(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対向要素(5)は、さらなる接触面(15,16)を有する複数の部品(5′、5′′、5′′′)を含み、さらなる接触面の対は互いに対して位置決めされ、前記振動要素(6)および振動しない要素(5)が互いに対して保持される、請求項1または2に記載の方法。
前記可撓性を有する力伝達部材は、近位端側からアクセス可能であり、前記振動要素(6)に作用する押圧力(F1)に対する反力として前記本体に、前記可撓性を有する力伝
達部材に作用する引張力(F2)を伝達可能である、請求項6に記載の装置。
前記振動要素(6)は、前記遠位端および前記近位端の間に延在する第1の軸と、前記第1の軸の周りに延在し、前記第1の軸に平行ではない第1の接触面とを含み、前記対向要素(5)は、前記接触端および前記反対端の間に延在する第2の軸と、前記第2の軸の周りに延在し、前記第2の軸に平行ではない第2の接触面とを含み、第1および第2の接触面が互いに対して位置決めされると、前記第1および第2の軸が互いに整列される、請求項6または7に記載の装置。
前記本体(40)は、前記第1の液化可能材料を含む近位部品と、液化不可能な材料を含む遠位部品と、前記力伝達部材(41)を保持するための手段とを含む、請求項6または7に記載の装置。
前記可撓性の力伝達部材(41)は、前記本体を貫通する保持部を有し、前記保持部の各々の側で、前記振動要素(6)の少なくとも遠位端を通して延びる、請求項20に記載の装置。
前記可撓性の力伝達部材(41)は、前記振動要素(6)の少なくとも遠位端を通して延び、前記振動要素(6)は、前記可撓性の力伝達部材(41)のための出口開口を有する、請求項6または7に記載の装置。
前記熱可塑性材料は、少なくとも第1の熱可塑性材料部および第2の熱可塑性材料部と、前記第1の熱可塑性材料部と第2の熱可塑性材料部との間の接触面とを有する、請求項6または7に記載の装置。
前記対向要素(5)およびエンドピース(6.2)は対にしてコンテナに配置され、前記エンドピース(6.2)は底部に、前記対向要素(5)は前記エンドピースの上方に、かつ前記エンドピースに整列して位置決めされる、請求項35に記載のキット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の目的
本発明の目的は、機械的振動と、機械的振動によって液化可能な熱可塑性材料とを利用して組織に定着部を生成するためのさらなる方法であって、再凝固した時に熱可塑性材料が組織との押込式嵌合接続を構成するように、機械的振動によって熱可塑性材料を液化することによって、かつ、組織の細孔、開口部または空洞への浸透によって定着が実現される方法を生み出すことである。既知の方法とは異なり、本発明に係る方法は、既知の方法による上記の液化に必要な機械強度または抵抗を有する組織だけでなく、機械強度または抵抗がより小さい組織にも適用可能であり、定着部が生成される組織の機械的特性に適合させる必要がないか、または適合させる必要が少なくとも著しく小さい。これは特に、既知の方法よりも密度が低い骨組織(特に低密度の海綿状骨組織または重度の骨粗鬆症の骨組織)と、たとえば腱、靭帯、軟骨または半月板組織などの骨以外の耐荷重組織とにも本発明に係る方法を適用可能であることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の簡単な説明
本発明の方法が基礎とする主要な概念は、振動するインプラントと(振動していない)骨組織との間での熱可塑性材料の液化とは離れることである。代わりに、液化は、振動要素と対向要素との間で実現され、これらの要素は組織に隣接して位置決めされ、互いに対して保持されている。いかなる場合でも2つの要素の接触面の間に相対的な振動性の移動が存在するように、振動要素は振動源に接続され、対向要素は実質的に振動していないか、または振動要素とは異なって振動していてもよく、相対的な移動によって、当該要素の接触面の少なくとも一方に配置されている液化可能な材料の液化が引起こされる。2つの要素間で液化される材料を、2つの要素を互いに対して移動させることによって2つの要素の間から流出させ、隣接する組織に浸透させる。2つの要素は、互いに保持し移動させるために必要な力が、液化した材料が浸透する組織に作用しないように配置される。これは、上記の液化および浸透について、定着が実現される組織に作用する唯一の力は、液化した材料の静水圧力であることを意味する。実験によれば、海綿状骨組織などの組織は、液化した材料による浸透に対する抵抗が極めて小さく、したがって極めて小さい静水圧力が増大して組織に作用し、したがって組織へのダメージが最小となることが分かっている。
【0008】
非多孔性の軟組織においては、液化した材料の静水圧力によって組織部分が他の組織部分に関して変位し、液化した材料のための空間がその場に、かつ再凝固すると、所望の押込式嵌合接続による定着部が形成される。
【0009】
振動要素と対向要素との間で液化される熱可塑性材料は、2つの要素を互いに対して保持し移動させる際に当該要素が互いに接触する接触面の領域において、振動要素上および/または対向要素上に配置される。2つの要素のうちどちらが液化可能な熱可塑性材料を含むかに依存して、組織内に残存し定着したインプラントを構成するのは、対向要素もしくはその一部、または振動要素もしくはその一部、または2つの組合せとなる。2つ以上の部品を有するインプラントにおいては、定着処理と実質的に同時に当該部品間に接合部を形成することが可能である。
【0010】
液化した材料を2つの要素の間から流出させ、組織に接触して浸透させるため、互いに対して保持された振動要素および対向要素は、組織の表面が接触面の外縁を横切って延在し、かつ、これらの外縁の領域において、これらの要素に接触するかまたは若干離間されるように組織に関して位置決めされるが、少なくとも接触面の上記の外縁の領域においては、これらの要素を組織面に押圧しないことが好ましい。
【0011】
振動要素は、近位端から遠位端に機械的振動を伝達するのに好適な機械的に安定した、制動損失が可能な限り小さい共振器として設計され、振動は、たとえば振動要素の近位端と遠位端との間に延在する軸に主として平行な方向を有するが、回転もしくは径方向の振動、またはその組合せであってもよい。振動要素の近位端は、振動源の振動が振動要素に伝達されるように、機械的振動源(たとえば圧電変換器)に直接または間接的に取付けるように装備される。振動要素の遠位端は、振動要素の近位端から離れる方に面するまたは対面する接触面を含み、対向要素の接触面に適合され、液化可能な熱可塑性材料を含み得る。振動要素は、好ましくは一部品からなる要素であり、当該部分は(たとえばねじ留め、接着または溶接によって)互いに堅固に固定される異なる材料の部分を含み得る。しかし、2つの部品またはさらに多数部品からなる振動要素を使用することも可能であり、最近位部品は振動源に取付けられ、さらなる部品は最近位部分に対して、かつ互いに対して保持され、振動源の振動または少なくともその一部を、すべての部品を通って、液化が起こる接触面を含む振動要素の最遠位部分に伝達することができる。
【0012】
対向要素は、接触面を担持する接触端と反対端とを有する。対向要素は一部品からなる要素であり、互いに堅固に接続される異なる材料の部分を含み得るが、互いに接続されていない2つまたは3つ以上の部品を含んでもよい。対向要素のこのような接続されていない部品は、互いに適合したさらなる接触面を含む。1対のさらなる接触面の少なくとも一方の接触面がさらなる液化可能な熱可塑性材料を含む場合、対向要素の部品のこのようなさらなる接触面の間においてさらなる液化が生じ得る。このようなさらなる液化によって、2点または多数点定着を実現することができる。しかし、間で液化が生じている振動要素から対向要素へは振動伝達が弱いため、このようなさらなる液化は、通常は、振動要素の接触面における液化ほど顕著ではない。
【0013】
対向要素は通常は振動しないか、または液化が生じる振動要素と対向要素との間の接触面を介する振動伝達が可能な程度にのみ振動する。しかし、先述したように、対向要素をさらなる振動源に(または伝達要素を介して同じ振動源に、もしくはさらに振動要素に)結合することも可能であり、2つの振動源は、振動要素の接触面と対向要素の接触面との間に相対的な振動性移動が存在するように作動される。これは、たとえば振動方向の相違、振動周波数の相違、および/または位相差によって実現することができる。
【0014】
必ずしも必要ではないが好ましくは、振動要素および対向要素は各々が軸を含み、振動要素の軸は振動要素の近位端と遠位端との間に延在し、対向要素の軸は対向要素の接触端と反対端との間に延在する。接触面は対応する軸の周りに配置され、軸に平行ではない。接触面が互いに接触した状態で当該要素を互いに対して保持し移動させるために、振動要素の軸を対向要素の軸と整列させ、保持力または少なくともその成分は整列された軸の方向に作用する。
【0015】
振動要素の接触面が振動要素の近位端から離れた方に面している場合、対向要素(または少なくともその一領域)は、振動要素の遠位端を越えた位置(振動要素の遠位端よりもさらに遠位)に保持される。振動要素の接触面が振動要素の近位端に対面している場合、対向要素(または少なくともその一領域)は、振動要素の遠位端と近位端との間に位置決めされ、振動要素は、対向要素を通ってまたは通り越して伸びる。
【0016】
上記の保持力が要素の各一方に能動的に与えられるか、または保持力の一方が要素の一方に能動的に与えられ、たとえば組織に関して位置が固定された支持要素に対して支持されている他の要素によって相殺される。上記の支持によって、要素の一方または両方が、定着が実現される組織に関して移動されることになる。反対の保持力を与えるためには、たとえば振動要素の振動しない支持部(たとえば振動源の筐体)と対向要素との間において、予め張力をかけた弾性コネクタを使用することも可能であり、弾性コネクタは、2つの要素を互いに対して偏倚させる。
【0017】
本発明に係る定着は、組織に設けられた孔もしくは他の開口部においてもたらされることが好ましく、開口部は、予備的な方法工程で設けることができるか、または、特に軟組織においては、インプラント要素の挿入によって作成することができる。保持力は、組織の一方側からのみ、好ましくは振動源が位置決めされる側(近位側)から与えられることが有利である。これは、接触面が近位端に対面し、かつ振動要素の遠位端と近位端との間に配置されている対向要素を通ってまたは通り越して延在する振動要素については容易に実現される。接触面が近位端から離れた方に面し、かつ対向要素が振動要素の遠位端の向こう側に位置決めされている振動要素については、対向要素が振動要素の少なくとも遠位端を通ってまたは通り越して近位方向に延在する場合には、組織の近位側から2つの保持力を与えることが可能となる。
【0018】
上記のように、振動要素または対向要素の少なくとも一方は、当該要素間で液化する熱可塑性材料を含む。接触面における液化を制御するには、当該要素は大きな剛性を有することが必要であり、したがって、上掲の国際特許出願の教示に反して、当該要素は、液化可能な熱可塑性材料を含むか否かにかかわらずそれらの軸の方向に実質的に圧縮不可能な固体であり、したがってこれらの軸に垂直な伸びは、上記の保持力の影響下では実質的に同じ状態となる(最大2%の拡張)。当該要素を互いに対して保持しかつ移動させるのに必要な保持力は、物質接触面のmm2領域当り約5N(軸に垂直に測定)と通常は小さいが、これより大きくてもよい。
【0019】
本発明に係る装置は、本発明に係る方法を実行するのに好適な装置であり、振動要素と対向要素とを含み、振動源(たとえば圧電素子を含む超音波変換器)をさらに含み得、当該装置が負荷フレームを構成するように、振動源に振動要素が接続され、振動源上に対向要素が支持され得る。代替的に、当該装置は、筐体を有するハンドピースと、筐体内において振動部品と、静止している振動源から振動要素に振動を伝達するケーブルとの間で開放可能な接続とを含んでもよい。
【0020】
振動要素および対向要素は、たとえば少なくとも接触面の領域において同様の円筒形状(円形の円筒形またはいずれかの他の断面を有する円筒形)を有し、接触面は円筒の軸の周りに延在し、たとえば軸に垂直であり(軸に平行ではなく)、円筒の外周の周りに外縁を有する。当該要素は軸が整列した状態で互いに対して保持され、少なくとも接触面の領域は組織の孔または他の開口部に位置決めされ、孔または開口部は、孔または開口部に要素を導入した時に孔または開口部の側壁と要素との間で圧力が増大しないように、要素に適合した断面を有する。すなわち、開口部または孔は、当該要素の断面よりも断面が若干大きいことが好ましい。2つの接触面の形状が同じであること、または接触面の領域において振動要素および対向要素の断面が同じであることは発明の条件ではない。異なる形状および断面も可能である。
【0021】
本発明に係る方法に好適な機械的振動または発振は、2〜200kHz(より好ましくは10〜100kHzまたは20〜40kHz)の周波数と、能動面の平方ミリメートル当たり0.2〜20Wの振動エネルギとを有することが好ましい。振動要素は、たとえば、その接触面が主に要素の軸方向に発振(長手方向の振動)するように、かつ1〜100μm、好ましくはおよそ10〜20μmの振幅で設計される。回転または径方向の発振も可能である。
【0022】
本稿において、「機械的振動によって液化可能な熱可塑性材料」または略して「液化可能な熱可塑性材料」もしくは「液化可能な材料」という表現は、少なくとも1つの熱可塑性成分を含む材料を表すのに用いられ、当該材料は、互いに接触しかつ互いに関して振動によって移動する1対の表面(接触面)の一方に配置されると、液体または流動可能となる。振動の周波数は2kHz〜200kHzであり、好ましくは20〜40kHzであり、振幅は1μm〜100μm、好ましくはおよそ10〜20μmである。このような振動は、たとえば歯科用途として知られている超音波装置によって生じる。組織への耐荷重接続を構成することができるようにするため、当該材料の弾性係数は0.5GPaより大きく、好ましくは1Gpaより大きく、可塑温度は200℃以下、200℃〜300℃、またはさらに300℃より高い。用途に応じて、液化可能な熱可塑性材料は再吸収可能であっても可能でなくてもよい。
【0023】
好適な再吸収不可能な熱可塑性材料は、各々が医療品質である、ポリオレフィン類(たとえばポリエチレン)、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリカーボネート類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリウレタン類、ポリスルホン類、液晶ポリマー類(LCP)、ポリアセタール類、ハロゲン化ポリマー、特にハロゲン化ポリオレフィン類、ポリフェニレンスルホン類、ポリスルホン類、ポリアリールエーテルケトン類(たとえばポリエーテルエーテルケトンPEEK(登録商標))、ポリエーテル類、もしくは対応するコポリマー類、および/または混合したポリマー類、および/またはこのようなポリマー類の複合物、特にポリアミド11もしくはポリアミド12である。
【0024】
好適な再吸収可能な熱可塑性材料は、各々が医療品質である、乳酸および/またはグリコール酸をベースとする熱可塑性ポリマー類(PLA、PLLA、PGA、PLGA等)もしくはポリヒドロキシアルカン酸類(PHA)、ポリカプロラクトン類(PCL)、多糖類、ポリジオキサン類(PD)、ポリ酸無水物類、ポリペプチド類、トリメチル炭酸類(TMC)、もしくは対応するコポリマー類、および/または混合したポリマー類および/またはこのようなポリマー類の複合物である。再吸収可能な熱可塑性材料として特に好適なものは、ポリLDLラクチド類(たとえば、商品名Resomer(登録商標)LR706としてベーリンガー社から入手可能)またはポリDLラクチド類(たとえば、商品名Resomer(登録商標)LR208としてベーリンガー社から入手可能)である。
【0025】
液化可能な熱可塑性材料は、上掲の熱可塑性成分のうちの1つもしくは複数に加え、熱可塑性成分中に均一に分散したまたは局所的に濃度を変えて存在する強化繊維、補強副木、充填材料等の液化不可能な成分も含み得る。
【0026】
本稿において、「液化不可能な材料」という表現は、移植条件下では液化しない材料を表わすのに用いられる。このような材料は、たとえば金属(たとえば鋼、チタン、チタン合金、コバルト/クロム合金)、セラミックもしくはガラス状の材料(たとえば酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、リン酸カルシウムのセラミックもしくはガラス)、または熱硬化性ポリマーである。
【0027】
本発明に係る装置の振動要素および対向要素が接触面に(または多数部品からなる対向要素の部品間のさらなる接触面に)2つの異なる液化可能な熱可塑性材料を含む場合は、両方の熱可塑性材料が液化し得る。これは、2つの熱可塑性材料のうち一方の融解温度またはガラス遷移温度がそれぞれ他方の材料の対応する温度より少なくとも50℃高い場合には該当しない。融点が高い方の熱可塑性材料は、このような場合には「液化不可能」である。しかし、同じ熱可塑性材料が接触面に配置され、システムのうち最も融点が低い材料である異なるシステムにおいては、液化可能な材料となり得る。望ましくない場所、たとえば、異なる理由で熱可塑性材料が存在する必要がある、振動要素および/または対向要素の接続されていない部品同士の間での液化を防ぐには、液化させる熱可塑性材料と液化させない材料との間の融解温度の差が少なくとも50℃であるように注意すべきである。
【0028】
上記のように使用可能な1対の熱可塑性材料の一例は、PEEK(登録商標)(液化不可能)およびPLLA(液化可能)からなる。一方、PEEK(登録商標)とチタンとの対においては、PEEK(登録商標)が液化可能な材料である。本発明に係る装置において液化不可能な材料の一部をなす可能性がある高温熱可塑性材料は、たとえばポリエーテルアリールケトン類、ポリフルオロもしくはポリクロロエチレン類、ポリエーテルイミド類、ポリエーテルスルホン類、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン類、ポリスルホン類、ポリエステル類、または複合材料(たとえばカーボンファイバで補強した高温熱可塑性物質)である。
【0029】
図面の簡単な説明
本発明は、添付の図面に示される方法および装置の例示的な実施例を利用してさらに説明される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
図1および
図2は、股関節プロテーゼの移植を示し、プロテーゼの軸は、本発明に係る方法および装置の第1の例示的な実施例を用いて、対応して準備された大腿骨の開口部に定着されるインプラントである。
図1は、大腿骨2に定着され、外側プロテーゼ部品3が取付けられるプロテーゼ軸を構成するインプラント1を示す。
図2は、左側の拡大図において、定着処理の準備が整った大腿骨2に関して位置決めされる本発明に係る装置4を示し、定着処理後の定着したインプラント1を右側に示す。
【0032】
図1に示す大腿骨用途に加え、
図1および
図2に示す定着方法には他の多くの用途がある。外側プロテーゼ部品3が担持面を置換し、凸であってもよいし(たとえば股関節のボール、膝関節の大腿骨側、四肢関節、側頭−下顎骨関節)、凹であってもよいし(たとえば肩関節の関節腔、寛骨臼の再建用腔)、実質的に平らであってもよいし(たとえば頸骨の高平部、四肢、脊椎の小関節)、関節部分全体の置換(関節球または関節腔)として機能してもよい。
【0033】
図1に係るプロテーゼ軸(インプラント1)を定着させるために使用される装置4は、以下の原理に従って設計される。すなわち、2つの部品5′および5′′を含む対向要素5が振動要素6の遠位端と近位端との間に位置決めされ、振動要素6は対向要素5を通って伸び、振動要素6の接触面8は振動要素の近位端に対面し、対向要素5はその接触面9の領域において液化可能な熱可塑性材料を含む。保持力F1およびF2は、振動要素6に引張荷重を与え、対向要素5に圧縮荷重を与える。
【0034】
図2から明らかなように、振動要素6(たとえば超音波装置の音極)は、断面が小さいステム6.1と断面が大きい遠位エンドピース6.2とを含み、エンドピース6.2の近位面が接触面8を構成する。例示されている実施例では、振動要素は液化可能な熱可塑性材料を含まず、たとえば金属からなる。接触面8は、ステム6.1の周りに、たとえばステム6.1に垂直な方向に延在する。
【0035】
対向要素5は、液化可能な熱可塑性材料からなる遠位部分と液化不可能な材料、たとえば金属からなる近位部分とを有し、2つの部分がたとえば互いに接着されることによって、または押込式嵌合接続によって、互いに接続される管状部材の形態の遠位部品5′を含む(振動部に最も近く、接触面9を含む)。管状部材5′の遠位面は、接触面9を構成する。ステム6.1の断面(円形または非円形)は、管状部材がステム6.1上に緩く着座することができるように、管状部材の開口部5.1に適合される。エンドピース6.2および管状部材は、大腿骨2に設けられた開口部10の断面に適合した同じ断面(円形または非円形)を有することが有利である。対向要素5は(部品5′よりも振動要素の接触面8からさらに離間した)近位部品5′′をさらに含んでもよく、近位部品5′′を介して第2の保持力F2が与えられる。対向要素5の近位部品5′′は、遠位部品5′のように、たとえば開口部5.1を含むプレートの形態を有し、開口部を通って振動要素6のステム6.1が伸びる。プレート5′′は液化不可能な材料、たとえば金属からなる(部品5′および5′′の2つのさらなる接触面の間にはさらなる液化は生じない)。
【0036】
装置4は、振動要素6および対向要素5に加えて、振動源7(またはハンドピース)を含み、そこに振動源7からの振動を振動要素6の近位端に伝達するのに好適な、それ自体既知のやり方で振動要素6が接続され、振動源は、好ましくは、振動要素6に作用する保持力F1が与えられる振動しない筐体11を含む。
【0037】
装置4は、対向要素5(管状部材5′および該当する場合はプレート5′′)を通るようにステム6.1を押込み、かつ振動源に堅固に固定されたアダプタ13に捩じ込むなどして振動源7に取付けることによって、予め組立てられる。次いで装置4は、エンドピース6.2および接触面8が開口部10内に位置決めされ、かつ少なくとも部分的に開口部10の外側に位置決めされるプレート5′′が管状部材5′を接触面8に押付けることができるように、組織に設けられた開口部10に関して位置決めされる(
図2の左側に示す)。次いで、2つの保持力F1およびF2と振動とが与えられる。振動要素6および対向要素5を互いに対して保持しかつ移動させ、接触面9の熱可塑性材料を液化させ、液化した材料を接触面8および9の間から流出させて2つの接触面8および9の外縁を包囲する組織の表面に接触させ、
図2の右側に示すようにこの組織に浸透させる。次いで振動が停止され、保持力は好ましくは、液化した材料が再凝固するまで維持され、次いで振動要素6がアダプタ13から分離され、対向要素の近位部品5′′(該当する場合)が除去される。
【0038】
図1および
図2の右側に示した上記の方法に従って生成されるインプラント1は、振動要素6と対向要素5の遠位部品5′(管状部材)とを含み、この管状部材5′は、熱可塑性材料の液化、変位および再凝固によって形成される押込式嵌合接続によって大腿骨組織2に定着され、振動要素6は、対向要素5の定着部品5′によって開口部10に保持される。
【0039】
外側プロテーゼ部品3を取付けるために、振動要素6のステム6.1の近位端は、大腿骨2の開口部10から突出しており、たとえばテーパ状接続のためにこの外側プロテーゼ部品3の開口部3.1に適合される。いずれかの他のそれ自体既知の手段が、外側プロテーゼ部品3を振動要素6のステム6.1に取付けるように機能し得る。
【0040】
図2に示すように、定着処理の前後で、振動要素6は大腿骨2に関して同じ位置を有する。これは、振動要素6およびそれとともに振動源7またはハンドピースが、定着処理中に、たとえば骨に関して固定されている筐体11によって骨に関して同じ位置に保たれることを意味する。これは、対向要素5が組織に向かって移動されることを意味する。対向要素5のみを骨組織に関して移動させることは、
図1および
図2に示す実施例に特に好適であり、開口部10の底部と対向要素5の定着部品との間に振動要素6が維持され、この位置が安定しているほど、この空間は振動要素6のエンドピース6.2によりよく適合する。
【0041】
対向要素5の熱可塑性材料が好適に低い融解温度を有し、かつ接触面8および9が適切に小さい場合は、接触面8および9が両方とも平らであって完全に互いに対向して配置されていても、容易に許容エネルギ(したがって組織への許容熱負荷)によって液化が生じる。これは、たとえばPLLAなどの熱可塑性材料および10〜20mm2の領域の接触面に該当することが実験から分かっている。融解温度またはガラス遷移温度がより高い熱可塑性材料、および/またはより大きい接触面に関しては、接触面8もしくは9の一方に、エネルギディレク、すなわち接触面間の最初の接触を狭い線もしくは小さい点に低減するリブまたは隆起の形態の突起を備えることが有利である。特に有利なものは、径方向に延在するリブの形態のエネルギディレクタであり、それらの間に径方向に延在する溝を構成し、そこを通って液化した材料が接触面の外縁に、かつ振動要素および対向要素から離れる方に流れることができる。エネルギディレクタは、接触面8または9のいずれか一方に設け得る、すなわちエンドピース6.2の液化不可能な材料または管状部材5′の遠位部分の液化可能な材料のいずれかで構成され得る。
【0042】
図3および
図4は、
図2と同様に、本発明に係る装置および方法のさらなる例示的な実施例を示し、当該実施例は、
図1および
図2に関して説明した実施例と同じ原理に基づき、したがって実質的に同じ用途について有利である。同じ符号は同じ要素を示すのに用いられる。
【0043】
図3に係る装置4は
図3の左側に示され、保持力F1およびF2と振動とを与える準備が整った組織に設けられた開口部10に関して位置決めされる。装置4は、対向要素5の遠位部品5′および近位部品5′′(さらなる接触面15および16)の間でも液化が可能となるように全面的に液化可能な熱可塑性材料からなる対向要素5の遠位部品5′と、接触面8からエンドピースの遠位面に達する貫通孔17を含む振動要素6のエンドピース6.2とが、
図2に係る装置とは異なる。
【0044】
さらなる接触面15および16の間の追加的な液化によって、
図1および
図2に示した1ヶ所のみでの定着に対し、(
図3の中央に示すように)2ヶ所での定着が生じる。このような2点定着は、1点定着よりも相対的に安定性がより高い。
【0045】
さらなる接触面15および16が材料および形態に関して接触面8および9と実質的に同じである場合は、接触面8と9との間よりも、さらなる接触面15と16との間の液化の方が大幅に少なくなる。なぜなら、接触面8および9を介する振動伝達が不良であることにより、さらなる接触面15および16において得られる振動エネルギは大幅に小さいためである。この効果は、融解温度またはガラス遷移温度が遠位端の材料の対応する温度よりも相対的に低い液化可能な熱可塑性材料を管状部材5′の近位端において設けることによって、および/または、相対的に小さい有効接触面積をさらなる接触面15および16に与えることによって、変更することができる。この有効接触面積は、たとえば、管状部材の近位端(さらなる接触面16)をテーパ状に、かつ遠位端(接触面9)を平坦に設計することによって、または接触面8と9との間ではなく、さらなる接触面15と16との間にエネルギディレクタを設けることによって縮小される。
【0046】
対向要素5の近位部品5′′は、液化不可能な材料で構成され、かつ遠位部品5′の液化した材料がそこに付着しない場合は、(
図3の右側に示すように)定着処理後に除去することができる。
【0047】
エンドピース6.2に設けられた孔17は、接触面8と9との間で液化する材料の少なくとも一部をエンドピース6.2の遠位側に流れさせることができる。このような貫通孔17を設ける場合、定着処理中に振動要素6を開口部に関して移動させ、かつ対向要素5を骨組織に関して静止した状態に保つことが有利であり得、それによってエンドピース6.2と開口部10の底部との間に空間18が形成され、
図3の中央に示すように、そこに液化した材料の一部が貫通孔17を通って流れ込むことになる。さらなる方法工程において、十分な材料が液化し、少なくともその一部が液体のままである、すなわち開口部10の底部上の組織に浸透することができる場合に振動要素6をこの底部に押付けると、この材料は、上記の底部に嵌入し浸透することができる。
【0048】
特に、開口部10の底部の組織が容易に浸透されるか、または浸透させる必要がない場合には、嵌入工程はもちろん省略し得る。
図2に示す方法において、エンドピース6.2を通る孔17の特徴を採用することも可能であり、この場合、上記の嵌入は(開口部がエンドピース6.2の当初の位置よりも深くならない限り)可能ではないが、液化した材料はそれでも孔を通って流れ、開口部の底部に浸透することができる。
【0049】
図3に示す方法で生成されるインプラント1は管状部材(対向要素5の遠位部品5′)で構成され、その遠位端および近位端の領域と振動要素6の領域とにおいて定着され、エンドピース6.2は液化可能な熱可塑性材料に埋込まれる。
【0050】
図4は、本発明に係る装置および方法のさらなる例示的な実施例を示し、
図1〜
図3に関して述べた実施例と同じ原理に基づき、したがって
図1および
図2に関して挙げたのと同様の用途について有利である。同じ符号は同じ要素を示すのに用いられる。
【0051】
図2および
図3に示したものとは異なり、
図4によれば、組織に設けられた開口部10は実質的に円筒形ではなく円錐形であり、すなわち底部よりも入口の方が広い。さらに、対向要素5は3つの部品、すなわち接触面9を含み液化可能な熱可塑性材料で構成される最遠位部品5′(振動要素の接触面に最も近い)と、第2の保持力が与えられかつ液化不可能な材料で構成される(振動要素の接触面から最も離間した)最近位部品5′′と、液化不可能な材料で構成される中央部品5′′′とを含む。
【0052】
エンドピース6.2の寸法は開口部10の底部に適合され、定着処理中にこの底部から離れる方に振動要素6を移動させ、それによって、液化した材料が開口部10の底部と振動要素のエンドピース6.2との間を流れるための側方通路が開けられる。定着処理の終了時に、振動要素を開口部10の底部に押付け、それにより上記通路を閉鎖することが有利であり、これによりエンドピース6.2と開口部の底部との間の液化材料の嵌入がより効果的となる。
【0053】
図3に関する記載と同じく、
図4によれば、対向要素5の最遠位部品5′と中央部品5′′′との間には、さらなる接触面15および16が存在する。これらの接触面15または16の一方にはエネルギディレクタが設けられ、液化しこれらの接触面の間に残存する熱可塑性材料が再凝固すると部品5′と5′′′との間に押込式嵌合接続を形成するように、アンダーカット形態を有することが有利である。
【0054】
図4に示される方法で生成されるインプラント1は、振動要素6と対向要素5の部品5′および5′′′とによって構成され(部品5′′は除去される)、部品5′は、その遠位側において、開口部10の壁および底部の組織に、かつ近位側において、開口部10の壁の組織に定着され、振動要素のエンドピース6.2は熱可塑性材料に埋込まれる。
【0055】
図1から
図4に示した本発明に係る方法および装置の実施例のさらなる変形例は以下の変更に起因する。
・好適な形状のエンドピース6.2(たとえばたとえばバー)と、対向要素5に適合させた開口部5.1(たとえばバーに適合させたスロット)とを設けることによって、振動要素6が対向要素5から除去可能となる。このような除去には、対向要素5の接触面に接触する能動回転位置から、開口部5.1と整列する除去位置へと振動要素を回転させる。このような場合、インプラント1は対向要素5またはその一部のみによって構成され、外側プロテーゼ部品3は、たとえば、固定が可能となるように、対向要素5の開口部5.1の近位端またはその一部に適合した自身の軸を含み得る。
・定着が実現される組織の開口部10は貫通開口部(トンネル)であり、振動要素6は、振動源7から外す際には、振動源7から離れる方向にトンネルから除去される。
・対向要素5またはその最近位部5′′は、予め張力をかけた(圧縮された)ばね(
図2において破線でSとして示す)によって振動源の筐体11に接続され、ばねは筐体11から離れる方に、かつエンドピース6.2に対して対向要素5を押付け、それにより両方の保持力F1およびF2をかけ、熱可塑性材料の液化が始まるとすぐに、2つの要素5および6の互いに対する移動を引起こす。当該装置を取扱う医師は、この場合、定着が実現される組織に関して当該装置を自由に動かすことができる。すなわち、十分に深い開口部が組織に設けられていれば、医師は定着を実現したい深さを自由に選択することができる。一般的に、振動要素6および対向要素5は、たとえばばね、空気圧もしくは油圧シリンダ、またはスクリュージャックである偏倚要素をいずれかの好適な場所に含む負荷フレームの部材となるように配置される。
・振動要素6は、接触面8の領域において液化可能な熱可塑性材料を含み、対向要素5の遠位端は液化可能な材料を含まない。したがって、開口部10に定着されるのは振動要素6であり、対向要素5は、定着処理後に開口部10から除去し得る。
・両方の接触面8および9は液化可能な熱可塑性材料を含み、2つの熱可塑性材料は、定着処理後に振動要素および対向要素の両方が接合されたままとなるように振動を利用して互いに溶接可能であり、両方がインプラント1の一部を構成し、両方が組織に定着される。対向要素の部品間のさらなる接触面についても同じことが可能である。
・接触面8および9の一方は液化可能な熱可塑性材料を含み、他方は液化した材料が浸透し、再凝固するとそれによって押込式嵌合接続を形成する表面構造(たとえば多孔性、アンダーカット空洞、または突起)を含む。このような表面構造は、液化処理において複数のエネルギディレクタとしても機能し得る。さらなる接触面において同じものを設けてもよい。
・対向要素5は1つの部品のみを含んでもよい。
・接触面8および9は平らではなく、および/または振動要素6および対向要素5の軸に関してある傾斜角で延在する。
・振動要素6のステム6.1は、振動をエンドピース6.2に伝達し、かつ2つの反対の保持力F1およびF2によって与えられる引張荷重に耐えることができるケーブルまたは他の可撓性部材によって置換される。このようなケーブルまたは他の可撓性部材によって、対向要素の非線形軸が可能となる。
・
図1から
図4に示した定着は顎の骨において行なわれ、インプラント1は、外側プロテーゼ部品3について記載したのと同じように、支台または他の上部構造が搭載される歯科用インプラントを構成する。
【0056】
図5は本発明に係る装置および方法のさらなる実施例を示し、歯科用インプラント20(インプラント1)を顎の骨21に定着させるのに用いられ、
図1から
図4に係る実施例と同じ原理に基づく。定着処理は、5つの連続した段階A、B、C、DおよびEに示される。
【0057】
図1から
図4に示したものとは異なり、振動要素6のエンドピース6.2は、液化可能な熱可塑性材料を含み、対向要素5の熱可塑性材料と同じであってもよいし、好ましくは対向要素5の熱可塑性材料に溶接可能である異なる熱可塑性材料であってもよい。さらに、対向要素は、少なくともその遠位面において液化可能な熱可塑性材料を含む近位フランジ5.2を含み、振動要素6は、ステム6.1よりも断面が大きい近位部分を含み、近位部分とステム6.1との間に肩部6.3が設けられ、肩部は、対向要素の近位フランジ5.2に適合される。
【0058】
振動要素のステム6.1は、液化不可能な材料たとえば金属からなり、その遠位端において、対応する窪み、たとえばエンドピース6.2の孔の壁に接続するのに好適なねじ山もしくは他の表面構造を有し、エンドピースはたとえば、全面的に液化可能な熱可塑性材料で構成されるか、または少なくとも窪みの領域において液化可能な熱可塑性材料を含む。
【0059】
装置4は、振動源(図示せず)に取付けられる振動要素6を含み、対向要素5は、たとえば振動要素6のステム6.1を振動源に固定し、対向要素5をステム6.1上に位置決めし、次いで、たとえばステムを振動させてエンドピース6.2の窪みまたは孔に押込み、窪みの領域において熱可塑性材料を液化させ、遠位ステム端のねじ山または他の表面構造に流入させることによりステム6.1の遠位端をエンドピース6.2に取付けることによって予め組立てられる。ステムの断面によっては、対応する窪みまたは孔をエンドピースが含まなくても、上記のようにエンドピースをステムに固定することも可能であり得る。
【0060】
段階Aは、空洞定着が実現される顎の骨21における段差が付いた骨空洞22に関して位置決めされた、予め組立てられた装置4を示す。段差が付いた空洞22の広い入口領域は、対向要素5のフランジ5.2に適合される。装置4は、エンドピース6.2と特にその近位接触面8とが空洞22の狭い底部領域内に位置決めされるように位置決めされる。対向要素5およびエンドピース6.2は、エンドピース6.2および対向要素の遠位部分が空洞内に位置する時に、対向要素5が振動要素6のエンドピース6.2と肩部6.3との間に緩く着座することができ、かつ対向要素5のフランジ5.2が空洞22の段差上に着座することができるように、互いにかつ空洞に適合される。
【0061】
次いで、対応する矢印によって示されるように、振動要素6を振動させ、それ自体既知のやり方でフランジ5.2の遠位面を空洞22の段差に押圧しそこに定着させる(段階B参照)という効果によって、顎の骨22に押圧する。フランジ5.2の遠位面の液化を向上させるため、この面はエネルギディレクタを含み得る。一方、振動要素6の肩部6.3と対向要素5のフランジ5.2の近位面との間の液化を防ぐために、対応する接触面にはエネルギディレクタを設けず、接触面が可能な限り大きく、かつ互いに正確に位置することができるように注意する。
【0062】
段階Bにおいて、本発明に係る定着は、振動要素6を再び振動させ、顎の骨から引張り出すこと(第1の保持力F1)によって実行され、空洞22の段差に定着されているフランジ5.2はこの保持力と反作用する。振動によって、接触面8および9の領域において対向要素5およびエンドピース6.2の熱可塑性材料が液化し、エンドピース6.2が空洞22の開口部に向かって移動することによって、液化した材料が2つの接触面8および9の間から流れ、空洞の壁の海綿状骨組織に浸透する(段階C参照)。
【0063】
段階Cにおいて、エンドピース6.2の液化可能な熱可塑性材料が柔らかくなってエンドピース6.2の窪みまたは孔から遠位ステム端を引出すことができるようになるまで、振動が維持される。この引出しは、液化した材料の変位によってステム6.1の対応する移動を相殺できないように、すなわちエンドピース6.2が従うことができず、したがってステム6.1から分離されるように保持力F.1を増大させることによって行なわれ、次いでステム6.1が除去される(段階D参照)。
【0064】
段階AからCにおいて生成されかつ段階Dに示すような、定着した歯科用インプラント20(インプラント1)は対向要素5と振動要素6のエンドピース6.2とによって構成され、これらは2つの接触面の領域において互いに接続され、空洞22の壁だけでなく、空洞の段差に定着される。液化することができる能力(特に融解温度)に依存して、空洞の壁に定着されるのは、対向要素もしくは振動要素のいずれか、または両方の要素である。歯科用インプラント20は2ヶ所において定着され、側方および曲げ荷重に対して特に安定性が高くなる。
【0065】
さらなる壁の位置における定着が望ましい場合、2つまたは3つの部品からなる対向要素に、
図3および
図4に関して詳細に述べたように装備されるさらなる接触面を設けることによって実現することができる。
【0066】
段階Eにおいて、たとえば歯冠、義歯もしくはブリッジなどの支台23または他の上部構造が歯科用インプラント20上に取付けられる。このような取付けのために、支台23の軸は、たとえば、対向要素5の開口部5.1に接着されるか、またはこの開口部5.1は、支台23の軸の雄ねじに対応する雌ねじを含む。後者の場合、開口部5.1の近位部分が金属またはセラミック材料などの液化不可能な材料を含むならば有利であり得る。
【0067】
明らかに、
図5に示した方法は、顎の骨の海綿状の骨の内部領域に荷重をかけることなく実行することができる。顎の骨に対する唯一の荷重は段階Aにおいて生じ(空洞22の段差における対向要素5の近位部分の定着)、荷重に耐えるのにより適した顎の骨の外側領域、すなわち皮質および/またはより高密度の外側の海綿状の骨に関する。歯科用インプラントを空洞の壁に定着させる処理において保持力F1と反作用するのは、同じ骨領域である。このような骨組織の荷重が望ましくない場合は、フランジ5.2を有さない対向要素を使用することができ、たとえば
図2に示したものと同様のばねを含む負荷フレームにおいて振動要素6と対向要素5とを互いに対して偏倚させることによって、振動要素6と対向要素5とに保持力を与えることができる。
【0068】
図5の段階AからDに示した装置4および定着処理は、他の多くの用途に適用可能であり、組織にまたは組織の開口部の入口の周りに設けられた開口部もしくは孔の段差に対向要素の近位部分を定着させる予備工程が適用可能であってもよいし、適用可能でなくてもよい。このような用途の一例は
図1に示したものであり、
図1に示したもの以外に、インプラントは振動要素のステムを含まず、したがって外側プロテーゼ部品に好適な軸を設ける必要があり、好適に準備された骨の表面に定着される近位フランジを対向要素に備えることが有利である。
【0069】
主として、技術水準にしたがってねじ留めされたインプラントが使用される最も知られた用途において、
図5に示すインプラント1を使用することが大抵可能である。さらなる用途の例は
図6および
図7に示される。
【0070】
図6は、たとえば股関節再建の股臼カップを固定するためのジョイントソケットを表面再生するための内部プロテーゼ25を示す。内部プロテーゼは、
図5に示したインプラント1(段階D)と同様であり、かつ
図5に示したのと同じ方法で生成される複数のインプラントによって、相応して準備された骨組織に固定される。対向要素5は、組織に設けられた開口部の段差によってまたは定着が実現される開口部を包囲する(この場合は機械的に安定した皮質もしくは十分な密度の海綿状の骨ではない)骨表面によって支持されるのではなく、カップ状の内部プロテーゼ全体によって支持されており、したがってはるかに大きな面積で支持されている。対向要素5の近位フランジ5.2は内部プロテーゼに定着されてもよく、この目的のために、インプラントに設けられた開口部の周りに、対応する窪みおよび表面構造を含む。
【0071】
図6の用途における
図5に係る方法の利点は、複数の定着部を生成することができる容易さである。この目的のために、エンドピース6.2および管状の対向要素5の対を各々コンテナに設けることが有利であり、コンテナにおいて、エンドピース5.2は底部に位置決めされ、対向要素5はエンドピース上に維持され、エンドピースと整列される。定着部が1つ生成されると、エンドピース6.2および対向要素5が投入されているコンテナの1つを使用することによって、振動源に取付けられたままの振動要素のステム6.1に、さらなる1対の対向要素5およびエンドピース6.2が装備される。遠位ステム端は、単純に対向要素の開口部を通ってエンドピースの窪みに押込まれる一方、エンドピースをその遠位端に固定するためにステムをしばらく振動させる。ステムをコンテナから除去すると、対向要素5およびエンドピース6がそこに取付けられ、したがって、装置は次の定着処理の準備が整った状態となる。
【0072】
明らかに、凸もしくは実質的に平坦な表面再生プロテーゼを、対応して準備された骨の表面に固定するために、または支持プレートを骨表面に固定するため、たとえば骨折を骨接合処理で安定化させるためにも、
図6に示したのと同じ手順が可能である。同様に、腱または靭帯などの軟組織を骨の表面に取付けることができる。
【0073】
図7は、たとえば股関節内部プロテーゼのステムを接着するためのセメントストッパとして使用される骨髄窩洞の封止を示す。セメントストッパは、
図5に示した方法で(近位フランジを対向要素に定着させる予備工程なしに)生成される。生成される封止要素(インプラント)は、振動要素6のエンドピース6.2と対向要素5の遠位部品5′とで構成される。対向要素5の近位部品5′′は、対向要素部品5′を振動要素6の接触面8に対して保持するためにのみ使用され、定着処理後に除去される。接触面8および9ならびにさらなる接触面15および16は、さらなる接触面15および16の間にも液化が生じるが対向要素5の部品5′および5′′の接合は生じないように設計されることが有利である。
【0074】
同様に、組織を除去することによって生成される骨の空洞(たとえば歯根を除去することによって生成される空洞)において、または骨の空洞を知覚組織に対して限定するために(たとえば脊椎骨の前壁を保護し、脊椎の高さのバーテブロプラスチック(登録商標)復元中のより安全なセメント注入を可能とするために)生成することができる。
【0075】
図8は、本発明に係る装置および方法の実施例の用途を示し、軟組織、たとえば半月板組織28の裂傷27を修復するために
図1から
図7に係る実施例と同じ原理に基づく。装置4は、2つの部品からなる対向要素5を通って伸びる振動要素6を含み、振動源(図示せず)は、小さい切開部29を通って組織28にその遠位端を挿入し、裂傷27を横切って組織の内部に前進することにより、組織29に関して位置決めされる。
【0076】
振動要素のエンドピース6.2および対向部品5′の遠位部分が裂傷の向こう側に位置決めされ、部品5′および5′′の間のさらなる接触面が裂傷の近位側であるが組織の内部に位置決めされると、保持力および振動が与えられ、対向要素と場合によってはエンドピースとの熱可塑性材料を液化させ、組織に流入させる。液化した材料が再凝固した後で、振動要素のステム6.1および対向要素5の近位部品5′′が組織から除去される。
【0077】
自然状態では空洞も細孔も含まない半月板組織28は液化した材料によって局所的に変位し、すなわち液化した材料によって空洞が生成され、組織はインプラントの周囲で閉じ、当初の切開部も閉鎖され、このようにインプラント1が完全に埋込まれる。好ましくは、対向要素5の遠位部品5′と振動要素6のエンドピース6.2とによって構成されるインプラントは、裂傷27が治癒すると消失するような再吸収可能な材料からなる。
【0078】
図9から
図11は、本発明に係る方法および装置のさらなる実施例を示し、当該実施例は
図1から
図7に係る実施例と同じ原理に基づき、2つの組織部分、特に2つの骨部分を固定するのに適用可能であり、生成されたインプラント1は第1の組織部分を通って第2の組織部分に達し、締めねじの機能を呈する。この方法は、本発明に係る定着処理に関する限りにおいて、
図5に係る実施例に対応し、第1の組織部分に設けられた開口部の段差またはその外面に対向要素の近位フランジを定着させる予備工程も含み得る。
図5に係る方法とは異なり、この方法は、振動要素6のエンドピース6.2が第2の組織部分に固定される追加的な予備工程を含む。
【0079】
組織部分に設けられた開口部およびインプラント1は、第1の組織部分の表面から第1の組織部分を通り第2の組織部分に延在し、対向要素5は、対向要素の近位端を開口部の入口領域に保持するための近位フランジを含み、振動要素のエンドピースは、対向要素に接合される前に第2の組織部分に予備的に固定される。それにより、2つの保持力は、振動要素と対向要素とを互いに対して保持するだけでなく2つの組織部分も保持し、2つの組織部分が互いに対して配置されると、振動要素および対向要素の互いに対する移動が停止される。既知の締めねじに与えられるのと同じ大きさの力まで保持力を増大させることによって、2つの組織部分を互いに対して偏倚させることができ、熱可塑性材料の再凝固後に保持力を解放すると、インプラントは、既知の締めねじと同じように引張荷重を受ける。
【0080】
図9は、骨折した管状の骨32の2つの骨片32.1および32.2を、管状の骨32の骨髄窩洞31の壁に定着される骨髄釘30(インプラント1)によって固定するための上記の方法を示す。
【0081】
管状の対向要素5は、第1の骨片3.1の骨壁を通る開口部の対応する段差に定着されてもされなくてもよい近位フランジ5.2を含む。定着されているか否かにかかわらず、フランジ5.2は対向要素5の近位固定具として機能する。振動要素6は、ステム6.1と液化可能な熱可塑性材料のエンドピース6.2とを含み、エンドピース6.2は当初はステム6.1の遠位端に固定されているが、本発明に係る定着処理の終了時には接続が分離される。
【0082】
予備的な方法工程において、好ましくはエンドピース6.2を全面的に液化可能な熱可塑性材料で形成し、かつ振動させると同時に、貫通していない底部またはテーパ状の底部領域をこの予備的な定着のために含む第2の骨片の開口部に圧入することによって、エンドピース6.2がそれ自体既知の方法で第2の骨片に固定される。この予備方法工程において、対向要素5および振動要素6の軸が整列されるが、互いに対して保持されない。この予備方法工程において、接触面8および9の間の距離は、2つの骨片の間の距離よりも小さい状態である。
【0083】
たとえばエンドピース6.2にセルフタッピングねじ山を設けて、第2の骨片32.2の骨髄窩洞壁に捩じ込むなどの他の固定方法によって、エンドピース6.2を第2の骨片32.2に固定することももちろん可能である。
【0084】
エンドピース6.2が第2の骨片32.2に固定されるとすぐに、
図5に関して詳細に述べたように主要な定着工程が行なわれる。フランジ5.2が第1の骨片に定着されている、または第2の保持力によって第1の骨片に対して保持されているために、第1の骨片32.1に関して静止した状態である対向要素5に対してエンドピース6.2が移動することによって、保持力の作用によるさらなる移動を行うことができないように2つの骨片が互いに対して偏倚されるまで、第2の骨片32.2が第1の骨片32.1に対して引張られる。次いで振動が停止され、熱可塑性材料を再凝固させ、対向要素5とエンドピース6.2との間に安定した接続を形成する。次いで保持力が解放される。第1の骨片32.1の外面上に着座しているフランジ5.2と、第2の骨片32.2に固定されている遠位端との間において、得られたインプラント1上に引張荷重が存在する。この張力は、2つの骨片を互いに対して偏倚させる。
図9の右側は、定着処理後、かつ振動要素5のステム6.1の除去後の骨髄釘30(インプラント1)を示す。
【0085】
図9に示す方法において、振動要素6のステム6.1は2つの機能を有する。エンドピース6.2を骨髄窩洞の骨表面に定着させる予備工程において、ステムはエンドピース6.2をこの骨表面に押圧することができる必要がある(ステムに対する圧縮荷重)。エンドピース6.2と対向要素5との間の液化が実現される次の工程において、ステム6.1は、エンドピース6.2を第2の骨片32.2とともに第1の骨片32.1に対して引張ることができる必要がある(ステムに対する引張荷重)。対向要素5の近位端と遠位端との間に実質的に角度が存在しない場合は、上記の実施例のように、ステム6.2は剛性要素であることが好ましい。
図9に示すようにこのような角度が存在する場合は、定着に必要とされるとおり、押圧力をエンドピースに与えることができるように、予備工程については異なるステムを使用し、さらにこのステムをステム6.1について示したのと異なるやり方で導入することが必要となり得る。本発明に係る定着処理に使用されるステム6.1は、可撓性のケーブルとして実現することができ、したがって上記の角度に問題なく対応することができる。
【0086】
図10は、骨折した管状の骨を固定するために上で詳細に述べたのと実質的に同じように実現される骨折した大腿骨の頸部の安定化を極めて模式的に示す。対向要素5の近位端は骨髄釘によって支持され、骨髄釘は、
図9に関して詳細に述べたように骨髄窩洞に固定させてもよいし、いずれかの他の既知の方法によって大腿骨の骨髄窩洞に定着させてもよい。
図10は、振動要素のステム6.1を除去する前に骨折した大腿骨の頸部を固定するインプラント1を示す。
【0087】
図10に示すように対向要素5の近位端を骨髄釘30に支持する代わりに、大腿骨の外面上に位置決めされる小転子プレートに、または直接大腿骨の外面上に、対向要素を支持することも可能である。
【0088】
図9および
図10に示した装置および方法のさらなる用途は、あらゆる種類の骨折整復および骨折固定用途であり、技術水準によれば、ラグねじまたはカニューレ挿入ねじが使用される。本発明に係る方法によって生成されるインプラントは、単独の装置を構成してもよいし、プレート、釘または外部の固定器と協働してもよい。再接合される骨片の少なくとも一部は自然な骨組織ではなく、移植された骨組織または骨置換材料であることも可能である。このようなさらなる用途は、たとえば脊髄外科手術における椎弓根スクリュー、鎖骨片の整復、骨折した遠位橈骨、尺骨もしくは膝蓋骨の修復、またはたとえば心臓手術のために胸骨に形成されるような骨切断の閉鎖である。
【0089】
図11は、
図10に係る骨折した大腿骨の頸部を固定するのに使用されるものと同様のインプラントを有する椎間関節の融合を極めて模式的に示す。同様の融合処理は、手または足の小関節に適用可能である。
【0090】
図9から
図11に示す方法および装置のさらなる用途は、たとえば靭帯、腱または他の軟組織を骨の表面に関して固定することであり、インプラントに蓄積することができる引張荷重によって、靭帯、腱または他の軟組織が骨表面に対して安定して保持される。
【0091】
図12および
図13は、本発明のさらなる例示的な実施例を利用した、潰れた椎体35の再建を示す。明らかに、本願で生成されるインプラント1は椎体35に定着されるが、その主な機能は、潰れた椎体35の残りの組織を強化し、インプラント1を通じて、かつ特に液体の状態において当該装置の2つの要素間から組織に流入する熱可塑性材料を通じて、その高さを増大させることにある。
図12および
図13に示す方法は、
図5に示した方法と原理は対応する(対向要素を椎体の外面の領域に予備的に定着させない)が、本発明に係る複数の定着工程を可能とする。
図12は複数工程定着処理後のインプラント1を示し、
図13は定着処理のために椎体35に関して位置決めされた対応する装置4を拡大して示す。装置4は潰れた椎体35の開口部に導入され、このような開口部は椎体に設けられてもよいし、または予備的な開口部のみが設けられ、次いで装置の遠位端が椎体にさらに押込まれる。
【0092】
装置4は、複数のエンドピース6.2が固定されるステム6.1を有する振動要素6を含み、エンドピース6.2は互いに離間され、エンドピースの間には管状の対向要素5がステム6.1上に緩く着座し、エンドピース6.2および対向要素5は両方とも実質的に、液化可能な熱可塑性材料からなる。最近位対向要素は、たとえば
図2に関して詳細に述べたように設計された2つの部品5′および5′′を含む(部品5′および5′′の間にはさらなる液化は生じない)。
図12および
図13は、3つのエンドピースおよび3つの対向要素を示す。しかし、3つのエンドピースおよび対向要素より多くても少なくてもよく、発明の原理が変わることはない。
【0093】
予め組立てられた装置4(
図13参照)は、最遠位エンドピースが開口部の底部に位置決めされたときに最近位エンドピースが開口部内に位置するように、椎体35の開口部に適合される。当該装置は、第2の保持力を最近位対向要素の近位部品5′′に与えることによってこのように開口部に位置決めされかつ保持され、この部品5′′は、椎体35の外面によって、または椎体に関して静止した位置を有するいずれかの他の好適な支持部によって支持される。第1の保持力F1を与えると、最近位エンドピース6.2が最近位対向要素5に対して保持され、次いで移動される。エンドピースの熱可塑性材料の液化または少なくとも可塑化が、ステム6.1が固定され、第1の保持力が一時的に増大されるエンドピースの領域に達すると、ステム6.1は最近位エンドピースに関して移動し、それによって次のエンドピースが次の対向要素に対して保持され、定着処理が繰返される。第2の対向要素は最近位エンドピースに溶接されてもよく、液化した材料は接触面の間から流れてもよいが、優勢ではない(
図12参照)。最終的に最遠位エンドピースがステム6.1から分離され、ステムを除去することができるようになるまで、すべてのさらなるエンドピース6.2および対向要素5について同じことが当てはまる。
【0094】
図1から
図13のすべてにおいて、振動要素は1本のステム6.1を含み、この1本のステムは管状の対向要素5の中央開口部5.1を通って延在するものとされ、管状の対向要素5および/または開口部5.1の断面は円形または非円形である。ステムは、まず第一に、対向要素5よりもさらに近位に位置決めされる振動源に振動要素6の遠位端を接続させるように機能し、第2に、対向要素を振動要素と整列した状態に保つようにも機能する。この1本のステム6.1および1つの中央開口部5.1は、もちろん本発明に係る方法の条件ではない。
【0095】
振動要素は、
図14の断面に示すように、対向要素5の中心以外の場所を通って延在する1本または複数のステム6.1も含み得る。さらに、複数のステムは対向要素5を通り越して延在し得る。対向要素はこの場合はまったく管状ではなく、
図15の断面図に示すように、ステムに適合した軸方向の溝を含み得る。
図14および
図15に示す振動要素および対向要素の実施例は、1つのエンドピースのみ、またはステムごとに1つのエンドピースを含み得る。さらに、ステム6.1は、複数の対向要素が位置決めされる軸方向の溝を含み得る。このような実施例は
図16の断面図に示され、ステムは二重のT字梁であり、それによって曲げに対して極めて抵抗が強く、ステムの2つのT字の間に非管状の対向要素が位置決めされ、たとえばわずかなアンダーカット(図示せず)によってそこに保持され、留められる。
【0096】
図17から
図22は、本発明に係る方法および装置のさらなる例示的な実施例を示し、これらの実施例については、振動要素の接触面は振動要素の近位端から離れる方に向き、対向要素は振動要素の遠位端の向こう側に位置決めされる。装置の近位側から2つの保持力を与えることができるようにするために、対向要素は、振動要素の近位端に向かう方向に、少なくとも振動要素の遠位部分を通ってまたは通り越して伸びる部品(力伝達部材)を含む。液化可能な熱可塑性材料は、好ましくは対向要素の接触面に配置され、振動要素はたとえば金属からなり、たとえば振動源に直接または間接的に接続される超音波ホルンの形態を有する。インプラントは、この特定の場合には、対向要素のみによって構成される。
【0097】
図17および
図18は、本発明に係る方法の上記の実施例を利用して組織に定着される縫合糸固定具を示し、液化可能な熱可塑性材料を含む固定具本体40と縫合糸41(または他の力伝達手段)とが対向要素5を構成する。
図17は当該方法を実行するための装置全体を示し、当該装置は、対向要素5(固定具本体40および縫合糸41)と、振動しない筐体11内に位置する振動源7に接続された振動要素6とを含む。
図18は、軸方向断面および水平断面における固定具本体40の好ましい実施例と、固定具本体40の接触面9の上面図とを示す。
【0098】
図17から分かるように、縫合糸41の中央部分は、たとえば固定具本体40の遠位領域の開口部42を通って延在させることによって、摺動可能にまたは非摺動可能に固定具本体40に保持される。縫合糸の端部は筐体11に取付けられ、閉じた負荷フレームを構成する。長手方向に伸縮性のある縫合糸41に張力がかけられ、それによって保持力F1およびF2の両方を加えることができる、すなわち振動要素6と対向要素5とを互いに対して保持し、対向要素5がその接触面9の領域において含む熱可塑性材料が液化すると、2つの要素が互いに対して移動させることができる。
【0099】
縫合糸の代わりに、たとえばリボンなどの他の弾性を有する力伝達部材を使用することができる。弾性縫合糸またはリボンの代わりに、実質的に非伸縮性のワイヤまたはケーブルが
図17に示す固定具本体を利用して固定される場合には、振動要素と対向要素とを互いに対して偏倚させ、かつ偏倚を維持しつつそれらの移動を可能とするように、ワイヤまたはケーブルを取付けるための弾性手段を筐体11に装備することが必要となる。
【0100】
図17に係る装置を利用して縫合糸41を固定するために、組織に開口部が設けられ、振動要素6の接触面8に対して保持される固定具本体の接触面9が開口部内に位置し、かつ接触面の外縁が組織によって包囲されるような深さにまで固定具本体40が開口部に導入される。次いで振動が開始され、接触面9の領域に設けられている液化可能な熱可塑性材料を液化させ、振動要素6および対向要素5の互いに対する移動によって接触面8および9の間から流れさせ、これらの接触面の外縁を包囲する組織に浸透させる。何の対策も取られていない場合には、縫合糸41も組織に関して固定されることになる。
【0101】
図18は、左側の軸方向断面および右側の3つの水平断面において、
図17に係る装置の固定具本体40および振動要素6の遠位端の好ましい実施例と、接触面9の上面図とを示す。固定具本体40は、遠位端がテーパ状である実質的に円筒状の形態を有し、近位部分および遠位部分を含む。近位部分は接触面9を担持し、液化される熱可塑性材料(たとえば、PLLAもしくはPLDLA70/30またはPLGA(登録商標)85/15である分解可能なポリマー)からなり、遠位部分は縫合糸の取付けのために装備され、その取付けのために、たとえば縫合糸がそこを通って延在する貫通孔42を含む。縫合糸および固定具本体の遠位部分(さらなる接触面)の間の望まない液化を防ぐために、縫合糸も固定具本体の遠位部分も液化可能な材料を含まない。縫合糸は、たとえばPETまたは延伸されたPE(たとえばDyneema(登録商標)TM)からなる。遠位部分は、たとえば、熱可塑性材料であるがPLLAと組合されると液化不可能であるPEEK(登録商標)からなる。固定具本体40の遠位部分を、たとえばチタンなどの金属、またはたとえばアルミナ、ジルコニアもしくはリン酸カルシウムなどのセラミック材料で形成することももちろん可能である。たとえば鋳込みによって縫合糸が固定具本体に堅固に固定されている場合は、固定具本体の遠位部分が近位部分と同じ材料で形成されていても、縫合糸と固定具本体との間の接続部に液化が生じることはない。固定具本体40の近位部分および遠位部分は、たとえば互いに接着されるか、プレス嵌めされるか、または捩じ込まれることによって、互いに堅固に接続される。
【0102】
固定具本体40の接触面9(または振動要素6の接触面8)に、
図18(右下)に示すように好ましくは突起リブ9.1の形態を有するエネルギディレクタを装備することが好ましい。リブは、それら自身の間に径方向経路を構成する接触面から突出し、当該経路によって、液化した材料が接触面の外縁9.2の方にかつ向こう側に径方向に流れることが容易となる。
【0103】
振動要素6および対向要素5を容易に整列させた状態で保つために、固定具本体の近位部分は、たとえば軸方向のスロット44または孔を含み、そこに振動要素の対応する突起6.4が嵌合する。少なくとも定着前に縫合糸が容易に摺動可能となるように、スロット44は好ましくは貫通孔42と整列され、遠位部分は、貫通孔42から近位部のスロット44に延在する軸方向の溝43を含む。固定具本体40を、最も多様な組織(下記参照)に定着するように適合させるのに好適とするために、固定具本体は、特に遠位部分においてそれ自体既知の返し部45をさらに含み得る。返し部45の機能については以下で説明する。
【0104】
定着を生じさせる組織に設けられた開口部における縫合糸本体40および縫合糸41の定着は、上記と実質的に同じように、すなわち固定具本体40が接触面9において含む熱可塑性材料の液化と、液化した材料の接触面8および9の間からの変位と、液化した材料による開口部の壁の組織への浸透とによってもたらされる。
【0105】
機械的特性が最も多様な組織に、すなわち機械的強度が減少した組織だけではなく、液化した材料が浸透する細孔または空洞がほとんどない組織に、当該方法を採用することなく、
図18に係る固定具本体40を含む縫合糸固定具を定着させることができる。これは、機械的特性および構造的特性が局所的に(たとえば組織表面から離れるにつれて)だけではなく、患者ごとに変動する組織への定着に特に有利である。
【0106】
固定具本体を包囲する組織の機械的安定性が極めて低い場合、主に接触面8および9の間で液化する熱可塑性材料によって、定着が実現されることになる。液化した材料は容易に組織に浸透し、それによって押込式嵌合接続を形成することになる。同時に、液化した材料は、縫合糸が組織に関して固定されるように、縫合糸の周りを流れることになる。固定具本体全体の返し部は、固定具本体を開口部に保持することができなくなり、組織も(液化可能材料を含む)近位部分の返し部も、側面の液化および対応する定着をもたらすエネルギディレクタとして機能することができなくなる。
【0107】
固定具本体を包囲する組織が十分な強度を有し、近位部分の返し部を変形させることができる場合には、近位本体部分の側面において、多少の液化と対応する定着とが存在し、遠位本体部分の返し部によって定着がさらに強化され得るが、接触面の間の液化および対応する定着が優勢となる。
【0108】
固定具本体を包囲する組織が非常に高密度で固い(たとえば皮質)ために、接触面の間で液化する材料が全くまたはほとんど組織に浸透せず、所望の押込式嵌合接続を形成することができない場合は、返し部の機械的作用によって、また、開口部内に進むにつれて組織の密度が顕著でなくなる場合は、側面の液化による多少の側面定着によって、インプラントが開口部に保持されることになる。縫合糸は、接触面の間で液化する材料と、固定具本体の側面において液化する材料とによって固定されることになる。これは、空洞を設ける必要なしに、極めて高密度な組織においても定着が可能であることを意味する。
【0109】
上記より、
図17および
図18に示す縫合糸固定具が、低密度でしたがって機械的に弱い組織において最適な定着をもたらす本発明に係る定着方法だけでなく、極めて高密度でしたがって極めて機械的に強いがほとんど多孔性ではない組織において最適な結果をもたらす返し部による純粋に機械的な定着も利用することができることから、組織の機械的特性とは無関係に、かつ組織に設けられた単純な孔によって、極めて良好な定着性が得られる。
【0110】
返し部45の代わりに、固定具本体は、たとえばねじ山などの他の純粋に機械的な保持手段を含んでもよく、それを利用して最初に組織に捩じ込まれることになる。ねじ山または環状構造の部品などの他の保持手段も適用することができる。機械的特性がこのような大きな範囲で変動しない組織において縫合糸固定具が使用される場合は、返し部または他の保持手段をすべて省略してもよい。さらに、2本以上の縫合糸が固定具本体40に取付けられていてもよく、当該2本以上の縫合糸は、固定具本体の遠位部分の同じ貫通孔42を通って、または異なる孔(たとえば互いに垂直で、かつ接触面9から異なる距離にある2つの孔)を通って延在してもよい。さらに、縫合糸の端部を振動源7の筐体11に取付けて、閉じた負荷フレームを構成する必要はない。その代わり、たとえば組織に関して固定位置を有するいずれかの他の安定した要素に取付けることができる。
【0111】
図17および
図18に関して記載した縫合糸固定具は、組織に関して縫合糸41を固定する以外の目的で組織に関して定着させることができる。たとえば、さらなる要素を組織に関して固定するように機能することもでき、さらなる要素は、次いで固定具本体40の近位端に取付けられる。このような場合、縫合糸の唯一の機能は力伝達機能である。したがって、縫合糸の端部は、定着処理の完了後に組織表面上で切除することができる。
【0112】
縫合糸41を振動源7の筐体11に真っ直ぐに延在させないことも可能である。その代わり、外側の組織表面上に位置決めされるプレートまたはリングなどの支持要素に取付けることができる。このような支持要素は、縫合糸の端部から分離させることによって定着処理の完了後に除去してもよいし、所定の位置に残存し、たとえば支持プレートまたは他の内部プロテーゼ部品を構成してもよい。
【0113】
図19から
図22は、本発明に係る方法および装置のさらなる例示的な実施例を示し、これらの実施例は、
図17および
図18に係る実施例と同じ原理に基づく。これらの実施例のうち特定のものに組合される特定の特徴は、異なるやり方で組合せることもでき、そのような代替的な特徴の組合せは、本発明のさらなる例示的な実施例を構成することになる。
【0114】
図19に係る実施例において、固定具本体40は2つの部品40′および40′′と、これらの2つの部品の間に1対のさらなる接触面15および16とを含み、さらなる接触面は、両方とも液化可能な熱可塑性材料を含む。力伝達手段41(たとえば縫合糸、リボン、ワイヤ、ケーブル)が当該部品のうちでより近位部品40′′(振動要素の接触面から遠い方)に取付けられ、この目的のために、たとえば貫通孔42を含む。すべての関連する接触面9、15および16上の液化可能な熱可塑性材料が同じ材料、または融解温度もしくはガラス遷移温度がそれぞれ同様の異なる材料であって、接触面8と9とのの間およびさらなる接触面15と16との間において液化が望まれる場合(2点定着)、接触面15または16の一方に有効なエネルギディレクタ46を装備し、接触面8および9を平坦に設計することが必要となる。このような対策を取らなければ、液化は主に接触面8および9の間で生じることになる。
【0115】
明らかに、縫合糸41および孔42の内面は、さらなる1対の接触面を構成する。しかし、振動エネルギが接触面8および9ならびにさらなる接触面15および16を介して伝達されることはほとんどないため、そこでは液化はほとんど生じない。
【0116】
図19に係る2つの部品からなる対向要素5ならびにさらなる接触面15および16の利点は、組織に設けられた開口部内での定着場所をより自由に選択することが可能となる点である。
【0117】
固定具本体40の近位部品40′が液化不可能な材料からなる場合、8および9で示す接触面においては液化は生じない。これは、固定具本体の近位部品40′が機能については振動要素6(多数部品からなる振動要素)に属し、振動源から、液化が生じるさらなる接触面に振動を伝達するように機能することを意味する。接触面8において得られる長手方向の発振のうち、(ハンマー効果によって固定具本体に方向付けられた)半分のみを固定具本体の近位部品40′に伝達することが可能となる。
【0118】
図19に示すさらなる接触面15および16は、要素の軸に垂直に延在せず、軸に対して傾斜しており、接触面のうち一方は凹形であり、他方は凸形である。このような形態の接触面によって、自動調心および保持機能が促進される。
【0119】
図20は本発明に係るさらなる装置を示し、当該装置は2つの部品からなる固定具本体40と縫合糸41(または他の力伝達手段)とを有する対向要素5を含む。振動要素6と接する本体部品40′はO型リングの形態を有し、より遠位に位置決めされる本体部品40′′は、縫合糸41が取付けられているプレートと、O型リングの開口部に適合した中央突起とを含む。振動要素6は、O型リング形状の本体部品40′にも適合した環状の断面を有する。遠位本体部品40′′上の突起は、本体40の2つの部品と振動要素6とを整列させるように機能する。遠位本体部品40′′は液化可能な熱可塑性材料を含まず、液化は主に振動要素6とO型リングとの間で生じ、液化するのはO型リングの材料である。
【0120】
図21は、
図20に係る実施例と同様の本発明に係るさらなる実施例を示すが、縫合糸41(または他の力伝達部材)は遠位本体部品40′′の中央突起に取付けられ、振動要素6の遠位端を通って伸び、外に出て出口開口部6.5に保持される。
【0121】
さらに、
図21に係る実施例は、3つの本体部品すなわち、振動要素に隣接し接触面9を含む部品40′と、接触面9から最も離れた部品40′′と、中間部品40′′′とを含む。40′は管状であり、かつ液化可能な熱可塑性材料からなり、40′′は液化不可能な材料からなり、かつ縫合糸41が取付けられており、40′′′はO型リングの形状を有し、かつ液化可能な熱可塑性材料からなる。
【0122】
すべての接触面およびさらなる接触面が材料および接触面積について実質的に同じである場合、液化は主に振動要素6と本体部品40′との間で生じ、次いで部品40′および40′′′のさらなる接触面の間で液化が生じ、次いで部品40′′′および40′′のさらなる接触面の間で液化が生じる。これが望ましくない場合は、上述のように接触面は互いに異なっている必要がある。
【0123】
図22は、本発明に係る方法および装置のさらなる例示的な実施例を示し、対向要素5は、振動要素6の遠位端の向こう側に位置決めされる固定具本体40と、少なくとも振動要素6の遠位端を通り越して伸びる可撓性の力伝達部材41とを含む。可撓性の力伝達部材はたとえば液化不可能な材料からなり、たとえば織り、編組、結び、または編みによる金属もしくはPEEK(登録商標)フィラメントからなる可撓性スリーブである。このスリーブ41は、力伝達機能に加えて、組織に設けられた開口部内の所定の位置に本体40を保持し、かつ本体と振動要素とを整列させるように機能する。スリーブ41は、好ましくは、外側の組織表面に配置される環状またはプレート形状の支持要素48に取付けられ、組織に設けられた開口部がそこから延在し、組織の開口部に適合した貫通開口部を含む。支持要素48は、対向要素5に作用する保持力を、皮質骨組織の場合のように、定着が実現される下地組織(海綿状骨組織)よりも高い機械的強度を有し得る組織表面の比較的大きな面積に結合させることが可能である。支持要素48は、骨接合術または表面再生プロテーゼにおいて使用される支持プレートであってもよく、複数の貫通開口部と、そこに取付けられたまたは取付け可能な複数のスリーブ41とを含んでもよい。
【0124】
図17に示すように、可撓性のスリーブによって、開口部を極めて簡単なやり方で対向要素に関して個別に配向することが可能となる。
【0125】
明らかに、さらなる接触面15および16が固定具本体40の遠位端とスリーブ41の閉じた遠位端との間に存在し、そこでも接触面8および9ならびにさらなる接触面15および16の関係に依存して液化が生じ得る(2点定着)。