特許第5725663号(P5725663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725663
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】酵素阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20150507BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20150507BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20150507BHJP
   A61K 31/7016 20060101ALI20150507BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150507BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150507BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150507BHJP
   A61K 31/70 20060101ALI20150507BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20150507BHJP
   C12N 9/99 20060101ALI20150507BHJP
   A23L 1/275 20060101ALN20150507BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61Q19/00
   A61Q19/08
   A61K31/7016
   A61P43/00 111
   A61P17/00
   A61P29/00
   A61K31/70
   A61K31/702
   C12N9/99
   !A23L1/275
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-289832(P2011-289832)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-139398(P2013-139398A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2013年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】東山 裕子
(72)【発明者】
【氏名】清水 良美
(72)【発明者】
【氏名】藤田 光一
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−538088(JP,A)
【文献】 特開2010−248107(JP,A)
【文献】 特開昭61−225109(JP,A)
【文献】 特表2009−526530(JP,A)
【文献】 特開平07−268002(JP,A)
【文献】 特開2002−293740(JP,A)
【文献】 特開平07−041459(JP,A)
【文献】 特開2001−181167(JP,A)
【文献】 FRAGRANCE JOURNAL,1994年 8月,p.81-86
【文献】 FRAGRANCE JOURNAL,2002年 6月,p.119-123
【文献】 市販カラメル色素中の2-セチル-4-テトラヒドロキシブチルイミダゾールの分析,日本食品化学学会雑誌,1998年,Vol.5, No.1,p.47-50
【文献】 瀧本寛,カラメルとその特性,季刊香料,1995年 6月30日,Vol.186,p.107-114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
A61K 31/70− 31/739
A23L 1/275
CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラメルを有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項2】
カラメルを有効成分とするエラスターゼ阻害剤。
【請求項3】
カラメルが、カラメルI、カラメルII及びカラメルIVから選ばれる1種又は2種以上である請求項記載のヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項4】
カラメルが、カラメルII及びカラメルIVから選ばれる1種又は2種である請求項記載のエラスターゼ阻害剤。
【請求項5】
カラメルが、カラメルIVである請求項1〜4のいずれか1項に記載の阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素阻害剤、特にヒアルロニダーゼ阻害剤及びエラスターゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、哺乳動物の結合組織に広く存在するマトリックス成分の一つであり、ヒトの皮膚、関節液、眼の硝子体、へその緒などに分布している。ヒアルロン酸の機能は、細胞の保持、皮膚の保水、関節の潤滑等が挙げられる。生体内のヒアルロン酸は比較的短期間で代謝回転されており、通常、ヒアルロン酸合成酵素と分解酵素の活性の平衡が保たれている。しかし、一般に、老化に伴いこの平衡が失われ、ヒアルロン酸の合成に対してヒアルロン酸分解酵素であるヒアルロニダーゼ活性が亢進され、組織の柔軟性や湿潤性も失われ、皮膚のシワやタルミ等の老人性変化を引き起こす。したがって、ヒアルロニダーゼ阻害剤は有効な皮膚老化防止剤として利用することができる。
【0003】
また、ヒアルロニダーゼは、それ自体起炎剤としての作用を有し、抗炎症剤や抗アレルギー剤によりその酵素活性が阻害される。ヒアルロニダーゼ阻害活性については、多くの報告が有り、例えば、茶抽出物試料を用いて抗アレルギー活性のひとつの指標とされているヒアルロニダーゼ阻害活性試験を行った結果についての報告(非特許文献1参照)、あるいは、食用野草27種、シソ科、キク科などの野草9種その他5種の計41種についてヒアルロニダーゼ阻害活性を試験した報告(非特許文献2参照)がある。
また、例えば、タラノキおよびビンロウジからなる群より選ばれる少なくとも1つの植物あるいは生薬の抽出物を有効成分とするヒアルロニダーゼ阻害剤(特許文献1参照)が報告されている。
【0004】
エラスチンは、血管壁をはじめ、靭帯、肺、皮膚、軟骨などの弾性線維の主成分を形成する、線維状タンパク質である。エラスチンは、生体内ではコラーゲンに次いで多量に存在するタンパク質であり、組織の弾性を主たる機能としている。通常、エラスチンは、新陳代謝において合成、分解の平衡が保たれることで恒常的に保持されている。しかし、エラスターゼが紫外線や加齢によって活性化されることにより、皮膚に存在するエラスチンを分解し、皮膚のシワやタルミ等の老人性変化を引き起こす。したがって、エラスターゼ阻害剤は有効な皮膚老化防止剤として利用することができる。エラスターゼ阻害活性については、多くの報告が有り、例えば、シモツケソウ、パッションフラワー、ビロードモウズイカ、アキノキリンソウ、ヤドリギ、ホホバ葉よりなる群の1種又は2種以上の溶媒抽出物を有効成分とするエラスターゼ阻害剤及び抗老化化粧料(特許文献2参照)や、シラカバ、ケイヒ、フユボダイジュ、ナツボダイジュ、西洋シナノキ、シナノキ、ビワおよびハマメリスよりなる群から選ばれた植物のエラスターゼ阻害物質含有部位より抽出されたエラスターゼ阻害物質を有効成分として含有することを特徴とするエラスターゼ阻害剤(特許文献3参照)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−329544号公報
【特許文献2】特開2003−48812号公報
【特許文献3】特開平11−171758号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】前田有美恵他、食品衛生学雑誌、31、(3)233−237(1990)
【非特許文献2】増田勝巳他、仁愛女子短期大学紀要、37、47−51(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のヒアルロニダーゼ阻害剤やエラスターゼ阻害剤は、安全性が高いものは酵素阻害作用が弱く、一方、酵素阻害作用の強いものは安全性に問題がある等の課題があり、安全でかつ十分な酵素阻害作用を有する成分は極めて少ないのが現状である。
従って、本発明の課題は、安全でかつ強い酵素阻害作用を有するヒアルロニダーゼ阻害剤及びエラスターゼ阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、安全性の高い成分に着目して種々の酵素に対する活性化又は阻害作用を検討してきたところ、着色剤として広く用いられているカラメルが、強いヒアルロニダーゼ阻害活性及びエラスターゼ阻害活性を有し、皮膚老化、抗炎症、抗老化等の分野の化粧品、医薬品、医薬部外品、食品等に有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1]カラメルを有効成分とする酵素阻害剤。
[2]ヒアルロニダーゼ阻害剤である[1]記載の酵素阻害剤。
[3]エステラーゼ阻害剤である[1]記載の酵素阻害剤。
[4]カラメルが、カラメルI、カラメルII及びカラメルIVから選ばれる1種又は2種以上である[2]記載の酵素阻害剤。
[5]カラメルが、カラメルII及びカラメルIVから選ばれる1種又は2種である[3]記載の酵素阻害剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明酵素阻害剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤及びエラスターゼ阻害剤は優れた酵素阻害活性を有し、安全性及び安定性に優れ、抗老化、皮膚老化防止、抗炎症等の目的の飲料、食品、化粧品、医薬部外品、医薬品等に効果的に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
カラメルは広義には、食用炭水化物を熱処理して得られたものである。カラメルは狭義には、でん粉加水分解物、糖蜜または糖類の食用炭水化物を熱処理して得られたものであり、食品や飲料を褐色に着色するために広く用いられている着色料であり、医薬品や化粧品等にも用いられている。
カラメルは、暗褐色から黒色の液体または粉末で、特有の風味を有し、水に溶けやすく、油脂や有機溶媒には溶けない。カラメル水溶液は、淡褐色から黒褐色を示し、熱や光に対して安定である。
カラメルについては、変異原性試験、反復投与毒性試験、発がん性試験等多くの試験が行なわれ、安全性に問題がないことが報告されており、すでに安全性が確認されている。
【0012】
本発明に用いられるカラメルは、着色料としてのカラメルである。
着色料としてのカラメルは、食品添加物公定書ではその製法に応じて、カラメルI(CaramelI(plain))、カラメルII(CaramelII(caustic sulfite process))、カラメルIII(CaramelIII(ammonia process))及びカラメルIV(CaramelIV(sulfite ammonia process))に分類される。食品添加物公定書(第8版食品添加物公定書)における、カラメルI、カラメルII、カラメルIII、カラメルIVの定義は以下の通りである。
【0013】
[カラメルI]
本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物を、熱処理して得られたもの、又は酸若しくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物及びアンモニウム化合物を使用していないものである。
【0014】
[カラメルII]
本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、亜硫酸化合物を加えて、又はこれに酸若しくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、 アンモニウム化合物を使用していないものである。
【0015】
[カラメルIII]
本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、アンモニウム化合物を加えて、又はこれに酸若しくはアルカリを加えて熱処理して得られたもので、亜硫酸化合物を使用していないものである。
【0016】
[カラメルIV]
本品は、でん粉加水分解物、糖蜜又は糖類の食用炭水化物に、亜硫酸化合物及びアンモニウム化合物を加えて、又はこれに酸若しくはアルカリを加えて熱処理して得られたものである。
【0017】
また、カラメルI、カラメルII、カラメルIII、カラメルIVのそれぞれについて、カラメルを分類するための確認試験が、具体的に以下のように規定されている。
【0018】
[カラメルI]
確認試験(1)
本品の水溶液(1→100)は、淡褐〜黒褐色を呈する。
確認試験(2)
あらかじめ測定する吸光度が約0.5になるように本品を量り、0.025mol/L塩酸を加えて正確に100mlとし、必要があれば遠心分離し、その上澄液を用い、A液とする。A液20mlを量り、弱塩基性ジエチルアミノエチル−セルロース陰イオン交換体0.20g(0.7meq/g交換容量、セルロース交換容量に比例して使用量を調整する)を加えてよく振り混ぜた後、遠心分離し、上澄液をとり、B液とする。A液及びB液を0.025mol/L塩酸を対照とし、液層の長さ1cmで波長560nmにおける吸光度AA及びABを測定するとき、(AA−AB)/AAは0.75以下を示す。
確認試験(3)
本品0.20〜0.30gを量り、0.025mol/L塩酸を加えて正確に100mlとし、必要があれば遠心分離し、その上澄液を用い、C液とする。C液40mlを量り、強酸性リン酸化セルロース陽イオン交換体2.0g(0.85meq/g交換容量、セルロース交換容量に比例して使用量を調整する)を加えてよく振り混ぜた後、遠心分離し、上澄液をとり、D液とする。C液及びD液を0.025mol/L塩酸を対照とし、液層の長さ1cmで波長560nmにおける吸光度AC及びADを測定するとき、(AC−AD)/ACは0.50以下を示す。
【0019】
[カラメルII]
確認試験(1)
本品の水溶液(1→100)は、淡褐〜黒褐色を呈する。
確認試験(2)
「カラメルI」の確認試験(2)を準用する。ただし、その値は0.50以上である。
確認試験(3)
本品0.10gを量り、水を加えて正確に100mlとし、必要があれば遠心分離し、その上澄液を用い、A液とする。A液5mlを量り、水を加えて正確に100mlとし、B液とする。A液を水を対照とし、液層の長さ1cmで波長560nmにおける吸光度AAを、又B液を水を対照とし、液層の長さ1cmで波長280nmにおける吸光度ABをそれぞれ測定するとき、AB×20/AAは50以上を示す。
【0020】
[カラメルIII]
確認試験(1)
本品の水溶液(1→100)は、淡褐〜黒褐色を呈する。
確認試験(2)
「カラメルI」の確認試験(2)を準用する。ただし、その値は0.50以下である。
確認試験(3)
「カラメルI」の確認試験(3)を準用する。ただし、その値は0.50以上である。
【0021】
[カラメルIV]
確認試験(1)
本品の水溶液(1→100)は、淡褐〜黒褐色を呈する。
確認試験(2)
「カラメルI」の確認試験(2)を準用する。ただし、その値は0.50以上である。
確認試験(3)
「カラメルII」の確認試験(3)を準用する。ただし、その値は50以下である。
【0022】
本発明において、酵素がヒアルロニダーゼであるときの酵素阻害剤におけるカラメルは、カラメルI、カラメルII及びカラメルIVから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、より好ましくはカラメルIVである。
本発明において、酵素がエラスターゼであるときの酵素阻害剤におけるカラメルは、カラメルII及びカラメルIVから選ばれる1種又は2種が好ましく、より好ましくはカラメルIVである。
【0023】
後記実施例に示すように、カラメルは優れたヒアルロニダーゼ阻害作用及びエラスターゼ阻害作用を有し、これらの酵素が関与する皮膚老化防止、抗老化、抗炎症、抗アレルギー等の目的で使用する医薬、医薬部外品、化粧品、食品及び飲料として有用である。
【0024】
ヒアルロニダーゼは、体内での炎症時に活性化され、アレルギーや炎症を誘導し、ヒアルロン酸の分解により結合組織マトリックスを破壊し、炎症系細胞の侵入を容易にする。
また、生体内のヒアルロン酸は、通常の状態ではヒアルロン酸合成酵素と分解酵素の活性の平衡が保たれている。老化に伴いこの平衡が失われ、ヒアルロン酸の合成に対してヒアルロン酸分解酵素であるヒアルロニダーゼ活性が亢進され、組織の柔軟性や湿潤性も失われ、皮膚のシワやタルミ等の皮膚老化を引き起こす。
したがって、ヒアルロニダーゼ阻害剤は、抗アレルギー、抗炎症、皮膚老化防止、免疫力増強等に用いることができる。
【0025】
エラスターゼは、感染症や炎症細胞など、外的及び内的要因により活性化され、エラスチン等のタンパク質を分解することで、組織の損傷や炎症、変性を引き起こす。
また、エラスチンは、新陳代謝において合成、分解の平衡が保たれることで恒常的に保持されている。エラスターゼが紫外線や加齢によって活性化されることにより、皮膚に存在するエラスチンを分解し、皮膚のシワやタルミ等の老人性変化を引き起こす。
したがって、エラスターゼ阻害剤は、皮膚老化防止剤として有用である。
【0026】
本発明において、カラメルを有効成分とする酵素阻害剤は、少なくともカラメルを有効成分として含有していればよい。
本発明の酵素阻害剤は、該カラメルをそのまま使用することもでき、公知の賦形剤や希釈剤、又は、他の任意の配合材料とともに混合して、溶液、粉末、顆粒状、ペースト状又は乳化物等の形態として製剤化して使用することができ、添加対象とする製品の性状や工程などに合せて最も効果が期待できる剤型に加工することができる。
また、本発明の酵素阻害剤は、該カラメルと他の成分との混合形態であってもよく、そのような成分としては、本発明の酵素阻害剤の効果を損なわないものであって、飲料、食品、化粧品、医薬部外品又医薬品の加工やその機能等に対して好ましい効果を有するものを使用することができる。さらに、本発明の酵素阻害剤の有効成分である該カラメルは、目的とする効果、使用方法から添加量、濃度を算出し使用すればよい。
【0027】
本発明の酵素阻害剤を含有する、飲料又は食品の形態は任意であり、例えば、清涼飲料水、アルコール飲料、乳飲料、保健飲料、漬物、醤油、ソース、みそ、生菓子、菓子、デザート食品、乳製品、加工食品、調味料、いわゆる健康食品、機能性食品等のいずれであってもよい。
本発明の酵素阻害剤を含有するこれらの飲料又は食品には、ビタミン類、動植物抽出物、抗酸化性成分等の機能性成分、生理活性物質又は既知の他の抗アレルギー成分等を適宜配合して用いることができる。
本発明の酵素阻害剤を含有する、これらの飲料又は食品を摂取することにより、アレルギー症の改善、免疫力の向上等をすることができる。
【0028】
本発明の酵素阻害剤を含有する、化粧品の形態は任意であり、例えば、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗浄料、メーキャップ化粧料、分散液、軟膏、液剤、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤等のいずれの形態の化粧料、医薬部外品または外用医薬品等であってもよい。
【0029】
本発明のカラメルを有効成分とする酵素阻害剤を含有する、化粧品には、当該酵素阻害剤以外に、植物油などの油脂類、ラノリンやミツロウなどのロウ類、キダチアロエ等の植物抽出物、炭化水素類、脂肪酸、高級アルコール類、エステル類、種々の界面活性剤、色素、香料、ビタミン類、動物抽出物、紫外線吸収剤、抗酸化剤、防腐・殺菌剤等、通常の化粧料原料として使用されているものを適宜配合して用いることができる。さらに、美白効果を有するものとして既知の他の成分や抗アレルギー成分を併用することで、効果を高めることもできる。
【0030】
本発明において、カラメルを有効成分とする酵素阻害剤の飲料、食品、化粧品、医薬部外品又は医薬品等への配合量は、その純度、剤形などを考慮して定めるとよいが、通常、全量に対して0.001〜50重量%、好ましくは、0.01〜20重量%、特に好ましくは、0.1〜10重量%である。
また、本発明において、有効成分であるカラメルのヒアルロニダーゼ阻害活性又はエラスターゼ阻害活性のIC50に基づいて、カラメルを有効成分とする酵素阻害剤の飲料、食品、化粧品、医薬部外品又は医薬品等への配合量を決めることもできる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。なお、本発明において、各原料及び素材の配合%はすべて重量%である。
【0032】
[カラメルの分類試験]
酵素阻害活性の有効成分であるカラメルについて、以下のカラメルを用いて食品添加物公定書記載の定義及び確認試験により試験照合した。試験の結果、表1記載のように分類された。
(1)プレインカラメルで標準的砂糖製カラメル
例として、「カラメルS」(液体、池田糖化工業株式会社製)
(2)プレインカラメルで砂糖製カラメル
例として、「カラメルS−239」(液体、池田糖化工業株式会社製)
(3)プレインカラメルでブドウ糖製カラメル
例として、「カラメルS−710」(液体、池田糖化工業株式会社製)
(4)コーステイックサルファイトカラメル
例として、「カラメル試作品A」(液体、池田糖化工業株式会社製)
(5)サルファイトアンモニアカラメルで耐酸性・耐塩性カラメル
例として、「カラメルRB」(液体、池田糖化工業株式会社製)
(6)サルファイトアンモニアカラメルで耐酸性シングルストレングスカラメル
例として、「カラメルCD」(液体、池田糖化工業株式会社製)
(7)サルファイトアンモニアカラメルで耐酸性ミドルストレングスカラメル
例として、「カラメルCN」(液体、池田糖化工業株式会社製)
(8)サルファイトアンモニアカラメルで耐酸性ダブルストレングスカラメル
例としてカラメルBC−2」(液体、池田糖化工業株式会社製)
【0033】
【表1】
【0034】
[実施例1]
[ヒアルロニダーゼ阻害活性の測定]
本発明の酵素阻害剤の有効成分であるカラメルについて上記カラメルを試料として、ヒアルロニダーゼ阻害活性を測定した。
【0035】
ヒアルロニダーゼ阻害活性の測定は、以下の方法で行った。
ヒアルロニダーゼ(type IV-S from Bovine testis、Sigma社製)溶液の25μl(4,500unit/ml;0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解)に試料50μlを加えて、37℃20分間放置した。次に酵素活性化剤(Compound 48/80、Sigma社製)溶液(0.5mg/ml;0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解)50μlを加え、37℃で20分間放置した後、基質であるヒアルロン酸カリウム(from rooster comb、和光純薬工業株式会社製)溶液(0.8mg/ml;0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解)125μlを入れ、37℃で40分間放置した。次いで0.4N水酸化ナトリウム溶液50μlを加えて反応を停止させた後、0.8Mホウ酸溶液50μlを加え、沸水中で3分間加熱した。室温まで冷却後、1%p−ジメチルアミノベンズアルデヒド酢酸溶液1.5mlを加え、37℃で20分間放置した後、585nmにおける吸光度(A)を測定した。なお、試料はそれぞれ0.1M酢酸緩衝液(pH4.0)に溶解し、固形物換算で0.5mg/ml、0.25mg/ml、0.1mg/mlの終濃度となるように作成した。上記とさらにそれぞれの場合について酵素を添加せずに蒸留水を加えて同様にして吸光度(B)、(D)の測定を行った。対照として、ヒアルロニダーゼに対する阻害活性を持つことが知られている食用野草であるヨモギ末を用いた。阻害率(%)は、次式により算出しその結果を表2に示し、それぞれの阻害曲線から50%阻害濃度(IC50)を求めその結果を表3に示した。
【0036】
(数1)
ヒアルロニダーゼ阻害率(%)=100−100×[(A−B)/(C−D)]
【0037】
A:試料溶液添加、酵素溶液添加時の吸光度
B:試料溶液添加、酵素溶液無添加時の吸光度
C:試料溶液無添加、酵素溶液添加時の吸光度
D:試料溶液無添加、酵素溶液無添加時の吸光度
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示す通り、本発明の酵素阻害剤の有効成分であるカラメルについてのヒアルロニダーゼ阻害率は、固形物換算0.5mg/mlの濃度でいずれも50%以上を示しヒアルロニダーゼ活性を有意に阻害した。特に、カラメルIVは固形物換算0.1mg/mlの濃度で60%以上を示し顕著に高く阻害した。また、対照と比較すると、ヨモギは固形物換算1mg/mlの濃度で65.6%、固形物換算0.5mg/mlの濃度で26.3%、固形物換算0.25mg/mlの濃度で9.4%であり、カラメルの阻害率はそれ以上の値を示しヒアルロニダーゼ阻害剤として有効に作用することを示した。
【0040】
【表3】
【0041】
表3に示す通り、本発明の有効成分であるカラメルについてのIC50は、0.01〜0.26mg/mlであり、カラメルIは約0.1〜0.3mg/mlの範囲にあり、カラメルIIは0.05mg/ml、カラメルIVはいずれも0.03mg/ml以下の範囲にあり、少量で顕著なヒアルロニダーゼ阻害活性を示した。また、対照のIC50を比較すると、カラメルについては、ヒアルロニダーゼ阻害活性を有するといわれているヨモギの35%以下であり、カラメルのヒアルロニダーゼ阻害活性は顕著に高いことを示した。したがって、本発明品であるヒアルロニダーゼ阻害剤を飲料、食品、化粧品、医薬部外品又は医薬品等において効果的に利用することができる。
【0042】
[実施例2]
[エラスターゼ阻害活性の測定]
本発明の酵素阻害剤の有効成分であるカラメルについて、上記カラメルを試料として、エラスターゼ阻害活性を測定した。
【0043】
エラスターゼ阻害活性の測定は、以下の方法で行った。
ブタ膵臓由来エラスターゼ(和光純薬工業株式会社製)および合成基質スクシニル−L−アラニル−L−アラニル−L−アラニン−p−ニトロアニリド)(ナカライテスク株式会社製)を用いて評価した。基質をジメチルスルホキシドで0.1Mに調整し、使用時に、0.2M Tris−HCl緩衝液(pH8.8)で100倍希釈した1mM溶液を使用した。酵素は0.2M Tris−HCl緩衝液(pH8.8)で0.05unit/mlに調製した。基質100μlを酵素50μlおよび試料50μlとともに37℃で30分間反応させ、その後、吸光度405nmで測定した。なお、試料はそれぞれ0.2M Tris−HCl緩衝液(pH8.8)に溶解し、固形物換算で0.63mg/ml、0.31mg/ml、0.16mg/mlの終濃度となるように作成した。上記と同様の酵素反応と吸光度測定を、試料溶液の代わりに緩衝液を添加して行った。さらにそれぞれの場合について酵素を添加せずに緩衝液を加えて同様の操作と測定を行った。対照として、エラスターゼに対する阻害活性を持つことが知られているビワ葉抽出物末(市販品)を試験に用いた。阻害率(%)は、次式により算出しその結果を表4に示した。
【0044】
(数2)
エラスターゼ阻害率(%)=100−100×[(A−B)/(C−D)]
A:試料溶液添加、酵素溶液添加時の吸光度
B:試料溶液添加、酵素溶液無添加時の吸光度
C:試料溶液無添加、酵素溶液添加時の吸光度
D:試料溶液無添加、酵素溶液無添加時の吸光度
【0045】
【表4】
【0046】
表4に示す通り、本発明の酵素阻害剤の有効成分であるカラメルについてのエラスターゼ阻害率は、カラメルII、IVについて優位な阻害活性を示した。また、対照と比較すると、ビワ葉は固形物換算0.63mg/mlの濃度で23.7%、固形物換算0.31mg/mlの濃度で13.6%、固形物換算0.16mg/mlの濃度で6.3%であり、カラメルの阻害率はそれ以上の値を示しエラスターゼ阻害剤として有効に作用することを示した。また、それぞれの阻害曲線から50%阻害濃度(IC50)を求めたところ、カラメルII(カラメル試作品A)で0.54mg/ml、カラメルIV(カラメルCN)で0.61mg/ml、カラメルIV(カラメルBC−2)で0.40mg/mlであり、カラメルのエラスターゼ阻害活性は優位に高いことを示した。
【0047】
本発明品の酵素阻害剤を、飲料、食品、化粧品に用いた例を示す。
【0048】
[配合例1]
次の配合例で、本発明品の酵素阻害剤を配合した清涼飲料水を常法により製造した。
本発明品(実施例1:カラメルCD) 0.4g(質量部)
ステビア 0.018g
(ハイステビアRA−700M、池田糖化工業株式会社製)
エリスリトール 2.0g
アスコルビン酸 0.1g
アスコルビン酸ナトリウム 0.04g
香料 微量
精製水 適量
合計 100ml
【0049】
[配合例2]
ゼラチンカプセルにカラメルS−710をスプレードライヤーにより粉末化した本発明品の酵素阻害剤200mgを充填し、キャップ部を結合し、抗アレルギー用食品とするカプセル剤を調製した。
【0050】
[配合例3]
カラメルCN100重量部にデキストリン40重量部を配合してスプレードライヤーにより粉末化した本発明品の酵素阻害剤を、次の配合例により、湿式造粒し、打錠して1粒1gの錠剤を得た。
本発明品 350(質量部)
乳糖 470
結晶セルロース 140
ヒドロキシプロピルセルロース 30
ステアリン酸マグネシウム 1
タルク 9
【0051】
[配合例4]
次の配合例で、本発明品の酵素阻害剤を配合したO/W型クリームを常法により製造した。
(成分及び重量%)
本発明品(実施例1:カラメルS−239) 0.5
ステアリルアルコール 6.0
ステアリン酸 2.0
水添ラノリン 4.0
スクワラン 9.0
オクチルドデカノール 10.0
1,3−ブチレングリコール 6.0
PEG1500 4.0
ポリエキシエチレン(25)
セチルアルコールエーテル 3.0
モノステアリン酸グリセリン 2.0
防腐剤 適量
酸化防止剤 適量
香料 適量
精製水 53.5
【0052】
[配合例5]
次の配合例で、本発明品の酵素阻害剤を配合したシャンプーを常法により製造した。
(成分及び重量%)
本発明品(実施例1:カラメルCD) 0.5
ラウリルポリオキシエチレン(3)硫酸エステル 30.0
ナトリウム塩(30%水溶液)
ラウリル硫酸エステルナトリウム塩(30%水溶液) 10.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0
グリセリン 1.0
香料 適量
防腐剤 適量
金属イオン封鎖剤,pH調整剤 適量
精製水 55.0