【実施例】
【0026】
以下に、本発明に係わるガイド光装置を備えた測量機及びこの測量機を用いた測量システム及びこの測量システムに用いる測量用ポール及びこの測量システムに用いる携帯型無線送受信装置の実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(測量機の構成)
図1において、1は三脚、2は円筒状の測量機である。測量機2は基盤部3を介して三脚1に設置される。基盤部3は整準ネジを有する。この測量機2は架台部4を有する。
なお、測量機2は既知の基準点に置かれ、測設点との位置関係を示す設計データは後述する携帯型無線受信装置30Cの記憶部50’(
図9参照)に記憶されているものとする。
【0028】
架台部4は垂直回転軸4Aを中心にして基盤部3に対して矢印Aで示す水平方向に回転される。架台部4には托架部5が設けられている。托架部5には水平回転軸7Aが設けられている。
【0029】
水平回転軸7Aには鏡筒部8が設けられている。鏡筒部8は架台部4の回転により水平方向に回動され、水平回転軸7Aの回転により垂直方向に回動される。
その鏡筒部8には、測距光学系9と走査光学系10とが設けられている。
【0030】
そして、垂直回転軸4Aを中心にして架台部4が回転したときの回転角度及び水平回転軸7Aを中心にして鏡筒部8が回転したときの回転角度を精密に求めるためのエンコーダ(図示を略す)がそれぞれ設けられている。
【0031】
従って、鏡筒部8の光学系の光軸方向は、エンコーダを用いて角度を測定することにより求められる。
この測距光学系9と走査光学系10とについては後述することにし、先にガイド光装置について説明する。
【0032】
(設計データの一例)
設計データは、例えば、磁針の方位(N)を基準とする地図データである。ここでは、設計データは、方位(N)を基準として、
図7に示すように、測量機2の位置HP0、杭打ちを行うべき測設点P1、P2、P3、P4、P5及びそれらの測量機2の方位Nに対する角度であるとする。
【0033】
(ガイド光装置の構成)
測量機2の頂部にはガイド光装置としてのガイド光照射部11が設けられている。
ガイド光照射部11は、架台部4の回転により測量機2と一体に水平方向に回動するようにしても良い。このとき、ガイド光照射方向と鏡筒部8の光軸方向は、水平角において常に同一となる。
【0034】
ガイド光照射部11は、
図2に示すように、例えば、レーザー光源12、コリメートレンズ13、
図3に示すシリンドリカルレンズ14を有するガイド光照射光学系から構成されている。レーザー光源12は、例えば、可視赤色レーザー光を発生する。
【0035】
コリメートレンズ13は、可視赤色レーザー光を平行光束PB1に変換する役割を有する。シリンドリカルレンズ14は、その平行光束PB1を鉛直上下方向に長く延びる扇状のガイド光PB2に変換する役割を有する。
【0036】
このシリンドリカルレンズ14には、例えば、
図3に示すように、パワーを有する方向に長く延びるスリット開口14aが射出面に形成され、残余の部分がマスク領域14bとされている。
【0037】
そのレーザー光源12は、
図2に示す制御回路CPUによって制御され、図示を略す電源スイッチがオンされると発光を開始する。
その制御回路CPUの機能の詳細については逐次後述することとする。
【0038】
測量機2の方向の初期設定は、測量機2を位置HPOに設置すると共に北方向を指定して行う。
例えば、市販の方位センサとしての磁石、測量機2に設けられている方位センサM3(
図2参照)のいずれを用いても行うことができる。
【0039】
例えば、市販の磁石を用いる場合には、鏡筒部8が磁石の北方向に向くように架台部4を垂直回転軸4Aを回転させて方向角の初期設定を行う。
【0040】
(測距光学系9の構成)
測距光学系9は、
図4に概略示すように投光部11Aと受光部12Aとを有する。投光部11Aは光源13Aを有する。受光部12Aは受光素子14Aを有する。
【0041】
光源13Aは赤外レーザー光束を出射する。その赤外レーザー光束はビームスプリッタ15のダイクロイックミラー16により対物レンズ17に向けて反射され、カバーガラス18を介して鏡筒部8から平行光束PB3として出射される。
【0042】
その平行光束PB3は、
図2に示すターゲットとしてのコーナーキューブ30Aにより反射され、反射光PB3’としてカバーガラス18を介して対物レンズ17に戻り、ビームスプリッタ15のダイクロイックミラー19により反射され、受光素子14Aに収束される。
【0043】
この測距光学系9は結像レンズ20、レチクル板21を有しており、可視光は、対物レンズ17、ダイクロイックミラー16、19を通過して結像レンズ20に至り、レチクル板21に収束され、測量作業員は接眼レンズ22を介してコーナーキューブ30Aを含めて測設点箇所近傍を視認できるものであるが、この発明では、この光学構成は必須の構成ではない。
【0044】
その受光素子14Aの受光出力は、制御回路CPUの演算部に入力される。制御回路CPUはその受光素子14Aの受光出力に基づきコーナーキューブ30Aまでの距離を演算する。
このコーナーキューブ30Aは測量用ポール30Bに固定されるものであるが、この測量用ポール30Bの詳細構成については後述する。
【0045】
(走査光学系10の構成)
走査光学系10はコーナーキューブ30Aをロックするのに用いられる。この走査光学系10は、
図5に示すようにレーザーダイオード23、コリメーターレンズ24、水平方向偏向素子25、垂直方向偏向素子26、反射プリズム27、28、29、対物レンズ30、カバーガラス18、反射プリズム32、ノイズ光除去用フィルタ33、受光素子34を有する。
【0046】
レーザーダイオード23、コリメーターレンズ24、水平方向偏向素子25、垂直方向偏向素子26、反射プリズム27、28、29は投光部を大略構成している。対物レンズ30、反射プリズム32、ノイズ光除去用フィルター33、受光素子34は受光部を大略構成する。水平方向偏向素子25、垂直方向偏向素子26は例えば音響光学素子からなる。
【0047】
レーザーダイオード23は、測距光学系9の測距光の波長とは異なる波長の赤外レーザー光PB4を出射する。その赤外レーザー光PB4はコリメーターレンズ24によって平行光束とされ、水平方向偏向素子25に導かれる。
【0048】
この水平方向偏向素子25は、
図6に示すように赤外レーザー光PB4を水平方向H1に偏向させる機能を有し、垂直方向偏向素子26は赤外レーザー光PB4を垂直方向V1に偏向させる機能を有する。赤外レーザー光PB4はその水平方向偏向素子25、垂直方向偏向素子26により水平方向、垂直方向に偏向されて反射プリズム26に導かれ、この反射プリズム26により反射され、その赤外レーザー光PB4は反射プリズム28、29を経由して対物レンズ30に導かれる。
【0049】
対物レンズ30には貫通孔35’が対物レンズ30の光軸と同軸に形成されている。その反射プリズム29により反射された赤外レーザー光PB4はその貫通孔35’を通って測量機2の外部に出射され、この赤外レーザー光PB4によってコーナーキューブ30Aの探索走査が行われる。探索範囲内にコーナーキューブ30Aがあると、赤外レーザー光PB4がコーナーキューブ30Aにより反射されて対物レンズ30に戻る。
【0050】
その赤外レーザー光PB4の反射光PB4’はその対物レンズ30により収束され、反射プリズム32により反射され、ノイズ光除去用フィルター33を通過して受光素子34に結像される。ノイズ光除去用フィルター33は赤外レーザービームの波長と同一波長の光を透過させる機能を有する。
【0051】
これにより、
図1に示す探索が実行される。その
図1において、符号Oは走査光学系10の光軸を示しており、V1は垂直方向、H1は水平方向を示し、ここでは、水平方向角度幅4.5度、垂直方向角度幅3度の範囲内での探索を実行する。
【0052】
(駆動部の構成)
測量機2は、
図2に示す駆動回路部35を有している。この駆動回路部35には、水平方向駆動モータM1と垂直方向駆動モータM2とが接続されている。
水平方向駆動モータM1は、鏡筒部8を水平方向に回動させる機能を有する。垂直方向駆動モータM2は、鏡筒部8を垂直方向に回動させる機能を有する。
【0053】
その駆動回路部35は制御回路CPUによって制御され、制御回路CPUは後述する無線送受信部が鏡筒部回動許可信号を受信すると、水平方向駆動モータM1の回動許可信号を駆動回路部35に向かって出力する機能を有する。
【0054】
制御回路CPUには方位センサM3が接続されている。この実施例では、ガイド光PB2の向くべき方向の初期設定は、市販の磁石を用いずに方位センサM3を用いて行う。
また、制御回路CPUは方位センサM3の方位信号と後述する回動許可信号とにより測量機2の鏡筒部8が向いている水平方向の現在角度から次の測設点までの水平方向の回転角度を演算する。
【0055】
すなわち、現在、測量機2がガイド光PB2を照射している方向から次にガイド光PB2を照射すべき方向を演算により求める。
これにより、後述する次の測設点が存在する方向に向けて鏡筒部8を水平方向に回動させ、この位置で回動停止させることが可能となる。
【0056】
(制御回路CPUの機能の一例)
その制御回路CPUは、その鏡筒部8が次の設置しようとする測設点の方向で回動停止すると、垂直方向駆動モータM2の回動許可信号を駆動回路部35に向かって出力する機能を有する。
駆動回路部35は垂直方向駆動モータM2を交互に正逆回転させる機能を有し、これにより、後述する次の測設点において、赤外レーザー光PB4が上下方向に往復走査される。
【0057】
測量作業員がガイド光PB2の照射方向に位置すると、制御回路CPUはコーナーキューブ30Aをロックし、かつ、コーナーキューブ30Aまでの測距又は測距と測角を実行する。
【0058】
ついで、制御回路CPUは、コーナーキューブ30Aまでの距離又は距離と角度(三次元座標)を演算により求める。現在のコーナーキューブ30Aから測量機2までの距離データ又は距離データと角度データ(三次元座標)は、測定データとして一旦記憶部36に記憶される。
【0059】
その測量機2は、
図2に示すように、その記憶部36と共に無線送受信部37を有している。その記憶部36、無線送受信部37は制御回路CPUに接続されている。
無線送受信部37は、測量作業員の現在位置(測量機2からコーナーキューブ30Aまでの距離データ又は距離データと角度データ(三次元座標))を携帯型無線送受信装置30Cに送信する機能とを有する。
【0060】
制御回路CPUはコーナーキューブ30Aをロックしたことを判断する。なお、制御回路CPUは、ロック中はガイド光を消灯するようにし、作業中にロックがはずれた場合にあらためてガイド光を点灯させるようにしても良い。
【0061】
(携帯型無線送受信装置30Cの構成の一例)
携帯型無線送受信装置30Cは、ここでは、
図8に示すように薄型の長方形状の構成とされ、
図9に示す制御部としての制御回路CPU’と、記憶部50’と、無線送受信部30Dとカメラ部30Eと方位センサ30Fと表示部30Gと鏡筒部回動許可ボタン30Hとを備えている。
【0062】
記憶部50’には設計データが記憶されている。表示部30Gは設計データに対応する測設地図を表示する機能を有する。制御回路CPU’は、方位センサ30Fの方位信号と設計データとに基づいて、表示部30Gの画面に表示すべき地図を構築する機能を有する。
【0063】
また、制御回路CPU’は、測量機2の現在位置HPOと各測設点P1〜P5の設計データとを有しているので、各測設点P1〜P5に対する水平方向回動角度を演算できる。
制御回路CPU’は鏡筒部回動許可ボタン30Hがオンされると、無線送受信部30Dから水平方向回動角度である回動許可信号を測量機2に向けて送信させる機能を有する。
【0064】
カメラ部30Eは結像レンズ30Iと撮像素子CCD30Jとから概略構成され、制御回路CPU’は、次の測設点と測量作業員の現在位置とが一定距離、例えば、所定値5m以下になると、測設地図表示モードからカメラモードに切り替える機能を有する。
【0065】
また、制御回路CPU’は、方位センサ30Fの方位データに基づいて、方位(コンパス)を表示部30Gに表示させると共に、測距光学系9により求められた測量作業員の現在位置から次の測設点までの距離データと測角部により求められた角度データ(三次元座標データ)、すなわち、測距光学系9により求められたコーナーキューブ30Aまでの距離及び角度を、測量機2から次の測設点までの距離データと角度データ(三次元座標)から演算することにより測量作業員の現在地点から次の測設点までの差分距離L’を求め、この差分距離L’を表示部30Gに表示させる機能、進行方向表示マークとしての進行方向GOを表示部30Gに表示させる機能有する。
【0066】
(測設地図の表示部30Gへの表示の一例)
図10(a)〜
図10(d)は携帯型無線送受信装置30Cの表示部30Gに表示された測設地図の一例を示している。なお、携帯型無線送受信装置30Cは右手に持っているものとする。
【0067】
図10(a)は、測設点P1の測設が終了し、測量作業員がこの測設点P1にとどまっていて、次の測設点P2の方向に向きを変えた直後の状態を示している。
なお、その
図10において、「◎」は測量機2の位置を示し、「△」は測設終了地点を示し、「×」は測設未終了地点を示している。
【0068】
測量作業員は、表示部30Gの画面上で進行方向GOが前後方向に向くように身体の向きを変えると、制御回路CPU’の制御により、画面に対して相対的に方位Nと測設地図とが回転され、これにより、次に測設を行うべき測設点P2と現在位置との関係が把握される。
【0069】
図10(b)は、測設点P2の測設が終了し、測量作業員がこの測設点P2にとどまっていて、次の測設点P3の方向に向きを変えた直後の状態を示し、
図10(c)は、測設点P3の測設が終了し、測量作業員がこの測設点P3にとどまっていて、次の測設点P4の方向に向きを変えた直後の状態を示し、
図10(d)は、測設点P4の測設が終了し、測量作業員がこの測設点P4にとどまっていて、次の測設点P5の方向に向きを変えた直後の状態を示している。
【0070】
なお、
図10(a)には、測設点P1から測設点P2までの距離が「20m」と表示されているが、これは、設計データに基づくもので、例えば、
図7において、ガイド光PB2の照射範囲内に測量作業員が位置し、制御回路CPUがコーナーキューブ30Aをロックし、測量作業員が現在位置Pxにいるものとすると、測量作業員の現在位置Pxと測設点P2との距離が、制御回路CPU’による既述の演算により求められて、その距離L’が表示部30Gに表示される。
【0071】
なお、携帯型無線送受信装置30Cに方位センサ30Fがない場合には、以下に説明する機能を携帯型無線送受信装置30Cに持たせる。
携帯型無線送受信装置30Cは、測量作業員の移動に伴って、携帯型無線送受信装置30Cの表示部30G内の上部に測量機2、その表示部30G内の下部に現在地を常に表示するように測設地図を回転させて表示する。
【0072】
これにより、測量作業員が測量機2の方向を向くことにより、実際の現場において測設点P1ないし測設点P5が存在する方向を知ることができる。
従って、携帯型無線送受信装置30Cに方位センサ30Fの搭載がない場合でも、測量作業員は測量機2を向くことにより、次に移動すべき測点が存在する方向を確認することができる。
【0073】
(測量用ポール30Bの一例)
測量用ポール30Bには公知のものを用いることができるが、より好ましくは、
図11に示す構成のものを用いることができる。
ここでは、測量用ポール30Bの頂部には逆円錐状の支承係止部50が形成されている。この支承係止部50の上面は携帯型無線送受信装置30Cの平坦面51とされている。
【0074】
測量用ポール30Bには適宜の高さの位置にコーナーキューブ30Aが取り付けられ、支承係止部50の周面52に指を引っかけることにより、測量用ポール30Bを自重により吊り下げて、鉛直方向を規定できるようにされている。
【0075】
(カメラモードでの制御回路CPU’の演算の一例)
カメラモードでの撮影画角ωは予め定められているものとする。
携帯型無線送受信装置30Cは、カメラモードでは、
図12、
図13に示すように、測設点P1〜P5の近傍を撮像可能とされている。
【0076】
その
図12は、測設点P1〜P5と測量用ポール30BとのX方向についての位置関係を示しているが、Y方向についての位置関係も同様であるので、測設点P1〜P5と測量用ポール30BとのY方向についての位置関係は図示を省略することとする。
【0077】
地表から携帯型無線送受信装置30Cまでの高さをh、測量用ポール30Bからカメラ部30Eの光軸O1までの距離をOf、光軸O1から測設点P1〜P5までのずれ量をΔx(又はΔy)とする。
【0078】
また、カメラ部30Eの光軸O1と測設点P1〜P5との為す角度をθx(又はθy)とすると、
Δx=h×tanθx (Δy=h×tanθy)…(1)
L’=Δx+Of …(2)
【0079】
差分距離L’は既述の演算により求められ、距離Ofは予め定められているので、制御回路CPU’は、(2)式を用いて差分距離L’と距離Ofとからずれ量Δx(又はΔy)を求めることができ、また、高さhは既知であるので、(1)式を用いて角度θx(又はθy)を求めることができる。
【0080】
従って、制御回路CPU’は、撮影画角ωと角度θx(又はθy)との関係から表示部30Gの画面上に表示すべき測設点P1〜P5の位置を演算し、その測設点P1〜P5の位置を実際に地面が映し出されている画面上にマークとして表示することができる。
図13はその測設点P1〜P5の表示の一例を示している。
【0081】
その
図13において、画面中心は光軸O1にあり、この
図13には次の測設点P2がマーク「×」印で表示されている。
測量作業員は、この「×」印を目印として地面上にマーキングを行うことにより測設点P2を確定できることになる。
【0082】
(測量手順の説明)
測量手順の一例を模式図を用いて以下に概略説明する。
測量用ポール30Bには、
図12に示す構成のものではなく、既知のものを用いることができるが、ここでは、
図12に示す測量用ポールを用いて測量手順を説明することとする。
【0083】
測設点P1の測設作業が終了し、測量作業員が測量機2の方向に向いている場合には、携帯型無線送受信装置30Cの表示部30Gには
図14に示すように測設地図が表示されている。
【0084】
測設点P1の測設作業が終了し、鏡筒部回動許可ボタン30Hがオンされると、鏡筒部8は、
図15に模式的に示すように、次の測設点P2が存在する方向に向かって回動され、次の測設点P2が存在する方向で回動停止される。
【0085】
ついで、制御回路CPUにより、レーザー光源12がオンされ、
図16に示すように、縦方向に長く延びる扇状のガイド光PB2が照射される。縦方向の照射範囲は角度に換算して±20度の範囲であり、水平方向の照射範囲は4度の範囲内である。
測量機2はこの状態で待機している。
【0086】
測量作業員が表示部30Gの画面上での進行方向GOが
図10(a)に示すように身体の正面を向く方向に身体の向きを変えると、測設地図と方位とが画面に対して相対回転されて、次の測設点P2が存在する方向が前方に表示される。
【0087】
なお、
図10(a)〜
図10(d)には、画面枠の長辺と進行方向GOとが平行に示されているが、測量作業員の歩いて行く方向が前となるように表示されていれば、必ずしも平行に表示されていなくとも良い。
【0088】
測設地図の回転により、一部の測設点は画面上から消失することがあるが、このことは本質的ではない。
少なくとも、測量作業員が進むべき方向が画面上に指し示されていれば良い。
【0089】
測量作業員が、測設点P2の近傍に位置して、ガイド光PB2の照射位置近傍に至ると、測量作業員の目にガイド光PB2が、
図17に示すように知覚される。
測設点P2の近傍が多少起伏のある土地であっても、ガイド光PB2が縦方向に長く延びる扇状であるので、目とガイド光照射部11との高さのずれがあったとしても、ガイド光PB2を知覚できる。
【0090】
測量機2は、
図18に示すように、水平方向角度幅4.5度、垂直方向角度幅3度の範囲内での縦方向にコーナーキューブ30Aの探索を実行しており、周期1秒から2秒程度の範囲内で鏡筒部8が上下方向に往復走査されている。
【0091】
測量作業員が、コーナーキューブ30Aの探索範囲内領域に存在し、走査光学系10によりコーナーキューブ30Aがロックされると、測量機2は、
図19に示すように、コーナーキューブ30Aを自動追尾する。
【0092】
例えば、測量作業員が、
図7に一例として示す地点である現在位置Pxに達すると、測量機2はコーナーキューブ30Aをロックする。
このコーナーキューブ30Aがロックされると、測量機2による測距又は測距及び測角が実行され、測距データ又は測距データ及び測角データ(測定データ)が携帯型無線送受信装置30Cに送信され、携帯型無線送受信装置30Cはこれを受信して、制御回路CPU’は測量作業員が現在位置する現在位置Pxから次の測設点P2までの距離(差分距離L’)を演算する。
【0093】
携帯型無線送受信装置30Cはその差分距離L’に基づいて、進行方向GOと共に現在位置Pxと次の測設点P2との間の差分距離L’を表示部30Gの画面上に表示する。
測量作業員は、携帯型無線送受信装置30Cの表示部30Gを見ながら、進行方向GOが指し示す方向に歩くと共に、現在位置Pxと次の測設点P2との間の距離が小さくなっているかを確認する。このようにして、測量作業員は測設点P2に近づくことができる。
【0094】
携帯型無線送受信装置30Cは、例えば、現在位置Pxと次の測設点P2との間の差分距離L’が所定値(例えば5m)以内になると、測設地図表示モードからカメラモードに切り替えられる。
カメラ部30Eの撮影画角ωは、例えば、
図20に示すように、40度から45度の範囲内である。
【0095】
携帯型無線送受信装置30Cは、現在位置Pxと次の測設点P2との間の差分距離L’が一定値1m以上かつ所定値5m以下の場合には、画角範囲外として、現在位置Pxと次の測設点P2との間の差分距離L’を
図21に示すように、その向きと共に表示する。
【0096】
測量作業員は、現在位置Pxから測設点P2までの距離が一定値、例えば概略1m未満(画角の範囲内)になると、
図12に示すように、測量用ポール30Bの支承係止部50に人差し指と中指とに引っかけて、測量用ポール30Bが鉛直方向に向くように吊り下げる。
その際、測量用ポール30Bの先端を地面すれすれに近づけるのが、高さhの誤差を小さくするうえで望ましい。
【0097】
これらの一連の動作により、
図13に示すように、表示部30Gに地面が映し出されると共に、画面上に測設すべき点P2が表示される。
ついで、測量作業員は、表示部30Gに表示されている測設すべき点P2を見ながら、地面にマーキングを行い、この地面上のマーキング箇所に杭打ちを行う。
【0098】
この実施例によれば、測量用ポール30Bを動かすことなく、次の測設点P2のマーキングを行うことができるため、測設点P2を正確かつ迅速に特定できる。