(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725857
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】原子力発電プラントの主要一次冷却システムに水を充填し、該システムから空気を排出する方法
(51)【国際特許分類】
G21C 19/303 20060101AFI20150507BHJP
G21C 19/02 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
G21C19/30 E
G21C19/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-525405(P2010-525405)
(86)(22)【出願日】2008年9月18日
(65)【公表番号】特表2010-539507(P2010-539507A)
(43)【公表日】2010年12月16日
(86)【国際出願番号】FR2008051673
(87)【国際公開番号】WO2009047451
(87)【国際公開日】20090416
【審査請求日】2011年8月5日
(31)【優先権主張番号】0706599
(32)【優先日】2007年9月20日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504462489
【氏名又は名称】エレクトリシテ・ドゥ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ドメルル,オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ミルルー,フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ル ベール,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ジトン,エリック
【審査官】
村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−186793(JP,A)
【文献】
米国特許第04647425(US,A)
【文献】
米国特許第05706319(US,A)
【文献】
米国特許第6301319(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/303
G21C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電プラントを稼働停止した後に、該原子力発電プラントの主要一次冷却システム(1)に水を充填し、該主要一次冷却システムから空気を排出する方法であり、
上記主要一次冷却システム(1)は、原子炉建屋(4)のプール内に配置された反応容器(2)と、複数の一次冷却ポンプ(5)と、上記反応容器(2)より高い位置に配置された複数の蒸気生成器用チューブ(7)を有する少なくとも1つの蒸気生成器(6)と、加圧器(8)とを備え、
上記方法は、
a)上記反応容器(2)および上記プールに水を充填するステップと、
b)上記反応容器(2)に核燃料を装荷するステップと、
c)上記プールの水を排出し、上記反応容器(2)を遮蔽するためのヘッド(10、14)を所定位置に載置するステップと、
d)上記主要一次冷却システムの水位を調節して低稼働範囲に合わせ、上記蒸気生成器用チューブ(7)内の空気、上記加圧器(8)内の空気、および上記反応容器(2)内の空気が互いに行き来できるようにするステップと、
e)上記反応容器(2)および上記加圧器(8)に設けられた排気口に接続された真空ポンプ(11)で吸引することによって、上記主要一次冷却システム(1)を空にするステップと、
f)上記主要一次冷却システム(1)に水を上記低稼働範囲よりも高い「真空レベル」と称する水位まで満たし、その後、上記排気口を開くことによって上記主要一次冷却システム(1)を大気圧に等しくし、こうすることで上記主要一次冷却システム(1)内の水を上記蒸気生成器用チューブ(7)に排出するステップと、
g)上記主要一次冷却システム(1)に水を上記加圧器(8)の最上部まで満たし、上記原子力発電プラントの起動作業が継続できるようにするステップとを備え、
一連のステップa)、b)、およびc)が実施される前に、ステップd)、e)、およびf)が実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
上記ステップd)の前に、擬似ヘッド(14)を載置して上記反応容器(2)を遮蔽し、上記擬似ヘッド(14)が上記反応容器(2)につながるところで、封止手段(15)を使って上記擬似ヘッド(14)を封止するステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記ステップf)の後に、上記擬似ヘッド(14)を取り外すステップを備えることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記擬似ヘッド(14)を上記反応容器(2)上に封止するための封止手段(15)として使用されるフランジ(16)を設けることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントの主要一次冷却システムに水を充填し、該システムから空気を排出する方法に関する。この充填および排出は、一般に燃料補給のために発電プラントの操業を停止した後に行われる。また、上記主要一次冷却システムは、原子炉建屋のプール内に配置された反応容器と、複数の一次冷却ポンプと、上記反応容器より高い位置に配置された複数の蒸気生成器用チューブを有する少なくとも1つの蒸気生成器と、加圧器とを備えている。
【0002】
通常、原子力発電プラントには原子炉建屋があり、この原子炉建屋は、反応容器を発電プラントの主要な核関連施設とともに納める、コンクリート製の収納建造物からなっている。上記反応容器は、核燃料を含む核燃料集合体によって形成された原子炉の炉心を収納している。原子炉建屋は主要一次冷却システムを備え、この主要一次冷却システム内では、水が核燃料集合体と接触する際に加熱され、沸騰防止のために加圧器によって加圧されて、この閉鎖式冷却システム内を循環する。上記一次冷却システムには、少なくとも1つの蒸気生成器も設けられており、この一次冷却システム内を循環している高温水を、逆U字形の複数のヘアピン型チューブで受け取り、こうすることによって二次冷却システム内の水が加熱されて蒸気に変えられるようになっている。
【0003】
原子力発電所の各発電プラントは、メンテナンスおよび燃料補給作業のために周期的に稼働を停止しなければならない。
【0004】
一部の原子力発電所では(一般に本願出願人の原子力発電所では)、いわゆる”除去法”によってSGヘアピン型チューブに水を充填し、後ほど詳細に説明する吸引効果によって充填状態を作り出している。この除去法は、原子力発電プラントを稼働停止後に再起動する際に行われるが、世界中のほとんどの発電所では実施されておらず、一次冷却ポンプが起動される瞬間に単純にヘアピン型チューブに水が充填されるだけである。こうして放出された空気は高位点、例えば反応容器ヘッドに蓄積して排気される。設計上の理由から、逆U字型チューブは上記反応容器より高い位置に配置され、排気不可能な高位点を形成している。一次冷却ポンプを起動し、そしてそのポンプを停止させた後に排気することによって、空気をSGヘアピン型チューブから放出する上述の方法は、一般に「動的排気」と呼ばれている。
【0005】
主要一次冷却システムの故障時に備えて、一部の原子力発電所が用意している事故対応手順によれば、また、化学的な理由からも、施設を起動する前に主要一次冷却システム内の空気を除去することが必要である。これが、測定機器を使用する発電所が反応容器内の水位を測定することの主な要因である。なぜならば、このことが測定システムの利用可能性の条件となるからである。
【0006】
空気が全くなくても主要一次冷却システムが再起動できるようにするために、燃料補給のために原子力発電プラントを稼働停止した後に、ある方法を実行して、上記プラントの主要一次冷却システムに水を充填し、該システムから空気を排出する。ただし、この方法を実施する際には、反応容器内において主要一次冷却システムから核燃料を除去するステップを経ることが必要である。したがって、管理時間に換算すると原子炉安全規則によって経費が高くつき、施設の稼働停止時間が長い、複雑な作業モードを遵守しなければならない。
【0007】
したがって、経費を最小限に抑え、また、原子炉安全規則を遵守しながら、プラントの再起動を目的として原子力発電プラントの主要一次冷却システムに水を充填し、該システムから空気を排出する方法が簡素化されれば、特に好適である。
【0008】
したがって、本発明は、第1の態様によれば、燃料補給のために原子力発電プラントを稼働停止した後に、該原子力発電プラントの主要一次冷却システムに水を充填し、該主要一次冷却システムから空気を排出する方法に関する。なお、上記主要一次冷却システムは、原子炉建屋のプール内に配置された反応容器と、複数の一次冷却ポンプと、上記反応容器より高い位置に配置された複数の蒸気生成器用チューブを有する少なくとも1つの蒸気生成器と、加圧器とを備えている。また上記方法は以下のステップa)〜g)を備えている。すなわち、
a)上記反応容器およびプールに水を充填するステップと、
b)上記反応容器に核燃料を装荷するステップと、
c)上記プールの水を排出し、上記反応容器を遮蔽するためのヘッドを所定位置に載置するステップと、
d)上記主要一次冷却システムの水位を調節して低稼働範囲に合わせ、チューブ内の空気、加圧器内の空気、および反応容器内の空気が互いに行き来できるようにするステップと、
e)上記反応容器および加圧器に設けられた排気口に接続された真空ポンプで吸引することによって、上記主要一次冷却システムを空にするステップと、
f)上記主要一次冷却システム
に水を真空レベルまで満たし、その後、上記排気口を開くことによって上記主要一次冷却システムを大気圧に等しくし、こうすることで上記主要一次冷却システム内の水をチューブに排出するステップと、
g)上記主要一次冷却システム
に水を上記加圧器の最上部まで満たし、原子力発電プラントの起動作業が継続できるようにするステップとを備えている。さらに、上記方法では、一連のステップa)、b)、およびc)が実施される前に、ステップd)、e)、およびf)が実施されることを特徴とする。
【0009】
このように、本発明に係わる方法によれば、燃料が装荷される前に空にすることによって、上記チューブに水が充填される。
【0010】
ただし、主要一次冷却システムに水を充填し該システムから空気を排出する手順が上記方法によって簡素化できるとはいえ、重量が110トンを越える反応容器ヘッドを操って所定位置に載置し、瞬時の間主要一次冷却システムを封止し、除去ステップが終了するとプールに水を充填するために取り外すことは必要である。反応容器ヘッド自体を封止するためには、
図4(参照番号22)を参照して後述するように、ヘッドが反応容器につながるところに封止材が配置され、さらにブランクオフが炉心測定機器用外部口(
図4の参照番号31)としてのヘッドの上側貫通部に配置される。この方法ではヘッドを操作しなければならないので、一人当たりの線量が増加する。さらに、ヘッドを扱うために高額な人件費もかかり、上記のようにヘッドを操作しなければならないことによって発電プラントの稼働停止時間は長くなる。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、適切な封止手段が採用されるのであれば、上記反応容器ヘッド自体はその重量にもかかわらず、上記のような理由によって反応容器を封止するのに使用される。
【0012】
したがって、同様に発電プラントの稼働停止時間および経費を低減するために、本発明に係わる方法は、ステップd)の前に、擬似ヘッドを所定位置に載置して反応容器を遮蔽し、この擬似ヘッドが反応容器につながるところで、封止手段を使って擬似ヘッドを封止するステップを備えている。
【0013】
反応容器が空のときに反応容器上の所定位置に載置される擬似ヘッドを使用することは、実際には、原子力発電プラントで日常的に行われていることであり、この擬似ヘッドの使用には以下のような目的がある。すなわち、反応容器の近くで作業している作業員に対して生体遮蔽を提供し、メンテナンス作業中はシステムの動的収納建造物を提供し、一次冷却システムを異物の進入から保護し、反応容器のタッピングをチェックするためのアクセスを可能にし、反応容器の合わせ面を清掃および検査し、一次冷却システムに浄水を導入せずに原子炉のプールを浄化し、10年ごとの収納建造物圧力試験の間に上記反応容器の上側内部を被覆しなおすためである。こうすることによって、本発明は、上記方法の実行前から配置され、付加的な封止手段を備えている擬似ヘッドをヘッドとして使用する。
【0014】
好ましくは、本発明に係わる方法は、ステップf)の後に、上記擬似ヘッドを封止するための上記封止手段を取り外すステップを備える。
【0015】
好ましくは、擬似ヘッドを反応容器上に封止するための手段として使用される可動フランジを設けてもよい。
【0016】
したがって、本発明の第2の態様によれば、本発明は上記方法を上述のように実行するための擬似ヘッドに関し、擬似ヘッドを反応容器上に封止するための手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
好適な実施形態によれば、上記封止手段はフランジである。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、本発明は、上述のように擬似ヘッド用のフランジに関し、擬似ヘッドを封止するための手段を上記擬似ヘッドと反応容器との間に備えることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、上記フランジは、少なくとも1つの封止材を備える。
【0020】
次に、純粋に図示的であり、完全に非限定的な本発明の権利範囲の例によって、また、以下の図面に基づいて、本発明を説明する。
【0021】
図1は、原子力発電プラントの主要一次冷却システムの概略図を示す。
【0022】
図2は、本発明に係わる方法を実行するための、擬似ヘッドおよび可動フランジの概略的な断面図を示す。
【0023】
図3は、
図2の変形例として、固定フランジを構成する、より単純な擬似ヘッドの概略的な断面図を示す。
【0024】
図4は、従来の反応容器ヘッドではあるが、本方法を実行するのに適した封止手段が設けられたヘッドを示す。
【0025】
したがって、
図1は、原子炉建屋4のプール(図示はしないが公知)内に配置された反応容器2と、水を主要一次冷却システム1内で循環させることができる一次冷却ポンプ5とを備えた、原子力発電プラントの主要一次冷却システム1の概略図を示す。
【0026】
上記主要一次冷却システム1は、上記反応容器2より高い位置に配置された複数の蒸気生成器用チューブ7を有する、少なくとも1つの蒸気生成器6と、加圧器8とをさらに備えている。上記チューブ7は一般に逆U字形状を有し、個々のチューブが容易には排気できない高位点9を有する(この高位点9は、
図1中のNHEに位置する、チューブ7のヘアピン形状部の高位部に対応する)。
【0027】
通常、主要一次冷却システムに水を充填し、該システムから空気を排出するために、以下のステップa)〜g)が実施される。すなわち、
a)上記反応容器2およびプールに水を充填するステップ。好ましくは、上記反応容器2は、本ステップにおいて、底に上記反応容器2が設置されたプールに水を充填するための手段としての役割をはたす。この場合、水が一部に充填されているチューブ7内の空気は、チューブ7のヘアピン形状部9において圧縮される。
【0028】
b)上記反応容器2に核燃料を装荷するステップ。
【0029】
c)上記プールの水を排出し、上記反応容器2を遮蔽するためのヘッド10を所定位置に載置するステップ。このとき水は、反応容器の合わせ面と同じ高さになる。
図1ではこの合わせ面を参照記号PdJCで示す。
【0030】
d)上記主要一次冷却システムの水位を調節して低稼働範囲(
図1では参照記号PTBで示す)に合わせ、チューブ7内の空気、加圧器8内の空気、および反応容器2内の空気が互いに行き来できるようにするステップ。
【0031】
e)上記反応容器2および加圧器8に設けられた排気口12、13に接続された真空ポンプ11で吸引することによって、上記主要一次冷却システムを空にするステップ。このステップは、大気圧にあるシステム外部に対して相対的に、800mbarの減圧状態を作り出す。
【0032】
f)上記主要一次冷却システム
に水を真空レベル(
図1では参照記号MSVで示す)まで満たし、その後、上記排気口12、13を開くことによって上記主要一次冷却システムを大気圧に等しくし、こうすることで上記主要一次冷却システム内の水をチューブ7に排出するステップ。
【0033】
g)上記主要一次冷却システム1
に水を上記加圧器8の最上部まで満たし、原子力発電プラントの起動作業が継続できるようにするステップ。
【0034】
本発明によれば、一連のステップa)、b)、およびc)が実施される前に、ステップd)、e)、およびf)が実施される。
【0035】
こうすることによって、ステップa)では、チューブ内の空気の量がかなり少なくなる。なぜならば、ステップd)、e)、およびf)においてチューブ7に先に水が充填されるからである。このように、本発明によれば、ステップd)、e)、f)、a)、b)、c)、およびg)が連続して実施される。
【0036】
ただし、この方法を使うと、ステップd)の前に、封止材22およびブランクオフ31を備えた反応容器ヘッド10を所定位置に載置し、主要一次冷却システム1を瞬時の間封止して、そして、プールに水を充填する除去ステップが終了すると上記ヘッドを取り外した後、続いてステップc)において上記ヘッドを所定位置に再度載置することが必要である。したがって、上記ヘッド10は二度操作しなければならないが、これは避けるべきことである。なぜならば、ヘッド10は重量が110トンを越えて操作は困難であり、また、作業は時間がかかるからである。
【0037】
このように、本発明の別の態様によれば、反応容器2の所定位置に封止手段15とともに載置される擬似ヘッド14を使用することが提案される。封止手段15が載置されることで、ヘッドを載せている反応容器2を封止できる。
【0038】
擬似ヘッド14は、発電プラントが稼働停止モードにあるときに原子炉反応容器2のヘッドとして使用される部品であり、内張りを有するか、または浄化可能な物質でできている。
【0039】
通常、擬似ヘッド14の使用は、プールの近くで作業している作業員に対して生体遮蔽を提供するため、メンテナンス作業中は主要一次冷却システムを動的真空下に置くため、一次冷却システムを異物の進入から保護するため、擬似ヘッド14を所定位置に配置した状態で、反応容器のタッピングをチェックするための機械(公知)を使用するため、反応容器の合わせ面(すなわちPdJC)を清掃および検査するため、原子炉のプールを浄化するため、さらに必要に応じて、10年ごとの収納建造物圧力試験の間に上記反応容器の上側内部を被覆しなおすため、および必要に応じて照射プラグにアクセスし、擬似ヘッドを載置する際にノズルチューブに損傷を与えないようにするためである。
【0040】
このように、本発明に係わる方法は、ステップd)の前に、反応容器2を遮蔽する擬似ヘッド14を所定位置に載置し、この擬似ヘッド14を、擬似ヘッド14が反応容器2につながるところで封止手段15を使って封止するステップと、ステップf)の後に、上記擬似ヘッド14を取り外すステップとを備えている。
【0041】
好ましくは、擬似ヘッド14を反応容器2上に封止するための封止手段15として使用されるフランジ16(可動(
図2)または固定(
図3))が設けられる。
【0042】
擬似ヘッド14を封止するステップを追加することによって、水を充填し空気を排出する本発明に係わるプロセスにおいて、ヘッドを扱ういかなるステップも上記のように避けられる。
【0043】
図2は、本発明に係わる可動フランジ16が封止された状態で固定される、擬似ヘッド14の概略的な断面図を示す。
【0044】
この図は、持ち上げリング17を備えた擬似ヘッド14を示す。擬似ヘッド14は、設計上反応容器2の内側に配置された原子炉の炉心バレル19の周囲に配置された、抑えリング18の上に載っている。
【0045】
本発明に係わるフランジ16は、擬似ヘッド14に直接組み込まれるか、あるいは(
図2に示すように)擬似ヘッド14から取り外し可能に設計されるかのいずれかである。いずれの場合においても、フランジ16は、擬似ヘッド14の出っ張り20と反応容器の合わせ面(すなわちPdJC)、つまり上記反応容器2の上面21との間で、要求されている封止を提供しなければならない。
【0046】
好ましくは、封止用フランジ16が可動であれば、フランジ16は、外部の操作手段(例えばクレーン)がなくても集積デバイスによって操作されて反応容器2と接触する。なお、この操作は、作業従事者が作業をして放射線に曝露される時間を最短化できるように、簡単なものである。さらに、この可動フランジ16を高い位置に保持することで、可動フランジ16が落下するという危険性が確実になくなり、人身事故または反応容器の合わせ面21の破損という危険性が避けられる。
【0047】
貯蔵庫と擬似ヘッド14との組み合わせの総重量は、現場で利用可能な持ち上げ手段に適合したものでなければならない。使用現場では、擬似ヘッド14はヘッド10より大幅に軽く、上記反応容器2の重量が110トンを越える通常のヘッド10に比べて扱いやすい。
【0048】
一般に、本発明に係わる方法を実施可能にするためには、擬似ヘッド14は完全に封止されなければならない。
【0049】
一次冷却システム1の設備に接触する擬似ヘッド14の全ての部分の表面を、ステンレス鋼でコーティングしてもよい。
【0050】
擬似ヘッド14は、好ましくは、大気圧に対して相対的に800mbarの減圧状態におかれているときにホウ酸水を高さMSVまで充填しても耐えられるように設計される。これを実現するためには、擬似ヘッド14の濡れた部分がホウ酸によって腐食する危険性があってはならない。
【0051】
好ましくは、擬似ヘッド14は、真空ホースに接続(して真空ポンプ11で吸引)できるように、また、チュービングに接続してホースを使って反応容器2内の水位が測定できるように、上側の部分において別の2つのフランジを備える。これらの接続部の高さは、擬似ヘッド14のMSVより高い位置にある。封止システムは、抑えリング18の柔軟性のために、擬似ヘッドに作用する外部の大気圧に影響を受けて擬似ヘッドの高さが変化して、数mmの鉛直移動が生じても、封止機能が維持できるように設計されている。
【0052】
チューブ7内の圧力を吸引によって低減する(この圧力の低減によって、反応容器2および擬似ヘッド14にフランジ16が押しつける)ステップの前に、フランジ16は、例えば単純な接触によって、反応容器2の所定位置に設置されなければならない。
【0053】
フランジ16の形状は、好ましくは、反応容器2の外形および擬似ヘッド14の、これらの部材が互いにつながるところの外形にしたがう。例えば、フランジ16の一部は擬似ヘッド14の出っ張り20に載り、フランジ16の別の部分は反応容器2の上面21にしたがう。
【0054】
(フランジが移動可能であれば)稼働中に鉛直方向の突き上げや誤動作によってフランジ16が持ち上げられないように、擬似ヘッド14および反応容器2に固定されたフランジ16を保持するための任意の手段(例えばクリップ留め手段またはねじ留め手段)を使用することが好ましい。
【0055】
物理的な封止は、フランジ16上の特別形状部に配置された1つ以上の封止材22によって実施される。使用する封止材22は、重合体系、グラファイト系、固形の天然繊維系(例えば、パッキン押さえ用組みひも、シート、紙、そのまままたは切って使用可能な平坦なパッキン用の繊維質の物質、Oリング封止材、または縁つき封止材)、あるいはペースト状または液体状(封止用ペースト、マスチック、および液体状封止材)であってもよい。
【0056】
また、フランジ16が擬似ヘッド14の主機能を停止させてはならないので、フランジ16は、移動可能であって最低高さまでは持ち上げられるように設計されており、この位置において、フランジ16は、採用されているツールが通常反応容器の合わせ面(PdJC)の近くにおいて使用できるようにする。こうすることで、例えば、反応容器のタッピングを検査するための公知の機械が通過することが可能になる。反応容器のタッピングを検査するための機械のサイズの一例をあげると、高さが1100mmであり、幅方向に52mmにわたって反応容器の合わせ面に載る水平方向に寝た車輪を有する。
【0057】
また、
図2には、水平方向の測定および真空ホースのための接続用タップ・オフ30も図示されている。
【0058】
図2に図示された実施形態は、フランジが好ましくは可動である構成に関連している。ただし、
図3に示した別の実施形態では、この
図3の参照番号22で示すように、フランジが固定されてもよい。
図2および
図3に示した類似の部材は、同じ参照番号で示してある。ただし、
図3に図示したような設備を使用しても、
図2に図示した設備の機能が全て果たされるわけではない(特に、稼働停止中に上記反応容器の上側内部を被覆しなおす機能は果たされない)。
【0059】
したがって、本発明は、一つの態様によれば、公知の種類の擬似ヘッド14の機能に、主要一次冷却システム1における圧力を(大気圧にある)外部に対して相対的に800mbarまで減少させる可能性を追加したものであり、こうすることによって封止手段が設置されることが必要になる。また、本発明は、真空ホースのため、および反応容器内で水位を測定するための、付加的な接続部をさらに提供する。
【0060】
本発明は、燃料が反応容器2内に存在する間、主要一次冷却システム1内の水位が低い状態にある一過的な段階を失くすことによって、作業の安全レベルをあげることを可能にする。さらに、「動的排気」が計画されている場合は、これを不要にすることも可能であり、この「動的排気」は上記方法の実施より時間が長くかかる作業なので、施設が稼働停止している時間は短縮される。
【0061】
擬似ヘッドの使用は好ましいが必須ではない。なぜならば、
図4に図示するように、本物のヘッドを反応容器の上に直接配置しても、本発明に係わる方法は実施できるからである。このように、本発明に係わる一般的な方法は、本物のヘッドを用いても、上述のように擬似ヘッドを用いても、実施できる。本物のヘッドを採用した場合、封止材22、例えばエラストマー系の封止材がヘッドの溝に配置される。好ましくは、単純なブランクオフ31を使用して、
図4に示すように、ヘッドを貫く上側炉心測定機器用外部口の貫通部が封止される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】原子力発電プラントの主要一次冷却システムの概略図を示す。
【
図2】本発明に係わる方法を実行するための、擬似ヘッドおよび可動フランジの概略的な断面図を示す。
【
図3】
図2の変形例として、固定フランジを構成する、より単純な擬似ヘッドの概略的な断面図を示す。
【
図4】従来の反応容器ヘッドではあるが、本方法を実行するのに適した封止手段が設けられたヘッドを示す。