特許第5725669号(P5725669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725669
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】薄膜ディバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 4/10 20060101AFI20150507BHJP
   H01C 17/06 20060101ALI20150507BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20150507BHJP
   H01C 7/00 20060101ALI20150507BHJP
   H01T 1/24 20060101ALI20150507BHJP
   H01T 4/12 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01T4/10 K
   H01C17/06 M
   H01C7/04
   H01C7/00 A
   H01T4/10 G
   H01T1/24
   H01T4/12 F
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-262994(P2012-262994)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-110110(P2014-110110A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2014年12月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390024729
【氏名又は名称】SEMITEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101834
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 順一
(72)【発明者】
【氏名】松下 貴史
(72)【発明者】
【氏名】松舘 直史
【審査官】 段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−128536(JP,U)
【文献】 特開2003−042840(JP,A)
【文献】 特開2008−124638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 4/10
H01C 7/00
H01C 7/04
H01C 17/06
H01T 1/24
H01T 4/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
この基板に形成され、所定の間隔を有して配置された一対の電極部と、放電間隙を有して対向配置された一対の放電電極部と、これら電極部及び放電電極部に導通経路を介して接続されるとともに、外部の配線と電気的に接続される端子電極部とを有し、この端子電極部と前記電極部とは間隔を空けて形成されていて、前記端子電極部と前記電極部とを接続する導通経路は、前記間隔の領域において、前記端子電極部の一端側から前記電極部の他端側に延出して迂回するように形成され、前記端子電極部から電極部までの導通経路の長さ寸法をPとし、前記端子電極部から放電電極部までの導通経路の長さ寸法をpとした場合、P>pの関係となるように設定されている導電層と、
前記一対の電極部に接続された薄膜素子層と、
前記一対の放電電極部における放電間隙に少なくとも対向する空洞部を有して前記薄膜素子層及び一対の放電電極部を被覆する保護絶縁層と、
を具備することを特徴とする薄膜ディバイス。
【請求項2】
前記電極部における所定の間隔をDとし、前記放電電極部における放電間隙をdとした場合、D>dの関係となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の薄膜ディバイス。
【請求項3】
前記端子電極部から電極部までの導通経路のパターンがミアンダ形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の薄膜ディバイス。
【請求項4】
前記一対の電極部及び一対の放電電極部は、結晶化した白金又はその合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の薄膜ディバイス。
【請求項5】
前記一対の放電電極部における放電間隙は、レーザ加工によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の薄膜ディバイス。
【請求項6】
保護絶縁層は、第1層と第2層との2層構成であって、第2層がガラス層によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の薄膜ディバイス。
【請求項7】
基板に所定の間隔を有して配置された一対の電極部と、放電間隙を有して対向配置された一対の放電電極部と、これら電極部及び放電電極部に導通経路を介して接続されるとともに、外部の配線と電気的に接続される端子電極部とを有し、この端子電極部と前記電極部とを間隔を空けて形成し、前記端子電極部と前記電極部とを接続する導通経路を、前記間隔の領域において、前記端子電極部の一端側から前記電極部の他端側に延出して迂回するように形成し、前記端子電極部から電極部までの導通経路の長さ寸法をPとし、前記端子電極部から放電電極部までの導通経路の長さ寸法をpとした場合、P>pの関係となるように導電層を形成する工程と、
前記一対の電極部に接続される薄膜素子層を形成する工程と、
前記放電間隙に対向して犠牲層を形成する工程と、
前記薄膜素子層及び一対の放電電極部を被覆する保護絶縁層を形成する工程と、
前記犠牲層を除去して保護絶縁層に空洞部を形成する工程と、
を具備することを特徴とする薄膜ディバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気等の異常電圧から半導体素子や電子機器等を保護するための薄膜ディバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信端末やパソコン等の情報通信機器をはじめ、民生用機器、自動車用電装機器等の電子機器には、通常、半導体素子や半導体集積回路等の電子部品が用いられている。
【0003】
一般的に、電子部品は、サージのような静電気放電(ESD(Electro Static Discharge)に対して脆弱であり、例えば、電子部品に人体が帯びた静電気の高電圧が印加されると、半導体素子等の電子部品が破壊されたりダメージを受けたりして、電子部品の電気的特性が劣化することとなる。その結果、電子部品が実装された電子機器の誤動作、故障の原因を招来する。
【0004】
このため、チップ型NTCサーミスタにおいて、外表面に形成された外部電極に放電用電極を設け、この放電用電極の放電ギャップにて静電気等に基づく異常電圧による放電がなされるようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。これにより、異常電圧による電流がサーミスタ素子に流れず、サーミスタ素子の内部破壊を防止することができるものである。
また、同様にチップ型NTCサーミスタにおいて、放電ギャップを放電ギャップ用パターンによって形成するものが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、サーミスタ素子の内部破壊を防止するため、サーミスタ素子とバリスタ素子とを積層するものや外部電極と内部電極との電極間距離を設定するチップ型のサーミスタが提案されている(特許文献3及び特許文献4参照)。加えて、放電電極の上方空間を囲むように蓋体を設けたチップ型サージアブソーバが提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−114005号公報
【特許文献2】特開2000−82563号公報
【特許文献3】特開2002−251103号公報
【特許文献4】特開2010−147169号公報
【特許文献5】特開2002−15832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に示されたものにおいては、放電用電極が外部に露出する構成となっており、放電用電極間のマイグレーションや塵埃の影響により、放電用電極間でショートが発生する可能性がある。
【0008】
また、特許文献3に示されたものでは、サーミスタ素子とバリスタ素子とを積層するものであり、格別にバリスタ素子を必要とし、コスト的に高価となる可能性がある。さらに、特許文献4に示されたものでは、電極間距離を調整して設定する必要があり、製作が煩雑となる問題が生じる。さらにまた、特許文献5に示されたものは、放電電極を囲む蓋体を別部材として設けるチップ型のサージアブソーバである。
また、これら従来のものは、いずれもチップ型であり、薄膜製造技術を用いて薄膜で構成するものではない。
【0009】
ところで、小形化が可能で応答性に優れる薄膜素子層を備える薄膜ディバイスとして例えば、薄膜サーミスタ素子が開発されている。このような有利な点を有する薄膜サーミスタ素子において効果的に静電気に対する耐性を高めることが望まれている。
【0010】
本発明は、上記要望に鑑みてなされたもので、薄膜で構成されるものであって、効果的に静電気に対する耐性を高めることができ、信頼性を向上することが可能な薄膜サージアブソーバ、薄膜ディバイス及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の薄膜ディバイスは、 基板と、この基板に形成され、所定の間隔を有して配置された一対の電極部と、放電間隙を有して対向配置された一対の放電電極部と、これら電極部及び放電電極部に導通経路を介して接続されるとともに、外部の配線と電気的に接続される端子電極部とを有し、この端子電極部と前記電極部とは間隔を空けて形成されていて、前記端子電極部と前記電極部とを接続する導通経路は、前記間隔の領域において、前記端子電極部の一端側から前記電極部の他端側に延出して迂回するように形成され、前記端子電極部から電極部までの導通経路の長さ寸法をPとし、前記端子電極部から放電電極部までの導通経路の長さ寸法をpとした場合、P>pの関係となるように設定されている導電層と、前記一対の電極部に接続された薄膜素子層と、前記一対の放電電極部における放電間隙に少なくとも対向する空洞部を有して前記薄膜素子層及び一対の放電電極部を被覆する保護絶縁層とを具備することを特徴とする。
薄膜素子層としては、感熱薄膜を好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。他の素子層を適用することができる。
【0013】
かかる発明によれば、構成が簡素化できるとともに、空洞部によって放電空間が確保され、気中放電が円滑に行われ、効果的に静電気に対する耐性を高めることができる。
【0014】
請求項2に記載の薄膜ディバイスは、請求項1に記載の薄膜ディバイスにおいて、前記電極部における所定の間隔をDとし、前記放電電極部における放電間隙をdとした場合、D>dの関係となるように設定されていることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の薄膜ディバイスは、請求項1又は請求項2に記載の薄膜ディバイスにおいて、前記端子電極部から電極部までの導通経路のパターンがミアンダ形状に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の薄膜ディバイスは、請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の薄膜ディバイスにおいて、前記一対の電極部及び一対の放電電極部は、結晶化した白金又はその合金であることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の薄膜ディバイスは、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の薄膜ディバイスにおいて、前記一対の放電電極部における放電間隙は、レーザ加工によって形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の薄膜ディバイスは、請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の薄膜ディバイスにおいて、保護絶縁層は、第1層と第2層との2層構成であって、第2層がガラス層によって形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の薄膜ディバイスの製造方法は、基板に所定の間隔を有して配置された一対の電極部と、放電間隙を有して対向配置された一対の放電電極部と、これら電極部及び放電電極部に導通経路を介して接続されるとともに、外部の配線と電気的に接続される端子電極部とを有し、この端子電極部と前記電極部とを間隔を空けて形成し、前記端子電極部と前記電極部とを接続する導通経路を、前記間隔の領域において、前記端子電極部の一端側から前記電極部の他端側に延出して迂回するように形成し、前記端子電極部から電極部までの導通経路の長さ寸法をPとし、前記端子電極部から放電電極部までの導通経路の長さ寸法をpとした場合、P>pの関係となるように導電層を形成する工程と、前記一対の電極部に接続される薄膜素子層を形成する工程と、前記放電間隙に対向して犠牲層を形成する工程と、前記薄膜素子層及び一対の放電電極部を被覆する保護絶縁層を形成する工程と、前記犠牲層を除去して保護絶縁層に空洞部を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、放電電極部を被覆する保護絶縁層に空洞部が形成されているので、構成が簡素化でき、しかも空洞部によって放電空間が確保され、気中放電が円滑に行われるようになるので、効果的に静電気に対する耐性を高めることができ、信頼性を向上することが可能な薄膜ディバイス及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る薄膜ディバイスを模式的に示す平面図である。
図2図1中、A−A線に沿った模式的な断面図である。
図3図1中、B−B線に沿った模式的な断面図である。
図4】同薄膜ディバイスにおける導電層のパターンを示す平面図である。
図5】同薄膜ディバイスの製造工程を示すフロー図である。
図6】同薄膜ディバイスの製造工程を示す平面図及び断面図である。
図7】同じく、薄膜ディバイスの製造工程を示す平面図及び断面図である。
図8】同薄膜ディバイスの変形例を示す部分的な拡大断面図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る薄膜ディバイスにおける導電層のパターンを示す平面図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る薄膜ディバイスにおける導電層のパターンを示す平面図である。
図11】本発明の第4の実施形態に係る薄膜ディバイスにおける導電層のパターンを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1の実施形態に係る薄膜ディバイスについて図1乃至図8を参照して説明する。図1乃至図4は、薄膜ディバイスを示し、図5乃至図7は、薄膜ディバイスの製造方法を示し、図8は、薄膜ディバイスの変形例を示している。なお、各図では、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1乃至図4に示すように、薄膜ディバイス1は、基板2と、この基板2上に形成された導電層3と、薄膜素子層4と、保護絶縁層5とを備えている。
【0025】
薄膜ディバイス1は、本実施形態においては、機能的に薄膜サーミスタと薄膜サージアブソーバとが複合して構成されている。この薄膜ディバイス1は、略直方体形状に形成されており、縦の寸法が0.4mm〜2mm、横の寸法が0.2mm〜1.25mm、高さ寸法が0.05mm〜0.25mm程度である。なお、形状及び寸法は、特段制限されるものではなく、用途に応じて適宜選定することができる。
【0026】
基板2は、略長方形状をなしていて、絶縁性のアルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア等のセラミックス又は半導体のシリコン、ゲルマニウム等の材料を用いて形成されている。この基板2の一面上には、絶縁性薄膜21がスパッタリング法によって成膜して形成されている。絶縁性薄膜21の形成には、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等の材料が用いられ、その膜厚寸法は、0.1μm〜1.0μmに形成されている。
【0027】
導電層3は、配線パターンを構成するものであり、図4に代表して示すように、線対称的なパターンで基板2の同一平面上に形成されている。導電層3は、金属薄膜をスパッタリング法によって成膜して形成されものであり、その金属材料には、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等の貴金属やこれらの合金、例えば、Ag−Pd合金等が適用される。また、膜厚寸法は、0.1μm〜0.3μmに形成されている。
【0028】
導電層3は、それぞれ一対の電極部31a及び31b、放電電極部32a及び32b、端子電極部33a及び33b、端子電極部33a及び33bと電極部31a及び31bとを接続する導通経路34a及び34b、端子電極部33a及び33bと放電電極部32a及び32bとを接続する導通経路35a及び35bを有している。
電極部31a及び31bは、後述する薄膜素子層4が接続される部分であり、略矩形状に形成され、所定の間隔を有して対向するように配置されている。
【0029】
一対の放電電極部32a及び32bは、放電間隙、つまり、微小な放電ギャップを有して対向して配置されている。詳しくは、放電電極部32a及び32bは、先端部321a及び321bと基端部322a及び322bとを備えており、先端部321a及び321bの幅寸法に対して、基端部322a及び322bの幅寸法が広くなるように形成されている。なお、この放電電極部32a及び32bは、基端部322a及び322bから先端部321a及び321bへ向けて傾斜して先細り状に形成してもよい。
【0030】
端子電極部33a及び33bは、外部の配線と電気的に接続される部分であり、電極部31a及び31bより広い面積を有して略矩形状をなし、基板2の両端側に形成されている。この端子電極部33a及び33bと電極部31a及び31bとは、間隔を空けて形成されている。
【0031】
この端子電極部33a及び33bの一端側からは、端子電極部33a及び33bと電極部31a及び31bとを接続する導通経路34a及び34bが導出されている。具体的には、端子電極部33a及び33bの一端側から電極部31a及び31bの他端側に延出して迂回するように形成され、図示上、垂下するように形成されている。
【0032】
また、同様に端子電極部33a及び33bの一端側からは、端子電極部33a及び33bと放電電極部32a及び32bとを接続する導通経路35a及び35bが導出されている。具体的には、端子電極部33a及び33bの一端側から電極部31a及び31bの基端部322a及び322bに延出して、図示上、横方向に形成されている。
【0033】
このような導電層3の構成において、電極部31a及び31bの電極間の間隔Dと放電電極部32a及び32bにおける先端部321a及び321b間の放電間隙(放電距離)dとの関係は、電極部31a及び31bの間隔Dよりも放電電極部32a及び32bの放電間隙dは小さく、D>dの関係となるように設計されている。より詳しくは、電極部31a及び31bの間隔Dは、30μm以上、放電電極部32a及び32bの放電間隙dは、10μm以下、好ましくは2μm〜10μmに設定する。このように電極間距離を設定することにより放電電極部32a及び32bにおける放電開始電圧を低くすることができる。
【0034】
また、端子電極部33a及び33bと電極部31a及び31bとを接続する導通経路34a及び34bの長さ寸法Pと端子電極部33a及び33bと放電電極部32a及び32bとを接続する導通経路35a及び35bの長さ寸法pとの関係は、導通経路35a及び35bの長さ寸法pよりも導通経路34a及び34bの長さ寸法Pが長く、P>pの関係となるように設計されている。具体的には、導通経路35a及び35bの長さ寸法pは30μm以下であるのに対し、導通経路34a及び34bの長さ寸法Pは100μm以上に設定する。このように導通経路34a及び34bの長さ寸法Pを長く設定することにより、電極部31a及び31bの電極間、すなわち、薄膜素子層4側へ静電気等に基づく異常電圧による放電が生じるのを防止することができる。
【0035】
薄膜素子層4は、本実施形態においては、感熱薄膜であり、負の温度係数を有する酸化物半導体からなる薄膜サーミスタである。図1及び図2に示すように薄膜素子層4は、前記電極部31a及び31bの上に、スパッタリング法によって成膜して電極部31a及び31bを跨ぐように形成され、電極部31a及び31bと電気的に接続されている。
したがって、薄膜素子層4と前記放電電極部32a及び32bとは、電極部31a及び31bに対して電気的に並列に接続されるようになる。
【0036】
薄膜素子層4は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)等の遷移金属元素の中から選ばれる2種あるいはそれ以上の元素から構成され、スピネル構造を有する複合金属酸化物を主成分として含むサーミスタ材料で構成される。また、特性向上等のために副成分が含有されていてもよい。主成分、副成分の組成及び含有量は、所望の特性に応じて適宜決定することができる。薄膜素子層4の厚み寸法は、特に制限されないが、本実施形態では、好ましくは0.3μm〜1.2μm程度である。
【0037】
保護絶縁層5は、図1乃至図3に示すように薄膜素子層4、電極部31a及び31b、放電電極部32a及び32b、導通経路34a及び34b並びに導通経路35a及び35bを被覆するように形成されている。
【0038】
この保護絶縁層5には、部分的に空洞部Ctが形成されている。すなわち、空洞部Ctは、放電電極部32a及び32bにおける少なくとも放電間隙に対向して配設されるようになっている。この空洞部Ctは、略直方体形状をなし、放電空間を形成するものであり、詳細を後述する犠牲層によって形成される。なお、空洞部Ctの形状は、直方体形状に限定されるものではなく、放電空間を形成できれば、ドーム状など種々の形状を採用することができる。
【0039】
したがって、平面的に配設された薄膜素子層4及び放電電極部32a、32bの双方は、保護絶縁層5によって兼用的に被覆されて保護されるとともに、保護絶縁層5に形成された空洞部Ctによって放電電極部32a及び32bによる放電空間が確保され、気中放電が円滑に行われるようになる。
【0040】
より詳しくは、保護絶縁層5は、複数層、すなわち、2層構成となっている。第1層は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等をスパッタリング法によって成膜して形成された保護薄膜層51であり、第2層は、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス及びホウケイ酸鉛ガラス等を印刷法によって形成された保護ガラス層52である。因みに、保護薄膜層51の厚さ寸法は0.5μm〜1.5μmに形成され、保護ガラス層52の厚さ寸法は5μm〜15μmに形成されている。
このように保護絶縁層5を2層構成とすることにより、薄膜素子層4と保護ガラス層52との反応を抑制して信頼性を向上することが可能となる。
【0041】
以上のように構成された薄膜ディバイス1は、保護絶縁層5によって被覆された薄膜素子層4を備える薄膜サーミスタと、放電電極部32a及び32bを備える薄膜サージアブソーバとの複合的なディバイスとなっている。なお、上記薄膜ディバイス1における薄膜サージアブソーバの部分を切り離して薄膜サージアブソーバとして単一の部品として構成するようにしてもよい。
【0042】
次に、上記薄膜ディバイス1の製造方法の一例について図5乃至図7を参照して説明する。図5は、製造工程の概略を示すフロー図であり、図6及び図7は、製造工程を示す平面図及びこの平面図におけるA−A線又はB−B線に沿う断面図である。
【0043】
まず、図5に示すように、薄膜ディバイス1の製造方法は、基板2に絶縁性薄膜21を形成する工程(S1)と、基板2の絶縁性薄膜21上に導電層3を形成する工程(S2)と、犠牲層Sを形成する工程(S3)と、電極部31a及び31bに薄膜素子層4を形成する工程(S4)と、犠牲層S及び薄膜素子層4等を保護絶縁層5によって被覆するための保護絶縁層5を形成する工程(S5)と、空洞部Ctを形成するため犠牲層Sを除去する工程(S6)とを備えている。
詳しくは、図6(a)〜(d)及び図7(e)〜(h)を参照して説明する。
(絶縁性薄膜の形成工程)
図6(a)に示すように基板2上の略全面に絶縁性薄膜21をスパッタリング法によって成膜する。
【0044】
なお、基板2が絶縁性の例えば、セラミックス基板である場合には、薄膜素子層4が配設される領域に対応して絶縁性薄膜21を形成するようにしてもよい。したがって、この場合、エッチング等によって不要な部分を除去してパターニングを行う。そして、パターニング後、500℃以上の温度で熱処理を施す。
【0045】
この絶縁性薄膜21は、基板2がシリコン、ゲルマニウム等の半導体基板の場合には、絶縁物として機能し、絶縁性のセラミックス基板の場合には、薄膜素子層4との反応を抑制するように機能する。
(導電層の形成工程)
【0046】
図6(b)に示すように絶縁性薄膜21上に導電層3をスパッタリング法によって成膜する。具体的には、例えば、ターゲット部材として白金(Pt)又はその合金を用いて、アルゴン(Ar)、酸素(0)及び窒素(N)ガスの少なくとも一方を添加した混合ガス雰囲気中で成膜する。
【0047】
その後、エッチング等によって不要な部分を除去してパターニングを行い、電極部31a及び31bと、放電電極部32a及び32b、端子電極部33a及び33bと、端子電極部33a及び33bと電極部31a及び31bとを接続する導通経路34a及び34bと、端子電極部33a及び33bと放電電極部32a及び32bとを接続する導通経路35a及び35bとをパターン形成する。このパターン形成された導電層3は、酸素(0)及び窒素(N)の少なくとも一方を含んでいる。
【0048】
パターン形成後、600℃以上の高温で熱処理することで白金(Pt)又はその合金は結晶化して、導電層3は粒状結晶となり、導電層3は、基板2及び絶縁性薄膜21との接着力が向上する。これは、導電層3が酸素(0)、窒素(N)を含んで成膜された後に結晶化するので、導電層3の膜中の酸素(0)、窒素(N)の濃度変動を抑制できることに起因している。このため熱処理の前後において導電層3の表面状態を良好な状態に維持することが可能となる。
【0049】
例えば、酸素(0)、窒素(N)を含まない状態で成膜された導電層の場合、これを熱処理すると導電層が急激に酸化及び窒化が進行して基板2及び絶縁性薄膜21との接着力が低下する現象が生じる。
(犠牲層の形成工程)
【0050】
図6(c)に示すように放電電極部32a及び32bにおける少なくとも放電間隙に対向して犠牲層Sを形成する。犠牲層Sは、スパッタリング法によって成膜して形成され、略直方体形状であって、一部に基板2の周縁側に向かって突出する排出口Seを有している。
【0051】
犠牲層Sの形成にあたっては、ターゲット部材として金属酸化物を用いて、アルゴン(Ar)ガス中でスパッタリング法によって成膜し、膜厚寸法が0.5μm〜2μmの金属酸化物薄膜を形成する。
【0052】
その後、金属酸化物薄膜をエッチング等によって不要な部分を除去してパターニングを行い排出口Seを有する犠牲層Sを形成する。この犠牲層Sを形成する材料としては、フェライト等の酸化鉄を好適に用いることができる。
(薄膜素子層の形成工程)
【0053】
図6(d)に示すように電極部31a及び31bの一部を跨ぐように薄膜素子層4である感熱薄膜をスパッタリング法によって成膜する。具体的には、複合金属酸化物を主成分として含むサーミスタ材料をターゲット部材としてアルゴン(Ar)ガス中でスパッタリング法によって成膜する。その後、成膜したサーミスタ材料の薄膜をエッチング等によって不要な部分を除去して略四角形状にパターニングして感熱薄膜を形成する。
(保護絶縁層の形成工程)
【0054】
図7(e)に示すように犠牲層S及び薄膜素子層4が形成された状態において、これらに積層されるように第1層の保護薄膜層51をスパッタリング法によって成膜し、エッチング等によってパターニングして形成する。
【0055】
次いで、図7(f)に示すように第2層の保護ガラス層52をスクリーン印刷法によって形成し、600℃以上の高温で熱処理した後に、エッチング等によってパターニングして形成する。
(犠牲層の除去工程)
【0056】
図7(g)に示すように犠牲層Sをエッチング等によって除去する。具体的には、エッチング液を排出口Seの部分から侵入させて、犠牲層Sを溶解し、排出口Seから排出させて除去する。
【0057】
この犠牲層Sを除去した後は、排出口Seの部分は開口し、保護絶縁層5によって被覆された状態にはなっていない。そのため、保護絶縁層5を600℃以上で熱処理し焼成する。これにより、第2層の保護ガラス層52が溶解し若干の流動性を伴って排出口Seの開口を閉塞することとなる。したがって、保護絶縁層5は、犠牲層Sが除去された後に外気と遮断された空洞部Ctを形成して、薄膜素子層4、電極部31a及び31b、放電電極部32a及び32b、導通経路34a及び34b並びに導通経路35a及び35bを確実に被覆するようになる。
【0058】
以上の工程によって、図7(h)に示すように薄膜ディバイス1が作製される。なお、各成膜方法は、格別限定されるものではなく、スパッタリング法やCVD法を適用することができる。
【0059】
このように構成された薄膜ディバイス1において、静電気のような異常電圧が薄膜ディバイス1に印加されると、例えば、端子電極部33aから導通経路35aを通じて放電電極部32a及び32b間の放電間隙によって、空洞部Ctで形成された放電空間で気中放電する。つまり、薄膜素子層4側には電流が流れないので、薄膜素子層4の破壊やダメージを防止することが可能となる。
【0060】
したがって、静電気のような異常電圧が薄膜ディバイス1に印加された場合、選択的に優先して放電電極部32a及び32b間の放電間隙によって放電され薄膜素子層4を保護することができる。
【0061】
また、電極部31a及び31bの電極間の間隔Dと放電電極部32a及び32bにおける先端部321a及び321b間の放電間隙dとの関係は、D>dの関係となるように設計されているので、放電間隙dによって放電される選択的優先度が高められる。
【0062】
さらに、導通経路34a及び34bの長さ寸法Pと導通経路35a及び35bの長さ寸法pとの関係は、P>pの関係となるように設計されているので、これによっても放電間隙dによって放電される選択的優先度が高められる。
【0063】
したがって、電極間の間隔D及び放電間隙d、導通経路の長さ寸法P及びpを前記のように設定することにより、薄膜素子層4の保護を一層確実にすることが可能となる。
【0064】
次に、本実施形態における薄膜ディバイス1の静電気放電に対する耐性の評価結果について説明する。薄膜ディバイスの試料を用意し、ESD試験を行った。ESD試験としては、人体モデルとし、試験条件としては放電抵抗330Ω、充電容量を150pFとし、印可電圧を100V〜2000Vまで可変して実施した。評価は、薄膜サーミスタに放電痕が発生し、抵抗値に異常があるか否かで評価した。表1に評価結果を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、薄膜ディバイスの試料は3種類であり、構造図は主として導電層のパターンを示し、薄膜素子層等の図示は省略している。(1)放電間隙なし(放電電極を設けない場合)、(2)導通経路P=p(導通経路Pとpの長さ寸法を等しく設定した場合)、(3)導通経路P>p(導通経路Pとpの長さ寸法をpよりPの長さ寸法を長く設定した場合)の3種類であり、(1)及び(2)は比較例であり、(3)は本実施形態に相当するものである。
【0067】
(1)放電間隙なしの場合は、印加電圧100V〜400Vまでは、薄膜サーミスタに放電痕がみられず、静電気エネルギーに耐えて異常はなかったが、500V以上では、薄膜サーミスタに放電痕の発生が観察され、抵抗値の異常が発生した。これは、薄膜サーミスタに放電電流が流れ、薄膜サーミスタがダメージを受けたものと考えられる。
【0068】
(2)導通経路P=pの場合は、印加電圧100V〜400Vまでは、薄膜サーミスタに放電痕がみられず、静電気エネルギーに耐えて異常はなかった。また、印可電圧600V〜2000Vでは放電電極側で放電が生じて薄膜サーミスタには放電痕はなく抵抗値の異常も発生しなかった。印可電圧が500Vの場合では薄膜サーミスタに放電痕が発生し、抵抗値の異常が発生した。これは、詳らかに説明することは困難であるが、放電電極と薄膜サーミスタ側の一対の電極への導通経路(距離)がほぼ等しい場合、放電間隙等の諸要因によって薄膜サーミスタ側のインピーダンスが低くなり放電しやすくなるためと考えられる。
【0069】
(3)導通経路P>pの場合は、印可電圧100V〜400Vでは薄膜サーミスタは静電気エネルギーに耐えて異常が発生しなかった。また、印可電圧500V〜2000Vでは放電電極側で放電が生じて薄膜サーミスタには放電痕の発生は観察されず、抵抗値の異常も発生しなかった。これは、放電電極と薄膜サーミスタ側の一対の電極への導通経路(距離)がP>pの場合、放電電極側の導通経路が短いためにサージが薄膜サーミスタ側の一対の電極に対し放電電極側に早く印可されるために、放電電極側が放電しやすいためと考えられる。
【0070】
このような評価結果により、(3)に示す本実施形態によれば、導通経路をP>pに設定することにより、静電気放電に対する耐性が高まり、薄膜サーミスタの保護が可能となることが確認できた。
【0071】
以上のように本実施形態のよれば、薄膜素子層4及び放電電極部32a、32bを被覆する保護絶縁層5に空洞部Ctが形成されているので、構成が簡素化でき、しかも空洞部Ctによって放電空間が確保され、気中放電が円滑に行われるようになる。
【0072】
なお、放電電極部32a及び32bにおける基端部322a及び322b、端子電極部33a及び33bについて、その膜厚寸法を大きく形成するようにしてもよい。例えば、これら表面に各種金属のスバッタリング法による薄膜層、めっき層、印刷等によって厚膜層を形成することができる。構成する導電材料としては、特に制限されないが、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等の貴金属及びこれらの合金(Ag−Pdなど)、あるいは銅(Cu)、ニッケル(Ni)等の卑金属及びこれらの合金などで構成される。
【0073】
基端部322a及び322b、端子電極部33a及び33bの膜厚寸法を前記の方法で増加させることにより、これら導電層は異常電圧による放電時のエネルギーに耐えることができ、劣化が抑制できる。
【0074】
加えて、一対の放電電極部32a及び32bは、その先端部321a及び321bの幅寸法に対して、基端部322a及び322bの幅寸法が広くなるように形成されているため、前記膜厚寸法の増加と相俟って、より劣化の抑制が向上できる。
【0075】
また、図8に示すように、一対の放電電極部32a及び32bにおける放電間隙を形成する場合、レーザ加工機によって放電電極部32a及び32bを分断するようにレーザを照射するようにしてもよい。この場合、放電間隙に対応する基板2側にはV字状の溝Chが形成されるようになる。このため、放電間隙における放電が安定するという効果を奏することができる。
【0076】
次に、本発明の第2の実施形態に係る薄膜ディバイスについて図9を参照して説明する。図9は、薄膜ディバイスにおける導電層3のパターンを示している。以下の各実施形態において、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態では、放電電極部32a及び32bにおける先端部321a及び321bを櫛歯状に形成し、複数の放電間隙が形成されるようにしたものである。
このような構成によれば、放電間隙における静電気放電の開始電圧を低下させることが期待できる。
【0077】
次に、本発明の第3の実施形態に係る薄膜ディバイスについて図10を参照して説明する。図10は、薄膜ディバイスにおける導電層3のパターンを示している。
【0078】
本実施形態では、端子電極部33a及び33bと電極部31a及び31bとを接続する導通経路34a及び34bをミアンダ形状のパターンに形成し、導通経路34a及び34bの長さ寸法Pを長く形成したものである。
したがって、導通経路34a及び34bの長さ寸法Pと導通経路35a及び35bの長さ寸法pとの差を大きく設定するものである。
よって、放電電極部32a及び32bにおける放電間隙によって放電される選択的優先度が高められる。
【0079】
続いて、本発明の第4の実施形態に係る薄膜ディバイスについて図11を参照して説明する。図11は、薄膜ディバイスにおける導電層3のパターンを示している。
【0080】
本実施形態は、前記第2の実施形態及び第3の実施形態を組み合わせて構成したものである。つまり、放電電極部32a及び32bにおける先端部321a及び321bを櫛歯状に形成し、複数の放電間隙を形成するとともに、導通経路34a及び34bをミアンダ形状に形成し、導通経路34a及び34bの長さ寸法Pを長く形成したものである。
したがって、放電電極部32a及び32bにおける放電間隙によって放電される選択的優先度を一層高めることが可能となる。
【0081】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記各実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0082】
例えば、一対の放電電極部等の「一対」は、必ずしも同一形状のものに限らない。形状が異なっていても対向するように相当するものが存在すればよい。また、薄膜素子層は、感熱薄膜としての薄膜サーミスタに限定されるものではなく、他の素子層を適用することを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0083】
1・・・薄膜ディバイス
2・・・基板
3・・・導電層
4・・・薄膜素子層
5・・・保護絶縁層
31a、31b・・・電極部
32a、32b・・・放電電極部
34a、34b、35a、35b・・・導通経路
51・・・第1層(保護薄膜層)
52・・・第2層(保護ガラス層)
S・・・犠牲層
Ct・・・空洞部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11