(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725907
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】タイヤ加硫装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/02 20060101AFI20150507BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20150507BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20150507BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-40726(P2011-40726)
(22)【出願日】2011年2月25日
(65)【公開番号】特開2012-176553(P2012-176553A)
(43)【公開日】2012年9月13日
【審査請求日】2013年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】312005957
【氏名又は名称】三菱重工マシナリーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】福田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松永 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 丈二
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−317943(JP,A)
【文献】
特開昭63−230307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02,35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生タイヤを下金型及び上金型に分離可能な金型内に入れて加熱及び加圧することで完成タイヤの形状に仕上げるタイヤ加硫装置であって、
前記上金型をベース部材に固定設置された前記下金型に向けて押圧する加硫位置と、前記下金型との間で生タイヤ搬入及び完成タイヤ搬出を行うことを可能とする退避位置との間を、前記下金型から分離・上昇させた前記上金型が移動台車の動作により往復移動可能なスライドバック機構を備え、
前記上金型が、昇降シリンダの動作により前記移動台車に設けられたガイド用の穴に沿って昇降移動するタイロッドと一体となった水平ビームの下方に加圧シリンダ機構を介して取り付けられ、
前記加圧シリンダ機構は、加圧受板と、該加圧受板の上面に固定された加圧シリンダと、該加圧受板と前記水平ビームとの間とを連結する吊り部材を備え、前記上金型を上から下に向けて押圧することを特徴とするタイヤ加硫装置。
【請求項2】
前記加圧シリンダ機構が複数配設されていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項3】
前記加圧シリンダ機構と前記上金型との間に設けた冷却手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ加硫装置。
【請求項4】
前記加圧シリンダ機構は、前記水平ビームに取り付けられ、全開の上金型上昇位置にある前記上金型を吊り下げた状態にして支持する吊り部材を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生タイヤを加硫成形するタイヤ加硫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫装置は、予め完成品に近い形に成形された生ゴムのタイヤ(生タイヤ)を金型内に入れ、熱と圧力を加えることにより完成タイヤの形状に仕上げる装置である。
このようなタイヤ加硫装置においては、特に、タイヤ外径が1.5mを超えるような大型タイヤを製造するタイヤ加硫装置においては、加硫前の生タイヤ搬入や加硫後の完成タイヤ搬出を容易にするため、下金型から分離・上昇させた上金型を退避位置に移動させるスライドバック方式の構造を採用したものがある。
【0003】
図5及び
図6は、スライドバック構造を採用したタイヤ加硫装置の従来構造を示している。このタイヤ加硫装置1は、基礎上に固定されたベース部材2に設置されている。ベース部材2には、下金型3と、上金型4の昇降・スライド機構10及び加圧機構20が設置されている。
【0004】
昇降・スライド機構10は、ビーム11に支持された上金型4及びボルスタープレート5等を上下方向に昇降させることにより、加硫時の金型全閉位置(下降位置)とタイヤ搬入・搬出時の金型全開位置(上昇位置)との切換動作を行うものである。この場合、昇降スライド機構10の昇降動作は、一対の昇降シリンダ12を駆動源とし、左右一対のタイロッド13をガイドとして行われる。
この昇降・スライド機構10は、
図6に実線で表示した金型全閉状態の加硫位置(下金型3と同心の位置)と、想像線で表示した金型全開後にスライドバックした待避位置との間を、移動台車14によって矢印15で示す水平方向に往復移動が可能となっている。
【0005】
加圧機構20は、金型全閉位置にある上金型4を下方に引き、加硫時に上下の金型3,4内にある生タイヤを加圧するための装置である。この加圧機構20は、ベース2の下方に設置した加圧シリンダ21が動作してタイロッド13を引き下げることで、ビーム11とともに上金型4及びボルスタープレート5が引き下げられ、ベース部材2上に固定された下金型3に向けて上金型4が押圧されるようになっている。
加圧シリンダ21とタイロッド13との間は、昇降・スライド機構10が金型全閉状態の位置にあるとき、加圧シリンダ21側のクランプガイド22の中にあるクランププレート13aとタイロッド13とが係合するので、加圧シリンダ21によるタイロッド13の引き上げが可能となる。
【0006】
従って、上下の金型3,4を全閉状態にして生タイヤの加硫成形が行われた後には、
図6に想像線で示すように、昇降シリンダ12により上金型4を上昇させて全開状態とし、さらに、移動台車14の動作により加硫位置から待避位置までスライドバックさせる。この結果、下金型3の上方及び周辺は障害物がなくなるので、加硫済みタイヤの取出スペース及び次に加硫成形を行う生タイヤの搬入スペースが形成される。
また、下記の特許文献1には、上部ボルスターとともに上金型を上昇させた状態で、上部ボルスターを残して下部ボルスターのみを加硫位置から略水平に移動可能にした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−317943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来構造のタイヤ加硫装置1は、昇降・スライド機構10を待避位置までスライドバックさせた状態にして、下金型3との間でタイヤの搬出及び搬入を行うものであるが、加硫位置においては、下方に配置した加圧シリンダ21がタイロッド13を引いて金型内の生タイヤを加圧する構成となっている。しかし、このような加圧方式では、下方に配置した加圧シリンダ21がタイロッド13を引いて加圧する場合、端部付近を引き下げられるビーム11やタイロッド13に撓みを生じることが懸念される。
【0009】
このようなビーム11等の撓みは、ビーム11とともに引き下げられて下金型3を上方から押圧する上金型4の加圧力を不均一にするという問題がある。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、昇降・スライド機構を待避位置までスライドバックさせる方式のタイヤ加硫装置において、加硫時の上金型による加圧力を均一にすることができるタイヤ加硫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るタイヤ加硫装置は、生タイヤを下金型及び上金型に分離可能な金型内に入れて加熱及び加圧することで完成タイヤの形状に仕上げるタイヤ加硫装置であって、前記上金型をベース部材に固定設置された前記下金型に向けて押圧する加硫位置と、前記下金型との間で生タイヤ搬入及び完成タイヤ搬出を行う際の退避位置との間を、前記下金型から分離・上昇させた前記上金型が移動台車の動作により往復移動可能なスライドバック機構を備え、前記上金型が、昇降シリンダの動作により前記移動台車に設けられたガイド用穴に沿って昇降移動するタイロッドと一体になった水平ビームの下方に加圧シリンダ機構を介して取り付けられ
、前記加圧シリンダ機構は、加圧受板と、該加圧受板の上面に固定された加圧シリンダと、該加圧受板と前記水平ビームとの間とを連結する吊り部材を備え、前記上金型を上から下に向けて押圧することを特徴とするものである。
【0011】
このような本発明のタイヤ加硫装置によれば、上金型をベース部材に固定設置された下金型に向けて押圧する加硫位置と、下金型との間で生タイヤ搬入及び完成タイヤ搬出を行う退避位置との間を、下金型から分離・上昇させた上金型が移動台車の動作により往復移動可能なスライドバック機構を備え、上金型が、昇降シリンダの動作により移動台車に立設されたガイド部材に沿って昇降移動する水平ビームの下方に加圧シリンダ機構を介して取り付けられ
、前記加圧シリンダ機構は、加圧受板と、該加圧受板の上面に固定された加圧シリンダと、該加圧受板と前記水平ビームとの間とを連結する吊り部材を備え、前記上金型を上から下に向けて押圧するので、生タイヤの加硫成形時には上金型を下向きに押圧して均等に加圧することが可能になる。すなわち、本発明の加圧シリンダ機構は、上金型の中心部を上から加圧して押圧するので、撓みによる不均一な加圧が生じることを防止できる。
【0012】
上記の発明において、前記加圧シリンダ機構を複数配設しても、上金型の均等な加圧が可能になる。この場合、複数の加圧シリンダ機構は、同一平面上において均等配置されていることが望ましい。
【0013】
上記の発明において、前記加圧シリンダ機構と前記上金型との間に冷却手段を設けることが好ましく、これにより、加硫時に金型を加熱する熱により加圧シリンダ機構が加熱されることを防止できる。すなわち、加圧シリンダ機構に使用される油圧シリンダは、油温の上昇等が防止されて信頼性や耐久性が向上する。
【0014】
上記の発明において、前記加圧シリンダ機構は、前記水平ビームに取り付けられ、全開の上金型上昇位置にある前記上金型を吊り下げた状態にして支持する吊り部材を備えていることが好ましく、これにより、下金型から分離・上昇させた上金型が加硫位置と退避位置との間を移動台車の動作により往復移動する際には、専用の吊り部材が上金型の全重量を支持することになるので、重量物である上金型の慣性力がフリー状態の加圧シリンダに作用することを防止できる。さらに、水平ビームと加圧受板との熱膨張差が生じた場合でも、水平方向の荷重が加圧シリンダに作用することを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によれば、昇降・スライド機構を待避位置までスライドバックさせる方式のタイヤ加硫装置において、加圧シリンダを上方に配置して上金型を下向きに押圧する構造にしたので、加硫時の上金型による加圧力を均一にして製造した完成タイヤの品質が向上するという顕著な効果が得られる。
【0016】
また、金型から熱影響を受ける加圧シリンダの冷却手段を設けることで、加圧シリンダの耐久性や信頼性が向上する。
さらに、上金型を吊る専用冶具として吊り部材を設けたので、加硫位置と退避位置との間を往復移動してもフリー状態の加圧シリンダに慣性力が作用することはなく、さらに、水平ビームと加圧受板との熱膨張差が生じた場合でも、水平方向の荷重が加圧シリンダに作用することはないので、これによっても、加圧シリンダの耐久性や信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るタイヤ加硫装置の一実施形態として、金型全閉状態を示す正面図である。
【
図2】
図1に示したタイヤ加硫装置の右側面図であり、金型全閉状態が実線で表示されるとともに、金型全開後にスライドバックした状態が想像線で表示されている。
【
図3】
図1に示したタイヤ加硫装置のA−A断面図である。
【
図4】
図3のB−B断面図であり、紙面左側から順に、金型全開状態、金型全閉及び加圧前の状態、金型全閉及び加圧時の状態が示されている。
【
図5】従来のタイヤ加硫装置について金型全閉状態を示す正面図である。
【
図6】
図5に示すタイヤ加硫装置の右側面図であり、金型全閉状態が実線で表示されるとともに、金型全開後にスライドバックした状態が想像線で表示されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るタイヤ加硫装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜4に示すタイヤ加硫装置1Aは、生タイヤを下金型3及び上金型4に分離可能な金型内に入れて加熱及び加圧することにより、完成タイヤの形状に仕上げる加硫成形を行う装置である。なお、金型内部には、タイヤの内側形状を形成するため、図示しないブラダが配設されている。
【0019】
このタイヤ加硫装置1Aは、基礎上に固定されたベース部材2に設置されている。ベース部材2には、固定した下金型3と、水平方向に往復移動可能な移動台車14とが設置されている。なお、移動台車14には、上金型4の昇降・スライド機構10A及び加圧シリンダ機構30が設置されており、一体に移動可能となっている。
【0020】
また、本実施形態のタイヤ加硫装置1Aは、スライドバック機構を備えている。このスライドバック機構は、たとえば
図2に示すように、下金型3から分離・上昇させた上金型4が、上金型4をベース2に固定設置された下金型3に向けて押圧する金型全閉状態の加硫位置(実線表示)と、下金型3との間で生タイヤの搬入や完成タイヤの搬出を行う金型全開状態の退避位置(想像線表示)との間を、移動台車14の動作により矢印15で示す水平方向に往復移動可能とするものである。
この場合、スライドバック機構による上金型4の往復移動は、昇降・スライド機構10A及び加圧シリンダ機構30とともに行われる。
【0021】
昇降・スライド機構10Aは、水平方向の部材であるビーム11に支持された上金型4及びボルスタープレート5等を上下方向に昇降させることにより、加硫時の金型全閉位置(下降位置)と、生タイヤ搬入時及び完成タイヤ搬出時の金型全開位置(上昇位置)との切換動作を行うものである。この場合、昇降スライド機構10Aの昇降動作は、たとえば左右一対の昇降シリンダ12を駆動源とし、昇降シリンダ12の近傍に設けた左右一対の移動台車14にある穴をタイロッド13の昇降用ガイドとして行われる。
このタイロッド13は、水平方向に配置されているビーム11の両端部付近を貫通し、ビーム11に固定されている。
【0022】
昇降シリンダ12は、たとえば油圧シリンダが用いられる。この昇降シリンダ12は、下端部が移動台車14に固定され、上端部がビーム11に固定されている。図示の昇降シリンダ12は、
図2に示す構成例のように、ピストンロッド12aが上方へ突出してビーム11を押し上げる取付構造を採用しているが、これに限定されることはない。
すなわち、移動台車14上には左右一対のタイロッド13をガイドする穴があり、このタイロッド13がビーム11の両端部付近を貫通し固定されているので、昇降シリンダ12から押圧力を受けるビーム11は、スライド可能に支持する移動台車14の穴をガイドにして昇降する。
【0023】
さて、本実施形態の加圧機構30は、
図1及び
図3に示すように、ビーム11の下面側に設けられている。
この加圧機構30は、上金型4の上端部に固定された加圧受板31と、この加圧受板31の上面に固定設置された加圧シリンダ32と、加圧受板31とビーム11との間を連結する吊り棒33とを具備して構成される。
【0024】
図示の構成例では、加圧受板31が円板形状とされ、3本の加圧シリンダ32が円周方向に均等配置されている。この場合、好適な加圧シリンダ32としては、たとえば油圧シリンダがある。また、加圧受板31と加圧シリンダ32との間には、たとえば水等の冷却媒体を循環させる冷却板34が配設されており、加熱により高温となる上金型4からの入熱により加圧シリンダ32が温度上昇することを防止している。
【0025】
加圧シリンダ32は、加圧円板31上に冷却板34を介して固定設置され、
ピストンロッド32aが上向きに突出してビーム11の下面を押し上げる。この場合、
ピストンロッド32aの上端面とビーム11の下面との間には、
図4に示す金型全開時において、所定の隙間Saが形成されている。すなわち、加圧力が不要なため、加圧シリンダ32に油圧等の媒体圧力が供給されていない金型全開の状態では、加圧シリンダ32の
ピストンロッド32aとビーム11との間が分離された状態にある。換言すれば、加圧シリンダ32の
ピストンロッド32aは、金型全閉の加圧時以外、ビーム11と接することはない。
【0026】
このとき、上金型4及び加圧シリンダ32は、吊り棒33によりビーム11の下面に吊り下げられた状態にある。この吊り棒33は、
図3に示すように、円周方向に等ピッチとなるように、3本の加圧シリンダ32と交互に配置されて合計3本設けられている。
ここで、吊り棒33について具体的に説明すると、吊り棒33の上端部側は、ビーム11の下面に固定支持されている。そして、吊り棒33の下端部側には、加圧円板31に穿設した貫通孔31aを通り抜ける細径部33aが設けられ、さらに細径部33aより下方には、加圧受板31の下面と係合する保持面33bが形成されている。すなわち、金型全開時の状態では、上金型4及び加圧シリンダ32と一体に連結された加圧受板31が、3本の吊り棒33に形成した保持面33bで荷重を受けてビーム11の下面に吊り下げられている。
【0027】
また、吊り棒33の細径部33aは、加圧シリンダ32のピストンロッド32aが突出するストロークより長い隙間Sbを形成する長さに設定されている。すなわち、保持面33bが加圧受板31の下面に密着して荷重を受ける金型全開時の状態では、加圧受板31の上面に隙間Sbが形成されており、この隙間Sbは、ピストンロッド32aの上方に形成されている隙間Saより大(Sb>Sa)となり、隙間Saは、加圧シリンダ32のピストンロッド32aが突出するストロークよりも大(Sb>Sa>ストローク)となる。
このような隙間Sbが形成されるように細径部33aを設けると、昇降シリンダ12を操作して金型全閉の状態にすると、ピストンロッド32aの上面がビーム11の下面に接して隙間Saは0となる。このとき、細径部33aは加圧受板31の上面及び下面から突出した状態にあり、隙間Sc及び隙間Sdが形成されて遊嵌された状態にある。
【0028】
このため、金型全閉の状態から加圧シリンダ32を操作しても、加圧シリンダ32の押圧力が吊り棒33から影響を受けることはない。
また、上述した吊り棒33により上金型4を吊り下げる構造は、ビーム11と上金型4とが加圧シリンダ32で連結されている場合、移動台車14によるスライドバック時の慣性力で加圧シリンダ32に水平方向の荷重が作用することを防止できる。さらに、水平ビーム11と加圧受板31との熱膨張差が生じた場合でも、水平方向の荷重が加圧シリンダ21に作用することを防止できる。すなわち、スライドバック時の加圧シリンダ32はフリーの状態となるため、水平方向の荷重が作用することは一切なく、熱膨張等の影響も受けないので、加圧シリンダ32を金型加圧に特化することができる。
【0029】
このように、上述した本実施形態のタイヤ加硫装置1Aによれば、昇降・スライド機構10Aを待避位置までスライドバックさせる方式とし、加圧シリンダ32を上方に配置して上金型4を下向きに押圧する構造にしたので、加硫時の上金型4が均等な加圧力により加圧して完成タイヤを製造することができ、完成タイヤの品質向上に有効である。
【0030】
また、上金型4から熱影響を受ける加圧シリンダ32の冷却手段として冷却板34を設けたので、油圧油の温度上昇やシール部材の劣化等を抑制し、加圧シリンダ32の耐久性や信頼性を向上させることができる。
さらに、上金型4を吊る専用冶具として吊り部材33を設けたので、加硫位置と退避位置との間を往復移動してもフリー状態の加圧シリンダ32に慣性力が作用することはなくなり、また、水平ビーム11と加圧受板31との熱膨張差が生じた場合でも、水平方向の荷重が加圧シリンダ32に作用しなくなり、これによっても、加圧シリンダ32の耐久性や信頼性は向上する。
【0031】
また、昇降・スライド機構を待避位置までスライドバックさせる方式のタイヤ加硫装置1Aは、スライドバック機構による上金型4の往復移動が昇降・スライド機構10A及び加圧シリンダ機構30とともに行われるので、下金型3に生タイヤを搬入してセットする作業、下金型3から完成タイヤを取り出して搬出する作業、金型の交換作業及びメンテナンス作業を行う場合には、下金型3の周辺に障害物がなくなるため、アクセス性や作業性が向上する。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0032】
1,1A タイヤ加硫装置
2 ベース
3 下金型
4 上金型
5 ボルスタープレート
10,10A 昇降・スライド機構
11 ビーム(水平ビーム)
12 昇降シリンダ
13 タイロッド
14 移動台車
20 加圧機構
21 加圧シリンダ
30 加圧シリンダ機構
31 加圧受板
32 加圧シリンダ
33 吊り棒
34 冷却板