【実施例1】
【0013】
以下、本発明に係るガスタービンの第1の実施例について説明する。
図1は、本実施例に係るガスタービンの構成を示した模式図である。
図1に示すように、本実施例に係るガスタービンは、
図1中に1点鎖線で示す回転軸を中心として回転するロータ10と、ロータ10側に環状に取り付けられた複数枚の動翼11と、ロータ10の周囲を覆うタービンケーシング12に設けられた複数枚の静翼(図示省略)とが、ロータ10の軸方向に交互に配置されており、
図1中に矢印Fで示すこれらを通過する燃焼ガスの流路である燃焼ガス流路13が形成されている。各動翼11及び各静翼は、軸方向の一対で組をなす多段構造となっている。なお、
図1においては、これらのうちの最終段、すなわち最下流位側に位置する動翼11のみを示している。
【0014】
最終段の動翼11の下流側には、排気ディフューザ14が同軸に接続されている。排気ディフューザ14は、内部に燃焼ガス流路13に連続し、かつ次第に流路断面積が拡大する燃焼ガス流路15を形成する排気ケーシング16と、排気ケーシング16内に通されたロータ10を軸支する軸受17を周囲より支持する複数枚のストラット18と、点検や整備の際に作業者が通るためのマンホール19とを備えている。
【0015】
そして、本実施例に係るガスタービンにおいては、ストラット18及びマンホール19の内径側及び外径側の壁面近傍に上流側へ延長された延長部1が形成されている。この延長部1の形状は、航空機の垂直安定板に適用されるドーサルフィンのような形状となっている。なお、本実施例においてはストラット18及びマンホール19の内径側及び外径側の壁面近傍に延長部1を形成する場合を例として説明しているが、内径側又は外径側の壁面近傍のいずれか一方にのみ延長部1を形成することとしてもよい。
【0016】
図2は、本実施例に係るガスタービンにおけるストラット18の構造を示した模式図である。
図2に示すように、本実施例に係るストラット18には延長部1が形成されている。なお、
図2においては、ストラット18の内径側に形成される延長部1を例として示しているが、ストラット18の外径側及びマンホール19にも同様に延長部1が形成されている。
【0017】
また、延長部1は、ガスタービンの製造当初よりストラット18及びマンホール19に一体に形成する構成としてもよいが、既設のガスタービンの改修時にストラット18及びマンホール19に別体の延長部1を後から取り付ける構成とすることも可能である。
【0018】
ここで、本実施例に係るガスタービンにおける延長部1の効果について説明する。
図3は、本実施例に係るガスタービンにおける延長部1の効果を示した図である。また、
図8は、従来のガスタービンにおけるストラット18の構造を示した模式図である。
【0019】
図3に示すように、ガスタービンの出力を絞った部分負荷での運転時にはタービン出口の燃焼ガスのスワール角が大きくなり、
図3(a)中に矢印Fで示すようにストラット18に斜め方向から燃焼ガスが衝突するようになる。これにより、従来のガスタービンにおいては、ストラット18の負圧面において燃焼ガスが剥離し、
図3(a)及び
図8中に斜線で示すように燃焼ガス流路15の壁面にまで及ぶ剥離域が生じ、圧力損失が大幅に増加していた。
【0020】
このため、本実施例に係るガスタービンにおいては、ストラット18に延長部1を形成することにより、
図3(b)及び
図2中に矢印Eで示すように延長部1から縦渦が発生し、縦渦により燃焼ガスの主流と剥離の境界層とを混合することにより剥離を抑制することができ、縦渦の影響範囲において
図3(b)及び
図2中に斜線で示すように剥離域を減少させることができるため、圧力損失の増加を抑制することができる。
【0021】
図4は、本実施例に係るガスタービンにおける排気ディフューザ径方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合における圧力損失回復係数の特性を示した図である。なお、
図4においては、横軸に排気ディフューザ径方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合を示し、縦軸に圧力損失回復係数を示すこととする。
【0022】
また、
図5は、本実施例に係るガスタービンにおける排気ディフューザ軸方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合における圧力損失回復係数の特性を示した図である。なお、
図5においては、横軸に排気ディフューザ軸方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合を示し、縦軸に圧力損失回復係数を示すこととする。
【0023】
図4より、排気ディフューザ径方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合は、5%〜30%の間で設定することで良好な圧力損失回復係数を得ることができ、また、
図5より、本実施例に係るガスタービンにおける排気ディフューザ軸方向のストラット18の長さに対する延長部1の長さの割合は、5%〜50%の間で設定することで良好な圧力損失回復係数を得ることができることが分かる。
【0024】
したがって、本実施例に係るガスタービンは、ストラット18及びマンホール19のような構造部材に延長部1を形成することにより、排気ディフューザ14において燃焼ガス流路15内に位置するストラット18及びマンホール19のような構造部材における燃焼ガスの気流に剥離が生じることを抑制することができる。これにより、圧力損失の増加を抑制することができるため、排気ディフューザ14の性能を向上させることができる。
【0025】
さらに、ストラット18及びマンホール19のような構造部材に延長部1を形成することにより、排気ディフューザ14の燃焼ガス流路15の軸方向における断面積変化を緩やかにすることができる。これにより、圧力損失の増加を抑制することができるため、排気ディフューザ14の性能を向上させることができる。
【実施例2】
【0026】
以下、本発明に係るガスタービンの第2の実施例について説明する。
図6は、本実施例に係るガスタービンの構成を示した模式図である。
図6に示すように、本実施例に係るガスタービンは、第1の実施例に係るガスタービンの構造とほぼ同様であるが、ストラット18及びマンホール19の内径側及び外径側の壁面近傍に下流側へ延長された延長部2が形成されている点が異なっている。
【0027】
図7は、本実施例に係るガスタービンにおけるストラット18の構造を示した模式図である。
図7に示すように、本実施例に係るストラット18には延長部2が形成されている。なお、
図7においては、ストラット18の内径側に形成される延長部2を例として示しているが、ストラット18の外径側及びマンホール19にも同様に延長部2が形成されている。また、本実施例における延長部2と第1の実施例における延長部1を両方形成することとしてもよい。
【0028】
また、延長部2は、ガスタービンの製造当初よりストラット18及びマンホール19に一体に形成する構成としてもよいが、既存のガスタービンの改修時にストラット18及びマンホール19に別体の延長部2を後から取り付ける構成とすることも可能である。
【0029】
本実施例に係るガスタービンにおいては、ストラット18及びマンホール19の内径側及び外径側の壁面近傍に下流側へ延長された延長部2を形成することにより、
図7中に矢印Eで示すような縦渦を生じさせ、特にストラット18及びマンホール19の下流側の燃焼ガス流路15の壁面における燃焼ガスの気流の剥離を抑制することができる。これにより、圧力損失の増加を抑制することができるため、排気ディフューザの性能を向上させることができる。
【0030】
さらに、ストラット18及びマンホール19のような構造部材に延長部2を形成することにより、特に剥離が生じやすい排気ディフューザ14の燃焼ガス流路15の軸方向における断面積が広がる方向における断面積変化を緩やかにすることができる。これにより、圧力損失の増加をより一層抑制することができるため、排気ディフューザの性能を向上させることができる。