特許第5725916号(P5725916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5725916
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   A61B6/03 350P
   A61B6/03 321Q
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-50565(P2011-50565)
(22)【出願日】2011年3月8日
(65)【公開番号】特開2012-187137(P2012-187137A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 圭史
(72)【発明者】
【氏名】中山 道人
(72)【発明者】
【氏名】佐郷 朋英
(72)【発明者】
【氏名】大石 博之
(72)【発明者】
【氏名】南部 修也
(72)【発明者】
【氏名】金丸 俊
(72)【発明者】
【氏名】磯 真知子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 篤
【審査官】 南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−015065(JP,A)
【文献】 特開2007−175154(JP,A)
【文献】 特開2000−102532(JP,A)
【文献】 特開2007−130278(JP,A)
【文献】 特開平08−024251(JP,A)
【文献】 特表2002−534205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の周りを回転しながらX線を曝射するX線源と、
前記X線を検出する検出素子が、チャンネル方向にm行及びスライス方向にn列のマトリックス状に配列されたX線検出器と、
前記n列の検出素子からの信号を、列ごとに時分割で読出すデータ収集部と、
前記n列の検出素子のうち所定の列に含まれる第1の検出素子から前記信号が読出されたときの前記X線源の位置を基準位置として、前記各列の検出素子からの信号に基づき各列に対応する画像データを生成する再構成処理部と、
データ収集部が前記n列中の一の列に含まれる第2の検出素子から信号が読出されたときの前記X線源の位置と、前記基準位置との間の角度差を算出する角度算出部と、
前記第1の検出素子からの信号に基づき生成された画像データに基づく画像と、前記第2の検出素子からの信号に基づき生成された画像データに基づく画像との間の前記チャンネル方向のずれを、算出された前記角度差に基づき調整する角度調整部と、
を備えたことを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記X線源は、所定の角速度で回転しながらX線を曝射し、
前記角度算出部は、前記第1の検出素子から前記信号が読出されるタイミングと、前記第2の検出素子から前記信号が読出されるタイミングとの間の時間差と、前記角速度とに基づき前記角度差を算出することを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記角度調整部は、前記n列分の前記画像を複数の群に分け、各群に含まれる複数の画像のチャンネル方向のずれを、当該複数の画像のうちいずれかの画像の前記チャンネル方向のずれに対応する前記角度差で調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記角度調整部は、前記角度差により前記ずれが解消されるように調整することを特徴とする請求項1から請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記角度調整部は、前記n列分の前記画像のうちの一の画像中の注目ピクセルについて、前記X線源の回転に応じた、他の画像における当該注目ピクセルの変位を算出し、当該算出された変位が所定の閾値未満となる複数の前記画像を前記群とすることを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記角度調整部は、前記画像の解像度に基づき前記閾値を決定することを特徴とする請求項に記載のX線CT装置。
【請求項7】
被検体の周りを所定の角速度で回転しながらX線を曝射するX線源と、
前記X線を検出する検出素子が、チャンネル方向にm行及びスライス方向にn列のマトリックス状に配列されたX線検出器と、
前記n列の検出素子からの信号を、列ごとに時分割で読出すデータ収集部と、
前記n列の検出素子のうち所定の列に含まれる第1の検出素子から第1の信号が読出された第1のタイミングと、前記n列中の一の列に含まれる第2の検出素子から第2の信号が読出された第2のタイミングとの間の時間差を算出し、前記時間差と前記角速度とに基づき前記第2のタイミングにおける前記X線源の位置を算出し、前記第2のタイミングにおける前記当該X線源の位置を用いて前記第2の信号に基つき前記一の列に対応する画像データを生成する再構成処理部と、
を備えたことを特徴とするX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マルチスライスX線CT装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影装置として、X線コンピュータ断層撮影装置(以下、X線CT装置と呼ぶ)がある。このX線CT装置には、単位時間に高精細(高解像度)且つ広範囲に画像の撮影を可能とするマルチスライスX線CT装置が含まれる。このマルチスライスX線CT装置は、シングルスライスX線CT装置で用いられている検出器の列(1列)を、その列に直交する方向に複数列(例えば4列、8列など)を並べて、全体でmチャンネル×n列(m,nは正の整数)の検出素子を有する構造の2次元検出器を用いる。
【0003】
このようなマルチスライスX線CT装置では、検出器に多数の検出素子を有しているため、各検出素子から信号(1ビュー相当の信号)を読出すための信号線の数も、検出素子の数に比例して増大する。一方で、検出器の大きさにより、基板上に形成できる信号線の数は制限される。そのため、マルチスライスX線CT装置では、複数の検出素子、例えば同じチャンネルに対応するスライス方向に並んだn列の検出素子からの信号を、共通の信号線で読出す手法が用いられる場合がある。このような手法では、n列の検出素子からの信号を時分割で読出すことにより、各検出素子からの信号を区別している。以降では、この手法を「遂次収集」と呼ぶ場合がある。このような構成では、複数の検出素子からの信号を1本の信号線で読出すため、基板上に形成する信号線の数を低減することが可能となる。
【0004】
一方で、従来のマルチスライスX線CT装置では、n列の検出素子からの信号に基づき生成された各投影データを、全列にわたって同じ管球位置と認識して再構成処理を行っている。しかしながら、遂次収集を行う場合、n列の検出素子それぞれで信号の収集タイミングがわずかに異なり、その間にもX線源は移動している。そのため、全列にわたって同じ管球位置と認識して再構成処理を行うと、各検出素子からの信号に対応するX線画像間で、X線源の位置の違いによりわずかにチャンネル方向のずれが生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−349187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の実施形態は、遂次収集を行う場合において、遂次収集された信号に基づき生成されるX線画像間のチャンネル方向のずれを調整して出力可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この実施形態の第1の態様は、X線源と、X線検出器と、データ収集部と、再構成処理部と、角度算出部と、角度調整部と、を備えたことを特徴とするX線CT装置である。X線源は、被検体の周りを回転しながらX線を曝射する。X線検出器には、X線を検出する検出素子が、チャンネル方向にm行及びスライス方向にn列のマトリックス状に配列されている。データ収集部は、n列の検出素子からの信号を、列ごとに時分割で読出す。再構成処理部は、n列の検出素子のうち所定の列に含まれる第1の検出素子から信号が読出されたときのX線源の位置を基準位置として、各列の検出素子からの信号に基づき各列に対応する画像データを生成する。角度算出部は、データ収集部がn列中の一の列に含まれる第2の検出素子から信号が読出されたときのX線源の位置と、基準位置との間の角度差を算出する。角度調整部は、第1の検出素子からの信号に基づき生成された画像データに基づく画像と、第2の検出素子からの信号に基づき生成された画像データに基づく画像との間のチャンネル方向のずれを、算出された角度差に基づき調整する。
また、この実施形態の第2の態様は、X線源と、X線検出器と、データ収集部と、再構成処理部と、を備えたことを特徴とするX線CT装置である。X線源は、被検体の周りを所定の角速度で回転しながらX線を曝射する。X線検出器には、X線を検出する検出素子が、チャンネル方向にm行及びスライス方向にn列のマトリックス状に配列されている。データ収集部は、n列の検出素子からの信号を、列ごとに時分割で読出す。再構成処理部は、n列の検出素子のうち所定の列に含まれる第1の検出素子から第1の信号が読出された第1のタイミングと、n列中の一の列に含まれる第2の検出素子から第2の信号が読出された第2のタイミングとの間の時間差を算出し、時間差と角速度とに基づき第2のタイミングにおけるX線源の位置を算出し、第2のタイミングにおける当該X線源の位置を用いて第2の信号に基つき一の列に対応する画像データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係るX線CT装置のブロック図である。
図2】X線検出器の模式図である。
図3】X線検出器の検出素子とデータ収集部との接続方法を示す図である。
図4】各検出素子からの電気信号の読出し時刻を示す模式図である。
図5】各検出素子からの電気信号の読出し時刻と、X線源の管球位置の関係を示す模式図である。
図6】画像処理ユニットのブロック図である。
図7】第3の実施形態に係るX線CT装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るX線CT装置の構成について図1を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態に係るX線CT装置は、X線撮影を行うための撮影部500と、データ収集部11と、前処理部12と、X線投影データ記憶部13と、再構成処理部14と、画像記憶部15と、画像処理ユニット16と、表示部17と、スキャン制御部10とを含んで構成される。
【0010】
撮影部500は、ガントリ1と、高電圧装置7と、X線コントローラ8と、ガントリ/寝台コントローラ9とを含んで構成される。ガントリ1は、回転リング2と、X線源(X線発生部)3と、X線フィルタ4と、X線検出器5とを有する。X線検出器5は、アレイタイプのX線検出器である。即ち、X線検出器5には、チャンネル方向にm行、及びスライス方向にn列のマトリックス状に検出素子52が配列されている。
【0011】
X線源3とX線検出器5は、回転リング2上に設置され、スライド式寝台6の上に横になった被検体(図示せず)を挟んで対向配置されている。X線検出器5を構成する各検出素子52に各チャンネルが対応付けられている。X線源3はX線フィルタ4を介して被検体に対峙される。X線コントローラ8からトリガ信号が供給されると、高電圧装置7はX線源3を駆動する。高電圧装置7は、トリガ信号を受信するタイミングでX線源3に高電圧を印加する。これにより、X線がX線源3で発生され、ガントリ/寝台コントローラ9は、ガントリ1の回転リング2の回転と、スライド式寝台6のスライドを同期的に制御する。
【0012】
スキャン制御部10は、全システムの制御中心を構成し、あらかじめ指定されたスキャン条件に基づき、X線コントローラ8、ガントリ/寝台コントローラ9、スライド式寝台6を制御する。即ち、スキャン制御部10は、X線源3からX線を照射している間、被検体の周囲の所定の経路に沿って回転リング2を回転させる。このときの、X線源3が回転リング2の回転により所定の経路に沿って移動する際の角速度ωと、1回転あたりのビュー数Vは、あらかじめ決められたスキャン条件に基づきスキャン制御部10により決定される。
【0013】
また、スキャン制御部10は、データ収集部11、再構成処理部14、及び画像処理ユニット16の動作も制御する。データ収集部11、再構成処理部14、及び画像処理ユニット16の動作と、このときのスキャン制御部10の動作については後述する。
【0014】
X線検出器5を構成する検出素子は、被検体がX線源3と検出素子の間に介在する場合、及び、介在しない場合の双方において、X線源3が発生するX線の強度を測定することができる。したがって、各検出素子(通常、1チャンネル/1素子)は、少なくとも1つのX線強度を測定し、この強度に対応するアナログ出力信号を出力する。各検出素子からの出力信号は、データ収集部11により、時分割で列ごとに区別して読出される(つまり、遂次収集される)。
【0015】
ここで、図2を参照しながら、X線検出器5の構成について説明する。図2は、X線検出器5の模式図である。X線検出器5は、基盤51上に複数の検出素子52を行方向(チャンネル方向C)および列方向(スライス方向A)に配置して構成される。なお、行方向は、放射線検出器の回転方向である。また、列方向は、体軸方向である。
【0016】
各検出素子52は、シンチレータとフォトダイオード(PD:photodiode)とを含んで構成される。通常、シンチレータとフォトダイオードの素子数は等しく、シンチレータに入射したX線が可視光に変換され、フォトダイオードで電気信号に変換される。さらに、フォトダイオードで変換された電気信号は、スライス方向Aの一方あるいは双方から取り出されてデータ収集部11に導かれる。
【0017】
各検出素子52のフォトダイオードの出力側には、それぞれ個別にトランジスタスイッチ53が設けられる。そして、同じ行に属するフォトダイオードは、トランジスタスイッチ53を介して共通の信号線54と接続される。一方、同じ列に属するフォトダイオードのトランジスタスイッチ53は、共通の制御線55と接続される。
【0018】
X線検出器5では、検出素子52のシンチレータにX線が入射して光に変換され、フォトダイオードにより光が電気信号に変換される。さらに電気信号は、一旦フォトダイオードに電荷として蓄積される。そして、各制御線55からは、順次スイッチ制御信号が列方向の各トランジスタスイッチ53に与えられて、フォトダイオードと信号線54との間の電気的な接続が確立される。即ち、同じ列に属するフォトダイオードからはパラレルに、同じ行に属するフォトダイオードからは順次列方向(スライス方向A)に時分割された電気信号がトランジスタスイッチ53を介して信号線54に出力される。
【0019】
つまり、図2に示すX線検出器5は、トランジスタスイッチ53を個別に検出素子52のフォトダイオードに設けて信号線54を共通化することにより、信号線54の本数を低減させたものである。
【0020】
次に、図3及び図4を参照しながら、遂次収集に係る具体的な動作について、検出素子52がスライス方向に64列(列A1〜A64)配置されている場合を例に説明する。図3は、X線検出器5の各検出素子と、データ収集部11との接続方法を示す図である。また、図4は、各検出素子からの電気信号の読出し時刻を示す模式図である。
【0021】
各検出素子52からの電気信号は、ある行に着目すると、例えば図3に示すように、共通のデータ収集部11に時分割で読出される。このとき、データ収集部11が各列から信号を読出すタイミングは、スキャン制御部10により制御される。以下、データ収集部11の具体的な構成について説明する。
【0022】
データ収集部11は、積分アンプ111と、A/D変換器112とを含んで構成されている。データ収集部11は、スキャン制御部10からの制御に基づき、図4に示すように、読出し時刻を軸として64個の検出素子52からの各電気信号をシーケンシャルに列順に積分アンプ111を経由して読出す。具体的には、データ収集部11は、最初に列A1からの信号を読出し、列A1からの信号を読出したタイミングからt2秒後に、列A2から信号を読出す。同様に、データ収集部11は、列A3からの信号を、列A1からの信号を読出したタイミングからt3秒後に読出す。このように、データ収集部11は、n列分の信号、即ち、1ビュー(View)分の信号を読出す周期をλとすると、周期λを列数分に時分割し、分割された時間ごとに1つの列から信号を読出す。ここで、X線源3が被検体の周囲を1周する周期をλ0とすると、このλ0は、角速度ωに基づき、λ0=2π/ωにより求められる。よって、周期λは、角速度ωと、1回転あたりのビュー数Vとに基づき、次式により与えられる:周期λ=λ0/V=2π/(ω・V)。
【0023】
このように、各検出素子52からの電気信号は、共通の積分アンプ111を経由して時分割された後、A/D変換器112によりディジタルデータに変換される。データ収集部11は、ディジタルデータに変換された検出素子52からの信号を前処理部12に出力する。
【0024】
前処理部12は、データ収集部11から、列ごとに送られてくるディジタルデータに対して感度補正等の処理を施して投影データとする。前処理部12は、この投影データを、その生成元であるディジタルデータの読出し元である列と対応付けてX線投影データ記憶部13に記憶させる。
【0025】
再構成処理部14は、X線投影データ記憶部13に記憶された列ごとの投影データを読出す。再構成処理部14は、例えばFeldkamp法と呼ばれる再構成アルゴリズムを利用して、読出した投影データを逆投影してX線画像データを生成する。このとき再構成処理部14は、列A1〜A64に対応する各投影データに対し、共通の管球位置を示すパラメタを用いて再構成処理を施す。具体的には、再構成処理部14は、まず、列A1〜A64のうちいずれかの列、例えば列A1を基準列として特定する。再構成処理部14は、特定された基準列A1から信号が読出されたときのX線源3の管球位置を示すパラメタを用いて、列A1〜A64に対応する各投影データに再構成処理を施す。再構成処理部14は、再構成処理を施し生成したX線画像を、信号の読出し元である列を示す情報(例えば、スライス番号)と対応付けて、X線画像データとして画像記憶部15に記憶させる。このように、本実施形態に係る再構成処理部14は、列A1〜A64に対応する各投影データに対して同一の再構成処理ロジックを適用することで、再構成処理の時間や再構成処理に使用するメモリ量を低減している。
【0026】
一方で、列A1〜A64それぞれから時分割で信号が読出されている間にもX線源3の管球位置は変化している。図5は、各検出素子からの電気信号の読出し時刻と、X線源3の管球位置の関係を示した模式図である。なお、以降では、「列Akに対応する管球位置」と記載した場合、「列Akから信号が読出されたタイミングにおけるX線源3の管球位置」を示すものとする。図5に示すように、基準列A1以外の列(列A2〜A64のいずれか)に対応する管球位置は、基準列A1に対応する管球位置からX線源3の回転方向(即ち、チャンネル方向)にわずかにずれている。
【0027】
例えば、列A2から信号が読出されるタイミングと、基準列A1から信号が読出されるタイミングとの間には、図4に示すようにt2の時間差がある。そのため、列A2に対応する管球位置と、基準列A1に対応する管球位置との間には、図5に示すように角度差θ=ω・t2が生じている。これに対し、再構成処理部14は、列A2の投影データを、基準列A1に対応する管球位置を示すパラメタを用いて再構成処理を施すため、列A2のX線画像は、基準列A1のX線画像の向きに対してチャンネル方向にθ分傾く。即ち、列A2のX線画像と、基準列A1のX線画像との間で、チャンネル方向にθ分のずれが生じる。列A3、A4、・・・、A64のX線画像についても同様であり、基準列A1のX線画像に対し、チャンネル方向にそれぞれθ、θ、・・・、θ64のずれが生じる。この基準列A1以外の列(列A2〜A64のいずれか)のX線画像に生じたチャンネル方向のずれは、画像処理ユニット16により、基準列A1のX線画像にあわせて調整される。画像処理ユニット16の構成及び動作について以下に説明する。
【0028】
図6は、画像処理ユニット16のブロック図である。図6に示すように、画像処理ユニット16は、角度調整部161と、角度算出部162と、画像処理部163とを含んで構成される。
【0029】
まず、角度算出部162の動作について説明する。角度算出部162は、スキャン制御部10から、基準列A1と列A2〜A64との間の信号の読出しタイミングのずれを示す情報t2〜t64、及びX線源3の角速度ωを受ける。角度算出部162は、基準列A1に対応する管球位置と、その他の列A2〜A64に対応する管球位置との間のずれθ〜θ64を、読出しタイミングのずれt2〜t64、及びX線源3の角速度ωに基づき算出する。具体的には、角度算出部162は、k番目の列Akに対応する読み出しタイミングのずれをtkとした場合、列Akに対応する管球位置のずれθを、計算式θ=tk・ωに基づき算出する。
【0030】
次に、角度算出部162は、角度調整部161から列を示す情報を受ける。この情報を受けると、角度算出部162は、あらかじめ算出された管球位置のずれθ〜θ64のうち、角度調整部161から受けた情報が示す列に対応する管球位置のずれを特定する。角度算出部162は、特定した管球位置のずれを、チャンネル方向のずれを示す情報として角度調整部161に出力する。角度調整部161については後述する。
【0031】
なお、角度算出部162は、スキャン条件が変更されるごとに、スキャン制御部10からの情報の受信、及び管球位置のずれθ〜θ64の算出に係る処理を実行し直す。
【0032】
次に角度調整部161の動作について説明する。角度調整部161は、列ごとに生成されたX線画像データを画像記憶部15から読出す。読出したX線画像データが基準列A1に対応する場合、角度調整部161は、このX線画像データを画像処理部163にそのまま出力する。画像処理部163の詳細については後述する。
【0033】
読出したX線画像データが基準列A1以外の列(列A2〜A64のいずれか)に対応する場合、角度調整部161は、まず、読出したX線画像データから列を示す情報を抽出する。角度調整部161は、抽出した情報を角度算出部162に出力し、読出したX線画像データに基づくX線画像と、基準列A1のX線画像データに基づくX線画像との間のチャンネル方向のずれを角度算出部162に出力させる。
【0034】
角度調整部161は、チャンネル方向のずれを示す情報を角度算出部162から受ける。角度調整部161は、この情報に基づき、読出したX線画像データに基づくX線画像に対して、チャンネル方向のずれの調整を行う。例えば、列A2のX線画像の場合、図5に示すように、基準列A1のX線画像に対してチャンネル方向にθ分ずれている。そのため、角度調整部161は、角度算出部162にチャンネル方向のずれθを算出させ、このθ分だけ逆方向に列A2のX線画像を傾ける。これにより、列A2のX線画像と基準列A1のX線画像との間のチャンネル方向のずれは解消される。角度調整部161は、X線画像のチャンネル方向のずれが調整されたX線画像データを画像処理部163に出力する。
【0035】
画像処理部163は、角度調整部161からX線画像データを受ける。画像処理部163は、このX線画像データに基づいて、例えば断層画像や3次元画像の静止画又は動画等の画像を生成する。画像処理部163は、生成された画像を表示部17に表示させる。
【0036】
以上、本実施形態に係るX線CT装置に依れば、遂次収集、即ち、複数列の検出素子からの信号を時分割で読出す場合において、各列の信号に基づき生成されるX線画像間のチャンネル方向のずれを調整して出力することが可能となる。
【0037】
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係るX線CT装置では、列A2〜A64それぞれに対し、管球位置のずれθを算出し、このθに基づき対応するX線画像のチャンネル方向のずれを調整していた。第2の実施形態に係るX線CT装置では、列A1〜A64に対応するX線画像のうち、複数枚を1つの群として、この群ごとにX線画像のチャンネル方向のずれの調整を行う。以降では、本実施形態に係るX線CT装置について、第1の実施形態と異なる角度調整部161及び角度算出部162に着目して説明する。
【0038】
角度算出部162は、スキャン制御部10から、X線源3の角速度ω、X線画像の解像度D、及び基準列A1と列A2〜A64との間の信号の読出しタイミングのずれを示す情報t2〜t64を受ける。
【0039】
角度算出部162は、基準列A1に対応する管球位置と、その他の列A2〜A64に対応する管球位置との間のずれθ〜θ64を、読出しタイミングのずれt2〜t64、及びX線源3の角速度ωに基づき算出する。この動作は、第1の実施形態に係る角度算出部62と同様である。
【0040】
また、角度算出部162は、撮影範囲内の所定の座標に対応するX線画像中のピクセル(以下、「注目ピクセル」と呼ぶ場合がある)について、X線画像間における変位をあらかじめ算出する。この変位の算出方法について、以下に具体的に説明する。まず、角度算出部162は、基準列A1に対応するX線画像中において、撮影範囲内の所定の座標に対応する注目ピクセルP1を特定する。なお、基準列A1に対応するX線画像中の注目ピクセルP1に対し、k番目の列に対応するX線画像中の注目ピクセルをPkとする(k=2〜64)。
【0041】
P1の座標を(x,y)とした場合、Pkの座標(x,y)は、計算式(x,y)=(x・cosθ−y・sinθ,x・sinθ+y・cosθ)=(x+Δx,y+Δy)に基づき算出される。ゆえに、角度算出部162は、P1に対するPkの変位Δx及びΔyを、P1の座標(x,y)と、チャンネル方向のずれθとから、計算式Δx=x・(cosθ−1)−y・sinθ、Δy=x・sinθ+y・(cosθ−1)に基づき算出する。
【0042】
次に、角度算出部162は、X線画像間で注目ピクセルPの変位が、解像度Dにおいて所定のピクセル数未満となる複数のX線画像を特定する。具体的には、角度算出部162は、k番目の列に対応するX線画像中の注目ピクセルをPkと、j番目の列に対応するX線画像中の注目ピクセルをPjとの間の変位を、計算式((x+Δx)−(x+Δx),(y+Δy)−(y+Δy))=(Δx−Δx,Δy−Δy)に基づき算出する。ここで、Δx−Δx、及びΔy−Δyは、Δx−Δx=x・(cosθ−cosθ)−y・(sinθ−sinθ)、Δy−Δy=x・(sinθ−sinθ)+y・(cosθ−cosθ)となる。
【0043】
角度算出部162は、算出された変位(Δx−Δx,Δy−Δy)を、解像度Dにおけるピクセル数に換算し、閾値としてあらかじめ決められたピクセル数(例えば1ピクセル)と比較する。角度算出部162は、複数の列に対応するX線画像間にわたって、この変位(Δx−Δx,Δy−Δy)が閾値未満となる場合に、その複数の列を1つの群として関連付ける。このように、角度算出部162は、n列を複数の群に分ける。例えば、連続する4枚のX線画像間で、変位が閾値未満となる場合、角度算出部162は、列A1〜A4、A5〜A8、・・・、A61〜A64の16の群に分ける。角度算出部162は、列A1〜A64と各群との対応関係を角度調整部161に通知する。なお、角度算出部162に記憶部を設け、上記した列A1〜A64と各群との対応関係を、解像度ごとにあらかじめ算出しておき、この記憶部に記憶させておいてもよい。この場合、角度算出部162は、スキャン制御部10から解像度Dを受けて、この解像度Dに対応する列A1〜A64と各群との対応関係を記憶部から抽出し、角度調整部161に通知する。
【0044】
また、角度算出部162は、角度調整部161から列を示す情報を受ける。この情報を受けると、角度算出部162は、あらかじめ算出された管球位置のずれθ〜θ64のうち、角度調整部161から受けた情報が示す列に対応する管球位置のずれを特定する。角度算出部162は、特定した管球位置のずれを、チャンネル方向のずれを示す情報として角度調整部161に出力する。この動作は、第1の実施形態に係る角度算出部62と同様である。
【0045】
次に角度調整部161の動作について説明する。まず角度調整部161は、列A1〜A64と各群との対応関係を角度算出部162から受ける。角度調整部161は、この対応関係に基づき、列ごとに生成されたX線画像データを群単位で画像記憶部15から読出す。角度調整部161は、群単位で読出されたX線画像データのうち、あらかじめ決められたX線画像データから列を示す情報を抽出する。一例として、角度調整部161は、列A1〜A4のうちの列A1のように、群の中で先頭に位置するX線画像データから列を示す情報を抽出する。角度調整部161は、抽出した情報を角度算出部162に出力し、読出したX線画像と、基準列A1のX線画像との間のチャンネル方向のずれを角度算出部162に出力させる。
【0046】
角度調整部161は、チャンネル方向のずれを示す情報を角度算出部162から受ける。角度調整部161は、この情報に基づき、群単位で読出した各X線画像データ中のX線画像に対して、チャンネル方向のずれの調整を行う。例えば、列A5〜A8のX線画像の場合、これらのX線画像のチャンネル方向のずれを、列A5に対応するチャンネル方向のずれθとみなして、各X線画像のチャンネル方向のずれを調整する。角度調整部161は、X線画像のチャンネル方向のずれが調整されたX線画像データを画像処理部163に出力する。
【0047】
画像処理部163は、角度調整部161からX線画像データを受ける。画像処理部163は、このX線画像データに基づいて、例えば断層画像や3次元画像の静止画又は動画等の画像を生成する。画像処理部163は、生成された画像を表示部17に表示させる。この動作は、第1の実施形態に係る角度算出部62と同様である。
【0048】
以上、本実施形態に係るX線CT装置に依れば、n列のX線画像のうち、複数枚を1つの群として、この群ごとにX線画像のチャンネル方向のずれの調整を行う。これにより、群を構成する複数枚のX線画像を、共通の処理ロジックに基づき処理するため、チャンネル方向のずれの調整に係る処理の負荷を軽減することが可能となる。
【0049】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、再構成された列ごとのX線画像に対して、画像処理としてチャンネル方向のずれの調整を行っていた。これに対し、第3の実施形態に係るX線CT装置は、列ごとの投影データに対して、その列に対応する管球位置を示すパラメタを用いて再構成処理を行うことで、遂次収集に伴うチャンネル方向のずれを調整する。以降では、本実施形態に係るX線CT装置の構成について、図7を参照しながら、第1の実施形態に係るX線CT装置と異なる、再構成処理部14A、及び画像処理部163の構成に着目して説明する。図7は、本実施形態に係るX線CT装置のブロック図である。
【0050】
まず、再構成処理部14は、基準列A1の管球位置を基準として、他の列(列A2〜A64)から信号が読出されるときのX線源3の管球位置を算出する。その算出方法について、以下に具体的に説明する。
【0051】
まず、再構成処理部14は、スキャン制御部10から、基準列A1と列A2〜A64との間の信号の読出しタイミングのずれを示す情報t2〜t64、及びX線源3の角速度ωを受ける。再構成処理部14は、基準列A1に対応する管球位置と、その他の列A2〜A64に対応する管球位置との間のずれθ〜θ64を、読出しタイミングのずれt2〜t64、及びX線源3の角速度ωに基づき算出する。具体的には、再構成処理部14は、k番目の列Akに対応する読み出しタイミングのずれをtkとした場合、列Akに対応する管球位置のずれθを、計算式θ=tk・ωに基づき算出する。ここで、基準列A1に対応するX線源3の位置を示す角度をθとした場合、θは管球位置の角度θに対する相対位置を示している。そのため、再構成処理部14は、列Akに対応するX線源3の位置を示す角度θ’を、計算式θ’=θ+θに基づき算出する。
【0052】
次に、再構成処理部14Aは、X線投影データ記憶部13に記憶された列ごとの投影データを読出す。読出した投影データが基準列A1に対応する場合、再構成処理部14は、基準列A1に対応する管球位置を示すパラメタを用いて、この投影データに再構成処理を施す。
【0053】
読出した投影データが基準列A1以外の列(列A2〜A64のいずれか)に対応する場合、再構成処理部14は、あらかじめ算出されたX線源3の位置を示す角度θ’に基づき、この投影データに再構成処理を施す。これにより、列A2のX線画像と基準列A1のX線画像との間のチャンネル方向のずれは解消される。再構成処理部14は、再構成処理を施し生成したX線画像を、信号の読出し元である列を示す情報(例えば、スライス番号)と対応付けて、X線画像データとして画像記憶部15に記憶させる。
【0054】
画像記憶部15に記憶されたX線画像データは、画像処理部163により読み出される。画像処理部163は、読み出したX線画像データに基づいて、例えば断層画像や3次元画像の静止画又は動画等の画像を生成する。画像処理部163は、生成された画像を表示部17に表示させる。
【0055】
以上、本実施形態に係るX線CT装置に依れば、遂次収集を行う場合における、各列の信号に基づき生成されるX線画像間のチャンネル方向のずれを、再構成処理の段階で調整して出力することが可能となる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載されたその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 ガントリ
2 回転リング2
3 X線源
4 X線フィルタ
5 X線検出器
51 基盤
52 検出素子
53 トランジスタスイッチ
54 信号線
55 制御線
6 スライド式寝台
7 高電圧装置
8 X線コントローラ
9 ガントリ/寝台コントローラ
10 スキャン制御部
11 データ収集部
111 積分アンプ
112 A/D変換器
12 前処理部
13 X線投影データ記憶部
14 再構成処理部
15 画像記憶部
16 画像処理ユニット
161 角度調整部
162 角度算出部
163 画像処理部
17 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7