特許第5725904号(P5725904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725904
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/30 20060101AFI20150507BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   F01D25/30 B
   F02C7/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-39203(P2011-39203)
(22)【出願日】2011年2月25日
(65)【公開番号】特開2012-177305(P2012-177305A)
(43)【公開日】2012年9月13日
【審査請求日】2013年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100182224
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲三
(72)【発明者】
【氏名】坂元 康朗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 栄作
(72)【発明者】
【氏名】若園 進
【審査官】 寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−031871(JP,A)
【文献】 特開2005−290985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/24,28,30,32
F01D 9/00−06
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ディフューザにおける燃焼ガスの流路内に位置しロータを軸支する軸受側と接続される構造部材を備えるガスタービンにおいて、
前記構造部材の内径側又は外径側の壁面近傍の少なくともいずれか一方に上流側へ延長された第1延長部を備え、
前記排気ディフューザ径方向における、前記構造部材の長さに対する前記第1延長部の長さの割合を、5%〜30%とする
ことを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
排気ディフューザにおける燃焼ガスの流路内に位置しロータを軸支する軸受側と接続される構造部材を備えるガスタービンにおいて、
前記構造部材の内径側又は外径側の壁面近傍の少なくともいずれか一方に上流側へ延長された第1延長部を備え、
前記排気ディフューザ軸方向における、前記構造部材の長さに対する前記第1延長部の長さの割合を、5%〜50%とする
ことを特徴とするガスタービン。
【請求項3】
前記構造部材の内径側又は外径側の壁面近傍の少なくともいずれか一方に下流側へ延長された第2延長部を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスタービン。
【請求項4】
前記第1延長部及び前記第2延長部は、前記構造部材と別体とし、既設のガスタービンの改修時に設置される
ことを特徴とする請求項3に記載のガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンの排気ディフューザにおいて、ストラットやマンホール等の構造部材によりロータを軸支する軸受側と接続される構成が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−190664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したストラットやマンホール等の構造部材は燃焼ガスの流路内に位置しているため、燃焼ガスの流路内における圧力損失が増加する要因となり、特にタービン出口近くに位置するストラットは、燃焼ガスの高速の流れに晒されるため、圧力損失の増加量が多くなる。
【0005】
また、ガスタービンの出力を絞った部分負荷での運転時には、タービン出口の燃焼ガスのスワール角が大きいため、ストラットの負圧面で燃焼ガスの気流に剥離が生じ、排気ディフューザの性能低下の要因となっている。
【0006】
以上のことから、本発明は、排気ディフューザにおける燃焼ガスの流路内に位置する構造部材において燃焼ガスの気流に剥離が生じることを抑制することができるガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための第1の発明に係るガスタービンは、
排気ディフューザにおける燃焼ガスの流路内に位置しロータを軸支する軸受側と接続される構造部材を備えるガスタービンにおいて、
前記構造部材の内径側又は外径側の壁面近傍の少なくともいずれか一方に上流側へ延長された第1延長部を備え
前記排気ディフューザ径方向における、前記構造部材の長さに対する前記第1延長部の長さの割合を、5%〜30%とす
ことを特徴とする。
上記の課題を解決するための第2の発明に係るガスタービンは、
排気ディフューザにおける燃焼ガスの流路内に位置しロータを軸支する軸受側と接続される構造部材を備えるガスタービンにおいて、
前記構造部材の内径側又は外径側の壁面近傍の少なくともいずれか一方に上流側へ延長された第1延長部を備え、
前記排気ディフューザ軸方向における、前記構造部材の長さに対する前記第1延長部の長さの割合を、5%〜50%とする
ことを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決するための第の発明に係るガスタービンは、第1の発明又は第2の発明に係るガスタービンにおいて、
前記構造部材の内径側又は外径側の壁面近傍の少なくともいずれか一方に下流側へ延長された第2延長部を備える
ことを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するための第4の発明に係るガスタービンは、第3の発明に係るガスタービンにおいて、
前記第1延長部及び前記第2延長部は、前記構造部材と別体とし、既設のガスタービンの改修時に設置される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排気ディフューザにおける燃焼ガスの流路内に位置する構造部材において燃焼ガスの気流に剥離が生じることを抑制することができるガスタービンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施例に係るガスタービンの構成を示した模式図である。
図2】第1の実施例に係るガスタービンにおけるストラットの構造を示した模式図である。
図3】第1の実施例に係るガスタービンにおける延長部の効果を示した図である。
図4】第1の実施例に係るガスタービンにおける排気ディフューザ径方向のストラットの長さに対する延長部の長さの割合における圧力損失回復係数の特性を示した図である。
図5】本実施例に係るガスタービンにおける排気ディフューザ軸方向のストラットの長さに対する延長部の長さの割合における圧力損失回復係数の特性を示した図である。
図6】第2の実施例に係るガスタービンの構成を示した模式図である。
図7】第2の実施例に係るガスタービンにおけるストラットの構造を示した模式図である。
図8】従来のガスタービンにおけるストラットの構造を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るガスタービンを実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明に係るガスタービンの第1の実施例について説明する。
図1は、本実施例に係るガスタービンの構成を示した模式図である。
図1に示すように、本実施例に係るガスタービンは、図1中に1点鎖線で示す回転軸を中心として回転するロータ10と、ロータ10側に環状に取り付けられた複数枚の動翼11と、ロータ10の周囲を覆うタービンケーシング12に設けられた複数枚の静翼(図示省略)とが、ロータ10の軸方向に交互に配置されており、図1中に矢印Fで示すこれらを通過する燃焼ガスの流路である燃焼ガス流路13が形成されている。各動翼11及び各静翼は、軸方向の一対で組をなす多段構造となっている。なお、図1においては、これらのうちの最終段、すなわち最下流位側に位置する動翼11のみを示している。
【0014】
最終段の動翼11の下流側には、排気ディフューザ14が同軸に接続されている。排気ディフューザ14は、内部に燃焼ガス流路13に連続し、かつ次第に流路断面積が拡大する燃焼ガス流路15を形成する排気ケーシング16と、排気ケーシング16内に通されたロータ10を軸支する軸受17を周囲より支持する複数枚のストラット18と、点検や整備の際に作業者が通るためのマンホール19とを備えている。
【0015】
そして、本実施例に係るガスタービンにおいては、ストラット18及びマンホール19の内径側及び外径側の壁面近傍に上流側へ延長された延長部1が形成されている。この延長部1の形状は、航空機の垂直安定板に適用されるドーサルフィンのような形状となっている。なお、本実施例においてはストラット18及びマンホール19の内径側及び外径側の壁面近傍に延長部1を形成する場合を例として説明しているが、内径側又は外径側の壁面近傍のいずれか一方にのみ延長部1を形成することとしてもよい。
【0016】
図2は、本実施例に係るガスタービンにおけるストラット18の構造を示した模式図である。
図2に示すように、本実施例に係るストラット18には延長部1が形成されている。なお、図2においては、ストラット18の内径側に形成される延長部1を例として示しているが、ストラット18の外径側及びマンホール19にも同様に延長部1が形成されている。
【0017】
また、延長部1は、ガスタービンの製造当初よりストラット18及びマンホール19に一体に形成する構成としてもよいが、既設のガスタービンの改修時にストラット18及びマンホール19に別体の延長部1を後から取り付ける構成とすることも可能である。
【0018】
ここで、本実施例に係るガスタービンにおける延長部1の効果について説明する。
図3は、本実施例に係るガスタービンにおける延長部1の効果を示した図である。また、図8は、従来のガスタービンにおけるストラット18の構造を示した模式図である。
【0019】
図3に示すように、ガスタービンの出力を絞った部分負荷での運転時にはタービン出口の燃焼ガスのスワール角が大きくなり、図3(a)中に矢印Fで示すようにストラット18に斜め方向から燃焼ガスが衝突するようになる。これにより、従来のガスタービンにおいては、ストラット18の負圧面において燃焼ガスが剥離し、図3(a)及び図8中に斜線で示すように燃焼ガス流路15の壁面にまで及ぶ剥離域が生じ、圧力損失が大幅に増加していた。
【0020】
このため、本実施例に係るガスタービンにおいては、ストラット18に延長部1を形成することにより、図3(b)及び図2中に矢印Eで示すように延長部1から縦渦が発生し、縦渦により燃焼ガスの主流と剥離の境界層とを混合することにより剥離を抑制することができ、縦渦の影響範囲において図3(b)及び図2中に斜線で示すように剥離域を減少させることができるため、圧力損失の増加を抑制することができる。
【0021】
図4は、本実施例に係るガスタービンにおける排気ディフューザ径方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合における圧力損失回復係数の特性を示した図である。なお、図4においては、横軸に排気ディフューザ径方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合を示し、縦軸に圧力損失回復係数を示すこととする。
【0022】
また、図5は、本実施例に係るガスタービンにおける排気ディフューザ軸方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合における圧力損失回復係数の特性を示した図である。なお、図5においては、横軸に排気ディフューザ軸方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合を示し、縦軸に圧力損失回復係数を示すこととする。
【0023】
図4より、排気ディフューザ径方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合は、5%〜30%の間で設定することで良好な圧力損失回復係数を得ることができ、また、図5より、本実施例に係るガスタービンにおける排気ディフューザ軸方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合は、5%〜50%の間で設定することで良好な圧力損失回復係数を得ることができることが分かる。
【0024】
したがって、本実施例に係るガスタービンは、ストラット18及びマンホール19のような構造部材に延長部1を形成することにより、排気ディフューザ14において燃焼ガス流路15内に位置するストラット18及びマンホール19のような構造部材における燃焼ガスの気流に剥離が生じることを抑制することができる。これにより、圧力損失の増加を抑制することができるため、排気ディフューザ14の性能を向上させることができる。
【0025】
さらに、ストラット18及びマンホール19のような構造部材に延長部1を形成することにより、排気ディフューザ14の燃焼ガス流路15の軸方向における断面積変化を緩やかにすることができる。これにより、圧力損失の増加を抑制することができるため、排気ディフューザ14の性能を向上させることができる。
【実施例2】
【0026】
以下、本発明に係るガスタービンの第2の実施例について説明する。
図6は、本実施例に係るガスタービンの構成を示した模式図である。
図6に示すように、本実施例に係るガスタービンは、第1の実施例に係るガスタービンの構造とほぼ同様であるが、ストラット18及びマンホール19の内径側及び外径側の壁面近傍に下流側へ延長された延長部2が形成されている点が異なっている。
【0027】
図7は、本実施例に係るガスタービンにおけるストラット18の構造を示した模式図である。
図7に示すように、本実施例に係るストラット18には延長部2が形成されている。なお、図7においては、ストラット18の内径側に形成される延長部2を例として示しているが、ストラット18の外径側及びマンホール19にも同様に延長部2が形成されている。また、本実施例における延長部2と第1の実施例における延長部1を両方形成することとしてもよい。
【0028】
また、延長部2は、ガスタービンの製造当初よりストラット18及びマンホール19に一体に形成する構成としてもよいが、既存のガスタービンの改修時にストラット18及びマンホール19に別体の延長部2を後から取り付ける構成とすることも可能である。
【0029】
本実施例に係るガスタービンにおいては、ストラット18及びマンホール19の内径側及び外径側の壁面近傍に下流側へ延長された延長部2を形成することにより、図7中に矢印Eで示すような縦渦を生じさせ、特にストラット18及びマンホール19の下流側の燃焼ガス流路15の壁面における燃焼ガスの気流の剥離を抑制することができる。これにより、圧力損失の増加を抑制することができるため、排気ディフューザの性能を向上させることができる。
【0030】
さらに、ストラット18及びマンホール19のような構造部材に延長部2を形成することにより、特に剥離が生じやすい排気ディフューザ14の燃焼ガス流路15の軸方向における断面積が広がる方向における断面積変化を緩やかにすることができる。これにより、圧力損失の増加をより一層抑制することができるため、排気ディフューザの性能を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えば、ガスタービンの排気ディフューザにおける燃焼ガスの流路内に位置する構造部材において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1,2 延長部
10 ロータ
11 動翼
12 タービンケーシング
13 燃焼ガス流路
14 排気ディフューザ
15 燃焼ガス流路
16 排気ケーシング
17 軸受
18 ストラット
19 マンホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8