【実施例】
【0111】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下の実施例などにおいて、濃度や使用量を示す際の%は、特にその基準を付記しないかぎり、質量基準による%である。
【0112】
実施例は、導電性高分子製造用モノマー液についての実施例を実施例1〜20と実施例41〜49と実施例59〜67とで示し、電解コンデンサに関する実施例を実施例21〜40と実施例50〜58と実施例68〜84とで示す。
【0113】
〔導電性高分子製造用モノマー液の調製(1)〕
実施例1
内容積が1Lの攪拌機付きビーカーに、エチレンジオキシチオフェン100g、ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gおよびエタノール60gを添加し、1時間撹拌して、導電性高分子製造用モノマー液を調製した。上記ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾールはナフタレンモノスルホン酸系複素環化合物に属する化合物である。
【0114】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0115】
実施例2
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾールの使用量を100gから150gに変更した以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0116】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0117】
実施例3
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾールの使用量を100gから50gに変更した以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0118】
この導電性高分子製造用モノマー液を6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0119】
実施例4
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。上記ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾールはナフタレントリスルホン酸系複素環化合物に属する化合物である。
【0120】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0121】
実施例5
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾールの使用量を100gから150gに変更した以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0122】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0123】
実施例6
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾールの使用量を100gから50gに変更した以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0124】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0125】
実施例7
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレンスルホン酸2−エチル−4−メチルイミダゾール100gを用い、エタノール60gに代えて、n−ブタノール60gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。上記ナフタレンスルホン酸2−エチル−4−メチルイミダゾールはナフタレンモノスルホン酸系複素環化合物に属する化合物である。
【0126】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観測されなかった。
【0127】
実施例8
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸2−エチル−4−メチルイミダゾール100gを用い、エタノール60gに代えて、n−ブタノール60gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。上記ナフタレントリスルホン酸2−エチル−4−メチルイミダゾールはナフタレントリスルホン酸系複素環化合物に属する化合物である。
【0128】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0129】
実施例9
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール50gとナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール50gとを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0130】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0131】
実施例10
エチレンジオキシチオフェン100gに代えて、エチレンジオキシチオフェン50gとブチル化エチレンジオキシチオフェン50gとを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0132】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0133】
実施例11
エチレンジオキシチオフェン100gに代えて、エチレンジオキシチオフェン10gとエチル化エチレンジオキシチオフェン90gとを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0134】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0135】
実施例12
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ベンゼンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0136】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0137】
実施例13
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、トルエンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0138】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0139】
実施例14
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、メトキシベンゼンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0140】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0141】
実施例15
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ニトロベンゼンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0142】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0143】
実施例16
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、キュメンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0144】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0145】
実施例17
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール50gとベンゼンスルホン酸2−メチルイミダゾール50gとを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0146】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0147】
実施例18
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール50gとトルエンスルホン酸2−メチルイミダゾール50gとを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0148】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0149】
実施例19
エチレンジオキシチオフェン100gに代えて、エチレンジオキシチオフェン60gとブチル化エチレンジオキシチオフェン40gとを用いた以外は、すべて実施例13と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0150】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0151】
実施例20
エチレンジオキシチオフェン100gに代えて、エチル化エチレンジオキシチオフェン100gを用いた以外は、すべて実施例16と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0152】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0153】
比較例1
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレンスルホン酸ナトリウム50gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液の調製を試みた。
【0154】
しかし、ナフタレンスルホン酸ナトリウムが、ほとんど分散せず、所望とする導電性高分子製造用モノマー液は調製することができなかった。
【0155】
比較例2
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸ナトリウム50gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液の調製を試みた。
【0156】
しかし、ナフタレントリスルホン酸ナトリウムが、ほとんど分解せず、所望とする導電性高分子製造用モノマー液は調製することができなかった。
【0157】
比較例3
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、フェノールスルホン酸2−メチルイミダゾール50gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液の調製を試みた。
【0158】
しかし、フェノールスルホン酸2−メチルイミダゾールが、ほとんど分散せず、所望とする導電性高分子製造用モノマー液は調製することができなかった。
【0159】
比較例4
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、アントラキノンスルホン酸2−メチルイミダゾール50gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液の調製を試みた。
【0160】
しかし、アントラキノンスルホン酸2−メチルイミダゾールが、まったく分散せず、所望とする導電性高分子製造用モノマー液は調製することができなかった。
【0161】
比較例5
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ベンゼンスルホン酸ナトリウム50gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液の調製を試みた。
【0162】
しかし、ベンゼンスルホン酸ナトリウムが、ほとんど分散せず、所望とする導電性高分子製造用モノマー液は調製することができなかった。
【0163】
次に、上記実施例1〜20の導電性高分子製造用モノマー液を用いて実施例21〜40の電解コンデンサを製造し、その電解コンデンサの特性を測定することによって、上記実施例1〜20の導電性高分子製造用モノマー液の特性も評価する。
【0164】
そして、それらの電解コンデンサの実施例21〜40を示すに先立って、それらの実施例21〜40で用いる2種類のポリマーアニオン系導電性高分子の分散液の製造例を示す。
【0165】
導電性高分子の分散液(I)の製造例
内容積が2Lの攪拌機付きセパラブルフラスコに1Lの純水を入れ、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム170gとアクリル酸ヒドロキシエチル30gとを添加した。そして、その溶液に酸化剤として過硫酸アンモニウムを1g添加して、スチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの重合反応を12時間行った。この重合反応後の反応液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去し、水を加えて濃度を3%に調整した。
【0166】
得られた液中のスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体の分子量をゲル濾過カラムを用いて測定したところ、デキストランを評品として見積もった重量平均分子量は、180,000であった。
【0167】
このスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体の3%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、硫酸第一鉄・7水和物0.3gを添加し、その中にエチレンジオキシチオフェン4mLをゆっくり滴下した。
【0168】
それらをステンレス鋼製の攪拌翼で攪拌し、容器に陽極を取り付け、攪拌翼の付け根に陰極を取り付け、1mA/cm
2の定電流で18時間電解酸化重合を行った。上記電解酸化重合後、水で6倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー〔日本精機社製、US−T300(商品名)〕で2時間分散処理を行った。その後、オルガノ社製のカチオン交換樹脂アンバーライト120B(商品名)を100g添加し、1時間攪拌機で攪拌した。次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中の鉄イオンなどのカチオン成分をすべて除去した。
【0169】
上記処理後の液を孔径が1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この処理後の液を水で希釈して濃度を2%に調整した溶液50gに対し、ジメチルスルホキシドを3g添加して導電性高分子の分散液(I)を得た。
【0170】
導電性高分子の分散液(II)の製造例
3%スルホン化ポリエステル〔互応化学工業社製プラスコートZ−561(商品名)、重量平均分子量27,000〕水溶液200gを内容積1Lのビーカーに入れ、過硫酸アンモニウム2gを添加した後、スターラーで攪拌して溶解した。次いで、硫酸第二鉄の40%水溶液0.4gを添加し、攪拌しながら、その中にエチレンジオキシチオフェン3mLをゆっくり滴下し、24時間かけて、エチレンジオキシチオフェンの重合を行った。
【0171】
上記重合後、水で4倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー(日本精機社製、US−T300)で30分間分散処理を行った。その後、オルガノ社製のカチオン交換樹脂アンバーライト120B(商品名)を100g添加し、1時間スターラーで攪拌し、次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過した。この分散から濾過までの操作を3回繰り返して、カチオン成分をすべて除去した。
【0172】
上記濾液を孔径が1μmのフィルターを通し、通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕により、遊離の低分子成分を除去した。この溶液に水を加えて濃度を5%に調整した溶液40gに対し、エタノール8gと、ジメチルスルホキシド4gとを添加し、導電性高分子の分散液(II)を得た。
【0173】
〔電解コンデンサでの評価(1)〕
この電解コンデンサでの評価(1)では、前記のように、実施例1〜20の導電性高分子製造用モノマー液を用いて実施例21〜40の電解コンデンサを製造し、その電解コンデンサの特性を測定することによって、上記実施例1〜20の導電性高分子製造用モノマー液の特性も評価する。
【0174】
実施例21
この実施例21の電解コンデンサのコンデンサ素子としては定格電圧が16Vで、ESRが20mΩ以下、静電容量が800μF以上、漏れ電流が100μA以下になるよう設計したタンタル焼結体を用いた。
【0175】
そして、上記コンデンサ素子を実施例1で調製した導電性高分子製造用モノマー液に2分間浸漬し、引き出した後、50℃で10分間乾燥した。次に上記コンデンサ素子を濃度が35%の過硫酸アンモニウム水溶液に2分間浸漬し、引き出した後、室温(25℃)で10分間放置した後、50℃で30分間加熱して、重合を行った。その後、純水とエタノールとを質量比1:1で混合した洗浄液中に上記コンデンサ素子を30分間浸漬し、引き出した後、150℃で30分間乾燥した。これらの操作を5回繰り返して、コンデンサ素子に導電性高分子からなる第1の固体電解質層を形成した。
【0176】
次に、上記コンデンサ素子を前記のように製造した導電性高分子の分散液(I)に1分間浸漬し、引き出した後、150℃で30分間乾燥する操作を2回行って、前記のように、実施例1で調製した導電性高分子製造用モノマー液中のモノマーの重合に基づく導電性高分子からなる第1の固体電解質層上に上記導電性高分子の分散液(I)への浸漬、乾燥に基づく導電性高分子からなる第2の固体電解質層〔以下、これを簡略化して「導電性高分子の分散液(I)に基づく第2の固体電解質層」という〕を形成した。
【0177】
さらに、上記コンデンサ素子を導電性高分子の分散液(II)に1分間浸漬し、引き出した後、150℃で30分間乾燥する操作を行って、導電性高分子の分散液(I)に基づく第2の固体電解質層上に導電性高分子の分散液(II)への浸漬、乾燥に基づく第3の固体電解質層〔以下、これを簡略化して「導電性高分子の分散液(II)に基づく第3の固体電解質層」という〕を形成した。
【0178】
その後、カーボンペースト、銀ペーストで固体電解質層を覆ってタンタル系の電解コンデンサを製造した。
【0179】
実施例22〜40
実施例1で調製した導電性高分子製造用モノマー液に代えて、実施例2〜20で調製した導電性高分子製造用モノマー液をそれぞれ別々に用いた以外は、すべて実施例21と同様の操作を行って、実施例22〜40のタンタル系の電解コンデンサを製造した。
【0180】
比較例6
実施例21と同様のコンデンサ素子を濃度が30%のエチレンジオキシチオフェンのエタノール溶液に2分間浸漬し、引き出した後、室温で10分間放置した。その後、濃度が40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液に30秒間浸漬し、引き出した後、室温で10分間放置し、その後、50℃で30分間加熱して、重合を行った。その後、上記コンデンサ素子を純水とエタノールとを1:1の質量比で混合した洗浄液に浸漬し、30分間放置した後、引き出して150℃で30分間乾燥した。これらの操作を5回繰り返して、コンデンサ素子に導電性高分子からなる第1の固体電解質層を形成した。
【0181】
以後、実施例21と同様の処理を行って、上記第1の固体電解質層上に導電性高分子の分散液(I)に基づく第2の固体電解質層および導電性高分子の分散液(II)に基づく第3の固体電解質層を順次形成し、その後、カーボンペースト、銀ペーストによる被覆処理を行って、タンタル系の電解コンデンサを製造した。
【0182】
比較例7
濃度が35%のエチレンジオキシチオフェン溶液(エタノール溶液)に実施例21と同様のコンデンサ素子を1分間浸漬し、引き出した後、5分間放置した。その後、上記コンデンサ素子をあらかじめ用意しておいた濃度が50%のフェノールスルホン酸ブチルアミン水溶液(pH5)と濃度が30%の過硫酸アンモニウム水溶液とを1:1の質量比で混合した混合物からなる酸化剤兼ドーパント溶液中に30秒間浸漬し、引き出した後、室温で10分間放置した。その後、50℃で20分間加熱して、重合を行った。その後、上記コンデンサ素子を純水とエタノールとを1:1の質量比で混合した洗浄液に浸漬し、30分間放置した後、引き出して150℃で30分間乾燥した。これらの操作を5回繰り返して、上記エチレンジオキシチオフェンの化学酸化重合に基づく導電性高分子からなる第1の固体電解質層を形成した。
【0183】
次に、上記コンデンサ素子を前記のように製造した導電性高分子の分散液(I)に1分間浸漬し、引き出した後、150℃で30分間乾燥する操作を2回行って、上記第1の固体電解質層上に導電性高分子の分散液(I)に基づく第2の固体電解質層を形成した。
【0184】
さらに、上記コンデンサ素子を前記のように製造した導電性高分子の分散液(II)に1分間浸漬し、引き出した後、150℃で30分間乾燥する操作を行って導電性高分子の分散液(I)に基づく第2の固体電解質層上に導電性高分子の分散液(II)に基づく第3の固体電解質層を形成した。
【0185】
その後、カーボンペースト、銀ペーストで上記固体電解質層を覆ってタンタル系の電解コンデンサを製造した。
【0186】
比較例8
濃度が50%のナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾールのエタノール溶液(pH5〜6)に実施例21と同様のコンデンサ素子を1分間浸漬した後、引き上げ、5分間室温で放置した。その後、上記コンデンサ素子をあらかじめ用意しておいた45%過硫酸アンモニウム水溶液に30秒間浸漬した後、引き上げ、室温で10分放置した。その後、上記コンデンサ素子をエチレンジオキシチオフェン(100%エチレンジオキシチオフェン)に5秒間浸漬した後、引き上げ、室温下で60分間放置してエチレンジオキシチオフェンを重合させた。その後、上記コンデンサ素子を純水に30分間浸漬した後、引き上げ、30分間乾燥した。これらの操作を5回繰り返して、コンデンサ素子に上記エチレンジオキシチオフェンの化学酸化重合による導電性高分子からなる第1の固体電解質層を形成した。
【0187】
次に、上記コンデンサ素子を前記のように製造した導電性高分子の分散液(I)に1分間浸漬した後、引き出し、150℃で30分間乾燥する操作を2回行って、上記エチレンジオキシチオフェンの化学酸化重合に基づく導電性高分子からなる第1の固体電解質層上に導電性高分子の分散液(I)に基づく第2の固体電解質層を形成した。
【0188】
さらに、上記コンデンサ素子を前記のように製造した導電性高分子の分散液(II)に1分間浸漬した後、引き出し、150℃で30分間乾燥する操作を行って、上記導電性高分子の分散液(I)に基づく第2の固体電解質層上に導電性高分子の分散液(II)に基づく第3の固体電解質層を形成した。
【0189】
その後、カーボンペースト、銀ペーストで上記固体電解質層を覆ってタンタル系の電解コンデンサを製造した。
【0190】
上記のようにして製造した実施例21〜40および比較例6〜8のタンタル系の電解コンデンサについてESRおよび静電容量を測定し、かつ、漏れ電流を測定した。その結果を、使用した導電性高分子製造用モノマー液の種類と共に表1に示す。なお、ESR、静電容量および漏れ電流の測定方法は次の通りである。
【0191】
ESR:
HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、100kHzで測定する。
静電容量:
HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、120Hzで測定する。
漏れ電流:
電解コンデンサに、25℃で16Vの電圧を60秒間印加した後、デジタルオシロスコープにて漏れ電流を測定する。
【0192】
上記の測定は、各試料とも、10個ずつについて行い、ESRに関して表1に示す数値は、その10個の測定値の平均値を求め、小数点第2位を四捨五入して示したものであり、静電容量および漏れ電流に関して表1に示す数値は、その10個の測定値の平均値を求め、小数点以下を四捨五入して示したものである。そして、実施例21〜40で用いた導電性高分子製造用モノマー液の種類はその実施例番号で示す。なお、表1では、スペース上の関係で、上記「導電性高分子製造用モノマー液の種類」を簡略化して「モノマー液の種類」で示す。
【0193】
【表1】
【0194】
また、上記表1に示す初期特性の測定後の実施例21〜40および比較例6〜8のタンタル系の電解コンデンサについて、150℃の乾燥機中に静置状態で240時間貯蔵し、その貯蔵後のコンデンサについて、前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定した。その結果を表2に上記表1の場合と同様の態様で示す
【0195】
【表2】
【0196】
表1に示すように、実施例21〜40のタンタル系の電解コンデンサ(以下、これを簡略化して「コンデンサ」と表示する場合がある)は、ESRが11.4〜14.8mΩであって、20mΩ以下という設定ESRを満たし、漏れ電流が3〜9μAであって、100μA以下という設定漏れ電流を満たし、静電容量が842〜901μFであって、800μF以上という設定静電容量を満たし、かつ、比較例6〜8のコンデンサに比べて、ESRが低く(小さく)、静電容量に関しては、比較例6〜8のコンデンサより多く、漏れ電流に関しては、比較例6〜8のコンデンサと同等またはそれより少なく、これらに関して、大きな特性低下を招くことがなかった。
【0197】
また、表2に示すように、実施例21〜40のコンデンサは、150℃で240時間貯蔵後においても、ESRや漏れ電流の増加が少なく、静電容量の低下が少なく、ESRは11.8〜16.3mΩであって、20mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量は840〜898μFであって、800μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流は5〜17μAであって、100μA以下という設定漏れ電流を満たしていた。
【0198】
ここで、比較例6〜8のコンデンサについて言及しておくと、比較例6のコンデンサは、第1の固体電解質層の形成にあたって、酸化剤兼ドーパントとしてパラトルエンスルホン酸第二鉄を用いているので、初期特性においても、その酸化剤の鉄に基づき、表1に示すように、漏れ電流が大きく、中には漏れ電流の測定中にショート(短絡)を発生するものが測定に供した20個中に2個あった。また、比較例6のコンデンサは、150℃で240時間貯蔵後は、表2に示すように、ESRや漏れ電流の増加、静電容量の低下が実施例21〜40のコンデンサに比べて大きく、耐熱性が劣っていた。
【0199】
比較例7のコンデンサは、第1の固体電解質層を構成する導電性高分子の合成にあたって、非鉄塩系の酸化剤兼ドーパントを用いているので、初期特性においては、表1に示すように、漏れ電流は大きくないものの、実施例21〜40のコンデンサに比べて、静電容量が小さく、また、150℃で240時間貯蔵後においては、表2に示すように、ESRの増加や静電容量の低下が若干大きく、耐熱性に関して改善の余地を残していた。
【0200】
比較例8のコンデンサは、第1の固体電解質層を構成する導電性高分子の合成をドーパント(つまり、ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダール)とモノマー(つまり、エチレンジオキシチオフェン)とを分離し、しかも、保存中の劣化を防止するために、ドーパントと酸化剤の過硫酸アンモニウムとを別々の溶液にし、コンデンサ素子をドーパント溶液に浸漬し、次いで、酸化剤溶液に浸漬し、その後にモノマーに浸漬することによって行っているため、初期特性においては、表1に示すように、静電容量が実施例21〜40のコンデンサに比べて、大幅に小さく、150℃で240時間貯蔵後においては、表2に示すように、実施例21〜40のコンデンサに比べて、静電容量の低下が大幅に大きく、耐熱性にも問題を有していた。これは、コンデンサ素子の表面でドーパントと酸化剤とが反応して塩が形成され、そのため、ドーパントや酸化剤に加えてモノマーまでがコンデンサ素子の内部に入りにくくなったことによるものと考えられる。
【0201】
〔導電性高分子製造用モノマー液の調製(2)〕
実施例41
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレンスルホン酸4−メチルイミダゾール100gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0202】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0203】
実施例42
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレンスルホン酸トリアゾ-ル100gを用いた以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0204】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0205】
実施例43
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸イミダゾール100gを用いた以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0206】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0207】
実施例44
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸1−メチルイミダゾール100gを用い、さらに2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを10g添加した以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0208】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0209】
実施例45
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸2−メチル−4−エチルイミダゾール100gを用い、かつ、エチレンジオキシチオフェン100gに代えて、エチル化エチレンジオキシチオフェン100gを用い、さらにポリシロキサンを5g添加した以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0210】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0211】
実施例46
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸トリアジン100gを用い、かつ、エチレンジオキシチオフェン100gに代えて、ブチル化エチレンジオキシチオフェン50gとエチレンジオキシチオフェン50gとを用い、さらにメタクリル酸グリシジルを10g添加した以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0212】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0213】
実施例47
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸ピリジン100gを用い、さらに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを8gとポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを8g添加した以外は、すべて実施例45と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0214】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0215】
実施例48
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸モルホリン100gを用いた以外は、すべて実施例45と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0216】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0217】
実施例49
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸ピペラジン100gを用いた以外は、すべて実施例45と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。
【0218】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0219】
〔電解コンデンサでの評価(2)〕
この電解コンデンサでの評価(2)では、上記実施例41〜49の導電性高分子製造用モノマー液を用いて実施例50〜58の電解コンデンサを製造して、その特性を測定することによって、特性を評価する。
【0220】
実施例50〜58
実施例1で調製した導電性高分子製造用モノマー液に代えて、実施例41〜49で調製した導電性高分子製造用モノマー液をそれぞれ別々に用いた以外は、すべて実施例21と同様の操作を行って、実施例50〜58のタンタル系の電解コンデンサを製造した。
【0221】
上記のようにして製造した実施例50〜58のタンタル系の電解コンデンサについて、前記と同様に、ESRおよび静電容量を測定し、かつ、漏れ電流を測定した。その結果を表3に前記表1の場合と同様の態様で示す。
【0222】
【表3】
【0223】
また、上記表3に示す初期特性の測定後の実施例50〜58のタンタル系の電解コンデンサについて、150℃の乾燥機中に静置状態で240時間貯蔵し、その貯蔵後のコンデンサについて、前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定した。その結果を表4に前記表3の場合と同様の態様で示す。
【0224】
【表4】
【0225】
表3に示すように、実施例50〜58のタンタル系の電解コンデンサ(以下、これを簡略化して「コンデンサと表示する場合がある」は、ESRが11.7〜13.5mΩであって、20mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が849〜900μFであって、800μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流が1〜9μAであって、100μA以下という設定漏れ電流を満たし、かつ、前記表1に示す比較例6のコンデンサに比べて、ESRが低く(小さく)、静電容量が多く、漏れ電流がはるかに少なかった。
【0226】
また、表4に示すように、実施例50〜58のコンデンサは、150℃で240時間貯蔵後においても、ESRや漏れ電流の増加が少なく、静電容量の低下が少なく、ESRは12.2〜14.1mΩであって、20mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量は840〜895μFであって、800μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流は1〜18μAであって、100μA以下という設定漏れ電流を満たしていた。
【0227】
〔導電性高分子製造用モノマー液の調製(3)〕
実施例59
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレンスルホン酸4−メチルイミダゾール100gを用い、さらにピロールを7g添加した以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。チオフェン系モノマーに対するピロールの添加量は7%であった。この実施例59の導電性高分子製造用モノマー液におけるモノマーは、エチレンジオキシチオフェンとピロールとの混合物であり、この混合物中におけるピロールの含有量は、上記ピロールの添加量より明らかなように、エチレンジオキシチオフェンに対して7%である。
【0228】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0229】
実施例60
ナフタレンスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレンスルホン酸トリアゾール100gを用い、さらにピロールを20g添加した以外は、すべて実施例1と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。チオフェン系モノマーに対するピロールの添加量は20%であった。
【0230】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0231】
実施例61
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸イミダゾール100gを用い、さらにピロールを10g添加した以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。チオフェン系モノマーに対するピロールの添加量は10%であった。
【0232】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0233】
実施例62
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸1−メチルイミダゾール100gを用い、さらにピロールを20g添加し、かつ、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを10g添加した以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。チオフェン系モノマーに対するピロールの添加量は20%であった。
【0234】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0235】
実施例63
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸2−メチル−4−エチルイミダゾール100gを用い、かつ、エチレンジオキシチオフェン100gに代えて、エチル化エチレンジオキシチオフェン100gを用い、さらにピロールを25g添加し、かつポリシロキサンを5g添加した以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。チオフェン系モノマーに対するピロールの添加量は25%であった。
【0236】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0237】
実施例64
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸トリアジン100gを用い、かつ、エチレンジオキシチオフェン100gに代えて、ブチル化エチレンジオキシチオフェン50gとエチレンジオキシチオフェン50gを用い、さらにピロールを30g添加し、かつ、メタクリル酸グリシジルを10g添加した以外は、すべて実施例4と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。チオフェン系モノマーに対するピロールの添加量は30%であった。
【0238】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0239】
実施例65
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸ピリジン100gを用い、さらに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを8gとポリエチレングリコールジグリシジルエーテルを8g添加した以外は、すべて実施例63と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。チオフェン系モノマーに対するピロールの添加量は25%であった。
【0240】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0241】
実施例66
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸モルホリン100gを用いた以外は、すべて実施例63と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。チオフェン系モノマーに対するピロールの添加量は25%であった。
【0242】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0243】
実施例67
ナフタレントリスルホン酸2−メチルイミダゾール100gに代えて、ナフタレントリスルホン酸ピペラジン100gを用いた以外は、すべて実施例63と同様の操作を行って導電性高分子製造用モノマー液を調製した。チオフェン系モノマーに対するピロールの添加量は25%であった。
【0244】
この導電性高分子製造用モノマー液を20℃で6カ月間放置した後、観察したところ、沈殿は観察されなかった。
【0245】
〔電解コンデンサでの評価(3)〕
実施例68〜76
実施例1で調製した導電性高分子製造用モノマー液に代えて、実施例59〜67で調製した導電性高分子製造用モノマー液をそれぞれ別々に用いた以外は、すべて実施例21と同様の操作を行って、実施例68〜76のタンタル系の電解コンデンサを製造した。
【0246】
上記のようにして製造した実施例68〜76のタンタル系の電解コンデンサについて、前記と同様に、ESRおよび静電容量を測定し、かつ、漏れ電流を測定した。その結果を表5に前記表1の場合と同様の態様で示す。
【0247】
【表5】
【0248】
また、上記表5に示す初期特性の測定後の実施例68〜76のタンタル系の電解コンデンサについて、150℃の乾燥機中に静置状態で240時間貯蔵し、その貯蔵後のコンデンサについて、前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定した。その結果を表6に上記表5の場合と同様の態様で示す。
【0249】
【表6】
【0250】
表5に示すように、実施例68〜76のタンタル系の電解コンデンサ(以下、これを簡略化して「コンデンサ」と表示する場合がある)は、ESRが11.0〜13.3mΩであって、20mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が860〜907μFであって、800μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流が1〜9μAであって、100μA以下という設定漏れ電流を満たし、かつ、前記表1に示す比較例6のコンデンサに比べて、ESRが低く(小さく)、静電容量が多く、漏れ電流がはるかに少なかった。
【0251】
また、表6に示すように、実施例68〜76のコンデンサは、150℃で240時間貯蔵後においても、ESRや漏れ電流の増加が少なく、静電容量の低下が少なく、ESRは11.5〜13.9mΩであって、20mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量は852〜902μFであって、800μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流は1〜14μAであって、100μA以下という設定漏れ電流を満たしていた。そして、これら実施例68〜76のコンデンサは、比較例6のコンデンサのような高温貯蔵によるESRや漏れ電流の大幅な増加や静電容量の大幅な減少がなく、比較例7のコンデンサに比べても高温貯蔵によるESRの増加が少なく、また、比較例8のコンデンサに比べても高温貯蔵による静電容量の減少が少なかった。
【0252】
そして、これら実施例68〜76のコンデンサに使用されている実施例59〜67の導電性高分子製造用モノマー液は、実施例50〜58のコンデンサに使用されている実施例41〜49の導電性高分子製造用モノマー液にピロールを添加したものに相当するが、そのピロールの添加により、実施例68〜76のコンデンサは、それぞれに対応する実施例50〜58のコンデンサに比べて、ESRが低く、コンデンサ特性が優れていた。
【0253】
これを詳しく説明すると、実施例59の導電性高分子製造用モノマー液(以下、これを簡略化して「モノマー液」という場合がある)は、実施例41のモノマー液にピロールを添加したものに相当するが、上記実施例59のモノマー液を用いた実施例68のコンデンサは、上記実施例41のモノマー液を用いた実施例50のコンデンサより、ESRが低く、コンデンサ特性が優れていた。同様に、実施例60のモノマー液は実施例42のモノマー液にピロールを添加したものに相当し、実施例61のモノマー液は実施例43のモノマー液にピロールを添加したものに相当し、実施例62のモノマー液は実施例44のモノマー液にピロールを添加したものに相当し、実施例63のモノマー液は実施例45のモノマー液にピロールを添加したものに相当し、実施例64のモノマー液は実施例46のモノマー液にピロールを添加したものに相当し、実施例65のモノマー液は実施例47のモノマー液にピロールを添加したものに相当し、実施例66のモノマー液は実施例48のモノマー液にピロールを添加したものに相当し、実施例67のモノマー液は実施例49のモノマー液にピロールを添加したものに相当するが、これらのモノマー液を用いた実施例69のコンデンサと実施例51のコンデンサ、実施例70のコンデンサと実施例52のコンデンサ、実施例71のコンデンサと実施例53のコンデンサ、実施例72のコンデンサと実施例54のコンデンサ、実施例73のコンデンサと実施例55のコンデンサ、実施例74のコンデンサと実施例56のコンデンサ、実施例76のコンデンサと実施例57のコンデンサとを、それぞれ比較すると、ピロールを添加したモノマー液を用いたコンデンサの方がピロールを添加していないモノマー液を用いたコンデンサより、ESRが低く、コンデンサ特性が優れていた。
【0254】
〔電解コンデンサでの評価(4)〕
この電解コンデンサの評価(4)では、平板型アルミニウム電解コンデンサを製造して、その特性を評価する。
【0255】
実施例77
この実施例77の電解コンデンサのコンデンサ素子としては、表面部が多孔質化したアルミニウム箔からなり、定格電圧が25Vで、ESRが30mΩ以下、静電容量が40μF以上、漏れ電流が20μA以下になるように設計したものを用いた。
【0256】
そして、上記コンデンサ素子を前記のように製造した導電性高分子の分散液(I)に1分間浸漬し、引き出した後、150℃で30分間乾燥する操作を2回行って、導電性高分子からなる第1の固体電解質層〔以下、これを簡略化して「導電性高分子の分散液(I)に基づく第1の固体電解質層」という〕を形成した。
【0257】
次に、上記コンデンサ素子を実施例1で調製した導電性高分子製造用モノマー液に2分間浸漬し、引き出した後、50℃で10分間乾燥した。次いで上記コンデンサ素子を濃度が35%の過硫酸アンモニウム水溶液に2分間浸漬し、引き出した後、室温(25℃)で10分間放置した後、50℃で30分間加熱して、重合を行った。その後、純水とエタノールとを質量比1:1で混合した洗浄液中に上記コンデンサ素子を30分間浸漬し、引き出した後、150℃で30分間乾燥した。これらの操作を2回繰り返して、コンデンサ素子に実施例1の導電性高分子製造用モノマー液に基づく導電性高分子からなる第2の固体電解質層を形成した。
【0258】
さらに、上記コンデンサ素子を導電性高分子の分散液(II)に1分間浸漬し、引き出した後、150℃で30分間乾燥する操作を行って、第2の固体電解質層上に導電性高分子の分散液(II)への浸漬、乾燥に基づく第3の固体電解質層〔以下、これを簡略化して「導電性高分子の分散液(II)に基づく第3の固体電解質層」という〕を形成した。
【0259】
その後、カーボンペースト、銀ペーストで固体電解質層を覆って実施例77のアルミニウム系の電解コンデンサを製造した。
【0260】
実施例78〜84
実施例1で調製した導電性高分子製造用モノマー液に代えて、実施例2、4、5、59、62、63、64で調製した導電性高分子製造用モノマー液をそれぞれ別々に用いた以外は、すべて実施例77と同様の操作を行って、実施例78〜84のアルミニウム系の電解コンデンサを製造した。
【0261】
比較例9
コンデンサ素子に実施例1の導電性高分子製造用モノマー液に基づく第2の固体電解質層を形成しなかった以外は、すべて実施例77と同様の操作を行って、比較例9のアルミニウム系の電解コンデンサを製造した。
【0262】
比較例10
実施例77と同様の操作で第1の固体電解質層を形成したコンデンサ素子を濃度が30%のエチレンジオキシチオフェンのエタノール溶液に2分間浸漬し、引き出した後、室温で10分間放置した。その後、濃度が40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液に30秒間浸漬し、引き出した後、室温で10分間放置し、その後、50℃で30分間加熱して、重合を行った。その後、上記コンデンサ素子を純水とエタノールを1:1の質量比で混合した洗浄液に浸漬し、30分間放置した後、引き出して150℃で30分間乾燥した。この操作を2回繰り返して、コンデンサ素子にパラトルエンスルホン酸第二鉄を酸化剤兼ドーパントとして製造した導電性高分子からなる第2の固体電解質層を形成した。
【0263】
上記コンデンサ素子を導電性高分子の分散液(II)に1分間浸漬し、引き出した後、150℃で30分間乾燥する操作を行って、第2の固体電解質層上に導電性高分子の分散液(II)への浸漬、乾燥に基づく第3の固体電解質層〔以下、これを簡略化して「導電性高分子の分散液(II)に基づく第3の固体電解質層」という〕を形成した。
【0264】
その後、カーボンペースト、銀ペーストで固体電解質層を覆って、比較例10のアルミニウム系の電解コンデンサを製造した。
【0265】
上記のようにして製造した実施例77〜84および比較例9〜10のアルミニウム系の電解コンデンサについて、前記と同様に、ESRおよび静電容量を測定し、かつ、漏れ電流を測定した。その結果を表7に前記表1と同様の態様で示す。ただし、これらの電解コンデンサの定格電圧が25Vであることから、漏れ電流の測定は電解コンデンサに25Vの定格電圧を印加しながら行った。
【0266】
【表7】
【0267】
また、上記表7に示す初期特性の測定後の実施例77〜84および比較例9〜10のアルミニウム系の電解コンデンサについて、150℃の乾燥機中に静置状態で240時間貯蔵し、その貯蔵後のコンデンサについて、前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定した。その結果を表8に上記表7の場合と同様の態様で示す。
【0268】
【表8】
【0269】
表7に示すように、実施例77〜84のアルミニウム系の電解コンデンサ(以下、これを簡略化して「コンデンサ」と表示する場合がある)は、ESRが21.4〜26.1mΩであって、30mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が41.1〜41.4μFであって、40μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流が1〜12μAであって、20μA以下という設定漏れ電流を満たし、かつ、比較例9〜10のコンデンサに比べて、ESRが低く、コンデンサ特性が優れていた。
【0270】
また、表8に示すように、実施例77〜84のコンデンサは、150℃で240時間貯蔵後においても、ESRや漏れ電流の増加が少なく、静電容量の低下が少なく、ESRは21.9〜26.8mΩであって、30mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量は40.5〜41.1μFであって、40μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流は2〜8μAであって、20μA以下という設定漏れ電流を満たしていた。
【0271】
ここで、比較例9〜10のコンデンサについて言及しておくと、本発明の導電性高分子製造用モノマー液に基づく導電性高分子からなる第2の固体電解質層を形成していない比較例9のコンデンサは、漏れ電流は少ないものの、実施例77〜84のコンデンサに比べて、ESRが高く、かつ静電容量が少なかった。
【0272】
また、第2の固体電解質層をパラトルエンスルホン酸第二鉄を酸化剤兼ドーパントとして製造した導電性高分子を構成した比較例10のコンデンサは、漏れ電流が大きく、また、高温貯蔵によるESRの増加、ESRの増加、静電容量の減少が大きく、特に漏れ電流の増加が大きかった。