【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上述の問題は独立請求項の主題によって解決される。好適な実施形態は従属請求項の主題である。
【0007】
本発明では導音管を、上記下ケース内に一体化するという基本的な考えに本発明は基づいている。その結果、導音管を実現するための個別の導音体を省略することが可能である。このため、従来のサイレンサに比べて、少なくとも一つの部品、つまり、導音体が省略される。したがって、同時に、本発明によるサイレンサでは、下ケースと導音体体との間の中空空間が省略され、これにより、本発明によるサイレンサでは、導音管の下ケースは、ラウドスピーカの帰還容積には寄与しない。このため、下ケースは非常にコンパクトに構成され、これは、常に制限される設置状況のおいて、特に、モーター車に、サイレンサを配置することを容易にする。
【0008】
実用的には、組み立て状態において、導音管と排ガスシステムの排ガス輸送部との機械的、かつ、音響的接続がコネクタを介して可能になり、この結果、特に、排ガスシステムの排出口から、上記サイレンサを離間して配置することが可能である。
【0009】
導音管は、特に、漏斗状に形成されている。その結果、導音管の断面は、音の伝播方向に沿って、ラウドスピーカ、または、ダイヤフラムから、コネクタに向かって細くなる。結果的に、比較的大きなラウドスピーカであって、対応する大きなダイヤフラムを有するラウドスピーカを、ハウジング内に組み付けることが可能であり、その結果、特に、低周波の音波を生成し、排ガス流の方向に出射することが可能である。
【0010】
有利な実施形態によれば、ラウドスピーカは下ケースに固定される。特に、この場合、下ケースに、ラウドスピーカを直接固定することが好ましい。実用的には、ラウドスピーカはケースを有し、このケースに、一方で、ダイヤフラムが保持され、他方で、ダイヤフラムを駆動するための電磁駆動部が支持されている。また、ラウドスピーカは、そのケースによって、下ケースに固定される。この場合、基本的に、任意の適切な固定手段が使用できる。実用的には、例えば、ねじ固定である。
【0011】
さらに、ラウドスピーカのみを下ケースに固定するのが有利であり、これにより、上ケースは、ラウドスピーカをハウジングに固定することにはまったく寄与しない。この場合、さらに他の有利な実施形態によれば、ラウドスピーカを、ハウジング内に、上ケースに対して非接触で配置することが可能である。このようにして、ラウドスピーカと、上ケースとの間の相互作用を避けることが可能である。
【0012】
そのため、同時に、上ケースの形状を、ラウドスピーカから充分独立して選択することが可能である。そのため、まず、上ケースによって囲まれている中空空間は、ラウドスピーカに充分な帰還容積が提供できるように、適切に寸法が決められれいる。さらに、この構成は、上ケースの形状を、各設置状況に形状的に適用することを促進する。このようにして、既存の設置空間がより良く利用される。
【0013】
他の有利な実施形態では、上ケースで、ラウドスピーカを下ケースに押圧することを提案している。つまり、この場合、まず、上ケースを下ケースに固定することによって、ラウドスピーカは下ケースに固定され、この場合、上ケースと下ケースは、ラウドスピーカをクランプ固定する。実用的には、上ケースの押え部がラウドスピーカの外リム、例えば、ラウドスピーカのケースの外リムに被さり、これを、下ケースの接触面に押圧する。上記押え部は環状の肩部であるか、または、周方向に分散配置された、複数の押え部を備えることが可能である。この場合、押え部は、実用的には、上ケースに一体的に形成されている。また、ここでは、ラウドスピーカは、クランプ固定部以外では、上ケースに接触せず、したがって、ここでは、また、上記の利点が実現する実施形態が好ましい。
【0014】
有利な実施形態によれば、上ケースは、少なくとも一つの圧力均等化開口を有することが可能で、この開口は、内部空間をハウジングの周辺部に接続する。このような圧力均等化開口によって、周囲と内部空間の間の静的な圧力差が等しくなる。このような、例えば、温度変化によって発生する圧力差は、ダイヤフラムの歪み、したがって、出射音の周波数に影響を与える。また、クリープ工程に基づいて、中立位置からのダイタフラムの歪みが継続すると、ダイヤフラムの変形が残ることにつながる可能性がある。圧力均等化開口を、下ケースに一体化することによって、同時に、下ケースの機能性が向上し、これは、上ケースにとって、可能な限り費用対効果の高い生産性を実現するのを容易にする。
【0015】
他の構成によれば、各圧力均等化開口は、ガス透過性で、かつ、液密のダイヤフラムで閉じることが可能である。このようなダイヤフラムによって、サイレンサの内部空間への水、例えば、水しぶきの浸入を充分に防止することが可能で、同時に、充分な圧力均等化が可能である。さらに、このようなダイヤフラムによって、内部空間で発生することがある凝縮物が蒸発することが可能である。
【0016】
特に、各ダイヤフラムは、下ケースの材料に埋め込み可能である。特に、下ケースはプラスチックで製造することが可能で、この場合、射出成形が好ましい。下ケースの射出成形では、各ダイヤフラムは、形成すべき開口部分において、各射出モールド内に予め配置することが可能で、このため、下ケースは各ダイヤフラムに射出成形され、その後、ダイヤフラムは、リム側で下ケースの材料に埋め込まれる。このため、同時に、下ケースの機能性が向上し、例えば、ダイヤフラムで形成されたしぶき防止部が、下ケース内に一体化される。
【0017】
これに加えて、さらに他の実施形態では、下ケースはケーブル接続部を備えることが可能であり、ケーブル接続部を介して、ラウドスピーカは駆動可能である。また、これによって、下ケースの機能性が向上し、この結果、同時に、上ケースの費用対効果の高い生産性の可能性が向上する。このようなケーブル接続部は、最も簡単な場合、ケーブル挿通部として形成することが可能で、これを通して、ラウドスピーカを駆動するための対応するケーブルを、下ケースを通して挿通することが可能である。さらに、ケーブル接続部を、コネクタ部、または、ソケット部として形成することが可能で、これは電気接点を有し、この電気接点は、サイレンサの内部空間で、内部ケーブルを介して、ラウドスピーカの対応する接点に接続される。ソケット部、または、コネクタ部には、外部ケーブルの相補的部品が接続可能である。各ケーブル接続部は、この場合、下ケース内に一体的に形成される。ケーブル接続部を実現するために、例えば、電気接点、ソケット部品、コネクタ部品等の個別部品が必要な場合、これらの部品は、下ケースの材料でオーバーモールドするか、または、中に埋め込むことが可能である。
【0018】
下ケースとして、プラスチック部品を用いるのが好ましく、これは、特に有利な実施形態によれば、強化プラスチックで製造することが可能である。プラスチックは、この場合、繊維で補強することが可能で、ガラス繊維による補強が好ましい。プラスチックは、また、短繊維による補強が可能で、短ガラス繊維による補強が好ましい。このような短繊維による補強は、プラスチックによる、下ケースの射出成形に適している。強化プラスチックを利用することによって、下ケースは比較的高い安定性を有している。さらに、これによって、下ケースは、また、特に、高い耐熱性を有している。このため、下ケースは、特別な方法で、サイレンサのできる限り多くの部品を一体化するか、または、取り付けるのに適している。さらに、そのため、下ケースは、高温の排ガスラインに面した側に、より良く取り付けられる。また、下ケースはコネクタを備えており、このコネクタを介して、サイレンサを、排ガスシステムの排ガス輸送部に音響的に接続することが可能である。
【0019】
サイレンサが排ガスシステムに取り付けられた取り付け状態で、上ケースは、排ガスシステムの排ガス輸送部に接触することなく、コネクタに取り付けられている。特に、この場合、上ケースは、下ケースの、排ガス輸送部から離間した側に位置している。これにより、上ケースは、比較的費用対効果の高いプラスチックで製造することが可能である。また、下ケースは、間接的、つまり、コネクタを介して、排ガス輸送部に接続されているので、下ケースも、サイレンサの組み立て状態において、排ガスシステムの排ガス輸送部に、直接接触することなく配置することが可能である。
【0020】
他の有利な実施形態によれば、ラウドスピーカと上ケースは、同じ組み立て方向において、下ケースに取り付けることが可能である。これによって、組み立て位置が近接しやすくなり、これは、サイレンサの製造を容易にする。
【0021】
さらに他の有利な実施形態によれば、下ケースは、環状のフランジを備えることが可能で、ラウドスピーカが下ケースに取り付けられる取り付け方向に関して、上記フランジは半径方向外側に突出し、かつ、このフランジに、環状のリムを有する上ケースが、組み立て方向に関して、軸方向に支持され、かつ、または、固定されている。これにより、上ケースと下ケース間の、特に容易な固定可能性が実現し、これは、一方で、熱膨張効果を許容し、他方で、比較的大きな製造公差を許容する。
【0022】
さらに他の有利な構成によれば、ラウドスピーカと上ケースは、共通の固定面内で固定することが可能であり、この面は、組み立て方向に対して径方向に伸びている。このため、下ケースは、非常にコンパクトに構成されている。この構成では、ラウドスピーカの帰還容積は、ほとんど、上ケースの形状のみによって決まる。代わりに、ラウドスピーカと上ケースが、異なる面内で、下ケースのフランジに固定される実施形態も考えられ、この場合、ラウドスピーカと上ケースは、組み立て方向において互いに離間し、それぞれ、組み立て方向に垂直に伸びる。また、フランジは、例えば、周方向の縁を備えることが可能で、この縁は、組み立て方向に関し軸方向に突出し、リム側で、上ケースの組み立てを可能にする。このような実施形態では、上記フランジのリムは、この場合、ラウドスピーカの帰還容積に寄与する空間を囲む。
【0023】
下ケースの内部、または、外部に、圧力センサ、例えば、マイクロホンを配置可能にすることが有利である。圧力センサは圧力伝達線に接続され、圧力伝達線は、排ガスシステムに取り付けられたサイレンサの場合、排ガスシステムの一部に接続され、上記排ガスシステムの一部は、排ガスシステムの排ガス流に関して、コネクタの下流に位置している。圧力伝達線は、コネクタ下流における排ガスシステムの排ガス流路と、圧力センサとの間の音響的接続を可能にする。圧力センサによって検出された信号は、運ばれる空気伝播音の影響、または、空気伝播音の減衰効果の制御、特に、閉ループ制御を可能にする。圧力センサを、下ケース上に、または、下ケース内に取り付けることによって、下ケースの機能性が向上する。ラウドスピーカの外に、ラウドスピーカを駆動するために配置された制御部の場合、圧力センサの電気信号は同じケーブルを通して伝達され、このケーブルを介して、ラウドスピーカも駆動される。しかし、制御部が、ハウジング内、特に、下ケース上に、または、下ケース内に取り付けられている場合、信号伝達はサイレンサ内で実現し、これは、ケーブルの費用を削減する。
【0024】
特に、ラウドスピーカを駆動するための制御部は空洞内に配置することが可能で、この空洞は、ハウジングの内部空間に面した下ケースの内側か、または、ラウドスピーカに面した下ケースの内側に形成されている。特に、空洞の開口は蓋で閉じられており、この蓋は熱保護部として形成され、例えば、金属、または、合金より成っている。例えば、上記空洞は導音管を構成する壁に形成されている。特に、この蓋は壁の一部を構成する。
【0025】
圧力センサおよび制御部が、ハウジングに、または、ハウジング内に取り付けられるか、あるいは、下ケース上に、または、下ケース内に取り付けられている場合、電気部品に電流を供給するには、ハウジングから伸びるか、または、ハウジングから導出されるケーブルで充分である。加えて、この共通のケーブル内に信号ケーブルを集約することも可能であり、例音および/または音量に影響を与えるために、例えば、運転手の希望により、外部信号を供給することを可能にする。
【0026】
通常、金属ケースを有しているラウドスピーカは、実用的には、下ケースにねじ締めされるか、または、クランプされるのに対して、上ケースは、下ケースに接着か、または、溶接することが可能である。しかし、代わりに、ここでも、ねじ接続は考えられる。
【0027】
他の実施形態によれば、コネクタは、下ケースに関し別個のパイプ部に形成することが可能で、このパイプ部は、ラウドスピーカから離間して、下ケースに配置されている。下ケースは、特に、プラスチック部品である。パイプ部品は、特に、適切な方法で排ガスシステムの排ガス輸送部に接続可能であって、金属で一様に製造される金属部品を用いる。パイプ部品は、例えば、下ケースに挿入することが可能である。同様に、下ケースを製造する際に、パイプ部を射出モールドに配置することが可能で、したがって、パイプ部は、下ケースのプラスチックでオーバーモールドされる。この場合、パイプ部は、下ケースの材料内に埋め込まれる。
【0028】
さらに、ハウジングにはホルダーを形成することが可能で、これにより、ハウジングを、排ガスシステムの部品に固定することが可能である。このようなホルダーは、実用的には、ハウジングに対して別個の部品であることが好ましい。特に、ホルダーは金属製である。この場合、ホルダーは下ケースに固定される実施形態が好ましい。好ましい実施形態によれば、下ケースを介して、排ガスシステムのみにサイレンサを固定し、この結果、上ケースは排ガスの影響を全く受けず、したがって、費用対効果が高くなるように製造することが可能である。
【0029】
他の有利な実施形態によれば、上ケース以外、つまり、上ケースは別として、下ケースはサイレンサのすべての主要部品を備え、これらを用いて、前組み立て可能な、いわば、モジュール・ユニットを形成し、これは、上ケースを取り付けることによって、サイレンサとして完成することが可能である。つまり、サイレンサは下ケースによって前組み立て可能であり、サイレンサを完成するには、上ケースを下ケースに取り付けるだけである。このようにして、モジュール・システムが製造され、このシステムは、同一構成の下ケースで、ほぼ同一構成のモジュール・ユニットを製造することを可能にし、このユニットは、異なって形成された上ケースを用いて、サイレンサの構成変更を可能にする。異なる上ケースは、主として、異なる設置状況に対して適用される形状が異なっているという点で異なっている。このため、サイレンサは、比較的容易に、すなわち、上ケースを交換するか、または、適切な上ケースを選択することによって、異なる設置状況に適用することが可能である。したがって、特に、異なるタイプの車両に利用できる能動サイレンサが実現し、この場合、設置状況に応じて、異なって形成された上ケースを使用するだけでよい。この上ケースは、サイレンサの内部空間を、サイレンサの周囲から分離するための機能以外はほとんど有していないので、比較的費用対効果が高くなるように製造される。したがって、上ケースは、ほぼ、ラウドスピーカの帰還容積の構成にのみ役立つ。また、サイレンサは、実用的には、上ケースが、サイレンサの高温の排ガスラインから離間した側に位置するように組み立てられ、したがって、特に、上ケースは、特に高い耐熱性を必要としない、比較的費用対効果の高いプラスチックで製造可能である。サイレンサの主要な部品は、この場合、少なくともラウドスピーカである。
【0030】
また、本発明は、上述したタイプの能動サイレンサを製造するためのキットを提供する。このようなキットは、同一の下ケースと異なる上ケースを特徴としている。同一の下ケースによって、ほとんど同一構成のモジュール・ユニットを製造することが可能であり、このユニットは、上ケースを除くサイレンサのすべての主要部品、つまり、特に、ラウドスピーカおよびコネクタ、もしあれば、圧力均等化開口、および/または、ケーブル接続部、および/または、マクロホン、および/または、制御部を備えている。異なる上ケースは、各サイレンサを、異なる設置状況に適用するのを可能にする。また、すべての上ケースは同一のリム部と、このリム部以外は、ある程度任意に変化した形状を有している。各リム部によって、各上ケースを下ケースに組み立てるためのインターフェースが形成される。