【実施例】
【0021】
(第1実施例)
第1実施例の製氷機Mは、
図1および
図2に示すように、略箱形をなす筐体10の内部が上下に区画されて、断熱構造をなす貯氷庫11が上方に画成されると共に、該貯氷庫11の下方に機械室12が画成されている。貯氷庫11は、前側に開口17が形成されて筐体10の前側に配設された開閉扉18の姿勢変位により開閉可能となっており、その内部上方には製氷機構Dおよび冷凍機構Eの膨張弁32や蒸発器33等が配設されている。機械室12には、冷凍機構Eを構成する圧縮機30および凝縮器31等や、その他の各種機器および部品が配設されている。なお、貯氷庫11の前記開口17の周囲には、該貯氷庫11と開閉扉18との気密性を図るためのシール部材19が配設されている。
【0022】
前記製氷機構Dは、
図1〜
図3に示すように、下向きに開口した多数の製氷小室20Aが形成された前記製氷部20と、該製氷部20の各製氷小室20Aを下方から開閉する水皿21と、水皿21の下部に配設されて上方へ開口し、外部水源に連結された給水手段としての給水弁29から供給された製氷水を貯留する製氷水タンク22と、これら水皿21および製氷水タンク22を一体的に傾動させる水皿開閉機構23等から構成されている。そして製氷機構Dは、製氷部20の上部において左右方向に水平となるように筐体10に架設された取付部材13に懸架した状態で配設されている。前記製氷部20は、各製氷小室20Aを下方に向けた水平状態で取付部材13に固定されている。前記水皿21は、該水皿21の左側端部に取付けた支持アーム24が、取付部材13のブラケット14に支軸15を介して枢支され、該水皿21の右側端部近傍は、該取付部材13に配設した水皿開閉機構23を構成するカムアーム25にコイルスプリング26を介して接続されている。従って水皿21は、前記カムアーム25を開閉モータ27で正逆回転することで、前記製氷部20を閉成するよう上昇して水平となった閉成状態(
図3に実線で表示)と、該製氷部20を開放するよう下降して右下方に傾斜した開放状態(
図3に2点鎖線で表示)とに姿勢変位し得る。なお製氷機構Dには、水皿21が閉成状態となったことを検知する第1水皿検知スイッチおよび水皿21が開放状態となったことを検知する第2水皿検知スイッチや、該製氷部20の温度を検知する製氷部温度センサ(何れも図示せず)が配設されている。そして、製氷運転中に前記製氷部温度センサが予め設定された製氷完了温度を検知すると製氷運転から除氷運転に切り替えられ、除氷運転中に該製氷部温度センサが予め設定された除氷完了温度を検知すると除氷運転から製氷運転に切り替わるように制御される。
【0023】
前記製氷水タンク22は、
図1〜
図3に示すように、上方に開口したバケット形状の部材であって、水皿21に対して適宜の固定部材で固定され、該水皿21の傾動変位に伴って傾動するよう構成されている。製氷水タンク22は、水皿21が前記閉成位置に臨む姿勢においては、前記給水弁29の開放により外部水道源から供給された所定量の製氷水を貯留することができ、水皿21が前記開放位置に臨む場合は貯留していた製氷水をドレンパン16へ放出するよう構成されている。また、製氷水タンク22の最深部である左側前壁には、該製氷水タンク22内に貯留された製氷水を、前記水皿21に設けた噴射孔を介して製氷部20の各製氷小室20Aへ噴射供給する製氷水ポンプ28が配設されている。
【0024】
前記冷凍機構Eは、
図2に示すように、機械室12内に配設された圧縮機30と、ファン34が装備されて強制空冷される凝縮器31と、前記貯氷庫11内の上部に配設された膨張弁32と、該貯氷庫11内に配設した製氷機構Dの製氷部20の上面に蛇行状に配設された蒸発器33とを備え、これら圧縮機30、凝縮器31、膨張弁32および蒸発器33が連結管35により直列に連結されて、可燃性ガスからなる冷媒が循環する冷凍回路が構成されている。すなわち、圧縮機30の出口部と凝縮器31の入口部とが第1連結管35Aで連結され、凝縮器31の出口部と膨張弁32の入口部とが第2連結管35Bで連結され、膨張弁32の出口部と蒸発器33の入口部とが第3連結管35Cで連結され、蒸発器33の出口部と前記圧縮機30の入口部とが第4連結管35Dで連結されている。また、第1連結管35Aの中途に接続されると共に第3連結管35Cの中途に接続された第5連結管35Eが設けられ、該第5連結管35Eの中途に配設されたホットガス弁(図示せず)を開いた状態に制御することで、圧縮機30で圧縮された加熱状態の冷媒(ホットガス)が該第5連結管35Eを介して蒸発器33へ直接供給し得るようになっている。
【0025】
前記第1〜第5の各連結管35A,35B,35C,35D,35Eの外周には、
図2に示すように、スポンジやウレタンフォーム等を材質として断熱性を有するカバー部材37が配設されている。各カバー部材37は、各連結管35A,35B,35C,35D,35Eの外周全体を被覆するように配設されており、該連結管35A,35B,35C,35D,35Eを断熱することにより前記冷媒を保温し得るようになっている。また各カバー部材37は、対応の連結管35A,35B,35C,35D,35Eの外周全体を被覆しているため、万一、ピンホール、フレア施工不良および劣化等を原因として該連結管35A,35B,35C,35D,35Eから冷媒が漏出したとしても、該冷媒が勢いよく噴出することを防止し得る。特に、第1連結管35A、第2連結管35Bおよび第5連結管35Eは、冷媒が高圧となっているので勢いよく噴出するおそれがあるが、前記カバー部材37で該第1連結管35A、第2連結管35Bおよび第5連結管35Eを被覆したことで該冷媒の勢いを好適に減らすことができるから、該冷媒が製氷機Mから離れた位置まで噴出して拡散することが防止される。また万一、冷媒が漏出した場合には、冷凍機構Eの内部のオイル等が前記カバー部材37に染み込んで変色するため、冷媒の漏出を早期に発見することも可能である。
【0026】
前記冷媒は、冷蔵庫や製氷機に広く使用されつつあるHC(ハイドロカーボン)冷媒であって、例えばプロパン(R290)やイソブタン(R600a)等の可燃性ガスからなる。この冷媒は、空気より比重が大きく、万一、冷凍機構Eを構成する前記圧縮機30、凝縮器31、膨張弁32、蒸発器33や、第1連結管35A〜第5連結管35E、またはこれら各機器と連結管35A〜35Eとの連結部分等から漏出した場合には、製氷機M内の下方へ移動する。なお、冷媒の各種物性等の説明は省略する。
【0027】
そして、冷媒漏出検知手段としての冷媒検知センサSが、前記貯氷庫11の内部において前記開口17の下側に位置する前壁部11Bに配設されている。この冷媒検知センサSは、例えば感ガス素子として酸化第二スズ(SnO
2)を主体とする材料に、ヒータコイルおよび電極リード線を埋設した酸化スズ半導体タイプであって、プロパンやイソブタンからなる冷媒を適切に検知することが可能である。そして冷媒検知センサSは、当該製氷機Mを制御する制御手段C(
図4参照)に電気的に接続されて、冷媒の検知時には該制御手段Cへ検知信号を送信し得るようになっている。従って冷媒検知センサSは、膨張弁32、蒸発器33、第3連結管35Cおよび第4連結管35Dから漏出して貯氷庫11内の下方へ移動した冷媒を適切に検知し得る。また
図2に示すように、前記機械室12の底部にも、冷媒検知センサSが配設されており、圧縮機30、凝縮器31、第1連結管35A、第2連結管35Bおよび第5連結管35Eから機械室12内に漏出した冷媒の検知も可能となっている。なお各冷媒検知センサSは、例えば冷媒の濃度が0.15%以上になると検知信号を送信し、冷媒の濃度が0.15%より小さくなると検知信号の送信を解除するようになっている。
【0028】
そして、第1実施例の製氷機Mでは、
図4および
図5に示すように、製氷運転中または除氷運転中に、前記冷凍機構Eから冷媒が漏出して前記冷媒検知センサSが該漏出した冷媒を検知し、該冷媒検知センサSからの検知信号を制御手段Cが受信した際に、前記制御手段Cが前記給水弁29を開放制御して、外部水源からの製氷水を製氷水タンク22に満水となるよう供給するように構成されている。前記製氷水タンク22は、前述すると共に
図3に示すように、上方へ開口したバケット形状に構成されていると共に、製氷運転中においては製氷水を貯留し得る姿勢となっている。しかも製氷水タンク22は、前記製氷部20の下方に位置しているため、該製氷水タンク22よりも上方に配設されている冷凍機構Eの第3連結管35C、蒸発器33および第4連結管35Dから漏出した冷媒は、下方へ移動して製氷水タンク22に溜まるようになる。従って、製氷運転中に冷媒が漏出したことを前記冷媒検知センサSが検知した場合には、製氷水タンク22内へ製氷水を給水して該製氷水を満水とすることで、該製氷水タンク22内に溜まった冷媒を押し出すことができると共に、更に漏出した冷媒が該製氷水タンク22へ溜まることも防止することができる。
【0029】
なお製氷水タンク22は、除氷運転に際して水皿21が前記開放状態となった場合には、貯留した製氷水の全てを排出可能となっているため、万一、冷媒が溜まっていた場合には、該冷媒の全てを排出させることが可能である。
【0030】
また、第1実施例の製氷機Mでは、
図1および
図2に示すように、貯氷庫11の底壁部(底部)11Aに、多数の貫通孔40が形成されていると共に、該底壁部11Aの外側下部には防水通気性部材41が配設されている。前記底壁部11Aは、その右側後部が最も高く、該右側後部から左側前部に向けて徐々に低くなるよう下方傾斜が付与されて、該左側前部が最も低くなっている。前記各貫通孔40は、前記製氷機構Dの製氷部20で生成される氷塊Iより小さい開口形状に形成された細孔であって、該氷塊Iの通過は不可能となっており、製氷部20で生成されて放出落下した各氷塊Iは、底壁部11Aに適切に保持されて貯留されるようになっている。また、前記各貫通孔40は、氷塊Iが溶けて生成された融氷水や、貯氷庫11内に漏出した冷媒の通過は許容され、各貫通孔40に入り込んだ融氷水および冷媒は、底壁部11Aの下方へ通出されるように構成されている。
【0031】
前記防水通気性部材41は、所要厚みに形成されたシート状の素材から形成されており、厚み方向において融氷水等の液体の通過は規制するが、ガスや空気等の気体の通過は許容するように構成されている。このような防水通気性部材41は、
図1および
図2に示すように、貯氷庫11の底壁部11Aの外面と適宜の間隙42が形成された状態で貯氷庫11に固定されており、該底壁部11Aと同じ角度および向きに傾斜している。また、前記防水通気性部材41の左側前部には、融氷水を機外へ排出するための排水管38の上端が連結されており、該排水管38と前記間隙42とが空間的に連通している。
【0032】
従って、前記貯氷庫11内で生成されて各貫通孔40に流れ込んだ融氷水は、
図1および
図2に実線の矢印で示すように、前記防水通気性部材41の上面に沿って移動した後に、前記排水管38へ流入して機外に排出されるようになっている。また、前記貯氷庫11内に漏出して各貫通孔40に流れ込んだ冷媒は、
図1および
図2に破線の矢印で示すように、前記防水通気性部材41を通過して機械室12内へ排出されたり、該防水通気性部材41を通過する前に前記排水管38へ流入して機外へ排出されるようになっている。
【0033】
前述のように構成された第1実施例の製氷機Mでは、
図5に示すように、電源を投入して運転を開始すると、先ず起動初期運転(ステップS10)の完了後に製氷運転を開始する(ステップS11)。製氷運転中において、制御手段Cは冷媒検知センサSから送出される検知信号の受信を常にチェックし(ステップS12)、冷媒検知センサSからの検知信号を受信することなくステップS13において製氷運転が完了したら、除氷運転を開始する(ステップS14)。除氷運転中において、制御手段Cは冷媒検知センサSから送出される検知信号の受信を常にチェックし(ステップS15)、冷媒検知センサSからの検知信号を受信することなくステップS16において除氷運転が完了したら製氷運転に移行し、冷媒検知センサSからの検知信号を制御手段Cが受信しない場合は製氷運転および除氷運転を繰り返す。
【0034】
そして、製氷運転中の前記ステップS12において制御手段Cが冷媒検知センサSからの検知信号を受信した場合には、該制御手段Cは、製氷運転を中止して(ステップS17)、前記給水弁29を開放制御する(ステップS18)。これにより、製氷水タンク22内に製氷水が満杯になるように給水され、該製氷水タンク22内に冷媒が溜まっていた場合には該冷媒が製氷水タンク22から押し出されると共に、該製氷水タンク22内に冷媒が溜まることを防止し得る。また、除氷運転中の前記ステップS15において制御手段Cが冷媒検知センサSからの検知信号を受信した場合には、該制御手段Cは、除氷運転を中止して(ステップS19)、前記給水弁29を開放制御する(ステップS18)。これにより、水皿21が前記閉成状態となっている場合には製氷水タンク22内に製氷水が満杯になるように給水され、該製氷水タンク22内に冷媒が溜まっていた場合には該冷媒が製氷水タンク22から押し出されると共に、該製氷水タンク22内に冷媒が溜まることを防止し得る。これにより、冷凍機構Eから漏出した冷媒が製氷水タンク22に溜まったままとなることが防止され、当該製氷機Mの安全性が高められる。
【0035】
また、前記冷凍機構Eを作動させて製氷運転または除氷運転を行なう際に、該冷凍機構Eの各連結管35A,35B,35C,35D,35Eから冷媒が漏出する場合には、該連結管35A,35B,35C,35D,35Eの外周に配設した前記カバー部材37により該冷媒が勢いよく噴出することが防止される。従って漏出した冷媒は、冷凍機構Eから離れた位置まで移動することがなく、当該製氷機Mが設置された厨房内に該冷媒が広まることを防止し得ると共に、広まる前に冷媒検知センサSにより早期に検知することが可能となる。
【0036】
更に、第1実施例の製氷機Mでは、冷媒が貯氷庫11内に漏出した場合に、該冷媒が該貯氷庫11内の底部まで降下すると、底壁部11Aに形成された各貫通孔40を介して該底壁部11Aの外側下部に画成された間隙42に流出した後、防水通気性部材41を介して機械室12へ排出される。従って、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることが防止され、当該製氷機Mの安全性が高められる。
【0037】
(第2実施例)
図6(a)は、第2実施例の製氷機Mの要部を示す断面図である。第2実施例の製氷機Mは、貯氷庫11が
図16に示した従来の製氷機Mと同じ構成として、該貯氷庫11の底壁部11Aに接続される排水管38の構成を変更したものである。なお、第2実施例の製氷機Mは、製氷機構Dおよび冷凍機構Eの構成や、貯氷庫11内に冷媒が漏出した際に製氷水タンク22に製氷水を給水する構成は第1実施例と同じであり、ここではこれらに関する説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0038】
第2実施例の製氷機Mでは、
図6(a)に示すように、前記排水管38に、貯氷庫11内に漏出した前記冷媒を庫外へ放出し得る冷媒放出手段としての漏斗部材45を備えている。そして排水管38は、貯氷庫11の底壁部11Aから垂下した第1排水管38Aと、該第1排水管38Aと別体に形成されて、上端に前記漏斗部材45が配設された第2排水管38Bとから構成されている。前記漏斗部材45は、第1排水管38Aの下端開口の真下に上開口45Aを臨ませると共に、該第1排水管38の下端との間に適宜の隙間46が形成された状態に配設されている。
【0039】
従って、第2実施例の製氷機Mでは、冷媒が貯氷庫11内に漏出して該貯氷庫11内の底部まで降下すると、該冷媒は、融氷水と一緒に底部開口を介して第1排水管38A内へ流入する。そして、第1排水管38Aの下端開口から流出した融氷水は、漏斗部材45で受け止められた後に第2排水管38Bへ流入するが、第1排水管38Aの下端開口から流出した冷媒は、漏斗部材45との間の隙間46から機械室12内へ排出される。すなわち第2実施例の製氷機Mでは、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることが防止され、当該製氷機Mの安全性が高められる。
【0040】
(第2実施例の第1変更例)
図6(b)は、第2実施例の第1変更例に係る製氷機Mの要部を示す断面図である。第2実施例の第1変更例に係る製氷機Mでは、前記排水管38に、貯氷庫11内に漏出した前記冷媒を庫外へ放出し得る冷媒放出手段としてのドレンパン48を備えている。そして排水管38は、貯氷庫11の底壁部11Aから垂下した第1排水管38Aと、該第1排水管38Aと別体に形成されて、上端が前記ドレンパン48に接続された第2排水管38Bとから構成されている。前記ドレンパン48は、第1排水管38Aの下端開口の真下に臨ませて配設されると共に、該第1排水管38Aの下端との間に適宜の隙間49が形成された状態に配設されている。
【0041】
従って、第2実施例の第1変更例に係る製氷機Mでは、冷媒が貯氷庫11内に漏出して該貯氷庫11内の底部まで降下すると、該冷媒は、融氷水と一緒に底部開口を介して第1排水管38A内へ流入する。そして、第1排水管38Aの下端開口から流出した融氷水は、ドレンパン48で受け止められた後に第2排水管38Bへ流入するが、第1排水管38Aの下端開口から流出した冷媒は、ドレンパン48との間の隙間49から機械室12内へ排出される。すなわち、第2実施例の第1変更例に係る製氷機Mでは、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることが防止され、当該製氷機Mの安全性が高められる。
【0042】
(第2実施例の第2変更例)
図7(a)は、第2実施例の第2変更例に係る製氷機Mの要部を示す断面図である。第2実施例の第2変更例に係る製氷機Mでは、前記排水管38に、貯氷庫11内に漏出した前記冷媒を庫外へ放出し得る冷媒放出手段としてのガス抜き管50を備えている。前記排水管38は、途中が上下方向へ蛇行した形状に配設されており、下方へ凸となった下方湾曲部(トラップ)51には排水が停留水として停留している。そして前記ガス抜き管50は、排水管38において前記停留水の上面Lより高い部位に配設されている。
【0043】
従って、第2実施例の第2変更例に係る製氷機Mでは、冷媒が貯氷庫11内に漏出して該貯氷庫11内の底部まで降下すると、該冷媒は、融氷水と一緒に底部開口を介して排水管38内へ流入する。そして、排水管38内へ流入した融氷水は、該排水管38内に一時的に停留される一方、排水管38へ流入した冷媒は、前記ガス抜き管50を介して機械室12内へ排出される。すなわち、第2実施例の第2変更例に係る製氷機Mでは、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることが防止され、当該製氷機Mの安全性が高められる。
【0044】
(第2実施例の第3変更例)
図7(b)は、第2実施例の第3変更例に係る製氷機Mの要部を示す断面図である。第2実施例の第3変更例に係る製氷機Mでは、前記排水管38に、貯氷庫11内に漏出した前記冷媒を庫外へ放出し得る冷媒放出手段としてのガス抜き孔52を備えている。前記排水管38は、貯氷庫11から斜めに傾斜した傾斜部53が設けられ、該傾斜部53の外周上面に、該排水管38の長手方向へ延在するスリット状の前記ガス抜き孔52が形成されている。なお、排水管38における上下方向へ蛇行して下方へ凸となった下方湾曲部51には停留水が停留していることから、ガス抜き孔52は、該停留水の上面Lより高い部位に形成されている。
【0045】
従って、第2実施例の第3変更例に係る製氷機Mでは、冷媒が貯氷庫11内に漏出して該貯氷庫11内の底部まで降下すると、該冷媒は、融氷水と一緒に底部開口を介して排水管38内へ流入する。そして、排水管38内へ流入した融氷水は、該排水管38内に一時的に停留される一方、排水管38へ流入した冷媒は、傾斜部53内を移動する際にガス抜き孔52を介して機械室12内へ排出される。すなわち、第2実施例の第3変更例に係る製氷機Mでは、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることが防止され、当該製氷機Mの安全性が高められる。
【0046】
(第3実施例)
図8(a)は、第3実施例の製氷機Mの要部を示す断面図である。第3実施例の製氷機Mは、貯氷庫11が
図16に示した従来の製氷機Mと同じ構成として、該貯氷庫11の開口17の周囲に配設された前記シール部材19の構成を変更したものである。なお、第3実施例の製氷機Mは、製氷機構Dおよび冷凍機構Eの構成や、貯氷庫11内に冷媒が漏出した際に製氷水タンク22に製氷水を給水する構成は第1実施例と同じであり、ここではこれらに関する説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
第3実施例の製氷機Mでは、
図8(a)に示すように、前記シール部材19において前記開口17より下側に位置する下シール部19Aに、該貯氷庫11内と庫外とを連通して前記冷媒の通過が可能な通気孔(通気部)55が設けられている。前記通気孔55は、前記下シール部19Aを上下に貫通する細孔であり、該下シール部19Aの長手方向へ所要間隔毎に複数が形成されている。
【0048】
従って、第3実施例の製氷機Mでは、冷媒が貯氷庫11内に漏出した場合に、
図8(b)に示すように、該冷媒は、該貯氷庫11内の底部に移動する前に前記開口17の下縁まで降下すると、シール部材19の該下シール部19Aに設けた各通気孔55を介して製氷機M外へ排出される。すなわち、第3実施例の製氷機Mでは、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることが防止され、当該製氷機Mの安全性が高められる。なお、
図8(b)に示すように、シール部材19の下シール部19Aの下方に位置する前面パネルの上部に開口56を設けることで、下シール部19Aの各通気孔55を介して貯氷庫11内から外へ排出された冷媒を、前記開口56を介して機械室12内へ案内させることもできる。
【0049】
(第4実施例)
図9(a)は、第4実施例の製氷機Mの要部を示す断面図である。第4実施例の製氷機Mは、貯氷庫11が
図16に示した従来の製氷機Mと異なる構成として、該貯氷庫11の内部構成を変更したものである。なお、第4実施例の製氷機Mは、製氷機構Dおよび冷凍機構Eの構成や、貯氷庫11内に冷媒が漏出した際に製氷水タンク22に製氷水を給水する構成は第1実施例と同じであり、ここではこれらに関する説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
第4実施例の製氷機Mでは、
図9(a)に示すように、前記貯氷庫11の庫内底面である底壁部11Aの上面に、該貯氷庫11内に貯留された氷塊Iからなって、該貯氷庫11内に漏出した冷媒の通過を許容する氷層60が設けられるようになっている。すなわち、貯氷庫11の底部には、前記底壁部11Aの上面から上方へ離間した位置に、簀の子状のガード部材61が配設されている。このガード部材61には、前記氷塊Iの通過を許容する開口サイズとされた多数の穴62が形成されている。従って、製氷部20で生成されて落下放出された氷塊Iは、一旦、ガード部材61で受け止められた後、前記各々の穴62を介して庫内底面と前記ガード部材61との間に画成された空間63へ落下して空間63内に貯留され、庫内底面の全体を覆う前記氷層60を形成するようになる。前記氷層60を形成する各氷塊Iの間には、融氷水や冷媒の通過が許容される隙間が形成されているので、貯氷庫11内に漏出した冷媒は、下方へ移動して前記ガード部材61の各穴62を通過した後、氷層60の隙間を通過しながら冷却され、前記排水管38を介して排出されるようになっている。なお、貯氷庫11の底壁部11Aには、前記排水管38へ氷塊Iから落下するのを防止する網状の部材が設けられている。
【0051】
前記冷媒は、前述した可燃性ガスであるから、氷層60をなす各氷塊Iの間の僅かな隙間でも入り込み易い。しかも冷媒は、冷却されて温度が低下するほど比重が大きくなる特性があり、前記氷層60を通過する際に冷やされて重くなる。従って、第4実施例の製氷機Mでは、貯氷庫11内に漏出して下方へ移動した冷媒を、前記氷層60で冷やしながら重くして前記排水管38内へ流入し易くすることで、当該冷媒が該排水管38を介して機外へ排出される冷媒排出時間の短縮化を図り得る。すなわち、第4実施例の製氷機Mでは、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることが防止され、当該製氷機Mの安全性が高められる。なお、前記ガード部材61の下方に貯留された氷塊Iから氷層60が形成されているので、前記開閉扉18を開放してスコップ等を利用して氷塊Iを取り出す際に、前記氷層60をなす氷塊Iが取り出されることはない。
【0052】
(第4実施例の変更例)
図9(b)は、第4実施例の変更例に係る製氷機Mの要部を示す断面図である。第4実施例の変更例に係る製氷機Mは、貯氷庫11の底壁部11Aにおいて、前記排水管38が接続された部分に設けた凹部64内に、該貯氷庫11内に貯留された氷塊Iからなって、該貯氷庫11内に漏出した冷媒の通過を許容する氷層60が設けられるようになっている。すなわち、前記凹部64の開口部には、前記底壁部11Aの上面と同じ高さに、簀の子状のガード部材61が配設されている。このガード部材61には、前記氷塊Iの通過を許容する開口サイズとされた複数の穴62が形成されている。従って、製氷部20で生成されて落下放出された氷塊Iは、一旦、ガード部材61で受け止められた後、前記各々の穴62を介して凹部64へ落下して該凹部64内に貯留され、氷層60を形成するようになる。なお、凹部64の底部には、前記排水管38へ氷塊Iから落下するのを防止する網状の部材が設けられている。
【0053】
従って、第4実施例の変更例に係る製氷機Mでは、貯氷庫11内に漏出して下方へ移動した冷媒を、前記氷層60で冷やしながら重くして前記排水管38内へ流入し易くすることて、当該冷媒が該排水管38を介して機外へ排出される冷媒排出時間の短縮化を図り得る。すなわち、第4実施例の変更例に係る製氷機Mでは、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることが防止され、当該製氷機Mの安全性が高められる。また、ガード部材61の下方に貯留された氷塊Iから氷層60が形成されているので、前記開閉扉18を開放してスコップ等を利用して氷塊Iを取り出す際に、前記氷層60をなす氷塊Iが取り出されることはない。
【0054】
(第5実施例)
図10は、第5実施例の製氷機Mの構成を示す断面図である。第5実施例の製氷機Mは、製氷機構Dおよび冷凍機構Eの基本的な構成や、貯氷庫11内に冷媒が漏出した際に製氷水タンク22に製氷水を給水する構成は第1実施例と同じであり、ここではこれらに関する説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0055】
第5実施例の製氷機Mでは、製氷機構Dの下方に配設された前記ドレンパン16に上端が連結され、該ドレンパン16から貯氷庫11内を下方へ延出して該貯氷庫11の底壁部11Aまで延在するドレン管70を備えている。また、貯氷庫11の底壁部11Aには、排水管38が接続される部分に、上方へ開口した排水凹部(排水口)71が形成されており、該排水凹部71に前記ドレン管70の下端開口70Aが臨んでいる。ここで前記排水凹部71は、
図11に示すように、前記ドレン管70の直径より大きい開口寸法に形成されており、ドレン管70と排水凹部71との間に間隙72が画成されている。従って、前記製氷水タンク22から前記ドレンパン16へ排出されて前記ドレン管70へ流入した製氷排水は、該ドレン管70の下端開口70Aから排水管38を介して機外へ排出される。このとき、前記ドレン管70の下端開口70Aから落下する製氷排水により、貯氷庫11内に貯留する空気や冷媒を、排水凹部71とドレン管70との間隙72から該排水凹部71へ引き込むように構成されている。
【0056】
従って、第5実施例の製氷機Mでは、冷媒が貯氷庫11内に漏出して前記冷媒検知センサSが該冷媒を検知した場合に、前述したように、制御手段Cが給水弁29を開放制御して製氷水を製氷水タンク22へ給水すると、該製氷水が製氷水タンク22に満杯になった後も継続して給水を行なうようにする。これにより、製氷水タンク22から溢れた製氷水は、前記ドレンパン16を介して製氷排水として前記ドレン管70へ流入して該ドレン管70の下端開口70Aから排水凹部71へ流出し、この際に貯氷庫11内の底部に残留した冷媒を、前記間隙72を介して該排水凹部71内へ積極的に引き込むようになり、該冷媒を排水管38を介して機外へ好適に排出することができる。すなわち、第5実施例の製氷機Mでは、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることが防止され、当該製氷機Mの安全性が高められる。
【0057】
(第6実施例)
図12は、第6実施例の製氷機Mの要部を示す断面図である。第6実施例の製氷機Mは、
図16に示した従来の製氷機Mと異なる構成として、前記貯氷庫11の内部構成を変更したものである。なお、第6実施例の製氷機Mは、製氷機構Dおよび冷凍機構Eの構成や、貯氷庫11内に冷媒が漏出した際に製氷水タンク22に製氷水を給水する構成は第1実施例と同じであり、ここではこれらに関する説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
第6実施例の製氷機Mでは、
図12に示すように、前記貯氷庫11の内部後側に、下部に吸気口76が形成されて上方へ延在するよう配設された通気ダクト75と、該貯氷庫11の後壁部11Cおよび筐体10に前記通気ダクト75の上部に整合して開設された通気口77と、前記通気ダクト75内に配設されたファン(送風手段)78とを備えている。前記ファン78は前記制御手段Cにより作動制御され、前記冷媒検知センサSの検知信号を前記制御手段Cが確認すると、該制御手段Cは該ファン78を作動させるように構成されている。
【0059】
従って、第6実施例の製氷機Mでは、冷媒が貯氷庫11内に漏出して前記冷媒検知センサSから送出された検知信号を前記制御手段Cが確認すると、該制御手段Cは前記ファン78を所定方向へ回転させ、貯氷庫11内に漏出した冷媒を庫外へ排出するようになる。例えば、前記ファン78を、前記通気口77および通気ダクト75を介して外気を貯氷庫11内へ吸い込むように回転させた場合には、該貯氷庫11内は吸い込んだ外気により圧力が上昇した状態となるため、該貯氷庫11内に漏出していた冷媒を、前記開口17またはこれ以外に設けた通気孔等を介して庫外へ押し出すことができる。また、前記ファン78を、前記通気ダクト75および通気口77を介して貯氷庫11内の庫内空気を庫外へ吹き出すように回転させた場合には、該貯氷庫11内に漏出した冷媒も庫外へ吸い出される。すなわち、第6実施例の製氷機Mでは、前記ファン78を正逆どちらに回転させても、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることを防止することができ、当該製氷機Mの安全性が高められる。
【0060】
(第7実施例)
図13は、第7実施例の製氷機Mの要部を示す断面図である。第7実施例の製氷機Mは、
図16に示した従来の製氷機Mと異なる構成として、排水管38の構成を変更したものである。なお、第7実施例の製氷機Mは、製氷機構Dおよび冷凍機構Eの構成や、貯氷庫11内に冷媒が漏出した際に製氷水タンク22に製氷水を給水する構成は第1実施例と同じであり、ここではこれらに関する説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0061】
第7実施例の製氷機Mでは、
図13に示すように、前記排水管38の途中に接続されて該排水管38から上方へ延在すると共に上方に排気口81を設けた排気管80と、前記排気管80内に配設されて貯氷庫11内から排水管38へ流出した冷媒を該排気管80を介して機外へ排出するファン(排気手段)82とを備えている。前記ファン82は前記制御手段Cにより作動制御され、前記冷媒検知センサSの検知信号を前記制御手段Cが確認すると、該制御手段Cは該ファン82を作動させるように構成されている。
【0062】
従って、第7実施例の製氷機Mでは、冷媒が貯氷庫11内に漏出して前記冷媒検知センサSが該冷媒を検知した場合に、前述したように、制御手段Cにより前記ファン82を作動することで、該冷媒を、前記排水管38から排気管80内へ吸引して、排気口81を介して機外へ排出することができる。すなわち、第7実施例の製氷機Mでは、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることを防止することができ、当該製氷機Mの安全性が高められる。
【0063】
(第8実施例)
図14は、第8実施例の製氷機Mの要部を示す断面図である。第8実施例の製氷機Mは、
図16に示した従来の製氷機Mと異なる構成として、貯氷庫11内の所要位置に、不活性ガスを封入したボンベ85を備えたものである。なお、第8実施例の製氷機Mは、製氷機構Dおよび冷凍機構Eの構成や、貯氷庫11内に冷媒が漏出した際に製氷水タンク22に製氷水を給水する構成は第1実施例と同じであり、ここではこれらに関する説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
第8実施例の製氷機Mでは、
図14に示すように、前記貯氷庫11の内部上部において前記製氷機構Dに隣接した位置に前記ボンベ85が配設され、該ボンベ85の出口部には噴出バルブ86が配設されている。前記噴出バルブ86は前記制御手段Cにより作動制御され、前記冷媒検知センサSの検知信号を前記制御手段Cが確認すると、該制御手段Cは該噴出バルブ86を開放させるように構成されている。
【0065】
従って、第8実施例の製氷機Mでは、冷媒が貯氷庫11内に漏出して前記冷媒検知センサSが該冷媒を検知した場合に、前述したように、制御手段Cにより前記噴出バルブ86を開放することで、ボンベ85に封入されていた不活性ガスが貯氷庫11内に噴出する。そして、貯氷庫11内に不活性ガスが噴出するに伴い、該貯氷庫11内に漏出した冷媒が前記排水管38内へ押し出されるので、該冷媒を該排水管38から機外へ強制的に排出することができる。すなわち、第8実施例の製氷機Mでは、冷凍機構Eから漏出した冷媒が貯氷庫11内に溜まったままとなることを防止することができ、当該製氷機Mの安全性が高められる。
【0066】
(変更例)
(1)前記各実施例では、冷凍機構Eから漏出した冷媒を検知する冷媒漏出検知手段Sとして、該冷媒を直接的に検知する冷媒検知センサを例示したが、冷媒漏出検知手段Sはこれに限定されず、(a)製氷機構Dの製氷部20での製氷時間をチェックして冷媒の漏出を検知する手段、(b)冷凍機構Eの温度や圧力を測定して冷媒の漏出を検知する手段等、冷媒の漏出を間接的に検知するものであってもよい。すなわち前記(a)では、製氷時間が規定よりも長くなった場合には、冷媒が漏出することで冷凍機構Eにおける蒸発器33の冷却効率が低下することが原因であるため、該冷媒の漏出が発生したと認識し得る。また前記(b)では、冷凍機構Eの温度が高くなったり圧力が変化した場合には、冷媒が漏出することで冷凍機構Eにおける蒸発器33の冷却効率が低下することが原因であるため、該冷媒の漏出が発生したと認識し得る。
(2)前記第3実施例の通気部55は、実施例で例示した通口に限定されず、貯氷庫11側に開口して上下方向に延在する凹溝部であってもよい。このように通気部55が凹溝部の場合には、シール部材19を貯氷庫11の外側前面に装着することで、該貯氷庫11の外側壁面とシール部材19との間に、冷媒の通過を許容する空間が画成される。
(3)前記第2実施例〜前記第8実施例に記載した構成の2つ以上を併用して第1実施例に実施するようにしてもよい。
(4)冷媒漏出検知手段として実施例される冷媒検知センサは、実施例に例示した酸化スズ半導体タイプに限定されず、冷媒として使用される可燃性ガスを適切に検知し得るもので様々なタイプのものが実施可能である。
(5)実施例では、機械室が下部に配設された製氷機を例示したが、該機械室が貯氷室の上部に配設された製氷機や、該機械室が該貯氷室の左右または後に配設された製氷機も対象とされる。
(6)実施例では、噴射式の製氷機を例示したが、本願発明が対象とする製氷機は、可燃性ガスからなる冷媒を使用した冷凍機構を有する全ての製氷機である。