特許第5726324号(P5726324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5726324
(24)【登録日】2015年4月10日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ウインドウワイパ装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/08 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   B60S1/08 Z
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-543603(P2013-543603)
(86)(22)【出願日】2011年11月16日
(65)【公表番号】特表2014-500182(P2014-500182A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011070192
(87)【国際公開番号】WO2012079896
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年8月13日
(31)【優先権主張番号】102010063018.7
(32)【優先日】2010年12月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ヒュスゲス
(72)【発明者】
【氏名】オアランド シュテアンス
(72)【発明者】
【氏名】パウル ゴイベル
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102009002842(DE,A1)
【文献】 特表平04−503200(JP,A)
【文献】 特表2010−510128(JP,A)
【文献】 米国特許第05979254(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00−1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドウワイパ装置(1)であって、ワイパレバーを操作する出力軸(4)を、伝動装置ケーシング(2)内に収容された伝動装置(3)を介して駆動するワイパモータを備えており、前記伝動装置(3)は、前記ワイパモータの回転運動を前記出力軸(4)の往復旋回運動へと変換して伝えるために変換伝動装置(5)を有しており、該変換伝動装置(5)は、ウォーム歯車(11)と、該ウォーム歯車(11)にヒンジ結合されたプッシュロッド(6)と、該プッシュロッド(6)にヒンジ結合されていて、前記伝動装置ケーシング(2)内に定置に、所定の回転軸線を中心として回動可能に支承された歯列セグメント(8)とを有しており、該歯列セグメント(8)は、前記出力軸(4)に配置されたピニオン(9)に噛み合う、ウインドウワイパ装置において、
前記歯列セグメント(8)は、該歯列セグメント(8)の歯列の配置によって形成される歯列の中心軸線(Z)と、前記歯列セグメント(8)の回転軸線(D)とが互いに所定の間隔Vだけずらされて配置されているように形成されていて、前記歯列セグメント(8)は、前記歯列セグメント(8)の回転軸線に対してそれぞれ異なる間隔を置いて配置されている複数の偏心孔(13)を有していることを特徴とする、ウインドウワイパ装置。
【請求項2】
前記間隔Vは変更可能であり、前記間隔Vに基づいて前記ピニオン(9)と前記歯列セグメント(8)との間の歯の圧力が調節可能である、請求項1記載のウインドウワイパ装置。
【請求項3】
前記歯列セグメントに、前記伝動装置ケーシング(2)における前記伝動装置()の重量を減じる材料切欠部が設けられている、請求項1又は2記載のウインドウワイパ装置。
【請求項4】
前記ピニオン(9)及び/又は前記ウォーム歯車(11)及び/又は前記歯列セグメント(8)は、伝動装置ケーシング(2)内で1つの共通の平面上に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のウインドウワイパ装置。
【請求項5】
前記プッシュロッド(6)は、前記ウォーム歯車(11)に相対回動不能にヒンジ結合するために、ジョイントピン(12)で、前記ウォーム歯車(11)に設けられた少なくとも1つの偏心孔(13)に係合する、請求項1から4までのいずれか1項記載のウインドウワイパ装置。
【請求項6】
自動車のリヤウインドウワイパ用のウインドウワイパ装置(1)である、請求項1からまでのいずれか1項記載のウインドウワイパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車のリヤウインドウワイパ用のウインドウワイパ装置であって、ワイパレバーを操作する出力軸(被駆動軸)を、伝動装置ケーシング内に収容された伝動装置を介して駆動するワイパモータを備えており、前記伝動装置は、前記ワイパモータの回転運動を前記出力軸の往復旋回運動へと変換して伝えるために変換伝動装置を有しており、該変換伝動装置は、ウォーム歯車と、該ウォーム歯車にヒンジ結合されたプッシュロッドと、該プッシュロッドにヒンジ結合されていて、前記伝動装置ケーシング内に定置に、所定の回転軸線を中心として回動可能に支承された歯列セグメントとを有しており、該歯列セグメントは、前記出力軸に配置されたピニオンに噛み合う、ウインドウワイパ装置に関する。
【0002】
このようなウインドウワイパ装置は一般的に公知である。先行技術に記載されたリヤウインドウワイパ駆動装置では、電動モータが回転子軸を1つの回転方向で一定に駆動している。回転子軸にはウォームが形成されており、このウォームは、ウインドウワイパ装置内に設けられた平歯車伝動装置のウォーム歯車をやはり1つの回転方向で一定に駆動する。平歯車伝動装置はさらにプッシュロッドと、該プッシュロッドに固定ピンを介してヒンジ結合された歯列セグメントとを有している。歯列セグメントは、出力軸の回転軸線から間隔をおいて、解離可能なジョイントピンを介して伝動装置ケーシングに定置に回転可能に支承されており、プッシュロッドを介してウォーム歯車にヒンジ結合されている。この歯列セグメントは、出力軸に定置に設けられたピニオンに噛み合う。歯列セグメントの回転軸線は、歯列セグメントの歯列によって形成される歯の軸線に一致している。これにより、個別部分の誤差位置に応じて、歯列セグメントとピニオンとの間に遊びが生じることとなる。
【0003】
先行技術では、いわゆるブレーキ歯列を反転位置に設けることでこの遊びを減じることが提案された。ブレーキ歯列は、歯列ジオメトリに設けられた段部により形成されている。しかしながら先行技術によれば、このような構成は、歯列に設けられた段部により、調和のとれていないワイパ特性を生ぜしめるという結果となった。同時にこれにより、伝動装置ノイズと騒々しい払拭経過が生じている。
【0004】
そこで本発明の課題は、変換伝動装置における遊びを減じることができ、調和のとれた静かなワイパレバーのワイパ特性を得ることができるウインドウワイパ装置を提供することである。
【0005】
発明の開示
この課題は、本発明によれば、歯列セグメントが、該歯列セグメントの歯列の配置によって形成される歯列の中心軸線と、前記歯列セグメントの回転軸線とが互いに所定の間隔Vだけずらされて配置されているように形成されていることにより解決される。
【0006】
発明の利点
換言すると、歯列セグメントの回転軸線は、歯列セグメントの歯列軸線に対して偏心的に位置している。伝動装置ケーシングにおける相応の支承孔は、歯列セグメントの歯列によって形成される歯列の中心軸線に対してずらされて、歯列セグメント及び伝動装置ケーシングに設けられている。このような偏心性により、ワイパレバーの反転位置若しくは休止位置及び戻り位置において、反転位置におけるピニオンと歯列セグメントとの間に高められた押圧が得られ、これにより、変換伝動装置における遊びが減少する結果となる。何故ならば、戻り位置においてピニオンと歯列セグメントとの間で高められた押圧力が優勢であるからである。結果として、反転位置における遊びの低減が達成される。休止位置及び反転位置におけるワイパレバーの位置も監視することができる。これに伴い、払拭経過は、極めて調和のとれたものになるので、伝動装置ノイズを減じることができる。歯列セグメントの歯列の製造可能性もこれにより極めて簡単になる。何故ならば、歯列セグメントの構成の内側に段部を設ける必要がもはやないからである。
【0007】
使用分野に応じた、特に車種に応じた、種々様々なウインドウワイパ装置のために、製造メーカーから異なる払拭経過が求められるので、実施例において、歯列の中心軸線と回転軸線との間の間隔Vは可変に調節可能であり、間隔Vを介して、ピニオンと歯列セグメントとの間の歯の圧力が調節可能である。これは例えば、歯列セグメントに長孔を設け、この長孔を介して歯列セグメントを伝動装置ケーシングに、特に、固定ねじ又は固定ピンを介して固定することにより得られる。
【0008】
自動車の窓ガラス上におけるワイパアームのできるだけサイン曲線状で対称的な運動経過を得るために、本発明の実施例では、出力軸に相対回動不能に配置されたピニオンと歯列セグメントとの間の力の流れを、伝動装置ケーシングの内側の相応の配置において1つの平面内で設けることが提案されている。結果として、先行技術では存在していたピニオンと歯列セグメントとの間の高さのずれに基づく横方向の力又はモーメントを、防止若しくは完全になくすことができ、これにより、力を伝達する構成部材間の摩擦損失が減じられ、ひいては、ウインドウワイパ装置の効率が向上する。
【0009】
伝動装置ケーシングにおける伝動装置の重量の低減のために、歯列セグメントに材料切欠部を設けることができる。
【0010】
伝動装置ケーシングにおける力を伝達する構成部材の特に良好な配置は、ピニオン及び/又はウォーム歯車及び/又は歯列セグメントが、即ち、変換伝動装置のうちプッシュロッドを除く全ての力伝達エレメントが、伝動装置ケーシング内の1つの力伝達平面上に配置されていることにより得られる。これにより、力の流れの範囲において、先行技術では存在している高さの段部により生じるモーメントをほぼ完全になくすことができる。これによりさらに、既に述べたように、摩擦による損失を減じることができ、ひいては効率を上げることができる。
【0011】
自動車の車種に応じて、窓ガラスに沿ったウインドウワイパの払拭角度の可変性若しくは調節可能性を簡単に得るために、本発明の実施例では、ウォーム歯車の中心軸線とプッシュロッドとの間隔を変更することが提案されており、この場合、プッシュロッドは、ウォーム歯車とのヒンジ結合のために、ジョイントピンで、ウォーム歯車の中央軸線に対して所定の間隔を有している、ウォーム歯車に設けられた少なくとも1つの偏心孔に係合する。複数の偏心孔が、ウォーム歯車の中央軸線に対して種々異なる間隔を置いてウォーム歯車に設けられているならば特に大きな変更可能性が得られる。
【0012】
ウォーム歯車が、歯列セグメントの回転軸線に対してそれぞれ異なる間隔を置いて配置されている複数の偏心孔を有しているならば、相応の偏心孔を選択することにより、歯列セグメントとピニオンとの間の変換を変更することができ、これにより様々な速度を調節することができる。選択的に、プッシュロッドを枢着的に取り付けることができる複数の収容孔を歯列セグメントに設けることもできる。
【0013】
本発明のさらに有利な構成については、添付の図面並びに従属請求項の説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による変換伝動装置を両反転位置において示した斜視図である。
図2】一方の反転位置における図1に示した本発明による変換伝動装置の部分拡大図である。
図3】本発明による歯列セグメントを示した図である。
図4図3に示した本発明による歯列セグメントの部分図である。
【0015】
図1には、本発明による、自動車のリヤウインドウワイパ用のウインドウワイパ装置1の斜視図が示されている。
【0016】
ウインドウワイパ装置1はワイパモータ(図示せず)を有しており、該ワイパモータは、伝動装置ケーシング2内に収容された伝動装置3を介して出力軸4を駆動する。出力軸4を介してワイパレバー(同様に図示せず)が自動車の窓ガラス上を往復運動可能である。伝動装置3は、ワイパモータの回転運動を、出力軸4の往復旋回運動に変換して伝えるために変換伝動装置5を有している。変換伝動装置5はさらにプッシュロッド6と、該プッシュロッド6に固定ピン7を介してヒンジ結合された歯列セグメント8とを有している。歯列セグメント8は、伝動装置ケーシングに相対回動不能に設けられた固定ピンを介して、回転軸線Dを中心として回動可能に支承されており、出力軸4に配置されたピニオン9に噛み合っている。特に図2及び図3に示されているように、歯列セグメント8は、歯列セグメント8の歯列10の配置によって形成される歯列の中心点Z、特に、歯列円Bによって形成される歯列の中心点Zと、前記回転軸線Dとは、互いに間隔Vだけずらされて位置するように形成されている。このような構成により、歯列セグメント8の歯列とピニオン9の歯列とは楔状にひっかかることはなく、歯列に対して偏心的に配置された固定ピンの支承孔によって反転位置への高められた押圧が得られる。偏心性により、反転位置での、ピニオン9と歯列セグメント8との間の歯の圧力が高められ、これにより変換伝動装置5内の遊びは減じられる。結果として、自動車の窓ガラス上のワイパレバーの調和のとれた払拭経過が生じると同時に、伝動装置ノイズが減じられる。
【0017】
歯列セグメント8と、歯列セグメント8に噛み合い、出力軸4に相対回動不能に結合されているピニオン9と、プッシュロッド6を介して駆動力を伝える、回転運動するウォーム歯車11とは、伝動装置ケーシング2内に1つの共通平面上で配置されている。従って、ワイパモータからの力伝達の流れは、プッシュロッド6を介して歯列セグメント8へとウォーム歯車11の運動を伝達する例外を除いて、ウォームが設けられた回転子軸を介したウォーム歯車11への力の伝達も、歯列セグメント8からピニオン9への力の伝達も1つの平面内で行われるので、横方向力の増幅はほぼ抑制することができる。伝動装置ケーシング2内で歯列セグメント8を、歯列円Bに対して偏心的に定置に軸支することにより、横方向力の増幅に抗する変換伝動装置5のさらなる安全性が得られる。何故ならば、場合によっては力伝達経路においてさらに生じる横方向の力は、歯列セグメント8の支承部を介して、ピンによって伝動装置ケーシング2に吸収され、伝動装置ケーシング2を介して導出することができるからである。従って安定した運動の経過が得られ、対称的かつできるだけサイン曲線状の運動経過が得られる。
【0018】
選択的な実施例(図示せず)では、歯列セグメント8を伝動装置ケーシング2に固定するために、歯列セグメント8に長孔が形成されている。この長孔により、固定点、ひいては歯列セグメント8の回転点は変更可能であり、歯列円Bによって形成される歯列の中心軸線Zと、歯列セグメント8の回転軸線Dとの間の間隔も変更される。
図1
図2
図3
図4