特許第5726219号(P5726219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726219
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】能動サイレンサ
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/00 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   F01N1/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-16651(P2013-16651)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-160231(P2013-160231A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2013年1月31日
(31)【優先権主張番号】10 2012 201 725.9
(32)【優先日】2012年2月6日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513212291
【氏名又は名称】エーバーシュペッヒャー・エグゾースト・テクノロジー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス グラップ
(72)【発明者】
【氏名】マンフレッド ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シューリヒト
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル ポマー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン クルーガー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ビルト
【審査官】 山田 由希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−036843(JP,A)
【文献】 特開平11−024672(JP,A)
【文献】 特開2009−250244(JP,A)
【文献】 特開2009−299554(JP,A)
【文献】 特開平08−248965(JP,A)
【文献】 特開平07−091222(JP,A)
【文献】 実開昭59−073517(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00
F01N 1/06
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ケース(3)と下ケース(4)とを有して内部空間(5)を構成するハウジング(2)と、
上記内部空間(5)に配置され、ダイヤフラム(9)を有するラウドスピーカ(6)と、
排ガスシステム(13)の排ガス輸送部(14)に対して上記ハウジング(2)を固定するホルダー(33)と、
上記下ケース(9)に取り付けられ、上記ダイヤフラム(9)から放出される圧力パルス又は音波を上記排ガス輸送部(14)に伝達するコネクタ(11)と、
上記下ケース(4)内に一体的に形成され、上記ダイヤフラム(9)と上記コネクタ(11)とを音響的に接続する導音管(10)と、
を備え、
上記コネクタ(11)は上記導音管(10)を上記排ガス輸送部(14)に機械的且つ音響的に接続するために形成され、
上記ダイヤフラム(9)から上記コネクタ(11)に向かって放出される圧力パルス又は音波の放出方向は、上記コネクタ(11)の上記下ケース(4)からの突出方向(31)に対して傾斜していることを特徴とする燃焼機関の排ガスシステム(13)用能動サイレンサ。
【請求項2】
上記ラウドスピーカ(6)は、上記下ケース(4)に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の能動サイレンサ。
【請求項3】
上記ラウドスピーカ(6)は上記上ケース(3)と上記下ケース(4)との間に挟持されるか、または、上記ラウドスピーカ(6)は上記上ケース(3)に対して非接触で配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の能動サイレンサ。
【請求項4】
上記下ケース(4)は少なくとも一つの圧力均等化開口(18)を有し、上記圧力均等化開口(18)は、上記内部空間(5)を上記ハウジング(2)の周辺部に接続し、上記各圧力均等化開口(18)は、ガス透過性を有する液密のダイヤフラム(20)で閉じられ、上記ダイヤフラム(20)は、上記下ケース(4)の材料に埋め込まれるように配置することが可能であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の能動サイレンサ。
【請求項5】
上記下ケース(4)はケーブル接続部(21)を有し、上記ケーブル接続部(21)を介して上記ラウドスピーカ(6)が駆動されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の能動サイレンサ。
【請求項6】
上記下ケース(4)は強化プラスチックで製造され、かつ/または、上記上ケース(3)はプラスチックで製造されることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の能動サイレンサ。
【請求項7】
上記下ケース(4)は、上記上ケース(3)を除いて、上記サイレンサ(1)のすべての主要部品を有するとともに、これらの部品によって、前組み立て可能なユニット(23)を形成し、上記ユニット(23)に上ケース(3)を装着することによって上記サイレンサ(1)が完成可能であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の能動サイレンサ。
【請求項8】
上記ラウドスピーカ(6)及び上記上ケース(3)は同じ組み立て方向(24)から上記下ケース(4)に取り付けられることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の能動サイレンサ。
【請求項9】
上記下ケース(4)は環状のフランジ(25)を有し、上記ラウドスピーカ(6)は上記フランジ(25)に対して取り付け固定され、また、上記上ケース(3)は上記フランジ(25)に対応する環状のリム(26)を有して上記フランジ(25)に対して取り付け固定されることを特徴とする請求項1から8に記載の能動サイレンサ。
【請求項10】
上記下ケース(4)には圧力センサ(35)が配置され、上記圧力センサ(35)は圧力伝達線(36)を介して上記排ガスシステム(13)の一部(43)に接続可能であることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の能動サイレンサ。
【請求項11】
上記下ケース(4)はその内側に空洞(37)を有し、上記空洞(37)内に上記ラウドスピーカ(6)を駆動するための制御部(38)が配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の能動サイレンサ。
【請求項12】
上記コネクタ(11)はパイプ部(29)の一端に形成され、上記パイプ部(29)は上記ラウドスピーカ(6)から離間して上記下ケース(4)に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の能動サイレンサ。
【請求項13】
請求項1から12に記載の能動サイレンサ(1)を製造するためのキットであって、同一の複数の上記下ケース(4)と、異なる複数の上記上ケース(3)とを有することを特徴とするキット。
【請求項14】
モーター車の燃焼機関用排ガスシステムであって、
排ガス輸送部(14)、および、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の能動サイレンサ(1)を備え、上記導音管(10)は上記コネクタ(11)を介して機械的且つ音響的に上記排ガス輸送部(14)に接続されていることを特徴とする排ガスシステム。
【請求項15】
上記上ケース(3)および/または上記下ケース(4)は上記排ガスシステム(13)の上記排ガス輸送部(14)に直接接触していないことを特徴とする請求項14に記載の排ガスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機関、特に、モーター車の排ガスシステム用能動サイレンサに関し、請求項1の上位概念の特徴を有する能動サイレンサに関する。また、本発明は、そのようなサイレンサを製造するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
DE 10 2008 018 085A1により、能動サイレンサが知られている。この能動サイレンサは上ケースと下ケースを有するハウジングを備え、内部空間を構成している。また、上記サイレンサは上記内部空間に配置されたラウドスピーカを備え、上記ラウドスピーカのダイヤフラムは、漏斗状に形成された導音管によって、上記サイレンサのコネクタに音響的に接続されている。このコネクタによって、上記排ガスシステムの排ガス輸送部、例えば、排ガスパイプに、上記サイレンサを音響的に接続することが可能である。この音響的接続により、上記ラウドスピーカのダイヤフラムによって生成可能な圧力パルスを、上記ダイヤフラムから上記排ガスシステムの排ガス流内に伝達することが可能になる。したがって、このような能動サイレンサによって、排ガス中を伝達される音の音パターンが影響を受けることになり、この場合、特に、干渉、または、消滅によって、特定周波数を適宜弱めることが可能である。
【0003】
公知のサイレンサでは、導音管は個別の導音体内に形成されており、下ケースに囲まれて、導音体と下ケースとの間に下部の中空空間を形成している。上ケースはラウドスピーカを囲んで上部の中空空間を形成しており、この場合、上記ラウドスピーカは、ダイヤフラムから離間した側に、電磁駆動部によって上記上ケースに支持されている。さらに、公知のサイレンサでは、個別のホルダーが備えられており、一方は下ケースに固定され、他方で、このホルダーに、ケースを有するラウドスピーカが固定されている。この固定により、ハウジング内にバイパスが形成され、これは、上部中空空間を、下部中空空間に音響的に接続している。このようにして、ラウドスピーカの帰還容積を、下部中空空間まで拡張することが可能である。
【0004】
上記公知のサイレンサでは、上記上ケースは、また、ケーブル接続部を備えており、これを介して、ラウドスピーカを駆動するためのケーブルを挿通し、同時に、圧力均等化開口を形成することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によれば、上述の問題は独立請求項の主題によって解決される。好適な実施形態は従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上述の問題は独立請求項の主題によって解決される。好適な実施形態は従属請求項の主題である。
【0007】
本発明では導音管を、上記下ケース内に一体化するという基本的な考えに本発明は基づいている。その結果、導音管を実現するための個別の導音体を省略することが可能である。このため、従来のサイレンサに比べて、少なくとも一つの部品、つまり、導音体が省略される。したがって、同時に、本発明によるサイレンサでは、下ケースと導音体体との間の中空空間が省略され、これにより、本発明によるサイレンサでは、導音管の下ケースは、ラウドスピーカの帰還容積には寄与しない。このため、下ケースは非常にコンパクトに構成され、これは、常に制限される設置状況のおいて、特に、モーター車に、サイレンサを配置することを容易にする。
【0008】
実用的には、組み立て状態において、導音管と排ガスシステムの排ガス輸送部との機械的、かつ、音響的接続がコネクタを介して可能になり、この結果、特に、排ガスシステムの排出口から、上記サイレンサを離間して配置することが可能である。
【0009】
導音管は、特に、漏斗状に形成されている。その結果、導音管の断面は、音の伝播方向に沿って、ラウドスピーカ、または、ダイヤフラムから、コネクタに向かって細くなる。結果的に、比較的大きなラウドスピーカであって、対応する大きなダイヤフラムを有するラウドスピーカを、ハウジング内に組み付けることが可能であり、その結果、特に、低周波の音波を生成し、排ガス流の方向に出射することが可能である。
【0010】
有利な実施形態によれば、ラウドスピーカは下ケースに固定される。特に、この場合、下ケースに、ラウドスピーカを直接固定することが好ましい。実用的には、ラウドスピーカはケースを有し、このケースに、一方で、ダイヤフラムが保持され、他方で、ダイヤフラムを駆動するための電磁駆動部が支持されている。また、ラウドスピーカは、そのケースによって、下ケースに固定される。この場合、基本的に、任意の適切な固定手段が使用できる。実用的には、例えば、ねじ固定である。
【0011】
さらに、ラウドスピーカのみを下ケースに固定するのが有利であり、これにより、上ケースは、ラウドスピーカをハウジングに固定することにはまったく寄与しない。この場合、さらに他の有利な実施形態によれば、ラウドスピーカを、ハウジング内に、上ケースに対して非接触で配置することが可能である。このようにして、ラウドスピーカと、上ケースとの間の相互作用を避けることが可能である。
【0012】
そのため、同時に、上ケースの形状を、ラウドスピーカから充分独立して選択することが可能である。そのため、まず、上ケースによって囲まれている中空空間は、ラウドスピーカに充分な帰還容積が提供できるように、適切に寸法が決められれいる。さらに、この構成は、上ケースの形状を、各設置状況に形状的に適用することを促進する。このようにして、既存の設置空間がより良く利用される。
【0013】
他の有利な実施形態では、上ケースで、ラウドスピーカを下ケースに押圧することを提案している。つまり、この場合、まず、上ケースを下ケースに固定することによって、ラウドスピーカは下ケースに固定され、この場合、上ケースと下ケースは、ラウドスピーカをクランプ固定する。実用的には、上ケースの押え部がラウドスピーカの外リム、例えば、ラウドスピーカのケースの外リムに被さり、これを、下ケースの接触面に押圧する。上記押え部は環状の肩部であるか、または、周方向に分散配置された、複数の押え部を備えることが可能である。この場合、押え部は、実用的には、上ケースに一体的に形成されている。また、ここでは、ラウドスピーカは、クランプ固定部以外では、上ケースに接触せず、したがって、ここでは、また、上記の利点が実現する実施形態が好ましい。
【0014】
有利な実施形態によれば、上ケースは、少なくとも一つの圧力均等化開口を有することが可能で、この開口は、内部空間をハウジングの周辺部に接続する。このような圧力均等化開口によって、周囲と内部空間の間の静的な圧力差が等しくなる。このような、例えば、温度変化によって発生する圧力差は、ダイヤフラムの歪み、したがって、出射音の周波数に影響を与える。また、クリープ工程に基づいて、中立位置からのダイタフラムの歪みが継続すると、ダイヤフラムの変形が残ることにつながる可能性がある。圧力均等化開口を、下ケースに一体化することによって、同時に、下ケースの機能性が向上し、これは、上ケースにとって、可能な限り費用対効果の高い生産性を実現するのを容易にする。
【0015】
他の構成によれば、各圧力均等化開口は、ガス透過性で、かつ、液密のダイヤフラムで閉じることが可能である。このようなダイヤフラムによって、サイレンサの内部空間への水、例えば、水しぶきの浸入を充分に防止することが可能で、同時に、充分な圧力均等化が可能である。さらに、このようなダイヤフラムによって、内部空間で発生することがある凝縮物が蒸発することが可能である。
【0016】
特に、各ダイヤフラムは、下ケースの材料に埋め込み可能である。特に、下ケースはプラスチックで製造することが可能で、この場合、射出成形が好ましい。下ケースの射出成形では、各ダイヤフラムは、形成すべき開口部分において、各射出モールド内に予め配置することが可能で、このため、下ケースは各ダイヤフラムに射出成形され、その後、ダイヤフラムは、リム側で下ケースの材料に埋め込まれる。このため、同時に、下ケースの機能性が向上し、例えば、ダイヤフラムで形成されたしぶき防止部が、下ケース内に一体化される。
【0017】
これに加えて、さらに他の実施形態では、下ケースはケーブル接続部を備えることが可能であり、ケーブル接続部を介して、ラウドスピーカは駆動可能である。また、これによって、下ケースの機能性が向上し、この結果、同時に、上ケースの費用対効果の高い生産性の可能性が向上する。このようなケーブル接続部は、最も簡単な場合、ケーブル挿通部として形成することが可能で、これを通して、ラウドスピーカを駆動するための対応するケーブルを、下ケースを通して挿通することが可能である。さらに、ケーブル接続部を、コネクタ部、または、ソケット部として形成することが可能で、これは電気接点を有し、この電気接点は、サイレンサの内部空間で、内部ケーブルを介して、ラウドスピーカの対応する接点に接続される。ソケット部、または、コネクタ部には、外部ケーブルの相補的部品が接続可能である。各ケーブル接続部は、この場合、下ケース内に一体的に形成される。ケーブル接続部を実現するために、例えば、電気接点、ソケット部品、コネクタ部品等の個別部品が必要な場合、これらの部品は、下ケースの材料でオーバーモールドするか、または、中に埋め込むことが可能である。
【0018】
下ケースとして、プラスチック部品を用いるのが好ましく、これは、特に有利な実施形態によれば、強化プラスチックで製造することが可能である。プラスチックは、この場合、繊維で補強することが可能で、ガラス繊維による補強が好ましい。プラスチックは、また、短繊維による補強が可能で、短ガラス繊維による補強が好ましい。このような短繊維による補強は、プラスチックによる、下ケースの射出成形に適している。強化プラスチックを利用することによって、下ケースは比較的高い安定性を有している。さらに、これによって、下ケースは、また、特に、高い耐熱性を有している。このため、下ケースは、特別な方法で、サイレンサのできる限り多くの部品を一体化するか、または、取り付けるのに適している。さらに、そのため、下ケースは、高温の排ガスラインに面した側に、より良く取り付けられる。また、下ケースはコネクタを備えており、このコネクタを介して、サイレンサを、排ガスシステムの排ガス輸送部に音響的に接続することが可能である。
【0019】
サイレンサが排ガスシステムに取り付けられた取り付け状態で、上ケースは、排ガスシステムの排ガス輸送部に接触することなく、コネクタに取り付けられている。特に、この場合、上ケースは、下ケースの、排ガス輸送部から離間した側に位置している。これにより、上ケースは、比較的費用対効果の高いプラスチックで製造することが可能である。また、下ケースは、間接的、つまり、コネクタを介して、排ガス輸送部に接続されているので、下ケースも、サイレンサの組み立て状態において、排ガスシステムの排ガス輸送部に、直接接触することなく配置することが可能である。
【0020】
他の有利な実施形態によれば、ラウドスピーカと上ケースは、同じ組み立て方向において、下ケースに取り付けることが可能である。これによって、組み立て位置が近接しやすくなり、これは、サイレンサの製造を容易にする。
【0021】
さらに他の有利な実施形態によれば、下ケースは、環状のフランジを備えることが可能で、ラウドスピーカが下ケースに取り付けられる取り付け方向に関して、上記フランジは半径方向外側に突出し、かつ、このフランジに、環状のリムを有する上ケースが、組み立て方向に関して、軸方向に支持され、かつ、または、固定されている。これにより、上ケースと下ケース間の、特に容易な固定可能性が実現し、これは、一方で、熱膨張効果を許容し、他方で、比較的大きな製造公差を許容する。
【0022】
さらに他の有利な構成によれば、ラウドスピーカと上ケースは、共通の固定面内で固定することが可能であり、この面は、組み立て方向に対して径方向に伸びている。このため、下ケースは、非常にコンパクトに構成されている。この構成では、ラウドスピーカの帰還容積は、ほとんど、上ケースの形状のみによって決まる。代わりに、ラウドスピーカと上ケースが、異なる面内で、下ケースのフランジに固定される実施形態も考えられ、この場合、ラウドスピーカと上ケースは、組み立て方向において互いに離間し、それぞれ、組み立て方向に垂直に伸びる。また、フランジは、例えば、周方向の縁を備えることが可能で、この縁は、組み立て方向に関し軸方向に突出し、リム側で、上ケースの組み立てを可能にする。このような実施形態では、上記フランジのリムは、この場合、ラウドスピーカの帰還容積に寄与する空間を囲む。
【0023】
下ケースの内部、または、外部に、圧力センサ、例えば、マイクロホンを配置可能にすることが有利である。圧力センサは圧力伝達線に接続され、圧力伝達線は、排ガスシステムに取り付けられたサイレンサの場合、排ガスシステムの一部に接続され、上記排ガスシステムの一部は、排ガスシステムの排ガス流に関して、コネクタの下流に位置している。圧力伝達線は、コネクタ下流における排ガスシステムの排ガス流路と、圧力センサとの間の音響的接続を可能にする。圧力センサによって検出された信号は、運ばれる空気伝播音の影響、または、空気伝播音の減衰効果の制御、特に、閉ループ制御を可能にする。圧力センサを、下ケース上に、または、下ケース内に取り付けることによって、下ケースの機能性が向上する。ラウドスピーカの外に、ラウドスピーカを駆動するために配置された制御部の場合、圧力センサの電気信号は同じケーブルを通して伝達され、このケーブルを介して、ラウドスピーカも駆動される。しかし、制御部が、ハウジング内、特に、下ケース上に、または、下ケース内に取り付けられている場合、信号伝達はサイレンサ内で実現し、これは、ケーブルの費用を削減する。
【0024】
特に、ラウドスピーカを駆動するための制御部は空洞内に配置することが可能で、この空洞は、ハウジングの内部空間に面した下ケースの内側か、または、ラウドスピーカに面した下ケースの内側に形成されている。特に、空洞の開口は蓋で閉じられており、この蓋は熱保護部として形成され、例えば、金属、または、合金より成っている。例えば、上記空洞は導音管を構成する壁に形成されている。特に、この蓋は壁の一部を構成する。
【0025】
圧力センサおよび制御部が、ハウジングに、または、ハウジング内に取り付けられるか、あるいは、下ケース上に、または、下ケース内に取り付けられている場合、電気部品に電流を供給するには、ハウジングから伸びるか、または、ハウジングから導出されるケーブルで充分である。加えて、この共通のケーブル内に信号ケーブルを集約することも可能であり、例音および/または音量に影響を与えるために、例えば、運転手の希望により、外部信号を供給することを可能にする。
【0026】
通常、金属ケースを有しているラウドスピーカは、実用的には、下ケースにねじ締めされるか、または、クランプされるのに対して、上ケースは、下ケースに接着か、または、溶接することが可能である。しかし、代わりに、ここでも、ねじ接続は考えられる。
【0027】
他の実施形態によれば、コネクタは、下ケースに関し別個のパイプ部に形成することが可能で、このパイプ部は、ラウドスピーカから離間して、下ケースに配置されている。下ケースは、特に、プラスチック部品である。パイプ部品は、特に、適切な方法で排ガスシステムの排ガス輸送部に接続可能であって、金属で一様に製造される金属部品を用いる。パイプ部品は、例えば、下ケースに挿入することが可能である。同様に、下ケースを製造する際に、パイプ部を射出モールドに配置することが可能で、したがって、パイプ部は、下ケースのプラスチックでオーバーモールドされる。この場合、パイプ部は、下ケースの材料内に埋め込まれる。
【0028】
さらに、ハウジングにはホルダーを形成することが可能で、これにより、ハウジングを、排ガスシステムの部品に固定することが可能である。このようなホルダーは、実用的には、ハウジングに対して別個の部品であることが好ましい。特に、ホルダーは金属製である。この場合、ホルダーは下ケースに固定される実施形態が好ましい。好ましい実施形態によれば、下ケースを介して、排ガスシステムのみにサイレンサを固定し、この結果、上ケースは排ガスの影響を全く受けず、したがって、費用対効果が高くなるように製造することが可能である。
【0029】
他の有利な実施形態によれば、上ケース以外、つまり、上ケースは別として、下ケースはサイレンサのすべての主要部品を備え、これらを用いて、前組み立て可能な、いわば、モジュール・ユニットを形成し、これは、上ケースを取り付けることによって、サイレンサとして完成することが可能である。つまり、サイレンサは下ケースによって前組み立て可能であり、サイレンサを完成するには、上ケースを下ケースに取り付けるだけである。このようにして、モジュール・システムが製造され、このシステムは、同一構成の下ケースで、ほぼ同一構成のモジュール・ユニットを製造することを可能にし、このユニットは、異なって形成された上ケースを用いて、サイレンサの構成変更を可能にする。異なる上ケースは、主として、異なる設置状況に対して適用される形状が異なっているという点で異なっている。このため、サイレンサは、比較的容易に、すなわち、上ケースを交換するか、または、適切な上ケースを選択することによって、異なる設置状況に適用することが可能である。したがって、特に、異なるタイプの車両に利用できる能動サイレンサが実現し、この場合、設置状況に応じて、異なって形成された上ケースを使用するだけでよい。この上ケースは、サイレンサの内部空間を、サイレンサの周囲から分離するための機能以外はほとんど有していないので、比較的費用対効果が高くなるように製造される。したがって、上ケースは、ほぼ、ラウドスピーカの帰還容積の構成にのみ役立つ。また、サイレンサは、実用的には、上ケースが、サイレンサの高温の排ガスラインから離間した側に位置するように組み立てられ、したがって、特に、上ケースは、特に高い耐熱性を必要としない、比較的費用対効果の高いプラスチックで製造可能である。サイレンサの主要な部品は、この場合、少なくともラウドスピーカである。
【0030】
また、本発明は、上述したタイプの能動サイレンサを製造するためのキットを提供する。このようなキットは、同一の下ケースと異なる上ケースを特徴としている。同一の下ケースによって、ほとんど同一構成のモジュール・ユニットを製造することが可能であり、このユニットは、上ケースを除くサイレンサのすべての主要部品、つまり、特に、ラウドスピーカおよびコネクタ、もしあれば、圧力均等化開口、および/または、ケーブル接続部、および/または、マクロホン、および/または、制御部を備えている。異なる上ケースは、各サイレンサを、異なる設置状況に適用するのを可能にする。また、すべての上ケースは同一のリム部と、このリム部以外は、ある程度任意に変化した形状を有している。各リム部によって、各上ケースを下ケースに組み立てるためのインターフェースが形成される。
【発明の効果】
【0031】
したがって、本発明による、特に、モーター車の燃焼機関用排ガスシステムは、排ガス輸送部、および、上述したタイプのサイレンサを備えており、サイレンサの導音管は、サイレンサのコネクタを介して、例えば、Yパイプを介して、直接または間接的に、排ガス輸送部に機械的および音響的に接続される。その結果、サイレンサは、排ガスシステムの周囲に開口している排出口の上流に配置されるか、または、排ガスシステムに接続される。特に、コネクタを用いることによって、導音管を、排ガスシステムの排ガス輸送部に気密に取り付けることが実現できる。
【0032】
本発明の他の重要な特徴ならびに利点は、従属請求項、図面、および図面に基づく関連する説明により明らかになる。
【0033】
上述した特徴、および以下に述べる特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、記載している各組み合わせにおいてだけでなく、他の組み合わせにおいて、あるいは、単独で利用できることは明白である。
【0034】
本発明の好適な実施例は図示されるとともに、以下に、詳細に説明されるが、同一か、類似しているか、または、機能的に同一の構成要素は同一の参照符号で示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
以下の図面は、それぞれ、概略的に示している。
図1】能動サイレンサの非常に簡略化された縦断面図
図2】このような能動サイレンサ内の排ガスシステムの等尺図
図3図1に示すような縦断面図であるが、他の実施形態における縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1および3によれば、能動サイレンサ1はハウジング2を備え、このハウジング2は、上ケース3と、下ケース4を有している。この場合、ハウジング2は内部空間5を構成し、この中にラウドスピーカ6が配置されている。ラウドスピーカ6は、通常、電磁駆動部7、ケース8、および、ダイヤフラム9を有している。駆動部7は、ダイヤフラム9を駆動して圧力パルス、または、音波を生成する。ケース8は、一方で、ダイヤフラム9を固定し、他方で、駆動部7を有している。
【0037】
また、サイレンサ1は、特に、漏斗状の導音管10、および、コネクタ11を備えている。導音管10は、ダイヤフラム9をコネクタ11に音響的に、つまり、空気伝播音を伝達するために接続している。ここで紹介するサイレンサ1では、導音管10は、下ケース4内に一体的に形成されている。これは、内部空間5に面している下ケース4の内側の一部が、導音管10を構成してることを意味している。
【0038】
図1から分かるように、ラウドスピーカ6は、そのケース8のみを介して、下ケース4に固定されている。また、図1によれば、最終的に、適切なねじ接続部12が実用的に使用可能である。さらに、ラウドスピーカ6は、上ケース3に非接触で配置されている。
【0039】
図2によれば、サイレンサ1は、図2で一部のみ示す、排ガスシステム13に組み付けるのに適している。排ガスシステム13は、特に、モーター車に配置され、ここでは、図示されていない燃焼機関に対応している。サイレンサ1は、排ガスシステム13の排ガス輸送部14に音響的に接続され、したがって、ラウドスピーカ6から、図2において矢印で示す排ガス流15に、空気伝播音を伝達することが可能である。図2の例では、この接続はYパイプ16により実現され、このYパイプは、適切な方法で、一方では、排ガスシステム13のに一部14内に配置され、他方では、サイレンサ1のコネクタ11(図1参照)に接続されている。また、例えば、クランプ接続17を利用することが可能である。
【0040】
図1から3によれば、下ケース4は、実用的には、少なくとも一つの圧力均等化開口18を備えており、この圧力均等化開口18は内部空間5をハウジング2の周囲に接続している。圧力均等化開口18は、この場合、ダイヤフラム20で閉じられており、このダイヤフラムは、ガスに対して透過性であり、液体に対して非透過性である。このようにして、内部空間5内に水しぶきが浸入するのを避けることが可能で、同時に、内部空間5と周囲19との間の圧力均等化が可能である。さらに、内部空間5内に形成され、この内部空間内で適切な加熱によって蒸発する凝縮物は、内部空間5から、圧力均等化開口18を介して、周囲19に逃げる。ダイヤフラム20は、この場合、下ケース4の材料に埋め込まれているが、しかし、ここでは、確認できない。また、ここでは、下ケース4はケーブル接続部21を備えており、この接続部21は、本例では、ケーブル挿通部として実現され、したがって、ケーブル22を、下ケース4を通してラウドスピーカ6に導くことが可能であり、これにより、ラウドスピーカ6を駆動することが可能である。
【0041】
下ケース4は、実用的には、短ガラス繊維で補強されたプラスチックで製造されている。このため、下ケース4は、高い形状安定性と熱強度を有している。そのため、下ケース4は、特別な方法で、サイレンサ1の複数部品を集約するのに適している。これに対して、上ケース3は、実用的には、簡単で、費用対効果の高いプラスチックで製造され、その剛性および熱強度は、下ケース4の剛性および熱強度よりも低い。
【0042】
ここで示す好適な実施形態では、サイレンサ1上ケース3以外のすべての主要部品は、下ケース4に形成されるか、または、配置されており、したがって、下ケース4は、これらの部品で前組み立て可能なユニット23を形成し、いわば、モジュールの特徴を有している。そのため、特に、このユニット23に上ケース3を取り付けることによって、完全なサイレンサ1を完成することが可能である。したがって、特に、組み立てキット、または、モジュール・システムが実現し、これは、同一のモジュール・ユニット23を実現するための同一の下ケース4、および、少なくとも2つの形状が異なる上ケース3を備えている。
【0043】
ユニット23は、本例では、パイプ部29、ラウドスピーカ6、圧力均等化開口18、ケーブル接続部21、および、ホルダー33を備えている。
【0044】
ここで示す実施形態では、ラウドスピーカ6と上ケース3は、図1および3に矢印で示す同じ組み立て方向24において、下ケース4に取り付けられる。したがって、取り付け方向24に関し、ラウドスピーカ6と上ケース3にとって、下ケース4に対して軸方向の取り付けが実現する。実用的には、下ケース4は、環状のフランジ25を備えており、このフランジ25は、組み立て方向24に関し、下ケース4から径方向外側に突出している。上ケース3は、その下ケース4に面した端部に、環状のリム26を備えており、リム26の周方向の形状は、フランジ25の周方向の形状に対して相補的に形成されている。これにより、上ケース3は、そのリム26によって、組み立て方向24に関し、フランジ25に軸方向に支持、および、固定される。例えば、上ケース3と下ケース4は、摩擦溶接法によって互いに溶接される。対応する環状の溶接部を、図1および3に、符号27で示す。
【0045】
ここで示す実施形態では、ラウドスピーカ6と上ケース3は、共通の固定面28内でフランジ25に固定され、この場合、この固定面28は、組み立て方向24に関し径方向に伸びている。
【0046】
コネクタ11は、ここでは、個別のパイプ部29によって実現されており、このパイプ部29は、ラウドスピーカ6から離間して、下ケース4に配置されている。実用的には、この場合、パイプ部29は下ケース4内に挿入されている。同様に、パイプ部29は、下ケース4の材料でオーバーモールドすることが可能である。また、本例では、図1に破線で示すラウドスピーカ6の放射方向30は、図1に破線で示すコネクタ11の突出方向31に対して、ある角度32で傾斜しているのは注目すべきことであり、本例では、45°である。
【0047】
また、図2によれば、ホルダー33が形成されており、このホルダー33によって、ラウドスピーカ6は排ガスシステム13、ここでは、パイプで形成された排ガス輸送部14に支持されている。このホルダ33は、ハウジング側で、下ケース4に、例えば、ねじ接続34により固定され、したがって、サイレンサ1のみが、下ケース4を介して、つまり、ホルダ33およびコネクタ11を介して排ガスシステム13に固定されている。
【0048】
図3に示す実施形態では、図1に示す実施形態でラウドスピーカ6を、ハウジング2内、または、下ケース4に固定するために必要とされる、ねじ接続部12または他の別な固定部を省略することが可能である。また、ラウドスピーカ6は、上ケース3によって、下ケース4にクランプされている。これは、まず、上ケース3を下ケース4に、例えば、溶接接続によって固定するだけで、ラウドスピーカ6が下ケース4に固定されることを意味している。上ケース3と下ケース4は、この場合、ラウドスピーカ6のためのクランプ固定部39を構成している。また、実用的には、上ケース3の押え部40は、ラウドスピーカ6またはケース8の外側リム41に係合している。押え部40は、下ケース4に取り付けられた上ケース3において、上記外側リム41を下ケース4の接触面42に押圧している。押え部40は、一つの閉じた周方向肩部であるか、または、周方向に分散配置された複数の別個の押え部を備えることが可能である。押え部40は、図3に示す例では、上ケース3に一体形成されている。また、ここでは、ラウドスピーカ6は、クランプ固定部39外で、上ケース3にまったく接触せずに、上述の利点が実現する実施形態が好ましい。
【0049】
図2によれば、下ケース4の内側(図示せず)または外側(図示あり)に、圧力センサ35、例えば、マイクロホンを配置することが可能であることが有利である。圧力センサ35は圧力伝達線36に接続され、圧力伝達線36は、排ガスシステム13に取り付けられたサイレンサ1において、破線で示す排ガスシステム13の一部43に接続され、この一部43は、排ガスシステム13の排ガス流15に関し、コネクタ29の下流、または、接続部を構成するYパイプ16の下流に位置している。圧力伝達線36は、例えば、ホースまたはパイプであり、コネクタ29の下流にある排ガスシステム13の排ガス流路と、圧力センサ35との間の音響的接続を可能にしている。圧力センサ35によって検出された信号は、伝達される空気伝播音の影響、または、空気伝播音の減衰効果を、例えば、閉ループ制御によって制御することを可能にしている。圧力センサ35を下ケース4上に、または、下ケース4内に取り付けることによって、下ケース4の機能性が向上する。ラウドスピーカ6の外に配置された、ラウドスピーカ6を駆動するための制御部では、圧力センサ35の電気信号は、同じケーブル22を介して伝達され、このケーブルを介して、ラウドスピーカ6も駆動される。しかし、図3に示す実施形態の場合、ハウジング2内に配置されたラウドスピーカ6を駆動するための制御部38は、下ケース4上に、または、下ケース4内に配置され、サイレンサ1内で信号伝達が行われ、これは、ケーブルの費用を削減する。
【0050】
図3によれば、ラウドスピーカ6を駆動するための制御部38は空洞37内に配置され、この空洞は、ハウジング2の内部空間5に面するか、または、ラウドスピーカ6に面した、下ケース4の内側に形成されている。特に、空洞37の開口は蓋44によって閉じられ、この蓋44は、防熱部(熱保護部)として形成され、例えば、金属、または、合金より成っている。例えば、上記空洞37は、導音管10を構成する壁内に形成される。蓋44は、特に、壁の一部を形成している。
【符号の説明】
【0051】
1 サイレンサ
2 ハウジング
3 上ケース
4 下ケース
5 内部空間
6 ラウドスピーカ
7 駆動部
8 ケース
9 ダイヤフラム
10 導音管
11 コネクタ
12 ねじ接続部
13 排ガスシステム
14 排ガス輸送部
15 排ガス流
16 Yパイプ
17 クランプ接続
18 圧六均等化開口
19 周囲
20 ダイヤフラム
21 接続部
22 ケーブル
23 ユニット
24 取り付け方向
25 フランジ
26 リム
27 溶接部
28 固定面
29 パイプ部
30 放射方向
31 突出方向
32 角度
33 ホルダー
34 ねじ接続
35 圧力センサ
36 圧力伝達船
37 空洞
38 制御部
39 固定部
40 押さえ部
41 外側リム
42 接触面
43 排ガスシステムの一部
44 蓋
図1
図2
図3