲線による加熱試験結果と近似式による推定値との比較を示す図(その3)である。
図14】ISO834加熱曲線による加熱試験結果と近似式による推定値との比較を示す図(その4)である。
図15】ISO834加熱曲線による加熱試験結果と近似式による推定値との比較を示す図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鋼材温度推定システム1のブロック図である。
鋼材温度推定システム1は、建物の基本情報に基づいて耐火設計を行うためのものであり、入力装置2、表示装置3、および演算処理装置4、および記憶装置5を備える。
入力装置2は、演算処理装置4に情報を入力する装置であり、キーボードやマウス等で構成される。また、表示装置3は、入力装置2で入力された情報や演算処理装置4から出力された情報を表示する装置であり、例えば、モニタである。記憶装置5は、種々の情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクである。
【0024】
演算処理装置4は、記憶装置5に記憶されたプログラムを読み出して、動作制御を行うOS(Operating System)上に展開して実行するものである。この演算処理装置4は、熱貫流率算定手段41、温度変化量算定手段42、および鋼材温度更新手段43を備える。
【0025】
熱貫流率算定手段41は、鋼材の温度Tに基づいて、定数α、α、T、Tを用いて熱貫流率αを算定する。
温度変化量算定手段42は、算定した熱貫流率αを用いて、鋼材の所定時間経過後の温度変化量を算定する。
鋼材温度更新手段43は、鋼材の温度Tと鋼材の温度変化量との和を、新たな鋼材の温度Tとする。
【0026】
図2は、鋼材温度推定システム1の動作を示すフローチャートである。
具体的には、まず、ステップS1では、入力装置2により、加熱曲線を指定するほか、耐火塗料の膜厚DFT、加熱周長H、加熱断面積A、鋼材の密度ρ、鋼材の比熱c、鋼材の体積Vなどの鋼材特性を演算処理装置4に入力する。
ステップS2では、熱貫流率算定手段41により、記憶装置5から以下の式(2)〜(5)を読み出し、α、α、T、Tを以下のように算定する。
【0027】
【数8】
【0028】
ここで、DFTは耐火塗料の塗膜の厚さ(mm)、Hp/Aは加熱周長/加熱断面積(1/m)である。
【0029】
ステップS3では、演算処理装置4により、初期設定として、時刻tをゼロに設定するとともに、この時刻tにおける鋼材の温度Tを設定する。
ステップS4では、熱貫流率算定手段41により、算定したα、α、T、Tを用いて、時刻tにおける鋼材の温度Tに基づいて、以下の式(1)に従い、熱貫流率αを算定する。
【0030】
【数9】
【0031】
ステップS5では、温度変化量算定手段42により、指定された加熱曲線に基づいて、時刻tにおける火災雰囲気温度Tを算定する。
ステップS6では、温度変化量算定手段42により、算定した熱貫流率αを以下の式(6)に代入して、時刻tから所定時間Δt経過後の鋼材の温度変化量ΔTを算定する。
【数10】
【0032】
ステップS7では、鋼材温度更新手段43により、時刻tと所定時間Δtとの和を、次の時刻tとする。また、鋼材の温度Tと鋼材の温度変化量ΔTとの和を、次の鋼材の温度Tとする。その後、ステップS4に戻る。
【0033】
このようにステップS4〜S7を繰り返すことにより、鋼材の温度変化を算定する。
【0034】
次に、以上の手順で鋼材の温度を推定する根拠について説明する。
図3は、火災雰囲気温度と鋼材の温度との関係を示す概念図である。
図3に示すように、火災雰囲気温度と鋼材の温度の差に比例して鋼材に熱が伝わると仮定する。すると、熱収支式を単純化でき、以下の式(6)のようになる。
【0035】
【数11】
【0036】
ここで、αは耐火塗料の熱貫流率、Tは火災雰囲気温度、Tは鋼材温度、Aは加熱断面積、ρは鋼材の密度、cは鋼材の比熱、Vは鋼材の体積である。
以上の式(6)の左辺は鋼材に伝わる熱量であり、右辺は鋼材の温度上昇に消費される熱量である。
【0037】
以上の式(6)中、耐火塗料の熱貫流率α以外の値は、実験結果や試験体の寸法などから得られる。よって、耐火塗料の熱貫流率αを求めることができれば、様々な加熱条件に対して熱伝導解析で鋼材温度を求めることができる。
そこで、本発明者らは、熱貫流率αを以下の手順で算定した。
【0038】
図4および図5は、鋼材厚4.5mmおよび13mmのドイツの「道路トンネル内の施設と交通に関する規制」に規定されているRABT加熱試験における経過時間と鋼材温度との関係を示す図である。
この実験では、各鋼材について、耐火塗料の膜厚を0.5mm、1.0mm、3.0mm、5.0mmの4種類とし、各鋼材の2箇所で測定を行った。
この鋼材厚4.5mmおよび13mmのRABT試験結果の各時刻におけるデータを上述の式(6)に代入してグラフ化すると、図6および図7のようになる。
【0039】
すなわち、図6および図7は、鋼材厚4.5mmおよび13mmのRABT加熱試験における鋼材の温度と耐火塗料の熱貫流率の関係を示す図である。
図6および図7より、耐火塗料は、加熱温度が高温になると発泡して、熱貫流率αが低下することが判る。
【0040】
そこで、図6および図7に基づいて、図8に示すように、鋼材温度Tと耐火塗料の熱貫流率αの関係を簡素化して、α、α、T、Tの4つの定数で決定される以下の近似式(1)を提案する。
【0041】
【数12】
【0042】
以上の定数α、α、T、Tについて、以下のことがいえる。
鋼材温度が低い状態では耐火塗料の熱貫流率αはαであるが、鋼材温度が高くなると、塗膜が発泡して熱貫流率αが低下してαとなる。また、板厚が厚いほど、α、αが大きく、T、Tが低くなる。
そこで、本実施形態では、α、α、T、Tを以下の式(2)〜(5)のように算定する。
【0043】
【数13】
【0044】
ここで、DFTは耐火塗料の塗膜の厚さ(mm)、Hp/Aは加熱周長/加熱断面積(1/m)である。
【0045】
以下、近似式(1)の精度を検証する。
図9および図10は、鋼材厚4.5mmおよび13mmのRABT加熱試験結果と本近似式による推定値との比較を示す図である。
図9および図10に示すように、RABT加熱曲線に従って加熱した鋼材では、許容温度である350℃程度までは、推定値と加熱試験結果が比較的一致することが判る。
【0046】
次に、本近似式による推定値をISO834に規定する加熱曲線による加熱試験結果と比較する。
図11図15は、ISO834加熱曲線による加熱試験結果と本近似式による推定値との比較を示す図である。
図11図15に示すいずれの種類の鋼材および膜厚においても、推定値が実験結果に比較的一致していることが判る。
【0047】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)従来のように耐火塗料を塗布した鋼材の加熱実験を行うことなく、熱貫流率αを求めることができる。これにより、コストおよび時間を削減しつつ、鋼材の温度Tの経時変化を推定して、耐火塗料の膜厚を設計できる。
【0048】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…鋼材温度推定システム
2…入力装置
3…表示装置
4…演算処理装置
5…記憶装置
41…熱貫流率算定手段
42…温度変化量算定手段
43…鋼材温度更新手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15