(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分離層は気相成膜法、メッキ法、スピンコート塗布法、印刷法、転写法、インクジェットコーティング法、及び粉末ジェット法のうち少なくとも一つの方法で形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
前記薄膜素子層は、シリコン層の堆積、結晶化、パターニング、絶縁膜の形成、イオン注入、熱処理および配線・電極形成のうち少なくとも一つの製造プロセスを用いて形成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
前記基板は分離層及び薄膜素子層を形成する際の最高温度をTmaxとしたときに、歪点がTmax以上の材料で構成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
前記分離層は照射される光を吸収し、分離層を構成する物質の原子間または分子間の結合力が消失または減少し、その層内および/または界面において剥離を生じることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
前記分離層は照射される光を吸収し、分離層から気体が放出され、分離層を構成する物質の原子間または分子間の結合力が消失または減少し、分離に寄与することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
前記分離層において前記薄膜素子層と前記透光性基板との間を光照射して分離した後、洗浄、エッチングおよびアッシングののうち少なくとも一つの方法で付着した分離層を除去することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
前記光照射される光はレーザ光であり、レーザ発振の形態は、連続発振またはパルス発振の形態であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
前記光照射される光はレーザ光であり、前記レーザ光のビーム形状は、スポット照射又はライン照射のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
前記薄膜素子層は薄膜トランジスタ(TFT)、ダイオード、発光素子、光素子、各種検出素子、キャパシタ、抵抗、インダクタ、配線、電極および絶縁体のうち少なくとも一つによって構成されて一定の機能を発揮する薄膜回路または薄膜装置であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
前記分離層は気相成膜法、メッキ法、スピンコート塗布法、印刷法、転写法、インクジェットコーティング法、及び粉末ジェット法のうち少なくとも一つの方法で形成されたことを特徴とする請求項17又は18に記載の半導体装置。
前記薄膜素子層は、シリコン層の堆積、結晶化、パターニング、絶縁膜の形成、イオン注入、熱処理および配線・電極形成のうち少なくとも一つの製造プロセスを用いて形成されたことを特徴とする請求項17乃至19のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記分離層は照射される光を吸収し、分離層を構成する物質の原子間または分子間の結合力が消失または減少し、その層内および/または界面において剥離を生じることを特徴とする請求項17乃至22のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記分離層は照射される光を吸収し、分離層から気体が放出され、分離層を構成する物質の原子間または分子間の結合力が消失または減少し、分離に寄与することを特徴とする請求項17乃至23のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記分離層において前記薄膜素子層と前記透光性基板との間を光照射して分離した後、洗浄、エッチングおよびアッシングののうち少なくとも一つの方法で付着した分離層を除去することを特徴とする請求項17乃至25のいずれか一項に記載の半導体装置。
前記薄膜素子層は薄膜トランジスタ(TFT)、ダイオード、発光素子、光素子、各種検出素子、キャパシタ、抵抗、インダクタ、配線、電極および絶縁体のうち少なくとも一つによって構成されて一定の機能を発揮する薄膜回路または薄膜装置であることを特徴とする請求項17乃至29のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施例では、可撓性基板を用いた電気光学装置などの電子機器の製造工程にお
いて剥離転写法によってTFT(薄膜トランジスタ)回路などが形成された薄膜素子層を
可撓性基板に転写する。この際に、取り扱い難い可撓性基板に機械強度の高い支持基板(
あるいは固定具)を貼り合わせて支持することによって工程中における可撓性基板の撓み
などを回避し、剥離転写の精度向上や剥離薄膜の取り扱いの容易化を図る。
【0035】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例の薄膜デバイスの供給体を示している。同図に示すよう
に、この実施例の薄膜デバイスの供給体は、支持基板10の片面(上面)に第1の仮固定
用接着層20を介して薄膜デバイス30を形成している。
【0036】
支持基板10は薄膜デバイスを安定に載置するものであり、石英ガラスの他、ソーダガ
ラス、コーニング7059(商品名)、日本電気硝子OA−2(商品名)等の耐熱性ガラ
ス等のガラスや、シリコンウェハー等が使用される。これ等基板は硬質で形状安定性に優
れた特徴を有する。
【0037】
支持基板10は、その裏面9側から仮固定接着層20に光エネルギ(あるいは熱)を付
与するために、透光性の基板であることが望ましい。
【0038】
仮固定用接着層20は、光照射または加熱によって接着力を著しく減少または消失する
特徴を有することが望ましい。
【0039】
仮固定用接着層20の性状としては、液状やペースト状の前駆体を熱硬化、光硬化等の
手段を用いて硬化させることによって接着力を発揮するものを用いることができる。粘着
シートのように粘着力によって薄膜デバイスを支持基板に固定するものであってもよい。
【0040】
この仮固定用接着層20は種々の形成目的で形成される。例えば、製造時または使用時
において後述の薄膜素子(あるいは薄膜素子層)35を物理的または化学的に保護する保
護膜、導電層、照射光70の遮光層または反射層、薄膜素子35へのまたは薄膜素子35
からの成分の移行を阻止するバリア層としての機能のうち、少なくとも1つを発揮するも
のが挙げられる。
【0041】
薄膜デバイス30は、薄膜トランジスタ(TFT)、ダイオード、発光素子、光素子、
各種検出素子、キャパシタ、抵抗、インダクタ、配線、電極、絶縁体、等によって構成さ
れて一定の機能を発揮する薄膜回路や薄膜装置、既述の薄膜素子単体などが該当する。
【0042】
このような構成とすることによって、所要の物理的・機械的強度を有する支持基板10
を介して薄膜デバイス30を間接的に取り扱うことが可能となる。
【0043】
薄膜デバイス30は、例えば、支持基板10に載置された状態で図示しない転写対象体
(転写先基板)に永久接着剤で接着された後に、レーザ光照射などによって転写対象領域
の仮固定接着層20の接着力を消滅させることによって支持基板10から剥離され、転写
対象体に移動(剥離転写)可能となる。
【0044】
(実施例2)
図2は、本発明の第2の実施例を示している。同図において
図1と対応する部分には同
一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
【0045】
この実施例の薄膜デバイスの供給体では、支持基板10は第1の剥離層15を有してい
る。この剥離層15の上面(支持基板10に接していない面)に仮固定用接着層20を介
して薄膜デバイス30が形成されている。すなわち、支持基板10と薄膜デバイス30間
には剥離層15及び仮固定用接着層20が介在している。後述のように、剥離層15とし
ては非晶質シリコン層などを使用することが可能である。剥離層15は、例えば、レーザ
光によってエネルギを付与されると、原子、分子間の結合力を失う。その結果、剥離層1
5内、剥離層15と支持基板10との界面16、剥離層15と仮皇帝用接着層20との界
面14等に剥離(破壊)が生じる。
【0046】
このような、仮固定用接着層20に加えて剥離層15を支持基板10と薄膜デバイス3
0間に介在させる構成によれば、仮固定用接着層20の接着力の制御が困難で仮固定用接
着層20で薄膜デバイスを支持基板10から取り外す(剥離転写)ことが困難であるとき
に、剥離層15も薄膜デバイスの取り外しに利用することができ、薄膜デバイスの移動が
容易となる。
【0047】
(実施例3)
図3は、本発明の第3の実施例を示している。同図において
図1と対応する部分には同
一符号を付し、かかる部分の説明は省略する。
【0048】
この実施例の薄膜デバイスの供給体では、薄膜デバイス30は剥離層15及び仮固定用
接着層20を介して支持基板に固定されている。そして、薄膜デバイス30はフレキシブ
ル基板25及びその上に形成された薄膜素子層35等によって構成されている。薄膜デバ
イス30は図示しない接着層(後述の永久接着層34(
図4参照))を介してフレキシブ
ル基板25に接合される。すなわち、薄膜デバイスの供給体は、支持基板10、剥離層1
5、仮固定用接着層20、フレキシブル基板25、(永久接着層34)及び薄膜素子層3
5を積層して構成されている。
【0049】
フレキシブル基板25としては機械的特性として可撓性、弾性を有するものである。好
ましくはある程度の剛性(強度)を有することが望ましい。このように可撓性を有するフレ
キシブル基板25を利用すれば、剛性の高いガラス基板等のものでは得られないような優
れた特性が実現可能である。
【0050】
このようなフレキシブル基板25の材料としては各種合成樹脂が好ましい。合成樹脂と
しては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロ
ピレン、エチレンープロピレン共重合体、エチレンー酢酸ビニル共重合体(EVA)等の
ポリオレフィン環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビ
ニレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーネート、
ポリー(4―メチルベンテンー1)、アイオノマー、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリ
レート、アクリルースチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエンースチレン共重合体、ポリ
オ共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフ
タレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、
ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール
(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、
芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリ
デン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウ
レタン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキ
シ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン
樹脂、ポリウレタン等、またはこれらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例え
ば、2層以上の積層体として)用いることができる。
また、このフレキシブル基板25は透光性を有していることが望ましい。
【0051】
また、フレキシブル基板25の厚みはフレキシブル基板25、永久接着層33の強度、
薄膜素子35の厚みに選択されるが、例えば、20μm〜500μm程度にすることが好
ましい。
【0052】
(実施例4)
次に、本発明の薄膜デバイスの供給体の製造方法について、
図4(a)乃至同図(e−
3)を参照して説明する。
【0053】
まず、
図4(a)に示すように、例えば、1000℃程度に耐える石英ガラスなどの透
光性耐熱基板を製造元基板27とする。
【0054】
製造元基板27には、石英ガラスの他、ソーダガラス、コーニング7059(商品名)
、日本電気硝子OA−2(商品名)等の耐熱性ガラス等を使用可能である。製造元基板2
7の厚さには大きな制限要素はないが、0.1mm〜0.5mm程度であることが好まし
く、0.5mmから1.5mmであることがより好ましい。製造元基板27の厚さが薄す
ぎると強度の低下を招き、逆に厚すぎると製造元基板27の透過率が低い場合に照射光の
減衰を招く。ただし、製造元基板27の照射光の透過率が高い場合には、上記上限値を越
えてその厚みを厚くすることができる。
【0055】
この製造元基板27上に剥離層28が形成される。剥離層28は、例えば、CVD法に
よって非晶質シリコン層を製造元基板27上に堆積することによって形成される。
【0056】
この剥離層の上に薄膜素子層35が形成される。薄膜素子層35は、シリコン層の堆積
、結晶化、パターニング、絶縁膜の形成、イオン注入、熱処理、配線・電極形成等の知ら
れている薄膜半導体装置の製造プロセスを用いて形成される。
【0057】
この薄膜素子層35の上に第1の仮固定用接着層40を形成する。仮固定用接着層40
を構成する接着層の好適な例としては、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化
型接着剤等の光硬化型接着剤、嫌気硬化型接着剤等の各種硬化型接着剤が挙げられる。接
着剤の組成としては、例えば、エポキシ系、アクリレート系、シリコーン系等いかなるも
のでも良い。また、仮固定用接着層40は粘着シートのようなものでも良い。
【0058】
また、仮固定用接着層40は、光照射または加熱を施されることにより、仮固定用接着
層40の接着力を著しく減少または消失することが望ましい。または、仮固定用接着層4
0に溶解性の接着剤を使用した場合には水中に浸すことにより仮固定用接着層40のみを
溶解させることができ物であることが望ましい。水溶性接着剤を使用した場合には水中に
浸すことにより仮固定用接着層40のみを溶解させることができる。
【0059】
次に、上述した仮固定用接着層40の上に剥離層45を表面に形成した仮固定用基板5
0を貼り合わせる。仮固定用基板50は既述した支持基板10と同様の材質のガラス等の
基板が使用される。剥離層45は図示しない剥離層15と同様の別途工程によって仮固定
用基板50上に形成される。
【0060】
次に、
図4(b)に示すように、製造元基板27側から光照射70を行って剥離層28
と薄膜素子層35との間で剥離を生じさせる。図示の例では、剥離層28の界面26と薄
膜素子35の界面34との間で剥離が生じている。なお、薄膜素子層35の下地には予め
保護層を形成しておくことができる。
【0061】
図4(c)に示すように、薄膜素子層35の剥離面34に永久接着層33を塗布してフ
レキシブル基板25を接着する。
【0062】
次に、
図4(d)に示すように、フレキシブル基板25に第2の仮固定用接着層20を
塗布して支持基板10を貼り合わせる。なお、支持基板10には予め剥離層15(
図3参
照)を形成しておくことができる。
【0063】
このようにして、支持基板10上に、仮固定用接着層20、フレキシブル基板25、永
久接着層33、薄膜素子層35、仮固定用接着層40、剥離層45及び仮固定用基板50
が積層された中間構造体が得られる。ここで、中間構造体の支持基板10乃至薄膜素子層
35が
図1、
図2及び
図3に示した薄膜デバイスの供給体に対応する部分となっている。
【0064】
次に、上記中間構造体から薄膜デバイス供給体部分を分離する。
図4(e−1)乃至同
図(e−3)は、それぞれ分離の態様を示している。
【0065】
図4(e−1)は、第1の分離態様を示している。この例では、仮固定基板50の上方
から、レーザなどの高エネルギーを有する照射光70を仮固定用接着層40に与えている
。それにより、仮固定用接着層40の結合力を消滅させて中間構造体から支持基板10乃
至薄膜素子層35からなる薄膜デバイスの供給体を分離させ、薄膜デバイスの供給体を得
ている。
【0066】
図4(e−2)は、第2の分離態様を示している。この例では、仮固定基板50の上方
から、レーザなどの高エネルギーを有する照射光70を剥離層45に与えている。それに
より、剥離層45の結合力を消滅させて中間構造体から支持基板10乃至仮固定接着層4
0からなる薄膜デバイスの供給体を分離させ、薄膜デバイスの供給体を得ている。
【0067】
図4(e−3)は、第3の分離態様を示している。この例では、仮固定用接着層40を
溶媒に溶ける溶解性の接着剤、好ましくは水溶性の接着剤で構成しておき、溶媒によって
仮固定用接着層40を除去する。それにより、中間構造体から支持基板10乃至薄膜素子
層35からなる薄膜デバイスの供給体を分離させ、薄膜デバイスの供給体を得ている。
【0068】
このようにして、薄膜デバイスの供給体が製造されるが、本発明の薄膜デバイスの供給
体は上述の製造方法によって製造された物に限定されるものではない。
【0069】
上述した製造行程における要素技術について説明を補足する。
剥離層15、28及び45は照射光70を吸収し、それにより、隣接層との境界面ある
いは剥離層中に剥離を生じるような性質を有するものが望ましい。
【0070】
また、照射光70の照射によって、剥離層15、28及び45に含有される気体が放出
され、放出された気体が界面に空隙を生ぜしめることにより、各剥離層の形状変化をもた
らすようにすることもできる。この場合、照射光70の照射回数および/または気体元素
の含有量により、照射光70を照射した後の剥離層15、28及び45の粗さを制御する
ことが可能である。
【0071】
このような剥離層15、28及び45の組成としては例えば非晶質シリコンが挙げられ
る。上記気体元素としては後述のように水素が挙げられる。
【0072】
非晶質シリコンは、レーザなどの高エネルギーを有する光の照射により瞬間的に溶融し
、再び凝固する際にポリシリコンに変化する。非晶質シリコンが結晶化する際、結晶粒界
が形成されるため、剥離層15、28及び45には結晶粒界に起因する起伏が生じる。さ
らに結晶化した剥離層15、28及び45に対して繰り返し照射光70を照射した場合、
結晶粒界と結晶粒内では溶融・凝固の形態が異なるため、剥離層15、28及び45の粗
さは増大する。
【0073】
また、この非晶質シリコンには水素が含有されていても良い。この場合、水素の含有量
は2at%以上程度であることが好ましく、2〜20at%程度であるのがより好ましい
。このように水素が所定量含有されていると、照射光の照射により水素が放出され、放出
された水素が界面に空隙を生ぜしめ、剥離層15、28及び45に起伏を形成する。更に
、照射光を繰り返し照射した場合、含有される水素が徐々に放出され、界面の粗さが増大
する場合がる。この場合水素含有量に応じた回数の照射を受けることで、水素が完全に放
出されると、その後は照射光を繰り返し照射しても変化は生じない。
【0074】
また、剥離層15、28及び45の組成として、例えばポリシリコンを挙げることもで
きる。
【0075】
ポリシリコンは上記非晶質シリコンを同様に、高エネルギーを有する光の照射により瞬
間的に溶融し再び凝固する。このとき、結晶粒界と結晶粒内では溶融・凝固の形態が異な
るため、照射光70を繰り返し照射することにより剥離層15、28及び45の粗さを増
大せしめることができる。
【0076】
剥離層15、28及び45の組成としてポリシリコンを採用することの利点は、非晶質
シリコンがポリシリコンに相転移する境界温度をTthとしたとき、上記TmaxをTth以上
の温度に設定することができる点である。換言すれば、薄膜素子層35を形成する際のプ
ロセス温度の幅を広げることができる。
【0077】
例えば、薄膜素子35として薄膜トランジスタを形成する場合、形成方法として低温プ
ロセスのみならず高温プロセスを適用することが可能となる。
【0078】
剥離層15、28及び45の厚さは、各剥離層の組成、層構成、形成方法等の諸条件に
より異なるが、照射光70を吸収するのに十分な厚さを有することが望ましい。各剥離層
の厚さが小さすぎると、各剥離層で吸収されずに透過した照射光70が薄膜素子層35に
損傷を与える場合がある。また、各剥離層の膜厚が大きすぎると剥離層界面にまで光エネ
ルギが伝わらず、照射光を照射しても界面には何ら変化をもたらさない場合がある。
【0079】
例えば、剥離層が非晶質でシリコンであり、照射光がエキシマレーザXeCl(波長3
08nm)である場合、剥離層15、28及び45の厚さは25nm以上であること好ま
しく、50〜200nmであることがより好ましい。
【0080】
剥離層15、28及び45は、照射光70が各剥離層を透過して薄膜素子35に到達し
、該薄膜素子35に影響を及ぼすことを防ぐ目的で、遮光層及び/または反射層を含んで
いてもよい。
【0081】
照射光70の光源としては、レーザ光が好適に用いられる。レーザ光の種類は、ルビー
レーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ、He−Neレーザ、CO2レーザ
、エキシマレーザ等の気体レーザ、ZnS、GaAs、GaP、GaAlAs等を発光源
として用いた半導体レーザ等、いかなる種類のものであっても構わない。特に、エキシマ
レーザ、YAGレーザ、CO2レーザは高出力で均一なエネルギー密度分布を得易いため
に好ましい。
【0082】
また、レーザ発振の形態は、連続発振、パルス発振のいずれの形態でも構わず、更にビ
ーム形状に関しても、スポット照射、ライン照射等いかなる形状でも構わない。
【0083】
製造元基板27、剥離層15、剥離層28、剥離層45、薄膜素子35の組成および特
性に応じて、照射光70の光源としてハロゲンランプなどから発せられる可視光、赤外線
、紫外線、マイクロ波等を用いることもできる。
【0084】
(実施例5)
図5は、本発明の実施例に係る薄膜デバイスの供給体の他の製造方法を示している。こ
の製造方法では、上述した製造工程(
図4参照)に加えて薄膜デバイス30を支持基板1
0、仮固定基板50、製造元基板27の少なくとも1つに固定した状態で複数の領域に分
割する工程を更に含んでいる。
図5では、薄膜デバイス30を支持基板10に固定したも
のを分割する例で示している。薄膜デバイス30を複数の領域に分割する工程は、例えば
、製造元基板27の表面に製造された薄膜素子層35の複数の領域の境界部60に溝部6
1を形成する工程と、フレキシブル基板25を、上記複数の領域の境界部において分割す
る工程を含んで実施される。
【0085】
支持基板10等に薄膜デバイス30を固定することによって、薄膜デバイスの分割及び
分割した薄膜デバイスの取り扱いが容易となる。
【0086】
図6は、上記薄膜デバイスの供給体の製造方法の分割を更に説明するものである。上記
フレキシブル基板25の分割に際し、フレキシブル基板25の分割のための該基板25の
被加工領域60aの幅は、上記薄膜素子層35の複数の領域の境界部60に形成された溝
部61の幅よりも小さく設定される。
【0087】
本発明は、薄膜素子の転写により薄膜デバイスを製造する方法に係わっており、特に、
改良形状不安定性を持つフレキシブル薄膜デバイスを大量に製造する際に有利な製造方法
に関するものである。様々な電子デバイスが薄膜化またはフレキシブル化していくなかで
この発明は様々な分野の薄膜デバイスを製造する際に使用される。また、薄膜デバイスは
後述の電気光学装置及び電子機器等に使用される。
【0088】
(実施例6)
以下、各図を参照して本発明の第6の実施例について説明する。
本実施形態では、被転写層を最終転写体に一回転写する場合を半導体装置の製造方法を
例に採り説明する。ここで、最終転写体とは、最終的に半導体装置を構成することになる
転写体をいう。
【0089】
図7は、第一の実施形態の被転写層の転写方法の一例を説明するための図である。
図7(A)に示すように、基板110の一方の面に第1分離層112を介して被転写層
114を形成する。
【0090】
まず、基板110上に第1分離層112を形成する。
基板110は、例えば、後の工程で照射される照射光123を透過し得る透光性を有す
る材料から構成されることが好ましい。また、基板110は、第1分離層112及び被転
写層114を形成する際の最高温度をTmaxとしたときに、歪点がTmax以上の材料で構成さ
れていることが好ましい。
【0091】
第1分離層112は、照射される光(例:照射光123)を吸収し、その層内および/
または界面において剥離(以下、「層内剥離」、「界面剥離」と言う)を生じるような性
質を有するものであり、好ましくは、光の照射により、第1分離層112を構成する物質
の原子間または分子間の結合力が消失または減少すること、すなわち、アブレーションが
生じて層内剥離および/または界面剥離に至るものがよい。
【0092】
さらに、光の照射により、第1分離層112から気体が放出され、分離効果が発現され
る場合もある。すなわち、第1分離層112に含有されていた成分が気体となって放出さ
れる場合と、第1分離層112が光を吸収して一瞬気体になり、その蒸気が放出され、分
離に寄与する場合とがある。
【0093】
このような第1分離層112としては、例えば、非晶質シリコン(a−Si)が挙げら
れる。また、第1分離層112は多層膜から構成されていてもよい。多層膜は、例えば非
晶質シリコン膜とその上に形成されたAl等の金属膜とからなるものとすることができる
。その他、上記性状を有するセラミックス,金属,有機高分子材料などを用いることも可
能である。
【0094】
第1分離層112の形成方法は、特に限定されず、膜組成や膜厚等の諸条件に応じて適
宜選択される。たとえば、CVD、スパッタリング等の各種気相成膜法、各種メッキ法、
スピンコート等の塗布法、各種印刷法、転写法、インクジェットコーティング法、粉末ジ
ェット法等が挙げられ、これらのうちの2以上を組み合わせて形成することもできる。
【0095】
なお、
図7(A)には示されないが、基板110及び第1分離層12の性状に応じて、
両者の密着性の向上等を目的とした中間層を基板110と第1分離層112の間に設けて
も良い。この中間層は、例えば製造時または使用時において被転写層を物理的または化学
的に保護する保護層、絶縁層、被転写層へのまたは被転写層からの成分の移行(マイグレ
ーション)を阻止するバリア層、反射層としての機能のうち少なくとも一つを発揮するも
のである。
【0096】
次に、第1分離層112上に、被転写層としての薄膜デバイス(例:薄膜トランジスタ
)114を形成する。また、この際必要に応じて、外部との電気的接続に必要な接続端子
、配線等を形成する。
【0097】
次に、
図7(B)に示すように、薄膜デバイス114上に接着層130を介して最終的
に半導体装置を構成することになる最終転写体32を接合する。
【0098】
本発明で用いられる、最終転写体132は、柔軟性又は可撓性を有するものである。こ
のような最終転写体132は、基板であっても、シート又はフィルムであってもよく、構
成する材料も特に限定されない。最終転写体132を構成する材料としては、樹脂であっ
てもガラス材料であってもよい。
【0099】
接着層130を構成する接着剤としては永久接着剤が用いられ、その好適な例としては
、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、光硬化型接着剤(例:紫外線硬化型接着剤)、嫌
気硬化型接着剤等が挙げられる。接着剤の組成は、エポキシ系、アクリレート系、シリコ
ーン系のいずれであってもよい。
【0100】
次に、
図7(C)に示すように、最終転写体132の強度を補強するための固定具13
6を、仮固定用の接着層134を介して最終転写体32に接合する。
【0101】
固定具136は、後の工程で最終転写体32と基板110とを分離容易とするためのも
のである。固定具136としては、最終転写体32の強度を補強し得るものであれば特に
限定されるものではなく、例えば、ガラス又は樹脂等からなる剛性のある基板等が用いら
れる。
また、作業台等を固定具36として利用してもよく、直接作業台等に固定するものであっ
てもよい。固定具136を固定するための接着層134を構成する材料としては、後に除
去可能なものであることを要する。このような接着剤としては、特定の光により脆化する
接着剤、特定溶剤に溶解する接着剤等が挙げられる。具体的には、例えば、アクリル樹脂
系の水溶性接着剤が用いられる。
【0102】
なお、ここで固定具136は、接着層134を介して接合したが、他の方法によるもの
であってもよい。具体的には、例えば、真空吸着により固定するものであってもよい。
【0103】
次に、
図7(D)及び
図7(E)に示すように、基板110の裏面111側から第1分
離層112に光123を照射することにより、基板110を被転写層114から分離する
。この照射光123は、基板110を透過し、第1分離層112に照射される。これによ
り、第1分離層112に層内剥離及び/又は界面剥離が生じる。第1分離層112の層内
剥離及び/又は界面剥離が生じる原理は、第1分離層112の構成材料にアブレーション
が生じること、また、第1分離層112に含まれるガスの放出、さらには照射直後に生じ
る溶融、蒸散等の相変化によるものであると推定される。
【0104】
ここで、アブレーションとは、照射光を吸収した固定材料(第1分離層112の構成材
料)が光化学的または熱的に励起され、その表面や内部の原子または分子の結合が切断さ
れて放出することをいい、主に、第1分離層112の構成材料の全部または一部が溶融、
蒸散(気化)等の相変化を生じる現象として現れる。また、前記相変化によって微小な発
泡状態となり、結合力が低下することもある。
【0105】
照射光23の光源としては、例えば、X線、紫外線、可視光、赤外線、レーザ光、ミリ
波、マイクロ波、電子線、放射線等のいかなるものであってもよい。このような中でも、
アブレーションを生じさせ易いという観点から、レーザ光が好適に用いられる。レーザ光
の種類は、気体レーザ、固体レーザ(半導体レーザ)等のいずれでもよく、中でも、エキ
シマレーザ、Nd−YAGレーザ、Arレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Ne
レーザ等が好ましく、さらにエキシマレーザが好ましい。
【0106】
次に、
図7(E)に示すように、基板110と最終転写体132を分離する。例えば基
板110と最終転写体132に、双方を離間させる方向に力を加えることによって、基板
110を最終転写体132から取り外す。前記光照射によって、転写すべき被転写層11
4と基板110とを接合する強度は弱まっているため、容易に剥離転写がなされる。
【0107】
なお、
図7(E)においては、第1分離層112が基板110側に付着する場合を示し
たが、第1分離層112内又は第1分離層112と基板110との間で剥離が生じる場合
もある。この場合には、被転写層114に第1分離層112が付着して残るが、この被転
写層114に付着した第1分離層112は、洗浄、エッチング、アッシング等により除去
することが可能である。
【0108】
次に、
図7(F)に示すように、接着層134を除去することにより、固定具136を
取り外す。接着層134が水溶性接着剤から構成される場合には、水洗等により除去する
ことが可能である。このように接着層134を洗い流すことにより、固定具136を分離
することが可能となる。このようにして、柔軟性又は可撓性を有する最終転写体132に
被転写層114が設けられた半導体装置を得ることが可能となる。
【0109】
なお、接着層134が、水溶性接着剤以外の材料から構成されている場合、例えば、光
照射等により分解可能な接着剤から構成されている場合には、適当な光を照射することに
より接着層134を除去することが可能となる。
【0110】
本実施形態によれば、柔軟性又は可撓性を有する最終転写体132を固定具136によ
り固定することにより、基板110を最終転写体132側から取除く際に、基板110と
最終転写体132に一様の力をかけることが可能となるので、容易に基板110と最終転
写体132とを分離することが可能となる。このように、本実施形態によれば、固定具1
36を装着するという簡便な方法により、剥離転写を容易にすることが可能となるので、
生産性を向上することが可能となり、得られる半導体装置のコスト低減にも寄与すること
が可能となる。
【0111】
なお、上記例において、固定具136は光照射前に取付けたが、固定具136は基板1
10を最終転写体132から分離する際に取付けていればよく、固定具136を取付ける
順序は特に限定されない。
【0112】
(実施例7)
本実施形態では、被転写層を一時的に一次転写体に転写した後、さらに最終的な製品を
構成することになる最終転写体(二次転写体)へ二回転写する場合を例に採り説明する。
図8及び
図9は、第二の実施形態の被転写層の転写方法を説明するための図である。な
お、
図8及び
図9において、
図7と同じ要素については、同一符号を付してその説明を省
略する。
【0113】
図8(A)に示すように、基板110の一方の面に第1分離層112を介して被転写層
114を形成する。次に、
図8(B)に示すように、被転写層114上に、接着層116
及び第2分離層118を介して、一次転写体120を接合する。一次転写体120として
は、特に限定するものではないが、ガラス、樹脂等の基板が用いられる。接着層116は
、第2分離層118と被転写層114を接着させるために使用されるものであり、また、
後に一次転写体120を剥離する際に除去容易なものであることが好ましい。このような
接着層116を構成する接着剤としては、例えば、アクリル樹脂系の水溶性接着剤が用い
られる。また、第2分離層118としては、第1分離層112と同様のものが用いられる
。
【0114】
次に、
図8(C)に示すように、基板110の裏面側111から第1分離層112に照
射光123を照射して、第1分離層112に層内剥離及び/又は界面剥離を生じさせる。
その後、一次転写体120側と基板110側に、双方を離間させる方向に力を加えること
によって、基板110を一次転写体120から取り外し、被転写層114を一次転写体1
20側に転写する。
次に、
図8(D)に示すように、被転写層114の基板110を除去した側の面に、柔
軟性又は可撓性を有する二次転写体126を接着層124を介して接合する。
【0115】
次に、
図9(A)に示すように、二次転写体126に、二次転写体126の強度を補強
するために、固定具136を仮固定用の接着層134を介して接合する。
次に、
図9(B)及び
図9(C)に示すように、一次転写体120側から第2分離層1
18に照射光131を照射し、一次転写体120を接着層116が付着した被転写層11
4から剥離する。
【0116】
次に、
図9(D)に示すように、接着層116、接着層134及び固定具136を除去
する。接着層116及び接着層134が水溶性接着剤から構成される場合には、水洗等に
より除去することが可能である。また、接着層134を洗い流すことにより、固定具13
6を取り外すことが可能となる。このようにして、半導体装置を得ることが可能となる。
なお、接着層116及び接着層128が、水溶性接着剤以外の材料から構成されている
場合、例えば、光照射等により分解可能な接着剤から構成されている場合には、適当な光
を照射することにより接着層116及び接着層134を除去することが可能となる。
【0117】
本実施形態のように、固定具136を用いることで、一次転写体120及び二次転写体
132に二回転写を行う場合にも、一次転写体120側と二次転写体132側に一様の力
をかけることができるので、容易に引き離すことが可能となる。よって、作業性が向上す
るので、生産効率を上げることが可能となり、半導体装置のコストを削減することが可能
となる。
【0118】
また、上記例においては、二次転写体132が柔軟性又は可撓性を有する材料で構成す
る場合について説明したが、一次転写体120及び二次転写体132の双方が柔軟性又は
可撓性を有する材料で構成されている場合にも本発明の方法は利用し得る。柔軟性又は可
撓性を有する一次転写体120と二次転写体132とを分離する際に、固定具136を一
次転写体120と二次転写体132の双方に取付けることにより、一次転写体120及び
二次転写体132を容易に引き離すことが可能となる。
【0119】
(電気光学装置及び電子機器)
上記方法により製造された半導体装置は、電気光学装置又は電子機器等に好適に用いら
れる。本発明の電気光学装置及び電子機器の具体例を
図10及び
図11を参照しながら説
明する。
図10及び
図11は、電気光学装置600(例:有機EL表示装置)を含んで構
成される各種電子機器の例を示す図である。
【0120】
図11(A)は携帯電話への適用例であり、当該携帯電話830はアンテナ部831、
音声出力部832、音声入力部833、操作部834、および本発明の電気光学装置60
0を備えている。
図10(B)はビデオカメラへの適用例であり、当該ビデオカメラ84
0は受像部841、操作部842、音声入力部843、および電気光学装置600を備え
ている。
図10(C)は携帯型パーソナルコンピュータ(いわゆるPDA)への適用例で
あり、当該コンピュータ850はカメラ部851、操作部852、および電気光学装置6
00を備えている。
図10(D)はヘッドマウントディスプレイへの適用例であり、当該
ヘッドマウントディスプレイ860はバンド861、光学系収納部862および電気光学
装置600を備えている。
【0121】
図11(A)はテレビジョンへの適用例であり、当該テレビジョン900は電気光学装
置600を備えている。なお、パーソナルコンピュータ等に用いられるモニタ装置に対し
ても同様に電気光学装置600を適用し得る。
図11(B)はロールアップ式テレビジョ
ンへの適用例であり、当該ロールアップ式テレビジョン910は電気光学装置600を備
えている。
【0122】
なお、上記例では、電気光学装置の一例として有機EL表示装置を挙げたが、これに限
定されるものではなく、他の種々の電気光学素子(例えば、プラズマ発光素子、電気泳動
素子、液晶素子など)を用いて構成される電気光学装置の製造方法に適用することも可能
である。また、本発明の適用範囲は、電気光学装置及びその製造方法に限定されるもので
もなく、転写技術を用いて形成される各種装置に広く適用することが可能である。また、
電気光学装置は、上述した例に限らず、例えば、表示機能付きファックス装置、デジタル
カメラのファインダ、携帯型TV、電子手帳など各種の電子機器に適用可能である。