(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726073
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】プラズマを用いる形式の化学反応によって、基板上に層を析出する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/517 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
C23C16/517
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-513893(P2011-513893)
(86)(22)【出願日】2009年5月15日
(65)【公表番号】特表2011-524468(P2011-524468A)
(43)【公表日】2011年9月1日
(86)【国際出願番号】EP2009003479
(87)【国際公開番号】WO2010003476
(87)【国際公開日】20100114
【審査請求日】2012年1月27日
(31)【優先権主張番号】102008028542.0
(32)【優先日】2008年6月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ファーラント
(72)【発明者】
【氏名】トビアス フォークト
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン ファールタイヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルデマー シェーンベルガー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シェーンベルガー
【審査官】
國方 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−155572(JP,A)
【文献】
特公昭59−015982(JP,B2)
【文献】
特表2007−522343(JP,A)
【文献】
特開2007−201069(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/126598(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ(11)内の化学反応を用いて、プラズマを用いて基板(12)上に層を析出する方法であって、
前記化学反応の少なくとも1つの基礎材料を、入口(13)を通じて前記真空チャンバ(11)内に供給する方法において、
当該入口(13)を、少なくとも入口開口部(18)の領域において、ガス放電の電極として接続し、マグネトロン(15)を、プラズマを生成するために使用し、前記入口(13)を前記マグネトロン(15)の隣に配置し、
前記マグネトロンをガス放電のカソードとして接続し、前記入口をガス放電のアノードとして接続する、
ことを特徴とする、真空チャンバ内の化学反応を用いて、プラズマを用いて基板上に層を析出する方法。
【請求項2】
前記マグネトロンを、DC電流供給によって、またはパルス状のDC電流供給によって作動させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
真空チャンバ(11)内の化学反応を用いて、プラズマを用いて基板(12)上に層を析出する方法であって、
前記化学反応の少なくとも1つの基礎材料を、入口(13)を通じて前記真空チャンバ(11)内に供給する方法において、
当該入口(13)を、少なくとも入口開口部(18)の領域において、ガス放電の電極として接続し、マグネトロン(15)を、プラズマを生成するために使用し、前記入口(13)を前記マグネトロン(15)の隣に配置し、
前記マグネトロン(15)および前記入口(13)を、ガス放電のカソードおよびアノードとして交互に作動させ、前記マグネトロン(15)を、パルスパケット電流供給部(17)によって給電する、
ことを特徴とする、真空チャンバ内の化学反応を用いて、プラズマを用いて基板上に層を析出する方法。
【請求項4】
前記マグネトロン(15)を電気的にパルスパケット電流供給部(17)と結合し、前記マグネトロンがカソードとして接続されている場合には、当該電流供給部から、1つのパケットにおいて最大で50個のパルスが送出され、前記入口がカソードとして接続されている場合には、当該電流供給部から、1つのパケットにおいて最大で10個のパルスが送出される、請求項3項記載の方法。
【請求項5】
前記基礎材料の供給方向を、コーティングされるべき基板表面に対して垂直に配向する、または垂直に対して±20°の範囲の角度偏差で配向する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記化学反応のための前記基礎材料の他に、別の気体を前記入口(13)を通じて、前記真空チャンバ(11)内に供給する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
水素成分を有しているシリコン含有層を析出する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記基板上の層をバリヤ層系の平滑層として析出し、透明なセラミック層と平滑層が交互に析出されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
硫黄またはセレニウムを含有している基礎材料を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記基板上の層を層系の構成部分として析出し、当該層系の少なくとも1つの別の層はマグネトロンスパッタリングによって析出される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に層を析出する方法および装置に関する。ここで析出プロセスは、プラズマを用いる形式の化学反応に基づく。
【0002】
種々の使用範囲において、ガラス面、フィルム表面または他のコンポーネントを真空状態でコーティングすることが通常、行われている。このために、物理蒸着法が非常に広く使用されている。はじめはコーティング材料が固体集合状態にあり、熱供給によって気体集合状態に移行する蒸着等が、このような方法に属する。
【0003】
別の物理蒸着法はスパッタリングである。この方法では、コーティング材料前でプラズマが点弧される。適切な電気的接続およびここから生じる電気的ポテンシャル状態によって、コーティング材料表面にイオンが衝突する。この結果、粒子が固体結合体からはじき飛ばされる(スパッタリング)。
【0004】
スパッタリングによって、高い層厚精度および高い密度および安定性で、比較的薄い層が析出される。しかし幾つかの用途では、スパッタリングによって析出された層のこのような安定性は、むしろ妨げになる。これは例えば、柔軟なプラスチック基板上に析出される、光学的機能を有する層系での場合である。このような場合には、比較的柔らかく、弾性があるプラスチック基板から、スパッタリングによって析出された硬く、弾性のない層系への、材料特性移行が、使用中にひび割れを生じさせてしまう。熱的な負荷が加えられる場合には、熱膨張係数における明確な相違によって、このようなひび割れが一層強く形成されてしまう。
【0005】
上述した2つの物理蒸着方法では、気体に移行したコーティング材料は真空チャンバ内に分散するので、コーティングされるべき基板の表面だけで析出されるのではなく、真空チャンバ内の種々の面でも析出される。しかし方法に応じて、材料粒子の分散時および析出時にある程度の優先方向があり、これは、基板を適切に位置付けすることによって利用される。
【0006】
コーティング技術の別のグループは、化学蒸着である。この方法では気体の基板(モノマーとも称される)が、反応空間内に入れられる。この気体の基板は化学反応に曝され、層が形成される(CVD−化学気相成長法)。このような化学反応は例えば、基板でのテンパリングまたはプラズマ励起によってトリガされる。このような、プラズマ用いる形式の化学蒸着法はPECVD(プラズマ化学気相成長法)とも称される。
【0007】
広範囲で使用されているのは、高周波プラズマまたはマイクロウェーブプラズマによって動作するPECVD方法である。ここで特徴的であるのは、物理蒸着と比較して高いプロセス圧力が、反応空間を占めるということである(物理蒸着方法での10
−2Paから1Paと比べて、1Paから100Pa)。従って、2つのプロセスを1つの真空施設内で同時に作動させることは、技術的に非常に困難である。
【0008】
DE102004005313A1号には、スパッタリングとPECVDによって、順次連続する層が析出される方法が開示されている。PECVDプロセスはここで、マグネトロン放電によって実現される(これはマグネトロンPECVDとも称される)。DE102004005313A1号では、2つのマグネトロンの配置構成が説明されている。これらは交互に、カソードおよびアノードとして作動される。この方法の特別な点は、2つのプロセスが、比較可能な圧力領域(0.1Paから2Pa)で作動することである。これは同時作動ひいては多層系の継続的な析出を可能にする。EP0815283B1のような別の情報源には、マグネトロンを1つだけ有する配置構成も記載されている。圧力領域のこのような整合の他に、この方法は同時に、大きい面でのスケーリングが比較的容易である、という利点も有している。
【0009】
圧力状態は適合されているが、2つのプロセスに対するプロセス空間相互に分けられなければならない。なぜなら、マグネトロンPECVDでのモノマーが、他の全てのCVDプロセスと同じように、不完全にしか消費されず、別の析出方法が反応空間内で実施されるべきときに、この使用されなかったモノマー構成成分が反応空間に充満してしまうからである。しかし別のプロセス、例えばスパッタリングは、このようなモノマーに影響されずに行われるべきである。このことは殊に、継続的に作動するベルト走行施設において、プロセスチャンバが短い隙間によってのみ相互に分断されている場合にも、制限的に起こり得る。このような隙間は、モノマーの侵入を低減させるだけであり、完全に阻止することはできない。
【0010】
マグネトロンPECVDの別の問題は、電極が反応材料によって部分的に覆われることである。これによって、プロセスが不安定(アーキング)になる恐れがある。この問題は、1つの真空チャンバ内でマグネトロンPECVDだけが行われ、別のプロセスが行われない場合にも生じる。
【0011】
課題の設定
従って本発明の技術的な課題は、従来技術の欠点を克服することができる、プラズマを用いる形式の化学反応によって、層を析出する方法および装置を提供することである。殊にこの方法および装置は、化学反応に必要な基礎物質の多くの部分が化学反応によって変換され、層材料として析出されることを可能にする。さらに、この装置および方法は、柔軟なプラスチック基板上の光学機能を有する層系に対する層の析出に適しているべきである。
【0012】
この技術的課題の解決方法は、請求項1および14の特徴的構成を備える特許請求対象によって得られる。本発明のさらに有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明の方法および装置では、層が、基板上に、プラズマを用いる形式の化学反応を用いて析出される。これは、化学反応の少なくとも1つの基礎物質が入口を通って真空チャンバ内に案内されることによって行われる。ここでこの入口は、少なくとも入口開口部の領域において、ガス放電の電極として接続されている。
【0014】
このような配置構成によって、入口開口部の近傍においてプラズマが形成されることが実現される。供給されたモノマーの密度は、この入口開口部の直ぐ近くの周辺領域においては、全プロセス空間にわたった平均よりも高いので、モノマーのアクティベーションはこのように特に効果的に実現される。入口を通って供給される基礎材料が入ってくる方向が直接的に、コーティングされるべき基板表面に配向される場合には、プラズマによってアクティベートされた粒子が有利に基板で析出される。これは殊に、化学蒸着時にプロセス圧力が1Paを下回る場合に当てはまる。
【0015】
従って1つの実施形態では、入口を通って案内される基礎材料の供給方向は、コーティングされるべき基板表面に対して垂直に配向される、または、±10°の範囲の、垂直に対する角度偏差で配向される。しかしこれに関しては、垂直に対する角度偏差が±20°を越えない場合に既に、良好な結果が得られている。
【0016】
上述したように、本発明の方法および装置の利点は、プラズマが、化学反応の基礎材料の入口開口部の直ぐ近くで生成されることに基づく。これは入口が、少なくとも入口開口部の領域において、ガス放電の電極として接続されていることによって行われる。しかし、例えば導電性の対象物が、入口開口部のすぐ近くで、ガス放電の電極として接続されている場合にも、同様の結果が得られる。これは例えば、入口が、入口開口部の領域において非導電性である場合に必要とされる。従って例えば、入口開口部近傍に配置された補助電極を、ガス放電の電極として接続することができる。従って「入口を、入口開口部の領域において、ガス放電の電極として接続する」ということは、入口開口部から2cm以上離れて配置されていない導電性対象物を、ガス放電の電極として接続することでもある。
【0017】
入口が、ガス放電のアノードとして接続されていても、カソードとして接続されていてもよい。1つの実施形態では、マグネトロンがプラズマ生成のために使用されている。このようなマグネトロンPECVDプロセスによって例えば、柔軟なプラスチック基板上に有利に、光学機能を備えた層系に対する層を析出することができる。このような層系が例えば、高い屈折率を有する層と低い屈折率を有する層とが交互になっている層列を含んでいる場合、低い屈折率を有する層が、本発明の装置および/または方法によって析出されることは有利であり、十分である。これによって例えば、層系全体の材料特性が柔軟なプラスチック基板の材料特性により整合され、後の使用時にひび割れが形成されるのが阻止される。
【0018】
別の実施形態では、カソードとして接続されたマグネトロンが、プラズマを形成するために使用される。この場合には、入口が、ガス放電のアノードとして接続されている。この場合にはマグネトロンは、DC電流供給またはパルス状のDC電流供給によって作動される。
【0019】
しかしマグネトロンをプラズマ生成に使用する場合には、マグネトロンと入口が、交互にカソードとしておよびアノードとして接続されてもよい。属する電流供給装置として、このために例えば、バイポーラ電流供給装置またはパルスパケットを形成する電流供給装置が使用される。
【0020】
パルスパケット形状での電流供給は例えば特に、いわゆるアーキング(Arcing)を抑圧するのに適している。ここでアーク抑圧時の結果は、例えば、パケットのパルスの数およびパルスパケットの対称性にも依存する。アーキングを抑圧するために、パルスパケット電流供給部は例えば次のように調整される。すなわち、マグネトロンがカソードとして接続されている場合には、電流供給部から、1つのパケットにおいて最大で50個のパルスが送出可能であり、入口がカソードとして接続されている場合には、電流供給部から、1つのパケットにおいて最大で10個のパルスが送出可能であるように調整される。パケットのパルスの数がさらに低減される場合には通常、アーク抑圧の効果がさらに増大する。従って有利には、パルスパケット電流供給部は次のように調整される。すなわち、マグネトロンがカソードとして接続されている場合には、電流供給部から、1つのパケットにおいて最大で10個のパルスが送出可能であり、入口がカソードとして接続されている場合には、電流供給部から、1つのパケットにおいて最大で4個のパルスが送出可能であるように調整される。入口がカソードとして接続されているフェーズは、層析出に跳躍的な寄与を発揮するのではなく、主に、反応生産物のマグネトロンターゲット表面をきれいにするのに役立つ。従って入口がカソードとして接続されているフェーズにおけるパルスと、マグネトロンがカソードとして接続されているフェーズにおけるパルス数との割合は、ある領域において、1:2から1:8とされる。
【0021】
本発明の方法および装置は、多数の用途で使用可能である。例えば層がシリコン成分と水素成分によって析出される場合、これは、太陽光吸収層として使用される。この場合には、基礎材料ではホウ素成分または燐光体成分も混合され、これによってp型部分層とn型部分層とが実現される。これらの層は、シリコンを含有した太陽光吸収層の本来の部分層の対抗面に位置する。
【0022】
しかし、択一的な太陽光吸収層、いわゆるCIS層も、本発明によって析出可能である。このような方法では例えば、要素である硫黄またはセレニウムも、化学反応に対する基礎材料内に入れられている。
【0023】
さらに本発明の装置および方法は、バリヤ層系で平滑な層を析出するのに適している。ここでは積層体内で、透明なセラミック層と平滑な層とが交互に析出されている。
【0024】
前述したように、本発明では、光学機能を備えた層系の構成部分である層も析出可能である。この場合には本発明の方法および装置が、層系全体を析出する設備の一部として構成されてもよい。従って、例えば層系のある層は、公知の方法および装置によって、例えばスパッタリングによって析出される。
【0025】
以下では有利な実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】プラズマを生成するマグネトロンを備えた、本発明による装置の概略図
【
図2】プラズマを生成するマグネトロンを2つ備えた、択一的な本発明による装置の概略図
【実施例】
【0027】
真空チャンバ11内では、200nmの幅および75μmの厚さを有する、PETフィルムとして構成されている基板12の上に、ロール・ツー・ロール方法で、SiOxCy層が析出されるべきである。しかし低い屈折率を有するこの層は、光学機能を備えた層系の1つの層にすぎない。ここで層系内では、交互に、低い屈折率を有する層と高い屈折率を有する層とが配置される。
【0028】
入口13によって、モノマーTEOSも気体であるアルゴンも、真空チャンバ11内に供給される。図示されていない入口を介して、さらに、気体である酸素も真空チャンバ11内に達する。真空チャンバ11内で実施されるPECVDプロセスに必要なプラズマ14は、マグネトロン15によって生成される。マグネトロン15は、チタンターゲット16によって覆われている。しかしここでこのマグネトロン15は、プラズマ14を生成するためにのみ作動される。これに対して、ターゲット16のスパッタリングないしはチタンターゲット16が層形成に寄与することは、望まれていない。従ってマグネトロン
15は、ターゲット16のチタン粒子ができるだけ払われないように、作動される。チタンのスパッタリングは比較的効率が悪く、酸素含有プラズマの場合には、酸化チタンでのスパッタ収率がさらに下がるので、マグネトロン
15にチタンターゲットを装着するのは、本発明の方法および装置に特に適している。
【0029】
パルスパケット電流供給部17によって、マグネトロン15および入口13が、入口開口部18の領域において交互に、ガス放電のカソードないしアノードとして接続される。従って高いプラズマ密度を備えたプラズマ14の領域は、従来技術において通常であるように、マグネトロンと、コーティングされるべき基板との間でだけ拡がるのではなく、入口開口部18の方向においても延在する。従って従来技術に対して、より多くのモノマー構成成分がプラズマによってアクティベートされる。これは層析出の高い収率を生じさせる。パルスパケット電流供給部17は2kWの出力を有しており、マグネトロン15がカソードとして接続されている場合には、ここから、1つのパケットにおいて最大10個のパルスが送出され、入口13がカソードとして接続されている場合には、ここから、1つのパケットにおいて最大で4個のパルスが送出されるように調整されている。ここでパルスオン時間は9μsであり、パルスオフ時間は1μsである。
【0030】
さらに入口13は次のように配向されている。すなわち、入口13を通じて真空チャンバ11内に案内されるモノマーの供給方向が、コーティングされるべき基板12の表面に対してほぼ垂直に延在するように配向されている。このような配向によって同じように、できるだけ多くのモノマー構成成分が層として基板12上に析出されるように寄与がされ、これによって同時に、真空チャンバ構成部分およびマグネトロン15での不所望なコーティングが低減される。
【0031】
択一的な本発明の装置が
図2に記載されている。真空チャンバ21内では、200nmの幅および75μmの厚さを有する、PETフィルムとして構成されている基板22の上に、ロール・ツー・ロール方法で、30nmの厚さのSiOxCy層が析出されるべきである。しかし低い屈折率を有するこの層は、光学機能を備えた層系の1つの層にすぎない。ここで層系内では、交互に、低い屈折率を有する層と高い屈折率を有する層とが配置される。
【0032】
入口23によって、11g/hを備えたモノマーTEOSも、200sccmを備えた、気体であるアルゴンも、真空チャンバ21内に供給される。図示されていない入口を介して、さらに、150sccmを備えた気体である酸素も真空チャンバ21内に達する。真空チャンバ21内で実施されるPECVDプロセスに必要なプラズマ24は、同一である2つのマグネトロン25aおよび25bによって生成される。各マグネトロン25aおよび25bにはチタンターゲット26aないし26bが装備されており、ここでこれらのマグネトロン25a、25bは同じように、プラズマ24を生成するために作動される。
【0033】
6kWの出力を備えたバイポーラパルス化電流供給部27によって、マグネトロン25aおよびマグネトロン25bは、50Hzの周波数で、交互に、ガス放電のカソードとして、ないしはアノードとして接続される。同時に、2つのマグネトロンの間に配置された入口23は、その入口開口部28の領域において、電流供給部29によって、ガス放電の電極として接続されている。
【0034】
このようにして、プラズマはマグネトロン間の領域において、さらに入口開口部28の直ぐ近くで、さらに増幅される。これによって、従来技術と比べてより多くのモノマー構成成分がプラズマによってアクティベートされる。これは同じように、層析出時の高い収率を生じさせる。
【0035】
入口23と真空チャンバ21の電気的アースとの間に接続された電流供給部29は、ユニポールパルスを形成し、200Wの出力を有している。
【0036】
さらに入口23は次のように配向されている。すなわち、入口23を通じて真空チャンバ21内に案内されたモノマーの供給方向が、コーティングされるべき基板22の表面に対してほぼ垂直に延在するように配向されている。このような配向は同じように、より多くのモノマー構成成分が層として、基板22上に析出されるように、影響を与える。