【実施例】
【0017】
製造例1
攪拌器及び温度計を備えた容量2000mlの四ツ口フラスコに、テトラヒドロフラン200ml及びリチウムジイソプロピルアミド溶液1300ml(約2.0mol/l、約2.6mol)を仕込み、アルゴン雰囲気下−70℃に冷却した。攪拌下、シクロヘキサンカルボン酸メチル(100.3g、0.691mol)とテトラヒドロフラン100mlの混合液を、反応混合物の温度を−70℃以下に保ちながら、1時間30分にわたり滴下し、−70℃以下の温度で約2時間30分攪拌した。引き続いて、得られた反応液にクロル炭酸メチル(100.0g、1.04mol)とテトラヒドロフラン250mlの混合液を同じ温度で3時間にわたり滴下し、−78℃〜室温にて終夜反応させた。その後、減圧下に反応容器中の溶媒を留去し、残渣を飽和塩化アンモニウム水溶液1000ml中に投入し、酢酸エチルにて抽出し、有機層を水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤を濾別後、溶媒を減圧下に留去し、反応混合物215.4gを得た。続いて、別の3000mlの4ツ口フラスコに、テトラヒドロフラン900mlと水素化リチウムアルミニウム溶液600ml(約2.0mol/l、約1.2mol)を仕込み、アルゴン雰囲気下、0℃に冷却し、攪拌下に、得られた反応混合物160.2gとテトラヒドロフラン400mlの混合液を、0℃以下に保ちながら、約2時間にわたって滴下し、0℃以下で撹拌しながら終夜放置した。その後、この反応液中に水を滴下、約6Nの塩酸で中和し、反応液から不溶塩を濾別後、減圧下に濃縮した。続いて残渣を水1000ml中に投入し、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤を濾別後、減圧下に溶媒を留去し、残渣をn−ヘキサン中に投入した。析出した結晶をn−ヘキサンによるデカンテーションを繰返して洗浄後、減圧下に乾燥させ20.8gの結晶性粉末を得た。この結晶性粉末は、NMRによる分析の結果、1,1−シクロヘキサンジメタノールであった(ガスグロマトグラフィーによる純度99.1%)。
【0018】
【化5】
【0019】
得られた1,1−シクロヘキサンジメタノールのNMR測定結果は以下の通りであった。
1H-NMR(CDCl
3、TMS、400MHz):δppm 1.34−1.36(m,4H),1.43−1.47(m,6H),2.54(s,2H),3.62(s,4H)
13C-NMR(CDCl
3、100MHz):δppm 21.4,26.5,29.6,38.3,70.4
【0020】
実施例1
攪拌器、圧力ゲージ、温度計、ガス導入管及びガスパージラインを備えた容量300mlのSUS製耐圧反応容器に、ジメチルスルホキシド102.2g、製造例1で得た純度99.1%の1,1−シクロヘキサンジメタノール15.2g(0.10mol)及び純度95.0%の水酸化カリウム2.14g(0.036mol)を仕込み、攪拌下に約60分間窒素ガスを流し、容器内を窒素にて置換した。次いで、反応容器を密封し、容器内にアセチレンガスを1.8kg/cm
2の圧力で圧入した。次いで、ゲージ圧力を1.8kg/cm
2に保ちながら徐々に昇温し、反応容器内温が100℃を越えないように制御し、約2時間30分反応させた。この間、逐次アセチレンガスを補充して反応容器内の圧力は常に1.8kg/cm
2に保った。反応終了後、残留するアセチレンガスをパージして、反応液118.8gを得た。この反応液のガスクロ分析の結果、1,1−シクロヘキサンジメタノールの転化は定量的に進行し、所望の1,1−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキサンの選択率は98.2%であった。
【0021】
次いで、上記反応液から反応溶媒を除き、減圧下(0.2kPa)に蒸留し、75℃〜76℃で留出した留分16.9gを集めた。この得られた留分は、NMRによる分析の結果、下記式で示される1,1−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキサンであった(ガスグロマトグラフィーによる純度98.9%、収率81.5%)。
【0022】
【化6】
【0023】
得られた1,1−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキサンのNMR測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3、TMS、400MHz):δppm 1.45(s,10H;e,f,g),3.57(s,4H;c),3.94(dd,2H,J=6.8,1.9Hz;Ha
1),4.17(dd,2H,J=14.3,1.9Hz;Ha
2),6.46(dd,2H,J=14.3,6.8Hz;Hb)
13C-NMR(CDCl
3、100MHz):δppm 21.4(e or f),26.2(g),29.8(e又はf),37.6(d),70.9(c),85.9(a),152.4(b)
【0024】
使用例1
実施例1で得た1,1−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキサンを用いて以下の通り重合させた。
重合開始剤およびルイス酸として、HCl/ZnCl
2を用い、シュレンク管に1,1−ビス[(エテニロキシ)メチル]シクロヘキサン溶液4.0mL、0.18%HCl溶液0.5mL、ZnCl
2溶液0.5mLをこの順に注射器で注入し重合を開始した。塩化メチレン中,−30℃、モノマー濃度0.15mol/L、HCl濃度5.0mmol/L、ZnCl
2濃度2.0mmol/Lで行った。重合は、20分で重合率100%に達し、重合系にアンモニア水を少量加えたメタノールを加えて停止した。
【0025】
重合を停止した溶液を分液ロートに移し、塩化メチレンで希釈し、塩化ナトリウム飽和水溶液で3回洗浄した。次いで有機層からエバポレーターにより溶媒を除去し、減圧乾燥して生成ポリマーを得た。
【0026】
このポリマーは、メタノールによりデカンテーションして更に精製した。得られたポリマーの数平均分子量:M
nは3800で、分子量分布:M
w/M
nは1.65であった。
【0027】
使用例1で得たジビニルエーテルホモポリマーをインク用原料に用いたところ、低臭気、低揮発性、低皮膚刺激性、および低毒性であり、さらにガラス転移温度が高いため、優れた性能を示した。
【0028】
使用例1で得たジビニルエーテルホモポリマーを電子材料用原料に用いたところ、低臭気、低揮発性、低皮膚刺激性、および低毒性であり、さらにガラス転移温度が高いため、優れた性能を示した。