【実施例1】
【0013】
(全体構成)
まず、本実施例のコードリールの取付構造2を備える移動式クレーンとしてのカーゴクレーン1(積載型トラッククレーン)の全体構成について、
図1を用いて説明する。
【0014】
本実施例のカーゴクレーン1は、走行機能を有する車体10と、車体10の転倒を防止するアウトリガ11と、車体10に旋回自在に立設されたポスト12と、ポスト12に起伏自在に支持された伸縮ブーム13と、伸縮ブーム13を起伏させる起伏シリンダ14と、ワイヤ15を介して伸縮ブーム13先端から吊り下げられるフック16と、荷物を積載する荷台17と、運転用のキャビン18と、を備えている。
【0015】
このポスト12、伸縮ブーム13及び起伏シリンダ14は、車体10の中央前寄りの位置に、荷台17の前方かつキャビン18の後方に配置されている。したがって、ポスト12、伸縮ブーム13及び起伏シリンダ14は、旋回する際には、荷台17前方に立設された鳥居17a及びキャビン18の頭部18aに接触しないように回転することが必要となる。
【0016】
また、ポスト12の内部には、ウインチ6(
図2参照)及び減速機(不図示)が配置されており、ウインチモータを正逆回転することでワイヤ15を巻取り又は繰り出すことができる。ワイヤ15は、先端ブーム134のシーブ19で向きを変え、基端ブーム131の下側のシーブ61,62を介してウインチ6に接続されている。
【0017】
(ブームの構成)
そして、本実施例の伸縮ブーム13は、
図2に示すように、基端部がポスト12に起伏自在に支持される基端ブーム131、基端ブーム131に挿入される第1の中間ブーム132、第1の中間ブーム132に挿入される第2の中間ブーム133、第2の中間ブーム133に挿入される先端ブーム134、によって4段の入れ子状(テレスコープ状)に構成されている。
【0018】
伸縮ブーム13の内部には、
図3,4に示すように、全体の長さを変える同時伸縮機構として、第1伸縮シリンダ74、第2伸縮シリンダ75及び伸縮ワイヤ機構(不図示)が配置されている。
【0019】
第1伸縮シリンダ74は、基端ブーム131の基端部の枢支点73に取付けられている。第2伸縮シリンダ75は第1伸縮シリンダ74のチューブのロッド側上部に取付けられ、左右両側に伸縮ワイヤ機構のシーブ76が設置されている。したがって、第1伸縮シリンダ74よりも先端側かつ上側に斜めにずらして第2伸縮シリンダ75が配置されることとなる。
【0020】
また、本実施例の先端ブーム134のブームヘッド135には、
図2に示すように、ワイヤ15が過剰に巻上げられて下方からフック16が衝突することを防止する過巻検出器3が設置されている。
【0021】
この過巻検出器3は、フック16によって持ち上げられる重錘31、重錘31を吊下げるチェーン32、チェーン32が連結されるセンサ33、を備えている。
【0022】
センサ33が検知した過巻状態は、信号線であるコード40を通じて安全装置のコントローラ(不図示)に伝送される。コード40は、後述するブーム長さ検出器5のコード40として兼用されるもので、伸縮ブーム13内部において、ブームヘッド135の結束部41に結束された後、サポート42の中を通り、抑えローラ43及び転向ローラ44を介してブーム長さ検出器5のコードリール51に巻き回される。
【0023】
他方、本実施例の基端ブーム131は、
図3,4に示すように、鋼板によって箱状に形成されるもので、本体をなす七角形断面の筒状部80、筒状部80の基端面を塞ぐ基端板部81、筒状部80の後方側の底面部分を塞ぐ底板部82、両側に貼設される側板部83,83、によって構成されている。
【0024】
さらに、基端板部81には、基端部の上側を鈍角(例えば100°〜130°)に折り曲げるようにして、伸縮ブーム13を起仰した状態の後方への突出量を抑える鈍角出隅部84が形成されている。したがって、基端ブーム131の基端部には、回転支点71を基準とすると上側の出隅部である鈍角出隅部84が先端側にずれて、回転支点71の上方に切欠部85が形成されることとなる。
【0025】
そして、基端ブーム131の基端部には、伸縮ブーム13が起伏する際に回転中心となる回転支点71と、起伏シリンダ14が取付けられる取付支点72と、第1伸縮シリンダ74が取付けられる枢支点73と、が配置されている。
【0026】
この回転支点71は、基端ブーム131の基端部において、最も基端側かつ下側に形成される鋭角の出隅部に配置されている。一方、取付支点72は、基端ブーム131の基端部において、回転支点71よりも先端側、かつ、下側に配置されている。さらに、枢支点73は、基端ブーム131の基端部において、前後方向には回転支点71と取付支点72の間であって転向ローラ44よりも前方に、上下方向には回転支点71の上方に配置されている。
【0027】
(コードリールの取付構造)
本実施例は、ブームヘッド135の結束部41に固定されたコード40を巻取るコードリール51と、コードリール51の回転変位を検出する回転変位検出器としてのポテンショメータ52と、から成るブーム長さ検出器5を備えている。
【0028】
コードリール51は、正逆回転自在の筒状に形成されるもので、コード40を巻取り又は繰り出すことで、コード40をたるみのない状態に保持しつつ、コード40の全長を伸縮ブーム13の基端部から先端部までの実長に合わせる。
【0029】
回転変位検出器としてのポテンショメータ52は、コードリール51の回転軸の回転変位を電圧信号として検知する3線式の可変抵抗器で、検知した回転変位はコントローラにおいて長さに変換される。
【0030】
さらに、ブーム長さ検出器5は、全体を支持する支持板53を基端ブーム131の底板部82にボルトで固定することによって、基端ブーム131の下面側から取外し可能に形成されている。
【0031】
つまり、基端ブーム131の底板部82には、コードリール51及びポテンショメータ52が一体として通過する大きさの取付孔82aが形成されている。そして、取付孔82aよりひと回り大きい支持板53を底板部82に下方から当接させ、支持板53の四隅をボルトで固定することで、ブーム長さ検出器5全体が取外し可能に形成されている。
【0032】
そして、この基端ブーム131と、コード40と、コードリール51と、によって、本実施例のコードリールの取付構造2が構成されている。
【0033】
すなわち、本実施例のコードリールの取付構造2は、基端下部に起伏動の回転支点71を有する基端ブーム131と、伸縮ブーム13の先端部のブームヘッド135の結束部41に一端が取付けられ、伸縮ブーム13の内側に配線されるコード40と、コード40を巻取るコードリール51と、を備え、コードリール51は、基端ブーム131の後下方において回転支点71に隣接して内蔵される。
【0034】
つまり、本実施例では、コードリール51が、基端ブーム131の内部において、基端下部に配置された回転支点71に隣接する位置であって、基端ブーム131の後下方に形成される空間に配置されている。
【0035】
言い換えると、コードリール51は、前後方向については、回転支点71より先端側かつ取付支点72より基端側であって、枢支点73とほぼ同じ位置に配置される。また、コードリール51は、上下方向については、取付支点72より上側かつ枢支点73より下側であって、回転支点71とほぼ同じ高さの底板部82上に配置される。
【0036】
(作用・効果)
次に、本実施例のコードリールの取付構造2の有する作用・効果を列挙して説明する。
【0037】
(1)以上に説明したように、本実施例のコードリールの取付構造2は、伸縮ブーム13の長さを検出するコードリールの取付構造2であるため、伸縮ブーム13の長さを検出することで、作業半径を計算できるようになるため、カーゴクレーン1の安全性を向上することができる。
【0038】
そして、本実施例のコードリールの取付構造2は、基端ブーム131と、コード40と、コードリール51と、を備え、コードリール51は基端ブーム131の基端下部において回転支点71に隣接して内蔵される。
【0039】
このようなコードリール51の配置を採用することで、コード40を伸縮ブーム13の内部に収容しつつ、伸縮ブーム13を起仰した状態でのコードリール51の後方への突出量を少なくすることができる。
【0040】
したがって、コード40を内蔵することで、外側に配線した場合と比べてコード40が傷付きにくくなるうえ、後方への突出量が減少することで、鳥居17a等との干渉を防止できるため旋回しやすくなる。
【0041】
加えて、本実施例のコードリールの取付構造2は、伸縮ブーム13のラップ長さの減少がない、必要以上に基端ブーム131の断面高さが高くならない、必要以上に重量が増えない、先端ブーム134に取付けている伸縮ワイヤ固定用のサポート42を従来構造のまま採用できる、などの特徴を備えている。
【0042】
つまり、本実施例のコードリールの取付構造2は、コードリール51を中間ブーム132の基端側(後方側)に配置するため、中間ブーム132を先端側(前方側)にずらす必要がないのでラップ長さが減少することはない。
【0043】
また、コードリール51を避けることを目的として枢支点73を上方にずらす必要もないため、必要以上に基端ブーム131の断面高さが高くなることもない。
【0044】
さらに、コードリール51をブーム断面内の下側に配置することで、上側に配置する場合と比べて、サポート42の高さを高くする必要がなく、従来構造のまま採用できる。
【0045】
加えて、コードリール51は、伸縮ブーム13の幅方向中央に配置されることで、同じく幅方向中央に配置された抑えローラ43及び転向ローラ44と同一面上に位置するため、経由するシーブの数を最小限に抑えることができる。
【0046】
(2)また、基端ブーム131の基端部の上側に、伸縮ブーム13を起仰した状態の後方への突出量を抑える鈍角出隅部84を形成することで、ポスト12、伸縮ブーム13及び起伏シリンダ14を旋回する際に、荷台17の鳥居17aやキャビン18の頭部18aが支障となることがない。
【0047】
つまり、起伏シリンダ14を伸長することで伸縮ブーム13を起仰すると、基端ブーム131も回転支点71を中心として回転することとなるため、基端部の上側部分が後方へ突出することとなる。そこで、この上側部分を斜めに切り欠くようにして切欠部85を設けることで、基端部の上側を前方(先端側)に移動させれば、起仰(回転)した状態での伸縮ブーム13後端の後方への突出量が減って旋回しやすくなる。
【0048】
(3)さらに、コードリール51は、基端ブーム131の下面に取付孔82aを設け、この取付孔82aを通じて支持板53ごと取外すように構成することで、基端ブーム131の下面側から取外し可能になる。
【0049】
このように、底板部82に取付孔82aを設けて基端ブーム131の下面から取外し可能に構成することで、基端ブーム131の基端部分の部材強度をほとんど損なうことなく、コードリール51の点検や取替えが可能となる。
【0050】
つまり、基端ブーム131の基端部では、取付支点72から起伏シリンダ14から上向きの力が作用するのと同時に、回転支点71では下向きの力が作用するため、側板部83に取付孔を設けると局部座屈しやすくなる。そこで、底板部82に取付孔82aを設けることで、座屈強度をほとんど損なうことなくコードリール51の点検や取替えが可能となる。
【0051】
しかも、下面から取外したコードリール51は、そのまま下方に引き抜きつつコード40を繰り出して作業しやすい場所まで移動させることができるため、点検・交換がきわめて容易になる。
【0052】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0053】
例えば、前記実施例では、コード40が、伸縮ブーム13の長さ計測及び過巻検出器3の通信の両方の用途に使用される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、通信のみに使用される場合や長さ計測のみに使用される場合にも本発明を適用できる。つまり、本発明が適用されるコードリールは、ブーム長さ検出器5として用いられるものに限定されない。
【0054】
加えて、前記実施例では、伸縮ブーム13がカーゴクレーン1に搭載される例について説明したが、これに限定されるものではなく、ラフテレーンクレーンなどの移動式クレーンや高所作業車の伸縮ブームにも本発明を適用できる。
【0055】
また、前記実施例では、第1伸縮シリンダ74と第2伸縮シリンダ75の位置関係として、第2伸縮シリンダ75が第1伸縮シリンダ74の斜め前方に配置される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第2伸縮シリンダ75が第1伸縮シリンダ74の斜め後方等に配置される場合にも本発明を適用できる。
【0056】
さらに、前記実施例では、コードリール51が枢支点73の下方に配置される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、枢支点73の後方に配置されるものであってもよい。
【0057】
そして、前記実施例では、基端ブーム131の基端部に鈍角出隅部84及び切欠部85を設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、鈍角出隅部84及び切欠部85を設けてなくてもよい。
【0058】
また、前記実施例では、コードリール51が取外し可能に形成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、溶接などによって強固に固定されるものであってもよい。