(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726236
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ターボ機械用のディフューザ
(51)【国際特許分類】
F01D 25/30 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
F01D25/30 B
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-127715(P2013-127715)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-1735(P2014-1735A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2013年10月25日
(31)【優先権主張番号】12172393.6
(32)【優先日】2012年6月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ プフォスター
(72)【発明者】
【氏名】トーマス モクリス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル セル
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ルートヴィヒ ボクスハイマー
(72)【発明者】
【氏名】ジルヴィア ガーフナー
(72)【発明者】
【氏名】ベアーテ グルゾンジエル
【審査官】
寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02960306(US,A)
【文献】
米国特許第03310287(US,A)
【文献】
特開2011−220336(JP,A)
【文献】
特開2012−107617(JP,A)
【文献】
米国特許第06602046(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/30
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディフューザ出口(123)を形成するディフューザリップ(124)まで延びた外壁(121)を有する、タービンの最終段(101,111)に続くディフューザ(12)であって、前記外壁(121)は、互いに角度を成して相前後して接続された複数の直線的な壁部を有し、該直線的な壁部の後に湾曲した壁部が続いており、該湾曲した壁部は、前記直線的な壁部(3)とディフューザリップ(124)との間に配置されており、二次曲線(21)を形成する鉛直方向断面を有しており、前記湾曲した壁部は、前記ディフューザ出口(123)に向かうに従って曲率が小さくなることを特徴とする、ディフューザ(12)。
【請求項2】
前記二次曲線(21)は、楕円曲線の一部(21)である、請求項1記載のディフューザ(12)。
【請求項3】
前記直線的な壁部(3)の数は、4つ以上である、請求項1記載のディフューザ(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械用のディフューザに対する改良に関する。本発明は、特に、しかしながら排他的にではなく、低圧(LP)蒸気タービンの最終段に続くディフューザに関する。
【背景技術】
【0002】
大型蒸気タービンに見られるようなディフューザは、たとえば、蒸気をタービンの最終段から凝縮器へ案内するために使用される。このようなディフューザは、2つ以上の実質的に同心状の壁部を有する。これらの壁部は、少なくとも最初、タービンのロータ軸線の周囲に軸方向の向きで配置されている。
【0003】
たとえば米国特許第6602046号明細書に説明されているように、最終段に続くディフューザは、流れる媒体を減速させ、タービンを横切る利用可能な圧力降下またはエンタルピ降下を増大させ、運動エネルギのある比率を圧力エネルギに変換し、凝縮器グループに向かうディフューザ出口における流れ損失を減じるという作用を奏する。したがって、ディフューザの設計は、タービン機械の全体的な効率に貢献し、その理由から、ディフューザのレイアウトを最適化するために、多くの努力がなされてきたことが明らかである。
【0004】
Ch.Musch, H,StuerおよびG.Hermleによる、"OPTIMIZATION STRATEGY FOR A COUPLED DESIGN OF THE LAST STAGE AND THE SUCCESIVE DIFFUSER IN A LOW PRESSURE ENVIRONMENT"というタイトルの、2011年6月6〜10日にカナダ国ブリティッシュコロンビア州バンクーバーにおいて開催されたASME(アメリカ機械工業会)ターボエキスポの議事録、GT2011において出版された文書において、著者は、角度を成した2つの直線と、それに続く円弧と、半径方向の出口における別の直線的なセクションとから成る外壁断面を備えたディフューザ設計を示している。
【0005】
米国特許第6602046号明細書に説明されているように、直線は、壁部からの流れ分離を故意に生じるために、ディフューザの壁部におけるねじれ(kink)の連続として形成することができる。この構成は、ショック境界層脈動が抑制されることを許容する。しかしながら、この手段は、ディフューザ効率の著しい減少に関連させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6602046号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"OPTIMIZATION STRATEGY FOR A COUPLED DESIGN OF THE LAST STAGE AND THE SUCCESIVE DIFFUSER IN A LOW PRESSURE ENVIRONMENT"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存の従来技術を考慮して、既存のディフューザ設計をさらに最適化し、これにより、ターボ機械、特に蒸気被駆動発電プラントの低圧モジュールもしくはタービンの効率を高めることが本発明の目的であると見ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様によれば、互いに対して角度を成した複数の連続した直線的なセクションを有し、この直線的なセクションの後に、鉛直方向断面として、好適には楕円セグメントであるが円弧を排除する二次曲線を有する湾曲したセクションが続いているような外壁を有するディフューザが提供される。
【0010】
円を排除する二次曲線は、たとえば、
少なくとも1つの混合された係数が<>0(0以上または0以下)である、
(1)a
11x
2+a
12xy+a
22y
2+2a
13x+2a
23y+a
33=0
の形式のデカルト座標の代数方程式として説明することができる。
【0011】
楕円形のディフューザリップを用いることにより、空気力学および性能の観点でより優れたディフューザ設計が可能になることが分かった。特に、流入方向で、湾曲したセクションの第1の部分においてより大きな曲率を有し、かつディフューザ出口に向かってより小さな曲率を有することが可能である。さらに、最終段ブレードのチップジェットによりディフューザにおける流れのより大きな回転を第1の角度づけられた直線的なセクションもしくはねじれ(kink)において行うことができるので、ディフューザの誘導角(flare angle)(開放角)および面積比を円弧の場合よりもより一層理想的な値に近づくように最適化することが可能である。
【0012】
発明のこれらの態様および別の態様は、以下の詳細な説明および以下に挙げる図面から明らかになるであろう。
【0013】
ここで発明の例示的な実施の形態を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】潜在的な最適化パラメータと共に、公知のような低圧蒸気タービン段用のディフューザの概略的な鉛直方向断面図を示す図である。
【
図2】
図1の公知のディフューザ上に重ね合わされた本発明の一例によるディフューザの概略的な鉛直方向断面図を示す図である。
【
図3】公知のディフューザよりも高い、本発明によるディフューザの潜在的な効率ゲインを示す、スライスディフューザリカバリのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の例の態様および詳細は、低圧蒸気タービン用のディフューザの例を用いて以下の説明においてさらに詳細に説明される。
【0016】
図1において、上記で引用したようなGT2011出版物において提案されたような低圧蒸気タービン段用のディフューザの概略的な鉛直方向断面が示されている。図面は、実質的に回転対称のディフューザの上半分の断面を示している。図面は、ロータ10および内側ケーシング11の一部も示している。ロータとケーシングとの間において、それぞれ一方に、回転ブレードおよびステータブレードが取り付けられている。タービンの最終段は、ケーシング11に取り付けられたステータブレード111の周方向配列と、ロータ10に取り付けられた回転ブレード101の周方向配列とを含む。
【0017】
最終段111,101の後にディフューザ12が続いている。ディフューザ12は、ディフューザの内側半径を形成する外壁121と、内壁122とを有する。外壁121と、内壁122とは、一緒に、蒸気を凝縮器(図示せず)へ案内する環状導管を形成しており、それぞれ、一緒にディフューザ出口123を形成するディフューザリップ124まで延びている。
図1の拡大された詳細は、ディフューザの外壁121の一部を示しており、与えられたタービンおよび蒸気流のためにディフューザを最適化するために用いることができるパラメータを示している。蒸気流の方向に従って、壁部は、長さl1の第1の直線部分と、その後に続く、長さl2の第2の直線部分とを有する。第2の直線部分は、水平な線、すなわち軸線方向に対して角度δ1を形成している。2つの直線部分の後に、湾曲部分が続いている。湾曲部分は、入口における、水平な線に対する角度δ2と、Rの半径と、出口における、水平な線に対する角度δ3とを有する。円弧の後に、出口123の方向へ、長さl3を備えた別の実質的に直線的なセクションが続いている。前記GT2011参照物に説明されているように、示された全てのパラメータを、最適化されたディフューザ12を構成するために変化させることができる。
【0018】
図2において、発明の一例による修正されたディフューザが、
図1のディフューザ(点線121で示されている)上に重ね合わされて示されている。新たなディフューザは、より多数の直線部分(3〜4)および直線部分に続くより高次の曲線21を有する。曲線21は、実質的に楕円曲線である。
【0019】
図2に示したように楕円形21は、円の曲線121(点線)と比較すると、最初または入口においてより大きな曲率を有し、出口123に向かって、より平らな部分(小さな曲率)へと拡がっている。同じまたは類似のエレメントを指す場合、
図2におけるその他の符号は
図1におけるものと同じである。
【0020】
図2の2つの設計の効率の比較が、スライスディフューザリカバリを示す
図3に示されている。グラフは、ディフューザ入口におけるm/sにおける軸方向の中間の速度C
zωにわたる、ディフューザ入口(最終段ブレード出口)と、ディフューザ出口(2R平面)との間のリカバリChiのプロットである。上側の線は、新たなディフューザのリカバリを示す。このリカバリは、
図1に示された公知のディフューザの線よりも、少なくとも3%高い。この比較から、本発明によるハイブリッドディフューザは、ディフューザリカバリを顕著な形式で改良するためのポテンシャルを有する。4つ以上の直線部分を有し、その後に楕円が続いているハイブリッドディフューザは、
図1の従来のディフューザよりも優れた改良ポテンシャルを有するものであるとみなすことができる。
【0021】
同様の改良は、あらゆる湾曲部分を省略しながら外壁のための複数の直線部分、たとえば7つ以上の直線部分を使用する設計と新たなディフューザを比較した場合に実証することができる。
【0022】
より多数の直線部分およびそれぞれの長さおよびそれらの間の角度を備え、その後に、少なくとも1つの混合された係数がゼロではない、
(1)a
11x
2+a
12xy+a
22y
2+2a
13x+2a
23y+a
33=0
の一般的形状の曲線が続いているディフューザは、従来技術に従うより制限された設計よりもさらに改良されるより高い潜在性を有する。このような最適化は、ANSYS CFXのような公知のツールのうちのいずれかまたは上記で引用したGT2011出版物において記載されたその他の方法を使用して行うことができる。
【0023】
本発明は、単に例として上述されており、発明の範囲内で変更することができる。発明は、ここに説明または黙示されたまたは図面に示されたまたは黙示されたあらゆる個々の特徴またはあらゆるこのような特徴のあらゆる組み合わせまたは、その均等物に拡張されるあらゆるこのような特徴または組み合わせのあらゆる一般化をも含んでよい。つまり、本発明の広さおよび範囲は、上記の例示的な実施の形態のいずれによっても制限されるべきではない。
【0024】
図面を含む明細書に開示されたそれぞれの特徴は、そうでないことが明示的に述べられない限り、同じ、均等または類似の目的を果たす択一的な特徴と置き換えられてよい。
【0025】
ここで明示的に述べられない限り、明細書を通じた従来技術のあらゆる説明は、このような従来技術が広く知られているまたは当該分野における共通の一般的知識の一部を形成することの認定ではない。
【符号の説明】
【0026】
10 ロータ
11 内側ケーシング
111 ステータブレード
101 回転ブレード
12 ディフューザ
l1 直線部分の長さ
l2 直線部分の長さ
l3 直線部分の長さ
δ2,δ3 角度
R 円弧の半径
123 出口
124 リップ
21 曲線