(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725688
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】大気圧プラズマジェット装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
H05H1/24
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2006-317241(P2006-317241)
(22)【出願日】2006年11月24日
(65)【公開番号】特開2008-130503(P2008-130503A)
(43)【公開日】2008年6月5日
【審査請求日】2009年11月9日
【審判番号】不服2013-23579(P2013-23579/J1)
【審判請求日】2013年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】592032636
【氏名又は名称】学校法人トヨタ学園
(73)【特許権者】
【識別番号】503314222
【氏名又は名称】日本プラズマトリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082500
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 勉
(72)【発明者】
【氏名】原 民夫
(72)【発明者】
【氏名】武村 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】鶴本 康彦
【合議体】
【審判長】
神 悦彦
【審判官】
伊藤 昌哉
【審判官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−232293(JP,A)
【文献】
特開2004−305918(JP,A)
【文献】
特表2002−532838(JP,A)
【文献】
特開昭63−99000(JP,A)
【文献】
特開2001−102198(JP,A)
【文献】
特開2007−323812(JP,A)
【文献】
特開2006−313669(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/102532(WO,A1)
【文献】
特開平3−192697(JP,A)
【文献】
特開2003−3266(JP,A)
【文献】
特開2008−34186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H1/24,1/46
H01L21/3065
C23C16/517
C23F4/00
B08B1/02,7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単1のガス種、又はプラズマ中において相互に化学反応しにくい2以上のガス種から成る原料ガスを用いて大気圧プラズマジェットを発生させる大気圧プラズマジェット発生手段と、
大気圧プラズマジェット処理の処理対象物を収容可能な処理室と、
前記処理室内が前記原料ガスで充填され、外部に対し陽圧になるように、前記処理室内に前記原料ガスを供給する供給手段と、
前記処理室を構成する第1の壁面に対向する、前記処理室を構成する第2の壁面に設けられた導入口と、
前記導入口と接続し、前記処理室へ、前記大気圧プラズマジェットを導入するプラズマジェットノズルと、
を備えることを特徴とする大気圧プラズマジェット装置。
【請求項2】
前記処理室は、前記処理対象物の前記処理室への導入、及び/又は前記処理対象物の前記処理室からの取り出しに利用可能な処理対象物出入り口を備えることを特徴とする請求項1記載の大気圧プラズマジェット装置。
【請求項3】
前記処理対象物出入り口を、前記処理室における一方の側と、前記処理室における前記一方の側とは反対側とに、それぞれ備えることを特徴とする請求項2記載の大気圧プラズマジェット装置。
【請求項4】
前記処理対象物出入り口における開口面積を調整する開口面積調整手段を備えることを特徴とする請求項2又は3記載の大気圧プラズマジェット装置。
【請求項5】
前記原料ガスが、窒素、及び酸素のうちの一方であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の大気圧プラズマジェット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、各種材料表面のクリーニングや親水性改善のために用いられる大気圧プラズマジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで産業界では、各種材料表面のクリーニングや親水性改善のために低圧プラズマが用いられてきたが、最近、低圧プラズマに代わり、大気圧プラズマジェット(特許文献1参照)を用いる場合が増加してきている。その理由は、大気圧プラズマジェットを用いれば処理速度が速いことに加え、真空容器や真空排気装置を必要としないため、装置のコストが格段に安価であること、さらに、原料ガスとして、空気や窒素のような安価なガスが使用できるので、運転コストが安いこと、などである。
【特許文献1】特表2002−542586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これまでの大気圧プラズマジェット装置では、ジェットノズル先端から1〜2cm程度でプラズマが強く減衰してしまう。そのため、表面改質効果も、ジェットノズル先端から同程度の距離までしか期待できない。大気圧プラズマジェットが産業界で利用されることが増えるに従い、表面に数cmもの深い凹凸形状を持つ材料の表面改質の要求が多くなってきた。この要求に応えるためには、プラズマジェットから噴出するプラズマプルームの長さを、一層伸ばさなければならない。
【0004】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、プラズマプルームが長く、材料が様々な表面形状を持っていても、効率よく表面改質できる大気圧プラズマジェット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)請求項1の発明は、
単1のガス種、又はプラズマ中において相互に化学反応しにくい2以上のガス種から成る原料ガスを用いて大気圧プラズマジェットを発生させる大気圧プラズマジェット発生手段と、大気圧プラズマジェット処理の処理対象物を収容可能な処理室と、前記処理室内が前記原料ガスで充填され、外部に対し陽圧になるように、前記処理室内に前記原料ガスを供給する供給手段と、
前記処理室を構成する第1の壁面に対向する、前記処理室を構成する第2の壁面に設けられた導入口と、
前記導入口と接続し、前記処理室へ、前記大気圧プラズマジェットを導入する
プラズマジェットノズルと、を備え
ることを特徴とする大気圧プラズマジェット装置。
【0006】
本発明の大気圧プラズマジェット装置は、大気圧プラズマジェットへの、雰囲気ガスの混入を防止する
手段
(処理室、導入口)を備えることにより、プラズマプルームが長くなる。そのため、処理対象物の表面に深い凹凸がある場合でも、凹部の底までプラズマプルームが届き、その部分を効率よく表面改質できる。また、球や多面体の形状を有する処理対象物に対し、大気圧プラズマを噴出させると、長いプラズマプルームが処理対象物の側面、さらには背面にまで回り込み、それらの部分まで効率よく表面改質できる。
【0007】
前記原料ガスのうち、単1のガス種から成るものとしては、例えば、酸素、窒素、不活性ガス(例えばアルゴン等)等が挙げられる。また、前記原料ガスのうち、プラズマ中において相互に化学反応しにくい2以上のガス種から成るものとしては、例えば、不活性ガス(例えばアルゴン)と、他のガス(例えば、酸素、窒素等)とから成るものが挙げられる。
【0008】
前記雰囲気ガスとは、大気圧プラズマジェット装置の周辺を満たしているガスであり、例えば、空気が挙げられる
。
【0009】
本発明の大気圧プラズマジェット装置では、大気圧プラズマジェットの少なくとも一部は、その周囲が原料ガスで充填されるから、その部分では、大気圧プラズマジェットへの雰囲気ガスの混入が防止できる。その結果、本発明の大気圧プラズマジェット装置は、長いプラズマプルームを生じさせることができる。
【0010】
前記
処理室は、その内部が、前記原料ガスで、外部に対し陽圧になっていることが好ましい。この場合、外部の雰囲気ガスが収容手段の内部に混入しにくいから、大気圧プラズマジェットへの、雰囲気ガスの混入を一層効果的に防止できる。
【0011】
また、前記
処理室は、その内部が原料ガスで陽圧となる範囲において、原料ガスの排出口を有することが好ましい。こうすることにより、プラズマジェットの運転に用いたガスの排出を妨げることがない
。
【0016】
本発明の大気圧プラズマジェット装置を用いれば、
図2に示すように、処理室29内に長いプラズマプルームを噴射することができる。そのため、処理対象物39の表面に深い凹凸がある場合でも、凹部の底までプラズマプルームが届き、その部分を効率よく表面改質できる。また、処理対象物39における広い面を一度に表面改質することができる。 (
2)請求項
2の発明は、
前記
処理室は、前記処理対象物の前記処理室への導入、及び/又は前記処理対象物の前記処理室からの取り出しに利用可能な処理対象物出入り口を備えることを特徴とする請求項
1記載の大気圧プラズマジェット装置を要旨とする。
【0017】
本発明の大気圧プラズマジェット装置は、
図3に示すように、処理対象物出入り口40、41を備えており、そこから処理対象物39の出し入れができるので、処理対象物39の出し入れのとき、処理室29を全面開放する必要がない。そのため、処理対象物39の出し入れごとに処理室29の内部を原料ガスで置換する工程が必要なく、表面処理のプロセスを迅速化することができる。
(
3)請求項
3の発明は、
前記処理対象物出入り口を、前記処理室における一方の側と、前記処理室における前記一方の側とは反対側とに、それぞれ備えることを特徴とする請求項
2記載の大気圧プラズマジェット装置を要旨とする。
【0018】
本発明の大気圧プラズマジェット装置は、
図4に示すように、処理室29における一方の側と、処理室29における前記一方の側とは反対側とに、それぞれ、処理対象物出入り口40、41、45、46を備えているので、例えば、一方の処理対象物出入り口から処理対象物39を処理室29に導入し、表面改質が終了すると、処理室29内の処理対象物39を、反対側の処理対象物出入り口から取り出すことができる。こうすることにより、表面改質の工程を一層迅速化することができる。
(
4)請求項
4の発明は、
前記処理対象物出入り口における開口面積を調整する開口面積調整手段を備えることを特徴とする請求項
2又は
3記載の大気圧プラズマジェット装置を要旨とする。
【0019】
本発明の大気圧プラズマジェット装置は、例えば、大気圧プラズマジェットにより処理対象物の表面改質を行うときは、開口面積調整手段により、処理対象物出入り口における開口面積を小さくすることができる。こうすることで、処理室からの原料ガスの流出を低減し、処理室内の原料ガス圧を高く保つことにより、大気圧プラズマジェットへの、雰囲気ガスの混入を一層効果的に防止できる。
【0020】
また、処理対象物の出し入れのときは、開口面積調整手段により、処理対象物出入り口における開口面積を大きくし、処理対象物の出し入れを容易にすることができる。
(
5)請求項
5の発明は、
前記原料ガスが、窒素、及び酸素のうちの一方であることを特徴とする請求項1〜
4のいずれかに記載の大気圧プラズマジェット装置を要旨とする。
【0021】
本発明は、原料ガスを例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を、実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0023】
1.大気圧プラズマジェット装置の構成
大気圧プラズマジェット装置1は、
図1に示すように、大気圧プラズマジェット発生手段3と、筒状部材5とから成る。
【0024】
上記大気圧プラズマジェット発生手段3は、次のようにして、大気圧プラズマジェットを発生させる。すなわち、原料ガスは、プラズマジェット筒7内で原料ガスが渦巻きを生じるように、プラズマジェット筒7の上端より、中心軸を外して斜めに吹き込まれる。パルス電源9を用いて、パルス幅約20マイクロ秒の高電圧パルスが、内部電極11と外部電極13の間に、繰返し周波数16kHzにて印加される。このときの平均入力電力は0.7〜1kWである。最初の放電はプラズマジェット筒7上部の電極間距離の小さなところで開始する。1つのパルス放電から次のパルス放電までの時間間隔が短いので、前の放電で生じたプラズマは次のパルス放電までアフターグロープラズマとして残留する。このため、次の放電はこのアフターグロープラズマを通して容易に行われる。しかし、原料ガスは絶えず流れているため、プラズマも原料ガスと共に下流のプラズマジェットノズル15先端付近へと移動する。そして、内部電極11の先端とプラズマジェットノズル15の内部先端との安定な放電プラズマ17として維持される。このとき、放電はパルス放電であるため、放電電流の経路はプラズマジェット筒7内部にとどまる。そして、プラズマジェットノズル15から外へ、アフターグロープラズマが、大気圧プラズマジェット25として噴出する。
【0025】
上記筒状部材5は、内径5mm、外径7mm、長さ6cmのステンレス製パイプである。筒状部材5の上側の開口部である導入口21は、絶縁材から成る絶縁リング23を介して、大気圧プラズマジェット発生手段3のプラズマジェットノズル15に、隙間を残すことなく接続している。また、筒状部材5は、その下側に、大気圧プラズマジェット25の導出口27を備えている。この導出口の断面形状は円形である。
【0026】
2.大気圧プラズマジェット装置1の使用方法
原料ガスの種類を窒素とし、原料ガスの流量を40L/minとして、大気圧プラズマジェット発生手段3にて大気圧プラズマジェット25を発生させた。このとき、プラズマプルームは、筒状部材5の導出口27から2cm先まで到達した。
3.大気圧プラズマジェット装置1の作用効果
筒状部材5の導入口23からは、大気圧プラズマジェット25とともに、原料ガスが導入され、筒状部材5の内部は、原料ガスで陽圧になるため、筒状部材5の内部に空気が混入することがない。導入口23から導入された大気圧プラズマジェット25は、原料ガスで充填されている筒状部材5の内部では減衰しにくいので、筒状部材5の導出口27に至り、そこから更に下方に向けて噴射される。その結果、大気圧プラズマジェット25が到達する最大距離は、少なくとも、筒状部材5の分だけ長くなる。また、筒状部材5の外径は細いため、微細な隙間に挿入することができる。よって、筒状部材5を処理対象物表面に存在する凹部に差し込み、筒状部材5の導出口27から大気圧プラズマジェット25を噴出させることにより、凹部の奥まで容易に表面改質することができる。
【0027】
なお、従来のプラズマジェット装置が備えるプラズマジェットノズルは、直径が10〜20mm程度あるので、凹部に差し込むことは困難であった。
【実施例2】
【0028】
1.大気圧プラズマジェット装置の構成
図2に示すように、大気圧プラズマジェット装置1は、大気圧プラズマジェット発生手段3と、処理室29とから成る。なお、大気圧プラズマジェット発生手段3の構成は、前記実施例1と同様である。
【0029】
上記処理室29は、下方が開放した回転放物面状の上部31と、平板状の下部33とから構成される。上部31の中央には、大気圧プラズマジェット発生手段3のプラズマジェットノズル15と連通する導入口35が設けられている。また、上部31と下部33との間には僅かな隙間37が形成されている。なお、上部31の材質は樹脂であり、下端における開口部内径は17cm、導入口35から下部33までの距離は10cmである。また、下部33の材質はガラスである。
【0030】
2.大気圧プラズマジェット装置1の使用方法
処理室29における下部33の上側に、処理対象物として、PETシート39を置いた。このPETシート39の大きさは、上部31の開口面とほぼ等しい大きさである。そして、原料ガスの種類を窒素とし、原料ガスの流量を40L/minとして、大気圧プラズマジェット発生手段3にて大気圧プラズマを発生させた。すると、導入口35から、処理室29の内部に向けて、大気圧プラズマジェット25が噴出した。大気圧プラズマジェット25は、
図5に示すように、PETシート39まで至り、そこから更に横方向に広がった。大気圧プラズマジェット25の噴射は、10秒間行い、その後、PETシート39を取り出した。
【0031】
3.大気圧プラズマジェット装置1の作用効果
上記のように大気圧プラズマジェット25を噴射した後で、PETシート39の親水性改善効果を調べたところ、PETシート39の上面は、その全面にわたって顕著に親水性となっていた。
【0032】
また、表面に凹凸を有する材料の各部にPETシートを貼り付け、同様の実験を行ったところ、大気圧プラズマジェット25が少しでも触れたところは、十分に高い表面改質の効果が確認された。
【0033】
なお、
図5に示すように、大気圧プラズマジェット25のプルームが長大化する理由は、処理室29の内部に、外部から空気が混入しないためであると考えられる。すなわち、処理室29の導入口35からは、大気圧プラズマジェット25とともに、原料ガスである窒素ガスが導入され、処理室29の内部は、窒素ガスで陽圧になるため、処理室29の内部に空気が混入することがない。導入口35から導入された大気圧プラズマジェット25は、窒素ガスで充填されている処理室29の内部では減衰しにくいので、下部33に至り、そこから更に横方法に広がる。
【0034】
なお、上述したとおり、上部31と下部33との間には、微小な隙間37が形成されており、過剰な窒素ガスを外部に排出する機能を奏するが、処理室29の内部は窒素ガスで陽圧となっているので、隙間37から空気が処理室29内に混入することはない。
【実施例3】
【0035】
1.大気圧プラズマジェット装置の構成
基本的には前記実施例2と同様であるが、処理室29の右側に、高さ3cm、幅11cmの長方形の開口部40を備え、この開口部40に、同じサイズの断面を持ち、水平方向の長さが13cmの矩形ダクト41が接続されている。そして、矩形ダクト41の出口に、開口面積を調整するシャッター(開口面積調整手段)43を備えている。開口部40及び矩形ダクト41は、処理室29への処理対象物の導入、及び、処理室29からの処理対象物の取り出しに利用可能である。
【0036】
2.大気圧プラズマジェット装置1の使用方法
シャッター43を充分開け、矩形ダクト41を通して、処理室29内に処理対象物を導入する。その後、シャッター43を下げ、矩形ダクト41の開口面積を小さくする。次に、前記実施例2と同様にして、処理室29内に大気圧プラズマジェットを噴射し、親水化処理を行う。親水化処理が終わると、シャッター43を開け、矩形ダクト41を通して、処理室29から処理対象物を取り出す。
【0037】
3.大気圧プラズマジェット装置1の作用効果
本実施例3の大気圧プラズマジェット装置1は、開口部40及び矩形ダクト41を備えており、そこから処理対象物の出し入れができるので、処理対象物の出し入れのとき、処理室29を全面開放する必要がない。そのため、処理対象物の出し入れごとに処理室29の内部を原料ガスで置換する工程が必要なく、表面改質のプロセスを迅速化することができる。
【0038】
また、本実施例3の大気圧プラズマジェット装置1は、大気圧プラズマジェット25により処理対象物の表面改質を行うときは、シャッター43により、矩形ダクト41の開口面積を小さくすることができる。こうすることにより、処理室29からの原料ガスの流出を低減し、処理室29内における原料ガスの圧力を陽圧に維持して、処理室29への空気の混入を一層効果的に防止できる。なお、シャッター43は、大気圧プラズマジェットにより処理対象物の表面改質を行うときでも、全閉にせず、わずかに開けておくことが好ましい。こうすることにより、プラズマジェットの運転に用いたガスの排出を妨げることがない。
【0039】
また、処理対象物の出し入れのときは、シャッター43を開けることにより、矩形ダクト41の開口面積を大きくし、処理対象物の出し入れを容易にすることができる。
なお、本実施例3でも、前記実施例2と同様に、長大なプラズマプルームが生じ、処理対象物の表面改質効果を奏した。
【実施例4】
【0040】
1.大気圧プラズマジェット装置の構成
基本的には前記実施例3と同様であるが、処理室29の右側に開口部40及び矩形ダクト41を備えることに加え、処理室29の左側にも、開口部45及び矩形ダクト46を備えている。そして、矩形ダクト46の出口には、その開口面積を調整するシャッター(開口面積調整手段)47を備えている。
【0041】
2.大気圧プラズマジェット装置1の使用方法
シャッター43を充分開け、矩形ダクト41を通して、処理室29内に処理対象物を導入する。その後、シャッター43を下げ、矩形ダクト41の開口面積を小さくする。次に、前記実施例2と同様にして、処理室29内に大気圧プラズマジェット25を噴射し、親水化処理を行う。親水化処理が終わると、シャッター47を開け、矩形ダクト46を通して、処理室29から処理対象物を取り出す。
【0042】
3.大気圧プラズマジェット装置1の作用効果
本実施例4の大気圧プラズマジェット装置1は、開口部40、45及び矩形ダクト41、46を備えており、例えば、開口部40及び矩形ダクト41を通して、処理対象物を処理室29内に導入し、開口部45及び矩形ダクト46を通して、処理対象物を取り出すことができるので、処理対象物の出し入れのとき、処理室29を全面開放する必要がない。そのため、処理対象物の出し入れごとに処理室29の内部を原料ガスで置換する工程が必要なく、表面改質のプロセスを迅速化することができる。
【0043】
また、本実施例4の大気圧プラズマジェット装置1は、大気圧プラズマジェット25により処理対象物の表面改質を行うときは、シャッター43、47により、矩形ダクト41、46の開口面積を小さくすることができる。こうすることにより、処理室29内における原料ガスの圧力を陽圧に維持して、処理室29への空気の混入を一層効果的に防止できる。なお、シャッター43、47は、大気圧プラズマジェット25により処理対象物の表面改質を行うときでも、全閉にせず、わずかに開けておくことが好ましい。こうすることにより、プラズマジェットの運転に用いたガスの排出を妨げることがない。
【0044】
また、処理対象物の出し入れのときは、シャッター43、47により、矩形ダクト41、46の開口面積を大きくし、処理対象物の出し入れを容易にすることができる。
なお、本実施例4でも、前記実施例2と同様に、長大なプラズマプルームが生じ、処理対象物の表面改質効果を奏した。
(比較例1)
前記実施例1の大気圧プラズマジェット装置1から、筒状部材5を取り除き、大気圧プラズマジェットを発生させた。原料ガスの流量等、運転条件は前記実施例1と同様とした。このとき、プラズマプルームの長さは、約2cmに過ぎなかった。
(比較例2)
前記実施例1の大気圧プラズマジェット装置1と基本的には同一の構成であるが、原料ガスの種類を空気に変えて、大気圧プラズマジェットを発生させた。原料ガスの流量等、運転条件は前記実施例1と同様とした。すると、大気圧プラズマジェットは、筒状部材5の内部で強く減衰してしまい、筒状部材5の先端からプラズマの噴出が観測できなかった。また、筒状部材5の先端に処理対象物を近づけて保持しても、表面改質の効果が見られなかった。
【0045】
この理由は、窒素と酸素の混合ガス(空気)のプラズマにおいては、生成された窒素原子と酸素原子が互いに激しく反応してNOxを形成し、窒素原子や酸素原子の寿命を極端に短くしたためであると考えられる。
(参考例1)
前記実施例3の大気圧プラズマジェット装置1において、シャッター43を全開としたまま、大気圧プラズマジェット25を噴出した。このとき、プラズマプルームの長さは、約4cmであり、従来の大気圧プラズマジェットの長さである2cmよりは長かったが、前記実施例3におけるプラズマプルームの長さには及ばなかった。
【0046】
この理由は、矩形ダクト41の開口面積が大き過ぎたため、外部の空気が処理室29内に混入していたからであると考えられる。
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【0047】
例えば、前記実施例1において、筒状部材5の先端断面形状を、円形ではなく、細長いスリット形状とすることにより、一度に表面改質できる幅を大きく広げることも可能である。
【0048】
また、前記実施例2〜4において、処理室29に、2個以上の大気圧プラズマジェット発生手段3を取り付け、それらを平行して同時に使用してもよい。こうすることにより、処理対象物が大きいときや、処理対象物の形状が複雑な場合でも、迅速に処理を行うことができる。また、前記実施例2〜4において、複数個の大気圧プラズマジェット発生手段3の噴出口を中心軸とは異なる方向に設け、プラズマジェットノズルの中心軸の周りに回転させることも有効である。さらに、それぞれのプラズマジェットノズルをノズルの中心軸とは異なる軸を中心に回転させて、プラズマの照射面積を広げることもできる。
【0049】
また、雰囲気ガスの混入を防止する混入防止手段としては、例えば、プラズマジェットの先端に隙間を持つことなく接続された細長い筒状部材と、その筒状部材の出口先端付近において、噴出するプラズマジェットを囲むように、プラズマと同種のガスを噴出する手段と、から成るものであってもよい。こうすることによっても、プラズマジェットへの雰囲気ガスの混入を防止し、プラズマプルームをより長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】大気圧プラズマジェット装置1の構成を表す説明図である。
【
図2】大気圧プラズマジェット装置1の構成を表す説明図である。
【
図3】大気圧プラズマジェット装置1の構成を表す説明図である。
【
図4】大気圧プラズマジェット装置1の構成を表す説明図である。
【
図5】大気圧プラズマジェットの噴出状態を表す写真である。
【0051】
1・・・大気圧プラズマジェット装置
3・・・大気圧プラズマジェット発生手段
5・・・筒状部材
7・・・プラズマジェット筒
9・・・パルス電極
11・・・内部電極
13・・・外部電極
15・・・プラズマジェットノズル
17・・・放電プラズマ
21、35・・・導入口
23・・・絶縁リング
25・・・大気圧プラズマジェット
27・・・導出口
29・・・処理室
31・・・上部
33・・・下部
37・・・隙間
39・・・PETシート
40、45・・・開口部
41、46・・矩形ダクト
43、47・・・シャッター