(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725864
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】エラスターゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/73 20060101AFI20150507BHJP
A61K 31/401 20060101ALI20150507BHJP
A61K 36/06 20060101ALI20150507BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20150507BHJP
A61K 8/97 20060101ALI20150507BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20150507BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
A61K35/78 H
A61K31/401
A61K35/72
A61P43/00 111
A61K8/97
A61K8/49
A61Q19/00
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-539968(P2010-539968)
(86)(22)【出願日】2010年8月6日
(86)【国際出願番号】JP2010063414
(87)【国際公開番号】WO2012017555
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2013年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(72)【発明者】
【氏名】飯野 雅人
【審査官】
前田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−199714(JP,A)
【文献】
国際公開第04/075621(WO,A1)
【文献】
特開2010−111601(JP,A)
【文献】
特開2008−007432(JP,A)
【文献】
特開2008−115098(JP,A)
【文献】
特開2010−090040(JP,A)
【文献】
特開2005−306831(JP,A)
【文献】
化粧品原料辞典,日光ケミカルズ,1991年11月29日,128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/73
A61K 31/401
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キイチゴエキスとヒドロキシプロリンとを有効成分として含むエラスターゼ阻害剤。
【請求項2】
前記ヒドロキシプロリンがL−ヒドロキシプロリンである、請求項1に記載のエラスターゼ阻害剤。
【請求項3】
さらに酵母エキスを含む、請求項1又は2に記載のエラスターゼ阻害剤。
【請求項4】
前記酵母エキスが、グリコサミノグリカンを含有する栄養培地中で培養されかつ紫外線照射、過酸化水素処理又はそれらの両方の処理を受けた酵母から調整されたものである、請求項3に記載のエラスターゼ阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来成分であるキイチゴエキスとヒドロキシプロリンとを有効成分として含有するエラスターゼ阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抗老化剤の必要性が考慮されてきていたが、老化に関するメカニズムや定義などが明らかではなかったため、一般的には、肌の潤いとして保湿状態の計測や肌の弾力の計測を行ったり、肌の色を視覚的に観察して判定してきた。ところが近年、老化に関する研究が進められ、皮膚老化の原因としてはマクロ的にみれば加齢が重要な因子であり、さらに乾燥、酸化、太陽光(紫外線)による影響等も皮膚老化に関わる直接的な因子として挙げられてきている。皮膚老化の具体的な現象としては、皮膚真皮におけるコラーゲンやエラスチンの減少、ヒアルロン酸をはじめとするムコ多糖類の減少、紫外線による細胞の損傷などが知られている。このうちエラスチンは、互いに架橋を作って組織の弾性に寄与しているものであるが、紫外線暴露や加齢により、エラスチン破壊酵素であるエラスターゼが過剰発現することによってエラスチンが変性・破壊されることが、皮膚の弾力性低下につながると考えられている。従って、エラスターゼの働きを抑えて、皮膚に弾力やハリを与えるエラスチンの変性・破壊を防止することが皮膚の老化防止に重要である。
【0003】
皮膚に直接塗布等する化粧料などの場合には、天然由来成分が好ましいが、このような天然由来のエラスターゼ阻害剤としては、例えばテンジクボダイジュ(インドボダイジュ)抽出物(特許文献1)、ユキノシタの抽出物(特許文献2)、アカネ科植物の阿仙薬抽出物(特許文献3)、ツツジ科ロドデンドロン シムシ(Rhododendron simsii)の抽出物(特許文献4)などが知られており、該抽出物を含む皮膚外用剤はシワ・小ジワおよび肌のハリ・タルミの点で改善効果を示すことが示されている。
【0004】
一方、エラスターゼ阻害剤は、皮膚外用剤以外に疾患治療剤としての有用性も知られており、例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症などの関節系疾患、全身性炎症反応症候群、動脈硬化、急性肺障害、急性呼吸窮迫症候群等に対して有効であることが報告されている。
具体的には、急性膵炎や急性循環不全(出血性ショック)等に対するウリナスタチン、及び、全身性炎症反応症候群に伴う急性肺障害改善に効能を有する選択的好中球エラスターゼ阻害剤であるシベレスタットナトリウムといった医薬品が知られている。このように、エラスターゼ阻害剤は炎症性疾患等の治療剤として用いられているが、安全性等を考慮すれば、この場合も合成化学品ではなく天然由来成分を主成分とする製品が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−335230号公報
【特許文献2】特開平11−246386号公報
【特許文献3】特開平10−182414号公報
【特許文献4】特開2009−191043号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、外用剤に用いることでエラスターゼを阻害して皮膚に弾力やハリを与えることができ、また疾患治療剤としても有用なエラスターゼ阻害剤を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者は種々の植物抽出物についてエラスターゼ阻害活性を調べた結果、キイチゴ(Rubus idacus L.)の溶媒抽出物がエラスターゼ阻害活性を有することを見出し、さらにその阻害活性がヒドロキシプロリンの添加により相乗的に高まることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本願は以下の発明を提供する。
(1)キイチゴエキスとヒドロキシプロリンとを有効成分として含むエラスターゼ阻害剤。
(2)前記ヒドロキシプロリンがL−ヒドロキシプロリンである、(1)のエラスターゼ阻害剤。
(3)さらに酵母エキスを含む、(1)又は(2)のエラスターゼ阻害剤。
(4)前記酵母エキスが、グリコサミノグリカンを含有する栄養培地中で培養されかつ紫外線照射、過酸化水素処理又はそれらの両方の処理を受けた酵母から調製されたものである、(3)のエラスターゼ阻害剤。
(5)(1)〜(4)のいずれかのエラスターゼ阻害剤を含有する皮膚外用剤。
(6)化粧料である、(5)の皮膚外用剤。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】キイチゴエキスとヒドロキシプロリンのエラスターゼ阻害活性を示す。
【
図2】各種薬剤及びその混合物のエラスターゼ阻害活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
キイチゴ(ラズベリー、ヨーロッパキイチゴ)(Rubus idacus L.)はバラ科、キイチゴ属の植物であり、ヨーロッパから西アジアとアメリカ東海岸の原野に分布する落葉低木で、花期は6月頃で白色の花をつける。実は8〜10月頃に熟し、初め赤くやがて紫がかった黒色となる。この果実はラズベリーの別名でも知られるとおり、優雅な香りと色、美味を誇っており、かつて果実が少なかった時代の代表的なフルーツであったが、現在でも砂糖をつけて果実を食用にしたり、ジャムやシロップなどにも加工されている。薬効成分として、リンゴ酸、クエン酸などの糖質の強い収飲物質、女性ホルモン様活性を有するフラボノイド、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンP(ヘスペリジン、ルチン)を主とする各種ビタミン類や糖類などを含むことから、皮膚炎(湿疹、アクネ)への効果のほか、喉の消炎剤、下痢止めなどへの利用が知られている。
【0012】
本発明のエラスターゼ阻害剤に用いられるキイチゴエキスしては、例えば、溶媒抽出液、該溶媒抽出液の希釈液、該溶媒抽出液を乾燥して得られる乾燥物、該乾燥物を溶媒に溶解して得られる溶液などが挙げられる。また、これらの粗精製物、及び精製物なども含まれる。
本発明に用いられる抽出溶媒は、通常抽出に用いられる溶媒であれば何でもよく、水、あるいはメタノール、エタノールまたは1,3−ブチレングリコール等のアルコール類、含水アルコール類、アセトン、酢酸エチルエステル等の有機溶媒を単独あるいは組み合わせて用いることができ、このうち特に、アルコール類、含水アルコール類が好ましく、特にエタノール、1,3−ブチレングリコール、含水エタノールまたは含水1,3−ブチレングリコールが好ましい。また前記溶媒は、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
前記植物体の部位としては、果実が好ましいが、他の部位の抽出物も用いることが出来る。
【0013】
本発明に用いられるキイチゴエキスは、ヒトの肌に対してすぐれたエラスターゼ阻害活性を奏するものであるので、該植物エキスが配合された皮膚外用剤は、肌の老化を防ぎ、若々しく健康な肌の状態を維持しうるものである。
【0014】
本発明のエラスターゼ阻害剤を外用剤中に配合する場合、キイチゴエキスの配合量は、外用剤全量中、乾燥物として0.000001〜1質量%、好ましくは0.00001〜0.1質量%、より好ましくは0.0001〜0.01質量%、最も好ましくは約
0.001質量%である。0.000001質量%未満であると、本発明でいう効果が十分に発揮されず、1質量%を超えると製剤化が難しいので好ましくない。
【0015】
本発明のエラスターゼ阻害剤は、キイチゴエキスのみからなるものであってもよいが、好ましくはヒドロキシプロリン、さらには好ましくは酵母エキスを含有する。特にヒドロキシプロリンを配合することで、エラスターゼ阻害活性は相乗的に高めることができる。
【0016】
ヒドロキシプロリン、特にL−ヒドロキシプロリンは、コラーゲン特有のアミノ酸である。コラーゲンのアミノ酸配列は−Gly−X−Y−であり、X、Yは任意のアミノ酸で少なくとも1つは、L−プロリンまたはL−ヒドロキシプロリンから構成されている。線維芽細胞におけるコラーゲン産生1)や表皮細胞の増殖の促進、保湿効果など、さまざまな皮膚の老化防止効果がある。
【0017】
本発明のエラスターゼ阻害剤を外用剤中に配合する場合、ヒドロキシプロリンの配合量は、外用剤全量中、乾燥物として0.00001〜10質量%、好ましくは0.0001〜1質量%、より好ましくは0.001〜0.1質量%、最も好ましくは約0.025質量%である。0.00001質量%未満であると、本発明でいう効果が十分に発揮されず、10質量%を超えると製剤化が難しいので好ましくない。
【0018】
酵母エキスは、グリコサミノグリカンを含有する栄養培地中で培養されかつ紫外線照射、過酸化水素処理またはそれら両方の処理を受けた酵母を用いて調製したものが本発明において好ましい。酵母を紫外線や過酸化水素などのストレス存在下において培養することにより、ストレスから細胞を保護する細胞保護成分を産生することが分かっており、さらにその際に栄養ペプトン類やグリコサミノグリカン等を培地中に添加することによってストレスに対するレスポンスが高められる。その製法等は、例えば米国特許第6461857 号明細書に記載されている。例えば、パン酵母の一種であるサッカ口マイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae ) を、非動物由来のグリコサミノグリカンを添加した栄養培地中で培養し、培養物に亜致死量、例えば培養物の総質量の約0 . 1〜2 質量%の過酸化水素を加えさらに任意的に亜致死照射量の紫外線を照射する(例えば、UVA / UVB 照射を31.5 mJ / cm
2 の強度)ことでストレスを負荷し、得られた培養物を自己消化または酸加水分解等により可溶化させた後、乾燥、水抽出、ろ過等することにより酵母エキスを調製することができる。また、非動物由来のグリコサミノグリカン含有培地中で培養されかつ紫外線照射および過酸化水素処理を受けた酵母から調製された酵母エキスが、Arch Personal Care Products L.P.社から「バイオダインEMPP (商標)」の商品名で市販されている。
【0019】
本発明のエラスターゼ阻害剤を外用剤中に配合する場合、酵母エキスの配合量は、外用剤全量中、乾燥物として0.000001〜1質量%、好ましくは0.00001〜0.1質量%、より好ましくは0.0001〜0.01質量%、最も好ましくは0.0005〜0.005質量%である。0.000001質量%未満であると、本発明でいう効果が十分に発揮されず、1質量%を超えると製剤化が難しいので好ましくない。
【0020】
本発明のエラスターゼ阻害剤を外用剤として応用する場合には、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等と適宜組み合わせて配合することができる。
【0021】
その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の他の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0022】
本発明のエラスターゼ阻害剤を含む外用剤は、外皮に適用される化粧料、医薬部外品等、特に好適には化粧料に広く適用することが可能であり、その剤型も水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水−油2層系、水−油−粉末3層系等、幅広い剤型を採り得る。すなわち、基礎化粧品であれば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)、パック、マスク等の形態に、上記の多様な剤型において広く適用可能である。また、メーキャップ化粧品であれば、ファンデーション等、トイレタリー製品としてはボディソープ、石けん等の形態に広く適用可能である。さらに、医薬部外品であれば、各種の軟膏剤等の形態に広く適用が可能である。そして、これらの剤型及び形態に、本発明のエラスターゼ阻害剤を含む外用剤の採り得る形態が限定されるものではない。
【0023】
さらに、本発明のエラスターゼ阻害剤は、呼吸器官用薬剤や、急性肺障害,急性呼吸窮迫症候群などの薬剤、その他臓器障害用薬剤などの疾患治療剤として応用することができる。
【0024】
かかる用途において本発明のエラスターゼ阻害剤を製剤化するためには、通常の方法で、たとえば散剤、顆粒、アンプル、注射液、等張液などとする。すなわち、経口用固形製剤を調製する場合は、賦形剤さらに必要に応じて結合剤、湿潤化剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、矯味剤、矯臭剤などを加えたのち、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒、カプセル剤などとする。
【0025】
使用される賦形剤としては、例えば乳糖、ブドウ糖、ソルビット、コーンスターチ、マンニトールなどが、結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが、崩壊剤としては炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、デンプン、ゼラチン末などが、滑沢剤としては、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、タルク、ポリエチレングリコールなどが、着色剤としては、ココア末、ハッカ芳香酸、ハッカ油などが挙げられる。これらの錠剤、顆粒剤には糖衣、ゼラチン衣、その他必要により適宜コーティングしてもよい。注射剤を製剤する場合には、必要によりpH調整剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、溶剤、安定化剤、保存剤などを添加し、常法により皮下、筋肉内、静脈内用注射剤とする。
【0026】
本願はさらなる観点において、本願発明に係るエラスターゼ阻害剤の、皮膚外用剤、好ましくは化粧料としての使用を提供する。皮膚外用剤としては、例えば紫外線暴露や加齢に原因するエラスターゼの過剰発現によるエラスチンの変性・破壊に伴う皮膚の弾力性低下の抑制/予防のため、そのような皮膚弾力低下の抑制/予防を必要とする対象者に、例えばその皮膚に局所適用することで使用できる。さらに、本願は本願発明に係るエラスターゼ阻害剤の、エラスターゼ関連疾患、例えば慢性関節リウマチ、変形性関節症などの関節系疾患、全身性炎症反応症候群、動脈硬化、急性肺障害、急性呼吸窮迫症候群等の治療及び/又は予防のための使用を提供する。本発明のエラスターゼ阻害剤は、そのような皮膚弾力低下の抑制/予防を必要とする対象者に経口、非経口適用することで使用できる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0028】
反応用緩衝液として0.1M HEPES、0.5M NaCl(pH7.5)を用いた。エラスターゼ基質としてオキシスクシニル-(Ala)
2-Pro-Val-MCA(ペプチド研究所 Cat No. 3153-v)を、80mMになるようにDMSOに溶解し、反応用緩衝液で0.16mMに希釈した。ヒト白血球由来のエラスターゼ(ELASTIN PRODUCT CO.,INC. Cat No.CK828 )は反応用緩衝液で5μg/mLに希釈した。
【0029】
96穴プレートに、0.16mM−エラスターゼ基質を25μLずつ分注し、さらに50μLの各種薬剤を添加した。次に氷上で5μg/ml―エラスターゼを25μL加え37℃で60分間インキュベート後、励起369nmで460nmの蛍光を測定した。キイチゴエキスとしては(株)丸善製薬のキイチゴ抽出液BGを、ヒドロキシプロリンとしては協和発酵工業(株)のL-ヒドロキシプロリンを、そして酵母エキスとしてはArch Personal Care Products L . P .社のバイオダインEMPP (商標)を用いた。キイチゴ抽出液BGはキイチゴ果実の1,3−ブチレングリコール(50%水溶液)抽出物である。
【0030】
結果を
図1に示す。キイチゴエキス単独で有意な濃度依存式エラスターゼ阻害効果が確認できた。一方、ヒドロキシプロリン単独はエラスターゼ阻害効果を示さなかった。
興味深いことに、ヒドロキシプロリンはエラスターゼ阻害効果を示さないのもかかわらず、キイチゴエキスと併用させた場合、キイチゴエキスのエラスターゼ阻害効果を有意に強めることがわかった。したがって、ヒドロキシプロリンを併用させることで、キイチゴエキスのエラスターゼ阻害効果を相乗的に高めることができることがわかった。
【0031】
図2は、キイチゴエキス(乾燥物として0.001質量%)、ヒドロキシプロリン(0.025質量%)及び酵母エキス(乾燥物として0.001質量%)をそれぞれ単独で使用した場合、それら一緒に使用した場合(それぞれ乾燥物として0.001質量%、0.025質量%、乾燥物として0.001質量%)のエラスターゼ阻害効果を示す。コントロールとして、キイチゴエキスの抽出溶媒である1,3−ブチレングリコールを使用した。それぞれの薬剤を単独で使用した場合よりも、それぞれを併用したほうがエラスターゼ阻害効果は有意に高まった。
【0032】
処方例1 クリーム
(処方)
(1)ステアリン酸 3.0 質量%
(2)ステアリルアルコール 5.0
(3)イソプロピルミリステート 18.0
(4)グリセリンモノステアリン酸エステル 3.0
(5)プロピレングリコール 10.0
(6)L-ヒドロキシプロリン 0.01
(7)キイチゴ抽出液(乾燥物として) 0.001
(8)苛性カリ 0.2
(9)亜硫酸水素ナトリウム 0.01
(10)防腐剤 適量
(11)香料 適量
(12)イオン交換水 残余
【0033】
(製法)
イオン交換水にプロピレングリコールとL-ヒドロキシプロリンとキイチゴ抽出液と苛性カリを加え溶解し、加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を徐々に加え、全部加え終わってからしばらくその温度に保ち反応を起こさせる。その後、ホモミキサーで均一に乳化し、よくかきまぜながら30℃まで冷却する。
【0034】
処方例2 クリーム
(処方)
(1)ステアリン酸 2.0 質量%
(2)ステアリルアルコール 7.0
(3)水添ラノリン 3.0
(4)スクワラン 4.0
(5)2−オクチルドデシルアルコール 6.0
(6)ポリオキシエチレン(25モル)セチルアルコールエーテル 3.0
(7)グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0
(8)プロピレングリコール 6.0
(9)L-ヒドロキシプロリン 0.02
(10)本エラスターゼ阻害剤
キイチゴエキス(乾燥物として) 0.005
酵母抽出液(乾燥物として) 0.001
(11)亜硫酸水素ナトリウム 0.03
(12)エチルパラベン 0.3
(13)香料 適量
(14)イオン交換水 残余
【0035】
(製法)
イオン交換水にプロピレングリコールを加え、加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え予備乳化を行い、ホモミキサーで均一に乳化した後、よくかきまぜながら30℃まで冷却する。
【0036】
処方例3 乳液
(処方)
(1)ステアリン酸 2.5 質量%
(2)セチルアルコール 1.5
(3)ワセリン 5.0
(4)流動パラフィン 10.0
(5)ポリオキシエチレン(10モル)モノオレイン酸エステル 2.0
(6)ポリエチレングリコール1500 3.0
(7)トリエタノールアミン 1.0
(8)カルボキシビニルポリマー 0.05
(9)本エラスターゼ阻害剤
L-ヒドロキシプロリン 0.003
キイチゴ抽出液(乾燥物として) 0.005
(10)亜硫酸水素ナトリウム 0.01
(11)エチルパラベン 0.3
(12)香料 適量
(13)イオン交換水 残余
【0037】
(製法)
少量のイオン交換水にカルボキシビニルポリマーを溶解する(A相)。残りのイオン交換水にポリエチレングリコール1500とトリエタノールアミンを加え、加熱溶解して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し加熱融解して70℃に保つ(油相)。水相に油相を加え予備乳化を行い、A相を加えホモミキサーで均一乳化し、乳化後よくかきまぜながら30℃まで冷却する。
【0038】
処方例4 乳液
(処方)
(1)マイクロクリスタリンワックス 1.0 質量%
(2)ミツロウ 2.0
(3)ラノリン 20.0
(4)流動パラフィン 10.0
(5)スクワラン 5.0
(6)ソルビタンセスキオレイン酸エステル 4.0
(7)ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0
(8)プロピレングリコール 7.0
(9)本エラスターゼ阻害剤
L-ヒドロキシプロリン 0.01
キイチゴ抽出液(乾燥物として) 0.001
酵母抽出液(乾燥物として) 0.005
(10)ローズアップリーフ抽出液 0.05
(11)亜硫酸水素ナトリウム 0.01
(12)エチルパラベン 0.3
(13)香料 適量
(14)イオン交換水 残余
【0039】
(製法)
イオン交換水にプロピレングリコールを加え、加熱して70℃に保つ(水相)。他の成分を混合し、加熱融解して70℃に保つ(油相)。油相をかきまぜながらこれに水相を徐々に加え、ホモミキサーで均一に乳化する。乳化後よくかきまぜながら30℃まで冷却する。
【0040】
処方例5 美容液
(処方)
(A相)
(1)エチルアルコール(95%) 10.0 質量%
(2)ポリオキシエチレン(20モル)オクチルドデカノール 1.0
(3)パントテニールエチルエーテル 0.1
(4)本エラスターゼ阻害剤
L-ヒドロキシプロリン 0.001
キイチゴ抽出液(乾燥物として) 0.001
(5)メチルパラベン 0.15
(B相)
(6)水酸化カリウム 0.1
(C相)
(7)グリセリン 5.0
(8)ジプロピレングリコール 10.0
(9)亜硫酸水素ナトリウム 0.03
(10)カルボキシビニルポリマー 0.2
(11)精製水 残余
【0041】
(製法)
A相、C相をそれぞれ均一に溶解し、C相にA相を加えて可溶化する。次いでB相を加えたのち充填を行う。
【0042】
処方例6 化粧水
(処方)
(1)エタノール 5.0 質量%
(2)グリセリン 0.5
(3)ジプロピレングリコール 2.0
(4)1,3−ブチレングリコール 5.5
(5)クエン酸 0.02
(6)クエン酸ナトリウム 0.08
(7)ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.03
(8)ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン 0.1
(9)本エラスターゼ阻害剤
L-ヒドロキシプロリン 0.003
キイチゴ抽出液(乾燥物として) 0.003
(10)ラベンダー油 0.1
(11)アルギン酸ナトリウム 0.001
(12)精製水 残余
【0043】
(製法)
(1)〜(12)を常法に従い混合溶解し、化粧水を得た。