特許第5725913号(P5725913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725913
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】複合サイクルプラント
(51)【国際特許分類】
   F01K 23/10 20060101AFI20150507BHJP
   F02C 7/224 20060101ALI20150507BHJP
   F01K 9/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   F01K23/10 F
   F02C7/224
   F01K9/00 F
   F01K23/10 W
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-49596(P2011-49596)
(22)【出願日】2011年3月7日
(65)【公開番号】特開2012-184735(P2012-184735A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2013年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】東 一也
(72)【発明者】
【氏名】中本 行政
【審査官】 寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−329806(JP,A)
【文献】 特開平11−200816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/224
F02C 6/18
F01K 1/00−27/02
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(GT)の排熱を利用して排熱回収ボイラ(HRSG)で蒸気を発生させ、発生した蒸気を蒸気タービン(ST)の駆動源として利用するとともに、該蒸気タービン(ST)で膨張した蒸気を復水器(C)で復水させる複合サイクルプラント(CC)において、
前記排熱回収ボイラ(HRSG)で加熱された加熱水(HW1)を熱源として、前記ガスタービン(GT)の燃焼器(CB)に供給される燃料ガス(G1)を加熱する燃料ガス加熱装置(FGH)と、
前記燃料ガス加熱装置(FGH)を通過した加熱水(HW2)が流通し、分岐部(DC)を介して分岐された一方が、前記排熱回収ボイラ(HRSG)と前記復水器(C)とを接続する復水ライン(L3)に接続された加熱水戻りライン(L2)と、
該加熱水戻りライン(L2)における前記分岐部(DC)を介して分岐された他方に設けられており、前記加熱水(HW2)をダンプさせるためのダンプ弁(DMP)と、
前記加熱水戻りライン(L2)の前記分岐部(DC)より上流側に設けられて、前記燃料ガス加熱装置(FGH)を通過した前記加熱水(HW2)の温度を計測する温度計測手段(T)と、
該温度計測手段(T)での計測値に基づき、前記ダンプ弁(DMP)を開閉制御する制御手段(10)と、を備えることを特徴とする複合サイクルプラント。
【請求項2】
前記制御手段(10)は、前記温度計測手段(T)で計測される温度に基づき、フラッシュが発生する状態を事前検知した場合、及び料供給量が急変する運転状態移行することを事前検知した場合に前記ダンプ弁(DMP)を「閉」から「開」に開動作させることを特徴とする請求項1に記載の複合サイクルプラント。
【請求項3】
前記加熱水戻りライン(L2)の分岐された他方における前記ダンプ弁(DMP)の下流側前記復水器(C)に接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の複合サイクルプラント。
【請求項4】
前記加熱水戻りライン(L2)の分岐された他方における前記ダンプ弁(DMP)の下流側に、脱気器(DEA)が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合サイクルプラント。
【請求項5】
前記加熱水戻りライン(L2)の分岐された一方に減圧弁(PRV)が配置されていることにより、前記ダンプ弁(DMP)と前記減圧弁(PRV)とが並列に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合サイクルプラント。
【請求項6】
前記制御手段(10)は、前記燃料ガス熱装置(FGH)の起動時に、前記ダンプ弁(DMP)を開動作させて温水を流すことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合サイクルプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンと蒸気タービンとを組み合わせた複合サイクルプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の複合サイクルプラントとして、特許文献1に示される公報が知られている。
この特許文献1に示される複合サイクルプラント(CC)では、ガスタービン(GT)の燃焼器(CB)に供給される燃料ガス(例えば、天然ガス等)を予め加熱する燃料ガス加熱装置(FGH)を備えている。
この燃料ガス加熱装置は、燃料ガス供給装置とガスタービンの燃焼器との間に設けられており、排熱回収ボイラ(HRSG)内に含まれる中圧エコノマイザ(IEC)の出口と接続された伝熱管を内部に有する。これにより、燃料ガス加熱装置を通過する燃料ガスは、中圧エコノマイザから流出し、伝熱管の内部を流通する加熱水(HW)(約240℃程度)から熱を奪って昇温することから、ガスタービンにおける熱効率が向上する。燃料ガス加熱装置を熱源として通過した加熱水は燃料ガスに熱を与えて降温し、減圧弁(PRV)によって減圧された状態で復水ラインや脱気器等に返送される。
【0003】
また、この特許文献1の複合サイクルプラント(CC)では、排熱回収ボイラ(HRSG)内の中圧エコノマイザ(IEC)から燃料ガス加熱装置(FGH)に加熱水を供給する加熱水供給ライン(L1)の途中に、開閉弁(SV)が設けられている。
また、該燃料ガス加熱装置を通過した加熱水を排熱回収ボイラに返送させる加熱水戻りライン(L2)の途中には、燃料ガス加熱装置の出口側における加熱水の温度を計測する温度計(T)が設けられており、該温度計の計測値に基づいて前記開閉弁を開閉制御するようにしている。なお、上記説明で示した括弧内の記号は特許文献1中の符号に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001‐329806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示される複合サイクルプラント(CC)では、ガスタービン(GT)に急激な負荷変動が発生したり、いわゆるインターロック状態になったりすると、燃焼器(CB)に対する燃料ガスの供給量を急激に減少させる必要が生じることがある。
そして、燃料ガス加熱装置(FGH)を通過する燃料ガスの流量が減少した場合、燃料ガスが加熱水から奪う熱量も減少することになり、燃料ガス加熱装置を通過した加熱水(HW)は高温のまま復水ラインや脱気器等に返送されてしまう。この場合、加熱水戻りライン(L2)内部や戻りラインと復水ラインや脱気器等との合流部等において、高温の加熱水が飽和圧力まで急激に減圧されて沸騰し、気液二相状態となるフラッシュ現象が発生してしまい、このようなフラッシュ現象で生じた蒸気の気泡が潰れ、さらにその後の再結合による圧力変化により、配管やその他の機器を損傷させてしまう恐れもある。
【0006】
このような不具合を防止するために、特許文献1の複合サイクルプラント(CC)では、燃料ガス加熱装置(FGH)の出口側における加熱水の温度を温度計(T)にて計測し、該温度計の計測値に基づいて、燃料ガス加熱装置に加熱水を供給する加熱水供給ライン(L1)途中の開閉弁(SV)を「閉」位置に制御して、フラッシュ現象の発生を防止するようにしている。
しかしながら、このような加熱水の温度上昇により、加熱水供給ライン途中の開閉弁を「閉」とした場合には、燃料ガス加熱装置(FGH)での燃料加熱がなくなり、プラント全体での運転効率が低下する。
さらに、このように開閉弁を「閉」とした場合には、その後、燃料ガス加熱装置を通過する燃料ガスの流量が回復して、該開閉弁を「開」とした後の通常運転復帰へも多くの時間が必要となり、全体の運転効率が悪くなるという問題があった。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ガスタービンの燃焼器への燃料ガスの供給量の急激な減少により、燃料ガス加熱装置を通過する加熱水の温度が上昇して、該加熱水にフラッシュが発生の恐れがある場合でも、加熱水戻りラインでの加熱水の流通を遮断することなくフラッシュ現象の発生を防止し、設備全体の運転効率の低下を防止できる複合サイクルプラントの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の複合サイクルプラント(CC)では、ガスタービン(GT)の排熱を利用して排熱回収ボイラ(HRSG)で蒸気を発生させ、発生した蒸気を蒸気タービン(ST)の駆動源として利用するとともに、該蒸気タービン(ST)で膨張した蒸気を復水器(C)で復水させる複合サイクルプラント(CC)において、前記排熱回収ボイラ(HRSG)で加熱された加熱水(HW1)を熱源として、前記ガスタービン(GT)の燃焼器(CB)に供給される燃料ガス(G1)を加熱する燃料ガス加熱装置(FGH)と、前記燃料ガス加熱装置(FGH)を通過した加熱水(HW2)が流通し、分岐部(DC)を介して分岐された一方が、前記排熱回収ボイラ(HRSG)と前記復水器(C)とを接続する復水ライン(L3)に接続された加熱水戻りライン(L2)と、該加熱水戻りライン(L2)における前記分岐部(DC)を介して分岐された他方に設けられており、前記加熱水(HW2)をダンプさせるためのダンプ弁(DMP)と、前記加熱水戻りライン(L2)の前記分岐部(DC)より上流側に設けられて、前記燃料ガス加熱装置(FGH)を通過した加熱水(HW2)の温度を計測する温度計測手段(T)と、該温度計測手段(T)での計測値に基づき、前記ダンプ弁(DMP)を開閉制御する制御手段(10)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
そして、上記のような複合サイクルプラント(CC)では、加熱水戻りライン(L2)に、燃料ガス加熱装置(FGH)を通過した加熱水(HW2)をダンプさせるためのダンプ弁(DMP)を設け、このダンプ弁(DMP)を、該ダンプ弁(DMP)より上流側に位置する温度計測手段(T)での加熱水(HW2)の計測値に基づき開閉制御するようにした。これにより制御手段(10)において、温度計測手段(T)で計測される温度に基づき、フラッシュが発生する状態を事前検知した場合、及び運転状態として負荷遮断等で燃料供給量が急変する運転状態に移行することを事前検知した場合に、前記ダンプ弁(DMP)を「閉」から「開」に開動作させれば、ガスタービン(GT)の燃焼器(CB)への燃料ガスの供給量の急激な減少により、燃料ガス加熱装置(FGH)を通過する加熱水(HW2)の温度が上昇した場合であっても、該加熱水(HW2)の流通を遮断することなくフラッシュ現象の発生を防止することができ、設備全体の運転効率の低下を防止することが可能となる。
【0010】
また、本発明の複合サイクルプラント(CC)では、前記制御手段(10)は、フラッシュが発生する状態を事前検知した場合に、前記ダンプ弁(DMP)を「閉」から「開」に開動作させることを特徴とすることを特徴とする。
【0011】
そして、上記のような複合サイクルプラント(CC)では、制御手段(10)において、フラッシュが発生する状態を事前検知した場合に、前記ダンプ弁(DMP)を「閉」から「開」に開動作させるようにしたので、ガスタービン(GT)の燃焼器(CB)への燃料ガスの供給量の急激な減少により、燃料ガス加熱装置(FGH)を通過する加熱水(HW2)の温度が上昇した場合であっても、該加熱水(HW2)の流通を遮断することなくフラッシュ現象の発生を防止することができ、設備全体の運転効率の低下を防止できる。
【0012】
また、本発明の複合サイクルプラント(CC)では、前記加熱水戻りライン(L2)の分岐された他方における前記ダンプ弁(DMP)の下流側前記復水器(C)に接続されていることを特徴とする。
【0013】
そして、上記のような複合サイクルプラント(CC)では、ダンプ弁(DMP)の下流側には復水器(C)が配置されているので、該ダンプ弁(DMP)で減圧された加熱水(HW2)をそのまま復水器(C)に送ることができる。
【0014】
また、本発明の複合サイクルプラント(CC)では、前記加熱水戻りライン(L2)の分岐された他方における前記ダンプ弁(DMP)の下流側に脱気器(DEA)が配置されていることを特徴とする。
【0015】
そして、上記のような複合サイクルプラント(CC)では、ダンプ弁(DMP)の下流側には脱気器(DEA)が配置されているので、該ダンプ弁(DMP)で減圧された加熱水(HW2)から気泡を除去して、加熱水を液相のみにすることができる。これによりその後の排熱回収ボイラ(HRSG)での加熱水からの熱回収を効率良く行うことができる。
【0016】
また、本発明の複合サイクルプラント(CC)では、前記加熱水戻りライン(L2)の分岐された一方に減圧弁(PRV)が配置されていることにより、前記ダンプ弁(DMP)と前記減圧弁(PRV)とが並列に配置されていることを特徴とする。
【0017】
そして、上記のような複合サイクルプラント(CC)では、加熱水戻りライン(L2)には、分岐部(DC)を介してダンプ弁(DMP)と並列するように減圧弁(PRV)が配置されているので、通常運転時に加熱水(HW2)が減圧弁(PRV)を経由するラインとし、フラッシュが発生しそうな場合の非常時にダンプ弁(DMP)を経由するラインを開通することができる。すなわち、通常時と、異常時のラインをそれぞれ設けることで、複合サイクルプラント運転の信頼性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の複合サイクルプラント(CC)では、制御手段(10)は、燃料ガス加熱装置(FGH)の起動時に、ダンプ弁(DMP)を開動作させて温水を流すことを特徴とする。
そして、上記のような複合サイクルプラント(CC)では、燃料ガス加熱装置(FGH)の起動時に、燃料ガス加熱装置(FGH)を急速暖気して燃料ガスの加熱を迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、加熱水戻りライン(L2)に、燃料ガス加熱装置(FGH)を通過した加熱水(HW2)をダンプさせるためのダンプ弁(DMP)を設け、このダンプ弁(DMP)を、該ダンプ弁(DMP)より上流側に位置する温度計測手段(T)での加熱水(HW2)の計測値に基づき開閉制御するようにした。これにより制御手段(10)において、温度計測手段(T)で計測される温度に基づき、フラッシュが発生する状態を事前検知した場合、及び運転状態として負荷遮断等で燃料供給量が急変する運転状態に移行することを事前検知した場合に、前記ダンプ弁(DMP)を「閉」から「開」に開動作させれば、ガスタービン(GT)の燃焼器(CB)への燃料ガスの供給量の急激な減少により、燃料ガス加熱装置(FGH)を通過する加熱水(HW2)の温度が上昇した場合であっても、該加熱水(HW2)の流通を遮断することなくフラッシュ現象の発生を防止することができ、設備全体の運転効率の低下を防止することが可能となる。
また、燃料ガス加熱装置(FGH)が冷機状態から起動の際に、ダンプ弁(DMP)を用いて大量の温水を流すことで燃料ガス加熱装置(FGH)の急速暖気が可能となり、燃料ガス加熱を迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係わる複合サイクルプラントCCの配管図である。
図2】本発明の第2実施形態に係わる複合サイクルプラントCCの配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態について図1を参照して説明する。
図1は、本発明に係る複合サイクルプラントCCの第1実施形態を示す系統図である。同図に示す複合サイクルプラントCCは、主として、ガスタービンGT、排熱回収ボイラHRSG及び蒸気タービンSTから構成される。ガスタービンGTは、圧縮機ACで昇圧させると共に燃焼器CBで燃焼させた作動流体をタービンATで膨張させて発電機EG1を駆動する。ガスタービンGTのタービンATから排出される排ガスは、複圧式の排熱回収ボイラHRSGに導入され、蒸気を発生するための熱源として利用される。排熱回収ボイラHRSGで発生した蒸気は、蒸気タービンSTに駆動源として供給される。
【0022】
蒸気タービンSTは、高圧タービンHT、中圧タービンIT及び低圧タービンLTからなり、発電機EG2を駆動する。高圧タービンHTには、排熱回収ボイラHRSGの高圧過熱器HSHから過熱蒸気が供給される。高圧タービンHTで膨張してエネルギを回収された蒸気は、排熱回収ボイラHRSGの再熱器RHで再加熱され、中圧タービンITに供給される。また、低圧タービンLTには、排熱回収ボイラHRSGの低圧過熱器LSHで過熱された蒸気と、中圧タービンITを通過した蒸気とが供給される。低圧タービンLTで膨張してエネルギを回収された蒸気は、復水器Cに導入され、冷却・復水させられる。
【0023】
復水器Cで回収された復水は、復水ポンプPCによって圧送され、グランド復水器GCを介して、排熱回収ボイラHRSGの予熱器PHに導入される。排熱回収ボイラHRSGの予熱器PHで予熱された水は、低圧給水ポンプPLによって低圧エコノマイザLECに、中圧給水ポンプPIによって中圧エコノマイザIECに、高圧給水ポンプPHによって高圧エコノマイザHECに供給される。
【0024】
低圧エコノマイザLECで加熱された水は、低圧蒸発器LEVで蒸発し、低圧ドラムLDを介して低圧過熱器LSHに送られ、低圧過熱器LSHで過熱される。また、中圧エコノマイザIECで加熱された水は、中圧蒸発器IEVで蒸発し、中圧ドラムIDを介して中圧過熱器ISHに送られ、中圧過熱器ISHで過熱される。同様に、高圧エコノマイザHECで加熱された水は、高圧蒸発器HEVで蒸発し、高圧ドラムHDを介して高圧過熱器HSHに送られ、高圧過熱器HSHで過熱される。
【0025】
また、この複合サイクルプラントCCには、図1に示すように、ガスタービンGTの燃焼器CBにおける熱効率を向上させる観点から、燃焼器CBと図示しない燃料ガス供給装置との間に、燃料ガス加熱装置FGHが設けられている。燃料ガス加熱装置FGHは、図示しないタービン冷却空気ユニット(TCAクーラ)を含むと共に、加熱水供給ラインL1を介して排熱回収ボイラHRSGの中圧エコノマイザIECの出口と接続された伝熱管を有する。
燃料ガス加熱装置FGHを構成する伝熱管の出口には、加熱水戻りラインL2の一端が接続されている。そして、前記加熱水供給ラインL1を通じて、排熱回収ボイラHRSGの中圧エコノマイザIECから加熱水HW1が供給され、また、前記加熱水戻りラインL2を通じて、燃料ガス加熱装置FGHで熱交換された後の加熱水HW2が供給される。
また、加熱水戻りラインL2は、分岐部DCを介して分岐した後、排熱回収ボイラHRSGと復水器Cとを結ぶ復水ラインL3(排熱回収ボイラHRSGの予熱器PHの入口へのラインも含む)と、復水器Cに直接至る復水ラインL3´とに接続されている。
また、加熱水戻りラインL2の途中には、加熱水HW2の温度を計測するための温度計T(後述する)、加熱水HW2を輸送するためのポンプP(後述する)が接続されている。
【0026】
更に、燃料ガス加熱装置FGHと図示しない燃料ガス供給装置とを結ぶガス供給ラインには、バイパス弁BVが備えられており、このバイパス弁BVの分岐ポートには、燃焼器CBの燃料ガス入口に連なるバイパスラインが接続されている。バイパス弁BVは、制御装置10に接続されており、制御装置10を介してバイパス弁BVをバイパスライン側に切り換えれば、燃料ガス加熱装置FGHを経由させることなく、燃料ガスを燃焼器CBに直接供給することができる。
【0027】
これにより、複合サイクルプラントCCの運転中、燃料ガス加熱装置FGHには、排熱回収ボイラHRSGの中圧エコノマイザIECで加熱された加熱水HW1(例えば、約240℃)が熱源として供給される。従って、バイパス弁BVを燃料ガス加熱装置FGH側に切り換えておけば、天然ガス等の燃料ガスは、燃料ガス加熱装置FGHを通過する際に、排熱回収ボイラHRSG側から供給される加熱水HW1から熱を奪って昇温する。
【0028】
前記加熱水戻りラインL2は分岐部DCを介して分岐され、分岐された一方の加熱水戻りラインL2には減圧弁PRV、他方の加熱水戻りラインL2にはダンプ弁DMPが配置されている。すなわち、加熱水戻りラインL2途中の分岐部DCを介して、ダンプ弁DMPと減圧弁PRVとが並列に配置されている。
そして、燃料ガス加熱装置FGHを熱源として通過した加熱水HW2は燃料ガスに熱を与えて降温した後、分岐部DCで分岐した一方の加熱水戻りラインL2途中に配置された減圧弁PRVによって所定の圧力まで減圧された後、復水ラインL3に返送される。また、前記加熱水HW2は、分岐部DCで分岐した他方の加熱水戻りラインL2の途中に配置されたダンプ弁DMPで減圧された後、復水ラインL3´に返送される。
【0029】
ここで、このように構成された複合サイクルプラントCCでは、ガスタービンGTの負荷変動等によって燃焼器CBに対する燃料ガスの供給量を急激に減少させた場合、燃料ガス加熱装置FGHを通過する燃料ガスの流量が減少するのに起因して、燃料ガスによって奪われる加熱水の熱量も減少することになる。この場合、燃料ガス加熱装置FGHを通過した加熱水は高温のまま復水ラインL3に返送されてしまうことになる。従って、何らかの対策を施さなければ、燃焼器の熱効率が低下してしまうと共に、加熱水戻りラインL2の内部や、加熱水戻りラインL2と復水ラインL3との合流部等において、フラッシュ現象が発生してしまう。
【0030】
これを踏まえて、この複合サイクルプラントCCには、燃料ガス加熱装置FGHと排熱回収ボイラHRSGとを結ぶ流路である加熱水供給ラインL1の途中には、加熱水HW1の流量を検出するための流量計F、及び電磁弁等からなる遠隔操作式の開閉弁SVが設けられ、一方、分岐部DCの下流の加熱水戻りラインL2途中には、減圧弁PRV、ダンプ弁DMPが設けられている。
そして、これら減圧弁PRV、ダンプ弁DMP、開閉弁SV及び前述した減圧弁PRV、ポンプPは、加熱水HW1の流量を検出するための流量計F、及び加熱水HW2の温度を計測するための温度計Tでの計測値に基づき、制御装置10にて開閉動作が制御される。
【0031】
具体的には、制御装置10において、
(1)ガスタービンGTの燃焼器CBに対する燃料ガスの供給量が正常であり、温度計Tで計測される加熱水HW2の温度が正常範囲である場合には、開閉弁SVを「開」、ダンプ弁DMPを「閉」とし、さらに流量計F及び温度計Tでの計測値に基づき、減圧弁PRVの開度を最適値に設定する。また、このとき、流量計Fでの計測値に基づきポンプPによる加熱水HW2の吐出量を最適値に設定する。これにより燃料ガス加熱装置FGHを経由した加熱水HW2が、フラッシュを発生することなく減圧弁PRVにて減圧された後、復水ラインL3に供給される。
【0032】
(2)ガスタービンGTの燃焼器CBに対する燃料ガスの供給量が減少して、温度計Tで計測される加熱水HW2の温度が正常範囲を越えた場合に、該温度計Tでの計測値に基づき、フラッシュが発生する状態であるか否かを判定する。そして、ここでフラッシュ発生の危険性があると判定した場合には、減圧弁PRVを「閉」とし、かつダンプ弁DMPを「開」として(このとき開閉弁SVも「開」)、燃料ガス加熱装置FGHを経由した加熱水HW2をダンプ弁DMP側に導くことで、フラッシュ現象の発生を回避する。その後、ダンプ弁DMPを経由した加熱水HW2は、復水ラインL3´を経由して直接、復水器Cに供給される。
なお、ここでフラッシュが発生する状態であるか否かは、温度計Tでの計測値とともに、図示しない圧力センサからの計測値も加入することで計算した加熱水HW2の飽和温度に基づき判定しても良い。また、この(2)での制御は、ガスタービンGTの燃焼器CBに対する燃料ガスの供給量が減少する異常時とともに、ガスタービンGTの負荷が上らない装置起動時にも行ってもよい。
【0033】
(3)上記(2)によるダンプ弁DMPの「開」制御を行わない場合には、開閉弁SVを「閉」として、燃料ガス加熱装置FGHへの加熱水HW1の供給を遮断する選択をしても良い。これによっても燃料ガス加熱装置FGHを経由した加熱水HW2のフラッシュ現象の発生を未然に防止することができる。
【0034】
次に、上述した複合サイクルプラントCCの動作について説明する。
複合サイクルプラントCCが稼働を開始すると、ガスタービンGTによって発電機EG1が駆動され、蒸気タービンSTによって発電機EG2が駆動される。この際、バイパス弁BVは、燃料ガス加熱装置FGH側に切り換えられており、燃料ガスは、燃料ガス加熱装置FGHを経由して燃焼器CBに供給される。そして、燃料ガス加熱装置FGHには、加熱水供給ラインL1を介して排熱回収ボイラHRSGの中圧エコノマイザIECで加熱された加熱水(例えば、約240℃)が供給される。燃料ガスは、燃料ガス加熱装置FGHを通過する際に加熱水から熱を奪って昇温する一方、燃料ガス加熱装置FGHを通過した加熱水は燃料ガスに熱を与えて降温した後、減圧弁PRVによって所定の圧力まで減圧され、加熱水戻りラインL2を介して復水ラインL3に返送される。この間、加熱水HW1の流量を検出する流量計F、及び加熱水HW2の温度を計測する温度計Tは、燃料ガス加熱装置出口における加熱水の温度を計測し、計測値を示す信号を制御装置10に対して送出する。
【0035】
このように定常運転されている複合サイクルプラントCCにおいて、ガスタービンGTの負荷変動等が発生すると、燃焼器CBに対する燃料ガスの供給量は急激に減少させられる。この場合、燃料ガス加熱装置FGHを通過する燃料ガスの流量が減少するのに起因して、燃料ガスによって奪われる加熱水の熱量も減少することから、温度計Tによって計測される加熱水の温度も上昇する。
ここで、制御装置10は、温度計Tで計測される加熱水HW2の温度が正常範囲を越えた場合には、該温度計Tでの計測値に基づき、フラッシュが発生する状態であるか否かを判定する。そして、ここでフラッシュ発生の危険性があると判定した場合には、減圧弁PRVを「閉」とし、かつダンプ弁DMPを「開」として(このとき開閉弁SVも「開」)、燃料ガス加熱装置FGHを経由した加熱水HW2をダンプ弁DMP側に導くことで、フラッシュ現象の発生を回避する。
【0036】
以上詳細に説明したように本実施形態に示される複合サイクルプラントCCでは、加熱水戻りラインL2に、燃料ガス加熱装置FGHを通過した加熱水HW2をダンプさせるためのダンプ弁DMPを設け、このダンプ弁DMPを、該ダンプ弁DMPより上流側に位置する温度計Tでの加熱水HW2の計測値に基づき開閉制御するようにした。具体的には、制御装置10(制御手段)において、温度計Tで計測される温度に基づき、フラッシュが発生する状態を事前検知した場合、及び運転状態として負荷遮断等で燃料供給量が急変する運転状態に移行することを事前検知した場合に、ダンプ弁DMPを「閉」から「開」に開動作させることで、ガスタービンGTの燃焼器CBへの燃料ガスの供給量の急激な減少により、燃料ガス加熱装置FGHを通過する加熱水HW2の温度が上昇した場合であっても、該加熱水HW2の流通を遮断することなくフラッシュ現象の発生を防止することができ、設備全体の運転効率の低下を防止することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態に示される複合サイクルプラントCCでは、ダンプ弁DMPの下流側には復水ラインL3´を介して復水器Cが配置されているので、該ダンプ弁DMPで減圧された加熱水HW2をそのまま復水器Cに送ることができる。
【0038】
また、本実施形態に示される複合サイクルプラントCCでは、加熱水戻りラインL2には、分岐部DCを介してダンプ弁DMPと並列するように減圧弁PRVが配置されているので、通常運転時に加熱水HW2が減圧弁PRVを経由するラインとし、フラッシュが発生しそうな場合の非常時にダンプ弁DMPを経由するラインを開通することができる。すなわち、通常時と、異常時のラインをそれぞれ設けることで、複合サイクルプラント運転の信頼性を向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態に示される複合サイクルプラントCCにおいては、制御手段(10)により、燃料ガス加熱装置(FGH)の起動時にダンプ弁(DMP)を開動作させて温水を流すようにすれば、燃料ガス加熱装置(FGH)の急速暖気が可能となり、燃料ガス加熱を迅速に行うことが可能となる。
【0040】
〔第2実施形態〕
第2実施形態で示される複合サイクルプラントCCが第1実施形態と異なる点は、ダンプ弁DMPからの復水ラインL3´が直接、復水器Cに至らず、別途設けた脱気器DEAを経て排熱回収ボイラHRSG内の低圧エコノマイザLEC、中圧エコノマイザIEC、高圧エコノマイザHEC、に至るようにした配管経路にある。
この脱気器DEAには、ダンプ弁DMPからの復水ラインL3´とともに、本来の復水ラインL3上にある予熱器PH及び低圧過熱器LSHからのライン(符号L‐PH、L‐LSHで示す)が接続されており、該脱気器DEAにおいて、各ラインから供給された加熱水中の気相成分が脱気される。そして、脱気後の加熱水は、ラインL‐DEAを経て、排熱回収ボイラHRSG内の低圧エコノマイザLEC、中圧エコノマイザIEC、高圧エコノマイザHECに供給される。
【0041】
そして、上記のように構成された第2実施形態に示される複合サイクルプラントCCでは、ダンプ弁DMPの下流側には脱気器DEAが配置されることで、該ダンプ弁DMPで減圧された加熱水HW2から気泡を除去して、加熱水を液相のみにすることができる。これによりその後の排熱回収ボイラHRSGでの加熱水からの熱回収を効率良く行うことができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ガスタービンと蒸気タービンとを組み合わせた複合サイクルプラントに関する。
【符号の説明】
【0044】
CC 複合サイクルプラント
C 復水器
CB 燃焼器
DEA 脱気器
DMP ダンプ弁
G1 燃焼ガス
GT ガスタービン
HRSG 排熱回収ボイラ
HW1 加熱水
HW2 加熱水
T 温度計(温度計測手段)
FGH 燃料ガス加熱装置
L1 加熱水供給ライン
L2 加熱水戻りライン
L3 復水ライン
L3´ 復水ライン
PRV 減圧弁
SV 開閉弁
ST 蒸気タービン
DC 分岐部
10 制御装置(制御手段)
図1
図2