【0014】
本発明によるCTRサーミスタ用のサーミスタ素子の製造方法における各工程について説明する。
まず、成形体を製造する第1工程(工程A)においては、酸化バナジウム粉末と、導電性物質としてのカーボンと、バインダーとしてのポリビニルアルコールまたはメチルセルロースを混合する。
この際、酸化バナジウムとカーボンを秤量し、水を加え、ポットミルにて湿式混合を行い、その後脱水のため濾過・乾燥し、バインダーを添加・混練して得られた混練粉をプレス成形機でディスク状に成形する。
ただし、このような方法に限定されるものではなく、酸化バナジウム粉末に添加されるバインダーは、粉末の形態を有するものであっても、水溶液の形態を有するものであっても良い。また、成形体のサイズは特に限定されるものではないが、直径24mm程度、厚み2mm程度が一般的である。
【0017】
本発明における第3工程(工程C)では、上記工程Bで得られた成形体の表面および裏面のそれぞれ全面に導電性接着剤(導電性樹脂)が印刷等によって付着されることによって導電層が形成される。
このとき、前記外装樹脂層は、上記工程Bで成形体の外周側面に、該側面から主面の法線方向に突出するように盛られて塗布されることで(
図2参照)、導電性接着剤が成形体の主面からはみ出して印刷されるのを防止することができる。
導電性接着剤としては、銀粉末や銅粉末を含む市販の導電性接着剤が使用できる。このような導電性接着剤の塗布は、スクリーン印刷等によって行うことができ、この塗布厚みは特に限定されるものではないが、5〜50μm程度が一般的である。
【0020】
図2の(i)には、
図1に例示したサーミスタ素子1を用いて製造された、本発明によるリード型CTRサーミスタの断面構造の一例が示されており、このCTRサーミスタにおいては、サーミスタ素子1の表面側および裏面側の導電性接着剤により形成された層4にそれぞれ、はんだ付け処理を施して、はんだ6によりリード線5が取り付けられている。
また、(ii)には、
図1のサーミスタ素子の表面および裏面の導電性接着剤により形成された層4にそれぞれ電極板7が圧接された、本発明による素子型CTRサーミスタの断面構造の一例が示されており、本発明のCTRサーミスタは、リード型あるいは素子型のいずれであっても良い。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に例示したものに限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
試験結果1:PVA、メチルセルロースによる成形性
市販の酸化バナジウム粉末(平均粒子径100μm)100重量部に、バインダーとしての市販のポリビニルアルコール(PVA)10重量%溶液30重量部および、導電性物質としてのカーボン(平均粒子径50μm)8.5重量部を添加し、均一になるまで混合を行った後、得られた混合物を、金型を用いてプレス加工し、円板状の成形体(直径24mm、厚さ2mm)を得た。
そして、この成形体の外周部分に市販のシリコン系樹脂を塗布して外装樹脂層を設け、さらに、成形体の表面及び裏面に導電性接着剤(フィラーに銀を用いたエポキシ系接着剤)を印刷することにより、ディスク状CTRサーミスタ用のサーミスタ素子を作製した。
同様に、バインダーとして、メチルセルロース10重量%溶液20重量部、またはニトロセルロース10重量%溶液20重量部を用いたサーミスタ素子を作製した。
PVAとメチルセルロースをバインダーとして用いたサーミスタ素子は、成形性、電極処理性に優れるとともに、サーミスタ特性を有していたが、バインダーにニトロセルロースを用いたものは、成形性が悪く、端部に欠けが発生したり、電極を均一に形成できないという問題が生じた。
以上の実験結果のとおり、バインダーにPVAまたはメチルセルロースを用いることで、ディスク状CTRサーミスタ用のサーミスタ素子の作製が可能となる。
【0022】
試験結果2:PVA添加量に対する特性変化
市販の酸化バナジウム粉末(平均粒子径100μm)100重量部に、バインダーとしての市販のポリビニルアルコール(PVA)10重量%溶液20〜60重量部および、導電性物質としてのカーボン(平均粒子径50μm)8.5重量部を添加し、均一になるまで混合を行った後、得られた混合物を、金型を用いてプレス加工し、円板状の成形体(直径24mm、厚さ2mm)を得た。
そして、この成形体の外周部分に市販のシリコン系樹脂を塗布して外装樹脂層を設け、さらに、成形体の表面及び裏面に導電性接着剤(フィラーに銀を用いたエポキシ系接着剤)を印刷することにより、本発明のディスク状CTRサーミスタ用のサーミスタ素子(試料No.1〜4)を作製した。
【0023】
表1には、上記のサーミスタ素子(試料No.1〜4)の測定結果が示されており、各測定項目についての評価基準は以下のとおりである。
〔初期抵抗値〕
サーミスタ素子として求められる初期抵抗値を200Ω以下とし、200Ω以下であるものを好適とした。
〔抵抗減少〕
臨界温度における抵抗変化が2桁以上であるものを好適とした。
〔B定数〕
25℃と60℃の時の抵抗値を測定して算出し、3500以下を好適とした。
【0024】
【表1】
【0025】
表1より、PVA添加量が、3.0重量部と5.0重量部の場合には、初期抵抗値200Ω以下が達成できる。一方、PVA添加量が、6.0重量部の場合には、初期抵抗値が200Ωを超え、また、B定数が3500を超えることが分かった。また、PVA添加量が、2.0重量部の場合には、抵抗減少が1桁であることが分かった。
上記表1の結果から分かるように、試料No.2、3は、初期抵抗値が小さく、温度変化に伴う抵抗変化が大きく、優れた特性を実現するものであることが確認された。
以上の実験結果から、好適なPVA添加量は3.0〜5.0重量部であると判断した。
【0026】
試験結果3:カーボン添加量に対する特性変化
PVA添加量3.0重量部の場合について、前記試験結果1と同様の製造工程によりカーボン添加量を0〜20.0重量%まで変化させ、測定用試料を作製し、初期抵抗値を測定した。
図3には、カーボン添加量の異なる試料についての初期抵抗値が示されており、この
図3の測定結果から、カーボンの添加量を大きくすると初期抵抗値が減少することが分かる。
図3から明らかなように、5.0重量部以上添加した場合、初期抵抗値200Ω以下となる。
また、カーボン添加量の異なる試料について、温度を変化させた際の抵抗値の変化を調べた。この結果が
図4に示されており、PVA3.0重量%添加の場合には、カーボン添加量を調整することによってサーミスタ素子に要求される特性を十分に満足するものが得られることが分かった。
図4に示すように、カーボン添加量が10.0重量%を超えると、抵抗減少が2桁を保つことができないことも分かった。
以上から、カーボン添加量の好適な範囲は5.0〜10.0重量部であると判断した。