特許第5726237号(P5726237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5726237-多層構成素子の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726237
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】多層構成素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/43 20130101AFI20150507BHJP
   H01L 41/083 20060101ALI20150507BHJP
   H01L 41/273 20130101ALI20150507BHJP
   H01L 41/293 20130101ALI20150507BHJP
   H01L 41/297 20130101ALI20150507BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01L41/43
   H01L41/083
   H01L41/273
   H01L41/293
   H01L41/297
   H01L41/09
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-130594(P2013-130594)
(22)【出願日】2013年6月21日
(62)【分割の表示】特願2006-529619(P2006-529619)の分割
【原出願日】2004年9月29日
(65)【公開番号】特開2013-214764(P2013-214764A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2013年6月21日
(31)【優先権主張番号】10345500.0
(32)【優先日】2003年9月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】エプコス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】マリオン オットリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ゼドルマイアー
【審査官】 上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第10062672(DE,A1)
【文献】 米国特許第05316698(US,A)
【文献】 米国特許第05933315(US,A)
【文献】 国際公開第02/006184(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0142463(US,A1)
【文献】 国際公開第03/069689(WO,A2)
【文献】 国際公開第03/073523(WO,A2)
【文献】 特開2002−261343(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10164354(DE,A1)
【文献】 国際公開第2004/013918(WO,A1)
【文献】 特開平11−026296(JP,A)
【文献】 特開平02−205372(JP,A)
【文献】 特開平01−264278(JP,A)
【文献】 特開2002−260951(JP,A)
【文献】 特開平07−230714(JP,A)
【文献】 特開平11−135357(JP,A)
【文献】 特開2001−230146(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10235253(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/083,41/09,41/273,
41/293,41/297,41/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構成素子の製造方法であって、
当該多層構成素子は、複数のセラミック層と、当該セラミック層の間に位置する、複数の銅含有内部電極とを有しており、当該内部電極は銅含有外部コンタクトに接続されており、
前記セラミック層は、PZTタイプのPb(ZrTi1−x)O、1≧x≧0、のペロフスカイト型セラミックを含んでおり、
結合材除去を300℃以下の温度で、窒素流内で、水蒸気を添加して実施し、ここで当該結合剤除去プロセスを完全に終了し、
当該結合剤除去の間に酸素分圧のレベルは、セラミックが還元によって劣化し始める値Pminを下回らず、かつ、所与の温度で金属銅が酸化し始める値Pmaxを上回らない、
ことを特徴とする、構成素子の製造方法。
【請求項2】
minは、Cu/CuOの平衡点に相応し、
maxは、Pb/PbOまたはPb/PbTiOの平衡点に相応する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記外部コンタクトを製造するために、70質量%を上回る銅含有量と、ガラスフリットと、有機結合剤を有する、銅含有金属ペーストを使用する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記有機結合剤として、アクリル樹脂結合剤を使用する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ガラスフリットは、実質的にPbOおよびSiOを含有している、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記銅含有金属ペーストを700〜860℃の間で焼付けする、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記銅含有金属ペーストの結合剤除去および焼付けを、金属銅から成る格子ベースの上で行う、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記銅含有金属ペーストをシルクスクリーン印刷方法で被着させる、請求項3から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記セラミック層を製造するためにセラミック質量体を使用し、
前記内部電極層を製造するために、化学的に活性の添加物の成分を有する金属ペーストを使用し、
前記化学的に活性の添加物は、少なくとも、前記金属ペーストの金属成分を除いた自身の周辺の成分と化学的に反応する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記化学的に活性の添加物として、化学的に活性のセラミック粉体を使用する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
酸素、少なくともセラミック質量体の構成部分および金属ペーストまたはセラミック質量体内に含まれている結合剤または溶剤から前記周辺の成分を選択する、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
鉛含有セラミック質量体を使用し、
前記化学的に活性な添加物とその周辺との間の化学的な反応の結果、酸素が遊離される、および/またはPbおよびの一方または両方が結合される、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記化学的に活性な添加物として、(Zr,Ti)OよびBaOから選択された少なくとも1つの添加物を使用する、請求項9から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記外部コンタクトないしは前記内部電極、または、前記外部コンタクトおよび前記内部電極は、10乃至50質量%のセラミック成分を有している、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記多層構成素子は、圧電アクチュエータを構成する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミック多層構成素子に関する。この構成素子は、セラミック層と、内部電極として用いられる、銅含有電極層が交互に配置されている積層体を有する。ここで内部電極は外部コンタクトに接続されている。この外部コンタクトは、積層体の相互に対向している外面に、層配置に対して垂直に配置されている。ここで異なる外部コンタクトに接続されている内部電極は相互に噛み合っている。この種の構成素子ないし、この製造方法は例えば刊行物DE20023051.4号から公知である。
【0002】
さらに本発明は、上述の多層構成素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
刊行物DE9700463号から、Ag/Pd内部電極を有する圧電セラミック多層構成素子に対するグリーンシートの製造方法が公知である。ここではPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)タイプの圧電セラミック粉体が使用されている。
【0004】
内部電極と接触接続している外部電極の材料ないし、この焼付け方法は基本的に次のように選択される。すなわち一方では電極金属が酸化されず、他方ではセラミックが還元されないように選択される。従って通常は貴金属ないし貴金属合金が電極材料として使用される。
【0005】
刊行物DE19945933号内には例えば、PZTセラミックおよびAg/Pd内部電極に基づいた圧電セラミック構成素子で、外部電極を製造する方法が記載されている。Ag/Pd内部電極の接触接続は、65%を上回る銀含有量を有する金属ペーストと、有機結合剤を用いて行われる。ここでこの有機結合剤は約700°で焼付けされる。金属ペーストの焼付けは空気雰囲気内で実施される。なぜなら、有機ペースト結合剤内に含まれている芳香族化合物は、還元条件下では完全には分解されないからである。しかしこの方法は、PZTセラミックおよび銅含有内部電極を有する多層構成素子に対しては適していない。なぜなら、通常の結合剤除去温度ないし焼付け温度では、10−2paを下回る非常に低い特定の酸素分圧でのみ、一方ではPZTセラミックが還元されず、他方では同時に金属銅が酸化されないからである。従って、Ag/Pd外部電極は、銅含有内部電極を有するセラミック多層構成素子内で使用できない。
【0006】
刊行物DE20023051U1号から公知の構成素子によって、PZTセラミックおよびAg/Pd内部電極に基づく圧電セラミックの多層構成素子の場合のコスト負荷の欠点を回避することができる。これは高価なAg/Pd内部電極の代わりに、銅含有内部電極を使用することによって実現される。しかしこの刊行物内では、どの材料が、銅含有内部電極を伴う圧電セラミック構成素子における外部電極の焼付けに適しているのかは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE20023051.4号
【特許文献2】DE9700463号
【特許文献3】DE19945933号
【特許文献4】DE20023051U1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の課題は、セラミックが還元されず、内部電極も外部電極も酸化されない、セラミック多層構成素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、多層構成素子は、セラミック層と、当該セラミック層の間に位置する、銅含有内部電極とを有しており、当該内部電極は銅含有外部コンタクトに接続されており、結合材除去を300℃以下の温度で、窒素流内で、水蒸気を添加して実施し、ここで当該結合剤除去プロセスを完全に終了し、当該結合剤除去の間に酸素分圧のレベルは、セラミックが還元によって劣化し始める値Pminを下回らず、かつ、所与の温度で金属銅が酸化し始める値Pmaxを上回らない、ことを特徴とする、構成素子の製造方法によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による構成素子の構造の斜視図
図2】片対数グラフで、水蒸気を添加して調整する酸素分圧の、温度に対する依存性と、Cu/CuOの平衡曲線と、PbTiO/Pbの平衡曲線
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、セラミック層と、内部電極として用いられている銅含有電極層とを交互に有する積層体を有するセラミック多層構成素子を提供する。ここで内部電極は、外部コンタクトに接続されている。外部コンタクトは、積層体の相互に対向している外面に、層配置に対して垂直に配置されている。ここで、異なる外部コンタクトに対して接続されている内部電極は相互に噛み合っている。多層構成素子は、外部コンタクトが金属的銅を含んでおり、積層体での外部コンタクトの接着強度が少なくとも50Nになることを特徴とする。
【0012】
セラミック層は有利にはセラミックグリーンシートから成る。ここでこのグリーンシートは、熱加水分解によって除去可能な結合剤を含有している。さらに一般的な組成ABO、殊にPZTタイプのPb(ZrTi1−x)Oを伴う強誘電ペロフスカイト型セラミックを含有することが可能である。
【0013】
本発明はさらに、本発明に相応する構成素子の製造方法を提供する。ここで結合剤除去は300°以下の温度で行われる、ないし完全に終了される。結合剤除去は、窒素流において水蒸気を加えて行われる。ここで水蒸気分圧は次のように調整される。すなわち、この水蒸気分圧に相当する酸素分圧が、所与の温度で、Cu/CuOの平衡点と、PbTiO/Pbの平衡点の間にあるように調整される。平衡点はこの種の酸素分圧に相当し、ここでは還元された金属も、この金属に相当する金属合金も、熱力学的に安定しており、共存可能である。しかも相互に混ざりあわない。
【0014】
本発明では、ペースト結合剤が、例えば10−2paを下回る還元された雰囲気において、300°以下の比較的低い温度で完全に分解される。なぜなら、比較的高い結合剤除去温度では、有機結合剤内に含まれる炭素の燃焼のための不十分な酸素が部分的にセラミックの格子構造から引き出されるからである。これはセラミック層の特性を侵害する。
【0015】
有機成分は本発明では次のことによって完全に分解される。すなわち、結合剤除去が窒素流内で、水蒸気を加えて行われることによって分解される。ここでは、加水分解式分解が生じる。水蒸気を添加することによって、酸素分圧が熱力学的に制限されて低下する。しかしここで酸素分圧は、セラミックが還元によって劣化し始める、ある程度の値を下回らない。
【0016】
他方では、酸素分圧が、所与の温度で、金属銅が酸化し始める特定の値を上回ることもない。
【0017】
すなわち、セラミック内での還元プロセスがまだ充分に阻止され、同時に金属ペースト内に含まれている銅が酸化しないように、酸素分圧が低く選択されている。
【0018】
酸素分圧は、結合剤除去プロセス時だけでなく、金属ペーストの焼付け時にも次のように選択される、ないしは各時点で温度に相応して次のように整合される。すなわち酸素分圧がP(T)ダイヤグラムにおいて、各プロセス温度で、Cu/CuOの平衡点と、Pb/PbOの平衡点との間にあるように選択ないし整合される。
【0019】
金属ペースト内の銅成分は有利には70%を上回る。有機ペースト結合剤として有利には、アクリル樹脂結合剤が使用される。
【0020】
本発明によって、有機ペースト結合剤を有する(銅含有)金属ペーストを外部コンタクト製造のために、銅含有内部電極を伴う圧電セラミック構成素子内で使用することが可能になる。
【0021】
外部コンタクトを製造するために、有利には銅含有金属ペーストが使用される。これは、70m%を上回る、例えば78m%の銅含有量と、ガラスフリットと、有機結合剤、例えばアクリル樹脂結合剤を有する。
【0022】
ガラスフラックス(ガラスフリット)は有利には実質的に、PbOおよびSiOから成る。しかし、他の構成部分、例えばNaO、AlおよびBaOを有していてもよい。金属ペースト内のガラスフラックスの成分は有利には5m%よりも小さい。ガラスフラックスの組成および成分は次のように選択される。すなわち、外部コンタクトの金属ペースト内に含まれているガラスフリットが、部分的にセラミック内に内方拡散し、これによって積層体面での外部コンタクトの接着強度が高められるように選択される。
【0023】
まずは、それ自体公知の方法で積層体が製造される。この積層体は相互に重なって位置している電極層とセラミック材料から成る層を有している。ここでこの電極層は完成された構成部分において内部電極に相応する。この電極層は、銅含有金属ペーストから成り、例えばシルクスクリーン印刷方法で、セラミック材料から成る層の上に被着される。
【0024】
さらに銅含有金属ペーストが、例えばシルクスクリーン方法で、内部電極とセラミック層が相互に重なっている積層体の相互に対向している面に被着される。
【0025】
金属ペーストは、気密性炉内で湿気を有する雰囲気内で、300°以下の温度で結合剤除去され、引き続きより高い温度で焼結される。
【0026】
銅含有金属ペーストの焼付けは有利には700〜860℃の間で行われる。
【0027】
セラミック内に含まれている一酸化鉛の還元を阻止するために、本発明による構成素子の製造時には、金属銅から成る格子ベースが使用される、これは同時にゲッター材料として使用される。
【0028】
以下で本発明を実施例および実施例に属する図面に基づいてより詳細に説明する。図は、概略的であり、かつ縮尺通りでない図に基づいて、本発明の異なる実施例を示している。同じ部分または同じ作用を有する部分には同じ参照番号が付与されている。
【実施例】
【0029】
図1には、本発明に相応する銅含有外部コンタクトAK1およびAK2を有するセラミック構成素子が概略的に示されている。第1の外部コンタクトAK1には、第1の銅含有内部電極IE1が接続されている。第2の外部コンタクトAK2には、第2の銅含有内部電極IE2が接続されている。これらの内部電極は相互にセラミック層KSによって分断されている。
【0030】
セラミック層KSは有利には圧電特性を有しており、例えばPZTタイプのセラミックをベースにして製造されている。
【0031】
図示された構成素子は、殊に圧電アクチュエータを実現する。相互に重なって積層された電極層とセラミック層はピエゾスタックと称される。
【0032】
焼付けされた外部コンタクトAK1,AK2は有利には10〜20μmの厚さであり、例えば15μmの厚さである。しかし他の厚さの外部コンタクトも選択可能である。
【0033】
外部コンタクトおよび/または内部電極は有利には、50m%(m%=質量パーセント)を下回る特定のセラミック成分を有しており、本発明の有利な形態ではこれは10〜50m%の間であり、殊に40m%である。セラミック成分はここで、特定の粒径を有するセラミック粒子を有している。例えば平均粒径は0.2〜0.6μmの間である。
【0034】
金属ペースト内のセラミック成分は殊に、ピエゾスタックの外部コンタクトの亀裂形成および剥離を阻止する。これはセラミック材料の膨張係数と金属銅の膨張特性が異なることが原因で生じる。
【0035】
PZTタイプのセラミックの熱膨張係数は、室温とキュリー温度との間では、約1.5〜2.0ppm/Kであり、金属銅は相応する温度領域において、約19ppm/Kの格段に高い熱膨張係数を有している。金属ペースト内にセラミック成分を混ぜることによって、外部コンタクトの膨張特性はセラミックペーストの膨張特性に整合され、構成素子の処理中にも、例えば−50℃〜+150℃での詳細に述べられた温度領域における後でのその使用の間(ここでは例えば電界を印加することによって、構成素子の変形が生じる)も整合される。
【0036】
熱膨張係数を整合させるために有利には、例えば39m%の高いSiO成分を有するガラスフリットが使用される。なぜならSiOは、PZTタイプのセラミックに対する高い親和力を有しているからである。
【0037】
銅含有金属ペーストの準備時には、まず、例えば0.4μmの平均粒度を有するセラミック粉体が、溶剤によって分散液の形で製造される。引き続き、セラミック粉体分散液は、上述した組成の銅含有金属ペースト内で攪拌され、三本ロール機によって均質化される。金属ペーストの粘性は有利には10〜20Pasの間である。ピエゾスタックの側面上に、完成した金属ペーストをピエゾスタックの側面に載せた後に、ペーストは約80〜140℃で空気雰囲気内で乾燥される。さらに、本発明に相応して設定された条件のもとで、結合剤除去と焼結が行われる。ここでは一方では金属銅の酸化が阻止され、他方ではPbOまたはPbTiOの還元が阻止される。ここでは殊に、結合剤除去温度の選択および結合剤除去の持続時間に関して次のことに留意されるべきである。すなわち結合剤除去処理中に、金属ペーストから結合剤成分だけでなく、溶剤残分も完全に焼いて除去されるということに留意されるべきである。
【0038】
金属ペースト内に含有されているガラスフリットは部分的に非常に強く、セラミック内で内方拡散し、ここで焼結されたセラミック層内に中空空間が残されるので、ガラス添加物の侵入が内部電極の領域内でのみ行われるように、焼結温度は低く(例えば765℃)選択される。顕微鏡検査によって次のことが証明されている。すなわち、このように選択された焼結温度では、ガラス成分(殊に酸化珪素)が、外部コンタクトに接している狭いセラミック層領域内でのみ確認可能であることが証明されている。外部コンタクトは固着し、50Nを超える大きな力を用いないとピエゾスタックから剥離されない。外部コンタクを強制的に剥離する場合には、セラミック材料部分が崩れる。これはピエゾスタックでの外部コンタクトの高い接着強度に相応する。
【0039】
セラミック成分は有利には、金属ペーストの固体含有量に関して40m%である。この金属ペーストは、基本的には、内部に位置する電極層にも使用可能である。
【0040】
本発明の枠内では、電極金属化部内に有利には、以下でセラミック添加物とも称される化学的に活性のセラミック粉体(または他の化学的に活性の添加材料)を設けることもできる。これは特定の条件下で、化学的に、電極金属、有機結合剤、セラミックおよび/またはこれらの反応生成物と反応可能である、ないしは特定の成分と化合可能である。さらに、このセラミック添加物は処理雰囲気と反応する。例えば処理雰囲気に酸素を提供するまたは酸素を吸収する。これによって、少なくとも局部的ないし過渡的に酸素分圧が安定される。安定した酸素分圧によって、殊に、内部に位置する電極層ないしは外部コンタクトが酸化に対して保護され、セラミック層が還元に対して保護される。このセラミック粉体添加物によって、電極金属化におけるプロセス不安定さによって生じる酸化金属が結合される。これによって、セラミック層内でのこの酸化金属の不所望の内方拡散が回避される。
【0041】
例えば金属の焼結を遅延させるために、金属ペースト内で化学的に不活性のセラミック粉体を使用することは、それ自体公知である。しかし本発明ではセラミック粉体は機能的な添加物として使用される。これは、化学的に活性であり、自身の周辺と化学的に反応可能である。この化学的な活性は、例えばPbの結合に向けられる。これは焼結時には鉛を含有するセラミック質量体から遊離される。化学的に活性のセラミック粉体がセラミック質量体の別のコンポーネントを殊に焼結時に結合することも可能である。または化学的に活性のセラミック粉体を特定のコンポーネント(例えば酸素)をセラミック質量体から遊離させる、またはセラミック質量内または金属ペースト内に含有されている結合剤から遊離させるために用いることが可能である。しかし有利には、セラミック粉体は金属ペーストの金属成分と化学的に反応しない。
【0042】
外部電極で使用されている金属ペーストとは異なり、内部電極層に適している金属ペースト内には有利には、ガラス添加物は使用されていない。化学的に活性のセラミック粉体としては殊に、(Zr,Ti)Oが適している。金属ペーストは、化学的に活性のセラミック粉体の代わりに、他の、化学的に活性の添加物を含むこともできる。または化学的に活性のセラミック粉体に対して付加的に、他の物質の成分も含み得る。これは例えばBaOおよび/またはMgOである。
【0043】
内部電極でのセラミック粉体の添加によってさらに、内部電極と、この内部電極を取り囲んでいるセラミック層との間の接着が改善される。ここで、金属粒子間のセラミック粒子が細かく分けられることによって、殊に焼結ネッキング形成が阻止される。焼結ネッキングは内部電極の局部的な中断をあらわす。ここで金属化部はセラミック層から剥離するおよび/または−殊に縁部領域において−引き戻される。これによって、内部電極は網状の構造を取る。その構造は構成部分毎に再現不可能である。均質な内部電極構成が、貴金属または貴金属合金を添加することによっても実現されることは公知である。これに対して、本発明に相応するセラミック粉体の添加は、コストに関して大きな利点を有する。
【0044】
図2には、片対数グラフで、水蒸気を添加して調整する酸素分圧Po2(例えば曲線3によって示されている)の、温度に対する依存性と、CuおよびCuOの数字的に計算された平衡曲線1と、PbとPbTiOの数字的に計算された平衡曲線2が示されている。
【0045】
平衡曲線1は選択された温度でのOの分圧を示しており、ここでは金属CuおよびCuOが同時に存在可能である。金属銅は平衡値を上回らない酸素分圧Po2、すなわち平衡曲線1を下回ってのみ存在する。曲線1の上方ではCuOのみが安定しているので、選択された温度で平衡値を上回る酸素分圧で、金属銅の不所望な酸化が行われる。
【0046】
平衡曲線2は選択された温度でのOの分圧を示しており、ここでは金属PbおよびPbTiOが同時に存在可能である。PbTiOは、曲線2の上方でのみ存在する。選択された温度で平衡値を下回る酸素分圧Po2では、セラミック内に含有されているPbTiOは、Pbに還元される。
【0047】
従って少なくとも、本発明によるセラミック多層構成素子製造方法の結合剤除去フェーズにおいて、酸素分圧Po2は水蒸気を添加して次のように調整される。すなわち、それが一方では曲線1によって定められた最大値Pmax(ここでは金属的な銅がまだ安定している)を上回らないように調整され、他方では曲線2によって定められた最小値Pmin(ここではチタン酸鉛はまだ還元されない)を下回らないように調整される。すなわち、所与の結合温度TのもとでPmin<Po2<Pmaxである。すなわち酸素分圧の調整のための付加的な領域は曲線1と曲線2の間である。
【0048】
曲線3は温度に応じて、湿気のある雰囲気において調整する、本発明に相応して見い出された最適な酸素分圧を示している。加えられる水蒸気の量は基本的に曲線3から計算される。酸素分圧の降下、水蒸気を添加して手動で、または自動的に次のように制御することができる。すなわち、所定の限界値が犯されないように制御することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 温度に対する対数{P(O)}ダイヤグラムにおけるCuおよびCuOの平衡の特性曲線、 2 温度に対する対数{P(O)}ダイヤグラムにおけるPbおよびPbTiOの平衡の特性曲線、 3 水蒸気を加えて調整する酸素分圧の、温度に依存した特性曲線、 AK1,AK2 外部コンタクト、 KS セラミック層、 IE1 外部コンタクトAK1に接続されている内部電極、 IE2 外部コンタクトAK2に接続されている内部電極、 Po2 酸素分圧、 Pmin 最小許容酸素分圧、 Pmax 最大許容酸素分圧、 T 結合温度
図1
図2