特許第5725641号(P5725641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725641
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】送風機又は圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/58 20060101AFI20150507BHJP
   F04D 29/056 20060101ALI20150507BHJP
   F04D 29/063 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   F04D29/58 M
   F04D29/056 A
   F04D29/063
   F04D29/58 Q
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-145824(P2010-145824)
(22)【出願日】2010年6月28日
(65)【公開番号】特開2012-7573(P2012-7573A)
(43)【公開日】2012年1月12日
【審査請求日】2013年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151058
【氏名又は名称】株式会社電業社機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100089129
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 実
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−005991(JP,U)
【文献】 特開平04−052498(JP,A)
【文献】 特開2001−248590(JP,A)
【文献】 特開2005−140672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/58
F04D 29/056
F04D 29/063
F28D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油によって潤滑される軸受により回転軸が回転自在に軸支される送風機又は圧縮機において、前記送風機又は圧縮機の吸込口に一端が連結された吸込配管の他端側を拡大壁面によって断面積を拡大し、この拡大された上流側開口端に前記潤滑油が流れる冷却管とこれに連設された冷却フィンとからなる冷却装置を配設し、前記冷却管および前記冷却フィンを気体流の流れ方向に適宜な直線長を有するとともに前記気体流に直交する面を上下左右方向に仕切るように形成し、前記拡大壁面によって断面積が拡大される部分で前記冷却装置の下流側に、気体流の流れ方向に適宜な直線長を備えた整流板を前記気体流の流れに直交する面を仕切るように複数配列し、前記吸込配管の途中に流量計を配設し、前記送風機又は圧縮機の運転により前記吸込配管内に吸い込まれる前記気体流が前記冷却装置を通過することで前記冷却管内を流れる前記潤滑油を冷却するとともに前記冷却管および前記冷却フィンにより通過する前記気体流を整流し、さらに前記整流板により前記冷却装置を通過した前記気体流を整流するように構成したことを特徴とする送風機又は圧縮機。
【請求項2】
請求項1記載の送風機又は圧縮機において、前記冷却装置の前記冷却管を、断面形状が扁平で前端部と後端部が外側に凸の形状に形成し、前記冷却管による前記気体流の流れ方向に対する損失抵抗を小さなものとするように構成したことを特徴とする送風機又は圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受潤滑油を冷却する冷却装置が設けらた送風機又は圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送風機又は圧縮機の回転軸は、軸受により回転自在に軸支されている。軸受には潤滑油が供給されて軸受の潤滑および冷却がなされる。送風機又は圧縮機の運転中は、高速回転する回転軸と軸受との摩擦熱等により潤滑油が高温となるために、オイルクーラ等の冷却装置により潤滑油の冷却がなされている。従来の構造の一例を図8を参照して簡単に説明する。図8は、従来の送風機又は圧縮機の全体構成図である。
【0003】
図8において、電動機10の出力軸12とブロワ14の回転軸16が連結され、この回転軸16が軸受18、20で回転自在に軸支される。ブロワ14の吸込口22に吸込配管24の一端が連接され、この吸込配管24の他端である上流側開口端26が大気に開口される。そして、吸込配管24の途中に流量を測定するための超音波流量計28が配設される。ここで、超音波流量計28で流量を正確に測定するためには、吸込配管24の内径をDとすると、吸込配管24の上流側端26から超音波流量計28までの直管長さLは好ましくは15Dほど必要とされる。そして、潤滑油タンク30から潤滑油ポンプ32により潤滑油供給管34を経て潤滑油が冷却装置36に供給され、冷却された潤滑油が別の潤滑油供給管38を経て軸受18、20に供給される。軸受18、20を潤滑した潤滑油は、潤滑油戻り管40を経て潤滑油タンク30に戻される。冷却装置36には、潤滑油が冷却管を通過する際に冷却ファン42による送風により冷却される。
【0004】
上記した従来の構造のブロワ14にあっては、軸受の潤滑油を冷却するために、冷却ファン42を備えた冷却装置36を付属設備として別途に設ける必要がある。そこで、設備機器の点数が増えるとともに、それらの設備機器を管理する労力も増える。また、冷却ファン42が故障すると主機のブロワ14の運転に支障をきたすという問題がある。さらに、冷却ファン42を運転するための動力が必要である。
【0005】
そこで、上記従来構造の冷却ファン42を必要としない技術が、実願昭55−081669号(実開昭57−005991号)のマイクロフイルム(特許文献1)に示されている。この技術は、送風機の吸込ケーシングに連結されたダクトの上流側開口端に、油冷却器を配設し、送風機の運転によりダクト内に吸い込まれる気体流が油冷却器の熱交換部を通過することで潤滑油を冷却するものである。
【特許文献1】実願昭55−081669号(実開昭57−005991号)のマイクロフイルム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に記載された技術は、冷却ファン42を必要としない点で優れたものである。しかしながら、ブロワ14を運転した際に吸込配管24内を流れる吸込流量を正確に測定するためには、乱流の影響が無いように、超音波流量計28にあっては、上流側の吸込配管24の直管長さLとして吸込配管24の内径Dの15倍程度の長さが必要であり、吸込配管24を含む設備全体の設置面積が大きいという別の問題がある。オリフィス流量計を用いた場合であっても、上流側の吸込配管24の直管長さとして吸込配管24の内径Dの10倍程度の長さが必要である。
【0007】
本発明は、上述のごとき従来構造の送風機又は圧縮機の問題点に鑑みてなされたもので、冷却装置に冷却ファンが不必要であるとともに、上流側の吸込配管の直管長さを短縮できるようにすることで、吸込配管を含む設備全体の設置面積を縮小できる送風機又は圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述のごとき問題点を解決するためになされたもので、本発明の送風機又は圧縮機は、潤滑油によって潤滑される軸受により回転軸が回転自在に軸支される送風機又は圧縮機において、前記送風機又は圧縮機の吸込口に一端が連結された吸込配管の他端側を拡大壁面によって断面積を拡大し、この拡大された上流側開口端に前記潤滑油が流れる冷却管とこれに連設された冷却フィンとからなる冷却装置を配設し、前記冷却管および前記冷却フィンを気体流の流れ方向に適宜な直線長を有するとともに前記気体流に直交する面を上下左右方向に仕切るように形成し、前記拡大壁面によって断面積が拡大される部分で前記冷却装置の下流側に、気体流の流れ方向に適宜な直線長を備えた整流板を前記気体流の流れに直交する面を仕切るように複数配列し、前記吸込配管の途中に流量計を配設し、前記送風機又は圧縮機の運転により前記吸込配管内に吸い込まれる前記気体流が前記冷却装置を通過することで前記冷却管内を流れる前記潤滑油を冷却するとともに前記冷却管および前記冷却フィンにより通過する前記気体流を整流し、さらに前記整流板により前記冷却装置を通過した前記気体流を整流するように構成されている。
【0009】
そして、前記冷却装置の前記冷却管を、断面形状が扁平で前端部と後端部が外側に凸の形状に形成し、前記冷却管による前記気体流の流れ方向に対する損失抵抗を小さなものとするように構成することもできる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の送風機又は圧縮機にあっては、潤滑油が流れる冷却管とこれに連設された冷却フィンとからなる冷却装置を吸込配管の上流側開口端に配設しているので、主機の運転により大気から吸い込まれた気体流が冷却装置を通過する際に冷却管内を流れる潤滑油が冷却される。もって、軸受の潤滑油を冷却するための冷却ファンを冷却装置の付属設備として設ける必要がない。そこで、設備の維持管理が容易であるとともに、従来のごとく、冷却ファンの故障により主機の運転に支障を生ずるようなこともない。また、冷却ファンの動力も必要がない。さらに、吸込配管の他端側を拡大壁面によって断面積を拡大し、その上流側開口端に冷却装置を配設したので、冷却装置の面積を大きくすることができる。そして、冷却管および冷却フィンを、気体流の流れ方向に適宜な直線長を有するとともに気体流に直交する面を上下左右方向に仕切るように形成したので、気体流が効率的に冷却されるとともに整流される。さらに、拡大壁面によって断面積が拡大される部分で冷却装置の下流側に、気体流の流れ方向に適宜な直線長を備えた整流板を気体流の流れに直交する面を仕切るように複数配列して整流機能を奏するようにしたので、冷却装置を通過した気体流が整流板により整流される。もって、気体流は冷却管および冷却フィンにより整流され、さらに整流板により整流され、途中に流量計が配設された吸込配管の直管長さを短いものとすることができ、その分、設備全体の設置面積を小さくすることができる。
【0011】
請求項2記載の送風機又は圧縮機にあっては、冷却装置の冷却管を、断面形状が扁平で前端部と後端部が外側に凸の形状に形成し、冷却管による気体流の流れ方向に対する損出抵抗を小さなものとしているので、冷却装置による圧力損失が小さく、しかも冷却管が気体流に晒される面積を大きくできて効率良く潤滑油の冷却ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例図1ないし図6を参照して説明する。図1は、本発明の送風機又は圧縮機の実施例の全体構成図である。図2は、図1のA−A断面矢視図である。図3は、図1の冷却装置の正面図である。図4は、図2のB−B断面矢視図である。図5は、整流板を横方向に配設した場合の図4のC−C断面矢視図である。図6は、本発明の実施例の変形例であり、整流板を格子状に配設した場合の図4のC−C断面矢視図である。なお、本発明において、送風機はファンやブロワ等であり、圧縮機はエアコンプレッサー等であって、気体を圧縮して吐出圧100kPa以上かつ圧縮比2以上とする機器である。
【0013】
図1において、電動機10の出力軸12とブロワ14の回転軸16が連結され、この回転軸16が軸受18、20で回転自在に軸支される。ブロワ14の吸込口22に吸込配管24の一端が連接され、この吸込配管24の他端側が拡大壁面24a、24a…により端部側ほど断面積が拡大されて、その上流側開口端26が大気に開口される。そして、この吸込配管24の上流側開口端26に冷却装置46が配設される。また、吸込配管24の他端側で拡大壁面24a、24a…により拡大された部分で上流側開口端26に設けられる冷却装置46の下流側に、気体流の流れ方向に所定の直線長を備えた整流板48、48…が横方向に複数配列される。これらの複数の整流板48、48…は、正面から見て平行であるが吸込配管24が端部側ほど断面積が拡大されるのに応じて下流側の間隔が狭められている。なお、吸込配管24の途中に流量を測定するための超音波流量計28が配設される。さらに、潤滑油タンク30から潤滑油ポンプ32により潤滑油供給管34を経て潤滑油が冷却装置46に供給され、冷却された潤滑油が別の潤滑油供給管38を経て軸受18、20に供給される。軸受18、20を潤滑した潤滑油は、潤滑油戻り管40を経て潤滑油タンク30に戻される。
【0014】
冷却装置46は、図2ないし図4に示すように、吸込配管24の上流側開口端26を正面側から見て、左側端部の流入管46aと右側端部の流出管46bとの間に複数の冷却管46c、46c…が横方向に平行に配設され、さらにこれらの複数の冷却管46c、46c…に連設させて複数の冷却フィン46d、46d…が縦方向に平行に配設される。そして、横方向の複数の冷却管46c、46c…と縦方向の複数の冷却フィン46d、46d…で、吸込配管24の上流側開口端26を正面側から見て格子状に形成される。さらに、冷却管46c、46c…を吸込配管24に流入する気体流の流れ方向に断面形状が扁平で前端部と後端部が外側に凸の形状に形成し、冷却管46c、46c…および冷却フィン46d、46d…を、気体流の流れ方向に適宜な所定の直線長を備えるように構成する。流入管46aに潤滑油供給管34を経て潤滑油が流入し、冷却管46c、46c…を通過して流出管46bに流れ込み、さらに別の潤滑油供給管38から潤滑油が流出する。
【0015】
冷却装置46の冷却管46c、46c…の断面形状を扁平とすることで、冷却管46c、46c…による気体流の流れ方向に対する損失抵抗を小さなものとすることができる。そして、冷却管46c、46c…および冷却フィン46d、46d…が、気体流の流れ方向に適宜な所定の直線長を備えることで、吸込配管24に流入する気体流に晒される面積を大きなものとすることができ、冷却管46c、46c…を通過する間に潤滑油が効率的に冷却される。さらに、格子状に配設された冷却管46c、46c…および冷却フィン46d、46d…により、吸込配管24に流入する気体流が、流れに直交する面を上下左右方向に仕切られることとなり整流機能を奏する。この冷却装置46の整流機能により、流量を正確に測定するために必要とされる超音波流量計28の上流側の吸込配管24の直管長さL1を短なものとすることができ、吸込配管24を含む設備全体の設置面積を縮小することができる。なお、冷却管46c、46c…および冷却フィン46d、46d…は、熱伝導性の高い素材で形成されることは勿論であり、冷却フィン46d、46d…は薄い板状である。そして、冷却管46c、46c…において、潤滑油が通過できて冷却管として作用する部分と潤滑油が通過し難くて冷却フィンとして作用する部分とが形成されるようなものであっても良い。
【0016】
吸込配管24の他端側で拡大壁面24a,24a…により拡大された部分に配列された複数の整流板48、48…は、図6に示す実施例の変形例のごとく、格子状に配設しても良い。
【0017】
整流板48、48…を配列することで、吸込配管24に流入する気体流が、冷却装置46の下流側で流れに直交する面を上下または上下左右方向に仕切られることとなり、気流体がさらに整流されるので、それだけ吸込配管24の直管長さを短いものとすることができる。
【0018】
なお、本発明の実施例において、冷却装置46は、吸込配管24の上流側開口端26を正面側から見て、左側端部の流入管46aと右側端部の流出管46bとの間に複数の冷却管46c、46c…が横方向に平行に配設されているが、これに限られず、左側端部に流出管46bと右側端部に流入管46aが設けられても良く、また流入管46aと流出管46bが上下の端部側に設けられていても良い。そして、冷却装置46の冷却管46cは複数本が並列に配設されたものに限られず、ジグザグ状や渦巻き状に設けられていても良いことは当然に理解されるであろう。さらに、冷却フィン46d、46d…は、吸込配管24の上流側開口端26を正面側から見て、縦に配設されたものに限られず、図7(a)に示すように斜めであっても良く、また図7(b)に示すように六角形が連接するような形状であっても良く、さらには図7(c)に示すように多数の円形が連接するような形状であっても良い。冷却管46c、46c…および冷却フィン46d、46d…の組み合わせで構成される形状は、気体流が流れに直交する方向に移動するのが規制されればいかなる形状であっても良い。かかる形状において、冷却管46c、46c…および冷却フィン46d、46d…がいかに規制に関与していても良い。そして、整流板48、48…も、上記実施例に限られず、吸込配管24に流入する気体流が、流れに直交する面が上下又は上下左右方向に仕切られて整流機能を奏する形状であればいかなる形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の送風機又は圧縮機の実施例の全体構成図である。
図2図1のA−A断面矢視図である。
図3図1の冷却装置の正面図である。
図4図2のB−B断面矢視図である。
図5整流板を横方向に配設した場合の図4のC−C断面矢視図である。
図6本発明の実施例の変形例であり、整流板を格子状に配設した場合の図4のC−C断面矢視図である。
図7冷却フィンの吸込配管の上流側開口端を正面側から見た他の例の形状を示し、(a)は斜めであり、(b)は六角形が連接するような形状であり、(c)は多数の円形が連接するような形状である。
図8従来の送風機又は圧縮機の全体構成図である。
【符号の説明】
【0020】
10 電動機
12 出力軸
14 ブロワ
16 回転軸
18、20 軸受
22 吸込口
24 吸込配管
24a 拡大壁面
26 上流側開口端
28 超音波流量計
30 潤滑油タンク
32 潤滑油ポンプ
34、38 潤滑油供給管
40 潤滑油戻り管
46 冷却装置
46a 流入管
46b 流出管
46c 冷却管
46d 冷却フィン
48 整流板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8