(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゴルフクラブヘッドは、300立方センチメートルよりも大きい体積を有し、前記ゴルフクラブヘッドは、170グラムから220グラムの質量を有することを特徴とする請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ゴルフクラブヘッドの全体的構成
図1および
図2は、グリップ2と、シャフト3と、クラブヘッド4とを備えるゴルフクラブ1を示す。クラブヘッド4は、中央フェース5aと、ヒール5bと、トウ5cと、クラウン5dと、ソール5eとを含む。クラブヘッド4は、一般にバルジ8と呼ばれる、ヒール5bからトウ5cへの湾曲部を含む、クラブフェース6をさらに備える。クラブフェース6はまた、一般にロール9と呼ばれる、クラウン5dからソール5eへの湾曲部も含む。少なくとも一実施形態では、湾曲部の組み合わせは、略環状、またはとロイド部分と同様の形状のクラブフェース6を提供し得る。クラブフェース6は、ヒール5bからトウ5cに、中央フェース5aを通じて水平に延在するX軸Xと、クラウン5dからソール5eに、中央フェース5aを通じて垂直に延在するZ軸Zと、中央フェースを通じて水平に、かつ
図2においてページに向かって延在するY軸Yとをさらに含む。X軸Xと、Y軸Yと、Z軸Zとは、互いに相互直交である。
【0018】
図3に示すように、クラブヘッド4は、クラブヘッドの内部にある重心(CG)5fをさらに有する。クラブヘッド4は、互いに対して相互に直交し、CG座標系を画定するようにCG5fを通過する、CGX軸、CGY軸、およびCGZ軸を有する。CGX軸およびCGY軸は、平らな地面に平行な水平面の状態にある。CGZ軸は、平らな地面に直交な垂直面の状態にある。一実施形態では、CGY軸は、Y軸Yと一致してもよいが、大部分の実施形態では、軸は一致しない。
【0019】
本開示のクラブヘッド4の実施形態は、現在標準のUSGA水置換性試験によって測定されるように、約300立方センチメートル(cc)から約500ccの体積を有する。好ましい実施形態は、約400ccから約470ccの体積を有する。他の実施形態は、500ccよりもさらに大きい体積を有し得る。さらに、本開示のクラブヘッド4の実施形態は、約170グラムから約220グラムの質量を有するが、より高いまたは低い質量が使用され得て、それでもなお本開示の精神および範囲内に留まり得る。
【0020】
図3は、クラブヘッドのヒール5b上で、ゴルフボール10を打つクラブヘッド4の、誇張された描写である。示すように、かつ
図4Bにさらに説明されるように、これは、ゴルフボール10に時計回りのスピンを与え、ゴルフボール10が飛行中に右にカーブする原因となる。先述のように、クラブヘッド4のヒール5b上でゴルフボール10を打つことによって、ゴルフボール10は、クラブヘッド4のCGY軸に対する角度Θで、クラブヘッド4から離れる。当然のことながら、角度Θは、ボールがクラブヘッドを離れる一般的に角度を描写するに過ぎず、中心線に対する実際の角度、または角度が測定され得る点を描写または暗示することを目的としていない。角度Θは、クラブのヒール上で打たれるボールが、最初に中心線の左へと飛行経路上を飛行することを、さらに図解する。
バルジとロール−専門用語
本開示における値を得るために使用される方法は、光学式コンパレータ方法である。
図1を再び参照すると、クラブフェース6は、クラブヘッド4のX軸Xに概して沿う、クラブフェースの幅を横切る一連のスコアライン11を含む。光学式コンパレータ方法では、光学式コンパレータ上に取り付けたVブロック上に、下向きかつ略水平にクラブヘッド4を取り付ける。スコアライン11が、光学式コンパレータのX軸と略並行となるように、クラブヘッド4の方向決定をする。より正確な方向決定ステップも使用し得る。
【0021】
次に、クラブフェース上の幾何学的中心点5aで測定を行う。次に、幾何学的中心点5aの両側にクラブフェース6の幾何学的中心点5aから20ミリメートル離れて、かつクラブヘッドのX軸Xに沿って、また中心点の両側にクラブフェースの幾何学的中心点から30ミリメートル離れて、かつクラブヘッドのX軸Xに沿って、さらなる測定を行う。例えば、機械上の半径関数を使用することによって、弧はこれらの5つの測定点を通り抜ける。この弧は、所与の半径を有する円周に対応する。半径のこの測定は、バルジ半径によって意味するものである。
【0022】
ロールを測定するために、クラブヘッドのZ軸Zが機械のX軸に略並行となるように、クラブヘッド4を90度回転する。クラブフェースの幾何学的中心点5aで、測定を行う。次に、中心点5aの両側に、幾何学的中心点5aから15ミリメートル離れて、かつクラブフェース6のZ軸Zに沿って、また中心点5aの両側に、幾何学的中心点から20ミリメートル離れて、かつクラブフェースのZ軸に沿って、さらなる測定を行う。弧はこれらの5つの測定点を通り抜ける。この弧は、所与の半径を有する円周に対応する。半径のこの測定は、ロール半径によって意味するものである。
【0023】
曲率を1/Rとして定義し、Rは、バルジまたはロールの測定弧に対応する、円の半径である。一例として、0.020cm
−1の曲率を有するバルジは、50cmの半径を有する円の一部である、バルジ測定弧によって測定されるバルジに対応する。0.050cm
−1の曲率を有するロールは、20cmの半径を有する円の一部である、ロール測定弧によって測定されるロールに対応する。
慣性モーメント(MOI)
ゴルフクラブヘッドの慣性モーメントは、一般的に、ゴルフクラブヘッドの重心を通じて延在する軸周囲に画定される。概して、
図2および
図3に示すように、クラブヘッド4の重心5fは、クラブヘッド内に位置決定される。
図3は、重心5fを通過するCGX軸CGXと、CGY軸CGYをさらに図示する。CGZ軸(図示せず)は、重心5fを通過し、ページから出る。重心5fは、CGX軸に沿ってヒール5bとトウ5cとのほぼ中間に、かつクラブヘッド4のCGZ軸に沿って、クラウン5dとソール5eとのほぼ中間に位置する。さらに、
図3に示すように、重心5fは、クラブヘッド4のCGY軸に沿って、クラブフェース6とクラブ12の後部とのほぼ中間に位置する。当然のことながら、重心5fの位置は、様々なクラブヘッド特性に基づき変化する。
【0024】
図2に示すような、ゴルフクラブヘッドのCGX軸周囲の慣性モーメントは、以下の数式によって計算する。
【0026】
ここで、yは、ゴルフクラブヘッドのCGXZ面から微小質量dmまでの距離であり、zは、ゴルフクラブヘッドのCGXY面から微小質量dmまでの距離である。ゴルフクラブヘッドのCGXZ面は、
図2および
図3に示すように、ゴルフクラブヘッドのCGX軸とゴルフクラブヘッドのCGZ軸とによって画定される面である。
【0027】
同様に、ゴルフクラブヘッドのCGZ軸周囲の慣性モーメントは、以下の数式によって計算する。
【0029】
ここで、xは、ゴルフクラブヘッドのCGYZ面から微小質量dmまでの距離であり、yは、ゴルフクラブヘッドのCGXZ面から微小質量dmまでの距離である。
本開示によると、CGX軸周囲のMOI、I
xxは、少なくとも約2500g・cm
2であり、約5000g・cm
2ほどの高さであり得る。CGZ軸周囲のMOI、I
zzは、I
xxよりも大きく、少なくとも約4400g・cm
2であり、約6000g・cm
2ほどの高さであり得る。当然のことながら、CGZ軸周囲のMOIは6000g・cm
2よりも高いことがあり得る。
【0030】
従来のクラブフェースの形状は、必ずしも高MOIクラブに適合するとは限らない。したがって、CGX軸周囲のMOI、I
xxとCGZ軸周囲のMOI、I
zzのこれらの増加を考慮して、バルジおよびロール形状の変化が記載される。
Izzの増加とバルジ半径の増加
CGZ軸周囲のMOI、I
zzが増加する場合、オフセンターヒットに対するギア効果は、上述の通り減少する。これによって、ゴルフボール10がより少ないスピンを得て、したがって、飛行中により小さくカーブするという結果になる。従来のバルジ形状では、ヒールショットのスピンの減少は、飛球線の左へのボールの初期飛行経路が、着地のときに飛球線に戻る可能性を小さくする。同様に、従来のバルジ形状では、トウショットのスピンの減少は、目的とする飛球線の右へのボールの初期飛行経路が、着地のときに飛球線に戻る可能性を小さくする。しかしながら、バルジ8の半径が、クラブフェース6を平らにするために増加すると、クラブヘッド4のヒール5b上で打たれたゴルフボール10は、ゴルフクラブ20の中心線に対してより小さい角度Θで離れ、比較的に高いMOIを有するクラブに関連した、ギア効果の減少を相殺する。
【0031】
図4は、クラブヘッドのヒール5bでゴルフボールを打つ、誇張されたバルジを有するがギア効果を有さない、仮定上のクラブヘッドのフェース6を図解する。飛行経路41は、ゴルフクラブ20のY軸に対して特定の角度Θ
1で、第1のバルジを有し、ギア効果を有さないクラブヘッドのフェース6を離れる、ゴルフボールの飛行経路を示す。一方で、
図4Aは、
図4に示す第1のバルジよりも大きい半径の、第2のバルジを有するクラブヘッドのフェース6’(同様にギア効果を有さない)を離れる、ゴルフボールの飛行経路を図解する。飛行経路42は、ゴルフクラブ20のY軸に対して特定の角度Θ
2で、ゴルフクラブを離れる。クラブヘッドのフェース6’の表面がより平らであるため、角度Θ
2は、角度Θ
1よりも小さいことがわかる。
【0032】
図4Bは、バルジを有さないが、異なる慣性モーメントI
zzを有し、上述のような異なるギア効果をもたらす、2つの仮定上のクラブヘッドを図解する。飛行経路43は、より低いI
zz、したがってより高いギア効果を有するクラブのクラブヘッドのフェースを離れる、ゴルフボールの飛行経路を示す。飛行経路43が、より大きいボールスピンによって、より右にカーブすることがわかる。一方で、飛行経路44は、より高いI
zz、したがって減少したギア効果を有するクラブヘッドのフェースを離れる、ゴルフボールの飛行経路を示す。飛行経路44は、飛行経路43よりも小さくカーブすることがわかる。上記のように、クラブヘッドが、クラブヘッドの中央フェースと一致しない点でボールを打つとき、クラブヘッドが回転するため、飛行経路43、44はカーブする。このねじれによって、ボールは、カーブした飛行経路をもたらすスピンを得る。クラブヘッドがより高いI
zzを有する場合、それは、より低いI
zzを有するクラブヘッドよりも小さくねじれ、ゴルフボールにより小さいスピン(したがって、より直線の飛行経路)を与える。
Ixxの増加とロール半径の減少
図1および
図2に記載される要素に言及すると、クラブヘッド4のロール9は、ゴルフボール10が、クラブヘッド4の中央フェース5aよりも上または下のいずれかのクラブフェース6上の点で、クラブヘッド4によって打たれるときに得る、バックスピンの量の一因となり得る。クラブヘッド4の中央フェース5aよりも下のクラブフェース6上の点で打たれるショットは、上記のように、中央フェース5aよりも上で打たれるショットよりも、大きい量のバックスピンを有する。
図5は、大きい量のバックスピンを有するゴルフボール10の飛行経路51を示す。飛行経路が上方に「テンプラ」し、次に急激に落ちることがわかる。一方で、より低い量のバックスピンを有するゴルフボール10の飛行経路52を示す。飛行経路がはるかに小さく「テンプラ」し、したがって、ボールがさらに遠くに飛ぶことがわかる。
【0033】
クラブヘッド4のロール9が減少する場合、クラブヘッド4の中央フェース5aよりも上で打たれるショットと、中央フェース5aよりも下で打たれるショットとに対する、バックスピン間の変化は減少する。X軸周囲のMOI、I
xxが増加する、すなわち、クラブヘッド4のねじれがより小さいとき、同様の効果が認められる。クラブヘッド4の中央フェース5aよりも下の点で、ゴルフボール10を打つとき、クラブヘッド4のねじれのこの減少は、最終的に、クラブヘッド4の中央フェース5aよりも上で打たれるショットと、中央フェースよりも下で打たれるショットとの間のバックスピンの変化をより小さくさせる。増加したMOI、I
xxと、減少したロール9との効果を組み合わせることによって、クラブヘッド4の中央フェース5aよりも上で打たれるショットと、クラブヘッド4の中央フェース5aよりも下で打たれるショットとの間のバックスピンの変化は減少し、したがって、ゴルフボール10の着地位置の変化は減少する。さらに、クラブヘッドのロールの変化は、発射角度に影響を及ぼし得る。発射角度もまた、ボールの着地位置に影響を及ぼすため、ゴルフクラブの望ましい性能を提供するために、望ましい発射角度と望ましいスピンとのバランスを取る、ゴルフクラブヘッドのためのロールを選択し得る。
可変のフェース厚さの効果
さらなる要因も同様に、ギア効果の一因となり得る。そのような一要因は、可変のフェース厚さであり、クラブフェース6は、クラブフェースの異なる範囲で変厚を有する。概して、クラブフェース6の正面と背面との画定として、この厚さを測定し、次に、正面と背面との距離および複数の点を測定するが、異なる測定技術も許容され、本開示の精神および範囲内に含まれる。可変のフェース厚さの実施例は、米国特許第6,800,038号、第6,824,475号、第6,997,820号、および第7,066,832号で見ることができ、それらの本開示の出願者によって所有され、その内容は、参照することによって本明細書に組み込まれる。
図6Aおよび
図6Bは、クラブフェースの中心部7において、クラブフェース6の他の範囲においてよりも、薄い可変のフェース厚さを有するクラブフェース6の、考えられる一実施例の断面図を示す。
【0034】
可変のフェース厚さは、中心から外れて、例えば、クラブフェース6のヒール5bまたはトウ5c付近で打たれるショットに対する、より速いボールスピードを生成し得る。この効果は、クラブフェース6上のCORの全体の有効範囲を増加させる。可変のフェース厚さは、クラブフェース5aのフェース中心でのCORを、法定制限よりも下に制限し得る。上記のように、より高いCORは、概して、ギア効果の増加をもたらす。そこで、当然のことながら、CORと可変のフェース厚さとの組み合わせは、中心から外れて打たれたショットに対するギア効果を増加させ、したがって、ギア効果の増加を相殺するために、より高いバルジ8とより低いロール9とを有するクラブフェース6の必要性を増す。
シミュレーション結果の傾向−ロール
本開示の好ましい実施形態は、バルジ半径よりも小さいロール半径を有する。特定の実施形態では、バルジの半径は、ロール半径よりも7.62cm大きい。バルジの曲率は、約0cm
−1から約0.027cm
−1であり、バルジの曲率の逆数は、ロールの曲率の逆数よりも少なくとも7.62cm大きいが、他の実施形態は、より大きい、または小さい差異を有し得る。言い換えれば、バルジの曲率、K
b(cm)、およびロールの曲率、K
r(cm)は、以下の数式を満たす。
【0036】
種々の異なる試験パラメータを用いて、コンピュータシミュレーションを行った。
図7は、複数のヘッドスピードとX軸周囲のMOI、I
xxとに対する、平均飛距離をヤードで示す。70mph(72)、90mph(74)、および103mph(76)、のヘッドスピードに対するグラフを描写する。これらのグラフのそれぞれにおいて、X軸は、ロール半径をセンチメートルで描写し、Y軸は、平均飛距離をヤードで描写する。各線は、それぞれ72(a)、74(a)、および76(a)という題によって示されるように、異なるX軸周囲のMOI、I
xxに対するシミュレーション結果を描写する。中央フェースに対応するクラブフェース上の点、中央フェースに対応するクラブフェース上の点よりも1.27cm上、および中央フェースに対応するクラブフェース上の点よりも1.27cm下で、クラブフェースがボールにインパクトした場合のコンピュータシミュレーションによって、これらのグラフを生成した。次に、これらのインパクトの結果を合わせて平均化した。概して、グラフは、約0.033cm
−1から約0.050cm
−1のロールの曲率に対応する、約20cmから約30cmのロール半径からの、比較的一定の飛距離を描写する。グラフ76に示す4500g・cm
2および5000g・cm
2のI
xx値に対応する線等、より高いI
xx値に対して、この一定性が特に見られる。コンピュータシミュレーションにおけるこの一定性は、ヘッドスピードとI
xx値の大半に対して、ロール半径が、約0.033cm
−1から約0.066cm
−1のロールの曲率に対応して、約15.2cmから約30.5cmであるべきであることを示す。これらのコンピュータシミュレーションによって示されるように、ロール半径の理想的な範囲は、約0.039cm
−1から約0.049cm
−1の好ましいロールの曲率範囲に対応して、約20.3cmから約25.4cmである。
【0037】
図8は、例示的な一実施形態を使用したコンピュータシミュレーションに従った、複数の異なるCGX軸周囲のMOI、I
xxに対するロールを示すグラフ80を描写する。これらのシミュレーションに対して、バルジ半径を、約0.028cm
−1のバルジの曲率に対応して、35.56cmに設定し、I
zz値を、5160g・cm
2に設定した。中央フェースに対応するクラブフェースの点、クラブの中央フェースよりも1.27cm上のZ軸Z、および中央フェースに対応するクラブフェースの点よりも1.27cm下のZ軸Z上でのインパクトに対して、インパクト位置をシミュレーションした。グラフ80のY軸に沿って、飛球の平均距離(ヤードで)を描写し、グラフのX軸に沿って、CGX軸周囲のMOI、I
xxを描写する。異なる線のそれぞれは、記号解82によって示されるように、異なるロール半径に対応する。グラフ80でわかるように、約4150g・cm
2未満のCGX軸周囲のMOI、I
xxに対するロール半径は、約0.049cm
−1のロールの曲率に対応して、20.3cmである。約4150g・cm
2を超えるCGX軸周囲のMOI、I
xxに対するロール半径は、約0.039cm
−1のロールの曲率に対応して、25.4cmである。他の実施例では、クラブのサイズまたは構成、風、またはクラブヘッドスピード等の要因に基づいて、関係が異なり得る。これらの要因は、異なるCGX軸周囲のMOI、I
xxに対する理想的なロール半径を変化させるために、組み合わされ得て、さらに、環境および使用者に関連した要因によって決まる、異なる平均距離の測定結果をもたらし得る。
シミュレーション結果の傾向−バルジ
様々なCGZ軸周囲のMOI、I
zzに対するバルジ半径を決定するために、コンピュータシミュレーションを行った。これらのシミュレーション結果を計算するために使用したデータは、可変慣性クラブモデルを使用した、一連のシミュレーションしたインパクトに基づく。ゴルフクラブの中央フェースに対応するクラブフェース上の点から、ゴルフクラブのヒールおよびトウに向かって、1.905cm離れた中央フェースX軸X上、およびゴルフクラブの中央フェースに対応するクラブフェース上の点から、ヒールおよびトウに向かって、3.175cm離れたX軸X上でのインパクトをモデルにした。使用したインパクトスピードは、70mph、90mph、103mph、および130mphであった。この試験に対して、Izz値は、4000g・cm
2から6000g・cm
2の範囲であった。次に、試験結果を平均化し、以下の表1および表2に示す。表1は、ゴルフクラブの中央フェースから1.905cm離れたヒットに対する、平均化された結果を表し、表2は、ゴルフクラブの中央フェースから3.175cm離れたヒットに対する、平均化された結果を表す。R
バルジは、センチメートルでのバルジ半径である。
【0040】
次に、インパクト位置の標準差異対インパクト時のヘッドスピードを考慮する、統計モデルに従って、表1および表2の結果を合わせて平均化した。クラブの中央フェースにより近いショットに対してよりも、クラブのヒールまたはトウに向かってさらに遠くオフセンターであるショットに対して、より大きい偏差があると予測される。そして、表3に示すように、表1および表2に示すバルジ半径の数式に対する、重み付けされた傾きおよび切片が求められた。
【0042】
表3からわかるように、コンピュータシミュレーションに従った、70mphのヘッドスピードで振られるゴルフクラブに対する、バルジ半径、R
バルジ(センチメートルで)は、R
バルジ=0.00517*I
zz+20.8である。同様に、90mphのヘッドスピードで振られるゴルフクラブに対する、バルジ半径、R
バルジ(センチメートルで)は、0.00522*I
zz+12.7である。表3を参照すると、他のヘッドスピードに対しても同様の結果が得られた。
【0043】
次に、ゴルファーがそのヘッドスピードでクラブを振る可能性によって決まる重み付けモデルに従って、表3からの各ヘッドスピードに対する傾きおよび切片を、合わせて平均化した。例えば、実際に130mphのヘッドスピードでゴルフクラブを振るプレイヤーは、ほとんどいないが、90mphのヘッドスピードは、より多く見られる。この重み付け平均化は、0.00505の傾きと13.95の切片を生成した。したがって、好ましい一実施形態では、数式R
バルジ=0.00505*I
zz+13.95によって、所与のCGZ軸周囲のMOI、I
zzに対する理想的なバルジ(センチメートルで)を決定し得る。
【0044】
上記のように、好ましいCGZ軸周囲のMOI、I
zzは、約4400g・cm
2から約6000g・cm
2である。したがって、好ましいR
バルジは、それぞれ約0.023cm
−1から約0.028cm
−1の好ましいバルジの曲率範囲に対応して、約36.17cmから約44.25cmである。他の実施形態では、バルジの曲率は、0.016cm
−1等、さらに低くあり得て、約60.96cmのバルジ半径に対応する。特定の極端な実施形態では、バルジの曲率は、0cm
−1ほど低くあり得る。異なる統計モデルを使用して、合理的な誤差範囲内の異なる結果を得る場合があり、したがって、これらの値のわずかな変化も想定される。
【0045】
図9は、本開示の例示的な一実施形態に対する、CGZ軸周囲のMOI、I
zzの関数として、コンピュータシミュレーションしたバルジを示すグラフ90を描写する。グラフ90のY軸に沿って、バルジをセンチメートルで描写し、グラフのX軸に沿って、CGZ軸周囲のMOI、I
zzを描写する。グラフ90に示すように、CGZ軸周囲のMOI、I
zzの、1000g・cm
2につき約5センチメートルの増加によって、バルジが増加するように、バルジは、該して、Z軸周囲のMOI、I
zzに関連する。他の実施例では、具体的なクラブのサイズまたは構成、風、またはクラブヘッドスピード等の要因に基づいて、関係はわずかに異なり得る。
シミュレーション結果の傾向−バルジ/ロール
上記のように、好ましい実施形態では、ロール半径が、20.3センチメートルから25.4センチメートルであることが想定される。20.3センチメートルのロール半径R
ロールに関して、これは、以下のバルジ半径対ロール半径の数式を生成する。
【0047】
約3500g・cm
2から約6000g・cm
2のCGZ軸周囲のMOI、I
zzの範囲に関して、これらの数式は、各ヘッドスピードに対する、バルジ半径のロール半径に対する比の以下の範囲を与える。
【0048】
70mph:1.90:1〜2.55:1
90mph:1.53:1〜2.17:1
103mph:1.45:1〜2.05:1
好ましい実施形態では、理想的なR
バルジ数式R
バルジ=0.00505*I
zz+13.95を使用して、バルジ半径のロール半径に対する比は、
【0050】
となる。約4400g・cm
2から約6000g・cm
2のCGZ軸周囲のMOI、I
zzの範囲を使用して、この数式は、1.78:1〜2.13:1の、バルジ半径のロール半径に対する比の範囲を生成する。
【0051】
好ましいロール半径の上限、25.4センチメートルを使用して、同様の範囲の比を得ることができる。バルジ半径のロール半径に対する好ましい比は、
【0053】
となる。約4400g・cm
2から約6000g・cm
2のCGZ軸周囲のMOI、I
zzの範囲を使用して、この数式は、1.42:1〜1.74:1の、バルジ半径のロール半径に対する比の範囲を生成する。
【0054】
曲率を1/R
バルジまたは1/R
ロールとして定義するため、バルジ半径のロール半径に対する比を1/(R
バルジ/R
ロール)として定義できる。次に、好ましい実施形態では、バルジ半径のロール半径に対する比、R
Cに対するコンピュータシミュレーションに従って、有用な境界数式を、
【0056】
のように定義し得る。15.24センチメートルから30.48センチメートルのロール半径のより広範な範囲を使用して、曲率のより広範な比、R
Cを、以下のように定義し得る。
【0058】
実験結果の傾向−バルジ
様々なバルジ半径およびCGZ軸周囲のMOI、I
zzの実験的試験を行い、複数のI
zzに関して、各I
zzに対するバルジがわかった。結果を以下のように要約する。
【0060】
次に、異なるCGZ軸周囲のMOI、I
zzに対するバルジ半径に対する、線形傾きおよび切片を決定するために、表4のデータを線形に適合した。概して、表4に示されるような実験的試験結果は、Rがセンチメートルでのバルジ半径である、数式R
バルジ=0.0085*I
zz+3.387を使用して、所与のCGZ軸周囲のMOI、I
zzに対する理想的なバルジ半径がわかることを示す。
【0061】
これらの実験結果は、変数R
Cによって示される、バルジの曲率をロールの曲率で割った比に対する範囲を、さらに示す。この範囲を、数式
【0063】
によって、表現することができる。
ここでも上記の数式のロール半径は、15.24cmから30.48cmである。この比およびこれらの実験結果は、CGZ軸周囲のMOI、I
zzの範囲に対する、好ましいバルジの曲率のロールの曲率に対する比(R
c)の範囲を示すのに有用である。例えば、約4400g・cm
2から約6000g・cm
2のI
zzに対するR
cの全範囲は、0.28から0.75である。約4400g・cm
2から約5000g・cm
2のI
zzに対するR
cの範囲は、0.33から0.75である。上記の表1を参照することによって、ゴルフクラブのこの実施形態に対する、R
cの他の範囲がわかる。
【0064】
本発明の少なくとも1つの利点は、本明細書に記載のバルジとロールの範囲が、ギア効果をさらに適切に相殺し、したがってより大きなI
zzゴルフクラブヘッドに対し、ゴルフボールによる飛距離を向上しつつ、正確性を向上することである。
【0065】
さらに、本発明の少なくとも1つの利点は、本明細書に記載のバルジの曲率およびロールの曲率はスイング速度の変化に適応することである。上記の実験的試験データで発見されたバルジの曲率およびロールの曲率の比は、様々なスイング速度を通じ、大きなMOIゴルフクラブヘッドにおける最大性能を達成する。
【0066】
さらに、上記のバルジのロールに対する比率範囲は、バルジのロールに対する比が単純に1:1であろうという誤った最初の仮説のため、予想外の結果であった。本発明の発見の過程において、より平らなフェースは、より短い距離のゴルフショットを予想外に提供した。しかし、より長い距離を達成するようにロールの曲率を増加することは、1:1のバルジ対ロールの曲率比の下での正確性を犠牲にするであろう。
【0067】
したがって、本発明は、最も好ましく効果的なバルジ対ロールの曲率比を開示する。したがって、より直線のより長いゴルフショットが可能である。
開示される発明の原理が応用され得る多くの考えられる実施形態を考慮すると、図解される実施形態は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を制限するとみなされるべきではないことが、認識されるべきである。